JP5753651B2 - アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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高強度化は、Al−Mn−Si−Cu系合金からなる心材にMgを添加することで達成されている。
このような技術としては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1には、Si:0.3〜1.2質量%、Cu:0.3〜1.0質量%、Mn質量0.5〜2.0質量%、Mg:0.05〜0.5質量%を含有し、残部Alおよび不可避不純物からなる心材と、そのそれぞれの片面に、Zn:2.0%を超え、6.0質量%以下、Mn:0.2〜2.0質量%を含有し、残部Al及びその他不可避不純物からなり、かつ、平均粒径が0.1〜0.8μmのAl−Mn系金属間化合物を数密度2.0×109個/mm3以上で含有するAl合金からなる犠牲陽極材と、所定量のSiを含有するAl−Si系合金のろう材とをクラッドしてなることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金複合材が記載されている。
これらの元素を含有させることにより心材の強度を向上させることができる。
このようなろう材とすれば、ろう付性を確実に向上させることができる。
このようにすれば、犠牲陽極材によって耐食性が付与されたアルミニウム合金ブレージングシートを提供することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートは、Si:0.5〜1.0質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.6〜1.0質量%、Mg:0.15〜0.5質量%、Ti:0.05〜0.35質量%、及びFe:0.6質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる心材と、この心材の少なくとも一方側面に形成されたろう材とを備えたアルミニウム合金ブレージングシートであって、前記した心材は、0.5mm以下の厚さを有するとともに、当該アルミニウム合金ブレージングシートを600℃で3分間の加熱処理を施した後の厚さ方向における結晶粒数が20個以下としている。
Siは、Mgと共存させた場合、Mg2Siを形成してろう付後強度を向上させる。Siの含有量が0.5質量%未満であると、ろう付後強度を向上させる効果が小さい。一方、Siの含有量が1.0質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付加熱時に心材が溶融する。
Mnは、Al−Mn−Si系金属間化合物を形成してろう付後強度を向上させる。Mnの含有量が0.6質量%未満であると、Al−Mn−Si系金属間化合物が減少し、固溶Si量が増加するため、心材の固相線温度が低下してしまう。その結果、ろう付加熱時に心材が溶融してしまうおそれがある。一方、Mnの含有量が2.0質量%を超えると、鋳造時に形成される粗大な金属間化合物の量が増加し、成形性を低下させる。
Cuは、固溶して強度を向上させる。Cuの含有量が0.6質量%未満であると、強度向上効果が不十分となる。一方、Cuの含有量が1.0質量%を超えると、心材の固相線温度が低下するため、ろう付加熱時に心材が溶融してしまうおそれがある。
Mgは、Siと共存させた場合、Mg2Siを形成してろう付後強度を向上させる。Mgの含有量が0.15質量%未満であると、ろう付後強度を向上させる効果が小さい。一方、Mgの含有量が0.5質量%を超えると、ろう付加熱時にフラックス中に到達するMg量が増えてフラックスの機能を損なわせるため、ろう付性が低下する。
Tiは、Al合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。Ti−Al系化合物は、電位が貴であるため腐食形態が層状化し、厚さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなる効果がある。Tiの含有量が0.05質量%未満であると、腐食形態の層状化効果が小さくなる。Tiの含有量が0.35質量%を超えると、粗大な金属間化合物が形成されるため成形性が低下する。
Feは、Al−Fe系の分散粒子を形成し心材の強度を向上させる。Feの含有量が0.6質量%を超えると、粗大な金属間化合物が増えるため成形性が低下する。
なお、Feの含有量があまりに少ないと、強度向上効果が不十分となるおそれがある。そのため、Feの含有量は0.001質量%以上とするのが好ましい。
残部は、Al及び不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、例えば、Znを0.3質量%未満含有してもよい。
