JP5754129B2 - 圧電素子、圧電センサー、電子機器、および圧電素子の製造方法 - Google Patents

圧電素子、圧電センサー、電子機器、および圧電素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、薄膜上に圧電体が形成された圧電素子、圧電素子を備えた圧電センサー、電子機器、および圧電素子の製造方法に関する。
従来、支持膜に圧電体を積層して、圧電体に電圧を印加して振動させることで、支持膜を振動させ、超音波を出力する圧電素子(超音波素子)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1の超音波素子は、メンブレン上に圧電体薄膜を電極金属膜によりサンドイッチした圧電振動子を備えている。このような超音波素子は、上層および下層の電極金属膜に電圧を印加することで、圧電体薄膜を振動させ、圧電体薄膜が形成されるメンブレンも振動して超音波が出力される。
特開2006−229901号公報
ところで、上記特許文献1のような超音波素子を製造する場合、一般に、メンブレン上に、下層の電極金属膜を形成し、その上層に圧電体薄膜を形成した後、この圧電体薄膜をエッチング処理することで所定の形状にパターニングする。上層の電極金属層の形成においても同様であり、下層の電極金属膜や圧電体薄膜の上層に電極金属層を形成し、この電極金属層をエッチング処理することで所定の形状にパターニングする。
しかしながら、上記のようにエッチングを繰り返す方法では、圧電体薄膜のエッチング時、および上層側の電極金属層のエッチング時に、下層側の電極金属層までもがエッチングされてしまい(オーバーエッチング)、下層の電極金属膜の膜厚寸法が小さくなる。このように、電極金属膜の膜厚寸法が小さくなると、電気抵抗が増大してしまい、例えば消費電力が増大したり、出力される超音波の音圧が小さくなったり、高周波域での制御が困難となったりする問題が生じる。
本発明は、上述のような問題に鑑みて、電極の電気抵抗を低減可能な圧電素子、圧電センサー、電子機器、および圧電素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の圧電素子は、厚み方向に変位可能な変位部を有する支持体と、前記変位部の厚み方向から見る平面視において前記変位部の外周縁の内側領域に位置する下部電極本体部と、前記下部電極本体部に接続し、かつ前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置する下部電極線部と、を有して前記支持体上に設けられた下部電極層と、前記平面視において前記変位部の外周縁よりも内側領域に位置し、かつ前記下部電極本体部上に設けられた第一圧電体層と、前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置し、少なくとも一部が前記第一圧電体層上に設けられた上部電極層と、前記下部電極線部の少なくとも一部を覆い、前記平面視において、前記変位部の外周縁に重ならない位置に設けられた第二圧電体層と、を具備したことを特徴とする。
なお、本発明で述べる変位部を有する支持体とは、例えば基板に貫通孔や凹部などの開口部を形成し、この開口部を閉塞するように支持膜を形成することで、開口部上の支持膜
が膜厚み方向に沿って変位可能な変位部となる構成が例示できる。さらには、基板に形成された上述のような開口部に、変位部が架橋部を介して保持される構成などとしてもよい。さらに、例えば、支持体に凹状溝を形成し、この凹状溝の底部が厚み方向に沿って変位可能な変位部となる構成であってもよい。さらには、基板に貫通孔や凹溝などの開口部を形成し、この開口部に、基板よりも大きい弾性を有して撓みやすい弾性部材を接合し、弾性部材が変位する構成などとしてもよい。
また、変位部は、中心点の変位量が最大となるように、その外周縁の全周が支持体の本体部分に保持される構成、または外周縁が均等間隔で保持される構成であってもよく、変位部の一端部の変位量が最大となるように、他端部が支持体の本体部分に保持される構成などとしてもよい。
この発明では、第一圧電体層が下部電極層の下部電極本体部に積層されるとともに、第二圧電体層が下部電極層の下部電極線部の少なくとも一部に積層されている。これにより、下部電極層が、第一圧電体層や第二圧電体層により覆われて保護されることで、圧電素子の圧電体層や上部電極層の形成時において、下部電極層がオーバーエッチングとなることがなく、下部電極層の電気抵抗の増大を抑制することができ、低電気抵抗の圧電素子を提供できる。このような低電気抵抗の圧電素子では、下部電極層および上部電極層の間に電圧を印加して変位部を振動させる場合、低電力で振幅の大きい振動を得ることができ、省エネルギー化を促進させることができる。また、支持膜の変位量を第一圧電体層から出力される電流値により検出する場合においても、下部電極線部の電気抵抗が小さいため、第一圧電体層から出力される電流の損失を抑制することができ、精度良く支持膜の変位を検出することができる。
また、上記のような下部電極層のオーバーエッチングを考慮し、予め下部電極層の厚み寸法を大きく形成することも考えられるが、この場合、圧電膜を積層する部分では、オーバーエッチングがかからないため、下部電極層の厚み寸法が増大し、圧電膜、および上部電極層の積層部分のトータル厚み寸法も増大してしまうという問題がある。これに対して、本発明では、下部電極層のオーバーエッチングによる電気抵抗増大や膜厚のバラツキを見込まずに下部電極層の膜厚寸法を設定でき、圧電素子の薄型化を図ることもできる。
さらに、下部電極線部上に、第一圧電体層と同一素材の第二圧電体層を形成することも可能であり、この場合、第一圧電体層と同時に第二圧電体層を形成することができる。したがって、下部電極線部を保護するための保護層などを別途用いる場合に比べて、圧電素子の製造も簡単となり、製造コストを削減することができる。
本発明の圧電素子では、前記第二圧電体層は、前記平面視において、前記変位部の外周縁に重ならない位置に設けられた構成とすることが好ましい。
