そこで、本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、その第1は、ナノサイズを含む微小な粒径をもつ磁性担体の捕獲または再懸濁を含む処理を迅速かつ効率的に行なうことができる磁性試薬、磁性試薬キット、磁性担体処理方法およびその処理装置を提供することを目的としてなされたものである。その第2は、簡単な構成を用いて、ナノサイズを含む微小な粒径をもつ磁性体を含む種々の処理の自動化に適した磁性試薬、磁性試薬キット、磁性担体処理方法およびその処理装置を提供することを目的としてなされたものである。
第1の発明は、磁場を受けて磁化可能であって、液中の所定の化学物質または生体と結合可能で該液中に懸濁可能な粒径をもつ複数の磁性担体と、磁場を受けて磁化され前記磁性担体を表面に吸着可能であって前記液の移動または磁場により液中で移動可能に形成され前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進する複数の処理促進用磁性体粒子と、を有する磁性試薬または磁性試薬キットである。
ここで、「前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進する」とは、前記磁性担体の全部の捕獲または再懸濁の処理を完了しまたは完了に近い状態になるまでにかかる時間を短縮化することである。「磁性担体の捕獲」とは、磁性担体を液から分けること、「磁性担体の再懸濁」とは、捕獲した磁性担体を液中に戻し懸濁させることをいう。
「磁性担体」とは、液中の所定の化学物質または生体と結合可能であって、該液中に懸濁可能な粒径をもつ磁性体を有する担体である。磁場を受けた場合には速やかに磁化され、磁場を除去した場合には、速やかに消磁されることが好ましい。そのような素材としては、例えば、超常磁性体がある。超常磁性体としては、例えば、磁性イオンを含有した酸化物ガラスやフッ化物ガラスのような非晶質のイオン性化合物がある。「結合」には、例えば、特異的結合または非特異的結合を含み、反応、イオン結合、共有結合、化学的または物理的吸着等をも含む。
「所定の化学物質または生体」とは、いわゆる処理の標的であって、DNA若しくはRNA等の核酸、抗原若しくは抗体を含むタンパク、アミノ酸、脂肪、若しくは糖鎖等を含む生体高分子、ダイオキシン、金属、塩化ポリマー若しくは無機物等を含む環境物質または毒素等を含む化学物質、または、細胞、細菌若しくはウィルス等の生体である。
「液中に懸濁可能な粒径」であるので、例えば、数ナノメートルから数百マイクロメートルであって、好ましくは、数ナノメートルから数十マイクロメートルである。
「処理促進用磁性体粒子」とは、液中の所定の化学物質または生体との結合可能性が要求されずに、磁場が印加された際に、該磁場によってそれ自身が磁化されて前記磁性担体または処理促進用磁性体粒子を磁力によって吸着させることができるとともに、液中で液の移動または磁場によって移動可能に形成されたものである。したがって、該処理促進用磁性体粒子は、液の移動、例えば、液の攪拌や振盪によって液中に分散または懸濁させることができるので、液中に懸濁する磁性担体に対し至近距離で、かつ磁性担体が吸着する容器やチップの内壁等の所定捕獲領域の面積に比較して拡大された表面積によって前記磁性担体を捕獲することができる。また、前記処理促進用磁性担体は、磁場によって、磁場方向にそれ自身引き付けられて移動することによって、磁性担体を吸着させた状態で容器やチップの磁場方向にある内壁に直接的または間接的(処理促進用磁性体粒子又は磁性担体を介して)に吸着させることができる。このようにして、処理促進用磁性体粒子は、それがない場合に比較して、磁性担体に与える磁力が強化され、磁場による磁性担体の捕獲(または分離)処理を促進することができる粒子である。
そのためには、一般的に前記磁性担体とは異なる構成をもち、例えば、異なる粒径または異なる素材をもつことが好ましい。例えば、該処理促進用磁性体粒子は、少なくとも該粒子を囲む液よりも大きな磁束密度を有し、より好ましくは、前記磁性担体よりも大きな磁束が貫き(大きな磁気モーメントをもち)、または前記磁性担体よりも大きな磁束密度をもつのが好ましい。これによって、磁性担体を磁力によって引き付けることができる。また、貫く磁束が大きければ、受けた磁場に強く磁化されて磁場方向に一層強く引き付けられる。これによって前記磁性担体が吸着して捕獲される捕獲領域の面積が単に磁石の磁極の面積程度の容器や分注チップの内壁だったものが処理促進用磁性体粒子の表面積にまで、拡大することになる。
また、処理促進用磁性体粒子は、液の移動または磁場によって液中で移動可能に形成されている。したがって、一旦磁場をかけて磁性担体を捕獲した際に凝集した処理促進用磁性体粒子同士を、磁場を除去した上で液の攪拌または振盪を加えることで、再分散または再懸濁させることによって該処理促進用磁性担体からの磁性担体の乖離または離脱を促進して磁性担体の再懸濁を容易化する。その場合には、処理促進用磁性体粒子は、それを収容する容器や分注チップよりも十分に小さい大きさであるが、前記磁性担体よりも大きく形成して、液の移動による影響を受けやすくするのが好ましい。
