以下、本発明の各実施形態について図面と共に説明する。実施形態と請求項の相互の関係は、以下のとおりである。まず、実施形態1は、主に請求項1などに対応する。実施形態2は、主に請求項2および請求項7などに対応する。実施形態3は、主に請求項3および請求項8などに対応する。実施形態4は、主に請求項4などに対応する。実施形態5は、主に請求項5などに対応する。実施形態6は、主に請求項6などに対応する。なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
<<実施形態1>>
<概要>
図1は、本実施形態のコイルを含む電気回路の導通状態検査装置の回路の一例を示す図である。この図にあるように、本実施形態の「導通状態検査装置」0100は、「コイル」0111を含む電気回路を有する「スピーカ」0110などに接続され、まずは「定電流電源」0103から前記電気回路に対し直流電流を印加し静的負荷を与える。そして前記静的負荷を与えることにより得られる直流抵抗を「電流電圧検出器」0104において検出し、当該検出された結果を「A/D変換器」0102を通じて「制御回路」0101にて導通状態の判定に用いる。その後制御回路からの信号を「D/A変換器」0105を通じて受けた「パルス発生器」0106が発したパルス信号を「パワーアンプ」0107にて増幅しつつコイルを含む電気回路に印加し動的負荷を与える。そして前記動的負荷を与えることにより得られる電流又は/及び電圧を電流電圧検出器において検出し、当該検出された結果の値を測定し、A/D変換器を通じて制御回路にて導通状態の判定に用いる。ここで、静的負荷を与えた場合に良好な導通状態であると判断されればもちろんのこと、動的負荷を与えても良好な導通状態が保たれると判断されれば、当該回路は、検査後の物流の過程等で振動等の物的負荷が加わったとしても、十分実用に耐えうることができると考えられる。すなわち、静的負荷のみならず動的負荷をも加えて導通状態を検査する構成を有することにより、導通状態が悪いあるいは不安定である回路が製品に組み込まれ、不良品として市場に供給されることを事前に防ぐことが可能になる。
<機能的構成>
図2は、本実施形態のコイルを含む電気回路の導通状態検査装置の機能ブロックの一例を示す図である。この図にあるように、本実施形態の「導通状態検査装置」0200は、「第一印加部」0201と、「第一測定部」0202と、「第一判定部」0203と、「第二印加部」0204と、「第二測定部」0205と、「第二判定部」0206とを有する。当該構成をとることにより、静的負荷のほかにも動的負荷を与えることが可能になり、より実効性のある導電状態検査を実行することが可能になる。
なお、以下に記載する装置の機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUやメインメモリ、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶メディアとそれらのメディアの読取ドライブなど)、情報入力に利用される入力デバイス、プリンタや表示装置、パルス発生器、電流電圧検出器、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェース、通信用インターフェース、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラムなどが挙げられる。そして、メインメモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力されメモリやハードウェア上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、前記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。ここで、上記プログラムは、モジュール化された複数のプログラムとして実現されてもよいし、2以上のプログラムを組み合わせて一のプログラムとして実現されても良い。
また、本発明は装置として実現できるのみならず、方法としても実現可能である。さらに、このような装置の一部をソフトウェアとして構成することも可能である。そして、そのようなソフトウェアが記録された記録媒体も当然に本発明の技術的な範囲に含まれる(本実施形態に限らず、本明細書の全体を通じて同様である。)。
「第一印加部」は、直流電流の印加による静的負荷を与える機能を有する。ここで「直流電流の印加による静的負荷を与える」とは、具体的には、電流電源から電気回路に通じるコイルに対し電流を印加することを意味しており、「静的負荷」とは、後記「動的負荷」との相対表現として用いる概念である。
そもそも静的負荷を加える目的は、直流電流を印加することによりコイルを含む電気回路が断線しているかどうかを検査する点にあるため、敢えて大量の電流を印加したり、印加する電流を急激に変化させたりする必要はない。したがって、ここで印加する直流電流は微小であれば十分であり、例えば印加する直流電流としては1mA程度が想定されうる。そして、静的負荷を与える時間も導通状態を判定するに足る程度であればよい。
