JP5756765B2 - 刻み葉わさび漬入り生菓子およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、大福の餅生地に刻んだ葉わさび漬を混ぜ込んでなる生菓子およびその製造方法に関する。
葉わさび漬は、アブラナ科ワサビ属の植物であるわさびの、葉、葉柄及び花芽を総称して葉わさびと呼ぶものを、熱湯よりも低めのお湯に湯通してしんなりさせた後、例えば、醤油をベースとするだし汁に漬け込んだものであり、わさび特有の香味と辛味が楽しめるため、主に副菜として食されてきた。これに対して、わさびの根の部分は、一般に根わさびと呼ばれており、すりおろしてさしみや寿司の薬味として用いられ、葉わさびとは区別されている。なお、本願発明において単に「わさび」と呼ぶ場合は、葉わさびと根わさびを合わせた植物体としてのわさび全体を指し示すことにする。
一般に、わさび特有の香味と辛味のもととなる成分は、イソシアネート類であることが知られており、その主成分はアリルイソシアネートである。
また、イソシアネート類は、一般式:R・N=C=S(ただし、Rは置換基を意味している)で表わされる化合物であり、揮発性が高い上、分子内に二重結合を有していることで反応性も高く、不安定な物質である。
このため、イソシアネート類を飲食物中に混合すると、飲食物中の他の成分と速やかに反応してその量が減るので、加工食品中においてわさび特有の香味や辛味を持続させることは難しかった。
さらに、イソシアネート類は、常温条件下でも好適に揮発してわさび特有の香味と辛味が消えてしまうので、加工食品として提供する場合には、その製造工程に加熱処理工程を含めることが難しく、わさびを使用した新たな食品を開発することは困難であった。
また、わさび独特の香味と辛味のもとであるアリルイソシアネートは、この状態で植物体の中に存在するのではなく、シニグリンという苦味を有する成分としてわさびの中に存在しており、植物体の細胞が破壊されるなど植物体に変化が生じた際に、酵素のミシロナーゼと反応して、アリルイソシアネートが生成される仕組みになっている。
さらに、通常、わさびの植物体内では、シニグリンとミシロナーゼは、別々の袋に入れられているような状態で存在しており、何らかの原因で細胞が破壊されてこれらを収容する袋が壊されることではじめてミシロナーゼとシニグリンの反応が起こり、アリルイソシアネートが生成されてわさび特有の香味と辛味が生じることが知られている。
このため、根わさびの場合は、それをすりおろすことで植物細胞を破壊してシニグリンとミシロナーゼを反応させる一方、葉わさびの場合は、熱によって植物細胞を破壊して、シニグリンとミシロナーゼの反応引き起こして、それぞれアリルイソシアネートを生成させて、わさび特有の香味と辛味を食品中に引き出していた。特に後者の場合は、葉わさびを加熱する際の温度が80℃を超えて高いと、植物細胞中の酵素(ミシロナーゼ)が失活して反応が進まないばかりか、生成したアリルイソシアネートも熱により直ちに揮発して、わさび特有の香味と辛味が消えてしまうので、その取扱いも難しかった。
従って、このような事実からも、わさび特有の香味と辛味を、加熱処理工程が必要な加工食品である生菓子に含ませることは極めて難しかった。
本願発明と同一の課題を有する先行技術文献は現時点では発見されていないが、関連する技術分野の先行技術としては以下に示すようなものが知られている。
特許文献1には「しその葉つき餅菓子」という名称で、餅にしその葉をつけた餅菓子に関する発明が開示されている。
特許文献1の図2には、餅菓子の餅生地の中に細かく切ったしその葉を混ぜ込んだ実施例が開示されており、このような餅生地は、細かく切ったしその葉を餅につき合わせることで製造されるものである。
上述のような特許文献1に開示される発明によれば、しその葉による餅生地の着色効果及び風味付け効果が期待できる。
特許文献2には「大福餅及びその製造方法」という名称で、餅生地に餡を包み込んだ大福餅に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明は、餅材料に抹茶を加えて蒸した後、これをついて抹茶で着色された着色餅生地を形成し、この着色餅生地で餡を包餡することを特徴とするものである。
特許文献2に開示される発明の場合、餅材料に抹茶を加えて蒸した後、これをついて抹茶で着色された着色餅生地を形成し、この着色餅生地で餡を包餡するので、抹茶の苦みを餡で抑えることによって、茶の葉をそのまま苦みなく摂取することができ、簡単に健康維持を図ることができる大福餅を製造することができるものである。また、着色餅生地で色彩効果の高い大福餅を製造することができる。
特許文献3には「多水分で整形でき形崩れしない生地の製造方法及びこの生地による和洋生菓子とその製造方法」という名称で、澱粉または穀物粉の水懸濁液における水の流動性を泥状的に拘束することにより多水分域にあっても整形することができ更に整形後形崩れしない澱粉または穀物粉による生地の製造方法及びこの生地による和洋生菓子とその製造方法に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示される発明は、ゲル状に形成した生地に副原料として蛋白質類、脂肪、天然多糖類、豆類、卵類、乳類、果実類、野菜類、畜肉類、砂糖類、調味料類、香辛類などの中から選ばれた少なくとも一種以上のものが追種されることを特徴とするものである。