このようにして、処理促進用磁性体粒子は、磁性担体に比較して、好ましくは、より大きく形成し、かつ、前記磁性担体よりも大きな磁束が貫くように構成することで、磁性担体の捕獲および再懸濁の双方の処理を促進することができる。
該処理促進用磁性体粒子のサイズ、素材、構造(単一ドメイン、表面を加工、被覆等)、その性質(例えば、常磁性、超常磁性、強磁性、フェリ磁性等)、その量はその処理目的に応じて定めることができる。該処理促進用磁性体粒子の素材は、例えば、強磁性体として、例えば、鉄系、パーマロイ系、フェライト系、アモルファス系、水酸化鉄、酸化水和物、酸化鉄、混合酸化鉄、クローム鋼等がある。
鉄系としては、例えば、電磁軟鉄(Fe)、ケイ素鋼(Fe-3Si)、鉄−アルミ(Fe-3.5Al)、パーメンジュール(Fe-50Co-2V)、センダスト(Fe-9.5Si-5.5Al)がある。パーマロイ系としては、例えば、45パーマロイ(Fe-45Ni)、78パーマロイ(Fe-78.5Ni)、スーパーマロイ(Fe-79Ni-5Mo)、ミューメタル(Fe-77Ni-2Cr-5Cu)、ハードパーム(Fe-79Ni-9Nb)がある。
フェライト系としては、例えば、Mn-Znフェライト(30MnO-17ZnO-51Fe2O3)、Ni-Znフェライト(15NiO-35ZnO-51Fe2O3)、Cu-Znフェライト(22.5CuO-27.5ZnO-50Fe2O3)がある。アモルファス系としてはFe基アモルファス(Fe-5SDi-3B)、Co基アモルファス(Co81.8-Fe4.2-Ni4.2-SI10-B20)がある。
前記処理促進用磁性体粒子および前記磁性担体が磁化されることによって、容器または分注チップの内部の内壁を含む所定捕獲領域に引き付けられて吸着するだけでなく、該磁性担体は該内壁等に吸着した処理促進用磁性体粒子自体にも吸着することになるので、前記磁性担体が直接的または間接的に吸着されるべき部分である前記捕獲領域が拡大することになって確実かつ効率的に磁性担体が分離されることになる。
「磁性試薬」としては、前記複数の処理促進用磁性体粒子と複数の磁性担体とを混在させる場合、またはそれらを液中に含有させた試薬液があり、「磁性試薬キット」としては、前記複数の処理促進用磁性体粒子からなる試薬と、複数の磁性担体からなる試薬とのセット、または、これらのどちらか一方をまたは両方を液中に含有させた試薬液のセットまたは試薬と試薬液とのセットがある。
ここで、該処理促進用磁性体粒子は、前記所定の化学物質又は生体と結合不能となるような素材又はその素材で被覆するように加工するのが好ましい。これは、ある種の鉄等の素材に対するDNA等の標的の非特異的結合性に基づく標的の結合を防止するために、該処理促進用磁性体粒子の表面を、非特異的結合性のない物質で被覆する等の加工するのが好ましい。これによって、磁性担体自体の結合能力を高めることができる。または、その他の加工によって磁性担体の前記処理促進用磁性体粒子からの乖離または離脱能力を高めるのが好ましい。
第2の発明は、前記処理促進用磁性体粒子の粒径は前記磁性担体の粒径よりも大きく形成された磁性試薬または磁性試薬キットである。
該処理促進用磁性体粒子は、少なくとも、該処理促進用磁性体粒子が懸濁する液よりも大きな磁束密度をもつ場合には、磁場が発生するために、それがない場合に比較して該処理促進用磁性体粒子の表面に前記磁性担体が引き付けられまたは吸着し、または該処理促進用磁性体粒子自体が磁場方向に引き付けられまたは所定捕獲領域に吸着して、捕獲(分離)処理を促進することになる。特に、該処理促進用磁性体粒子が、同一の磁場に対して前記磁性担体よりも大きな磁束が通る場合には、磁性担体より大きな磁気モーメントをもつので、同一の磁場に対して前記処理促進用磁性体粒子は磁性担体よりも磁場に対して大きな磁力を受けまたは生じさせる。処理促進用磁性体粒子は移動可能な粒子状に形成されているので、磁場に対して大きな力で容器中または分注チップ等の流管中を磁場方向に引き付けられまたは吸着し、かつそれ自身、より小さい磁性担体を表面に引き付けまたは吸着させることになる。なお、粒径が大きい場合には磁性担体と処理促進用磁性体粒子は、同一の素材であっても良い。
第3の発明は、前記処理促進用磁性体粒子の粒径は、0.001mmから5mmの大きさであり、前記磁性担体の粒径は、数nmから数10μmである磁性試薬または磁性試薬キットである。
前記処理促進用磁性体粒子を分注チップが吸引吐出可能である場合には、該処理促進用磁性体粒子の粒径は、該分注チップの先端または細径管の内径よりも小さいことが好ましい。このような場合には、粒径としては、例えば、0.001mmから0.5mmである。一方、前記処理促進用磁性体粒子を前記分注チップ等の流管に封入して用いることもできる。そのような場合には、粒径としては、例えば0.5mmから5mm程度が好ましい。なお、処理促進用磁性体粒子を分注チップに封入する場合には、その細径管に液の移動または磁場により移動可能であるが1列状に順序を乱さずに細径管の両端近傍の2箇所に設けた止め部によって挟むように封入し、または前記太径部に2枚のフィルタで挟んでその内部に液の移動または磁場により移動可能に封入するのが好ましい。2枚のフィルタの下側では液は通過可能であるが、前記処理促進用磁性体粒子が通過不能であり、上側では気体は通過可能であるが液および前記処理促進用磁性体粒子が通過不能であるようなポア径を設け、2つの止め部は、液は通過可能であるが、前記処理促進用磁性体粒子は通過不能であって該粒子によって閉塞されないような隙間を有するように設ける。