変位部を第一圧電体層の振動に連動させて変位させる場合、または、外部からの応力により変位部を変位させる場合、変位部の縁部分の膜厚み寸法を小さく形成することで、当該変位部の変位量を大きくすることができる。ここで、本発明では、第二圧電体層は、変位部の縁部に重ならない位置に設けられているため、変位部の縁部近傍の厚み寸法が増大しない。したがって、第一圧電体層の振動により変位部を変位させる場合においても、外力により変位部を変位させる場合においても、その変位量を大きくすることができる。このため、例えば変位部を振動させて超音波を出力させる場合では、例えば第二圧電体層が変位部の縁上にも積層されている場合に比べて、低電力で変位部の振幅を大きくすることができ、より大きな音圧の超音波を出力することができる。また、超音波を受信する場合では、受信した超音波により変位部を大きく振動させることができるので、受信感度を向上させることができ、精度良く超音波を検出することができる。
本発明の圧電素子では、前記第二圧電体層上に配線層が設けられた構成としてもよい。
この発明では、圧電素子上に配線層が形成されることで、この配線層と下部電極層とを分離することができる。
また、1つの平面基板上で複数の配線パターンを形成する場合、基板のサイズなどによって各配線パターンの線幅が規制され、電気抵抗が増大するおそれもある。これに対して、本発明では、第二圧電体層上にも配線層を形成することで、基板上および第二圧電体層上で、2段構成により配線パターンを形成することができる。したがって、1つの基板上により複数の配線パターンを形成する場合に比べて、基板のサイズを小さくすることができ、電気抵抗の増大をも防止することができる。
また、前記配線層は、前記下部電極線部の互いに異なる2点間に電気的に接続された構成としてもよい。
この発明では、配線層は、下部電極層の異なる2点間を接続している。このため、下部電極層のこれらの2点間では、下部電極層および配線層により電流を流すことができ、電気抵抗の更なる低減を図ることができる。
本発明の圧電素子では、前記下部電極線部は、前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置し、前記下部電極本体部に接続された素子接続線と、前記素子接続線に連続し、前記変位部の外周縁の外側領域に設けられ、前記平面視において前記素子接続線の線幅よりも小さい線幅の下部電極配線と、を備え、前記第二圧電体層は、前記下部電極配線を覆って設けられた構成とすることが好ましい。
この発明では、第二圧電体層は、下部電極線部のうち、線幅が小さい下部電極配線上を覆っている。
下部電極線部の電気抵抗は、線幅寸法が増大するほど低下するので、下部電極線部の線幅を大きく形成することが好ましい。しかしながら、実際に圧電素子を基板上に配置する場合、他の素子やその配線パターンの関係などにより、下部電極配線の線幅を十分に確保できず、素子接続線よりも小さくなる場合がある。このような場合、圧電体層や上部電極のパターニングの際に下部電極配線がオーバーエッチングされると、下部電極配線の抵抗がより大きくなってしまう。これに対して、本発明では、このような線幅が小さくなる下部電極配線に第二圧電体層が積層されている。このため、圧電体層や上部電極のパターニングの際に、下部電極配線がオーバーエッチングとならず、電気抵抗の増大を防止することができる。
本発明の圧電センサーは、上述したような圧電素子を複数備え、前記複数の圧電素子がアレイ状に配設されたことを特徴とする。
この発明では、圧電センサーは、アレイ状に配設される複数の圧電素子を備えている。ここで、各圧電素子は、上述したように、下部電極層の一部が第二圧電体層により覆われているため、オーバーエッチングによる電気抵抗の増大を抑制できる。したがって、例えば支持膜を振動させて超音波を出力させる場合には、低消費電力で大音圧の(振幅が大きい)超音波を出力でき、例えば支持膜で超音波を受信して、超音波信号を検出する場合には、大きな電気信号(電流値)を出力することができ、検出精度を向上させることができる。
また、このような圧電センサーでは、各圧電素子に接続される下部電極線部が必要となり、小型の圧電センサーを形成する場合、各下部電極線部の線幅も規制され小さくなる。このような場合、下部電極線部の電気抵抗も高くなる。ここで、これらの下部電極線部の上部に第二圧電体層が形成されていない場合、下部電極線部がオーバーエッチングされることでさらに電気抵抗が増大するおそれがある。これに対して、本発明では、このような線幅が小さい下部電極線部に対しても、第二圧電体層を形成することで、圧電体層および
上部電極層のパターニング時における抵抗増大を防ぐことができる。
本発明の電子機器は、上述したような圧電素子、または上述したような圧電センサーを備えたことを特徴とする。
この発明では、電子機器に設けられる圧電素子は、上記のように、下部電極層の一部が第二圧電体層により覆われており、オーバーエッチングによる電気抵抗の増大を抑制でき、低電力で変位部を駆動させたり、変位部からの電気信号の損失を抑えたりすることができ、圧電素子の薄型化をも図ることができる。したがって、このような圧電素子や、圧電素子が組み込まれた圧電センサーを備える電気機器においても、低電力で変位部を駆動させたり、電気信号の損失を抑えたりすることで、省電力化を図ることができる。また、圧電素子を薄型化できるので、電気機器の小型化をも促進できる。
本発明の薄膜圧電体の製造方法は、厚み方向に変位可能な変位部を有する支持体と、前記変位部の厚み方向から見る平面視において前記変位部の外周縁の内側領域に位置する下部電極本体部と、前記下部電極本体部に接続し、かつ前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置する下部電極線部と、を有して前記支持体上に設けられた下部電極層と、前記平面視において前記変位部の外周縁よりも内側領域に位置し、かつ前記下部電極本体部上に設けられた第一圧電体層と、前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置し、少なくとも一部が前記第一圧電体層上に設けられた上部電極層と、前記下部電極線部の少なくとも一部を覆い、前記平面視において、前記変位部の外周縁に重ならない位置に設けられた第二圧電体層と、を具備した圧電素子を製造する製造方法であって、前記支持体上に前記下部電極層をパターニングする下部電極パターニング工程と、前記下部電極層上に圧電体層を積層する圧電体層積層工程と、前記第一圧電体層および前記第二圧電体層の形成領域外の圧電体層にエッチング処理を実施して、前記第一圧電体層および前記第二圧電体層を形成する圧電体層パターニング工程と、前記第一圧電体層上に前記上部電極層を積層する上部電極積層工程と、前記上部電極層をエッチングしてパターニングする上部電極パターニング工程と、を備えることを特徴とする。