上記構成の特許文献3に開示される発明によれば水分50%〜80%の和洋生菓子の生地を得ることが出来る。また、蒸気蒸し又は釜茹でなどの加熱処理においても形崩れすることがなく、咀嚼の良い和洋生菓子を得ることが出来る。さらに、特許文献3に開示される方法により得た製品は、常温販売に供しても5日間〜6日間の賞味期間をもたせることができ、その間劣化を防ぐ保水性を有している。また、チルド販売又は冷凍販売に供しても保存と流通により所定期間経過後に電子レンジやオーブンレンジなどの簡便な加熱により、保存前と同等のテキスチャーを得ることが出来る水分量とその保水性を有している。
特許文献4には「阿蘇たかなまんじゅう」という名称で、饅頭の表皮にすりつぶした阿蘇たかな漬を混ぜ込んだ饅頭に関する考案が開示されている。
特許文献4に開示される考案は、小麦粉の中に、適量のすりつぶした阿蘇たかな漬を入れることにより、独特な味と香りをもたせたことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献4に開示される考案によれば、今まで味わえなかった独特な風味のある饅頭を提供できる。
特開昭54−119060号公報 特開平11−121号公報 特開2002−17264号公報 実開平01−130682号公報
特許文献1に開示される発明の場合、しその葉の塩酢漬を、葉わさび漬に置き換えることで、葉わさび漬が入った餅生地を提供できるとも考えられる。
しかしながら、特許文献1に開示される技術内容をそのまま転用すると、まず、蒸した餅米に葉わさび漬が触れることで、わさび特有の香味と辛味のもとであるイソシアネート類が揮発して損なわれ、さらに、つき合わせる際にも、細胞の破壊が起こってイソシアネート類が揮発し易くなって損なわれ、しかも、製品を密封したり冷凍保存するよう構成されていないので、出来上がった製品中にわさび特有の香味と辛味をとどめておくこと難しいと考えられる。
このため、特許文献1に開示される技術内容を転用した場合、わさび特有の香味と辛味を有する生菓子を提供することは難しかった。
特許文献2に開示される開示される発明の場合は、餅材料に砂糖と抹茶を混合して蒸し上げた後、さらに、抹茶を添加するという構成になっている。そして、抹茶を葉わさび漬に置き換えた場合は、上述の特許文献1に開示される発明の場合と同様に、わさび特有の香味と辛味のもとであるイソシアネート類が蒸し上げ時に揮発して損なわれてしまうことが予想される。
従って、特許文献2に開示される技術内容を転用した場合も、わさび特有の香味と辛味を有する生菓子を提供することはできないと考えられる。
特許文献3に開示される発明の場合は、ゲル状の生地に野菜等の副原料を混ぜ込んで冷凍保存するという技術内容を有しているが、この食品を食する際には何らかの加熱処理が必要である。従って、特許文献3に開示される技術内容をそのまま転用した場合には、食する前に行う加熱処理の際に、わさび特有の香味と辛味のもとであるイソシアネート類が揮発して損なわれてしまう上、葉わさび漬のシャキシャキとした独特の食感も損なわれてしまうことが予想される。
よって、特許文献3に開示される技術内容を転用した場合も、わさび特有の香味と辛味を有する生菓子を提供することはできないと考えられる。
特許文献4に開示される考案の場合は、阿蘇たかな漬を、葉わさび漬に置き換えることで、葉わさび漬が入った饅頭を提供できるとも考えられる。
しかしながら、特許文献4に開示される技術内容を転用する場合、饅頭生地に葉わさび漬を混ぜ込むにあたり、葉わさび漬をすり潰してやる必要があり、この時に、イソシアネート類が速やかに揮発して、わさび特有の香味と辛味が失われる可能性が高かった。さらに、包餡した饅頭生地を最終的に蒸し上げる必要があり、この加熱処理によってもわさび特有の香味と辛味が失われる可能性が高く、さらに、蒸し上がった饅頭生地はスポンジ状であるため、構造上、饅頭生地内に練りこまれる葉わさび漬に含まれるイソシアネート類を封止しておくことは難しいと考えられる。
従って、特許文献4に開示される技術内容を転用した場合も、わさび特有の香味と辛味を有する生菓子を提供することはできないと考えられる。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、長期保存が可能であり、その際にも、わさび特有の香味と辛味を味わうことができ、しかも、柔らかな餅生地の中にシャキシャキとした心地よい葉わさびの食感を感じることができる刻み葉わさび漬入り生菓子及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため請求項1記載の発明である刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法は、少なくともデンプンと糖類とを含有する餅生地材料と,水と,を混合してなるものを摂食可能に加熱処理して餅生地にする第1の工程と、この第1の工程の後に,餅生地を常温から水分が凍結しない温度範囲内にまで冷却する第2の工程と、この第2の工程の後に,刻み葉わさび漬を餅生地に混ぜ込んで,餅生地中に刻み葉わさび漬を封止する第3の工程と、この第3の工程の後に,餅生地により包餡して大福を形成する第4の工程と、この第4の工程の後に,大福を冷凍する第5の工程と、この第5の工程の後に,大福の凍結状態を維持しながらこの大福を密封する第6の工程と、この第6の工程の後に,密封された大福を冷凍保存する第7の工程とを有し、刻み葉わさび漬は、食した際にその触感が感じられる程度の大きさの固形物を含むことを特徴とするものである。