第4の発明は、前記処理促進用磁性体粒子の磁化率は前記磁性担体の磁化率よりも常温において大きい磁性試薬または磁性試薬キットである。ここで、「磁化率」の代わりに「透磁率」であっても良い。ここで、「常温」とは、例えば、強磁性体、フェリ磁性体等のキューリ温度未満の温度である。
磁性体が等方性の場合には磁化と磁束密度と磁場とが同一方向である。このような場合には、磁化率は磁性体によって定まる無次元の定数となり、前記磁性担体と処理促進用磁性体粒子の粒径が同一の場合には磁化率が大きい方が磁束が大きいことになる。
第5の発明は、前記処理促進用磁性体粒子は強磁性体を有し、前記磁性担体は常磁性体または超常磁性体を有する磁性試薬または磁性試薬キットである。
一般に、強磁性体は、常磁性体、超常磁性体、フェリ磁性体に比較して磁化率が大きく強く磁化されるので、前記磁性担体に比較して強力に磁化されるべき処理促進用磁性体粒子に適している。一方、常磁性体、超常磁性体は、一般に残留磁化が少なく、磁場を印加すると磁化され、磁場を除去すると速やかに消磁されるので、再懸濁が強磁性体に比較して容易であり磁性担体に適している。なお、強磁性体であっても、微粒子の集合は超常磁性を示す超常磁性体となり得る。
第6の発明は、前記処理促進用磁性体粒子は、前記磁性担体と異なる大きさまたは異なる素材で形成され、所定の化学物質または生体と結合可能である磁性試薬または磁性試薬キットである。
ここで、「所定の化学物質または生体」は、磁性担体の「所定の化学物質または生体」と一致する場合と、異なる場合とがある。一致する場合には、全体としてより効率的に標的の分離を行なうことができることになる。異なる場合には、同時に2つの処理を並行して行うことができることになる。この場合には、磁性担体と同様に、前記処理促進用磁性体粒子の非特異的結合性を利用し、または、該処理促進用磁性体粒子についても磁性担体と同様のまたは異なる特異的結合用の表面加工(例えば、結合物質の被覆等)が行われることになる。
第7の発明は、前記磁性担体は、1または複数の液収容部をもつカートリッジ容器の1の液収容部内に収容され、前記処理促進用磁性体粒子は、前記カートリッジ容器の前記1の液収容部内または他の液収容部内に収容されて、1または複数の液収容部の開口部が穿孔可能な薄膜で密閉された磁性試薬または磁性試薬キットである。
該処理促進用磁性体粒子は、好ましくは、前記液収容部に、液の移動または外部より及ぼした磁場によって移動可能となるように収容される。また、分注チップに対して吸引吐出可能となるように形成されるのが好ましい。
第8の発明は、前記磁性担体は、1または複数の液収容部をもつカートリッジ容器の少なくとも1の液収容部内に収容され、該液収容部の開口部が穿孔可能な薄膜で密閉され、前記処理促進用磁性体粒子は、液の移動または外部より及ぼした磁場によって移動可能となるように液の吸引または吐出が可能で前記液収容部内に挿入可能な口部をもつ処理促進用磁性体粒子封入流管内に封入された磁性試薬キットである。
「処理促進用磁性体粒子封入流管」は、分注チップのように、移動可能なノズルヘッドに設けられ気体の吸引吐出を行うノズルに装着して用いることができるように、液体の吸引吐出を行なう口部の他に装着用開口部をもつチップとして形成された後述する処理促進用磁性体粒子封入チップであるのが好ましい。なお、前記流管はカラムのように液体を一方向に流すものに封入される場合も含むことができる。また、流管の一部に封入されその部分が流管に対して着脱可能に設けられる場合がある。
なお、前記カートリッジ容器が1または複数の液収容部の他に、1または複数のチップ収容部を有し、該チップ収容部に分注チップや、前記処理促進用磁性体粒子が封入された処理促進用磁性体粒子封入流管、例えば、処理促進用磁性体粒子封入チップを保持するようにしても良い。また、前記カートリッジ容器の1のチップ収容部に保持されるようにしても良い。さらに、穿孔チップを該カートリッジ容器の他の1のチップ収容部に保持されるようにしても良い。
第9の発明は、所定の化学物質または生体からなる標的を含有する液と、磁場を受けて磁化可能であって液中の前記標的と結合可能で該液中に懸濁可能な粒径をもつ複数の磁性担体、および磁場を受けて磁化され前記磁性担体を表面に吸着可能でかつ液の移動または磁場により液中で移動可能に形成され前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進する複数の処理促進用磁性体粒子とを接触させる接触工程と、磁場を及ぼして前記処理促進用磁性体粒子および前記磁性担体を磁化させて前記磁性担体または前記処理促進用磁性体粒子を前記処理促進用磁性体粒子の表面に吸着させるとともに、該磁性担体および前記処理促進用磁性体粒子を所定捕獲領域に直接的または間接的に吸着させることで該磁性担体を捕獲させる捕獲工程とを、有する磁性担体処理方法である。
