第1の実施の形態
以下、本発明に係る第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
図1(a)(b)に示すように、レーザ加工用ステージは、レーザ照射部80から照射されるレーザ光Lによって加工される被処理体1を保持する保持部30と(レーザ照射部80、レーザ光Lおよび被処理体1については、図14および図16参照)、保持部30が載置されるとともに第一上方軸16を有し、保持部30を第一上方軸16に沿って移動させる第一上方ステージ10と、第一上方ステージ10が載置されるとともに第一下方軸26を有し、第一上方ステージ10を第一下方軸26に沿って移動させる第一下方ステージ20と、第一上方ステージ10および第一下方ステージ20の駆動を制御する制御部50と、を備えている。
また、図1(b)に示すように、第一上方ステージ10は保持部30が載置された第一上方載置台12を有し、第一下方ステージ20は、第一上方ステージ10が載置された第一下方載置台22を有している。また、第一上方軸16には第一上方載置台12を移動させる第一上方駆動部15が連結され、第一下方軸26には第一下方載置台22を移動させる第一下方駆動部25が連結されている。そして、これら第一上方駆動部15と第一下方駆動部25は制御部50に接続されており、制御部50からの信号によって制御されるようになっている。
また、図1(a)(b)に示すように、第一下方軸26と第一上方軸16が互いに平行に配置されている。なお、本実施の形態では、第一下方軸26と第一上方軸16が互いに平行に配置されている態様を用いて説明するが、第一上方軸16が延在する直線と第一下方軸26が延在する直線が同じ方向の成分を含んでいればこれに限られない。このため、例えば図2に示すように、第一下方軸26と第一上方軸16が互いに平行でなくてもよく、第一下方軸26と第一上方軸16を例えば30°や45°といった所望の角度だけ傾斜させた状態で配置することができる。
ところで、本実施の形態のように第一下方軸26と第一上方軸16が互いに平行に配置することによって、後述する減速時間、停止時間および加速時間を効率よく減らすことができるので、有益である。
上述した制御部50は、固定位置を基準として保持部30の移動方向を切り替える際に、第一上方ステージ10によって保持部30を切り替える前の方向に相対的に移動させるとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を切り替わった後の方向に相対的に移動させる、または、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を切り替える前の方向に相対的に移動させるとともに第一上方ステージ10によって保持部30を切り替わった後の方向に相対的に移動させるように構成されている。
なお、本願で「固定位置」とは、静止された箇所(例えば床面)で固定された位置のことを意味しており、「固定位置を基準」とした移動方向とは静止系における移動方向のことを意味している。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
まず、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が一方向(例えば図1(a)(b)の右方向)に移動され始める。この結果、被処理体1を保持した保持部30が、静止系において(固定位置を基準として)、一方向に移動され始める(図5(a)および図3(a)の(1)参照)。
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が、所定の速度に達すると等速移動となり(図3(a)の(2)参照)、所定の距離を移動した後で(すなわち、所定の時間が経過した後で)、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10の一方向への移動が減速され始める(図3(a)の(3)参照)。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30が他方向(本実施の形態では「一方向」と「逆方向」)に移動され始める(図5(b)参照)。
なお、本実施の形態では、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10の移動が減速され始めた段階で、第一上方ステージ10によって保持部30が加速され始める。
その後、第一上方ステージ10によって保持部30が所定の速度に達した時に、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の一方向への移動が停止される(図3(a)の(3)と(4)の間の点、参照)。
また、第一上方ステージ10によって保持部30が、他方向にある程度移動されると(図3(a)の(4)参照)、第一上方ステージ10による保持部30の他方向への移動が減速されて停止され(図3(a)の(5)参照)、被処理体1を保持した保持部30が停止される(図5(c)参照)。
なお、図3(a)(b)では、保持部30が固定位置に対して、一方向と他方向へ一往復された態様を示しているが、これに限られることはなく、例えば複数回往復されてもよい。
上述のように、本実施の形態によれば、被処理体1を保持する保持部30の移動方向を切り替える際にかかる時間を減らすことができる。このため、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。
すなわち、従来の方法では、図4に示すように、惰性(イナーシャ)の影響から減速時間および加速時間が各々必要となり(図4の(3)および(5)参照)、停止時間も発生することとなる(図4の(4)参照)のに対して、本実施の形態によれば、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10の移動が減速されている間に、第一上方ステージ10によって保持部30の移動を加速することができるので(減速時間と加速時間を重ね合わせることができるので)、固定位置を基準として、被処理体1の移動方向が切り替わる際にかかる時間を大幅に削減することができ、かつ、被処理体1の停止時間が一瞬で済むようになる。この結果、加工方向の変更時、すなわち移動方向の切り替時に被処理体1へのエネルギー入力を一定にすることができ、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、保持部30の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
なお、上記では、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が一方向に移動され、第一上方ステージ10によって保持部30が他方向に移動される態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が他方向に移動され、第一上方ステージ10によって保持部30が一方向に移動される態様であってもよい。
また、上記では、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10の移動が減速され始めた段階で第一上方ステージ10によって保持部30が加速され始め、また、第一上方ステージ10によって保持部30が所定の速度に達した段階で第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の一方向への移動が停止される態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10の移動が減速され始める段階と、第一上方ステージ10によって保持部30が加速され始める段階とが必ずしも一致している必要はないし、第一上方ステージ10によって保持部30が所定の速度に達した段階で第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の一方向への移動が停止される必要もない。
第2の実施の形態
次に、図6(a)−(e)乃至図8(a)−(e)により、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態は、静止系において(固定位置を基準として)保持部30を等速で移動させる際に、制御部50からの信号によって、第一上方ステージ10が保持部30を等速で移動させるか、または、第一下方ステージ20が第一上方ステージ10を等速で移動させる態様であったが、本実施の形態では、制御部50からの信号によって、同一方向で第一上方ステージ10が保持部30を相対的に加速するとともに第一下方ステージ20が第一上方ステージ10を相対的に減速する、または、同一方向で第一上方ステージ10が保持部30を相対的に減速するとともに第一下方ステージ20が第一上方ステージ10を相対的に加速することで、静止系において保持部30を等速で移動させることができる態様になっている。なお、静止系において保持部30を等速で移動させるのであるから、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速または減速の絶対値と、第一上方ステージ10による保持部30の減速または加速の絶対値が同じ値となっている。
また、本実施の形態では、制御部50が、静止系において保持部30を一方向で加速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に減速する、または、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に加速するように構成されている。
さらに、本実施の形態では、制御部50が、静止系において保持部30を一方向で減速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に加速する、または、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に減速するように構成されている。
第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。また、図6(a)−(e)乃至図8(a)−(e)に示す第2の実施の形態において、図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
第1の実施の形態で示される態様においては、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動方向が常に同じ方向(例えば図3の+方向)となり、第一上方ステージ10による保持部30の移動方向も常に同じ方向(例えば図3の−方向)となる。このため、一つの被処理体1を処理するのに、静止系において被処理体1の往復運動を繰り返し行う場合には、第一上方ステージ10および第一下方ステージ20の長さをかなり長くする必要がある。
