JP5753447B2 - シラン架橋ポリオレフィン組成物及びその成形物 - Google Patents
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Description
一方、特許文献2〜4においては、シラノール縮合触媒として、有害な錫や鉛などを含む金属化合物が用いられていることから、人体や環境に悪影響を及ぼすという懸念がある。
(1)オレフィン系樹脂と、シラノール縮合触媒と、遊離ラジカル発生剤と、前記遊離ラジカル発生剤の存在下で前記ポリオレフィン系樹脂と反応するシラン化合物とを含有するシラン架橋ポリオレフィン組成物であって、
前記シラノール縮合触媒が、第1族元素を含む塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸の塩基性誘導体であり、該シラノール系縮合触媒を前記オレフィン系樹脂100質量部に対して0.1〜1.0質量部含むことを特徴とするシラン架橋ポリオレフィン組成物。
すなわち、錫系触媒など環境に影響を与える触媒以外のものを用いることで環境に配慮したシラン架橋ポリオレフィンを成形することが可能となる。また、酸性触媒の塩又は塩基性触媒を使用することで、ジクミルパーオキサイド(DCP)と同時に添加することが可能になり、1ステッププロセスでの使用、またプリプレグプロセスでの使用が可能となり、使用範囲の拡大が可能となる。さらに、十分な架橋効果があり、当該シラノール縮合触媒を添加したものは、添加しないものに比べて耐熱性に優れる。
本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、オレフィン系樹脂と、シラノール縮合触媒と、遊離ラジカル発生剤と、シラン化合物とを含有するシラン架橋ポリオレフィン組成物であって、前記シラノール縮合触媒が、第1族元素若しくは第2族元素を含む塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸の塩基性誘導体であり、該シラノール系縮合触媒を前記オレフィン系樹脂100質量部に対して0.1〜1.0質量部含むことを特徴としている。
以下に、本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物の各成分について説明する。
ベース樹脂として用いられるオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、オクテン−1、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1などのαオレフィンの単独重合体またはそれらの相互共重合体である。より具体的には、オレフィン系樹脂としては、高、中、低密度・超低密度ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1などの単独重合体、プロピレンとエチレン、ブテン−1などの他のαオレフィンとの共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸及び/又はそのアルキルエステル共重合体などを挙げることができる。
本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物に用いるシラノール縮合触媒は、第1族元素若しくは第2族元素を含む塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸の塩基性誘導体である。
これらのシラノール縮合触媒は酸ではないため、ジクミルパーオキサイドなどの遊離ラジカル発生剤とは反応しない。従って、それらを同時添加が可能であるため、1ステッププロセスを適用することができ、生産効率や設備コスト上有利である。また、当該シラノール縮合触媒は、錫などの元素を含んでいないため、人体や環境に対する悪影響を懸念する必要はない。
なお、シラノール縮合触媒を添加した場合、添加しない場合と比較して耐熱性に優れる。
スルホン酸塩触媒として好ましいものは、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
遊離ラジカル発生剤(架橋剤)は、オレフィン系樹脂の分子間をカップリング剤で橋かけを開始させるためのもので、遊離ラジカル発生剤(架橋剤)には、有機過酸化物、アゾ化合物がある。有機過酸化物は過酸化水素HO2Hの水素原子をアルキル基またはアシル基などの有機基で置換して得られる化合物で、熱によって分解し易く、分解すると遊離基を生成し、これが重合反応を開始したり架橋結合を形成したりするものである。この有機過酸化物には、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(t-Hexyl peroxybenzoate、1分半減期温度160.3℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(1,1-Bis(t-butyl peroxy)cyclohexane、1分半減期温度153.8℃)、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(2,2-Bis(4,4-di-butyl peroxy cyclohexyl)propane、1分半減期温度153.8℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン(1,1-Bis(t-butyl peroxy)cyclododecane、1分半減期温度152.9℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(t-Hexyl peroxy isopropyl monocarbonate、1分半減期温度155.0℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(t-Butyl peroxy