この発明では、下部電極パターニング工程の後、下部電極層の下部電極配線部上の少なくとも一部を覆う第二圧電体層、および下部電極層の下部電極本体部上に積層される第一圧電体層を形成するための圧電体層を積層する圧電体層積層工程を実施する。そして、この圧電体層積層工程の後、圧電体層パターニング工程により、圧電体層をエッチングすることで、下部電極本体部上の第一圧電体層と、少なくとも下部電極配線部の一部を覆う第二圧電体層とを形成する。また、この圧電体層パターニング工程の後、上部電極積層工程、および上部電極パターニング工程を実施して、下部電極層の電気抵抗の増大を抑制しつつ上部電極層を形成する。
このような製造方法により圧電素子を製造することで、上記発明と同様に、下部電極層の電気抵抗の増大を抑制することができる。また、第一圧電体層と第二圧電体層とを同時形成することが可能であるため、例えば下部電極層を保護する保護膜を別途形成するなどの方法と比べて、製造工程を簡略化できる。
本発明に係る第一実施形態の圧電素子の平面図である。 第一実施形態の圧電素子の断面図である。 圧電素子の製造工程の一部を示す断面図である。 圧電素子の製造工程の残りの一部を示す断面図である。 本発明に係る第二実施形態の圧電素子の断面図である。 第二実施形態の変形例の圧電素子において、下部電極線部の一部を基板の厚み方向から見た平面図である。 図6におけるA−A線における断面図である。 図6におけるB−B線における断面部である。 本発明に係る第三実施形態の圧電素子を示す図であり、(A)は、平面図、(B)は、断面図である。 本発明に係る第四実施形態の超音波センサーの一部を示す平面図である。 第五実施形態のPDAの構成を模式的に示す斜視図である。 PDAが備える超音波センサーの構成を模式的に示す斜視図である。
〔第一実施形態〕
以下、本発明に係る第一実施形態の圧電素子の構成について、図面に基づいて説明する。
[圧電素子の構成]
図1は、第一実施形態の圧電素子の平面図である。
図2は、第一実施形態の圧電素子の断面図である。
図1において、圧電素子10は、開口部111が形成された基板11と、基板11上で、開口部111の内外に跨って形成される支持膜12と、支持膜12上に形成される下部電極層20と、開口部111の内側に形成される第一圧電体層30と、開口部111の外側に形成される第二圧電体層40と、開口部111の内外に跨って形成される上部電極層50とを備えている。ここで、基板11および支持膜12により、本発明の支持体が構成されており、支持膜12のうち、開口部111を閉塞する領域であるメンブレン121により本発明の変位部が構成されている。
なお、本実施形態では、貫通孔である開口部111を有する基板11上に支持膜12を形成して変位部であるメンブレン121を有する支持体が構成される例を示したが、これに限定されず、例えば、開口部111が凹溝であり、支持膜12は、この凹溝の開口部111の開口を閉塞する構成であってもよい。また、基板11に凹溝を形成し、その底部を変位部とした支持体であってもよい。
さらに、支持体として、基板11と支持膜12により形成される例を示すが、支持膜12の上層に例えば絶縁膜などの他層が設けられ、この他層上に下部電極層20が設けられる構成などとしてもよい。
なお、圧電素子10としては、例えば第一圧電体層30に電圧を印加することで支持膜12を振動させて、超音波の出力する超音波送信素子、超音波を支持膜12で受信し、第一圧電体層30から振動に応じた電気信号を出力する超音波受信素子、支持膜12に加わる応力を、第一圧電体層30から出力される電気信号に基づいて検出する応力検出素子、第一圧電体層30を駆動させ、支持膜12に接触した対象物に駆動力を付与する駆動力発生素子などとして用いることができる。本実施形態では、一例として、圧電素子10を、超音波発信素子として機能させる例を説明する。
基板11は、例えばエッチングなどにより加工が容易なシリコン(Si)などの半導体形成素材により形成される。また、基板11に形成される開口部111は、平面視で円形状に形成されることが好ましい。これにより、開口部111の内側の支持膜12であるメンブレン121において、メンブレン121の撓みに対する応力を均一にすることができる。
すなわち、例えば、開口部111が例えば矩形状に形成され、矩形中心部に第一圧電体層30が形成される場合、メンブレン121の中心点からの距離が同一となる位置であっても、支持膜12の撓み易い領域と撓み難い領域とが発生する。これに対して、本実施形態のように、円形の開口部111が形成される場合、メンブレンの中心点から開口部111の縁部111A(本発明における変位部の外周縁を構成)までの距離が同一となるため、メンブレン121の中心点からの距離が同一となる点では、支持膜12の撓み易さも同等となり、メンブレン121を均等に撓ませることができる。
支持膜12は、基板11上で、開口部111を閉塞する状態に成膜されている。この支持膜12は、例えばSiO膜とZrO層との2層構造により構成されている。ここで、SiO層は、基板11がSi基板である場合、基板表面を熱酸化処理することで成膜することができる。また、ZrO層は、SiO層上に例えばスパッタリングなどの手
法により成膜される。ここで、ZrO層は、第一圧電体層30や第二圧電体層40として例えばPZTを用いる場合に、PZTを構成するPbがSiO層に拡散することを防止するための層である。また、ZrO層は、圧電膜131の歪みに対する撓み効率が向上させるなどの効果もある。
下部電極層20は、平面視において、開口部111の内側に形成され、上層に第一圧電体層30が積層される下部電極本体部21と、この下部電極本体部21に連続し、開口部111の縁部111Aにより囲われる領域の内外に跨って形成されるとともに、第一圧電体層30が積層されない下部電極線部22と、下部電極線部22の先端部に形成される下部電極端子部23とを備えている。すなわち、下部電極線部22は、メンブレン121上の縁部111Aの内側領域から外側領域に跨って形成されている。