この点、第一上方ステージ10による保持部30の他方向への移動が減速されて停止された後で(図3の(5)の後で)、引き続き、第一上方ステージ10によって保持部30を一方向へ加速させて移動させることも考えられるが、このような態様では、第一上方ステージ10による保持部30の移動を、他方向で減速させて、停止させて、一方向で加速させるという一連の流れにおいて、従来技術と同じ態様を用いることとなり、被処理体1を処理する際において得られるメリットが小さくなってしまう。
この点、本実施の形態によれば、同一方向で第一上方ステージ10が保持部30を相対的に加速するとともに第一下方ステージ20が第一上方ステージ10を相対的に減速する、または、同一方向で第一上方ステージ10が保持部30を相対的に減速するとともに第一下方ステージ20が第一上方ステージ10を相対的に加速することで、静止系において保持部30を等速で移動させることができる。このため、第一上方ステージ10または下方ステージ20のいずれか一方だけで静止系において保持部30を等速で移動させる際と、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速または減速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速または加速の絶対値を同じ値とすることで静止系において保持部を等速で移動させる際の両方において、第一上方ステージ10によって保持部30を往復移動させ、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を往復移動させることができる。この結果、一つの被処理体1を処理するのに保持部30の往復運動を繰り返し行う場合であっても、一往復分の長さからなる長さの短い第一上方ステージ10および第一下方ステージ20を用いることができる。
(第2の実施の形態の実施例1)
次に、このような構成からなる本実施の形態の実施例1について述べる。なお、図6(a)は、時間と第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度(v1)との関係を示している。また、図6(b)は、時間と第一上方ステージ10による保持部30の移動速度(v2)との関係を示している。また、図6(c)は、時間と第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動速度および第一上方ステージ10による保持部30の移動速度の合成速度(v1+v2)との関係を示している。また、図6(d)は、図6(a)−(c)を同じ座標で示したものである。また、図6(e)は、時間と第一下方ステージ20から見た第一上方ステージ10のX方向における変位量(x1)との関係、時間と第一上方ステージ10から見た保持部30のX方向における変位量(x2)との関係、および、時間と静止系における保持部30のX方向における変位量(x1+x2)の関係を示している。
ところで、図6(a)−(e)において、横軸の単位は「t」として示す。また、図6(a)−(d)において、縦軸の単位は「v」として示し、図6(e)において、縦軸の単位は「d」として示す。
まず、静止系において、保持部30がX方向の正方向(図1(a)(b)の右側)に移動され始める。(以下、図1(a)(b)の右側への移動速度を「正」として示し、図1(a)(b)の左側への移動速度を「負」として示す。また、加速度に関しては、以下、加速する際を「正」として示し、減速する際を「負」として示す。)この際、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の正方向に加速度a=1v/t(以下、aの単位である「v/t」は省略する。)で加速させる(図6(a)の横軸0t〜10t、参照)。他方、第一上方ステージ10による保持部30の移動は行われない(図6(b)の横軸0t〜10t、参照)。
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図6(c)において10v)まで加速されると、加速が停止されて、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が等速(v=10v)で移動される(図6(a)の横軸10t〜30t、参照)。
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の距離だけ移動される、言い換えれば第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の時間だけ(本実施例では30tまで)移動されると、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は加速度a=−1で減速され始める(図6(a)の横軸30t〜40t、参照)。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向に加速度a=1で加速され始める(図6(b)の横軸30t〜40t、参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向で相対的に減速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に加速されることとなる(図6(a)(b)の横軸30t〜40t、参照)。
そして、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動が停止されるのに対して(図6(a)の横軸40t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30が所定の速度(v=−10v)まで加速される(図6(b)の横軸40t、参照)。その結果、静止系における保持部30の速度が所定の値(v=−10v)まで達することとなる。
次に、移動方向を反転するために、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は一旦停止される(図6(a)の横軸40t〜45t、参照)。他方、この間、第一上方ステージ10によって保持部30は等速(v=−10v)で移動され続ける(図6(b)の横軸40t〜45t、参照)。
次に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向(図1(a)(b)の左側)に加速度a=1で加速され始める(図6(a)の横軸45t参照)。このとき、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図6(b)の横軸45t参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に加速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に減速されることとなる(図6(a)(b)の横軸45t〜55t、参照)。ここで、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速の絶対値が同じ値となっているので、静止系において保持部30は等速(v=−10v)で移動されることとなる(図6(c)の横軸45t〜55t、参照)。
次に、移動方向を反転するために、第一上方ステージ10による保持部30の移動は一旦停止される(図6(b)の横軸55t〜60t、参照)。他方、この間、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は等速(v=−10v)で移動され続ける(図6(a)の横軸55t〜60t、参照)。
次に、第一上方ステージ10によって保持部30は、X方向の正方向へ加速度a=1で加速され始める(図6(b)の横軸60t参照)。このとき、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図6(a)の横軸60t参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に減速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向で相対的に加速されることとなる(図6(a)(b)の横軸60t〜70t、参照)。以降は、処理されている被処理気体の加工が終了するまで上述した工程が繰り返し行われる。
本実施例によれば、第一上方ステージ10または下方ステージ20のいずれか一方だけで静止系において保持部30を等速で移動させる際と(図6(a)の10t〜30tおよび55t〜60t、並びに、図6(b)の40t〜45t、参照)、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速または減速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速または加速の絶対値を同じ値とすることで静止系において保持部を等速で移動させる際(図6(a)(b)の45t〜55t、参照)の両方において、第一上方ステージ10によって保持部30を往復移動させ、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を往復移動させることができる。このため、一つの被処理体1を処理するのに保持部30の往復運動を繰り返し行う場合であっても、一往復分の長さからなる短い第一上方ステージ10および第一下方ステージ20を用いることができる。
また、本実施例によれば、静止系において保持部30を一方向で加速する際に(図6(c)の35t〜40tおよび65t〜70t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に減速する(図6(a)(b)の35t〜40tおよび65t〜70t、参照)ように構成されている。
さらに、静止系において保持部30を一方向で減速する際に(図6(c)の30t〜35tおよび60t〜65t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に減速する(図6(a)(b)の30t〜35tおよび60t〜65t、参照)ように構成されている。
このため、本実施例では、静止系において、被処理体1の移動方向が切り替わる際にかかる時間を大幅に削減することができ、かつ、被処理体1の停止時間を無くすことができる。この結果、加工方向の変更時、すなわち移動方向の切り替時に被処理体1へのエネルギー入力を一定にすることができ、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、保持部30の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
なお、本実施例では、静止系において保持部30を一方向で加速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に減速する態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、静止系において保持部30を一方向で加速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に加速するようにしてもよい。
