以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1乃至図14は本発明による代表的な一実施形態を説明するための図である。このうち図1は透過型表示装置および面光源装置の概略構成を示す断面図であり、図2は光学部材の光学シートの斜視図であり、図3は光学シートの上面図であり、図4は図2のIV−IV線に沿った断面図であり、図5は図2のV−V線に沿った断面図である。また、図6は主に光学シートの作用を説明するための図であり、図7〜10は主に光学シートの製造方法を説明するための図である。さらに、図11は、光学シートの光学特性を評価する方法を説明するための図であり、図12〜図14は、光学シートの光学特性を示すグラフである。
図1に示された透過型表示装置10は、透過型表示部15と、透過型表示部15の背面側(観察者とは反対側または入光側)に配置され透過型表示部15を背面側から面状に照らす面光源装置20と、を備えている。透過型表示部15は、例えば、液晶表示パネル(LCDパネル)から構成され、この場合、透過型表示装置10は液晶表示装置として機能する。ここでLCDパネルとは、ガラス等からなる一対の支持板と、支持板間に配置された液晶層と、液晶分子の配向を一つの画素を形成する領域毎に電場によって制御する電極と、該液晶層を挾持する1対の偏光板と、を有するパネルである。支持板間の液晶は、一つの画素を形成する領域毎にその配向を変化させられ得るようになっている。この結果、液晶表示パネル15は、面光源装置20からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、画像を形成するようになる。
本実施の形態において、透過型表示部15の面光源装置20に対向する入光側面は平滑面として形成され、且つ、透過型表示部15と光学シート30との間に光拡散シートが介在し無い構成となっている。なお、本明細書で用いる「平滑」とは、光学的な意味合いでの平滑を意味するものである。すなわち、ここでは、或る程度の割合の可視光が、透過型表示部15の入光側面においてスネルの法則を満たしながら屈折するようになる程度を意味している。したがって、例えば、透過型表示部15の入光側面の十点平均粗さRz(JISB0601(1994年版))が最短の可視光波長(0.38μm)以下となっていれば、十分、平滑に該当する。
次に、面光源装置20について説明する。面光源装置20は、図1に示すように、光源25と、光を拡散させる光拡散シート28と、透過光の進行方向を偏向させる光学部材29と、を有している。図1に示すように、光拡散シート28は、光学部材29よりも入光側に位置し、光源25に対向して配置されている。また、光学部材29は、第1光学シート30および第2光学シート40を含んでいる。第1光学シート30は、第2光学シート40の入光側に配置され、光拡散シート28と第2光学シート40との間に位置している。そして、第2光学シート40は、面光源装置20の最出光側に配置され、発光面(出光側面)21aを構成している。
面光源装置20は、例えばエッジライト(サイドライト)型等の種々の形態で構成され得るが、本実施の形態においては、直下型のバックライトユニットとして構成されている。このため、光源25は、光拡散シート28や光学部材29の入光側において光拡散シート28や光学部材29と対面するようにして配置されている。また、光源25は、光拡散シート28の側に開口部(窓)を形成された箱状の反射板22によって背面側から覆われている。
なお、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学部材29等を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図1、図2、図4〜6においては上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学部材29等を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側のことである。
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
さらに、本明細書において「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、光学シート30,40のシート面、光学部材29のシート面、光拡散シート28のシート面、面光源装置20の発光面21a、および、透過型表示装置10の表示面は、互いに平行となっている。さらに、本明細書において「正面方向」とは、面光源装置20の発光面21aのシート面に対する法線の方向nd(例えば図1参照)であり、また、透過型表示装置10の表示面の法線方向や光学シート30,40のシート面の法線方向等にも一致する。
光源25は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状のLED(発光ダイオード)や白熱電球、面状のEL(電場発光体)等の種々の態様で構成され得る。本実施の形態においては、図1および図6(二点鎖線)に示すように、光源25は、これらの図において紙面に直交する方向に線状に延びる複数の冷陰極管を有している。反射板22は、光源25からの光を透過型表示部15の側へ向けるための部材であり、反射板22の少なくとも内側表面は、例えば金属等の高い反射率を有する材料からなっている。
光拡散シート28は、入射光を拡散させ、好ましくは入射光を等方拡散させ、光源25の構成に応じた輝度ムラを緩和し、輝度の面内分布を均一化させて光源25の像を目立たなくさせるためのシート状部材である。このような光拡散シート28として、基部と、基部内に分散され光拡散機能を有した光拡散性粒子と、を含むシートが用いられ得る。一例として、反射率の高い材料から光拡散性粒子を構成することにより、あるいは、基部をなす材料とは異なる屈折率を有する材料から光拡散性粒子を構成することにより、光拡散シート28に、光拡散機能を付与することができる。また、第1光学シート30の入光側面との密着を防止する観点から、光拡散シート28の表面は、図1に示すように、粗面化されていることが好ましい。
次に、光学部材29について詳述する。
まず、光学部材29の構成を概略的に説明する。上述したように、光学部材29は、第1光学シート30および第2光学シート40を有している。第1光学シート30は、シート状の本体部32を有する。本体部32は、一方の面即ち出光側面32aに、プリズム面を構成する第1単位プリズム(第1単位形状要素、第1単位光学要素)35を設けられている。また、本体部32は、他方の面即ち入光側面32bに平坦面を備える。該プリズム面の構成は、本体部32の一方の面32a上に、線状に延在する柱状体から成る第1単位プリズム(第1単位形状要素、第1単位光学要素)35を、互いに延在方向(稜線方向)が平行になる様にして、該延在方向と直交する方向(配列方向)に、多数、並べられてなる。同様に、第2光学シート40は、シート状の本体部42を有する。本体部42は、一方の面即ち出光側面42aに、プリズム面を構成する第2単位プリズム(第2単位形状要素、第2単位光学要素)45を設けられている。また、本体部42は、他方の面即ち入光側面42bに平坦面を備える。該プリズム面の構成は、本体部42の一方の面(シート面)42a上に、線状に延在する柱状体から成る第2単位プリズム(第2単位形状要素、第2単位光学要素)45を、互いに延在方向(稜線方向)が平行になる様にして、該延在方向と直交する方向(配列方向)に、多数、並べられてなる。上述したように、第2光学シート40は、面光源装置20の最も出光側に配置されている。したがって、第2光学シート40の第2単位プリズム45は透過型表示部15の入光側面と接触するようになる。図1に示すように、第1光学シート30の単位プリズム35の配列方向と第2光学シート40の単位プリズム45の配列方向とが交差、さらに限定的には、第1光学シート30の単位プリズム35の配列方向と第2光学シート40の単位プリズム45の配列方向とが直交するようにして、第1光学シート30および第2光学シート40が重ねて配置されている。
本実施の形態において、第1光学シート30および第2光学シート40は、同一の形状的な構成を有し得る。すなわち、本実施の形態において、第1光学シート30の本体部32と、第2光学シート40の本体部42とが同一の形状を有し得る。また、本実施の形態において、第1光学シート30における第1単位プリズム35の形状および第1単位プリズム35の配列は、それぞれ、第2光学シート40における第2単位プリズム45の形状および第2単位プリズム45の配列と同様に構成され得る。さらには、単位プリズムの配列方向が互いに交差するように重ね合わされた同一構成からなる二枚の光学シートを、それぞれ、第1光学シート30および第2光学シート40として用いることができる。
このため、図1〜図5において、第1光学シート30に対しては30番台で符号を付すとともに、第1光学シート30と形状的に同様に構成され得る第2光学シート40の部分に対しては、40番台で同様の符号を付している。また、以下において、「第1」および「第2」を省略するとともに30番台および40番台の符号の両方を付して説明する場合には、第1光学シート30および第2光学シート40の両方について説明することとする。例えば、「単位プリズム35,45」とは、第1光学シート30の第1単位プリズム35および第2光学シート40の第2単位プリズム45の両方を指し示すこととする。
なお、本明細書において、「プリズム」の語は、断面形状が直線状の外輪郭によって構成される所謂狭義のプリズムの他、断面形状が曲線状の外輪郭によって構成される所謂狭義のレンズ、及び、断面形状が直線状の外輪郭と断面形状が曲線状の外輪郭とによって構成される単位光学要素を包含する広義の意味で用いる。
ところで、このような第1光学シート30および第2光学シート40は、主に、入光側から入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させ正面方向の輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)を発揮するように、構成されている。しかしながら、線状の単位プリズムを有する光学シートを面光源装置に組み込んだ場合、正面方向輝度が期待された設計値よりも低下してしまうことがある。とりわけ、二枚の光学シートが組み込まれた面光源装置では、正面方向輝度が期待された設計値よりも大幅(数%)に低下してしまうことがある。
本件発明者らは、この不具合を解決すべく、鋭意研究を重ねた。研究の結果として、本件発明者らは、まず、光学シートの光学特性を評価する方法として、図11に示すような方法を見出し、光学シートの光学特性を正確に評価することを試みた。この評価方法においては、現実に光学シートを使用する場合とは逆経路で光を入射させる事に特徴が有る。プリズム面、即ち、光学シート30,40対して其の単位プリズム35,45が形成されている側の出光面(「一方の面」とも呼稱する。本実施の形態による光学シート30,40においては出光側面。)側から、当該光学シートの入光側面の平坦面32b,42bの法線方向に進む平行光束を入射させる。そして、光学シートの単位プリズムが形成されていない側の平坦面32b,42b(本実施の形態による光学シート30,40においては入光側面)から出射させ、この面での輝度の角度分布を測定する。