「第一測定部」は、前記静的負荷を与えることにより得られる直流抵抗の値を測定する機能を有する。前記のとおり、静的負荷を与える時間はわずかでよく、通常の電気回路であれば、例えば0.1ないし0.2秒程度負荷を与えれば十分に直流抵抗の値を測定することが可能である。
「第一判定部」は、第一測定部にて得られる測定結果から導通状態を判定する機能を有する。具体的には、予め正常な導通状態であることを示す直流抵抗の値を基準値として保持しておき、当該基準値から前記第一測定部にて測定した値を除すことによる差分を算出し、例えば当該差分値が負側にある、すなわち測定値が基準値を上回る場合には正常な導通状態ではないと判定し、当該差分値が正である、すなわち測定値が基準値を下回る場合には正常な導通状態にあると判定する構成が考えられる。また、差分値として許容できる上下限閾値を予め設けておき、実際に算出される差分値が前記上下限閾値を越えなければ正常な導通状態と判定する構成であってもよい。ここで「差分値として許容できる上下限閾値」とは具体的な数値で示されてもよいし、例えば「基準値の前後20%以内」といったように特定の割合によって示されてもよい。そして、様々な環境下で使用される複数の電気回路の導通状態を検査することを可能とするため、基準値の値は適宜変更可能とする構成であることが望ましい(他の処理に用いる基準値においても同様である。)。このように、差分値として特定値ではなく上下限閾値を設けるような構成をとることによって、過度に厳密な検査を行うことで実用には支障のない程度の抵抗値であっても非導通状態であると判断するなど、経済効率性に反するような判定を行うことを回避することが可能になる。
なお、第一判定部及び後記第二判定部のいずれかにおいて示される判定結果は、表示装置による表示あるいはスピーカによる音声によって利用者に認識可能な状態で提示される構成をとることも考えられる。具体的には、例えば正常な導通状態との判定結果である場合には「OK」など導通状態が正常であることを意味する内容の表示を行うことが考えられるほか、非正常な導通状態との判定結果である場合には「NG」や「ERROR」など導通状態が非正常であることを意味する内容の表示を行ったり、警告音を発したりすることが考えられる。当該構成をとることにより、利用者は判定結果を五感でより感じやすくなる。
「第二印加部」は、パルス信号の印加による動的負荷を与える機能を有する。ここで「パルス信号の印加による動的負荷を与える」とは、端的にいえば、コイルに対し所定の電流又は/および電圧をかけることにより、コイルを機械的に振動させることを意味する。既に説明したように、静的負荷のみならず動的負荷を加える目的は、仮にコイルと配線との接触が不完全であった場合に回路を用いたスピーカなどの製品が搬入等出荷前に受ける振動に耐え得る導通状態であることを検査する必要があるためである。したがって、第二印加部にて印加するパルス信号は、前記目的を達成するに足る程度の負荷を与えるものである必要があり、少なくとも前記第一印加部にて印加する直流電流よりは大きな負荷を与える程度である必要がある。具体的には、パルス周期を0.1mSないし40mS程度とし、パルス電圧を0.1Vp−pないし40Vp−p程度まで選択可能な構成とすることが考えられる。
「第二測定部」は、前記動的負荷を与えることにより得られる電流又は/及び電圧の値を測定する機能を有する。前記のとおり、動的負荷は静的負荷と異なり、回路や配線に対して物理的な負荷を与えることを目的としていることから、負荷を与える時間も当該目的を達成するに足りる程度のものが必要であり、測定を継続する時間は、例えば0.1秒から10秒程度の間で適宜変更可能な構成とすることが考えられる。
なお、電流又は/及び電圧の値を測定するタイミングは、パルス信号の印加のタイミングと密接に関連している。すなわち、パルス信号の印加により生じるインピーダンスは印加中大きく変動することから、上記各値を安定的に測定するためには、印加後できるだけ速やかに測定を開始することが望ましい。したがって、例えば、パルス信号の印加開始後50μS程度で測定を開始することが望ましい。
「第二判定部」は、第二測定部にて得られる測定結果から導通状態を判定する機能を有する。具体的には、予め正常な導通状態であることを示す電流又は/及び 電圧の値を基準値としてそれぞれ保持しておき、当該基準値と前記第二測定部にて測定した値との差分を算出し、例えば、当該差分値が負である、すなわち測定 値が基準値を上回る場合には正常な導通状態ではないと判定し、当該差分値が正である、すなわち測定値が基準値を下回る場合には正常な導通状態にあると判定 する構成が考えられる。また、差分値として許容できる上下限閾値を予め設けておき、実際に算出される差分値が前記上下限閾値を越えなければ正常な導通状態 と判定する構成であってもよい。ここで「差分値として許容できる上下限閾値」とは具体的な数値で示されてもよいし、例えば「基準値の前後20%以内」と いったように特定の割合によって示されてもよい。このように、差分値として特定値ではなく上下限閾値を設けるような構成をとることによって、過度に厳密な 検査を行うことで実用には支障のない程度の抵抗値であっても非導通状態であると判断するなど、回路を市場に流通させるうえで経済効率性に反するような判定 を行うことを回避することが可能になる。