上記構成の請求項1記載の発明において第1の工程は、餅生地材料と水とにより摂食可能な餅生地を製造するとともに、この餅生地を熱処理により殺菌するという作用を有する。続く第2の工程は、次の第3の工程に先立って、餅生地から粗熱をとって、葉わさび漬を混ぜ込んだ際に餅生地の熱により、わさび特有の香味と辛味のもととなるイソシアネート類が揮発するのを防止するという作用を有する。そして、第3の工程は、餅生地中に刻み葉わさび漬を封止することにより、刻みわさび漬からイソシアネート類を揮発し難くするという作用を有する。また、第4の工程は、刻み葉わさび漬がその中に封止された餅生地で包餡して、大福を形成するという作用を有する。さらに、第5の工程は、大福を冷凍して温度を下げることで、餅生地中の刻み葉わさび漬に含まれるイソシアネート類への熱エネルギーの伝達を妨げて、その揮発を抑制するという作用を有する。加えて、第6の工程は、冷凍されてイソシアネート類が拡散し難くなった大福を、その凍結状態を維持しながら密封することで、刻み葉わさび漬に含まれるイソシアネート類が大気中に拡散するのを妨げるという作用を有する。最後の第7の工程は、製造された刻み葉わさび漬入り生菓子を冷凍状態にて保存することで、刻み葉わさび漬中のイソシアネート類の揮発を引き続き休止状態にしておくことができるので、製造された刻み葉わさび漬入り生菓子の保存中にイソシアネート類の損失が起こるのを防ぐという作用を有する。
さらに、第3,第4の工程を、常温以下の温度条件下において行うことで、作業中に揮発するイソシアネート類の量を最少限度にするという作用を有する。なお、第3,第4の工程は、例えば、冷蔵温度などの低い温度条件下で行うことが望ましいが、第3,第4の工程を冷蔵温度条件下において行うことは費用対効果の点から現実的でない場合もある。従って、この「第3,第4の工程を、常温以下の温度条件下において行う」の主旨は、餅生地に刻み葉わさび漬を添加した後の工程において、餅生地及び大福に積極的な加熱処理を行わないという程度のものである。
また、葉わさび漬は、細かく刻むほどその内部に含まれるイソシアネート類が外気に触れる可能性が高まり、結果として、その揮発拡散が促進されてしまう。従って、請求項1記載の発明では、第3の工程において添加する刻み葉わさび漬を、食した際にその触感が感じられる程度の大きさの固形物を含んだ大きさにすることで、葉わさび漬が過度に小さく刻まれるのを抑制しつつ、餅生地により確実に被覆できる程度の細かさにするという作用を有する。そして、この作用によりにより餅生地中に刻み葉わさび漬を効率よく封止して、葉わさび漬の中に含まれるイソシアネート類が空気中に揮発して損失するのを抑制しつつ、食した際に葉わさび漬が噛み砕かれて、はじめてイソシアネート類が口の中で拡散してわさび特有の香味と辛みが感じられるという作用を有する。
加えて、刻み葉わさび漬を、食した際にその触感が感じられる程度の大きさの固形物を含む大きさにすることで、請求項1記載の製造方法で製造した生菓子を食した際に、餅生地の柔らかな食感の中にシャキシャキとした刻み葉わさび漬の食感を付与するという作用も有する。
請求項2記載の発明である刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法は、請求項1記載の刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法であって、餅生地の糖度と,刻み葉わさび漬の糖度の差は、10度以内であることを特徴とするものである。
上記構成の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、餅生地の糖度と,刻み葉わさび漬の糖度の差を10度以内とすることで、餅生地の糖度と,刻み葉わさび漬の糖度を同じ又は近似させるという作用を有する。そして、餅生地と刻み葉わさび漬の糖度を、同じ又は近似させることにより、刻み葉わさび漬を餅生地に混ぜ込んだ際に、刻み葉わさび漬から餅生地への、あるいは、餅生地か刻み葉わさび漬への、水分の流動を妨げて、冷凍保存中に、刻み葉わさび漬又餅生地が乾燥するのを妨げるという作用を有する。
請求項3記載の発明である刻み葉わさび漬入り生菓子は、少なくともデンプンと糖類と水とを含有する餅生地と、この餅生地中に混ぜ込まれて餅生地中に封止される刻み葉わさび漬と、餅生地に被覆される餡とからなる生菓子において、刻み葉わさび漬は,食した際にその食感が感じられる程度の大きさの固形物を含み、餅生地の糖度と,刻み葉わさび漬の糖度の差は、10度以内であり、生菓子は,密封されて冷凍されていることを特徴とするものである。
上記構成の請求項3記載の発明において餅生地は、刻み葉わさび漬をその内部に封止して、刻み葉わさび漬中のイソシアネート類を大気中に揮発し難くするという作用を有する。また、刻みわさび漬は、餅生地にわさび特有の香味及び辛味を付与するという作用を有する。また、餡は餅生地とは異なる食感及び食味を与えるという作用を有する。そして、甘味と、わさび特有の香味及び辛味を同時に摂食可能とすることで、請求項3記載の発明品を食した際に、わさび特有の爽やかな香味及び辛味を感じさせつつ、その辛味により生菓子の甘味を引き立てるという作用を有する。
さらに、上記餅生地中に封止される刻み葉わさび漬けを、食した際にその食感が感じられる程度の大きさの固形物を含む大きさにすることで、刻み葉わさび漬けを製造する際の細胞組織の破壊を最少限度にして、イソシアネート類の揮発を抑制するとともに、食した際にシャキシャキとした心地よい食感を付与するという作用を有する。
