JP5752971B2 - 情報記録媒体用ガラス基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法に関するものである。
ハードディスクは、大容量化、耐衝撃性、低コスト化が求められており、それに伴い、情報記録媒体用ガラス基板も平滑性、高強度、低コスト化の要求が高まっている。これらの性能をもつ情報記録媒体用ガラス基板を製造する工程は、通常、板ガラスを円盤形状のガラス素板に加工する円盤加工工程と、ガラス素板を所定の板厚に加工するラッピング工程と、ガラス素板の表面を研磨し平滑にする研磨工程と、ガラス素板に化学強化を施す化学強化工程の4つの工程を経て製造される。この化学強化工程は、加熱された化学強化処理液にガラス素板を浸漬することによってガラス素板の表面に圧縮応力を発生させて強化する。
又、上記研磨工程は、通常、それ以前の工程においてガラス素板に生じたクラック等の加工変質層を除去するための第一段階の粗研磨工程と、ガラス素板の表面平滑性を所定のレベルにするための第二段階の精密研磨(仕上研磨)工程との2つの段階から構成される。
この精密研磨工程を、化学強化工程の前に行なうことも可能であるが、前に行なうと、例えば化学強化工程で生じた熱変形等が残ってしまい、平坦度の精度を上げ難い場合がある。
そこで、精密研磨を、化学強化工程の後に行なうものも知られており、精密研磨を化学強化工程の後に行なうものとして、例えば特許文献1に提案されたものがある。
特開2009−193608号公報
しかし、化学強化工程の後に精密研磨を行なうと、例えば化学強化工程で生じたガラス素板の熱変形によって局所的に取り代量が大きくなったような場合、或いは、研磨材が凝集して局所的に取り代量が大きくなったような場合には、化学強化した化学強化層の平衡がくずれて基板が歪み易く、平坦性が悪くなり易いという課題がある。
本発明では、化学強化後に精密研磨した場合でも、平滑性と平坦性のよい情報記録媒体用ガラス基板を得ることができる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1は、ガラス素板の表面を、研磨液を用いて精密研磨を行なう精密研磨工程を含む情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記ガラス素板として、酸化マグネシウム(MgO)と酸化カルシウム(CaO)とのアルカリ土類金属と、酸化リチウム(LiO)と酸化ナトリウム(NaO)と酸化カリウム(KO)とのアルカリ金属とを含み、上記アルカリ土類金属に対する上記アルカリ金属の質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)が、0.1<(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)<0.80の範囲にあるガラス素材からなるものを用いて行なうことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法である。
又、請求項2は、ガラス素板の表面を、研磨材を用いて精密研磨を行なう精密研磨工程を含む情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記ガラス素板として、酸化ケイ素(SiO):55〜75質量%、酸化アルミニウム(Al):5〜18質量%、酸化リチウム(LiO):1〜10質量%、酸化ナトリウム(NaO):3〜15質量%、酸化カリウム(KO):0.1〜5質量%、(但し、LiO+NaO+KOの総量:10〜25質量%)、酸化マグネシウム(MgO):0.1〜5質量%、酸化カルシウム(CaO):1〜5質量%、酸化セリウム(CeO):0.1〜5質量%、酸化ジリコニウム(ZrO):0〜8質量%であり、(MgO+CaO)に対する(LiO+NaO+KO)の質量比が、0.10<(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)<0.80の範囲にあるガラス素材からなるものを用いて行なうことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法である。
請求項3のように、前記精密研磨を、前記ガラス素板の表面全体の平坦度が2μm以下になるように行なうことが好ましい。
請求項4のように、上記情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、化学強化処理液を用いてガラス素板の表面を強化する化学強化工程を含み、前記研磨液を、研磨材としてのコロイダルシリカを含むものを用いて、pH1〜3になるようにし、前記精密研磨を、前記化学強化工程を終えた後に、0.5μm〜10μmの取り代量で行なうことが好ましい。