また、本実施例では、静止系において保持部30を一方向で減速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に減速する態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、静止系において保持部30を一方向で減速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に加速するようにしてもよい。
(第2の実施の形態の実施例2)
次に、このような構成からなる本実施の形態の実施例2について述べる。なお、図7(a)−(e)の各々は図6(a)−(e)の各々に対応した図であり、図7(a)−(e)の各々における単位は図6(a)−(e)の各々における単位と同一である。
まず、静止系において、保持部30がX方向の正方向に移動され始める。この際、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の正方向に加速度a=1で加速させる(図7(b)の横軸0t〜10t、参照)。他方、第一上方ステージ10による保持部30の移動は行われない(図7(b)の横軸0t〜10t、参照)。
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図7(c)において10v)まで加速されると、加速が停止されて、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が等速(v=10v)で移動される(図7(a)の横軸10t〜15t、参照)。
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の距離だけ移動される、言い換えれば第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の時間だけ(本実施例では15tまで)移動されると、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は加速度a=−1で減速され始める(図7(a)の横軸15t〜25t、参照)。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向に加速度a=1で加速され始める(図7(b)の横軸15t〜25t、参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向で相対的に減速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向で相対的に加速されることとなる(図7(a)(b)の横軸15t〜25t、参照)。ここで、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速の絶対値が同じ値となっているので、静止系において保持部30は等速(v=10v)で移動されることとなる(図7(c)の横軸15t〜25t、参照)。
次に、移動方向を反転するために、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は一旦停止される(図7(a)の横軸25t〜30t、参照)。他方、この間、第一上方ステージ10によって保持部30は等速(v=10v)で移動され続ける(図7(b)の横軸25t〜30t、参照)。
次に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は、X方向の負方向へ加速度a=1で加速され始める(図7(a)の横軸30t参照)。このとき、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の正方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図7(b)の横軸30t参照)。この結果、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向で相対的に減速されるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に加速されることとなる(図7(a)(b)の横軸30t〜40t、参照)。
そして、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止されるのに対して(図7(b)の横軸40t、参照)、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の速度(v=−10v)まで加速される(図7(a)の横軸40t、参照)。その結果、静止系における保持部30の速度が所定の値(v=−10v)まで達することとなる。
次に、移動方向を反転するために、第一上方ステージ10による保持部30の移動は一旦停止される(図7(b)の横軸40t〜45t、参照)。他方、この間、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は等速(v=−10v)で移動され続ける(図7(a)の横軸40t〜45t、参照)。
次に、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向に加速度a=1で加速され始める(図7(b)の横軸45t参照)。このとき、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図7(a)の横軸45t参照)。この結果、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に加速されるとともに、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に減速されることとなる(図7(a)(b)の横軸45t〜55t、参照)。ここで、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速の絶対値が同じ値となっているので、静止系において保持部30は等速(v=−10v)で移動されることとなる(図7(c)の横軸45t〜55t、参照)。
次に、移動方向を反転するために、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は一旦停止される(図7(a)の横軸55t〜60t、参照)。他方、この間、第一上方ステージ10によって保持部30は等速(v=−10v)で移動され続ける(図7(b)の横軸55t〜60t、参照)。
次に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は、X方向の正方向へ加速度a=1で加速され始める(図7(a)の横軸60t参照)。このとき、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図7(b)の横軸60t参照)。この結果、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に減速されるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向で相対的に加速されることとなる(図7(a)(b)の横軸60t〜70t、参照)。以降は、処理されている被処理気体の加工が終了するまで上述した工程が繰り返し行われる。
本実施例によれば、第一上方ステージ10または下方ステージ20のいずれか一方だけで静止系において保持部30を等速で移動させる際と(図7(a)の10t〜15tおよび40t〜45t、並びに、図7(b)の25t〜30tおよび55t〜60t、参照)、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速または減速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速または加速の絶対値を同じ値とすることで静止系において保持部を等速で移動させる際(図7(a)(b)の15t〜25tおよび45t〜55t、参照)の両方において、第一上方ステージ10によって保持部30を往復移動させ、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を往復移動させることができる。このため、一つの被処理体1を処理するのに保持部30の往復運動を繰り返し行う場合であっても、一往復分の長さからなる短い第一上方ステージ10および第一下方ステージ20を用いることができる。
また、本実施例によれば、静止系において保持部30を一方向で加速する際に(図7(c)の35t〜40tおよび65t〜70t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に加速する(図7(a)(b)の35t〜40tおよび65t〜70t、参照)ように構成されている。
さらに、静止系において保持部30を一方向で減速する際に(図7(c)の30t〜35tおよび60t〜65t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に加速する(図7(a)(b)の30t〜35tおよび60t〜65t、参照)ように構成されている。
このため、本実施例でも、静止系において、被処理体1の移動方向が切り替わる際にかかる時間を大幅に削減することができ、かつ、被処理体1の停止時間を無くすことができる。この結果、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、保持部30の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
なお、本実施例では、静止系において保持部30を一方向で加速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に加速する態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、静止系において保持部30を一方向で加速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に減速するようにしてもよい。
また、本実施例では、静止系において保持部30を一方向で減速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に加速する態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、静止系において保持部30を一方向で減速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に減速するようにしてもよい。
(第2の実施の形態の実施例3)
次に、このような構成からなる本実施の形態の実施例3について述べる。なお、図8(a)−(e)の各々は図6(a)−(e)の各々に対応した図であり、図8(a)−(e)の各々における単位は図6(a)−(e)の各々における単位と同一である。