加えて、餅生地の糖度と,刻み葉わさび漬の糖度の差を10度以内とすることで、餅生地の糖度と,刻み葉わさび漬の糖度を同じ又は近似させるという作用を有する。そして、餅生地と刻み葉わさび漬の糖度を、同じ又は近似させることにより、刻み葉わさび漬を餅生地に混ぜ込んだ際に、刻み葉わさび漬から餅生地への、あるいは、餅生地か刻み葉わさび漬への、水分の流動を妨げて、冷凍保存中に、刻み葉わさび漬又餅生地が乾燥するのを妨げるという作用を有する。
本発明の請求項1記載の発明によれば、葉わさび漬が有するわさび特有の香味と辛味を有する生菓子(大福)の製造を可能にし、提供することができる。
また、その際に、刻み葉わさび漬に含まれる、わさび特有の香味と辛味のもとであるイソシアネート類の揮発による損失を最少限度に抑えることができる。
さらに、餅生地中に封止される刻み葉わさび漬を、食した際にその触感が感じられる程度の大きさの固形物を含むものにすることで、餅生地を食した際に、柔らかく弾力のある食感の中に、シャキシャキとした心地よい食感を付与することができる。また、必要以上に葉わさび漬が細かく切断されないので、植物細胞組織の破壊に伴うイソシアネート類の揮発を抑制できる。従って、食した際に豊かな香味と辛みを味わうことができる。
また、イソシアネート類は、殺菌効果も有するため、食品の品質保持効果も発揮される。
さらに、請求項1記載の発明によれば、製造された生菓子を、密封した状態で冷凍保存するので、保存中に餅生地内に封止される刻み葉わさび漬から、大気中にイソシアネート類が揮発するのを防止しつつ、刻み葉わさび漬内のイソシアネート類に熱エネルギーを伝達され難くすることによっても、その揮発を防止できる。
この結果、刻み葉わさび漬入り生菓子が食されるまでの間、刻み葉わさび漬の中にしっかりとイソシアネート類を残存させておくことができるので、長期保存後もわさび独特の香味と辛味を有する生菓子(食品)を提供することができる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同じ効果に加えて、餅生地の糖度と、刻み葉わさび漬の糖度を同じ又は近似させることで、製造後の冷凍保存中に、餅生地又は葉わさび漬から水分が抜けてパサついた食感になるのを防止できる。
この結果、長期間保存した場合でも、食味や食感の劣化の少ない刻み葉わさび漬入り生菓子を提供することができる。
請求項3記載の発明によれば、食した際に葉わさび漬の独特のシャキシャキとした食感を有しながら、わさび特有の香味と辛味を有する、新規な生菓子(大福)を提供することができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、密封して冷凍保存することで、わさび特有の香味と辛味を長期間維持させることができる。
この結果、食べておいしく、しかも、長期間冷凍保存した場合でも食味や食感の劣化の少ない高品質な生菓子を提供することができる。
(a)はわさびの根の部分の概念図であり、(b)はわさびの花芽の概念図であり、(c)はわさびの葉の概念図である。 葉わさび漬(醤油漬け)の製造工程を示すフローチャートである。 本発明の実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の断面図である。 本発明の実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造工程を示すフローチャートである。
本発明の実施の形態に係る刻み葉わさび漬入り生菓子及びその製造方法について実施例1及び実施例2を参照しながら詳細に説明する。
はじめに、図1を参照しながらわさびについて説明する。
図1(a)はわさびの根の部分の概念図であり、(b)はわさびの花芽の概念図であり、(c)はわさびの葉の概念図である。
わさび15は、アブラナ科ワサビ属の日本原産の植物であり、図1(a)に示す根12は、すりおろして、主に薬味として用いられる。また、図1(b),(c)に示すような、わさび15の花芽、葉14及び葉柄14aの部分は、葉わさび6と呼ばれおひたしや、醤油漬、粕漬などにされて副菜として食されている。
次に、葉わさび漬(醤油漬け)の製造工程について、図2を参照しながら説明する。図2は葉わさび漬(醤油漬け)の製造工程を示すフローチャートである。
一般に、葉わさび漬(醤油漬)は、以下に示すような葉わさび漬の製造方法16により製造される。なお、ここでは、先の図1(b),(c)に示されるような、わさび15の花芽13、及び、葉柄14aを含む葉14を総称して葉わさび6と呼ぶことにする。
まず、先の図1(b),(c)に示されるような葉わさび6を、冷水でよく水洗いして水を切った後、必要に応じて手でちぎる、あるいは、大きく切り分けたものを、80℃に調整したお湯の中に2〜3分浸して葉わさび6をしんなりとさせる(加熱処理工程:ステップS21)。
この加熱処理工程(ステップS21)を行うことで、葉わさび6の細胞が破壊され、これにより、細胞内において分かれて存在していた、辛味のもとのシニグリンと酵素のミシロナーゼが混ざり合って反応が起こり、辛味成分であるアリルイソシアネート(イソシアネート類)が生成されて、わさび特有のツンとするような香味及び辛味を有する葉わさび漬けになる。