なお、電流及び電圧の測定値を比較する構成とする場合には、例えば、前記二つの測定値のうちどちらかいっぽうでも基準値との差分値が前記上下限閾値を超過していれば導通状態が非正常であると判断する構成をとってもよいし、二つの測定値の両方が示す基準値との差分値が前記上下限閾値を超過していな限り導通状態は正常であると判断する構成をとってもよい。様々な測定値を複合的に組み合わせて検査することが可能な当該構成をとることにより、利用者の求める様々な水準に対応した検査を行うことが可能になる。
<具体的な構成>
図3は、上記導通状態検査装置の機能的な各構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図である。具体的には、先に図1を用いて説明したコイルを含む電気回路の導通状態検査装置の構成のうち、制御回路の機能をコンピュータに置き換えた場合における構成について示している。この図を利用して、それぞれのハードウェア構成部の働きについて説明する。
この図にあるように、導通状態検査装置は、各種演算処理を実行するための「CPU」0301と、「記憶装置(記憶媒体)」0302と、「メインメモリ」0303と、「入出力インターフェース」0304と、を備え、入出力インターフェースを介して、例えば「表示装置」0305や「印刷機器(プリンタ)」0306、「測定機器」0307、「パルス発生器」0308、「電流電圧検出器」0309などと情報の送受信を行う。記憶装置には各種プログラムが格納されており、CPUはこれら各種プログラムをメインメモリに展開したうえで実行する。これらの構成は、「システムバス」0310などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。なお、同図において示される第一制御プログラム、第二制御プログラムおよび第三プログラムについては、本実施形態においては説明を行わず、各プログラムに該当する実施形態と対応する箇所において適宜説明を加えるものとする。
(第一印加部の具体的な処理)
CPUは、第一印加プログラムを実行し、電流電源からコイルを通じて電気回路に対し電流を印加するための処理を行う。
(第一測定部の具体的な処理)
CPUは、第一測定プログラムを実行し、前記第一印加プログラムの実行により得られた直流抵抗値を取得するための処理を行い、当該情報をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
(第一判定部の具体的な処理)
CPUは、予め基準値として保持する直流抵抗値の情報と前記第一測定プログラムの実行により得られた直流抵抗の測定値の情報を読み出して第一判定プログラムを実行し、前記測定値と前記基準値とを比較して導通状態を判定する処理を行い、その結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
(第二印加部の具体的な処理)
CPUは、第二印加プログラムを実行し、パルス発生器からパワーアンプを通じて増幅したパルス信号を、コイルを通じて電気回路に印加するための処理を行う。
(第二測定部の具体的な処理)
CPUは、第二測定プログラムを実行し、前記第二印加プログラムの実行により得られた電流値又は/及び電圧値を取得し、当該各情報をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
(第二判定部の具体的な処理)
CPUは、予め基準として保持する電流値又は/及び電圧値の情報と、前記第二測定プログラムの実行により得られた電流又は/及び電圧の各測定値の情報を読み出して第二判定プログラムを実行し、前記各測定値と前記基準値とを比較して導通状態を判定する処理を行い、その結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
<処理の流れ>
図4は、本実施形態の導通状態検査装置の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0401では、コイルを含む電気回路に対し静的負荷を印加する。次にステップS0402は、当該静的負荷の印加により得られる直流抵抗値を測定する。次にステップS0403は、前記測定により得られた直流抵抗値と予め保持されている基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。なお、ステップS0411ではコイルを含む電気回路に対し動的負荷を印加する。次にステップS0412では、当該動的負荷の印加により得られる電流値又は/及び電圧値を測定する。そしてステップS0413では、前記測定により得られた各値と予め保持されている各基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。