まず、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の正方向に加速度a=1で加速させる(図8(a)の横軸0t〜10t、参照)。この際、第一上方ステージ10によって保持部30をX方向の負方向に加速度a=1で加速させた後(図8(b)の横軸0t〜5t、参照)、加速度a=−1で減速させる(図8(b)の横軸5t〜10t、参照)。なお、第一上方ステージ10によって保持部30をX方向の負方向に加速度a=1で加速させる間は、保持部30は静止系で停止されることになる(図8(c)の横軸0t〜5t、参照)。
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図8(c)において10v)まで加速されると、加速が停止されて、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が等速(v=10v)で移動される(図8(a)の横軸10t〜15t、参照)。この間、第一上方ステージ10による保持部30の移動は一旦停止される(図8(b)の横軸10t〜15t、参照)。
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の距離だけ移動される、言い換えれば第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の時間だけ(本実施例では15tまで)移動されると、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は加速度a=−1で減速され始める(図8(a)の横軸15t〜25t、参照)。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向に加速度a=1で加速され始める(図8(b)の横軸15t〜25t、参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向で相対的に減速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向で相対的に加速されることとなる(図8(a)(b)の横軸15t〜25t、参照)。ここで、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速の絶対値が同じ値となっているので、静止系において保持部30は等速(v=10v)で移動されることとなる(図8(c)の横軸15t〜25t、参照)。
次に、移動方向を反転するために、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は一旦停止される(図8(a)の横軸25t〜30t、参照)。他方、この間、第一上方ステージ10によって保持部30は等速(v=10v)で移動され続ける(図8(b)の横軸25t〜30t、参照)。
次に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は、X方向の負方向へ加速度a=1で加速され始める(図8(a)の横軸30t参照)。このとき、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の正方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図8(b)の横軸30t参照)。この結果、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向で相対的に減速されるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に加速されることとなる(図8(a)(b)の横軸30t〜40t、参照)。
そして、第一上方ステージ10による保持部30の移動が停止されるのに対して(図8(a)の横軸40t、参照)、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の速度(v=−10v)まで加速される(図8(b)の横軸40t、参照)。その結果、静止系における保持部30の速度が所定の値(v=−10v)まで達することとなる。
次に、移動方向を反転するために、第一上方ステージ10による保持部30の移動は一旦停止される(図8(b)の横軸40t〜45t、参照)。他方、この間、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は等速(v=−10v)で移動され続ける(図8(a)の横軸40t〜45t、参照)。
次に、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向に加速度a=1で加速され始める(図8(b)の横軸45t参照)。このとき、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図8(a)の横軸45t参照)。この結果、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に加速されるとともに、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に減速されることとなる(図8(a)(b)の横軸45t〜55t、参照)。ここで、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速の絶対値が同じ値となっているので、静止系において保持部30は等速(v=−10v)で移動されることとなる(図8(c)の横軸45t〜55t、参照)。
次に、移動方向を反転するために、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は一旦停止される(図8(a)の横軸55t〜60t、参照)。他方、この間、第一上方ステージ10によって保持部30は等速(v=−10v)で移動され続ける(図8(b)の横軸55t〜60t、参照)。
次に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は、X方向の正方向へ加速度a=1で加速され始める(図8(a)の横軸60t参照)。このとき、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図8(b)の横軸60t参照)。この結果、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に減速されるとともに、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向で相対的に加速されることとなる(図8(a)(b)の横軸60t〜70t、参照)。以降は、処理されている被処理気体の加工が終了するまで上述した工程が繰り返し行われる。
上述した実施例1および実施例2では、図6(e)および図7(e)に示すように、時間と静止系における保持部30のX方向における変位量(x1+x2)は、25d〜275dとなっており、オフセットしている。このため、実施例1および実施例2では、被処理体1を加工する際に用いることができない領域(0d〜25d)が発生してしまっている。これに対して、本実施例においては、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の正方向に加速度a=1で加速させる間に(図8(a)の横軸0t〜10t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30をX方向の負方向に加速度a=1で加速させた後(図8(b)の横軸0t〜5t、参照)、X方向の負方向で加速度a=−1で減速させる(図8(b)の横軸5t〜10t、参照)。この結果、上述したオフセットをなくすることができ、図8(e)に示すように、被処理体1を加工する際に用いることができない領域(0d〜25d)を無くすことができ、ひいては、レーザ光による加工位置の制御を行いやすくなる。
なお、本実施例では、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の正方向に加速させる間に、第一上方ステージ10によって保持部30を、X方向の負方向に加速させた後でX方向の正方向に加速させる態様を用いて説明しているが、オフセットを無くすことができるのであれば、このような態様には限られない。例えば、第一上方ステージ10によって保持部30をX方向の正方向に加速させる間に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の負方向に移動させてもよいし、加速させる時間や減速させる時間を適宜変えることもできる。
本実施例によれば、第一上方ステージ10または下方ステージ20のいずれか一方だけで静止系において保持部30を等速で移動させる際と(図8(a)の10t〜15tおよび40t〜45t、並びに、図8(b)の25t〜30tおよび55t〜60t、参照)、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速または減速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速または加速の絶対値を同じ値とすることで静止系において保持部を等速で移動させる際(図8(a)(b)の15t〜25tおよび45t〜55t、参照)の両方において、第一上方ステージ10によって保持部30を往復移動させ、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を往復移動させることができる。このため、一つの被処理体1を処理するのに保持部30の往復運動を繰り返し行う場合であっても、一往復分の長さからなる短い第一上方ステージ10および第一下方ステージ20を用いることができる。
また、本実施例によれば、静止系において保持部30を一方向で加速する際に(図8(c)の35t〜40tおよび65t〜70t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に加速する(図8(a)(b)の35t〜40tおよび65t〜70t、参照)ように構成されている。
さらに、静止系において保持部30を一方向で減速する際に(図8(c)の30t〜35tおよび60t〜65t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に加速する(図8(a)(b)の30t〜35tおよび60t〜65t、参照)ように構成されている。
このため、本実施例でも、静止系において、被処理体1の移動方向が切り替わる際にかかる時間を大幅に削減することができ、かつ、被処理体1の停止時間を無くすことができる。この結果、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、保持部30の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