第一圧電体層30は、下部電極層20の下部電極本体部21上に積層形成されている。この第一圧電体層30は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)を膜状に成膜することで形成される。なお、本実施形態では、第一圧電体層30としてPZTを用いるが、電圧を印加することで、面内方向に収縮することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよく、例えばチタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO)などを用いてもよい。
そして、この第一圧電体層30は、下部電極本体部21と、後述する上部電極層50とに電圧が印加されることで、面内方向に伸縮する。このとき、第一圧電体層30の一方の面は、下部電極本体部21を介して支持膜12に接合されるが、他方の面には、上部電極層50が形成されるものの、この上部電極層50上には他の層が積層形成されないため、第一圧電体層30の支持膜12側が伸縮しにくく、上部電極層50側が伸縮し易くなる。このため、第一圧電体層30に電圧を印加すると、開口部111側に凸となる撓みが生じ、メンブレン121を撓ませる。したがって、第一圧電体層30に交流電圧を印加することで、メンブレン121が膜厚方向に対して振動し、このメンブレン121の振動により超音波が開口部111から出力される。
上部電極層50は、平面視において、一部が第一圧電体層30上に積層され、かつ下部電極層20と絶縁される配置位置にパターニングされている。具体的には、上部電極層50は、第一圧電体層30上に積層される上部電極本体部51と、上部電極本体部51に連続し、下部電極線部22とは異なる方向に延出し、平面視において開口部111の内外に跨って形成される上部電極線部52と、上部電極線部の先端に形成される上部電極端子部53と、を備えている。
ここで、第一圧電体層30のうち、上部電極層50と下部電極本体部21との双方に重畳する領域が、電圧を印加された際に収縮される領域となる。
第二圧電体層40は、第一圧電体層30と同一素材であるPZTにより形成されている。また、この第二圧電体層40は、支持膜12の開口部111よりも外側領域で、かつ下部電極層20の下部電極線部22を覆って形成されている。具体的には、第二圧電体層40は、下部電極線部22のうち、支持膜12上の開口部111の縁部111Aからメンブレン121の撓みに影響しない所定寸法だけ離れた端部位置22A、および下部電極端子部23および下部電極線部22の接続部22Bの間を覆って形成されている。これは、第二圧電体層40が開口部111の縁部111Aに重なって形成される場合、メンブレン121の撓みに対する剛性が強くなり、出力される超音波が小音圧となるためである。より好ましくは、第二圧電体層40は、支持膜12の厚み寸法をtとして、開口部111の縁部111Aから距離Lが、次式(1)を満たす端部位置22Aから、接続部22Bまでの下部電極線部22上に形成されることが好ましい。
〔数1〕
L>5t …(1)
これは、支持膜12のメンブレン121が撓む際、支持膜12には、開口部111に入り込もうとするモーメント力が発生するためであり、このモーメント力により、平面視において開口部111の縁部111Aから5tの距離範囲内の支持膜は引っ張り力を受ける。したがって、この距離範囲内に第二圧電体層40が形成されていると、メンブレン121が撓む際に抵抗となり、超音波の音圧が低下してしまう。これに対して、平面視において開口部111の縁部111Aから5t以上の距離では、上記のような影響が働かず、メンブレン121を良好に撓ませることが可能となる。一方、第二圧電体層40の端部の形成位置が開口部111から遠くなりすぎると、下部電極線部22の露出面積が大きくなるため、第一および第二圧電体層30,40のパターニング時、上部電極層50のパターニング時、この下部電極線部22の露出部分がオーバーエッチングとなり電気抵抗が増大する場合がある。したがって、第二圧電体層40の形成位置として、開口部111の縁部111Aから5tだけ離間した位置から、下部電極端子部23および下部電極線部22の接続部22Bまでを覆う位置が最も好ましい。
なお、下部電極端子部23には、第一圧電体層30に電圧を印加するための配線が接続されるため、第二圧電体層40は形成されない。
[圧電素子の製造方法]
次に、上述のような圧電素子の製造方法について、図面に基づいて説明する。
図3および図4は、圧電素子の製造工程を示す断面図である。
圧電素子10を製造するためには、まず、図3(A)に示すように、基板11(Si)を熱酸化処理し、基板11の表面にSiO層を形成する。さらに、このSiO層上にZr層をスパッタリングにより成膜し、このZr層を酸化することでZrO層を形成する。これにより、例えば厚み寸法が3μmの支持膜12が形成される。
この後、基板11の一面側に下部電極層20を、例えばスパッタリングなどにより形成する。この下部電極層20としては、導電性を有する膜であれば特に素材は限定されないが、本実施形態ではTi/Ir/Pt/Tiの積層構造膜を用い、圧電体層の焼成後で例えば0.2
μmの膜厚寸法となるように、下部電極層20を一様に形成する。
そして、この下部電極層20上に、例えばフォトリソグラフィ法を用いて下部電極本体部21および下部電極線部22の形成位置にレジストを形成する。次に、下部電極層のうちレジストが形成されない領域をエッチングにより除去してパターニングし、図3(B)に示すように下部電極本体部21、下部電極線部22、および下部電極端子部23を形成する(下部電極パターニング工程)。
その後、図3(C)に示すように、この下部電極層20がパターニングされた基板11の一面側に、PZTにより形成される圧電体層60を成膜する。圧電体層60の成膜では、MOD(Metal Organic Decomposition)法を用い、12層の膜により、例えばトータル
厚み寸法が1.4μmとなるように形成する(圧電体層積層工程)。
そして、この圧電体層60上に、例えばフォトリソグラフィ法を用いて第一圧電体層30および第二圧電体層40の形成位置にレジストを形成し、レジストが形成されない領域をエッチングにより除去してパターニングする。これにより、図3(D)に示すように下部電極本体部21上に第一圧電体層30が形成され、下部電極線部22上に第二圧電体層40が形成される(圧電体層パターニング工程)。
この圧電体層パターニング工程において、第一圧電体層30および第二圧電体層40が形成される領域では、下部電極層20がエッチングされないため、電気抵抗が低下するなどの不都合が生じない。