ここで、ステップS0401ないしステップS0403までの処理とステップS0411ないしステップS0413までの処理とは、それぞれが一の処理ブロックとして独立しており、最初にステップS0401の処理を行い、ステップS0403の処理ののちにステップS0411に進んでもよいし、ステップS0411の処理を最初に行い、ステップS0413の処理の後にステップSステップ0401の処理をおこなってもよい。さらに、ステップS0401から処理を始める場合にはステップS0403の処理をステップS0413の前後に行ってもよく、ステップS0411から処理を始める場合にはステップS0413の処理をステップS0403の前後に行ってもよい。
<効果>
以上の構成を有する導通状態検査装置により、導通状態が不安定なままの電気回路が製品化され、不良品として市場に出回ることを事前に防ぐことが可能になる。
<<実施形態2>>
本実施形態の導通状態検査装置は、基本的に実施形態1の導通状態検査装置と同様であるが、前記負荷を与える順序を、静的負荷を最初としその後動的負荷を与えるように第一印加部と第二印加部を制御することを特徴とする。負荷を与える順番を制御することを特徴とする当該構成をとることにより、市場に流通する際に求められる水準の導通状態であるかどうかをより実態に則して判定することが可能になる。
<機能的構成>
図5は、本実施形態の導通状態検査装置の機能ブロックの一例を示す図である。この図にあるように、本実施形態の「導通状態検査装置」0500は、「第一印加部」0501と、「第一測定部」0502と、「第一判定部」0503と、「第二印加部部」0504と、「第二測定部」0505と、「第二判定部」0506と、「第一制御部」0507と、「第一制御部」0508とを有する。基本的な構成は実施形態1の図2を用いて説明した導通状態検査装置と共通するため、以下では相違点である第一制御部について説明する。
「第一制御部」は、前記負荷を与える順序を、静的負荷を最初とし、その後動的負荷を与えるように第一印加部と第二印加部を制御する機能を有する。当該構成をとる理由は、後記のとおり静的負荷を与える目的と、動的負荷を与える目的との違いに起因する。すなわち、そもそも動的負荷を与える目的は、運搬時などに加えられる振動や衝撃に耐えられる水準の回路であるかどうかを検査する。すなわち、運搬時の振動や衝撃を問題とする以上、動的負荷を印加するケースは、そもそも製品として運搬するに値するだけの導通状態であることが前提となる。そのため、動的負荷を与えるタイミングとしては、既に静的負荷を印加することにより、運搬するに値するだけの最低限度の導通状態であることが理解可能な状態であることが望ましい。
なお、第一制御部にて制御するのは、前記各負荷を与える順序のみで構わない。すなわち、上記意義のもとでは、各印加部の働きによって得られる直流抵抗の値や電流又は/及び電圧の値を測定するタイミングや、各測定値にもとづいて導通状態を判定するタイミングまでをも制御する意味は特にないのであって、これらのタイミングは適宜設定可能である。
なお、第二判定部においては、例えば、第一測定部における測定結果を用いて、前記基準値の値を限定したうえで判定を行う構成をとってもよい。具体的には、第一測定部における測定値の大小に応じて好適な導通状態であると判定可能な電流又は/及び電圧の値をテーブルとして予め保持しておき、実際に第一測定部において測定された値に応じて当該テーブルにおいて対象となる電流又は/及び電圧の値を基準値として設定する構成が考えられる。当該構成をとることにより、より具体的で詳細な分析に基づいた導通状態の判定を行うことが可能になる。
<具体的な構成>
本実施形態の導通状態検査装置のハードウェア構成は、基本的に図3を用いて説明した実施形態1の導通状態検査装置のハードウェア構成と同様である。そこで以下では、これまで説明していない第一制御部の具体的な処理について説明する。
(第二制御部の具体的な処理)
CPUは、第一制御プログラムを実行し、第一印加プログラムを実行した後に第二印加プログラムを実行するように各印加プログラムを制御する処理を行う。
<処理の流れ>
図6は、本実施形態の導通状態検査装置の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは、以下のステップからなる。最初にステップS0601では、コイルを含む電気回路に対し静的負荷を印加する。次にステップS0602では、前記静的負荷の印加により得られる直流抵抗値を測定する。そしてステップS0603では、前記測定により得られた直流抵抗値と予め保持されている基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。その後ステップS0604ではコイルを含む電気回路に対し動的負荷を印加し、ステップS0605では、前記動的負荷の印加により得られる電流又は/及び電圧の値を測定する。そしてステップS0606では、前記測定により得られた電流又は/及び電圧の各値と予め保持されている各基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。