請求項5のように、上記情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、化学強化処理液を用いてガラス素板の表面を強化する化学強化工程を含み、前記研磨液を、研磨材としてのコロイダルシリカを含むものを用いて、pH1〜3になるようにし、前記精密研磨を、前記化学強化工程を終えた後に、0.7μm〜8μmの取り代量で行なうことが好ましい。
請求項6のように、前記コロイダルシリカとして、その粒子径が80nm以下のものを用いることが好ましい。
請求項7のように、前記コロイダルシリカとして、その粒子径が50nm以下のものを用いることが好ましい。
請求項8のように、前記研磨液を、コロイダルシリカのゼータ電位が−10mV以下、又は+10mV以上となるようにすることが好ましい。
請求項9のように、前記精密研磨を、前記ガラス素板の外周TIRが1μm以下になるように行なうことが好ましい。ここに、TIRとは、磁気ディスクのうねり量を表す指標をいい、評価面(基板表面)の最小二乗平面からの最高点と最低点との距離の合計のことを言い、外周TIRとは、図7に示すように、情報記録媒体用ガラス基板の半径をr1としたときに、0.75r1を満たす位置で周方向のTIRをトラック1周分測定したものである。
請求項10のように、前記精密研磨を、前記ガラス素板の内周TIRが0.5μm以下になるように行なうことが好ましい。ここに、内周TIRとは、図7に示すように情報記録媒体用ガラス基板の半径をr1、基板の内穴の半径をr2としたときに、(2r2+r1)/3を満たす位置で周方向のTIRをトラック1周分測定したものである。
本発明の請求項1、2によれば、ガラス素板として、酸化マグネシウム(MgO)と酸化カルシウム(CaO)とのアルカリ土類金属と、酸化リチウム(LiO)と酸化ナトリウム(NaO)と酸化カリウム(KO)とのアルカリ金属とを含み、上記アルカリ土類金属に対する上記アルカリ金属の質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)が、0.1<(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)<0.80の範囲のものを用いて行なう。
こうすることにより、ガラス素板が適度な耐熱性を持ち、例えば化学強化を行う場合でも化学強化工程中における熱変形を抑えることができる。しかも、化学強化工程中におけるイオン交換が均一に行なわれ、ガラス素板表面に均等な圧縮応力を働かせることが出来、ガラス素板の平坦度を抑えることができる。
従って、化学強化工程の後に精密研磨を行なっても、ガラス素板を全体に渡って略均一な取り代量で行なうことができ、精密研磨後の平坦性を良好にできる。
請求項3によれば、精密研磨を、前記ガラス素板の表面全体の平坦度が2μm以下になるように行なうため、製造後の情報記録媒体用ガラス基板をハードディスク装置に組み付けた場合に、ハードディスク装置に設けられたヘッドを、情報記録媒体用ガラス基板の表面からの距離を狭くした状態にして情報記録媒体用ガラス基板を高速回転させたような場合でも、ヘッドと情報記録媒体用ガラス基板との接触を防止できる。
請求項4によれば、研磨液を、研磨材としてのコロイダルシリカを含むものを用いて、pH1〜3になるようにして行なうため、コロイダルシリカの凝集を抑えることができ、精密研磨に際してコロイダルシリカをガラス素板の全体に渡って略均一に配設でき、ガラス素板を全体に渡って略均一な取り代量で研磨できる。
又、0.5μm〜10μmの取り代量で研磨するため、精密研磨を化学強化工程の後に行なう場合でも、化学強化工程後のガラス素板の全面を平滑に研磨できるとともに、化学強化工程で形成された圧縮応力層のバランスを保った状態にでき、研磨後の平坦性を良好にできる。
請求項5によれば、ガラス素板を、0.7μm〜8μmの取り代量で研磨するため、精密研磨を化学強化工程の後に行なう場合でも、化学強化工程後のガラス素板の全面を、より一層確実に平滑に研磨できるとともに、化学強化工程で形成された圧縮応力層のバランスをより一層確実に保った状態にでき、研磨後の平坦性を、より一層良好にできる。
請求項6によれば、コロイダルシリカとして、その粒子径が80nm以下のものを用いるため、ガラス素板を、より平滑に研磨できる。