なお、開口部111上の第一圧電体層30が設けられていない領域に形成される下部電極線部22、および開口部111の縁部111Aから距離Lが5t(本実施形態では、t=3μmであるため、L=15μm)の範囲内の下部電極線部22で、圧電体層60のエ
ッチング時にオーバーエッチングとなる場合があるが、下部電極線部22全体に対して非常に小さい範囲であるため、この部分の電気抵抗が上がったとしても、その影響を受けることがない。
この後、図4(A)に示すように、基板11の一面側に、上部電極層50を、例えばスパッタリングなどにより、均一に成膜する。この上部電極層50を形成用の導電性膜においても、下部電極層20と同様に、導電性を有するいかなる素材を用いてもよいが、本実施形態では、Ir膜を用い、厚み寸法が例えば50nmとなるように形成する(上部電極積層工程)。
そして、この上部電極層50上に、例えばフォトリソグラフィ法を用いて、上部電極本体部51、上部電極線部52、および上部電極端子部53のパターニング用のレジストを形成し、レジストが形成されない領域をエッチングにより除去してパターニングする。これにより、図4(B)に示すように上部電極層50がパターニングされる(上部電極パターニング工程)。
この上部電極パターニング工程においても、上記圧電体層パターニング工程と同様に、第一圧電体層30および第二圧電体層40により下部電極層20が覆われているため、下部電極層20のオーバーエッチングが防止され、下部電極層20の電気抵抗の増大を抑制できる。
次に、基板11の厚み寸法を調節する。これには、図4(C)に示すように、下部電極層20、第一圧電体層30、第二圧電体層40、および上部電極層50が形成される一面側とは反対側の基板11の他面(超音波が出力される面)側を、例えば切削、研磨などの加工を施す。このような切削加工、研磨加工を実施することで、開口部111を形成する際のエッチング量を少なくすることができる。ここで、開口部111は、ICP(Inductive Coupled Plasma)エッチング装置を用いたRIE(Reactive Ion Etching)によりエッチング形成されるが、エッチングする深さ寸法、膜応力反りに対する剛性、およびハンドリングに対する強度を考慮し、基板11の厚み寸法が200μmとなるように切削・研削加工することが好ましい。
開口部111の形成では、基板11の前記他面側の開口部111の形成位置以外にレジストを形成する。このレジストは、基板11のエッチングに耐えられるように、例えば10μm程度の厚みに形成する。この後、図4(D)に示すように、ICPエッチング装置を用いて、基板11を、前記他面側から支持膜12のSiO層までエッチングする。
以上により、圧電素子10が製造される。
[第一実施形態の作用効果]
上述したように、第一実施形態の圧電素子は、開口部111の内外に跨って形成される下部電極層20のうち、開口部111の内側に形成される下部電極本体部21上に第一圧電体層30が形成され、下部電極線部22のうち、開口部111の外側の下部電極線部22上に第二圧電体層40が形成されている。
このため、圧電体層60をエッチングして第一圧電体層30および第二圧電体層40を形成する際に、下部電極層がオーバーエッチングとなって電気抵抗が増大する不都合を抑制できる。このため、低電力で第一圧電体層30の伸縮量を大きくすることができ、メンブレン121の振動により出力される超音波も大音圧にすることができる。
また、オーバーエッチングを考慮して下部電極層20の厚み寸法を増大させる必要がなく、下部電極層20の厚み寸法を薄くすることができる。したがって圧電素子10自体も薄型化することができる。
さらには、第一圧電体層30および第二圧電体層40は、同一素材であるPZTにより形成されている。すなわち、圧電体層積層工程、および圧電体層パターニング工程により同時に、これらの第一圧電体層30および第二圧電体層40を形成することができる。こ
れにより、例えば下部電極層20上に他の保護膜を設ける場合に比べて、製造工程を簡略化することができ、保護膜を別途容易する必要もなく構成を簡単にできる。
また、第二圧電体層40は、平面視において、開口部111の縁部111Aに重ならない位置に形成されている。
このため、第二圧電体層40がメンブレン121の撓み時の抵抗とならないため、第二圧電体層40が開口部111の縁部111A上に形成される場合に比べて、メンブレン121を大きい振幅で振動させることができる。したがって、第一圧電体層30に印加する電圧が低電圧である場合でも、大音圧の超音波を出力することができる。
さらに、第二圧電体層40は、下部電極線部22のうち、開口部111の縁部111Aから支持膜12の厚み寸法tの5倍の距離寸法Lだけ離れた端部位置22Aから、下部電極線部22と下部電極端子部23との接続部22Bまでを覆って形成されている。
メンブレン121が撓む際、支持膜12は、開口部111に入り込む方向にモーメント力を受けるため、開口部111の縁部111Aに近い位置の支持膜12は、開口部111側に引っ張り力が働いて伸縮する。ここで、開口部111の縁部に近接位置に第二圧電体層40が形成される場合、その支持膜12の伸縮が規制されるため、メンブレン121の撓み量を制限してしまうおそれがある。これに対して、上記のように、開口部111の縁部111Aから距離Lだけ離れた位置に第二圧電体層40を形成することで、メンブレン121の撓み抵抗が増大せず、メンブレン121の撓み量が減少しない。したがって、開口部111の縁部111Aから第二圧電体層40が形成される位置までの距離が距離L未満となる場合に比べて、大音圧の超音波を出力させることができる。
〔第二実施形態〕
次に、本発明に係る第二実施形態の圧電素子について、図面に基づいて説明する。
図5は、本発明に係る第二実施形態の圧電素子の断面図である。
第二実施形態の圧電素子10Aは、第一実施形態の圧電素子10の第二圧電体層40上に配線層である補助電極層70が形成される。
具体的には、この補助電極層70は、下部電極層20の接続部22Bから第二圧電体層40の上層に形成され、第二圧電体層40の端部位置22Aで再び下部電極層20に接続される。
このような補助電極層70は、上部電極層50と同一素材により形成され、上部電極パターニング工程において、上部電極層50と同時に形成される。
すなわち、上部電極積層工程で、図4(A)に示すような導電性膜を成膜した後、上部電極パターン形成工程において、上部電極層50の形成位置および補助電極層70の形成位置にそれぞれレジストを形成する。そして、このレジストの形成領域以外の導電性膜をエッチングにより除去することで、図5に示すような補助電極層70が形成される。