この後、しんなりとした葉わさび6を絞るようにしてしっかりと水気を切ってから、密閉可能な容器に入れて封をして徐熱し(冷まし)、必要に応じて小分け用の密閉容器に入れかえた後、例えば、砂糖、醤油、うまみ調味料、酒、酢、及び、みりん等を適宜調合した醤油風味の漬け汁を、冷ました葉わさび6を収容した密閉容器に満たして素早く容器の封をし、さらに、漬け汁に漬け込んだ葉わさび6を密閉容器ごと冷蔵して所望時間だけ漬け込んで、漬け汁の味を馴染ませる(漬け込み工程:ステップS22)ことで葉わさび漬けとなる。
先にも述べたが、わさび特有の香味と辛味のもとであるイソシアネート類は、他の物質との反応性が高くて損なわれやすい上、揮発性も高く空気中に容易に揮発してなくなってしまう。従って、この漬け込み工程(ステップS22)では、葉わさび6中のイソシアネート類の損失を可能な限り少なくするために、湯通ししてしんなりさせた葉わさび6を、凍結しない程度の温度領域の可能な限り低い温度条件下で取り扱うとともに、密閉容器内に収容している。
なお、一般的な葉わさび漬の製造工程は、主に上述のような加熱処理工程(ステップS21)と、漬け込み工程(ステップS22)により構成されるが、本実施の形態においては、この葉わさび漬を生菓子の材料として使用するにあたり、上記工程に加えて、出来上がった葉わさび漬に砂糖を添加して、葉わさび漬の糖度を、使用する餅生地の糖度に近似させる糖度調整工程と、糖度を調整した葉わさび漬を細かく刻む工程を有している。
なお、この糖度調整工程と、刻み工程の詳細については後段において詳細に説明する。
本発明の実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子について図3を参照しながら詳細に説明する。
図3は本発明の実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の断面図である。なお、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7は、簡単に説明すると餅生地9に刻んだ葉わさび漬を混ぜ込んでなる大福である。
より詳細には、実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7は、少なくともデンプンと、糖類と、水とを含有する餅生地9の内部に、この餅生地9の糖度と同じ又は近似された糖度を有する刻み葉わさび漬6aが混ぜ込まれて、餅生地9によりこの刻み葉わさび漬6aが封止されたもので、例えば、豆類等を主原料とする餡10が包餡されてなる大福8を、包装容器11により密封して冷凍したものである。包装容器11は隙間なく封止されている(密封されている)ので、包装容器11外に刻み葉わさび漬6a中のイソシアネート類が漏れることがない。なお、包装容器11は図3に示すとおり、大福8の表面に密着させる必要は必ずしもないが、包装容器11内の空間にもイソシアネート類の漏れを防止するために、密封に加えて密着させることも有効である。
また、餅生地9内に封止される刻み葉わさび漬6aは、食した際にその食感が感じられる程度の大きさの固形物を含む大きさである。
なお、この大福8は、冷凍保存したものを自然解凍してから食するものである。
先にも述べた通り、葉わさび漬の辛味のもととなるイソシアネート類は反応性が高くて変性し易く、常温で揮発性を有する上、この揮発性は温度上昇とともに顕著になる。加えて、葉わさび漬を細かく刻むとその表面積が増えるので、これにより空気との接触面積が増えて、イソシアネート類は一層揮発し易くなる。
従って、実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7では、このような葉わさび漬を生菓子に使用するに当たり、刻んだ際の大きさを、食した際にその食感が感じられる程度の大きさの固形物を含む程度にすることで、刻み葉わさび漬6aが過度に細かく刻まれないようにしている。
これにより、刻み葉わさび漬6aの表面積の増加を最小限度にして辛味成分であるイソシアネート類の揮発を抑制して、食した際には心地より爽やかな辛味を感じることができるようにしている。加えて、刻み葉わさび漬6aの大きさを上述の通り、すりつぶされたものよりも大きくしておくことで、大福8を食した際に刻み葉わさび漬6aのシャキシャキとした食感を楽しむことができる。
従って、刻み葉わさび漬6aの大きさを、食した際にその食感が感じられる程度の大きさの固形物を含む程度とすることで、大福8の食味及び食感の両方に好ましい効果を発揮させることができる。
さらに、実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7では、餅生地9中に刻み葉わさび漬6aを混ぜ込むことで、餅生地9により刻み葉わさび漬6aの表面を被覆して封止しておくことができる。これにより、刻み葉わさび漬6aからのイソシアネート類の揮発を抑制して、大福8からわさび特有の香味及び辛味が消えるのを防止している。また、上述のような有効成分の封止効果は、皮生地として、餅生地9を用いた場合の方が、スポンジ状の生地を用いる場合よりも顕著である。
加えて、実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7によれば、上述のような大福8を包装容器11内に密封して冷凍保存することで、大福8からイソシアネート類が空気中に拡散するのを包装容器11により妨げつつ、冷凍状態にすることでイソシアネート類への熱エネルギーの伝達を抑制して、大福8中の刻み葉わさび漬6aからわさび特有の香味及び辛味が消えるのを防止している。
従って、実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7によれば、大福8を構成する餅生地9や餡10の甘みが、刻み葉わさび漬6aの独特の辛味により引き立てられて美味しい、新規な生菓子を提供することができる。