前記接触工程は、例えば、容器中、一方向に液体を流すカラム中で、または液体の吸引吐出を行なう分注チップ中で行なう。ここで、「磁場」の大きさとしては、例えば、1000ガウスから数1000ガウス程度であって、市販の永久磁石を用いて得ることができる。
「磁場を及ぼす」には、前記容器の側面または底面に、またはカラムやチップの側面に接離可能に設けた永久磁石を接近させることによって行なう。または、永久磁石を非磁性体の素材、例えば、プラスチック、樹脂等で包んだ部材を、前記容器またはカラムの開口部、またはチップのノズルの装着用開口部を通って挿抜可能に設け、前記開口部を通して内部に挿入することによって容器若しくはチップの内部に磁場を及ぼす。ここで、「捕獲領域」とは、前記磁性担体が直接的に吸着可能(捕獲可能)な領域であって、前記永久磁石が接近する前記容器の側面の内壁、底面の内壁またはチップ等の流管の側面の内壁、または、前記部材の外側部分である。前記処理促進用磁性体粒子を用いることで、捕獲領域としての有効な表面積が拡大し、該捕獲領域に直接的または間接的に吸着した処理促進用磁性体粒子の表面にも磁性担体が直接吸着することになる。
なお、接触工程または分離工程において、チップにより吸引吐出を繰り返すことで前記溶液を攪拌させて処理を効率化させることができる。分離工程の後には、必要ならば、例えば、分離した前記磁性担体から結合した前記化学物質または生体を乖離する乖離工程や、前記磁性担体を再懸濁させるために、前記磁場を除去した状況で、チップにより懸濁液の吸引吐出を繰り返すことで、吸着した磁性担体を再懸濁する再懸濁工程を設ける。
なお、前記接触工程は、前記チップを用いて吸引した前記処理促進用磁性体粒子および前記磁性担体を移送して、前記標的含有溶液を収容した前記容器内に吐出することによって、または、前記チップを用いて吸引した前記標的含有溶液を移送して、前記処理促進用磁性体粒子および前記磁性担体を収容する容器内に吐出することによって、もしくは、磁場を及ぼすことによって前記処理促進用磁性体粒子および前記磁性担体が内部に吸着したチップ内に前記標的含有溶液を吸引することによって接触させる。
第10の発明は、前記磁場を除去した状態で、捕獲した前記磁性担体を含有する液体について攪拌または振盪することで前記磁性担体を液中に再懸濁する再懸濁工程をさらに有する磁性担体処理方法である。
第11の発明は、前記処理促進用磁性体粒子の前記粒径は、前記磁性担体の前記粒径よりも大きく形成された磁性担体処理方法である。
第12の発明は、前記処理促進用磁性体粒子の磁化率は前記磁性担体の磁化率よりも常温において大きく形成された磁性担体処理方法である。したがって、例えば、前記処理促進用磁性体粒子は強磁性体を有するのが好ましく、磁性担体は、超常磁性体または常磁性体を有することが好ましい。
第13の発明は、磁場を受けて磁化可能であって液中の標的と結合可能で該液中に懸濁可能な粒径を持つ複数の磁性担体、または磁場を受けて磁化され前記磁性担体を表面に吸着可能でかつ液の移動または磁場により液中で移動可能に形成され前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進する複数の前記処理促進用磁性体粒子を少なくとも含有する液の吸引および吐出を行なう1または2以上のチップまたは前記液を収容した1または2以上の液収容部を貫くように磁力線を形成して、前記磁性担体または前記処理促進用磁性体粒子を前記所定捕獲領域である前記チップの内壁または前記液収容部の内壁に直接的または間接的に吸着させかつ前記チップまたは前記液収容部を仕切るように前記磁性担体または前記処理促進用磁性体粒子を展開させて粒子層を形成する粒子層形成工程と、少なくとも所定の化学物質または生体からなる標的を含有する液を、前記粒子層を通過するように移動させる通過工程とを有する磁性担体処理方法である。本発明は第9の発明と組み合わせることができる。前記「粒子層形成工程」は前記チップまたは液収容部を貫くように磁力線束を形成して、前記磁性担体または前記処理促進用磁性体粒子を所定捕獲領域である前記チップの内壁または前記液収容部の内壁に直接的または間接的に吸着させかつ前記チップまたは前記液収容部を仕切るように前記磁性担体等を展開させる。前記「通過工程」は、例えば、前記チップを用いて、前記チップ中においてまたは前記液収容部に対して前記液の吸引および吐出を行いまたはそれを繰り返すことで行なう。
該チップまたは液収容部を貫くように磁力線束を形成するには、例えば、前記チップまたは液収容部を挟んで異なる磁極同士が向き合うように2つの磁石を位置させることによって行なう。展開によって、磁性担体または処理促進用磁性体粒子またはその混合物は前記チップまたは液収容部を、例えば垂直方向に仕切るようなフィルタ状の粒子層を形成する。前記磁性担体、処理促進用磁性体粒子またはその混合物の量は、前記液収容部またはチップの内径に基づいて、展開してそれらを仕切ることができるように定める。