[第二実施形態の作用効果]
第二実施形態の圧電素子10Aでは、上記第一実施形態の圧電素子10と同様の作用効果が得られ、下部電極層20の電気抵抗の増大を抑制し、圧電素子10A自身の薄型化をも促進できる。
さらに、補助電極層70が設けられることで、下部電極端子部23から下部電極本体部21までの配線部分において、電気抵抗をより低減させることができ、より低電力で第一圧電体層30を駆動させて超音波を出力させることができる。
また、図5の圧電素子10Aでは、補助電極層70の端部が開口部111の縁部111Aより外側に位置する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、第二圧電体層40の端部位置22Aから第一圧電体層30までの下部電極線部22上にも補助電極層70を
形成する構成としてもよい。上記したように、上部電極層50は、厚み寸法が例えば50nmに形成され、第二圧電体層40に比べて十分に小さい厚みに形成される層であり、上部電極層50と同時に形成される補助電極層70も上部電極層50と同一厚み寸法に形成されている。したがって、このような補助電極層70が開口部111の内外に跨って形成されていたとしても、メンブレンの撓みに対する影響は無視できる程度に小さく、超音波の音圧を低減させる要因とならない。また、このように、第二圧電体層40の端部位置22Aから第一圧電体層30までの下部電極線部22上に補助電極層70が形成される場合、圧電体層パターニング工程や上部電極パターニング工程において、第二圧電体層40の端部位置22Aから第一圧電体層30までの下部電極線部22がオーバーエッチングとなった場合でも、下部電極線部22に積層される補助電極層70により電気抵抗の増大を抑えることができる。したがって、より効果的に電気抵抗の増大を防止でき、低電圧で大音圧の超音波を出力することができる。
同様に、下部電極端子部23上に補助電極層70を形成してもよく、この場合、下部電極端子部23における電気抵抗の増大を防止することができる。
〔第二実施形態の変形例〕
上述した第二実施形態では、配線層として、下部電極層20の2点間(端部位置22Aおよび接続部22Bの間)を接続する補助電極層70を例示したがこれに限られず、図6、図7、図8に示すような構成としてもよい。
図6は、第二実施形態の変形例である圧電素子の下部電極線部22の一部を、基板11の厚み方向から見た平面図である。図7は、図6のA−A線における断面図である。図8は、図6のB−B線における断面図である。
この圧電素子では、下部電極線部22上に、下部電極線部22の幅寸法より小さい第二圧電体層40Aが設けられている。また、図6、図7に示すように、下部電極線部22上には、第二圧電体層40Aを覆う配線層としての補助電極層70Aが設けられている。
したがって、補助電極層70Aは、図8に示すように、第二圧電体層40Aの外周縁においても、下部電極線部22と接触する。これにより、補助電極層70Aおよび下部電極線部22により、中心に第二圧電体層40Aが設けられたチューブ状の配線構造体が形成され、下部電極線部22における電気抵抗をさらに低減させることが可能となる。
〔第三実施形態〕
次に本発明に係る第三実施形態の圧電素子について、図面に基づいて説明する。
図9は、第三実施形態の圧電素子を示す図であり、(A)は、平面図、(B)は、断面図である。
上記第二実施形態の圧電素子10Aでは、第二圧電体層40の上層に、下部電極層20に接続される補助電極層70を設ける例を示したが、第三実施形態の圧電素子10Bは、第二圧電体層40の上層に、上部電極線部52が形成されている。
上記のような第三実施形態の圧電素子10Bでは、第二圧電体層40を絶縁層として機能させることで、簡単な構成で、下部電極層20と上部電極層50とをクロスさせた配線パターンを形成することができる。
すなわち、圧電素子10Bを、例えばアレイ状に配置して形成する場合などにおいて、アレイ基板への素子の配置関係上で、下部電極線部22と上部電極線部52とをクロスさせて形成する場合がある。このような場合、従来、下部電極線部22と上部電極線部52との接触を防止するため、別途絶縁層を形成する必要があった。これに対して、第三実施形態の圧電素子10Bでは、第二圧電体層40に上部電極線部52を形成することで、絶縁層を別途形成することなく上部電極線部52と下部電極線部22とをクロスさせることができる。
〔第四実施形態〕
次に、本発明の第四実施形態として、上述したような圧電素子が配設された超音波センサーについて、図面に基づいて説明する。
図10は、第四実施形態の超音波センサーの一部を示す平面図である。
図10において、超音波センサー1は、本発明の圧電センサーであり、複数の圧電素子10が格子状に配設されたアレイ構造を有している。
このような超音波センサー1は、複数の圧電素子10における超音波の出力タイミングを制御することで、所望の点に超音波を集束させることができる。また、本実施形態では、基板11上に超音波送信用の圧電素子10を複数配置した超音波送信アレイを例示するが、例えば、これらの圧電素子10を超音波の受信素子として機能させることもできる。この場合、格子状に配置される圧電素子10のうち、例えば半数を超音波送信用素子として機能させ、残りの半数を超音波受信用素子として機能させるなどの構成としてもよい。また、圧電素子10を超音波発信素子として機能させて超音波を発信した後、超音波受信素子として機能させて反射された超音波を受信させる構成などとしてもよい。さらには、圧電センサーとして超音波センサーを例示したが、例えば圧電センサーに接触物が接触した際に接触圧を測定する圧力検出センサーとして用いてもよく、各圧電素子10を順次駆動させることで接触物に駆動力を付与するセンサーなどとしてもよい。
このような超音波センサー1では、各圧電素子10から出力される超音波の発信タイミングを変化させることで超音波を所望の位置に集束させるため、各圧電素子10に対してそれぞれ独立した下部電極線部22が設けられている。
具体的には、図10に示すように、各圧電素子10の下部電極線部22は、下部電極本体部21に連続し、メンブレン121の内外に跨って形成される素子接続線221と、素子接続線221から下部電極端子部23までを接続する下部電極配線222とを備えている。ここで、各圧電素子10のメンブレン121間には、複数の下部電極配線222が形成されるため、レイアウト上これらの下部電極配線222の線幅は、素子接続線221よりも線幅寸法が小さく形成されている。このため、下部電極配線222では、素子接続線221よりも電気抵抗が大きくなる。