平行光束が入射するプリズム面は、単位プリズムを構成する斜面(出光面である平坦面32b,42bは除く)の数に対応する数の切子面から成る。図2及び図4に図示する本実施形態の如く3角柱の単位プリズムからなる場合は、2群の切子面群からプリズム面が構成される。尚、ここで切子面(facet)とは、一定の傾きを有する平面であり、図2及び図4の如き光学シートの場合は、各単位プリズム35,45はこれら図面で言う左右の2つの切子面(斜面)を有する。以後、説明の便宜上、3角柱単位プリズムの2つの切子面を図2及び図4の如き方向から見ることを前提として、図の右側斜面を右(側)切子面、図の左側切子面を左(側)切子面、そして、同一構成に設計された各単位プリズムの右(側)切子面の集合体を右(側)切子面群、同一構成に設計された各単位プリズムの左(側)切子面の集合体を左(側)切子面群とも呼稱する。
さて、斯かる単位プリズムが幾何学上理想的な3角柱形状であると仮定した場合、単位プリズムの平行光束が入射した部分が、光学シートのシート面の法線方向および単位プリズムの配列方向の両方に平行な断面(以下においては、「光学シートの主切断面」とも呼ぶ)において各切子面は直線状となっている場合、図11に示すように、光学シートの単位プリズムが形成されていない側の面32b,42bから出射する出射光は、二次回折光を無視すれば、単位プリズムの切子面の傾斜角度および光学シートの屈折率によって特定される唯一の方向へ出射するようになる。
実際には、図11には図示を省略した多重反射屈折光(プリズム面及び平坦面の間で1回以上反射した後平坦面から出射する光)、単位プリズム内の屈折率揺らぎ、及び回折光の為に、該唯一の方向から外れた出射光成分も生じる。其の結果、出射光の輝度の角度分布は、出射光の輝度を縦軸に、又該平坦面(図11の評価法に於いては出射側面ではあるが、実際の光学シート使用時に於いては入光側面)の法線から測った角度を横軸に採ったグラフ上に示すと、計算によって算出される該唯一の方向を中心とした滑らかな釣鐘型の曲線を描く。
尚、図11に於いては説明の簡素化の為、左切子面群のうちの1切子面に入射する光束の経路のみ図示したが、現実には、通常の場合、入射光束の幅乃至径はプリズム周期よりも十分に大の為、入射光束は切子面群中の複数の右切子面及び左切子面に亙って入射する。
そのうち、図11に図示以外の左切子面に入射する光束の経路及び輝度の角度分布曲線も、各単位プリズムが同形状である限り、図11の場合と同様である。
一方、図11の各右切子面に入射する光束の経路及び輝度の角度分布曲線は、丁度図11に図示の左切子面に入射する光束の場合と左右対称となる。
しかしながら、本件発明者が実験を行ったところ、一定の断面形状を有して直線状に延びるとともに一定の高さを有した単位プリズムを含む光学シートについて主切断面内の各方向から輝度を測定することによって得られた輝度の角度分布では、2群何れの切子面群に対応する出射光成分についても、二以上のピークが存在するようになった。これは、見方を変えると、上記の理想的プリズムの持つべき滑らかな釣鐘型の出射光輝度の角度分布曲線中に凹み(dip)乃至欠損が生じたとも解し得る。
そして、本件発明者らが研究を進めたところ、光学シートの構成を適宜調節することにより、上述した評価方法で得られる光学シートの輝度の角度分布(曲線)を変化させ、より理想的な角度分布に近付けることができること、さらに、光学シートの輝度の角度分布が変化すると、当該光学シートを組み込んだ面光源装置の正面方向輝度が変化し、正面輝度の上昇が図られること、が知見された。また、本件発明者らは、平行光束を光学シートのプリズム面に入射させた状態で光学シートの単位プリズムが形成されていない側の面で測定され、輝度を表す縦軸と測定角度を表す横軸とを有するグラフ上にて表された輝度の角度分布が、以下の(a)、(b)および(c)のいずれか一つを満たす場合に、当該光学シートを組み込んだ面光源装置の正面方向輝度を大幅に向上し、期待した正面方向輝度値または期待した正面方向輝度値に近い値を確保することができることを見出した。
(a)輝度の角度分布が輝度のピークを一つだけ含んでいる。すなわち、輝度の角度分布を示す線のグラフ上における傾きが、一回だけ、その符号(数の正と負を表す記号)を変化させる。
(b)輝度の角度分布において、最も輝度が高くなる第1輝度ピークの次に高い輝度を有する第2輝度ピークの値が、第1輝度ピークの値Imaxの0%より大きく10%以下となる。つまり、第2輝度ピークが大きな輝度値となっていない。
(c)第2輝度ピークの値が第1輝度ピークの値Imaxの10%を超える場合であって、第1輝度ピークと第2輝度ピークとの間で最も低い輝度となる輝度の谷部Ivと、第1輝度ピークを形成する山部分mp1および第2輝度ピークを形成する山部分mp2において輝度の角度分布に接する接線TL上の点であって輝度の谷部と同一の横軸座標をとる点と、の輝度軸(縦軸)上における輝度の差Idip(図12〜図14参照)が、第1輝度ピークの値Imaxの0%より大きく20%以下となる。つまり、一番大きい輝度のピークと二番目に大きい輝度のピークとの間に大きな輝度の低下が生じておらず、一番大きい輝度のピークと二番目に大きい輝度のピークとの分離が目立っていない。
なお、ここで輝度の角度分布における「輝度ピーク(輝度のピーク)」および「輝度谷部(輝度の谷部)」とは、輝度を縦軸に取ったグラフ上において、輝度の角度分布を示す線が、その傾きの符号(数の正と負を表す記号)を変化させる部分である。とりわけ、「輝度ピーク(輝度のピーク)」は、輝度の角度分布を示す線上において、その周囲よりも輝度の値が高くなる部分である。これは、輝度の角度分布曲線が微分可能な曲線である場合には其の極大値に相当する。一方、「輝度谷部(輝度の谷部)」は、輝度の角度分布を示す線上において、その周囲よりも輝度の値が低くなる部分である。これは、輝度の角度分布曲線が微分可能な曲線である場合には其の極小値に相当する。
ところで、前記の如く、特定の方法にて入射した光束は平坦面32b,42bから、切子面群の数に応じた数の方向に出射光を有する。例えば、図2及び図4の如く、単位プリズムが左右対称の3角柱の場合、左右1対の出射光が得られる(尚、図11では、前記の通り、説明の簡素化の為、右方向の出射光成分のみ、而かも輝度の角度分布は省略して図示している)。
実際の光学シートの評価の際には、複数方向の出射光成分のうち、最低限、任意の1方向成分について評価すれば足りる。少なくとも1方向成分の出射光が前記の(a)〜(c)の何れかの条件を満たせば、本願発明の效果は奏させられ、正面輝度の上昇が期待出来る。これは、後で詳述する樣に、実際に面光源装置中で光学シートを使用する際には、図11とは逆の経路で斜めに光源光を入射させ、プリズム面からの出射光を入光側面32b、42bの法線方向に偏向せしめるように設計する為である。実際には、図11では図示を略したが、切子面群の数に対応する数の方向からの入射光成分を各切子面群で入光側面32b、42bの法線方向に偏向せしめる。よって、前記特定の評価法に於いて、少なくとも、1方向成分の出射光が前記の(a)〜(c)の何れかの条件を満たせば、其の評価時の出射光の経路を逆進して入光側面32b、42bに入射する光源光成分については、法線方向に、損失を最小化した上で、プリズム面から出射する為、少なくとも其の寄与分は、法線輝度が向上する。勿論、前記特定評価方に於いて、2方向以上、更に好ましくは全方向成分の出射光成分について前記の(a)〜(c)の何れかの条件を満たせば、図1の如き構成の面光源装置に於ける法線輝度はより向上する。
以下、図1〜図5に戻って、第1光学シート30および第2光学シート40の具体的な構成を其の代表的な実施形態を例に詳細に説明していく。以下に説明する第1光学シート30および第2光学シート40は、上述の条件(a)、(b)および(c)のいずれか一つを充足可能であることが本件発明者らによる実験結果から確認された光学シートの一例である。
本体部32,42は、単位プリズム35,45を支持するシート状部材として機能する。図2および図4に示すように、本実施の形態において、本体部32,42の一方の面(本実施の形態においては、出光側面)32a,42a上には、単位プリズム35,45が隙間をあけることなく並べられていることにより、プリズム面(図2に於いて光学シート30,40の上側の凹凸面)が構成される。その一方で、図5に示すように、本実施の形態において、本体部32,42は、前記一方の面32a,42aに対向する他方の面32b,32bとして、光学シート30,40の入光側面をなす平坦な面を有している。また、本体部32,42は、拡散性粒子を含んでいないと共に入光側面も平滑面とされている。すなわち、本体部32,42は、光を散乱させる機能を有していない。
次に、単位プリズム35,45について説明する。上述したように、単位プリズム35,45は、本体部32,42の一方の面32a,42a上に並べて配列されている。図2および図3に示すように、単位プリズム35,45は、単位プリズム35,45の配列方向と交差する方向に線状、とりわけ本実施の形態においては直線状に、延びている。即ち、各単位プリズムは3角柱等の柱(状)体をなす。
図1に示すように、本実施の形態において、本体部32,42のシート面の法線方向ndから光学シート30,40を観察した場合、第1光学シート30の第1単位プリズム35の長手方向が各光源25の長手方向と平行となり、第2光学シート40の第2単位プリズム45の長手方向が各光源25の長手方向と直交している。図4は、本体部32,42のシート面の法線方向ndおよび単位プリズム35,45の配列方向の両方に平行な断面(光学シートの主切断面)において、光学シート30,40を示している。なお、図4に示された断面は、図2のIV−IV線に沿った断面にも対応している。
本実施の形態において、各単位プリズム35,45の主切断面における断面形状は、当該単位プリズム35,45の長手方向に沿って、概ね一定となっている。すなわち、各単位プリズム35,45は、概ね、柱体によって構成されている。しかしながら、図2によく示されているように、各単位プリズム35,45を構成する柱体の延びる方向については、各単位プリズム35,45の長手方向に沿って変化しており、結果として、各単位プリズムの突出高さは各単位プリズム35,45の長手方向に沿って変化している。したがって、各単位プリズム35,45は、概ね、種々の方向に延びる複数の略同一断面形状の柱体を、上面視において一直線となるように、繋ぎ合わせることによって構成されている。各単位プリズム35,45は、多数の平面をプリズム面として含んでいる。このため、単位プリズム35,45の配列方向と平行な方向から観察した場合(図2の矢印Aの方向から観察した場合)、各単位プリズム35,45は凹凸を形成する折れ線状の外輪郭を有するようになる。