第14の発明は、所定の化学物質または生体からなる標的を含有する液、磁場を受けて磁化可能であって前記液中の標的と結合可能で該液中に懸濁可能な粒径をもつ複数の前記磁性担体を含有する液、および磁場を受けて磁化され前記磁性担体を表面に吸着可能でかつ液の移動または磁場により液中で移動可能に形成された前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進する複数の前記処理促進用磁性体粒子を含有する液の中から選択された少なくとも2種類の液の混合液を1または2以上のチップに導入しまたは1もしくは2以上の液収容部に収容する混合工程と、前記混合液を導入した前記チップまたは収容した前記液収容部に接近させた磁石の磁極を変向用磁場を及ぼして変向させることで、前記磁性担体または前記処理促進用磁性体粒子を液中で変動させる変動工程と、を有する磁性担体処理方法である。本発明は、第13の発明に係る前記粒子層形成工程または通過工程と組み合わせることも可能である。「変向」には、磁極を通る磁力線の向きを逆向きに変える反転をも含む。
第15の発明は、各種試薬を収容可能な1または2以上の液収容部を有する容器と、気体の吸引吐出を行なう1または2以上のノズルが設けられたノズルヘッドと、前記ノズルに着脱可能に装着され、先端が前記液収容部内に挿入可能に設けられた1または2以上のチップと、前記ノズルヘッドと前記容器との間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルに装着されたチップまたは前記液収容部の内の少なくとも1の内部に磁場を及ぼしかつ除去することが可能な磁力手段とを有し、前記液収容部の内の少なくとも1には、前記チップによって吸引吐出可能であって、磁場を受けて磁化可能であり液中の所定の化学物質または生体と結合可能で該液中に懸濁可能な粒径をもつ複数の磁性担体を収容し、磁場を受けて磁化され前記磁性担体を表面に吸着可能であって前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進する複数の処理促進用磁性体粒子を、前記液収容部の少なくとも1に前記チップによって吸引吐出可能であって前記液の移動または磁場により液中で移動可能となるように収容し、または前記チップの少なくとも1に液の移動または磁場により液中で移動可能となるように封入した磁性担体処理装置である。なお、前記チップまたは前記処理促進用磁性体粒子を封入したチップ(処理促進用磁性体粒子封入チップ)は、前記容器が有するチップ収容部に、前記ノズルに装着可能となるように保持されるのが好ましい。
第16の発明は、前記ノズルヘッドに設けられた前記ノズルに装着可能な1または2以上の穿孔用チップをさらに有し、前記容器の各液収容部は、前記ノズルに装着された穿孔用チップにより穿孔可能な薄膜で密閉された磁性担体処理装置である。なお、該穿孔用チップは、前記容器のチップ収容部に、前記ノズルに装着可能となるように保持されるのが好ましい。前記容器は、プレパック式カートリッジ容器ということになる。
第17の発明は、前記処理促進用磁性体粒子の前記粒径は、前記磁性担体の前記粒径よりも大きい磁性担体処理装置である。
第18の発明は、前記処理促進用磁性体粒子の磁化率は前記磁性担体の磁化率よりも常温において大きい磁性担体処理装置である。
第19の発明は、各種試薬を収容可能な1または2以上の液収容部を有する容器と、気体の吸引吐出を行なう1または2以上のノズルが設けられたノズルヘッドと、前記ノズルに着脱可能に装着され、先端が前記液収容部内に挿入可能に設けられた1または2以上のチップと、前記ノズルヘッドと前記容器との間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルに装着されたチップまたは前記液収容部の内の少なくとも1の内部に磁場を及ぼしかつ除去することが可能な磁力手段とを有し、前記液収容部の内の少なくとも1には、前記チップによって吸引吐出可能であって、磁場を受けて磁化可能であり液中の所定の化学物質または生体と結合可能で該液中に懸濁可能な粒径をもつ複数の磁性担体、または磁場を受けて磁化され前記磁性担体を表面に吸着可能であって前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進し、前記チップによって吸引吐出可能であって前記液の移動または磁場により液中で移動可能となる複数の処理促進用磁性体粒子を収容し、前記磁力手段は、前記チップまたは液収容部に対し相対的に移動可能に設けられ、前記ノズルに装着された各チップまたは前記各液収容部の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能な1組の対応する複数の磁石は、前記各チップまたは各液収容部に接近した際には各組ごとに少なくとも2個の磁石の相異なる磁極が前記各チップまたは液収容部を挟んで向き合うように配列された磁石配列部材を有する磁性担体処理装置である。なお、前記磁石配列部材は、前記各磁石が前記チップまたは液収容部と交わらない直線状経路に沿って移動可能に設けるのが好ましい。ここで、「磁石」は永久磁石または電磁石であるが永久磁石が好ましい。