なお、本実施例では、静止系において保持部30を一方向で加速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に加速する態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、静止系において保持部30を一方向で加速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に減速するようにしてもよい。
また、本実施例では、静止系において保持部30を一方向で減速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向で相対的に減速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向と逆方向で相対的に加速する態様を用いて説明したが、これに限られることはなく、静止系において保持部30を一方向で減速する際に、第一上方ステージ10によって保持部30を当該一方向と逆方向で相対的に加速するとともに第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10を当該一方向で相対的に減速するようにしてもよい。
第3の実施の形態
次に、図9乃至図11(a)−(e)により、本発明の第3の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態および第2の実施の形態では、第一下方ステージ20と第一上方ステージ10が同一の長さからなり、保持部30を移動させる際に両者が同様の機能を果たす態様であったが、本実施の形態では、第一上方ステージ10が第一下方ステージ20よりも長さが短くなっており、第一下方ステージ20が保持部30を静止系において移動させる際に当該保持部30の主たる駆動を担う主駆動ステージを構成し、第一上方ステージ10が保持部30を静止系において移動させる際に当該保持部30の従たる駆動を担う従駆動ステージを構成している。第3の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態または第2の実施の形態と略同一の態様となっている。
図9乃至図11(a)−(e)に示す第3の実施の形態において、図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)に示す第1の実施の形態および図6(a)−(e)乃至図8(a)−(e)に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、まず、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が一方向(例えば図9の右方向)に移動され始める(図10の(1)参照)。この結果、被処理体1を保持した保持部30が、静止系において(固定位置を基準として)、一方向に移動され始める。
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が、所定の速度に達すると等速移動となり(図10の(2)参照)、所定の距離を移動した後で、または、所定の時間が経過した後で、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10の移動速度が減速され始める(図10の(3)参照)。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30が他方向に加速され始める。
その後、第一上方ステージ10によって保持部30が所定の速度に達した時に、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の一方向への移動が停止される(図10の(3)と(4)の間の点、参照)。
次に、第一下方載置台22の移動方向が反転し、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が他方向に加速され始め(図10の(5)参照)、その段階で第一上方ステージ10によって保持部30が減速され始める。
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の速度に達した時に、第一上方ステージ10による保持部30の他方向への移動が停止される(図10の(5)と(6)の間の点、参照)。
その後、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が、他方向にある程度移動されると(図10(a)の(6)参照)、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の他方向への移動が減速されて停止され(図10(a)の(7)参照)、被処理体1を保持した保持部30が停止される。
なお、図10では、保持部30が固定位置に対して、一方向と他方向へ一往復された態様を示しているが、これに限られることはなく、以下の実施例で示すように複数回往復されてもよい。
ところで、第3の実施の形態では、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なり、従駆動ステージである第一上方ステージ10をより小型化することができる。このため、安価にレーザ加工用ステージを作成することができ、かつ、レーザ加工用ステージを省エネで駆動することができる点で優れている。
なお、本実施の形態では、第一下方ステージ20と比較して第一上方ステージ10の長さは短くなっており、第一下方ステージ20が主駆動ステージとして機能し、第一上方ステージ10が従駆動ステージとして機能する態様からなっているが、これに限られることはない。すなわち、第一上方ステージ10と比較して第一下方ステージ20の長さが短くなっており、第一上方ステージ10が静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の主たる駆動を担う主駆動ステージとして機能し、第一下方ステージ20が静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の従たる駆動を担う従駆動ステージとして機能する態様からなってもよい。
(第3の実施の形態の実施例)
次に、このような構成からなる本実施の形態の実施例について述べる。なお、図11(a)−(e)の各々は図6(a)−(e)の各々に対応した図であり、図11(a)−(e)の各々における単位は図6(a)−(e)の各々における単位と同一である。
まず、静止系において、保持部30がX方向の正方向に移動され始める。この際、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10をX方向の正方向に加速度a=1で加速させる(図11(a)の横軸0t〜10t、参照)。他方、第一上方ステージ10による保持部30の移動は行われない(図11(b)の横軸0t〜10t、参照)。
そして、静止系において保持部30が所定の速度(図11(c)において10v)まで加速されると、加速が停止されて、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が等速(v=10v)で移動される(図11(a)の横軸10t〜30t、参照)。
そして、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の距離だけ移動される、言い換えれば第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10が所定の時間だけ(本実施例では30tまで)移動されると、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は加速度a=−1で減速され始める(図11(a)の横軸30t〜40t、参照)。このとき、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向に加速度a=1で加速され始める(図11(b)の横軸30t〜40t、参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向で相対的に減速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に加速されることとなる(図11(a)(b)の横軸30t〜40t、参照)。
そして、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動が停止されるのに対して(図11(a)の横軸40t、参照)、第一上方ステージ10によって保持部30が所定の速度(v=−10v)まで加速される(図11(b)の横軸40t、参照)。その結果、静止系における保持部30の速度が所定の値(v=−10v)まで達することとなる。
次に、移動方向を反転するために、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は一旦停止される(図11(a)の横軸40t〜45t、参照)。他方、この間、第一上方ステージ10によって保持部30は等速(v=−10v)で移動され続ける(図11(b)の横軸40t〜45t、参照)。
次に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向に加速度a=1で加速され始める(図11(a)の横軸45t参照)。このとき、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図11(b)の横軸45t参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に加速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の負方向で相対的に減速されることとなる(図11(a)(b)の横軸45t〜55t、参照)。ここで、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速の絶対値が同じ値となっているので、静止系において保持部30は等速(v=−10v)で移動されることとなる(図11(c)の横軸45t〜55t、参照)。
その後、第一上方ステージ10による保持部30の移動は停止される(図11(b)の横軸55t〜75t、参照)。他方、この間、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10は等速(v=−10v)で移動され続ける(図11(a)の横軸55t〜75t、参照)。
次に、第一上方ステージ10によって保持部30は、X方向の正方向へ加速度a=1で加速され始める(図11(b)の横軸75t参照)。このとき、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10のX方向の負方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図11(a)の横軸75t参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の負方向で相対的に減速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向で相対的に加速されることとなる(図11(a)(b)の横軸75t〜85t、参照)。