図4に示すように、本実施の形態における各単位プリズム35,45の主切断面における断面形状は、出光側に突出する略三角形形状となっている。とりわけ、正面方向輝度を集中的に向上させるという観点から、主切断面における単位プリズム35,45の断面形状は二等辺三角形形状を含んでいるとともに、当該二等辺三角形形状の等辺の間に位置する頂角が本体部32,42の一方の面32a,42aから出光側に突出するように、各単位プリズム35,45が構成されている。また、光学シートの主切断面において、各単位プリズム35,45をなす二等辺三角形は、光学シートの法線方向に延び頂角を通過する対称軸を中心として、略線対称となっている。したがって、各単位プリズム35,45は、概ね、本体部の一方の面32a,42aに対する仰俯角が少し異なる方向に延びる複数の三角柱プリズムを接続することによって形成されている。
また、このように光学シートの主切断面における単位プリズム35,45の断面形状が略三角形形状であることから、図2に示すように、各単位プリズム35,45は稜線La有するようになる。この稜線Laは、光学シートの主切断面における各単位プリズム35,45の断面形状のうちの本体部32,42から最も離間した先端部36,46を、繋ぎ合わせてなるものである。図3に示すように、本実施の形態において、稜線Laは、上面視において、単位プリズム35,45の長手方向(延在方向)と平行に延びている。
なお、本明細書における「三角形形状」とは、厳密な意味での三角形形状のみでなく、製造技術における限界や成型時の誤差等を含む略三角形形状や、三角形形状と概ね同一の光学的機能を期待することが可能な略三角形形状などを含む。一具体例として、三角形形状は、三角形の頂点が丸くなっている形状等を含む。同様に、本明細書における「折れ線」とは、厳密な意味での折れ線のみでなく、製造技術における限界や成型時の誤差等を含んだ略折れ線等を含む。具体的には、方向の異なる線分を接続してなる折れ線において、方向の異なる線分が必ずしも直線の一部分である必要はなく、製造技術における限界や成型時の誤差等を原因として、後述する光学的機能を期待することが可能な範囲内で曲がっていてもよい。また、方向の異なる線分を接続してなる折れ線において、製造技術における限界や成型時の誤差等を原因として、後述する光学的機能を期待することが可能な範囲内で二つの線分の接続点が丸くなっていてもよい。
図5は、本体部32,42のシート面の法線方向ndおよび単位プリズム35,45の稜線方向の両方に平行であるとともに、単位プリズム35,45の稜線方向を通過する断面において、光学シート30,40を示している。なお、図5に示された断面は、図2のV−V線に沿った断面にも対応している。図5に示す断面において、稜線Laは凹凸を形成する折れ線として構成されている。なお、本実施の形態においては、上述したように、光学シート30,40の上面視において、稜線Laは単位レンズ30,40の長手方向と平行に延びる。このような態様において、単位プリズム30,40の配列方向と平行な方向(一例として、図2の矢印Aの方向)から観察した場合における各単位プリズム30,40の折れ線状の外輪郭は、図5における稜線Laの軌跡と一致する。
図5に示すように、凹凸を形成する折れ線Laによって、各単位プリズム35,45に対し、複数の凸部37,47が画定されるようになる。具体的には、本体部32,42のシート面に対する傾斜方向が異なる隣接する二つ線分の接合位置において、言い換えると、右上がりの線分と左上がりの線分との接続位置において、折れ線が区分けされ、そして、区分けされた一つの折れ線の区域が一つの凸部37,47を画定するようになる。
図5に示すように、画定された凸部37,47は、三角形や四角形の多角形形状を有するようになる。そして、各凸部37,47に対して、本体部32,42から最も離間した一つの頂部37a,47aが、点または線として画定されるようになる。光学シート30,40は、このような凸部37,47の頂部37a,47aを介して、隣接する他の部材、例えば透過型表示部15の入光側面に接触し得るようになる。
図5に示すように、一つの単位プリズム35,45に含まれる凸部37,47について、本体部32,42から最も離間した各凸部37,47の頂部37a,47aと本体部32,42の出光側面32a,42aとの間の本体部32,42の法線方向に沿った間隔(高さ)daは、一定ではなく、変動している。すなわち、一つの単位プリズム35,45に含まれる凸部37,47の本体部32,42からの高さdaは一定ではない。尚、斯かる凸部の頂部37a,47aの高さdaを測る(評価する)基準面は、隣接する単位プリズム35,45の谷部の最下端を通り本体部32,42の入光側面32b、42bと平行な面(実在面、仮想面何れでも可)とする。尚、本体部32,42と単位プリズム35,45とが別層から構成され、且つ該単位プリズム間の谷部と本体部との間の距離(厚み)が各単位プリズムの高さに比べて十分小さい場合は、設計実務上、本体部32,42の出光側面32a,42aを基準面と見做すこともできる。
光学シート30,40と隣接する他の部材との接触に起因した不具合の発生を防止する観点からは、一つの単位プリズム35,45に含まれる複数の凸部37,47のうちの当該単位プリズム35,45の長手方向に沿って隣り合う二つの凸部37,47について、本体部32,42から頂部37a,47aまでの高さdaが互いに異なっていることが好ましい。また、一つの単位プリズム35,45に含まれる複数の凸部37,47について、本体部32,42から頂部37a,47aまでの高さdaがすべて互いに異なっているとさらに好ましい。
また、図3に示すように、一つの単位プリズム35,45に含まれる凸部37,47の頂部37a,47aと、当該一つの単位プリズム35,45と隣り合う単位プリズム35,45に含まれる凸部37,47の頂部37a,47aとが、単位プリズム35,45の長手方向において同一位置に配置されないようになっていることが好ましい。すなわち、隣り合う単位プリズム35,45にそれぞれ含まれる凸部37,47の頂部37a,47aは、単位プリズム35,45の配列方向に並ばないように配置されていることが好ましい。このような配列によれば、光学シート30,40の凸部37,47の頂部37a,47aと当該光学シート30,40に隣接して配置された他の部材との接触が、透過型表示装置10を観察した際に、目立ってしまうことを防止することができるためである。
以上のような構成からなる単位プリズム35,45の具体例として、本体部32,42の一方の面32a,42a上での単位プリズム35,45の配列方向に沿った、単位プリズム35,45の底面の幅W(図4参照)を10μm〜500μmとすることができる。また、光学シート30,40のシート面への法線方向ndに沿った本体部32,42の一方の面32a,42aからの単位プリズム35,45の突出高さH(図4参照)を5μm〜250μmとすることができる。さらに、単位プリズム35,45の断面形状が二等辺三角形状である場合には、正面方向輝度を集中的に向上させる観点から、等辺の間に位置するとともに出光側に突出する頂角の角度θa(図4参照)が、80°以上110°以下となっていることが好ましく、90°であればさらに好ましい。
また、単位プリズム30,40の長手方向に沿った凸部37,47の配置ピッチは、製造方法に起因した制約や光学シート30,40と隣接する他の部材との接触に起因した不具合の発生を効果的に防止すること等を考慮して適宜設計され、一例として、70mm以上900mm以下とすることができる。同様に、本体部32,42の法線方向における稜線Laの振幅(高さの変動)も、製造方法に起因した制約や光学シート30,40と隣接する他の部材との接触に起因した不具合の発生を効果的に防止すること等を考慮して適宜設計され、可視光線の最大波長以上とする。一例として、1μm以上10μm以下とすることができる。
次に、以上のような構成からなる光学シート30,40の製造方法の一例について説明する。以下においては、単位プリズム35,45を、図7に示すような成型装置60を用いた賦型法でシート材52上に形成することによって、上述した光学シート30,40を作製する例を説明する。
まず、成型装置60について説明する。図7に示すように、成型装置60は、略円柱状の外輪郭を有した成型用型70を有している。円柱状成型用型70の外周面(側面)に該当する部分に、円筒状の型面(凹凸面)72が形成されている。円柱状からなる成型用型70は、円柱の外周面の中心を通過する中心軸線CA、言い換えると、円柱の横断面の中心を通過する中心軸線CAを有している。そして、成型用型70は、中心軸線CAを回転軸線として回転しながら(図7参照)、成型品としての光学シート30,40を成型するロール型として構成されている。
図9(b)および図10(a)に示すように、型面72には、光学シート30,40の単位プリズム35,45を賦型するための溝74が形成されている。図8には、この溝74の経路が点線で示されるとともに、溝74の長手方向に沿った深さの変動が実線で示されている。なお、図8(a)は型を模式的に示す斜視図であり、図8(b)は円周面状の型面72を切り開いて平面化して示す仮想的斜視図である。図8(a)に示すように、溝74は、型面72の中心軸線CAを中心とした一条の螺旋を描くように型面72上に形成されている。したがって、図8(b)において、溝74の経路を示す線分の右側端は、当該線分の下方に隣り合う線分の左側端に接続されている。図8(b)に示すように、溝74の深さは、溝74の長手方向に沿って、凹凸を形成する折れ線状に変化している。
なお、溝74の深さは、溝74の全長に亘って不規則に変動していることが好ましい。ただし、型70の製造の容易性を考慮すると、溝74の全長に亘って不規則に変動させることに代え、溝74の深さが不規則に変動する単位区間を繰り返し設けることによって、溝74の全長に亘る深さが決定されるようにしてもよい。この場合、後述する方法により光学シート30,40を製造するための成型用型70を作製する際に、溝74を機械加工により迅速かつ容易に形成することができる。
ただし、溝74の深さが不規則に変動する前記単位区間は長く設定することが好ましい。型面72上における溝74の全長に亘った深さの変動の規則性を弱めることができるからである。溝74の深さの変動は、この成型用型70を用いて作製される光学シート30,40の単位プリズム35,45の稜線Laの高さの変動と一致するようになる。そして、溝74の深さ変動の規則性が弱い場合、透過型表示部15の画素配列と単位プリズム35,45の稜線Laの高さ変動との干渉性を弱めることができ、結果として、この干渉性に起因した縞模様(モアレ)の発生を回避することができる。