また、実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7では、餅生地9に混合され封止される刻み葉わさび漬6aの辛味が消えるのを防止するために、包装容器11による密封や、大福8の冷凍を行っているが、これらは大福8の保存や搬送時に、食品の衛生状態を好適に維持するのにも役に立つ。
加えて、葉わさび漬けの辛味成分は、古くから薬味として使用されてきたように、殺菌性を有しているので、このような刻み葉わさび漬6aを餅生地9中に包含させることで、大福8自体の食品としての安全性及び保存性を高めることができるという効果も有している。
次に、図4を参照しながら実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1について詳細に説明する。
図4は本発明の実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造工程を示すフローチャートである。なお、なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
先の図3に示すような刻み葉わさび漬入り生菓子7の製造方法(刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1)は、以下に示す通りである。
はじめに、餅生地9のもととなる餅生地原料と、水とを計量する(ステップS10)。この餅生地原料は、少なくともデンプン2と、糖類3とを含有してなるものである。より具体的には、餅生地原料は、例えば、デンプン2としてもち米(粉体)を単体で、あるいは、もち米の一部を調理用デンプン粉に置き換えたものを用い、また、糖類3として、例えば、上白糖を用い、必要に応じて、品質改良材として、例えば、酵素や乳化材(この乳化材は、原料を乳化させる性質を有する物質の総称である)を加えるとともに、好みに応じて食塩を適量加えたものである。
なお、餅生地材料を構成する各材料の配合割合の一例を、以下の表1に示した。
また、本実施の形態に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7の餅生地材料を構成する材料及びその配合量は、必ずしも、以下の表1に記載されるものに限定される必要はなく、季節に応じて、また、使用する材料の特性に応じて適宜変更してよい。なお、品質改良材や食塩を用いない場合には、餅生地原料、糖類、水のそれぞれの量の調整を単独で、あるいは、これらのうちの少なくとも2種類の量の調整を同時に行う。
Figure 0005756765
上記、餅生地材料において、糖類3は餅生地9の甘みのもととなるだけでなく、製造後の冷凍時に餅生地9に保水性を付与してその凍結を防止し、これにより餅生地9の乾燥を防ぐという作用を有する。
また、品質改良材として使用される酵素は、例えば、餅生地9を構成するデンプン質の老化を防ぐという作用を有する。また、乳化材も、同じく餅生地9を構成するデンプン質の老化を防げるとともに、酸化による餅生地材料の品質の劣化を防止するという作用を有する。そして、品質改良材である酵素や乳化材としては、製菓材料や食品添加物として使用される公知の材料を支障なく使用できる。
なお、本実施例においては、酵素と乳化材とを同時に使用する場合を例に挙げて説明しているが、いずれか一方のみで十分な餅生地9の品質改良効果が発揮される場合は、いずれか一方のみを用いてもよい。また、餅生地材料に添加される糖類が、品質改良材と同等の作用効果を有する場合は、必ずしも品質改良材を添加する必要はない。
さらに、好みに応じて適量添加される食塩は、刻み葉わさび漬入り生菓子7の甘みを引き立てるという作用を有する。
そして、先のステップS10において、計量した餅生地材料に、計量した水4を加えて十分に混合し(ステップS11)、この混合物を蒸し器に入れて蒸して、混合物中のデンプンが糊化するまで60分程度蒸し上げる(ステップS12)。
この後、蒸し上がった混合物に、上表1に示される品質改良材の分量の一部で、予め取り分けておいた乳化材を添加して、餅生地の固さと粘度を所望の状態に調整するとともに、やはり、上表1に示される糖類の分量の一部で、別に取り分けておいた、例えば、マルトース及び上白糖を加えてさらに混合して(ステップS13)滑らかな餅生地9とする。
次に、このステップ13でできた餅生地9を、冷蔵庫内にて一晩冷蔵して冷却させる(ステップS14)。ここで餅生地9を冷却するのは、次のステップS15において刻み葉わさび漬6aを混ぜ込む際に、餅生地9中の熱により刻み葉わさび漬6a中に含まれるイソシアネート類の揮発が促進されるのを防止するためである。
なお、ステップS14における餅生地9の冷却温度は、可能な限り常温よりも低い方が好ましいが、餅生地9の温度をあまり低くしすぎると、今度は餅生地9が硬化して、刻み葉わさび漬6aの混合や、餡10の包餡作業が困難になってしまう。このため、餅生地9の温度は、常温から水分が凍結しない温度範囲内とすることが望ましい。
なお、餅生地9に糖類3及び乳化材を添加することで、冷却工程(ステップS14)を行った際に餅生地9の硬化を防止できる。
ここで、ステップS10〜S14により製造された餅生地9に混合する刻み葉わさび漬6aについて図4を参照しながら説明する。