このような超音波センサー1において、各圧電素子10の圧電体および上部電極層50の形成時に下部電極配線222にオーバーエッチングがかかると、更なる電気抵抗の増大を引き起こし、圧電素子10から所望の音圧の超音波を出力させるために高電圧を印加する必要があり、この場合、特に、高周波数域において、圧電素子10の駆動制御が困難となる。これに対して、本実施形態では、素子接続線221よりも線幅寸法が小さくなる下部電極配線222上に、第二圧電体層40が形成されている。このため、センサー製造時において、下部電極配線222がオーバーエッチングとならず、電気抵抗の増大を抑制できる。
また、この第四実施形態の超音波センサー1では、上部電極線部52は、例えば図10に示すように、一方向(図10では紙面横方向)に配設される各圧電素子10において共通に形成されている。
ここで、これらの上部電極線部52は、第三実施形態と同様に、第二圧電体層40上に形成されている。このため、上部電極線部52と下部電極配線222とを接触させることなく、平面視において、これらの上部電極線部52と下部電極配線222とを近接させた配線パターンを形成することができる。このような構成とすることで、各圧電素子10の配置間隔を短くでき、超音波センサー1の基板11のサイズを小型化できる。
また、図10に示す例では、平面視において、各下部電極配線222と上部電極線部52とが重ならないように配置されているが、例えば平面視において、上部電極線部52と下部電極配線222とが重なる位置に設けられていてもよい。
なお、本実施形態において、複数の圧電素子10間で上部電極線部52を共通線として用いる例を示したが、例えば下部電極配線222を共通とすることもできる。この場合、下部電極配線222の線幅寸法を大きく形成することができ、かつ、第二圧電体層40が設けられることで製造時におけるオーバーエッチングをも防止できるため、電気抵抗の増大をより確実に抑制することができる。
〔第四実施形態の作用効果〕
上記第四実施形態の超音波センサー1は、複数の圧電素子10が配列されたアレイ構造を有している。このような超音波センサー1では、基板11上に下部電極線部22を形成する際、圧電素子10間に下部電極配線222を複数配置する必要があり、その線幅寸法が規制され、電気抵抗が増大する。このような超音波センサー1において、製造時に下部電極配線222がオーバーエッチングとなる場合、電気抵抗がさらに増大し、出力される超音波の音圧が低下したり、高周波域における駆動制御が困難になったりする。これに対して、本実施形態では、下部電極配線222上に第二圧電体層40が形成されることで、製造時における下部電極配線222のオーバーエッチングを防止でき、電気抵抗の増大を抑制できる。
また、第二圧電体層40上に上部電極線部52が形成されることで、下部電極配線222と上部電極線部52の接触を防止できる。また、平面視において、下部電極配線222と上部電極線部52とが重なる位置に形成することもでき、各圧電素子10間の距離を短くでき、超音波センサー1の小型化を促進できる。
〔第五実施形態〕
次に、第五実施形態として、上記のような圧電素子10を備えた本発明の電子機器について説明する。この第五実施形態では、電子機器としてPDA(Personal Data Assistance)を例示する。
図11は、第五実施形態のPDAの構成を模式的に示す斜視図である。図12は、このPDAが備える超音波センサーの構成を模式的に示す斜視図である。
図11において、PDA100は、装置本体2と、表示部3とを備えている。表示部3は、例えば液晶パネルや有機パネルなどにより構成され、装置本体2の内部に収容された演算制御部13(図12参照)に接続され、この演算制御部13により、種々の操作画像やその他の情報を表示するように構成されている。また、装置本体2の外周には、本発明の圧電センサーである超音波センサー1Aが配置されている。この超音波センサー1Aは、図12に示すように、複数の超音波送出用の圧電素子10Aと、複数の超音波受信用の圧電素子10Bと、を備えている。そして、これらの圧電素子10A,10Bは、第四実施形態の超音波センサー1と同様、図10に示すようなアレイ構造に配置され、下部電極線部22のうち、メンブレン121の外側領域に配置される下部電極配線222上に第二圧電体層40が積層形成されている。
このような第五実施形態のPDAでは、下部電極線部22のうち、メンブレン121の外側領域に形成される下部電極配線222上に第二圧電体層40が形成されている。したがって、このような超音波センサー1Aでは、製造時における下部電極配線222のオーバーエッチングなどがなく、これによる電気抵抗の増大もない。このため、超音波送出用の圧電素子10Aでは、より小さい駆動電圧で大きい音圧の超音波を送出することができる。また、超音波受信用の圧電素子10Bでは、超音波受信により出力される電気信号の減衰を抑制することができる。すなわち、超音波センサー1Aの精度の良い超音波の送受信を実施することができるとともに、省電力化を図ることができる。
よって、このような超音波センサー1Aを備えたPDAでは、表示部3上に位置する指やタッチペンの位置を精度良く検出することができ、消費電力も抑えることができる。
また、上記第五実施形態では、超音波センサー1Aが組み込まれるPDA100の入力装置を、本発明の圧電素子および圧電センサーを適用する例として示したが、これに限定されない。例えば、携帯ゲーム機や携帯電話、パーソナルコンピューターや電子辞書などにおける入力装置として、本発明の圧電素子や圧電センサーを適用することも可能である。また、入力装置に限らず、例えば超音波により対象物を洗浄する洗浄装置や、例えばロボットや自動車などに組み込まれて、対象物体までの距離や速度を測定する近接センサーや距離測定センサー、配管の非破壊検査や配管中の流体の流速などの監視する測定センサー、生体の体内の状態を超音波により検査する生体検査装置など、超音波の出力により各種処理を実施するいかなる装置にも適用することができる。また、超音波の送受信に限られず、例えばメンブレン121の振動により点字を表示する点字表示装置や、メンブレン121に接触した対象物をメンブレン121の振動により駆動させる駆動装置などとしても利用することができる。