次に、移動方向を反転するために、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の移動は一旦停止される(図11(a)の横軸85t〜90t、参照)。他方、この間、第一上方ステージ10によって保持部30は等速(v=10v)で移動され続ける(図11(b)の横軸85t〜90t、参照)。
次に、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向に加速度a=1で加速され始める(図11(a)の横軸90t参照)。このとき、第一上方ステージ10による保持部30のX方向の正方向への移動が加速度a=−1で減速され始める(図11(b)の横軸90t参照)。この結果、第一下方ステージ20によって第一上方ステージ10がX方向の正方向で相対的に加速されるとともに、第一上方ステージ10によって保持部30がX方向の正方向で相対的に減速されることとなる(図11(a)(b)の横軸90t〜100t、参照)。ここで、第一下方ステージ20による第一上方ステージ10の加速の絶対値と第一上方ステージ10による保持部30の減速の絶対値が同じ値となっているので、静止系において保持部30は等速(v=10v)で移動されることとなる(図11(c)の横軸90t〜100t、参照)。以降は、処理されている被処理気体の加工が終了するまで上述した工程が繰り返し行われる。
上述の実施例のように、本実施の形態によれば、図11(e)に示すように、静止系における保持部30のX方向における変位量(x1+x2)が−125d〜+275dまでとなっており長いストロークを確保することができ、より大きな被処理体1を加工することができる。また、主駆動ステージである第一下方ステージ20のストローク(0d〜300d)に対して、従駆動ステージである第一上方ステージ10のストローク(−150d〜0d)を短くすることができ、第一上方ステージ10を小さくすることができるので、第一下方ステージ20が第一上方ステージ10を駆動する際に加わる負荷を小さくすることができる。
また、本実施の形態によっても、上述した実施例のように、静止系において、被処理体1の移動方向が切り替わる際にかかる時間を大幅に削減することができ、かつ、被処理体1の停止時間を無くすことができる。この結果、加工方向の変更時、すなわち移動方向の切り替時に被処理体1へのエネルギー入力を一定にすることができ、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、保持部30の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
第4の実施の形態
次に、図12(a)(b)および図13(a)(b)により、本発明の第4の実施の形態について説明する。
本実施の形態では、上記のような第一上方ステージ10および第一下方ステージ20に加えて、第一下方ステージ20が載置され、この第一下方ステージ20を移動させる第二上方ステージ60と、第二上方ステージ60が載置され、この第二上方ステージ60を移動させる第二下方ステージ70と、がさらに設けられている。なお、図12(a)(b)は、第1の実施の形態または第2の実施の形態における第一上方ステージ10および第一下方ステージ20に加えて、第二上方ステージ60と、第二上方ステージ60と同じ長さからなる第二下方ステージ70がさらに設けられている態様である。また、図13(a)(b)は、第3の実施の形態における第一上方ステージ10および第一下方ステージ20に加えて、静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の主たる駆動を担う第二下方ステージ70と、静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の従たる駆動を担う第二上方ステージ60がさらに設けられている態様である。
このうち、第二上方ステージ60は、第一下方ステージ20が載置される第二上方載置台62と、所定の別方向(本実施の形態では、図12(b)および図13(b)の「Y方向」)に延在する第二上方軸66と、第二上方軸66に連結されて第二上方載置台62を第二上方軸66に沿って移動させる駆動力を付与する第二上方駆動部65と、を有している。また、第二下方ステージ70は、第二上方ステージ60が載置された第二下方載置台72と、所定の別方向(本実施の形態では、図12(b)および図13(b)の「Y方向」)に延在する第二下方軸76と、第二下方軸76に連結されて第二下方載置台72を第二下方軸76に沿って移動させる駆動力を付与する第二下方駆動部75と、を有している。また、第二上方駆動部65と第二下方駆動部75に、制御部50が接続されており、この制御部50からの信号を受けて、第二上方駆動部65と第二下方駆動部75が制御される。
なお、本実施の形態では、第一上方軸16および第一下方軸26がX方向で互いに平行になり、第二上方軸66および第二下方軸76がY方向で互いに平行になり、第一上方軸16および第一下方軸26と、第二上方軸66および第二下方軸76とが直交している。しかしながら、第一上方軸16および第一下方軸26と、第二上方軸66および第二下方軸76とは互いに直交している必要は必ずしもなく、例えば、互いに平行な第一上方軸16および第一下方軸26が、互いに平行な第二上方軸66および第二下方軸76に対して、30°や45°といった所望の角度だけ傾斜させた状態で配置することもできる。
第4の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態、第2の実施の形態または第3の実施の形態と略同一の態様となっている。より具体的には、図12(a)(b)に示す第4の実施の形態においては、その他の構成は、第1の実施の形態または第2の実施の形態と略同一の態様となり、図13(a)(b)に示す第4の実施の形態においては、その他の構成は、第3の実施の形態と略同一の態様となっている。
図12(a)(b)および図13(a)(b)に示す第4の実施の形態において、図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)に示す第1の実施の形態、図6(a)−(e)乃至図8(a)−(e)に示す第2の実施の形態および図9−図11(a)−(e)に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図12(a)(b)に示す第4の実施の形態において、第1の実施の形態に対応する態様においては、制御部50は、静止系において(固定位置を基準として)保持部30の移動方向を切り替える際に、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20を切り替える前の方向に相対的に移動させるとともに第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60を切り替わった後の方向に相対的に移動させる、または、第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60を切り替える前の方向に相対的に移動させるとともに第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20を切り替わった後の方向に相対的に移動させるように構成されている。
図12(a)(b)に示す第4の実施の形態において、第2の実施の形態に対応する態様においては、制御部50からの信号によって、同一方向で第二上方ステージ60が第一下方ステージ20を相対的に加速するとともに第二下方ステージ70が第二上方ステージ60を相対的に減速する、または、同一方向で第二上方ステージ60が第一下方ステージ20を相対的に減速するとともに第二下方ステージ70が第二上方ステージ60を相対的に加速することで、静止系において第一下方ステージ20(ひいては保持部30で保持された被処理体1)を等速で移動させる態様になっている。
また、制御部50が、静止系において第一下方ステージ20を一方向で加速する際に、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20を当該一方向で相対的に加速するとともに第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60を当該一方向と逆方向で相対的に減速する、または、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20を当該一方向と逆方向で相対的に減速するとともに第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60を当該一方向で相対的に加速するように構成されている。
さらに、制御部50が、静止系において第一下方ステージ20を一方向で減速する際に、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20を当該一方向で相対的に減速するとともに第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60を当該一方向と逆方向で相対的に加速する、または、第二上方ステージ60によって第一下方ステージ20を当該一方向と逆方向で相対的に加速するとともに第二下方ステージ70によって第二上方ステージ60を当該一方向で相対的に減速するように構成されている。
なお、図13(a)(b)に示す第4の実施の形態においては、第二下方ステージ70が静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の主たる駆動を担う主駆動ステージを構成し、第二上方ステージ60が静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の従たる駆動を担う従駆動ステージを構成している。しかしながら、このような態様に限られることはなく、第二上方ステージ60と比較して第二下方ステージ70の長さが短くなっており、第二上方ステージ60が静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の主たる駆動を担う主駆動ステージとして機能し、第二下方ステージ70が静止系において保持部30を移動させる際に当該保持部30の従たる駆動を担う従駆動ステージとして機能する態様からなってもよい。