また、溝74の深さが不規則に変動する単位区間の長さは、型面72をなす外周面(円周面)の円周長の整数倍とならないように設定されることが好ましい。当該区間の長さが型面72の円周長のn(nは自然数)倍となっている場合には、溝74の深さの変動が、当該溝74からn個分だけ中心軸線CAに沿ってずれた溝74の深さの変動と一致してしまう。この場合、モアレが発生しやすくなるだけでなく、表示装置10の観察者によって、凸部37,47の頂部37a,47aの位置が視認され得るようになる可能性すらあるためである。
このような成型用型70は、例えば、以下のようにして製造され得る。
まず、図9(a)に示すように、円筒状または円柱状からなる基材71をその中心軸線CAを中心として回転させながら、中心軸線CAに直交する方向にバイト78を移動させて、バイト78を基材71内に切り込ませる。
次に、図9(b)に示すように、バイト78が基材71内に切り込んだ状態で、中心軸線CAを中心として基材71を回転させるとともに、バイト78を中心軸線CAと平行な方向に移動させる。これにより、基材71の外周面に、螺旋状の溝74が形成されるようになる。図示された例においては、一条の溝74が、基材71の外周面上に隙間をあけることなく形成されている。
ところで、螺旋状に溝74を形成している間、バイト78は、中心軸線CAに直交する方向にも移動している。具体的には、バイト78は、中心軸線CAに直交する方向において、中心軸線CAに接近する向きに移動し、また、中心軸線CAから離間する向きにも移動する。この際、中心軸線CAに直交する方向へのバイト78の移動速度を、図10(d)に示すように、ステップ状に変化させる。すなわち、中心軸線CAに直交する方向へのバイト78の移動速度の加速度は0となる。この結果、図10(c)に示すように、溝74の形成中における、中心軸線CAに直交する方向へのバイト78の切り込量は折れ線状に変化するようになる。またこれにともなって、バイト78を中心軸線CAに直交する方向へ進退させながら形成された溝78の深さは、図10(b)に示すように、バイト78の切り込量の変化にともなって折れ線状に変化する。さらに、このようにして作製された溝74によって賦型される単位プリズム35,45の高さも、バイト78の切り込量の変化にともなって折れ線状に変化するようになる。なお、図10(a)は、以上のようにして形成される溝74を示す上面図である。
ところで、バイト78の移動はサーボモータ等の機構を用いて行われる。しかしながら、サーボモータ等の機構によってバイト78の移動が制御される場合、実際には、バイト78をプログラム通りの所定の速度で所定の位置に移動させることは、市販されて使用に供されている型製造用の装置の技術水準に照らして、現実的には困難である。このため、実際の加工装置においては、バイト78の移動速度をステップ状に変化させるようにプログラムした場合であっても、プログラム通りに厳密にステップ状に変化させることができないこともあり得る。さらには、このような応答の遅れを見越し、プログラムとは異なる速度でバイト78を移動させることにより、バイト78が所定の時間に所定の位置に到達するように制御されることもある。
以上のことから、本来ステップ状にバイト78の移動速度を変化させるように試みた場合であっても、一例として図10に二点鎖線で示すように、型の製造技術の限界から厳密な意味においてバイト78の移動をステップ状に変化させることができないことがあるとともに、結果として、型70の溝74の深さ、並びに、この型70を用いて作製された単位プリズム35,45の稜線Laの高さを折れ線状に変化させることができないこともある。そして、上述したように本発明においては、本来意図しながらも製造技術における限界や成型時の誤差等によって厳密な意味における折れ線ではない形も「折れ線」として取り扱う。同様に、本来意図しながらも製造技術における限界や成型時の誤差等によって厳密な意味におけるステップ状ではないバイト78の移動速度の変化も、本発明における「ステップ状」の移動速度の変化として取り扱う。
以上にようにして、単位プリズム35,45を賦型するための螺旋状の溝74を基材71に形成することにより成型用型70を製造することができる。次に、このような成型装置60を用いて光学シート30を作製する方法について説明する。
まず、成型用基材供給装置62から、例えば透明性を有した樹脂からなるシート材52が供給される。供給されたシート材52は、図7に示すように、成型用型70へと送り込まれ、成型用型70と一対のローラ68とによって、型70の凹凸面72と対向するようにして保持されるようになる。なお、シート材52の供給速度と成型用型70表面の回転周速度とは一致するように同期させられる。
また、図7に示すように、シート材52の供給にともない、シート材52と成型用型70の型面72との間に、材料供給装置64から流動性を有する材料54が供給される。このとき、型面72上の全領域が材料54によって覆われるように、材料54が供給される。ここで、「流動性を有する」とは、成型用型70の型面72へ供給された材料54が、型面72の溝74内に入り込み得る程度の流動性を有することを意味する。
なお、供給される材料54としては、成型に用いられ得る種々の既知な材料を用いることができる。ただし、材料54として、成型性が良好であるとともに入手が容易であり、且つ、優れた光透過性を有する樹脂が好適に用いられる。例えば、硬化物の屈折率が1.57である透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物が、材料供給装置64から供給される材料54として、好適に用いられ得る。また、以下に示す例においては、材料供給装置64から電離放射線硬化型樹脂が供給される例について説明する。電離放射線硬化型樹脂としては、未硬化状態に於いては流動性(液状)であり、電離放射線、例えば、紫外線(UV)、可視光線、X線、電子線(EB)、α線等を照射されることにより硬化(固体化)する単量体又はプレポリマーからなる。通常は、紫外線照射で硬化するUV硬化型樹脂や、電子線照射で硬化するEB硬化型樹脂を選択することができる。尚、光学シートの製造が完了した時点に於いては電離放射線硬化型樹脂の硬化は完了している。特に、電離放射線硬化型樹脂の硬化物を略して電離放射線硬化樹脂とも呼稱する。
その後、成型用シート材52は、型70の型面72との間を電離放射線硬化型樹脂によって満たされた状態で、硬化装置66に対向する位置を通過する。このとき、硬化装置66からは、電離放射線硬化型樹脂54の硬化特性に応じた電離放射線が放射されており、電離放射線はシート材52を透過して電離放射線硬化型樹脂54に照射される。この結果、型面72上の電離放射線硬化型樹脂が硬化して、硬化した電離放射線硬化型樹脂から、単位プリズム35,45と、本体部32,42の一方の面32a,42a側の表層部と、がシート材54上に形成されるようになる。
その後、図7に示すように、シート材52が型70から離間し、これにともなって、型面72の溝74内に成型された単位プリズム35,45がシート材52とともに型70から引き離される。この結果、上述した光学シート30,40が得られる。
なお、上述したように、型面72の溝74が形成された全領域上に材料54が延び渡り、シート材52は型70の表面に接触していない。この結果、作製された光学シート30,40の本体部32,42は、シート材52とシート状に硬化した電離放射線硬化材料54とから構成されるようになる。このような方法によれば、成型された電離放射線硬化材料54かなる単位プリズム35,45が、離型時に、型70内に部分的に残留してしまうことを効果的に防止することも可能となる。
以上のようにして、ロール型として構成された成型用型70がその中心軸線CAを中心として一回転している間に、流動性を有した材料54を型70内に供給する工程と、型70内に供給された材料54を型70内で硬化させる工程と、硬化した材料54を型70から抜く工程と、が型70の型面72上において順次実施されていき、光学シート30,40が得られる。
次に、以上のような光学シート30,40、光学部材29、面光源装置20および透過型表示装置10の作用について説明する。まず、透過型表示装置10および面光源装置20の全体的な作用について説明する。
光源25で発光された光は、直接または反射板22で反射した後に観察者側に進む。観察者側に進んだ光は、光拡散シート28で等方拡散された後に、光学部材29の第1光学シート30に入射する。
図6に示すように、第1光学シート30の第1単位プリズム35から出射する光L61,L62,L63は、単位プリズム(単位形状要素)35の出光側面(プリズム面)において屈折する。この屈折により、正面方向ndから傾斜した方向に進む光L61,L62,L63の進行方向(出射方向)は、主として、第1光学シート30へ入射する際における光の進行方向と比較して、第1光学シート30のシート面への法線方向ndに対する角度が小さくなる側へ曲げられる。このような作用により、第1単位プリズム35は、透過光の進行方向を正面方向nd側に絞り込むことができる。すなわち、第1単位プリズム35は、透過光に対して集光作用を及ぼすようになる。
なお、このような第1単位プリズム35の集光作用は、正面方向ndから大きく傾斜して進む光に対して効果的に及ぼされる。このため、第1光学シート30よりも光源側に配置された光拡散シート28による拡散の程度にも依るが、光源25から大きな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25から離れた領域において、効果的に正面方向輝度を上昇させることができる(図6において光L61の経路を参照)。
その一方で、正面方向ndに対する進行方向の傾斜角度が小さい光L64は、第1単位プリズム35の出光側面(プリズム面)において全反射を繰り返し、その進行方向を入光側(光源側)へ転換する。特に、第1単位プリズム35の(主切断面内における)頂角が90°乃至はその近傍の角度となっている場合は、図示の如く再帰反射となる。このため、第1光学シート30よりも光源側に配置された光拡散シート28による拡散の程度にも依るが、光源25から小さな入射角度で多くの光が入射するようになる傾向がある光源25の直上領域において、輝度が高くなり過ぎることを防止することができる。
このように、光源25からの離間距離に依存して透過光に対して第1単位プリズム35から主として及ぼされる光学的作用が相違する。これにより、光源25の発光部の配列に応じて発生する輝度ムラを効果的に低減し、光源の像(ライトイメージ)を目立たなくさせることもできる。すなわち、第1光学シート30は、輝度の面内バラツキを均一化させる光拡散機能も有している。
第1光学シート30を出射した光は第2光学シート40に入射し、第2光学シート40の第2単位レンズ45によって、上述した第1単位レンズ35による光学作用と同様の光学作用を及ぼされるようになる。なお、単位レンズ35,45による集光作用および光拡散作用は、主として、単位プリズム35,45の配列方向(図6で言えば左右方向)と平行な面内を進む光の成分に対して及ぼされる。そして、図1の如く、第1単位プリズム35の配列方向は光源25の長手方向と直交し、且つ、第2単位プリズム45の配列方向は光源25の長手方向と平行になっているため、第1および第2光学シートを透過した光の出射方向は、異なる二方向において正面方向を中心とした狭い角度範囲内に絞り込まれることになる。