laurate、1分半減期温度159.4℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン(2,5-Dimethyl-2,5-di(m-toluoyl peroxy)hexane、1分半減期温度156.0℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(t-Butyl peroxy isopropyl monocarbonate、1分半減期温度158.8℃)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート(t-Butyl peroxy 2-ethylhexyl monocarbonate、1分半減期温度161.4℃)、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(2,5-Di-methyl-2,5-di(benzoyl peroxy)hexane、1分半減期温度158.2℃)、t−ブチルパーオキシアセテート(t-Butyl peroxy acetate、1分半減期温度159.9℃)、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(2,2-Bis(t-butyl peroxy)butane、1分半減期温度159.9℃)、ジクミルパーオキサイド(Dicumylu peroxcide;DCP、1分半減期温度176.7℃)が挙げられるが、これらのうちで1分半減期温度160〜180℃のものが特に好ましい。過酸化ベンゾイル(塩化ベンゾイルを過酸化水素とアルカリまたは過酸化ナトリウムと反応させて得られる結晶)等がある。また、アゾ化合物は、アゾ基が炭素原子と結合している有機化合物で、アゾ化合物には、アゾビスイソブチロニトリルがある。)
シラン化合物は、遊離ラジカル発生剤の存在下でポリオレフィン系樹脂と反応するものである。シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ノルマルヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
本発明において、シラン化合物は、前記オレフィン系樹脂100質量部に対して1〜10質量部を配合することが好ましく、3〜6質量部を配合するとがより好ましい。シラン化合物の配合量が1質量部未満であると架橋を十分達成できず、10質量部以上であると材料がベタつき押出加工性に影響が出る。
本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において他の成分を配合してもよい。
他の成分としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、難燃剤、無機充填剤等が挙げられる。
本発明の成形物は、上述の本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物を成形してなることを特徴としている。
本発明の成形物は、具体的には、電線やケーブルを被覆する材料等として好適に適用し得る。
成形方法としては、押出成形、射出成形、などの各種成形法などを適用することができる。
本発明の成形物は、本発明のシラン架橋ポリオレフィン組成物を成形して得られるため、上述の通り、押出成形時において外観が良好であり、また難燃性に優れる。
各実施例・比較例において、オレフィン系樹脂と、シラノール縮合触媒と、遊離ラジカル発生剤と、シラン化合物とをそれぞれ表1〜2に示す配合量(質量部)で押出機に投入、200〜240℃で押出成形し、導体を被覆した。なお、各成分の詳細は以下の通りである。
ポリエチレン:NUCG−930(ダウケミカル日本(株)製)
ビニルメトキシシラン:TSL8113(日硝産業(株)製)
安息香酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム:LS250(ライオン(株)製)
アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン:LT270(ライオン(株)製)
ジクミルパーオキサイド:パークミルD(日油(株))
(1)押出後の外観評価(押出外観)
押出後の被覆電線の外観を目視にて評価した。良好であったものを「良」、不良であったものを「悪」として表1〜2に示した。
(2)耐熱性(加熱変形率)
耐熱性(加熱変形)に係る試験は、日本工業規格JIS C 3005に準じ、押出後、23度にて168時間経過後のものを用いて行った(加熱温度:120℃、荷重:10N、判定基準:40%以下)。耐熱性(加熱変形)は、加熱変形率が40%以下の場合を「OK」、40%を超えた場合を「NG」として評価した。評価結果を表1〜2に示した。
Claims (4)
- オレフィン系樹脂と、シラノール縮合触媒と、遊離ラジカル発生剤と、前記遊離ラジカル発生剤の存在下で前記オレフィン系樹脂と反応するシラン化合物とを含有するシラン架橋ポリオレフィン組成物であって、
前記シラノール縮合触媒が、第1族元素を含む塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸の塩基性誘導体であり、該シラノール系縮合触媒を前記オレフィン系樹脂100質量部に対して0.1〜1.0質量部含むことを特徴とするシラン架橋ポリオレフィン組成物。 - 前記第1族元素を含む塩が、酸性触媒の塩、スルホン酸塩触媒であることを特徴とする請求項1に記載のシラン架橋ポリオレフィン組成物。
- 前記アルキルベンゼンスルホン酸の塩基性誘導体が、アルキルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンであることを特徴とする請求項1に記載のシラン架橋ポリオレフィン組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のシラン架橋ポリオレフィン組成物を成形してなる成形物。
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