〔その他の実施形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第二圧電体層40は、下部電極層20のうち、開口部111の縁部111Aから距離Lだけ離れた端部位置22Aから、下部電極端子部23と下部電極線部22との接続部22Bまでを覆って形成される例を示したが、例えば開口部111の縁部111Aから接続部22Bまでを覆う構成などとしてもよい。この場合であっても、例えば開口部111の内外に亘って第二圧電体層40が形成される構成などに比べて、メンブレン121の撓みに対する抵抗を低減できる。
また、第二圧電体層40が、開口部111の縁部111Aの一部に形成される構成としてもよい。例えば、下部電極線部22が形成位置のみ、開口部111の縁部111Aを跨いで開口部111の内外に亘って第二圧電体層40が形成される構成としてもよく、この場合、下部電極線部22のうち、外部に露出する部分がなくなり、圧電体層60や上部電極層50のエッチング時に確実にオーバーエッチングを防止でき、電気抵抗の増大をより確実に抑えることができる。また、開口部111の縁部111Aの全周に亘って第二圧電体層40が形成される構成に比べると、メンブレン121の撓みに対する抵抗が増大することがなく、大音圧の超音波を出力することもできる。
さらには、第二圧電体層40は、開口部111の縁部111Aから、メンブレン121の振動を阻害するおそれのある距離Lの範囲内のみ形成されず、その他の全領域に第二圧電体層40が形成される構成としてもよい。
また、上記実施形態では、支持膜12上に、下部電極層20が形成される構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、支持膜12がエッチングされて、例えば絶縁層などの他層がエッチング部位に積層され、この他層上に下部電極層20が形成される構成などとしてもよい。
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
1,1A…圧電センサーとしての超音波センサー、10,10A,10B…圧電素子、11…支持体である基板、12…支持膜、20…下部電極層、21…下部電極本体部、22…下部電極線部、30…第一圧電体層、40,40A…第二圧電体層、50…上部電極層、111…開口部、111A…変位部の外周縁である縁部、121…変位部であるメンブレン、60…圧電体層、70,70A…配線層である補助電極層、221…素子接続線、222…下部電極配線。

Claims (7)

  1. 厚み方向に変位可能な変位部を有する支持体と、
    前記変位部の厚み方向から見る平面視において前記変位部の外周縁の内側領域に位置する下部電極本体部と、前記下部電極本体部に接続し、かつ前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置する下部電極線部と、を有して前記支持体上に設けられた下部電極層と、
    前記平面視において前記変位部の外周縁よりも内側領域に位置し、かつ前記下部電極本体部上に設けられた第一圧電体層と、
    前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置し、少なくとも一部が前記第一圧電体層上に設けられた上部電極層と、
    前記下部電極線部の少なくとも一部を覆い、前記平面視において、前記変位部の外周縁に重ならない位置に設けられた第二圧電体層と、
    を具備したことを特徴とする圧電素子。
  2. 請求項1に記載の圧電素子において、
    前記第二圧電体層上に配線層が設けられた
    ことを特徴とする圧電素子。
  3. 請求項に記載の圧電素子において、
    前記配線層は、前記下部電極線部の互いに異なる2点間に電気的に接続された
    ことを特徴とする圧電素子。
  4. 請求項1から請求項のいずれかに記載の圧電素子において、
    前記下部電極線部は、
    前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置し、前記下部電極本体部に接続された素子接続線と、
    前記素子接続線に連続し、前記変位部の外周縁の外側領域に設けられ、前記平面視において前記素子接続線の線幅よりも小さい線幅の下部電極配線と、を備え、
    前記第二圧電体層は、前記下部電極配線を覆って設けられた
    ことを特徴とする圧電素子。
  5. 請求項1から請求項のいずれかに記載の圧電素子を複数備え、前記複数の圧電素子がアレイ状に配設された
    ことを特徴とする圧電センサー。
  6. 請求項1から請求項のいずれかに記載の圧電素子、または請求項に記載の圧電センサーを備えたことを特徴とする電子機器。
  7. 厚み方向に変位可能な変位部を有する支持体と、前記変位部の厚み方向から見る平面視において前記変位部の外周縁の内側領域に位置する下部電極本体部と、前記下部電極本体部に接続し、かつ前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置する下部電極線部と、を有して前記支持体上に設けられた下部電極層と、前記平面視において前記変位部の外周縁よりも内側領域に位置し、かつ前記下部電極本体部上に設けられた第一圧電体層と、前記平面視において前記変位部の外周縁の内側領域及び外側領域に跨る領域に位置し、少なくとも一部が前記第一圧電体層上に設けられた上部電極層と、前記下部電極線部の少なくとも一部を覆い、前記平面視において、前記変位部の外周縁に重ならない位置に設けられた第二圧電体層と、を具備した圧電素子を製造する製造方法であって、
    前記支持体上に前記下部電極層をパターニングする下部電極パターニング工程と、
    前記下部電極層上に圧電体層を積層する圧電体層積層工程と、
    前記第一圧電体層および前記第二圧電体層の形成領域外の圧電体層にエッチング処理を実施して、前記第一圧電体層および前記第二圧電体層を形成する圧電体層パターニング工程と、
    前記第一圧電体層上に前記上部電極層を積層する上部電極積層工程と、
    前記上部電極層をエッチングしてパターニングする上部電極パターニング工程と、
    を備えることを特徴とする圧電素子の製造方法。
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