面光源装置20(第2光学シート40)を出射した光は、その後、透過型表示部15に入射する。透過型表示部15は、面光源装置20からの光を画素毎に選択的に透過させる。これにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。
ところで、線状の単位プリズムを有する光学シートを面光源装置に組み込んだ場合、上述したように、正面方向輝度が期待された設計値よりも低下してしまうことがある。とりわけ、光学シートが二枚組み込まれた面光源装置では、正面方向輝度が期待された設計値よりも大幅(数%)に低下してしまうことがある。また、この傾向は、単位プリズムの配列ピッチが小さくなるほど、顕著となる。
そして、この原因を追及すべく、本件発明者らは、図11に示す方法により、光学シートの光学特性を正確に評価することを試みた。具体的には、光学シートの単位プリズムが形成されている側の面(プリズム面)に対して、当該光学シートのシート面(実際に面光源中で用いる場合の入光側面32b、42b)の法線方向に進む平行光束を入射させて光学シートを透過させ、光学シートの単位プリズムが形成されていない側の入光側面32b、42bでの輝度の角度分布を測定した。
例えば、上述した実施の形態のように、光学シートの主切断面における単位プリズムの断面形状が二等辺三角形形状となっている場合において、所望の単位プリズムの断面形状が得られていると仮定すると、図11に示すように、光学シートの単位プリズムが形成されていない側の面から出射する出射光は、単位プリズムの切子面の傾斜角度および光学シートの屈折率によって理論上特定される唯一の方向へ出射するようになる。そして、図11の光線経路を逆にたどるように光源光を入射させると、出射光は入射面の法線方向を向いた平行光束として集光されるようになる。尚、前記の通り、図11では2群存在する切子面群のうちの左側切子面群、更にそのうちの1切子面のみを代表として図示している。図11では図示を省略した右側切子面群については、図11に図示したものと左右対称な挙動となり、左下方向から来る入射光が入射面の法線方向を向いた平行光束として集光される。これが、この種の光学シートを用いた面光源装置の光学設計の原理でもある。しかしながら、実際には、光の回折、図11には図示しない多重反射光、及び単位プリズム内の屈折率の揺らぎ等に起因して、出射光の方向は所定の角度範囲(±数度)に分布を持つようになる。このため、単位プリズムが所定の断面形状を有していたとしても、測定結果としては、唯一の角度だけでなく、図11に図示の方向を含む所定の角度範囲内で輝度が計測されるようになるものと推測される。そして、前記の如く、斯かる輝度の角度分布曲線は、該所定の角度を中心とした釣鐘型の滑らかな曲線を描くと期待される。
ところが、本件発明者らが、一定断面形状で直線状に延びるとともに一定の高さを有する単位プリズムを含むプリズム部を電離放射線硬化樹脂及び熱可塑性樹脂にて形成して成る種々の従来の光学シートについて、図11に示す輝度の角度分布の測定を行ったところ、各群何れの切子面群に対応する出射光成分についても、輝度の角度分布は、図12〜図14に点線で示すように、略釣鐘型の輝度分布曲線柱に1以上の凹陥部(dip)を生じ、二以上のピークを有するようになることが頻繁に生じた。この輝度の角度分布からすると、この光学シートの主切断面における単位プリズムの外輪郭(プリズム面)のうち、本来直線であるべき部分が、(等価的には)二以上の異なる傾斜角度を有する部分の組み合わせとして構成されているものと推測される。其の為、図11に図示の経路以外の経路を通り、図示した所定方向から逸脱する成分を生じ、本來輝度のピーク成分を担うべき光が該輝度のピーク方向から離れた方向の成分に割り当てられると推測される。その結果、図11の光線経路を逆に辿る様に光源光を入射させる様に設計したとしても、実際には、出射光は、本來図11に図示の経路と逆向きの経路を通り法線方向近傍の輝度を構成すべき光の一部が失われて、法線方向から数度以上逸脱した方向の輝度成分に転換される。結果として、法線方向の輝度が、設計よりも大幅に低下してしまうものと推定される。
特に、光学シートを2枚、其の稜線方向を交差させて、面光源装置に組み込んだ場合には、第1の光学シート内の光線挙動と第2の光学シート内の光線挙動との相乗效果によって光の進行方向を正面方向へ絞り込むことができなくなる度合いが、より顕著化する。即ち、二枚の光学シートが面光源装置に組み込まれている場合には、特に、出光側に配置された第2の光学シートには、第1の光学シートから光が入射した時点で、既に、最初から想定された入射角度で光が入射しなくなる。このため、出光側の光学シートの出光面では、光を有効に正面方向へ絞り込むことができないどころか、正面方向以外の傾斜した方向へ光を集光させるように機能する。これにより、期待した光学特性を有していない二枚の光学シートが組み込まれた面光源装置では、特に、正面方向輝度が著しく低下してしまうものと予想される。
なお、従来の単位プリズムを含む種々の光学シートについて、その光学特性が期待したものとは異なってしまう現象が生じる原因が十分に明らかになっていないが、単位プリズムを形成する電離放射線硬化型樹脂の重合収縮が大きな原因の一つと推測される。光学シートの単位プリズムは、本來各種の材料が使用可能ではあって、硝子等の無機材料、熱可塑性樹脂、或は電離放射線硬化型樹脂の硬化物(電離放射線硬化樹脂)が通常選択可能であり、又製造されてきた。しかし、現在では、製造時ける容易性、生産効率、価格等の観点から、通常、電離放射線硬化型樹脂又は熱可塑性樹脂を賦型することによって形成されることが多い。そして、特に電離放射線硬化型樹脂は、電離照射線を照射されて硬化反応を起こす際に重合収縮して、体積で数%、通常、1〜5%程度収縮する。この重合収縮により、単位プリズムの外輪郭に目視では判別不能な程度の僅かな歪みが生じ、単位プリズムは設計された形状とは異なる形状を有するようになるものと予想される。この結果、光学シートの光学特性も、期待した光学特性とは異なるものになってしまうと考えられる。
一方、本実施の形態による光学部材29に含まれる光学シート30、40は、上述したように、前記特定の評価法に於いて、少なくともいずれかの切子面群への入射光に対応する平坦面32b、42bからの出射光成分について、以下の条件(a)、(b)および(c)のいずれか一つを満たすようになっている。
(a)本体部の平坦面32b,42bの法線方向と平行に進む光束を光学シート30,40の単位プリズム35,45から成るプリズム面に入射させた状態で光学シート30,40の単位プリズム35,45が形成されていない側の平坦面32b,42b側で測定され、輝度を表す縦軸と測定角度を表す横軸とを有するグラフ上に表された輝度の角度分布が、輝度のピークを一つだけ含んでいる。
(b)前記輝度の角度分布において、最も輝度が高くなる第1輝度ピークの次に高い輝度を有する第2輝度ピークの値が、第1輝度ピークの値Imaxの0%より大きく10%以下となる。
(c)第2輝度ピークの値が第1輝度ピークの値Imaxの10%を超え、且つ、第1輝度ピークと第2輝度ピークとの間で最も低い輝度となる輝度の谷部と、第1輝度ピークを形成する山部分mp1および第2輝度ピークを形成する山部分mp2において輝度の角度分布に接する接線TL上の点であって輝度谷部Ivと同一の横軸座標をとる点と、の輝度軸(縦軸)上における輝度の差Idipが、第1輝度ピークの値Imaxの0%より大きく20%以下となる。
すなわち、本実施の形態の光学シート30,40によれば、
・輝度の角度分布が輝度ピークを一つしか含んでいない、あるいは、
・輝度の角度分布が複数の輝度ピークを含んでいるが、二番目に高い輝度ピークは、最も高い輝度ピークと比較して十分に小さい、あるいは
・輝度の角度分布が、或る程度大きな二番目の輝度ピークを含んでいるが、最も高い輝度ピークと二番目に高い輝度ピークとの間には輝度の大きな低下(dip)がなく、最も高い輝度ピークと二番目に高い輝度ピークとの分離が目立っていない(すなわち、最も高い輝度ピークと二番目に高い輝度ピークの境界がはっきりとせず、最も高い輝度ピークと二番目に高い輝度ピークとによって一つの輝度のピークが形成されているようになる)。
このような本実施の形態によれば、入光側に配置された第1光学シート30によって、予定した出射方向を含む角度範囲内に光の進行方向を有効に絞り込むことができる。また、出光側に配置された第2光学シート40には、想定された入射角度を含む角度範囲で光が入射するようになる。このため、出光側に配置された第2光学シート40によって、正面方向を含む角度範囲内に光の進行方向を有効に絞り込むことができる。これにより、本実施の形態に光学シートによれば、期待した光学特性を有していない従来の光学シートが二枚組み込まれた光学シートと比較して、期待した出光特性に近い出光特性を呈するようになり、正面方向輝度を大幅に上昇させることができる。
なお、本実施の形態による単位プリズム35,45は、一定の断面形状を有する柱体を、凹凸を形成する折れ線状に、屈曲させることによって形成されている。このため、電離放射線硬化型樹脂の重合収縮によって単位プリズム35,45の外輪郭に僅かな歪みが生じていたとしても、目視では確認が困難な程度に透過光が拡散される。そして、この透過光の拡散作用によって、詳細は不明であるが、各単位プリズム35,45の光学歪の影響が光学的に相殺される。結果として、光学特性を評価するために単位プリズム35,45の側から光学シート30,40に平行光束を透過させて光学シート30,40の本来の入光側面32b,42bで測定された輝度の角度分布は、例えば図12〜図14に実線で示すように、なだらかに変化するようになる。これにより、本実施の形態による光学シート30,40によって、上述した条件(a)、(b)および(c)のいずれか一つが満たされるようになるものと推測される。
以上のように、上述した条件(a)、(b)および(c)のいずれか一つを満たす光学シートを含む面光源装置によれば、期待された正面方向輝度または期待された正面方向輝度により近い正面方向輝度を確保することが可能になる。また、従来の光学シートを二枚用いた面光源層装置と比較して、数パーセント(2%〜5%)程度高い正面方向輝度を確保することが可能になる。
なお、以上において、上述した条件(a)、(b)および(c)のいずれか一つが満たされる場合に、期待した正面方向輝度の設計値またはこの設計値に近い値を確保することが可能になることの推定メカニズムを説明したが、本発明はこのメカニズムに限定されるものではない。同様に、単位レンズ35,45の高さが折れ線状に変化する単位プリズム35,45を有した光学シート30,40を用いることによって、上述した条件(a)、(b)および(c)のいずれか一つが満たされるようになることの推定メカニズムを説明したが、本発明はこのメカニズムに限定されるものではない。