本発明に係る大福8を構成する餅生地9中に、先の図1に示すような葉わさび漬の製造方法16により製造された葉わさび漬をそのまま刻んで添加すると、葉わさび漬の糖度と、餅生地9の糖度に大きな差があるので、より具体的には、餅生地9の糖度が葉わさび漬の糖度よりも大幅に高いので、葉わさび漬の水分が餅生地9中に流動してしまい、大福8を冷凍保存した際に、刻み葉わさび漬6aが乾燥してその風味と食感が損なわれてしまう。
このような事情に鑑み、発明者は鋭意研究の結果、餅生地9に葉わさび漬を添加する前に、予めその糖度を餅生地9の糖度と同じ又は近似させておくことで、餅生地9に混入した際に、葉わさび漬の水分が餅生地9に流出するのを防止できることを見出した。
より具体的には、餅生地9の糖度と、刻み葉わさび漬6aの糖度の差を糖10度以内にしておくことで、これらを混合した際に各材料間における水分の流動を防止して、いずれか一方の食材が水っぽくなったり、べたつきを生じたり、あるいは、乾燥してパサついた食感になるのを防止できる。
しかも、餅生地9中において刻み葉わさび漬6aの含水率が好適に維持されることは、冷凍保存後に解凍してなる大福8を食した際に、刻み葉わさび漬6aを、シャキシャキとした心地よい食感を有する状態にできることを意味している。
従って、実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1では、漬け込み工程(ステップS22)を完了した葉わさび漬に加糖して、その糖度を餅生地9の糖度と同じ又は近似させるための工程として糖度調整工程(ステップS23)を設けている。
さらに、先にも述べたとおり葉わさび漬は、細かく刻まれてその表面積が増えると、空気と接触する面積も増えて、わさび独特の香味と辛味のもとであるイソシアネート類が揮発し易くなり、最終的には、大福8を食した際のわさび特有の香味と辛味が消えてなくなってしまうことになる。
このため、実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1では、葉わさび漬からの揮発によるイソシアネート類の損失を少なくするために、餅生地9に混合する直前に糖度調整済の葉わさび漬を粗刻みにして(ステップS24)しっかりと水気を切り、この後直ちに、先のステップS14にて十分に冷やされた餅生地9に手早く混合する(ステップS15)よう構成している。
この場合、ステップS15の刻み工程により、刻み葉わさび漬6a中のイソシアネート類は一時的に極めて揮発し易い状態になるが、直ちに十分に冷えた餅生地9中に封止されることで、その損失を最少限度にすることができる。
さらに、ステップS13において乳化材や糖類が混合され、続くステップS14において冷却された餅生地9の硬さを、刻み葉わさび漬6aを混入した際に、この餅生地9からの刻み葉わさび漬6aの分離が容易でない程度にすることで、より具体的には、刻み葉わさび漬6aを混合する餅生地9の硬さを、刻み葉わさび漬6aを餅生地9からつまみ上げた際に、餅生地9の一部が刻み葉わさび漬6aに付着した状態で取り上げられる程度の硬さに調整しておくことで、ステップS15において、刻まれて表面積が増加してイソシアネート類が揮発し易い状態になった刻み葉わさび漬6aの表面を餅生地9によりしっかりとコーティングすることができ、これにより刻み葉わさび漬6aからのイソシアネート類の揮発による損失を抑制することができる。
すなわち、本発明に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1によれば、餅生地9中に刻み葉わさび漬6aを封止しておくことができるので、大福8を冷凍条件下において長期間保存した後も、大福8を食した際に、わさび特有の香味及び辛味を感じさせることができる。
実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1では、餅生地9及び刻み葉わさび漬6aの糖度は、好みに応じて適宜変更可能であるが、餅生地9及び刻み葉わさび漬6aの糖度を50度以上にしておくことで、大福8を凍結保存する際に、大福8の餅生地9及び刻み葉わさび漬6aから水分が抜けるのを確実に防止して、長期保存後に解凍して食した際でも、大福8がパサついた食感になるのを防止できる。
また、餅生地9への刻み葉わさび漬6aの添加量は、特に規定する必要はないが、過剰に添加すると餅生地9がべたついてまとまりがなくなる一方、少なすぎるとわさび特有の香味と辛味が感じられなくなってしまう。
再び図4の説明に戻るが、ステップS15において刻み葉わさび漬6aを手早く混ぜ込んだ餅生地を用いて、例えば、少なくとも豆類、砂糖、水とを煮込んでなる餡10を包餡して(ステップS16)大福8を形成した後、大福8からのイソシアネート類の揮発を抑制するために、この大福8を直ちに急速冷凍させる(ステップS17)。なお、ステップS16の包餡作業には特に図示しないが、包餡機を用いてもよい。
この後、冷凍されて硬化した大福8を、包装容器11内に密封し(ステップS18)、その冷凍状態を維持したもの(ステップS19)が、先の図3に示す実施例1に係る刻み葉わさび漬入り生菓子7である。
そして、実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1により製造された大福8は、ステップS17において急速に冷凍されることで、刻み葉わさび漬6a中のイソチアネート類の揮発を休止状態にすることができるが、大福8と空気の接触を絶つことで、大福8にわさび特有の香味と辛味のもとであるイソシアネート類をより多く残存させることができるため、ステップS18の密封工程も行うことが望ましい。