第20の発明は、各種試薬を収容可能な1または2以上の液収容部を有する容器と、気体の吸引吐出を行なう1または2以上のノズルが設けられたノズルヘッドと、前記ノズルに着脱可能に装着され、先端が前記液収容部内に挿入可能に設けられた1または2以上のチップと、前記ノズルヘッドと前記容器との間を相対的に移動可能とする移動機構と、前記ノズルに装着されたチップまたは前記液収容部の内の少なくとも1の内部に磁場を及ぼしかつ除去することが可能な磁力手段とを有し、前記液収容部の内の少なくとも1には、前記チップによって吸引吐出可能であって、磁場を受けて磁化可能であり液中の所定の化学物質または生体と結合可能で該液中に懸濁可能な粒径をもつ複数の磁性担体、または磁場を受けて磁化され前記磁性担体を表面に吸着可能であって前記磁性担体の捕獲または再懸濁の処理を促進し、前記チップによって吸引吐出可能であって前記液の移動または磁場により液中で移動可能となる複数の処理促進用磁性体粒子を収容し、前記磁力手段は、前記チップまたは液収容部に対し相対的に移動可能に設けられ、前記ノズルに装着された前記各チップまたは前記各液収容部の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能であって、1の前記チップまたは前記液収容部ごとに1組の対応する1または複数の磁石が、その磁極が変向可能となるように支持された磁石配列部材と、変向用磁場を及ぼすことによって前記各磁石の磁極を変向することが可能な磁極変向器とを有する磁性担体処理装置である。ここで、「変向用磁場」とは、前記各磁石の磁極を変向させるのに十分な大きさの磁場であって、ある磁石に対する変向用磁場は、例えば、該磁石がその周辺に配置された他の磁石から受ける磁力の総和よりも大きい磁力に相当する磁場であり、その大きさは、各磁石の磁力、磁石間の距離を含む各磁石の配列、磁石の個数、磁石の形状、各磁石の支持状態等に依存して定められる。該変向用磁場の大きさは一般的に各磁石による磁場の大きさとは異なる。なお、本発明を第19の発明と組み合わせることが可能である。この場合には、前記各チップまたは液収容部を挟むように向き合う磁石の磁極を変向させることになり、磁場の変動の効果は大きい。なお、磁極の変向は略定位置で行われるのが好ましい。
第21の発明は、前記各磁石は回転体状に形成され、前記磁石配列部材は、前記各組の対応する複数の前記各磁石が回転により略定位置で連鎖的に変向可能となるように所定間隔を空けて1列状に配列された1または2群の磁石群を有し、前記磁極変向器は、各磁石群の先端の磁石が前記チップまたは液収容部に接近するように前記磁石配列部材を移動させた際に、前記各群の後端の磁石の磁極を変向用磁場を及ぼして変向させることによって、先端の磁石の磁極を変向させて前記チップまたは液収容部に及ぼす磁場を変動させる電磁石を有する磁性担体処理装置である。ここで、「回転体状」には、回転対称軸線に垂直な断面が該軸線を中心に持つ円形となる立体形状である。「所定間隔」としては、例えば、前記チップまたは液収容部を間に挟むことが可能な間隔である。前記電磁石は、例えば、ノズルヘッド、磁石配列部材自体、または該ノズルヘッドに関する移動機構等に設ける。ここで、電磁石が発生する磁力の大きさおよび向きは、該電磁石に流す電流の向き及び大きさに基づく。また、本発明と第19の発明とを組み合わせることが可能であり、この場合には、各組の複数の磁石は、少なくとも2群の磁石群を有することになる。
なお、前記容器の液収容部がマトリクス状に配列され、前記ノズルヘッドには前記ノズルがマトリクス状に配列され、前記ノズルに装着された前記全チップは、前記容器の全部または一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられるとともに、前記磁力手段の前記磁石配列部材は、行方向に沿ってノズルが配列されたノズル行もしくは液収容部が配列された液収容部行および列方向に沿ってノズルが配列されたノズル列もしくは液収容部が配列された液収容部列が各々設けられた前記ノズルヘッドもしくは容器に対して、前記行方向または列方向に沿って相対的に移動可能に設けられるとともに、前記行方向または列方向に沿って延び、かつ少なくとも1が前記ノズル行もしくは液収容部行間またはノズル列もしくは液収容部列間に挿入可能であって挿入した際に前記ノズルに装着された全チップもしくは全液収容部群と隣接可能な形状および大きさを有する複数本の櫛歯部材と、該櫛歯部材と連結しまたは一体的に形成された基部とを有し、前記各櫛歯部材にはそれに隣接可能な各チップもしくは各液収容部に対応する位置に前記列間隔または行間隔で配列された1または複数の磁石が設けられたものが好ましい。ここで、マトリクス状には、1列状または1行状も含む。
第1の発明、第9の発明、または第15の発明によれば、液中の標的と結合可能な磁性担体を、磁場により磁化可能な処理促進用磁性体粒子とともに液と接触させた上で、磁場を印加させることで磁性担体および処理促進用磁性体粒子を磁化させて、該磁性担体を処理促進用磁性体粒子の表面に引きつけまたは吸着させ、さらに該処理促進用磁性体粒子を容器またはチップ等の所定捕獲領域に磁場を介して直接的または間接的に引きつけまたは吸着させることによって、前記所定捕獲領域の表面積が拡大することになる。そのために、前記磁性担体を迅速かつ効率的に捕獲することができる。
また、該処理促進用磁性担体は、液の移動または磁場によって液中を移動可能であるので、液中に懸濁する磁性担体との遭遇性が高く、かつ、液中での至近距離で磁性担体を引き付けまたは吸着させることができるので、捕獲が迅速でありかつ捕獲効率が高い。