請求項7によれば、コロイダルシリカとして、その粒子径が50nm以下のものが用いられるため、ガラス素板を、より一層、平滑に研磨できる。
請求項8によれば、研磨液を、コロイダルシリカのゼータ電位が−10mV以下、又は+10mV以上となる条件で使用するため、コロイダルシリカを分散性の良い状態にでき、研磨に際しコロイダルシリカをガラス素板の全体に渡って略均一に配設でき、ガラス素板を全体に渡って略均一な取り代量で研磨できる。
請求項9によれば、精密研磨を、ガラス素板の外周TIRが0.8μmになるように行なうため、製造後の情報記録媒体用ガラス基板をハードディスク装置に組み付けた場合に、ハードディスク装置に設けられたヘッドを、情報記録媒体用ガラス基板の表面からの距離を、より一層狭くした状態にして情報記録媒体用ガラス基板を高速回転させたような場合でも、ヘッドと情報記録媒体用ガラス基板との接触を、より確実に防止できる。
請求項10によれば、精密研磨を、ガラス素板の内周TIRが0.5μmになるように行なうため、製造後の情報記録媒体用ガラス基板をハードディスク装置に組み付けた場合に、ハードディスク装置に設けられたヘッドを、情報記録媒体用ガラス基板の表面からの距離を、更に一層狭くした状態にして情報記録媒体用ガラス基板を高速回転させたような場合でも、ヘッドと情報記録媒体用ガラス基板との接触を、より一層、確実に防止できる。
本発明の製造方法により製造した情報記録媒体用ガラス基板の斜視図である。 本発明の一実施形態の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の工程を説明するための工程説明図である。 精密研磨工程に用いる研磨装置の平面図である。 図3のIV−IV線端面面図である。 図3の研磨装置の上研磨皿を外した状態の平面図である。 (a)は、本発明の実施例の平坦度等の測定値を表した図表、(b)は、比較例の平坦度等の測定値を表した図表である。 外周TIR及び内周TIRを説明するための説明図である。
以下、本発明を具体的に説明する。図1は、本発明の製造方法により製造した情報記録媒体用ガラス基板の斜視図、図2は、本発明の製造方法の工程を説明するための工程説明図である。
この実施形態では、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、円盤加工工程と、ラッピング工程と、粗研磨工程と、化学強化工程と、精密研磨(仕上研磨)工程とを含み、これらの工程を経て製造される。
使用するガラス素材は、SiOを主成分とし、これにMgOとCaOとのアルカリ土類金属と、LiOとNaOとKOとのアルカリ金属とを含み、上記アルカリ土類金属に対する上記アルカリ金属の質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)が、0.1<(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)<0.80の範囲のものが用いられる。
上記質量比が上記範囲内であれば、ガラス素材が適度な耐熱性を持ち、化学強化工程における処理中での熱変形を抑えることができる。さらに化学強化工程におけるイオン交換が均一に行われ、これにより、ガラス素板表面に均等な圧縮応力を働かせることができ、化学強化工程におけるガラス素板の変形を抑えて平坦度を良好にできる。従って、化学強化工程の後に精密研磨を行なっても、ガラス素板を全体に渡って略均一な取り代量で行なうことができ、精密研磨後の平坦性を良好にできる。
上記質量比が0.1以下では、ガラス素板の耐熱性が低くなり強化処理中の熱変形が避けられず、しかもガラス材料としての化学的耐久性の劣化を招く。一方、上記質量比が0.8以上では、ガラス素板の耐熱性が高すぎイオン交換自体を行うことが困難となり、しかもイオン交換による圧縮応力形成を素板表面で均等に働かせることが困難となる。
この実施形態では、SiO:55〜75質量%、Al:5〜18質量%、LiO:1〜10質量%、NaO:3〜15質量%、KO:0.1〜5質量%、(但し、LiO+NaO+KOの総量:10〜25質量%)、MgO:0.1〜5質量%、CaO:1〜5質量%、CeO:0.1〜5質量%、ZrO:0〜8質量%であり、(MgO+CaO)に対する(LiO+NaO+KO)の質量比が、0.10<(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)<0.80の範囲にあるガラス素材からなるものが用いられる。