<効果>
本実施形態の導通状態検査装置を用いることにより、実施形態1の効果に加え、市場に流通する際に求められる水準の導通状態であるかどうかを、より実態に則して判定することが可能になる。
<<実施形態3>>
本実施形態の導通状態検査装置は、基本的に実施形態2の導通状態検査装置と同様であるが、前記負荷を与える順序を、静的負荷を最初としその後動的負荷を与え、最後に再び静的負荷を与えるように第一印加部と第二印加部を制御することを特徴とする。当該構成を特徴として有することにより、動的負荷を与えた後でコイルを含む電気回路の接続状態を改めて確認でき、コイルを含む電気回路の利用実態に即した実効性のある導通状態の検査が可能になる。
<機能的構成>
図7は、本実施形態の導通状態検査装置の機能ブロックの一例を示す図である。この図にあるように、本実施形態の「導通状態検査装置」0700は、「第一印加部」0701と、「第一測定部」0702と、「第一判定部」0703と、「第二印加部部」0704と、「第二測定部」0705と、「第二判定部」0706と、「第二制御部」0707とを有する。基本的な構成は実施形態2の図5を用いて説明した導通状態検査装置と共通するため、以下では相違点である第二制御部について説明する。
「第二制御部」は、前記各負荷を与える順序を、静的負荷を最初としてその後動的負荷を与え、さらにその後静的負荷を与えるように第一印加部と第二印加部を制御する機能を有する。先に説明したように、負荷を与える順番を前記のように制御する意義は、コイルを含む電気回路が現実に流通する際に受ける負荷を再現することにあるため、第二制御部にて制御するのは、前記各負荷を与える順序のみで構わない。すなわち、上記意義のもとでは、各印加部の働きによって得られる直流抵抗の値や電流又は/及び電圧の値を測定するタイミングや、各測定値にもとづいて導通状態を判定するタイミングまでをも制御する意味は特にないのであって、これらのタイミングは適宜設定可能である。
なお、本実施形態において導通状態を判定する方法としては、1回目の第一判定部における判定結果と第二判定部における判定結果、2回目の第一判定部における判定結果の3つの判定結果を用いることになる。この場合、上記3つの判定結果をそれぞれ有する基準値と比較することによって最終的な導通状態を判定してもよいし、1回目の第一判定部における判定結果と2回目の第一判定部における判定結果とを相互に比較して、当該値の誤差が所定範囲以内であれば導通状態にあると判定してもよい。
<具体的な構成>
本実施形態の導通状態検査装置のハードウェア構成は、基本的に図3を用いて説明した実施形態1の導通状態検査装置のハードウェア構成と同様である。そこで以下では、これまで説明していない第二制御部の具体的な処理について説明する。
(第二制御部の具体的な処理)
CPUは、第二制御プログラムを実行し、第一印加プログラムの実行後に第二印加プログラムを実行し、その後再び第一印加プログラムを実行するように各プログラムの実行順序を制御する処理を行う。
<処理の流れ>
図8は、本実施形態の導通状態検査装置の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0801では、コイルを含む電気回路に対し静的負荷を印加する。次にステップS0802では、前記静的負荷の印加により得られる直流抵抗値を測定する。そしてステップS0803では、前記測定により得られた直流抵抗値と予め保持されている基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。その後ステップS0804ではコイルを含む電気回路に対し動的負荷を印加し、ステップS0805では、前記動的負荷の印加により得られる電流又は/及び電圧の値を測定する。そしてステップS0806では、前記測定により得られた電流又は/及び電圧の各値と予め保持されている各基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。その後さらにステップS0807では、再び静的負荷を印加し、ステップS0808において前記静的負荷の印加により得られた直流抵抗値を測定、ステップS0809において当該測定値と前記基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。