さらに、処理促進用磁性体粒子は、液の移動または磁場によって液中を移動可能に設けているので、一旦磁場を及ぼして磁性担体を捕獲した際に凝集した処理促進用磁性体粒子同士を、磁場を除去した上で液について攪拌または振盪を行なうことで、該処理促進用磁性体粒子を、再分散または再懸濁させることによって磁性担体の再懸濁を容易化することができる。
第2の発明、第3の発明、第11の発明または第17の発明によれば、前記処理促進用磁性体粒子の粒径を前記磁性担体の粒径よりも大きく形成しているので、前記処理促進用磁性体粒子と磁性担体とを同じ素材で形成した場合であっても、磁束が大きいので、磁性担体をより効率的に引き付けかつ吸着させることができる。また、大きな粒径の処理用磁性体粒子を用いることで、液の移動による影響を受けやすく、再懸濁をより短時間で効率よく行なうことができることになる。また、大きさの相違によって、前記磁性担体と処理促進用磁性体粒子とを分離することができるので、処理促進用磁性担体粒子を、再生して繰り返して利用することができることになる。
第4の発明、第12の発明または第18の発明によれば、粒径にほとんど差がないような処理促進用磁性体粒子および磁性担体を用いたとしても、処理促進用磁性体粒子は大きな磁束が通るので、磁性担体と同一の磁場を受けたとしても、磁場により大きな磁力を発生しかつ磁力を受けるので、所定捕獲領域に処理を迅速かつ効率的に行うことができることになる。なお、磁化率が大きければ、強磁性体のみならず、超常磁性体等であっても良いことになる。また、磁束の相違に基づき、前記磁性担体と処理促進用磁性体粒子とを分離することができるので、処理促進用磁性担体粒子を、再生して繰り返して利用することができることになる。
第5の発明によれば、処理促進用磁性体粒子として、強磁性体を用い、磁性担体としては、磁化率は強磁性体に比較して小さいが、残留磁化が0または小さい超常磁性体または常磁性体を用いることで迅速で効率の高い処理を行うことができる。
第6の発明によれば、処理促進用磁性体粒子が所定の化学物質または生体と結合可能とすることによって、磁性担体と一致する標的または異なる標的を追加してまたは並行して処理することができることになる。その際、磁性担体と処理促進用磁性担体粒子とは、粒径の相違に基づくフィルタ、または磁化の相違に基づいて分離することができる。したがって、複数処理を並行して行なうことができるとともに、処理の効率化を図り、処理費用の削減を図ることができる。
第7の発明、第8の発明、第15の発明、または第16の発明によれば、磁性担体と処理促進用磁性体粒子とを予め容器内またはチップ内に収容または封入して用いることによって、自動化に適するとともに、人手によって触れることなくクロスコンタミネーションを確実に防止することができる。
第9の発明または第15の発明によれば、分注機と組み合わせることによって、吸引吐出を繰り返して、磁性担体の遭遇性および反応性をより高めて自動化に適した迅速性のある処理を行うことができる。
第10の発明によれば、処理促進用磁性体粒子と磁性担体は、液中で移動可能に設けられているので、液に付いて攪拌または振盪をすることで、前記処理促進用磁性体粒子を再分散または再懸濁することによって、磁性担体を容易に再懸濁することができることになる。
第13の発明または第19の発明によれば、チップまたは液収容部を貫くように磁力線束を形成することで、磁性担体、処理促進用磁性体粒子またはこれらの混合物をチップまたは容器を上下に仕切るようにフィルタ状の粒子層を形成するように展開させ、例えば、チップを用いて液体の吸引吐出を該粒子層を通過するように上下方向に行ないまたは繰り返すことで磁性担体等と化学物質または生体の標的との遭遇性を高め、反応処理を促進することができる。
第14の発明、第20の発明または第21の発明によれば、磁性担体または処理促進用磁性体粒子を含有する液に磁場を及ぼす磁石の磁極を、変向用磁場を用いて変向させることで、前記チップまたは液収容部内に収容された前記磁性担体または処理促進用磁性体粒子に変動を与えて攪拌、または振盪させることで、さらに一層前記標的と前記磁性担体等との遭遇性を高めて反応処理を促進することができる。したがって、複雑な機構を設けて装置規模を拡大することなく、変向用磁場を磁石に及ぼすことで実現することができる。
図1および図2は、第1の実施の形態に係る磁性試薬および磁性試薬キットを収容したカートリッジ容器14を装填して磁性試薬を処理に利用するための第2の実施の形態に係る磁性担体処理装置10を示す斜視図と側面図である。
該磁性担体処理装置10は、例えば、長さ250mmから400mm(X軸方向)、幅70mmから100mm(Y軸方向)、高さ300mmから500mm(Z軸方向)程度のブック状の筐体12に囲まれている。図1では、装置内部の説明の必要上、手前の側板が取り外されている。該筐体12には、磁性担体2および処理促進用磁性体粒子3からなる磁性試薬1を懸濁した懸濁液が少なくとも1の液収容部に収容され、その他、磁性担体の処理に必要な試薬溶液等が収容されまたは収容可能な複数(この例では10個)の液収容部22等が一列状に配列されて該筐体12内に着脱可能に設けられた磁性試薬カートリッジ容器14と、該カートリッジ容器14に収容された磁性担体を用いて所定の処理を行うための自動処理部(15,19)と、前記磁性試薬カートリッジ容器14が装填され該磁性試薬カートリッジ容器14とともに手動によって、前記筐体12から該筐体12外に引き出し可能に設けられ前記筐体12の1側面に穿設された長方形状の孔に嵌挿される嵌挿板16と連結し前記磁性試薬カートリッジ容器14を着脱可能に装填する装填箱18とを有する。