円盤加工工程は、上記ガラス素材から構成した板ガラスを、円盤形状のガラス素板に加工する工程である。この円盤加工工程で、例えば、外径が2.5インチ、1.8インチ、1インチ、0.8インチ等で、厚みが2mm、1mm、0.63mm等の円盤状のガラス素板に形成されるが、大きさや厚さは、特に限定されない。
ラッピング工程は、上記ガラス素板を所定の板厚に加工する工程である。この実施形態では、第1ラッピング工程と、第2ラッピング工程との2つの工程から構成されている。
第1ラッピング工程は、ガラス素板の裏表の両面を研削(ラッピング)加工し、ガラス素板の全体形状、すなわちガラス素板の平行度、平坦度および厚みを予備調整する。
第2ラッピング工程は、更に、ガラス素板の両表面を再び研削加工して、ガラス素板の平行度、平坦度および厚みを微調整する。
上記第1及び第2ラッピング工程にてガラス素板の表裏の両面をラッピングする研削装置は、例えば両面研削装置を使用できる。この研削装置は、図示しないが、互いに平行になるように上下に間隔を隔てて配置された円盤状の上定盤と下定盤とを備えており、互いに逆方向に回転する。
この上下の定盤の対向するそれぞれの面にガラス基板の裏表の各面をラッピングするための複数のダイヤモンドシートが貼り付けてある。上下の定盤の間には、複数の穴を有するキャリアが設けられており、このキャリアに嵌め入れられた複数のガラス素板を保持した状態で、自転しながら定盤の回転中心に対して下定盤と同じ方向に公転する。
このように動作している研削装置において、研削液を上定盤とガラス素板との間及び下定盤とガラス素板との間夫々に供給することでガラス素板のラッピングを行うことができる。
尚、この実施形態においては、第1ラッピング工程で、粒度が9μm程度のダイヤモンドシートを用い、第2ラッピング工程で、粒度が粒度が4μm程度のダイヤモンドシートを用いて行なっているが、これに限らず、種々の粒度のダイヤモンドシートを用いて行なうことができる。
第2ラッピング工程を終えた時点で、大きなうねり、欠け、ひび等の欠陥は除去され、ガラス素板の表面の面粗さは、Rmaxが2μmから4μm、Raが0.2μmから0.4μm程度とするのが好ましい。このような面状態にしておくことで、次の粗研磨工程で研磨を効率よく行うことができる。
尚、第1及び第2ラッピング工程の後、ガラスディスク基板の表面に残ったガラス粉等を除去するための洗浄工程を行うことが好ましい。
粗研磨工程は、後述の精密研磨工程で最終的に必要とされる面粗さを効率よく得ることができるように、面粗さを向上させる。尚、後述の精密研磨工程は、粗研磨工程後のガラス素板の表面を更に精密に研磨する工程である。
粗研磨の方法は、研磨液と、研磨装置1(図3〜図5に示す)とを用いて行なわれる。研磨液は、この実施形態では、精密研磨で用いるものと同じものを使用する。この研磨液については、後述の精密研磨の説明のところで述べる。
この研磨装置1は、図3〜図5に示すように上研磨皿2と、下研磨皿3と、ディスク保持部材4とを備えている。上研磨皿2は、断面円形状のものから構成されており、その下面側に、研磨パッド5を備えている。
研磨パッド5は、この実施形態では、例えば硬度Aで80〜90(Asker−C)程度の硬質パッドを用いる。
そして、このように構成された上研磨皿2は、水平方向(図示のX−X方向)に移動可能に構成されている。
下研磨皿3は、断面円形状のものから構成されているとともに、その上面側に、ディスク保持部材4を収納するディスク保持部材収納凹部31を備えている。ディスク保持部材収納凹部31は、円形状に所定深さで窪まされるようにして形成されている。又、このディスク保持部材収納凹部31の上面には、研磨パッド5が配設されている。この研磨パッド5は、上記上研磨皿2の研磨パッドと同構成のものである。
又、下研磨皿3は、その下面側に、軸部32を備えており、この軸部32が回転させられることにより、その軸心回りに回転するように構成されている。
ディスク保持部材4は、厚さがガラス素板10の厚さよりも薄い円形状の板状のものから構成されている。又、ディスク保持部材4は、ガラス素板10と同じ程度の大きさで、上面から下面に貫通する複数の貫通孔41を備えている。
このように構成されたディスク保持部材4は、これらの貫通孔41の夫々に、ラッピング工程を終えたガラス素材10が入れられた状態で、下研磨皿3のディスク保持部材収納凹部31に嵌挿されるとともに、上研磨皿2がディスク保持部材4の全体を上方側から覆うように配設される。
そして、研磨装置1の作動に伴い、上研磨皿2が水平方向に往復動し、下研磨皿3が図5の時計方向に回転する。そして、ガラス素材10の上側になった表面が上研磨皿2の研磨パッド5により、下側になった裏面が下研磨皿3の研磨パッド5により、夫々研磨される。