ここで、先に説明したように、本実施形態において制御されるのは静的負荷と動的負荷のタイミング、即ちステップS0801とステップS0804とステップS0807が当該順序にて処理される点であって、他のステップの順番までは制御されない。したがって、例えば、ステップS0804の処理を2番目、ステップS0807の処理を3番目に行い、4番目以降は印加の結果得られる各値の測定ステップであるステップS0802、ステップS0805そしてステップS0808の各処理を行い、その後に判定ステップであるステップS0803、ステップS0806そしてステップS0809をおこなってもよい。
<効果>
本実施形態の導通状態検査装置によって、動的負荷を与えた後でコイルを含む電気回路の接続状態を改めて確認でき、コイルを含む電気回路の利用実態に即した実効性のある導通状態の検査が可能になる。
<<実施形態4>>
本実施形態の導通状態検査装置は、基本的に実施形態1の導通状態検査装置と同様であるが、デューティー比の異なる複数の信号から構成される信号によって動的負荷を与えることを特徴とする。当該特徴を有することにより、コイルを有する電気回路の現実の利用実態に即した導通状態の検査結果を得ることが可能になる。
<機能的構成>
図9は、本実施形態の導通状態検査装置の機能ブロックの一例を示す図である。この図にあるように、本実施形態の「導通状態検査装置」0900は、「第一印加部」0901と、「第一測定部」0902と、「第一判定部」0903と、「第二印加部部」0904と、「第二測定部」0905と、「第二判定部」0906とを有し、第二印加部はさらに「不定印加手段」0907を有する。基本的な構成は実施形態1の図2を用いて説明した導通状態検査装置と共通するため、以下では相違点である不定印加手段について説明する。
「不定印加手段」は、デューティー比の異なる複数の信号から構成される信号によって動的負荷を与える機能を有する。ここで、「デューティー比の異なる複数の信号から構成される信号」とは、具体的には、コイルを含む電気回路に印加するパルス信号がパルス幅の異なる複数の信号の組み合わせによって構成されていることを意味している。そして、一定周期でのパルス幅が異なるパルス信号を印加するということは、当該パルス信号が不定周期にてOn/Off状態を繰り返しながら印加先であるコイルを含む電気回路に動的負荷を加えることを意味している。先に説明したように、コイルを含む電気回路に対し動的負荷を与える根本的な目的は、当該回路を含む製品が検査後に出荷され運搬される際などに受ける振動や衝撃にも十分耐えうるだけの充分な接続が配線とコイルとの間でなされているかを検査する点にある。このような目的のもとで求められる動的負荷の内容は、できるだけ上記出荷・運搬時と類似した性質、すなわちこれらの時点における実態的な振動や衝撃を反映させる程度のものであることが好ましい。そして、通常考えうる製品出荷・運搬時の衝撃とは、およそ一定のタイミングで起こることは考え難く、通常は様々に異なるタイミングで生じるものであることから、本実施形態の不定印加手段のように、異なるタイミングで動的負荷を与える構成をとることで、より通常の製品出荷・運搬時の状況を反映させた導通状態の検査をおこなうことが可能となる。
なお、デューティー比の異なる信号の組み合わせ方は任意に設定して構わず、例えば、デューティ比を1:3と3:1程度とすることが考えられる。
<具体的な構成>
本実施形態の導通状態検査装置のハードウェア構成は、基本的に図3を用いて説明した実施形態1の導通状態検査装置のハードウェア構成と同様である。そこで以下では、これまで説明していない不定印加手段の具体的な処理について説明する。
(不定印加手段の具体的な処理)
CPUは、不定印加プログラムを実行し、デューティー比の異なる複数の信号から構成される信号を生成する処理を行い、当該生成した信号を出力する処理を行う。
<処理の流れ>
本実施形態の導通状態検査装置の処理の流れは、これまで図4、図6そして図8を用いてそれぞれ説明した処理の流れと同様である。
<効果>
本実施形態の導通状態検査装置によって、実施形態1の効果に加え、コイルを有する電気回路の現実の利用実態に即した導通状態の検査結果を得ることが可能になる。
<<実施形態5>>
本実施形態の導通状態検査装置は、基本的に実施形態1の導通状態検査装置と同様であるが、第一判定部又は第二判定部による判定結果が半導通又は非導通であることを示す場合には、その後の測定処理及び判定処理を行わないよう制御することを特徴とする。当該特徴を有することにより、検査の効率化を図ることが可能になるのみならず、半導通あるいは非導通である旨の判定結果を利用者に対し迅速に提供することが可能になる。
<機能的構成>
図10は、本実施形態の導通状態検査装置の機能ブロックの一例を示す図である。この図にあるように、本実施形態の「導通状態検査装置」1000は、「第一印加部」1001と、「第一測定部」1002と、「第一判定部」1003と、「第二印加部部」1004と、「第二測定部」1005と、「第二判定部」1006と、「第三制御部」1007とを有する。基本的な構成は実施形態1の図2を用いて説明した導通状態検査装置と共通するため、以下では相違点である第三制御部について説明する。