アルミニウム合金ブレージングシートの心材の厚さが0.5mmを超えると、熱間圧延から中間焼鈍までの冷間圧延(冷間圧延率30〜98%)における圧延パス数を2回以上としても、アルミニウム合金ブレージングシートの心材の厚さ方向の結晶粒数が20個以上となってしまう。従って、Mgの高速拡散経路となる粒界密度が高くなり、ろう付加熱時にフラックス中に到達するMg量が増えてフラックスの機能を損なわせるため、ろう付性が低下する。
前記した心材は、本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートを600℃で3分間という条件で加熱処理を施した後の板厚方向における結晶粒数が20個を超えると、Mgの高速拡散路となる結晶粒界の密度が増加し、ろう付加熱時に心材の表面、若しくはクラッドのろう材に達するMgが増大する。その結果、Mg−F(−K)系化合物が増加するためフラックスの機能が低下し、ろう付性が低下することとなる。
なお、この600℃で3分間の加熱処理は、ろう付加熱時の加熱処理に相当するものである。
Crは、Al−Cr系の分散粒子を形成し心材の強度を向上させることができる。Crの含有量が0.01質量%未満であると、強度向上効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、Crの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な金属間化合物が増え成形性が低下するおそれがある。
Zrは、Al−Zr系の分散粒子を形成し心材の強度を向上させることができる。Zrの含有量が0.01質量%未満であると、強度向上効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、Zrの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な金属間化合物が増えるため成形性が低下するおそれがある。
本発明で用いることのできるろう材は、Si:7.0〜12質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものであってもよい。このようなろう材を用いれば、ろう付性を確実に向上させることができる。
ろう材として用いられるAl−Si合金は、577℃以上で溶融し始め、液相がろうとなって流動する。Siの含有量が7.0質量%未満であると、ろうの量が不足してろう付性が低下する。一方、Siの含有量が12質量%を超えると、ろうの流動量が増加するので、ろう付時に一部が心材へ拡散して浸食し、心材のエロージョンとなる。なお、ろう材としては、Al−7〜12質量%SiのAl−Si系合金の他に、Al−7〜12質量%Si−1〜7質量%ZnのAl−Si−Zn系合金などを用いることもできる。
かかるアルミニウム合金ブレージングシートは、前記した成分及び組成を有する心材用Al合金を用いて、熱間圧延から中間焼鈍までの冷間圧延(冷間圧延率30〜98%)における圧延パス数を2回以上、好ましくは3回以上行うことにより製造することができる。熱間圧延から中間焼鈍までの冷間圧延をこのような条件で行うことにより、アルミニウム合金ブレージングシートを600℃で3分間の加熱処理を施した後の、心材の厚さ方向における結晶粒数が20個以下となるアルミニウム合金ブレージングシートを製造することができる。
かかる冷間圧延の冷間圧延率が30%未満であると、熱間圧延後の板厚を薄くする必要があるが、熱間圧延後の厚さが薄い場合、圧延時の温度が下がり過ぎてしまい、冷間圧延自体が困難となる。一方、かかる冷間圧延の冷間圧延率が98%を超えると、冷間圧延時に加工ひずみが著しく蓄積するため割れが生じ易い。
なお、鋳造工程や均熱工程などは、アルミニウム合金ブレージングシートを600℃で3分間の加熱処理を施した後の心材の厚さ方向における結晶粒数の増減について大きな影響を及ぼすものではないので、通常行われる条件で行えばよい。
本発明の効果の検証は、以下のようにして行った。
得られた鋳塊を面削し、470℃で4時間の均質化熱処理を行った後、均質化熱処理を行った心材用Al合金の一方側面にろう材としてAl−10質量%Si材を重ね合わせるとともに、この心材用Al合金の他方側面に犠牲陽極材としてAl−1質量%Zn材を重ね合わせて、熱間圧延にてクラッドした。
次に、得られたクラッド材に対して冷間圧延と中間焼鈍を施した後、仕上げ冷間圧延を実施し、厚さを0.3mm(ろう材の厚さ30μm、犠牲陽極材の厚さ30μm、心材の厚さは表2に示す。)とした3層構造の供試材をそれぞれ作製した。
ここで、熱間圧延から中間焼鈍までの冷間圧延における冷間圧延率は95%とし、この冷間圧延のパス数は表2に示す回数で行った。また、仕上げ冷間圧延率は40%とした。
なお、比較用に、熱間圧延から中間焼鈍までの冷間圧延のパス数を1回で行った、3層構造の供試材(板厚0.6mm(ろう材の厚さ30μm、犠牲陽極材の厚さ30μm))も作製した。
加熱処理後の供試材の心材の結晶粒数(個)、ろう付後強度(MPa)、ろう付性、及び表面到達Mg量(質量%)はそれぞれ次のようにして評価した。