ところで、光学シート30,40が他の部材と重ね合わされて面光源装置20および透過型表示装置10が構成される場合、光学シート30,40の単位プリズム35,45と、光学シート30に隣接する他の部材とが接触することにより、種々の不具合、例えば、染み模様やニュートンリングが生じてしまう虞がある。しかしながら、本実施の形態による光学シート30,40によれば、光学シート30,40が隣接する他の部材に接触することに起因した不具合も解消することが可能となる。
本実施の形態においては、図1に示すように、第1光学シート30は、第1単位プリズム35が設けられている側の面が第2光学シート40に対向して配置される。この結果、第1光学シート30は、第1単位プリズム35を介し、第1光学シート30に隣接する第2光学シート40の平坦且つ平滑な入光側面(本体部42の入光側面42b)に当接するようになる。
同様に、第2光学シート40は、面光源装置20の発光面21aを構成するようにして、配置されている。そして、第2光学シート40の第2単位プリズム45が設けられている側の面は、透過型表示部15に隣接して配置される。この結果、第2光学シート40は、第2単位プリズム45を介し、第2光学シート40に隣接する透過型表示面15の平滑な入光側面に当接するようになる。
ただし、上述したように、単位プリズム35,45の高さは、単位プリズム35,45の長手方向にそって変化する。したがって、第1光学シート30の第1単位プリズム35が、第2光学シート40の平坦且つ平滑な入光側面42bに対し、長い領域に亘って線状に密着してしまうことはなく、同様に、第2光学シート40の第2単位プリズム45が、透過型表示部15の平滑な入光側面に対し、長い領域に亘って線状に密着してしまうことはない。これにより、一定の断面形状で直線状に延びるとともに高さが一定の単位プリズムを含む従来の光学シートと比較して、光学シート30,40が単位プリズム35,45を介して他の部材と接触するようになる領域を、格段に小さくすることができる。結果として、光学シート30,40に隣接する他の部材に光学シート30,40が接触することに起因した染み模様やニュートンリング等の不具合の発生を大幅に抑制することができる。
とりわけ本実施の形態による光学シート30,40では、単位プリズム35,45の高さが、単位プリズム35,45の長手方向に折れ線状に変化する。すなわち、単位プリズム35,45は、単位プリズム35,45の配列方向から観察した場合に、折れ線状の外輪郭を有するようになる。したがって、図5に示すように、単位プリズム35,45は、単位プリズム35,45の長手方向において点状領域または限られた長さの線状領域(37a,47a)でのみ、光学シート30,40に隣接する他の部材と接触することになる。そして、此の関係は、光学シート30,40或はこれと隣接する他の光学部材(透過型表示部15等)が反りや外力により、多少撓んだり、湾曲したりしても変化しない。すなわち、光学シート30,40の全体的な撓み、湾曲等の変形に反応して、単位プリズム35,45を介して隣接する他の部材と接触する領域の単位プリズム35,45の長手方向に沿った範囲(長さ)が大きく変化してしまうことはない。このため、安定して、光学シート30,40が単位プリズム35,45を介して他の部材に接触する領域の大きさ(長さ及び面積)を小さくすることができる。
また、上述した本実施の形態の光学シート30,40において、単位プリズム35,45の外輪郭の高さは、凹凸を形成するように折れ線状に変化している。そして、図5に示すように、各単位プリズム35,45の折れ線状の外輪郭によって画定される複数の凸部37,47について、本体部32,42から最も離間した各凸部37,47の頂部37a,47aと本体部32,42との間の本体部32,42の法線方向ndに沿った間隔da(突出高さ)は、一定ではなく変動している。このため、本実施の形態の光学シート30,40においては、通常の状態において、単位プリズム35,45の全ての頂部37a,47aが、隣接する他の部材に接触しているわけではない。そして、通常の状態において隣接する他の部材に接触していなかった単位プリズム35,45の頂部37a,47aは、光学シート30,40(単位プリズム)の全体的な而かも多量の撓み等の変形に応じて、初めて接触することが可能となる。このように、光学シート30,40(単位プリズム)の全体的な撓み等の変形に反応して、他の部材と接触するようになる頂部37a,47aの数を増加させることにより、単位プリズム35,45が一つの頂部37a,47aを介して隣接する他の部材と接触する接触領域の範囲が不具合を生じさせてしまう程度にまで増大してしまうことを防止することができる。すなわち、光学シート30,40と他の部材との接触圧力に起因した光学シート30,40(単位プリズム35,45)の撓み等の変形が生じたとしても、単位プリズム35,45と光学シート30,40が接触する領域を分散させて、光学シート30,40に隣接する他の部材と光学シート30,40との接触に起因した不具合の発生を効果的に防止することができる。
なお、上述したように、単位プリズム35,45は、異なる方向に延びる同一断面形状を有した柱体を並べて形成されている。したがって、図6に二点鎖線で示すように、単位プリズム35,45による光学作用が主として及ぼされるようになる光学シートの主切断面において、単位プリズム35,45は、その先端部36,46がどのような高さに位置しているかに関係なく、概ね同一の外輪郭を有するようになる。すなわち、光学シートの主切断面における断面形状は、単位プリズム35,45の長手方向にそって大きく変化しない。この結果、単位プリズム35,45から出射する光L63,L63aは、光学シートの主切断面において、その先端部36,46がどのような高さに位置しているかに関係なく、概ね同一の出射角度で出射するようになる。したがって、上面視において(光学シート30,40の法線方向ndから観察した場合に)、単位プリズム35,45の稜線方向が当該単位プリズム35,45と平行に一直線上を延びている本実施の形態においては、単位プリズム35,45の高さが折れ線状に変化することを原因として、視認され得る程度の光学的な特異点が形成され難くなっている。とりわけ、単位プリズム30,40の長手方向に沿った凸部37,47の配置ピッチが上述した範囲内(70mm以上900mm)にあるとともに、本体部32,42の法線方向に沿った稜線Laの振幅(高さ変動)が上述した範囲内(すなわち、1μm以上10μm以下)にある場合には、光学シート30,40に隣接する他の部材に光学シート30,40が接触することに起因した種々の不具合、例えば、素抜け、染み模様(Wet−Out)、ニュートンリング等の発生を効果的に防止することができるとともに、目視で視認される光学的な特異点も発生しなかった。
以上の実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態において、光学シートの主切断面における単位プリズム35,45の断面形状が三角形形状となっている例を示したが、これに限られない。例えば、単位プリズム35,45の主切断面における断面形状が、諸特性付与等の目的で、三角形形状に変調、変形を加えた形状であってもよい。具体例として、光学機能を適宜調整するために単位プリズム35,45の主切断面における断面形状が、図15に示すように三角形のいずれか一以上の辺(三角柱プリズムの切子面(facet))が折れ曲がった(屈曲した)形状、三角形のいずれか一以上の辺が湾曲した形状(所謂扇形)、三角形の頂点近傍を湾曲させて丸みを帯びさせた形状、三角形のいずれか一以上の辺に微小凹凸を付与した形状であってもよい。また、単位プリズム35,45の断面形状が、三角形形状以外の形状、例えば台形等の四角形、五角形、或は六角形等の種々の多角形形状となるようにしてもよい。また、単位プリズム35,45が、光学シートの主切断面において、円または楕円形状の一部分に相当する形状を有するようにしてもよい。
なお、図15に示す例では、光学シートの主切断面において、プリズム面は三種類の平坦面を含んでいる。しかしながら、同一の向きに傾斜した二つの面(図15において各単位プリズムをなす右側の面(左上方の向きに延びる面))の傾斜角度が数度程度(例えば0°〜5°)であり、実質的に、この二つの平坦面に異なる光学的作用を期待することはできない。このような場合には、上記説明のように、この二つ面によってプリズム面をなす一つの切子面が形成される。そして、二つの面によって形成される一つの切子面に起因した輝度の角度分布が、上記条件(a)、(b)および(c)のいずれかを満たす場合に、期待した正面方向輝度または期待した正面方向輝度に近い輝度を確保することができた。
ただし、図15に示す例において、同一の向きに傾斜した二つの面(図15において各単位プリズムをなす右側の面(左上方の向きに延びる面))が互いに対して大きな傾斜角度で傾斜し、二つの面に対して異なる光学作用が期待される場合、すなわち、当該二つの面がプリズム面の異なる切子面を形成する場合には、当該二つの面について、別々に、上記条件(a)、(b)および(c)が満たされているか否かを判断することになる。つまり、光学シートの平坦面の側で測定された輝度の角度分布から、対象となる切子面に入射した光に応じた部分を特定し、当該部分について、上記条件(a)、(b)および(c)が充足されているか否かを判断することになる。
また、上述した実施の形態において、光学シート30,40の単位プリズム35,45がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られない。一枚の光学シート30,40内に異なる形状を有した単位プリズムが含まれていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート30,40の製造方法の一例を説明したが、これに限られず、別の製造方法によって光学シート30を製造してもよい。同様に、上述した実施の形態において、光学シート30を賦型するための型70を作製する方法の一例を説明したが、これに限られず、別の製造方法によって成型用型70を作製してもよい。例えば、多条螺旋溝として、単位プリズム35,45を作製するための溝74が基材71に形成されてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、面光源装置20の光源25の発光部が、線状に延びる冷陰極管からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、点状のLED(発光ダイオード)や面状のEL(電場発光体)等からなる発光部を用いることも可能である。また、上述した実施の形態において、光学シート30,40が直下型の面光源装置20に適用されている例を示したが、これに限られない。上述した光学シート30,40を、例えばエッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)の面光源装置に適用することも可能であり、このような場合においても、光学シート30,40は直下型の面光源装置20に適用された場合と略同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート30が組み込まれた面光源装置20および透過型表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られず、種々の目的で、偏光分離膜、位相差板等の他の部材を面光源装置20および透過型表示装置10にさらに組み込んでもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光学部材29(光学シート30,40)が面光源装置20の最出光側に配置される例を示したが、これに限られない。このような変形例においても、上述した実施の形態と同様の作用効果を期待することができる。