「第三制御部」は、第一判定部又は第二判定部による判定結果が半導通又は非導通であることを示す場合には、その後の測定処理及び判定処理を行わないよう制御する機能を有する。これまで説明してきたように、第一制御部及び第二制御部はいずれも、印加部の機能を制御する機能を果たしてきたが、第三制御部の場合には、印加処理のみならず、測定処理および判定処理をも行わないように制御する機能がある。したがって、第一制御部や第二制御部を有する機能的構成をとる導通状態検査装置がさらに第三制御部を備える場合、第三制御部は、第一制御部あるいは第二制御部に優先して前記制御を行うことになる。すなわち、例えば実施形態2のような場合に第一判定部において非導通状態であるとの判定結果が導き出された場合、第一制御部は制御を行わないし、実施形態3のような場合に第二判定部において非導通状態であるとの判定結果が導き出された場合、第二制御部は制御を行わない。いったん半導通あるいは非導通との判定となれば、当該時点でこのような判定の対象となったコイルを含む電気回路はいわゆる不良品と判断できることから、その後の処理を行う必要性が乏しい。第三制御部を有する構成をとることにより、このような必要性の乏しい処理を省略し、速やかに判定結果を利用者に知らせることが可能となる。
<具体的な構成>
本実施形態の導通状態検査装置のハードウェア構成は、基本的に図3を用いて説明した実施形態1の導通状態検査装置のハードウェア構成と同様である。そこで以下では、これまで説明していない第三制御部の具体的な処理について説明する。
(第三制御部の具体的な処理)
CPUは、第三制御プログラムを実行し、第一判定プログラムあるいは第二判定プログラムの実行により得られる情報が、導通状態が半導通あるいは非導通であることを示す内容である場合には、その後の印加処理や測定処理及び判定処理を行わないよう制御する処理を行う。
<処理の流れ>
図11は、本実施形態の導通状態検査装置の処理の流れの別の一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS1101では、コイルを含む電気回路に対し静的負荷を印加する。次にステップS1102は、当該静的負荷の印加により得られる抵抗値を測定する。次にステップS1103は、前記測定により得られた直流抵抗値と予め保持されている基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。そしてステップS1104では判定内容が半導通あるいは非導通を示す内容であるかどうか判断し、当該情報を示す判定内容である場合にはそのまま処理を終了し、そうでない判定内容である場合にはステップS1105に移行する。ステップS1105では、コイルを含む電気回路に対し動的負荷を印加しステップS1106に進む。そしてステップS1106では当該動的負荷の印加により得られる電流値又は/及び電圧値を測定する。次にステップS1107では、前記測定により得られた直流抵抗値と予め保持されている基準値とを比較してコイルを含む電気回路の導通状態を判定する。そしてステップS1108では判定内容が半導通あるいは非導通を示す内容であるかどうか判断し、当該情報を示す判定内容である場合にはそのまま処理を終了し、そうでない判定内容である場合にはステップS1109に移行する。そしてステップS1109ないしステップS1111では、前記ステップS1101ないしステップS1103と同様の処理を実行する。
<効果>
本実施形態の導通状態検査装置を用いることにより、実施形態1の効果に加え、検査の効率化を図ることが可能になるのみならず、半導通あるいは非導通である旨の判定結果を利用者に対し迅速に提供することが可能になる。
<<実施形態6>>
本実施形態の導通状態検査装置は、基本的に実施形態1の導通状態検査装置と同様であるが、第一判定部及び第二判定部は正常なコイルを含む電気回路の負荷応答と測定結果とを比較することで導通状態を判定することを特徴とする。当該特徴を備える検査方法であることにより、コイルを含む電気回路が本来有すべき水準の導通状態である電気回路のみを市場に流通させることが可能になる。
<機能的構成>
図12は、本実施形態の導通状態検査装置の機能ブロックの一例を示す図である。この図にあるように、本実施形態の「導通状態検査装置」1200は、「第一印加部」1201と、「第一測定部」1202と、「第一判定部」1203と、「第二印加部部」1204と、「第二測定部」1205と、「第二判定部」1206とを有し、第一判定部及び第二判定部は、ともに「比較判定手段」1207を有する。基本的な構成は実施形態1の図2を用いて説明した導通状態検査装置と共通するため、以下では相違点である比較判定手段について説明する。