この粗研磨工程で研磨するガラス素板の厚さ(取り代量)は、この実施形態では、30μm〜40μmである。
次に、化学強化工程について説明する。化学強化工程は、化学強化液にガラス素板を浸漬してガラス素板に化学強化層を形成する。化学強化層を形成することで耐衝撃性、耐振動性及び耐熱性等を向上させる。
又、化学強化工程は、加熱された化学強化処理液にガラス素板を浸漬することによってガラス素板に含まれるリチウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンをそれよりイオン半径の大きなカリウムイオン等のアルカリ金属イオンによって置換するイオン交換法によって行われる。イオン半径の違いによって生じる歪みにより、イオン交換された領域に圧縮応力が発生し、ガラス素板の表面が強化される。
精密研磨工程は、この実施形態では、上記化学強化工程後に、研磨液と、研磨装置1(図3〜図5に示す)とを用いて行なわれる。
研磨液は、この実施形態では、研磨材としてのコロイダルシリカを含んだものを用いる。この研磨液は、pHが1〜3の範囲で使用されるのが好ましい。
この範囲内では、コロイダルシリカを分散させ易くできる。即ち、上記範囲を超えると、コロイダルシリカが凝集し易くなり、研磨に際してガラス素板の表面にコロイダルシリカが局所的に凝集する。その結果、ガラス素板の表面において、その凝集した部分が他の部分よりも研磨量(取り代量)が多くなってしまい、先の化学強化工程で形成された化学強化層(圧縮応力層)の平衡がくずれてガラス素板が歪み易くなって、平坦性が悪くなり易くなる。
また、研磨液は、コロイダルシリカのゼータ電位が−10mV以下、又は+10mV以上となる条件にして使用するのが好ましい。コロイダルシリカのゼータ電位が−10mVから+10mVまでの範囲では、上記の場合と同様に、コロイダルシリカが凝集し易くなり、ガラス素板の表面にコロイダルシリカが局所的に凝集し易くなるからである。より好ましくは、コロイダルシリカのゼータ電位が−50mV〜−10mV、又は+10mV〜+50mVである。
又、コロイダルシリカは、粒子径が80nm以下のものを用いるのが好ましい。粒子径が80nmを越えると、研磨後のガラス素板の平滑性が低下するおそれが生じるからである。より好ましくは、粒子径が50nm以下のものを用いる。
研磨装置は、上述の粗研磨工程で用いた図3〜図5に示す装置と同じものを使用する。ただし、研磨パッド5は、粗研磨工程で用いる研磨パッドよりも軟らかいもの、例えば硬度A65〜80(Asker−C)程度の軟質パッドで、発泡ウレタンやスウェードからなるものを使用する。
又、精密研磨で、研磨する取り代量は、0.5μm〜10μmにするのが好ましい。0.5μmよりも少ないと、先の化学強化工程でガラス素板が熱変形している場合には、表面の一部が研磨できずに残るおそれが生じるとともに、平滑性を良好にできないおそれがある。一方、10μmを超えると先の化学強化工程で形成された化学強化層(圧縮応力層)の平衡がくずれてガラス素板が歪み易くなって、平坦性が悪くなり易くなるからである。より好ましくは、取り代量は、0.7μm〜8μmである。
上記精密研磨工程の後は、洗浄工程等を経て、図1に示すような円盤状の情報記録媒体用ガラス基板1aを得ることができる。
尚、上記実施形態では、粗研磨工程及び精密研磨工程で用いる研磨装置は、図3〜図5に示すものに限らず、適宜変更できる。
例えば上記ラッピング工程で使用した両面研削装置におけるダイヤモンドシートに代えて上記研磨パッドを装着したものと、上記ラッピング工程で使用した研削液に代えて上記精密研磨工程で用いた研磨液とを用いて行うことができ、適宜変更できる。
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
〔実施例1〕
上記化学強化工程後の精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径20nmのものを使用し、研削液のpHを1.3とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−12mVにして用いる。又、精密研磨での取り代量を7μmとした。
このようにして精密研磨したガラス素板の全面平坦度は、図6(a)に示すように、1.2μmであった。また、内周TIRは、0.098μmであり、外周TIRは、0.42μmであった。尚、全面平坦度は、上記TIRによるものである。以下の実施例2〜7、比較例1〜10において同じである。
〔実施例2〕