加熱処理後の供試材の心材の厚さ方向における結晶粒数は、供試材をろう付加熱処理に相当する600℃で3分間という条件で加熱処理した後、図1に示すように、心材の圧延方向及び板厚方向に囲まれた面を研磨し、電解液にてエッチングした後、100倍で写真撮影し、板厚方向における結晶粒数をカウントすることにより求めた。例えば、図1に示す例で説明すると、加熱処理後の供試材の心材の厚さ方向における結晶粒数は3個ということになる。
ろう付後強度は、供試材を600℃で3分間という条件で加熱処理した後、室温で7日間保持し、引張方向が圧延方向と平行となるように、JIS5号試験片に加工して、室温にて引張試験を実施することにより測定した。引張強さが165MPa以上のものをろう付強度が最も良好(◎)、165MPa未満160MPa以上のものをろう付後強度が良好(○)、160MPa未満のものを不良(×)とした。
ろう付性は、竹本正ら著、「アルミニウムブレージングハンドブック(改訂版)」、軽金属溶接構造協会(2003年3月発行)の132〜136頁に記載されている評価方法により評価した。図2に示すように、水平に置いた下板(3003Al合金板(厚さ1.0mm×縦幅25mm×横幅60mm))と、この下板に対して垂直に立てて配置した上板(供試材(厚さ0.3mm×縦幅25mm×横幅55mm))との間に、φ2mmのステンレス製スペーサを挟んで、一定のクリアランスを設定した。なお、上板の供試材は、ろう材面にフラックス(森田化学工業社製FL−7)を5g/m2塗布した。
そして、600℃で3分間という条件の加熱処理を行った後、下板と上板のすき間が充填された長さ(すき間充填長さ)をノギスで測定してろう付性を数値化した。すき間充填長さが12mm以上のものをろう付性が最も良好(◎)、12mm未満10mm以上のものを良好(○)、10mm未満のものを不良(×)とした。
加熱処理後の表面到達Mg量については、5g/m2のフラックス(森田化学工業社製FL−7)を供試材のろう材側に塗布し、600℃で3分間という条件で加熱処理を行った後、フラックス表面に存在するMg量をGD−OES(HORIBA製JY5000RF)により測定した。Mg量が0.5質量%以下のものをMg量が少ない(○)、0.5質量%より多いものを量が多い(×)とした。
供試材19、22は、心材のMgの含有量が少なかったため、ろう付後強度が不良(×)となった。
供試材21は、心材のMgの含有量が多かったため、ろう付性が不良(×)となり、表面到達Mg量も多くなった(×)。
供試材24〜26は、冷間圧延のパス数が少なかったため加熱処理後の供試材の心材の厚さ方向における結晶粒数が多くなり、ろう付性が不良(×)となり、表面到達Mg量も多くなった(×)。
供試材28は、心材のSiの含有量が多かったため、供試材30は、心材のMnの含有量が少なかったため、及び供試材31は、心材のCuの含有量が多かったため、ろう付加熱により心材が溶融しかけたので加熱処理を途中で止めた。このため、加熱処理後の供試材の心材の厚さ方向における結晶粒数、ろう付後強度、ろう付性、表面到達Mg量を測定しなかった(表2に「−」として示す)。
なお、成形性は、供試材を加熱処理する前にJIS Z 2247によりエリクセン試験を行い、張り出し高さを測定することにより評価した。なお、成形性は、張り出し高さが8mm以下である場合を良好、張り出し高さが8mm未満である場合を不良として判断した。
なお、耐食性は、供試材を600℃で3分間という条件で加熱処理した後に、犠牲陽極材側を試験面として、3ヶ月OY水浸漬試験を行うにより評価した。耐食性は、腐食深さが40μm未満である場合を良好、腐食深さが40μm以上である場合を不良とした。
Claims (4)
- Si:0.5〜1.0質量%、Mn:0.6〜2.0質量%、Cu:0.6〜1.0質量%、Mg:0.15〜0.5質量%、Ti:0.05〜0.35質量%、及びFe:0.6質量%以下含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる心材と、この心材の少なくとも一方側面に形成されたろう材とを備えたアルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記心材は、0.5mm以下の厚さを有するとともに、当該アルミニウム合金ブレージングシートを600℃で3分間の加熱処理を施した後の厚さ方向における結晶粒数が20個以下である
ことを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記心材が、Cr:0.01〜0.3質量%、及びZr:0.01〜0.3質量%のうち少なくとも1種をさらに含有する
ことを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記ろう材が、Si:7.0〜12質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記ろう材が前記心材の一方側面のみに形成され、前記心材の他方側面には犠牲陽極材が形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
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