「比較判定手段」は、正常なコイルを含む電気回路の負荷応答と測定結果とを比較することで導通状態を判定する機能を有する。「正常なコイルを含む電気回路」とは、正常に作用するに足る導通状態であるコイルを含む電気回路のことを指している。「正常なコイルを含む電気回路の負荷応答」とは、具体的には、前記正常に作用するに足る導通状態であるコイルを含む電気回路への静的負荷及び動的負荷により得られる各値で表される導通状態の測定結果を意味している。そして、比較判定手段においては、検査の際の比較対象として用いるために、予め当該負荷応答の結果を保持している。導通状態が保証された電気回路における当該負荷応答を測定結果の比較対象とすることにより、導通状態検査結果の適正を担保することが可能になる。
「負荷応答と測定結果とを比較する」とは、具体的には負荷応答の結果を基準値として保持したうえで、当該基準値と測定結果となる各値とを比較することを意味している。比較の方法としては前記のとおり、測定値が基準値を超過すると判断した場合には非導通状態であると判定してもよいが、基準値を少し超過した状態あるいは基準値にやや満たない状態に過ぎない回路を半導通あるいは非導通状態と判定することはむしろ経済効率に反し、出荷前の製品検査に用いる検査としては不適切とも言えるので、前記負荷応答の結果を基準値としつつ、当該基準値の前後一定範囲内を閾値として、測定値が当該上下限閾値の範囲内の値であれば導通状態と判定する構成をとる方法が望ましい。
<具体的な構成>
本実施形態の導通状態検査装置のハードウェア構成は、基本的に図3を用いて説明した実施形態1の導通状態検査装置のハードウェア構成と同様である。そこで以下では、これまで説明していない比較判定手段の具体的な処理について説明する。
(比較判定手段の具体的な処理)
CPUは、比較判定プログラムを実行し、予め保持する正常なコイルを含む電気回路の負荷応答の結果となる値の情報を読み出し、当該情報と第一測定プログラム又は/及び第二測定プログラムの実行により得られた値の情報とを比較し、導通状態を判定する処理を行い、その結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
<処理の流れ>
図13は、本実施形態の導通状態検査装置の処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS1301では、コイルを含む電気回路に対し静的負荷を印加する。次にステップS1302は、当該静的負荷の印加により得られる抵抗値を測定する。次にステップS1303は、前記測定により得られた抵抗値と予め保持されている基準値との差分が上下限閾値の範囲内に収まっているかを判断する。収まっているとの判断結果である場合にはステップS1304に進み、そうでない判断結果である場合にはステップS1311に進む。ステップS1304では、コイルを含む電気回路に対し動的負荷を印加しステップS1305に進む。そしてステップS1305では当該動的負荷の印加により得られる電流値又は/及び電圧値を測定する。次にステップS1306では、前記測定により得られた値と予め保持されている基準値との差分が上下限閾値の範囲内に収まっているかを判断する。収まっているとの判断結果である場合にはステップS1307に進み、そうでない判断結果である場合にはステップS1308に進む。そしてステップS1307では回路が導通状態にあると判定し、ステップS1308では回路が非導通状態にあると判定し、それぞれ処理を終了する。
なお、図14は、本実施形態の導通状態検査装置の処理の流れの別の一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS1401では、コイルを含む電気回路に対し静的負荷を印加する。次にステップS1402は、当該静的負荷の印加により得られる抵抗値を測定する。次にステップS1403は、前記測定により得られた抵抗値と予め保持されている基準値との差分が上下限閾値の範囲内に収まっているかを判断する。収まっているとの判断結果である場合にはステップS1404に進み、そうでない判断結果である場合にはステップS1411に進む。ステップS1404では、コイルを含む電気回路に対し動的負荷を印加しステップS1405に進む。そしてステップS1405では当該動的負荷の印加により得られる電流値又は/及び電圧値を測定する。次にステップS1406では、前記測定により得られた値と予め保持されている基準値との差分が上下限閾値の範囲内に収まっているかを判断する。収まっているとの判断結果である場合にはステップS1407に進み、そうでない判断結果である場合にはステップS1411に進む。ステップS1407ないしステップS1409ではステップS1401ないしステップS1403と同様の処理を行い、抵抗値と予め保持されている基準値との差分が上下限閾値の範囲内に収まっているとの判断結果である場合にはステップS1410に進み、そうでない判断結果である場合にはステップS1411に進む。そしてステップS1410では回路が導通状態にあると判定し、ステップS1411では回路が非導通状態にあると判定し、それぞれ処理を終了する。
<効果>
本実施形態の導通状態検査装置を用いることにより、実施形態1の効果に加え、コイルを含む電気回路が本来有すべき水準の導通状態である電気回路のみを市場に流通させることが可能になる。