上記化学強化工程後の精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径20nmのものを使用し、研削液のpHを1.5とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−13mVにして用いる。又、精密研磨での取り代量を0.8μmとした。
このようにして精密研磨したガラス素板の全面平坦度は、図6(a)に示すように、1.3μmであった。また、内周TIRは、0.102μmであり、外周TIRは、0.399μmであった。
〔実施例3〕
上記化学強化工程後の精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径30nmのものを使用し、研削液のpHを1.2とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−13mVにして用いる。又、精密研磨での取り代量を0.6μmとした。
このようにして精密研磨したガラス素板の全面平坦度は、図6(a)に示すように、1.3μmであった。また、内周TIRは、0.189μmであり、外周TIRは、0.52μmであった。
〔実施例4〕
上記化学強化工程後の精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径30nmのものを使用し、研削液のpHを2とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−10mVにして用いる。又、精密研磨での取り代量を9μmとした。
このようにして精密研磨したガラス素板の全面平坦度は、図6(a)に示すように、1.4μmであった。また、内周TIRは、0.201μmであり、外周TIRは、0.59μmであった。
〔実施例5〕
上記化学強化工程後の精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径60nmのものを使用し、研削液のpHを1.4とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−10mVにして用いる。又、精密研磨での取り代量を10μmとした。
このようにして精密研磨したガラス素板の全面平坦度は、図6(a)に示すように、1.8μmであった。また、内周TIRは、0.29μmであり、外周TIRは、0.65μmであった。
〔実施例6〕
上記化学強化工程後の精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径80nmのものを使用し、研削液のpHを2とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−15mVにして用いる。又、精密研磨での取り代量を8μmとした。
このようにして精密研磨したガラス素板の全面平坦度は、図6(a)に示すように、1.9μmであった。また、内周TIRは、0.27μmであり、外周TIRは、0.7μmであった。
〔実施例7〕
上記化学強化工程後の精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径50nmのものを使用し、研削液のpHを1.5とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−3mVにして用いる。又、精密研磨での取り代量を8μmとした。
このようにして精密研磨したガラス素板の全面平坦度は、図6(a)に示すように、1.9μmであった。また、内周TIRは、0.35μmであり、外周TIRは、0.789μmであった。
〔比較例〕
又、比較例として、コロイダルシリカの平均粒子径、研削液のpH、コロイダルシリカのゼータ電位、精密研磨での取り代量を、適宜変更して比較例1〜10を行なった。そして、その比較例1〜10の夫々におけるガラス素板の全面平坦度、内周TIR、外周TIR夫々を測定し、その結果を、図6(b)に示した。
全面平坦度の上限値を2μm、内周TIRの上限値を0.5μm、外周TIRの上限値を0.8μmに夫々設定すると、図6(a)に示すように、実施例1〜7では、全面平坦度、内周TIR、及び外周TIRの全てが上記設定値以下になった。
特に、実施例1及び2は、全面平坦度、内周TIR及び外周TIRの値が小さく、良好であるとして◎印を付し、実施例3〜6は、実施例1や2よりも劣ったとして○印を付した。又、実施例7は、上記上限値に近かったので、△印を付した。
これに対して、比較例1〜10では、全面平坦度、内周TIR、及び外周TIRが上記上限値以上(ただし、比較例1の内周TIRのみ上記上限値以下)になり、実施例1〜7よりも劣ったとして×印を付した。