なお、実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1においては、図4に示す、混合・封止工程(ステップS15)及び包餡工程(ステップS16)を、常温以下の温度条件下において行うことで、より望ましくは、冷蔵温度条件下(10℃以下の温度条件下)において行うことで、餅生地9に混合される刻み葉わさび漬6aからのイソシアネート類の揮発を好適に抑制できる。
また、密封工程(ステップS18)においては、大福8は冷凍状態にあるため、イソシアネート類の揮発が促進される恐れは極めて低いが、この作業中に大福8が解凍されることは、イソシアネート類の揮発防止の点からも、また、食品衛生の点からも好ましくない。従って、ステップS18は、大福8の凍結状態を維持したまま行う必要がある。
実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1では、葉わさび6の漬け込み工程(ステップS22)を、糖度調整工程(ステップS23)とは別に行う場合を例に挙げて説明しているが、ステップS22において使用する漬け汁の糖度を始から高めておくことで、漬け込み工程(ステップS22)と糖度調整工程(ステップS23)を兼ねて1度で済ませることもできる。
また、実施例1,2においては、大福8に内包される餡10の一例として、豆類と砂糖からなる餡10を用いる場合を例に挙げて説明しているが、この餡10は野菜等を用いた惣菜系の餡でもよいし、豆類の餡と惣菜系の餡を組み合わせたものでもよい。あるいは、その他の食材からなるクリーム状の餡、および、上記餡とクリーム状の餡を組み合わせたものでもよく、好みに応じて自由に変更してよい。なお、本実施の形態においては、餅生地9の包まれる具材を総称して餡10と呼んでいる。
上述のような実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1によれば、その製造工程において、わさび独特の香味と辛味のもとであるイソシアネート類の揮発による損失を極力抑制できるので、製品を食した際にわさび特有の爽やかな香味及び辛味を味わうことができ、かつ、長期保存後もしっとりとしてパサつき感がなく、しかも、刻み葉わさび漬6aのシャキシャキとした食感も味わうことができる、新規なわさび大福(刻み葉わさび漬入り生菓子7)を提供することができる。
また、これにより、従来調理方法が限定されていた葉わさび6の新たな食べ方を提供できるので、葉わさび6の消費の拡大を促進することができる。
さらに、実施例2に係る刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法1により製造された刻み葉わさび漬入り生菓子7は、冷凍保存により6ヶ月後も良好な品質を保持することができる。
以上説明したように本発明は、わさび独特の香味と辛味を大福とともに味わうことができ、かつ、長期保存後もしっとりとしてパサつき感がなく、それでいて刻み葉わさび漬のシャキシャキとした心地よい食感も味わうことができる刻み葉わさび漬入り生菓子およびその製造方法であり、製菓および食品の製造に関する分野において利用可能である。
1…刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法 2…デンプン 3…糖類 4…水 6…葉わさび 6a…刻み葉わさび漬 7…刻み葉わさび漬入り生菓子 8…大福 9…餅生地 10…餡 11…包装容器 12…根 13…花芽 14…葉 14a…柄 15…わさび 16…葉わさび漬の製造方法

Claims (3)

  1. 少なくともデンプンと糖類とを含有する餅生地材料と,水と,を混合してなるものを摂食可能に加熱処理して餅生地にする第1の工程と、
    この第1の工程の後に,前記餅生地を常温から水分が凍結しない温度範囲内にまで冷却する第2の工程と、
    この第2の工程の後に,刻み葉わさび漬を前記餅生地に混ぜ込んで,前記餅生地中に前記刻み葉わさび漬を封止する第3の工程と、
    この第3の工程の後に,前記餅生地により包餡して大福を形成する第4の工程と、
    この第4の工程の後に,前記大福を冷凍する第5の工程と、
    この第5の工程の後に,前記大福の凍結状態を維持しながら前記大福を密封する第6の工程と、
    この第6の工程の後に,密封された前記大福を冷凍保存する第7の工程とを有し、
    前記刻み葉わさび漬は、食した際にその触感が感じられる程度の大きさの固形物を含むことを特徴とする刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法。
  2. 前記餅生地の糖度と,前記刻み葉わさび漬の糖度の差は、10度以内であることを特徴とする請求項1記載の刻み葉わさび漬入り生菓子の製造方法。
  3. 少なくともデンプンと糖類と水とを含有する餅生地と、この餅生地中に混ぜ込まれて前記餅生地中に封止される刻み葉わさび漬と、前記餅生地に被覆される餡とからなる生菓子において、
    前記刻み葉わさび漬は,食した際にその食感が感じられる程度の大きさの固形物を含み、
    前記餅生地の糖度と,前記刻み葉わさび漬の糖度の差は、10度以内であり、
    前記生菓子は,密封されて冷凍されていることを特徴とする刻み葉わさび漬入り生菓子。
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