ところで、図示しないが、図12(a)(b)に示された第二上方ステージ60および第二下方ステージ70と図13(a)(b)に示された第一上方ステージ10および第一下方ステージ20が組み合わされてもよいし、また、図13(a)(b)に示された第二上方ステージ60および第二下方ステージ70と図12(a)(b)に示された第一上方ステージ10および第一下方ステージ20が組み合わされてもよい。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態、第2の実施の形態および第3の実施の形態で述べた効果を、直交する二方向で達成することができる。このため、被処理体1を様々なパターンで加工する場合においても、第1の実施の形態、第2の実施の形態および第3の実施の形態で述べた効果を得ることができる。
例えば、直交する二方向で、静止系において、被処理体1の移動方向が切り替わる際にかかる時間を大幅に削減することができ、かつ、被処理体1の停止時間を無くすことができる。この結果、直交する二方向で、加工方向の変更時、すなわち移動方向の切り替時に被処理体1へのエネルギー入力を一定にすることができ、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、直交する二方向で、第一下方ステージ20の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
第5の実施の形態
次に、図14および図15(a)(b)によって、本発明の第5の実施の形態について説明する。上述した第1の実施の形態は、第一上方ステージ10が載置されるとともに第一下方軸26を有し、第一上方ステージ10を第一下方軸26に沿って移動させる第一下方ステージ20を備えたものであったが、本実施の形態では、このような第一下方ステージ20を用いていない。その代わりに、本実施の形態では、レーザ照射部80を所定の方向に移動させるレーザ移動部81が用いられている。そして、制御部50が、静止系において(固定位置を基準として)保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10(第一上方ステージ10に対応している)によって保持部30を減速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と逆の方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と同じ方向で減速させる、または、静止系において保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10によって保持部30を減速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と同じ方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と逆の方向で減速させる構成からなっている。その他の構成は図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)に示す第1の実施の形態と略同一である。
図14および図15(a)(b)に示す第5の実施の形態において、図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態によるレーザ加工装置は、レーザ光Lを照射するレーザ照射部80と、レーザ照射部80を所定の方向に移動させるレーザ移動部81と、レーザ照射部80から照射されるレーザ光Lによって加工される被処理体1を保持する保持部30と、保持部30が載置されるとともに駆動軸16(第一上方軸16に対応している)を有するとともに、保持部30を駆動軸16に沿って移動させるステージ10と、レーザ移動部81およびステージ10の駆動を制御する制御部50と、を備えている。
そして、レーザ移動部81によってレーザ照射部80が移動される所定の方向と、駆動軸16が延在する直線が、同じ方向の成分を含んでいる。
本実施の形態によれば、制御部50が、静止系において保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10によって保持部30を減速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と逆の方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と同じ方向で減速させる、または、静止系において保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10によって保持部30を減速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と同じ方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにレーザ移動部81によってレーザ照射部80を保持部30の移動方向と逆の方向で減速させる。このため、本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。以下に実施例を示す。
(実施例)
まず、保持部30が図14の右側に加速され始める。そして、保持部30の移動速度が所定の速度に達すると、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=10v)で図14の右側に移動されることとなる。このとき、レーザ照射部80は停止されている(図15(a)の(0)〜(2)参照)。その後、保持部30の右側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、レーザ照射部80が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図15(a)の(2)〜(3)参照)。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。そして、保持部30が停止され、この間、レーザ照射部80は所定の速度(例えば、v=−10v)で図14の左側へ移動され続けることとなる(図15(a)の(3)〜(4)参照)。
その後、保持部30が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める。このとき、レーザ照射部80の移動が左側で減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。そして、保持部30の移動速度が所定の速度(例えば、v=−10v)に達するときに、レーザ照射部80の移動が停止される(図15(a)の(4)〜(5)参照)。その後、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=−10v)で図14の左側に移動されることとなる。このとき、レーザ照射部80は停止されている(図15(a)の(5)〜(6)参照)。その後、保持部30の左側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、レーザ照射部80が右側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図15(a)の(6)〜(7)参照)。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。そして、保持部30が停止され、この間、レーザ照射部80は所定の速度(例えば、v=10v)で図14の右側へ移動され続けることとなる(図15(a)の(7)〜(8)参照)。その後、保持部30が図14の右側に加速される。このとき、レーザ照射部80の右側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める(図15(a)の(8)〜(9)参照)。その後は、上述した工程が繰り返し行われる。
また別の態様としては、まず、保持部30が図14の右側に加速され始める。そして、保持部30の移動速度が所定の速度に達すると、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=10v)で図14の右側に移動されることとなる。このとき、レーザ照射部80は停止されている(図15(b)の(0)〜(2)参照)。その後、保持部30の右側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、レーザ照射部80が右側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図15(b)の(2)〜(3)参照)。そして、保持部30が停止され、この間、レーザ照射部80は所定の速度(例えば、v=10v)で図14の右側へ移動され続けることとなる(図15(b)の(3)〜(4)参照)。
その後、保持部30が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める。このとき、レーザ照射部80が右側で減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。そして、保持部30の移動速度が所定の速度(例えば、v=−10v)に達するときに、レーザ照射部80の移動が停止される(図15(b)の(4)〜(5)参照)。その後、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=−10v)で図14の左側に移動されることとなる。このとき、レーザ照射部80は停止されている(図15(b)の(5)〜(6)参照)。その後、保持部30の左側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、レーザ照射部80が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図15(b)の(6)〜(7)参照)。そして、保持部30が停止され、この間、レーザ照射部80は所定の速度(例えば、v=−10v)で図14の左側へ移動され続けることとなる(図15(b)の(7)〜(8)参照)。その後、保持部30が右側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める。このとき、レーザ照射部80が右側で減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める(図15(b)の(8)〜(9)参照)。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。その後は、上述した工程が繰り返し行われる。
このように、本実施の形態によっても、被処理体1の移動方向が切り替わる際において、被処理体1に対してレーザ光Lの照射位置が等速で移動されない時間を大幅に削減することができる。この結果、加工方向の変更時、すなわち移動方向の切り替時に被処理体1へのエネルギー入力を一定にすることができ、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、保持部30の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
第6の実施の形態