以上のように、精密研磨工程において、コロイダルシリカとして、平均粒子径80nmのものを使用し、研削液のpHを1〜3とし、また、コロイダルシリカのゼータ電位を−10mV以下、又は、+10mV以上にして用い、又、精密研磨での取り代量を0.8〜10μmに設定して行なえば、全面平坦度が2μm以下、内周TIRが0.5μm以下で、且つ、外周TIRが0.8μm以下にでき、このように設定して精密研磨工程を行なうのが好ましい。
1 研磨装置
2 上研磨皿
3 下研磨皿
10 ガラス素板
1a 情報記録媒体用ガラス基板

Claims (7)

  1. 化学強化処理液を用いてガラス素板の表面を強化する化学強化工程と、前記ガラス素板の表面を、研磨液を用いて精密研磨を行なう精密研磨工程を含み、
    前記ガラス素板として、
    酸化マグネシウム(MgO)と酸化カルシウム(CaO)とのアルカリ土類金属と、酸化リチウム(LiO)と酸化ナトリウム(NaO)と酸化カリウム(KO)とのアルカリ金属とを含み、
    上記アルカリ土類金属に対する上記アルカリ金属の質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)が、0.1<(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)<0.80の範囲にあるガラス素材からなるものを用いて行ない、
    前記研磨液を、研磨材としてのコロイダルシリカを含むものを用いて、pH1〜3になるようにし、
    前記精密研磨を、前記化学強化工程を終えた後に、0.7μm〜8μmの取り代量で、前記ガラス素板の表面全体の平坦度が2μm以下になるように行なうことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  2. 化学強化処理液を用いてガラス素板の表面を強化する化学強化工程と、前記ガラス素板の表面を、研磨材を用いて精密研磨を行なう精密研磨工程を含み、
    前記ガラス素板として、
    酸化ケイ素(SiO):55〜75質量%、酸化アルミニウム(Al):5〜18質量%、酸化リチウム(LiO):1〜10質量%、酸化ナトリウム(NaO):3〜15質量%、酸化カリウム(KO):0.1〜5質量%、(但し、LiO+NaO+KOの総量:10〜25質量%)、酸化マグネシウム(MgO):0.1〜5質量%、酸化カルシウム(CaO):1〜5質量%、酸化セリウム(CeO):0.1〜5質量%、酸化ジリコニウム(ZrO):0〜8質量%であり、(MgO+CaO)に対する(LiO+NaO+KO)の質量比が、0.10<(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO)<0.80の範囲にあるガラス素材からなるものを用いて行ない、
    前記研磨液を、研磨材としてのコロイダルシリカを含むものを用いて、pH1〜3になるようにし、
    前記精密研磨を、前記化学強化工程を終えた後に、0.7μm〜8μmの取り代量で、前記ガラス素板の表面全体の平坦度が2μm以下になるように行なうことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記コロイダルシリカとして、その粒子径が80nm以下のものを用いることを特徴とする請求項又は記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記コロイダルシリカとして、その粒子径が50nm以下のものを用いることを特徴とする請求項又は記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記研磨液を、コロイダルシリカのゼータ電位が−10mV以下、又は+10mV以上となるようにすることを特徴とする請求項の何れか一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記精密研磨を、前記ガラス素板の外周TIRが0.8μm以下になるように行なうことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
  7. 前記精密研磨を、前記ガラス素板の内周TIRが0.5μm以下になるように行なうことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
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