さらに、上述した実施の形態において、本体部の平坦な入光側面32b,42bが平滑である例を示したが、入光側面32b,42bが光を適度に等方拡散したり、或は隣接部材との間の光学密着を防止する為の非平滑面を有していても良い。
さらに、上述した実施の形態において、単位プリズム35,45が電離放射線硬化(型樹脂が硬化してなる)樹脂である例を示したが、本発明に於ける特定の測定方法で測定した輝度の角度分布、更にはそれを具現化する手段である単位プリズムへの特定の凸部形成は、一般に単位プリズムが製造時に不可避的に微小な光学的歪を生じる光学シートであれば、他の材料で形成された光学シートにも有効である。具体的には、例えば、単位プリズム35,45が熱可塑性樹脂から構成される場合に於いても、単位プリズム形状を有する成型金型に加熱熔融した熱可塑性樹脂を供給して、これを冷却固化せしめて単位プリズムを形成する場合に於いても、冷却時に熱可塑性樹脂の不均一な却成、冷却過程での内部の不均一な応力分布の発生等に起因して、該単位プリズムに光学的歪(幾何学的歪の他、屈折率分布の不均一による屈折特性の歪も含む)を生じる場合が有る。斯かる場合にも、本発明の本発明に於ける特定の測定方法で測定した輝度の角度分布の形態、更には其の具現化手段である単位プリズムへの特定の凸部形成を適用して、本発明の效果を同様に奏することが出できる。
さらに、上述した実施の形態において、光学シート30,40が、透過型表示装置10用の面光源装置20に組み込まれる例を示したが、これに限られない。上述した光学シートを、種々の発光機能(照明機能を含む概念として使用)を有した発光装置に組み込んで用いることができる。光学シート30,40が適用され得る発光装置としては、天井や壁面に取り付けて用いられる室内照明装置、門灯や街灯等の室外照明装置、非常灯や誘導灯等の表示灯、交通標識、発光看板、時計や計器等の発光表示板、懐中電灯、防虫灯、農業用照明、集魚灯などを例示することができる。
図16には、光学シート90を含む発光装置80の一例を示している。発光装置80は、多数の発光ダイオード82aを平面上に二次元配列して構成された光源82と、光源82に対向して配置された光学シート90と、光学シート90の出光側に配置された光拡散板85と、光源82の背面に配置された反射板83と、を有している。この発光装置80においては、光源82からの光が直接または反射板83で反射された後に、光学シート90へ向かう。光学シート90は、上述した実施の形態と同様に、入射光に対して光拡散作用および集光作用を及ぼす。そして、光学シート90から出射した光は、光拡散板85に入射して等方拡散される。結果として、図示された発光装置80は、光拡散板85の出光側面によって構成される出光面から面状に光を発光する照明装置、表示灯、標識、看板等として用いられ得る。このような発光装置80においては、上述した実施の形態と同様に、予定した光学特性を確保することができ、加えて、光学シート90の単位プリズム35,45を介して他の部材(ここでは、光拡散板85)と接触することに起因した不具合の発生を効果的に防止することができる。
なお、図16において、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分には、上述した実施の形態で使用した符号と同一の符号を付している。図16に示す発光装置80に含まれた光学シート90は、発光ダイオード82aで発光された光の色温度を変換する色温度変換層95を含んでいる点において、上述した実施の形態の光学シート30,40と異なり、その他の点は上述した実施の形態の光学シート30,40と同一に構成され得る。
図16に示す発光装置80において光源82をなす発光ダイオード82aは、冷陰極管とは異なり、種々の色温度の光を発光し得るように製造され得る。そして、図示する例のように、光学シート90が色温度変換層95を含んでいる場合、発光装置80で発光される光の色温度は、光源82をなす発光ダイオード82aと、光学シート90の色温度変換層95と、によって決定されるようになる。このような発光装置80によれば、発光装置80で発光される光の色温度を種々の色に安価に制御することが可能となる。例えば、発光ダイオード82aでの発光色が白色である場合には、白色としての色温度を変換すること、或いは、白色を有彩色に変換することができる。また、発光ダイオード82aでの発光色が有彩色である場合には、有彩色の色相を変換したり、或いは更に白色光に変換したりすることができる。
なお、色温度変換層95は、一例として、蛍光体を含有する蛍光体層、色素を含有する色素層、または、光の干渉を利用して特定波長帯域の波長を有する光を主として透過する干渉フィルタ(バンドパスフィルタ)から構成され得る。図16に示す光学シート90は、上述した光学シートの製造方法例において、予め色温度変換層95が積層されたシート材52に単位プリズム35,45を賦型することによって作製され得る。
ただし、図16に示す光学シート90とは異なり、色温度変換層95が光学シート90の入光面をなす層として形成されていてもよいし、あるいは、単位プリズム35,45が色温度変換層95を構成するようにしてもよい。また、図16に示す発光装置80において、いわゆる直下型面光源装置の光源と同様に、光学シート90に対向する位置に配置された複数の発光ダイオード82aから光源82が構成されているが、この例に限られない。直下型面光源装置の光源と同様の構成で且つ発光装置80が一つの発光ダイオード82aから構成されてもよい。あるいは、いわゆるエッジライト型面光源装置の光源と同様に、光学シート90に対面する位置に導光板が設けられ、この導光板の側方に配置された発光ダイオードによって光源が形成されるようにしてもよい。さらには、発光装置80の光源82が、発光ダイオード以外の発光体(例えば、冷陰極管やエレクトロルミネッセンス)によって構成されていてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
○1.光学シートの評価
上述の代表的実施形態において図1〜図6を主に参照しながら説明した光学シートの構成と同一構成のサンプルを、実施例1〜3に係る光学シートとして、作製した。なお、実施例1〜3に係る光学シートを作製する際に、上述の実施の形態において主に図7を参照しながら説明した製造方法を採用した。また、実施例1〜3に係る光学シートを作製する際に、上述の実施の形態において主に図8〜図10を参照しながら説明した成型用型を使用した。したがって、実施例1〜3に係る光学シートは、略一定の断面形状を有し一直線状に延びるとともに高さが折れ線状に変化する単位プリズムを有するようになった。また、一つの単位プリズムの折れ線状の外輪郭(稜線)によって複数の凸部が画定され、複数の凸部の各頂部の本体部からの高さが互いに異なるようになった。
また、比較例1〜3に係る光学シートとして、実施例1〜3に係る光学シートに於いて、各単位プリズム上の凸部形成を行わなかった以外は実施例1〜3と同様とした。即ち、略一定の断面形状を有し一直線状に延びるとともに高さが一定となっている単位プリズムを有した光学シートを作製した。比較例1〜3に係る光学シートは、実施例1〜3に係る光学シートと同様に、上述の実施の形態において主に図7を参照しながら説明した製造方法、すなわち、電離放射線硬化型樹脂をシート材上に賦型することによって、作製した。
また、得られた、実施例1〜3および比較例1〜3に係る光学シートについて、光学特性を評価した。
以下、実施例1〜3に係る光学シートおよび比較例1〜3に係る光学シートの各々についてさらに詳細に説明するとともに、各光学シートについての光学特性の評価結果について説明する。
〔サンプル〕
(実施例1に係る光学シート)
本体部として、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ125μmのシート材を用意した。該シート基材表裏両面(出光側面及び入光側面に対応)の表面粗さを触針式表面粗さ計で測ったところ、JIS B0601(1994年版)準拠のRz値が0.01μmの平滑面であった。該シート材上に、以下のような紫外線硬化型樹脂1を賦型し、紫外線照射にて硬化せしめることにより、実施例1に係る光学シートを得た。(「EO変性成」とは「エチレンオキサイド変性」の略稱)
<紫外線硬化型樹脂1>
・フルオレンアクリレート 45重量部
・フェノキシエチルアクリレート 35重量部
・イソヌル酸EO変性トリアクリレート 20重量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
5重量部
光学シートの主切断面において、単位プリズムが実質的に三角形形状を含むようにした。断面三角形形状は、実質的に、光学シートの本体部の平坦且つ平滑な入光側面の法線方向と平行な対称軸を中心として線対称となっている二等辺三角形状となるようにした。断面三角形形状の頂角の角度を90°とした。断面三角形形状の高さ平均を12μmとした。光学シートのシート面と平行になる単位プリズムの配列方向において、単位プリズムの配列ピッチを24μmとした。
上述したように、単位プリズムの外輪郭(稜線)は単位プリズムの長手方向に沿って折れ線状に変動し、上述の実施の形態と同様に、一つの単位プリズムの折れ線状の外輪郭(稜線)によって複数の凸部が画定されるようにした。単位プリズムの長手方向に沿った凸部の配列ピッチを74〜893mmの範囲でランダムに分布させ。また、一つの単位プリズムに含まれる複数の凸部の各頂部の本体部からの高さが互いに異なっており、高さの変動幅を4〜6μmの範囲でランダムに分布させた。
(実施例2に係る光学シート)
電離放射線硬化型樹脂として以下の紫外線硬化型樹脂2を用いた点と、主切断面における断面三角形形状の高さ平均を12μmから25μmに変更した点と、単位プリズムの配列方向における単位プリズムの配列ピッチを24μmから50μmに変更した点と、を除き、実施例1に係る光学シートと同様にして、実施例2に係る光学シートを作製した。
<紫外線硬化型樹脂2>
・ビスフェノールAエポキシアクリレート 20重量部
・フェノキシエチルアクリレート 20重量部
・イソボニルアクリレート 5重量部
・アクリロイルモルホリン 5重量部
・ビスフェノールAジアクリレート 10重量部
・フィルフェノールAジメタクリレート 25重量部
・イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート 10重量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
3重量部
(実施例3に係る光学シート)
主切断面における断面三角形形状の高さ平均を12μmから25μmに変更した点と、単位プリズムの配列方向における単位プリズムの配列ピッチを24μmから50μmに変更した点と、を除き、実施例1に係る光学シートと同様にして、実施例3に係る光学シートを作製した。
(比較例1に係る光学シート)
単位プリズムの外輪郭(稜線)の本体部からの高さが折れ線状に変化することなく一定となるようにしたことを除き、実施例1に係る光学シートと同様にして、比較例1に係る光学シートを作製した。
(比較例2に係る光学シート)
単位プリズムの外輪郭(稜線)の本体部からの高さが折れ線状に変化することなく一定となるようにしたことを除き、実施例2に係る光学シートと同様にして、比較例2に係る光学シートを作製した。
(比較例3に係る光学シート)
単位プリズムの外輪郭(稜線)の本体部からの高さが折れ線状に変化することなく一定となるようにしたことを除き、実施例3に係る光学シートと同様にして、比較例3に係る光学シートを作製した。
〔光学特性の評価〕
図11に示すように、光学シートの入光側平坦面の法線方向に進む平行光束を、各光学シートの単位プリズムが形成されている側の面(プリズム面;意図した本来の使用における出光側の面)から入射させた。各光学シートの単位プリズムが形成されていない側の面(意図した本来の使用における入光側の面)での輝度を、光学シートの該法線方向と単位プリズムの配列方向との両方に平行となる種々の方向から、測定した。輝度の測定には、ミノルタ製BM−7を輝度計として用いた。
測定結果を、輝度の角度分布として、測定方向が光学シートの法線方向に対してなす角度(測定角度)を横軸に取るとともに各測定角度で測定された輝度の値(相対比較値)を縦軸に取ったグラフ上に示した。
図12〜図14には、測定角度が0°〜90°の範囲における輝度の測定値をグラフ上にプロットしてなる輝度の角度分布が示されている。上述したように、対象としている光学シートに含まれる単位プリズムはすべて同一に構成され、且つ、法線方向を中心として対称な切子面を有している。したがって、単位プリズムが電離放射線硬化型樹脂や熱可塑性樹脂を用いて通常の精度で形成されている光学シートにおいては、各単位プリズムをなす二つの切子面のうちの一方の切子面群に入射した光は、測定角度が0〜90°の範囲で測定される輝度に寄与するようになり、他方の切子面郡に入射した光は、測定角度が0〜90°の範囲で測定される輝度に寄与するようになる。したがって、図12〜図14に示された輝度の角度分布は、本体部の平坦面の法線方向と平行に進んでプリズム面を構成する一種類の切子面郡に入射する光束に起因して本体部の平坦面側で得られる輝度の角度分布に相当する。
なお、図12には、実施例1に係る光学シートの測定結果が実線で示されるとともに、比較例1に係る光学シートの測定結果が点線で示されている。図13には、実施例2に係る光学シートの測定結果が実線で示されるとともに、比較例2に係る光学シートの測定結果が点線で示されている。図14には、実施例3に係る光学シートの測定結果が実線で示されるとともに、比較例3に係る光学シートの測定結果が点線で示されている。
図12〜図14に示すように、実施例1〜3に係る光学シートについて測定された輝度の角度分布では、輝度のピークが複数含まれていた。
ただし、実施例3の光学シートに関する輝度の角度分布においては、二番目に高い輝度ピークの値は、最も高い輝度ピークの10%以下であった。したがって、実施例3に係る光学シートについて測定された輝度の角度分布は、上述した条件(b)を満たすことになる。
図12〜図14に示すように、比較例1〜3に係る光学シートについて測定された輝度の角度分布では、輝度のピークが複数含まれていた。比較例1〜3の光学シートに関する輝度の角度分布では、最も高い輝度ピークと二番目に高い輝度ピークとの間で、輝度が大きく低下していた。これに対して、実施例1および2の光学シートに関する輝度の角度分布では、最も高い輝度ピークと二番目に高い輝度ピークとの間での輝度の変動は小さかった。このため、比較例1〜3に係る光学シートについて測定された輝度の角度分布では、実施例1および2の光学シートに関する輝度の角度分布と比較して、角度変化にともなって輝度を示す曲線が非常に大きくうねっていた。逆に、実施例1および2の光学シートに関する輝度の角度分布では、最も高い輝度ピークと二番目に高い輝度ピークの明確でなく、最も高い輝度ピークおよび二番目に高い輝度ピークが、おおよそ一つの輝度のピークに含まれているともいえた。
実施例1および2の光学シート並びに比較例1〜3の光学シートに関する輝度分布について、
・最も輝度が高くなる第1輝度ピークの値Imaxと、
・第1輝度ピークと二番目に高い輝度をとる第2輝度ピークとの間で最も低い輝度となる輝度谷部の値Ivと、
・第1輝度ピークを形成する山部分mp1および第2輝度ピークを形成する山部分mp2において輝度の角度分布に接する接線TL上の点であって輝度の谷部と同一の横軸座標(角度軸座標)をとる点と、輝度谷部の値Ivと、の輝度軸(縦軸)上における輝度の差Idipと、
を測定した。測定値(相対比較値)を表1に示す。
また、第1輝度ピークの値Imaxに対する輝度差Idipの割合を算出して、表1に示している。実施例1および実施例2に係る光学シートについて測定された輝度の角度分布では、値Imaxに対する輝度差Idipの割合が0%より大きく20%以下となり、上述した条件(c)が満たされていた。一方、比較例1〜3に係る光学シートについて測定された輝度の角度分布では、値Imaxに対する輝度差Idipの割合が20%を超えており、上述した条件(c)が満たされなかった。
なお、表1には、各サンプルが上述した条件(a)、(b)および(c)のいずれかを満たすか否かも示している。具体的には、満たされる条件に○を付すとともに、満たされない条件に×を付している。
○2.面光源装置の評価
市販されている液晶テレビジョン受像機の光源、反射板および光拡散板と、実施例および比較例に係る光学シートと、を組み合わせて面光源装置を作製した。具体的には、以下のような構成からなる実施例A1,A2,B1,B2,C1,C2および比較例A1,A2,B1,B2,C1,C2に係る面光源装置を作製した。各面光源装置に使用された光源、反射板および光拡散板は、全て同一のものとした。得られた面光源装置について、正面方向輝度を測定した。
〔サンプル〕
(実施例A1に係る面光源装置)
図1に示す構成と同様にして、実施例A1に係る面光源装置を構成した。すなわち、実施例A1に係る面光源装置は、反射板と、複数の冷陰極管からなる光源と、光拡散板と、第1の光学シートと、第2の光学シートと、を有するようにした。第1光学シートおよび第2光学シートは、共に、上述した実施例1に係る光学シートを用いた。第1光学シートは、その単位レンズの配列方向が光源の配列方向と平行となるように、面光源装置に組み込んだ。また、第2光学シートは、その単位プリズムの配列方向が第1光学シートの単位プリズムの配列方向と直交するようにして、面光源装置に組み込んだ。
(実施例A2に係る面光源装置)
第2光学シートを省いた点を除き、実施例A1に係る面光源装置と同様にして、実施例A2に係る面光源装置を構成した。すなわち、実施例A2に係る面光源装置は、反射板と、複数の冷陰極管からなる光源と、光拡散板と、第1光学シートと、を有するようにした。
(実施例B1に係る面光源装置)
上述した実施例2に係る光学シートを第1光学シートおよび第2光学シートとして用いた点を除き、実施例A1に係る面光源装置と同様にして、実施例B1に係る面光源装置を構成した。
(実施例B2に係る面光源装置)
第2光学シートを省いた点を除き、実施例B1に係る面光源装置と同様にして、実施例B2に係る面光源装置を構成した。
(実施例C1に係る面光源装置)
上述した実施例3に係る光学シートを第1光学シートおよび第2光学シートとして用いた点を除き、実施例A1に係る面光源装置と同様にして、実施例C1に係る面光源装置を構成した。
(実施例C2に係る面光源装置)
第2光学シートを省いた点を除き、実施例C1に係る面光源装置と同様にして、実施例C2に係る面光源装置を構成した。
(比較例A1に係る面光源装置)
上述した比較例1に係る光学シートを第1光学シートおよび第2光学シートとして用いた点を除き、実施例A1に係る面光源装置と同様にして、比較例A1に係る面光源装置を構成した。
(比較例A2に係る面光源装置)
第2光学シートを省いた点を除き、比較例A1に係る面光源装置と同様にして、比較例A2に係る面光源装置を構成した。
(比較例B1に係る面光源装置)
上述した比較例2に係る光学シートを第1光学シートおよび第2光学シートとして用いた点を除き、実施例B1に係る面光源装置と同様にして、比較例B1に係る面光源装置を構成した。
(比較例B2に係る面光源装置)
第2光学シートを省いた点を除き、比較例B1に係る面光源装置と同様にして、比較例B2に係る面光源装置を構成した。
(比較例C1に係る面光源装置)
上述した比較例3に係る光学シートを第1光学シートおよび第2光学シートとして用いた点を除き、実施例C1に係る面光源装置と同様にして、比較例C1に係る面光源装置を構成した。
(比較例C2に係る面光源装置)
第2光学シートを省いた点を除き、比較例C1に係る面光源装置と同様にして、比較例C2に係る面光源装置を構成した。
〔正面方向輝度〕
各面光源装置について、正面方向輝度を測定した。輝度の測定には、ミノルタ製BM−7を輝度計として用いた。測定結果を表2に示す。
表2からわかる様に、2枚の光学シートを各光学シートの稜線を直交させて重ねて載置した面光源装置に於いては、正面方向輝度は、各実施例の光学シートを用いた場合の方が、各比較例の光学シートを用いた場合に比べて2〜5%上昇していることがわかる。
又、各光学シート1枚のみ載置した面光源装置に於いては、正面方向輝度は、各実施例の光学シートを用いた場合、各比較例の光学シートを用いた場合と同等水準を確保していることがわかる。
○3.透過型表示装置の評価
市販されている液晶テレビの液晶パネルと、実施例A1,B1,C1および比較例A1,B1,C1に係る面光源装置と、を組み合わせて透過型表示装置を作製した。各透過型表示装置に用いた液晶パネルはすべて同一とした。液晶パネルの入光側面は平滑であった。得られた透過型表示装置で白を表示した際に、光学シートに隣接する他の部材に光学シートが接触することに起因した種々の不具合、例えば、素抜け、染み模様、ニュートンリング等が視認されるか否かを調査した。
実施例A1,B1,C1に係る面光源装置を組み込んだ表示装置では、不具合を目視で確認することができなかった。一方、比較例A1,B1,C1に係る面光源装置を組み込んだ表示装置では、注意深く観察した際に、縞模様や光学特異点が視認された。