次に、図16より、本発明の第6の実施の形態について説明する。上述した第1の実施の形態は、第一上方ステージ10が載置されるとともに第一下方軸26を有し、第一上方ステージ10を第一下方軸26に沿って移動させる第一下方ステージ20を備えたものであったが、本実施の形態では、このような第一下方ステージ20を用いていない。その代わりに、本実施の形態では、レーザ照射部80から照射されたレーザ光Lを所定の方向にスキャンさせるスキャン部91が用いられている。そして、制御部50が、静止系において(固定位置を基準として)保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10(第一上方ステージ10に対応している)によって保持部30を減速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と逆の方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と同じ方向で減速させる、または、静止系において保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10によって保持部30を減速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と同じ方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と逆の方向で減速させる構成からなっている。その他の構成は図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)に示す第1の実施の形態と略同一である。
図16に示す第6の実施の形態において、図1(a)(b)乃至図5(a)−(c)に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態によるレーザ加工装置は、レーザ光Lを照射するレーザ照射部80と、レーザ照射部80から照射されたレーザ光Lを所定の方向にスキャンさせるスキャン部91と、レーザ照射部80から照射されるレーザ光Lによって加工される被処理体1を保持する保持部30と、保持部30が載置されるとともに駆動軸16(第一上方軸16に対応している)を有するとともに、保持部30を駆動軸16に沿って移動させるステージ10(第一上方ステージ10に対応している)と、スキャン部91およびステージ10の駆動を制御する制御部50と、を備えている。
そして、スキャン部91によってスキャンされるレーザ光Lの所定の方向と、駆動軸16が延在する直線が、同じ方向の成分を含んでいる。
本実施の形態によれば、制御部50が、静止系において保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10によって保持部30を減速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と逆の方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と同じ方向で減速させる、または、静止系において保持部30の移動方向を切り替える前に、ステージ10によって保持部30を減速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と同じ方向で加速させ、かつ、静止系において保持部30の移動方向を切り替えた後で、ステージ10によって保持部30を加速するとともにスキャン部91によってレーザ光の照射位置を保持部30の移動方向と逆の方向で減速させる。このため、本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。以下に実施例を示す。
(実施例)
まず、保持部30が図16の右側に加速され始める。そして、保持部30の移動速度が所定の速度に達すると、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=10v)で図16の右側に移動されることとなる。このとき、スキャン部91は停止されている(図17(a)の(0)〜(2)参照)。その後、保持部30の右側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、スキャン部91によってレーザ光Lの照射位置が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図17(a)の(2)〜(3)参照)。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。そして、保持部30が停止され、この間、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置は所定の速度(例えば、v=−10v)で図16の左側へ移動され続けることとなる(図17(a)の(3)〜(4)参照)。
その後、保持部30が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める。このとき、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置の移動が左側で減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。そして、保持部30の移動速度が所定の速度(例えば、v=−10v)に達するときに、スキャン部91が停止される(図17(a)の(4)〜(5)参照)。その後、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=−10v)で図16の左側に移動されることとなる。このとき、スキャン部91は停止されている(図17(a)の(5)〜(6)参照)。その後、保持部30の左側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置が右側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図17(a)の(6)〜(7)参照)。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。そして、保持部30が停止され、この間、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置は所定の速度(例えば、v=10v)で図16の右側へ移動され続けることとなる(図17(a)の(7)〜(8)参照)。その後、保持部30が右側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める。このとき、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置が右側で減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める(図17(a)の(8)〜(9)参照)。その後は、上述した工程が繰り返し行われる。
また別の態様としては、まず、保持部30が図16の右側に加速され始める。そして、保持部30の移動速度が所定の速度に達すると、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=10v)で図16の右側に移動されることとなる。このとき、スキャン部91は停止されている(図17(b)の(0)〜(2)参照)。その後、保持部30の右側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、スキャン部91によってレーザ光Lの照射位置が右側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図17(b)の(2)〜(3)参照)。その後、保持部30が停止され、この間、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置は所定の速度(例えば、v=10v)で図16の右側へ移動され続けることとなる(図17(b)の(3)〜(4)参照)。
その後、保持部30が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める。このとき、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置の移動が右側で減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。そして、保持部30の移動速度が所定の速度(例えば、v=−10v)に達するときに、スキャン部91が停止される(図17(b)の(4)〜(5)参照)。その後、保持部30は、所定の間、当該所定の速度(例えば、v=−10v)で図16の左側に移動されることとなる。このとき、スキャン部91は停止されている(図17(b)の(5)〜(6)参照)。その後、保持部30の左側の移動が減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める。このとき、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置が左側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める(図17(b)の(6)〜(7)参照)。その後、保持部30が停止され、この間、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置は所定の速度(例えば、v=−10v)で図16の左側へ移動され続けることとなる(図17(b)の(7)〜(8)参照)。その後、保持部30が右側へ加速(例えば、加速度a=1で加速)され始める。このとき、スキャン部91によるレーザ光Lの照射位置の移動が左側で減速(例えば、加速度a=−1で減速)され始める(図17(b)の(8)〜(9)参照)。このため、保持部30で保持された被処理体1に対するレーザ光Lの照射位置が等速で移動されることとなる。その後は、上述した工程が繰り返し行われる。
このように、本実施の形態によっても、被処理体1の移動方向が切り替わる際において、被処理体1に対してレーザ光Lの照射位置が等速で移動されない時間を大幅に削減することができる。この結果、加工方向の変更時、すなわち移動方向の切り替時に被処理体1へのエネルギー入力を一定にすることができ、加工ピッチが乱れたり、同じ位置を重ねてレーザ加工してしまってオーバーラップ率が乱れたりすることを防止することができる。また、保持部30の移動方向を切り替えるタイミングを容易に合わせることもできる。
ところで、上記の各実施の形態では、ボールねじなどの実際に存在する「軸」を想定して第一上方軸16、第一下方軸26、第二上方軸66および第二下方軸76を記載しているが、これに限られることはない。すなわち、本願において第一上方軸、第一下方軸、第二上方軸および第二下方軸は仮想的な「軸」であってもよく、例えばリニアモータテーブルのように仮想軸に沿って移動される態様も含まれている。