前記自動処理部(15,19)は、分注機のノズルヘッド15と、前記筐体12内に収納された前記磁性試薬カートリッジ容器14に対して前記ノズルヘッド15を移動可能とする移動機構19とを有する。
前記分注機の前記ノズルヘッド15は、前記移動機構19により、筐体12内に収納された前記磁性試薬カートリッジ容器14に対してその長手方向に相当するX軸方向にのみ移動可能なX軸移動体11と、該X軸移動体11に対して上下方向にガイド柱34に案内されて移動可能に設けられた円筒状のZ軸移動体35とを有する。前記X軸移動体11には、前記Z軸移動体35に連結したナット部が螺合し、該Z軸移動体35を上下方向に移動させるZ軸移動用ボール螺子(図示せず)が回転可能に取り付けられるとともに、前記ガイド柱34および該ガイド柱34を介して取り付けられた支持プレート39が取り付けられている。
該ノズルヘッド15は、前記X軸移動体11に取り付けられ気体の吸引吐出を行なうシリンダと連通するステンレス管33と、該ステンレス管33の先端が差し込まれるように接続されたゴム管32と、前記Z軸移動体35に取り付けられ該ゴム管32と接続するエアパイプ27が側面から突出するように設けられ前記ゴム管32等を介して前記シリンダと連通するノズル17と、該ノズル17に着脱可能に装着された分注チップ26と、前記シリンダ内のピストンを駆動するために前記X軸移動体11に取り付けられたモータ30とを有する。したがって、前記Z軸移動体35に連動して前記分注チップ26の先端の口部26aが上下すると、前記ゴム管32は曲げられたり伸ばされたりすることになる。
また、前記X軸移動体11に取り付けられた前記支持プレート39は、前記ガイド柱34を支持し、かつ前記ボール螺子を回転可能に支持するとともに、その下側で、前記分注チップ26等のチップを前記ノズル17から脱着させるために該ノズル17の径よりも大きく前記チップ26の最も太い部分の外径よりも細いU字状の切欠き部が形成されたチップ脱着板を前後方向に移動可能に支持し、その支持プレート39の上側では、該チップ脱着板を前後方向に駆動するモータ48が該支持プレート39、したがって前記X軸移動体11に取り付けられている。前記チップ脱着板は、前記支持プレート39に取り付けられたチップ脱着板支持部材47に前後方向に移動可能に支持され、該チップ脱着板支持部材47の外側面には、前記筐体12の内壁面にX軸方向に沿って設けられたガイドレール31に接して案内されるガイドローラ43が回転可能に設けられている。
さらに、前記チップ脱着板支持部材47の下側には、該チップ脱着板支持部材47と連動して前後方向に動く磁石46が、磁石支持板36に支持され、該磁石46が前記ノズル17に装着された前記分注チップ26の細径管26bまたは太径管26cに対し接近しまたは離間することによって該細径管または太径管内に磁場を及ぼしかつ除去することが可能な磁力手段60を有する。
該分注機のノズルヘッド15を前記筐体12内に収納された前記磁性試薬カートリッジ容器14に対して移動させる移動機構19は、前記ノズルヘッド15の前記X軸移動体11と係わり合って前記磁性試薬カートリッジ容器14の長手方向、すなわちX軸方向に沿って案内するレール31と、該ノズルヘッド15のX軸移動体11をX軸方向に沿って移動させるX軸移動用モータ30と、該X軸移動用モータ30の回転を前記X軸移動体に伝える歯車およびベルト51と、前記Z軸移動体35を上下方向すなわちZ軸方向に沿って案内する前記ガイド柱34と、前記Z軸移動用ボール螺子と、Z軸移動用モータ52とを有する。なお、前記シリンダ、モータ49は吸引吐出機構に相当する。また、前記ガイド柱34、前記Z軸移動用ボール螺子、および前記Z軸移動用モータ52は移動機構19の内のZ軸移動機構に相当する。
前記磁性試薬カートリッジ容器14が装填される前記装填箱18は、その装填箱18の長手方向、すなわちX軸方向に沿って延びるガイド部材が前記筐体12内にX軸方向に沿って敷設されたガイドレール31に案内されて手動でX軸方向に移動可能に設けられ、これによって前記磁性試薬カートリッジ容器14を前記筐体12内に完全に収納することができる。
前記磁性試薬カートリッジ容器14を筐体12内に装填した際には、該カートリッジ容器14が装填された装填箱18を上方向に付勢するように弾性力を加え、該装填箱18が浮き上がらないように前記カートリッジ容器14の各収容部22、23等の開口部が露出するような孔が設けられた枠体13内に収納して該カートリッジ容器14が動かないように固定する。
該装填箱18の前記嵌挿板16が設けられた側の端部と逆側の端部には、該カートリッジ容器14が所定の位置に装填されたことを示す位置決め用の位置決め板44が設けられ、前記筐体12側に設けられたセンサ45が該位置決め板44を検知すると該カートリッジ容器14が所定位置に装填されたことを示す装填信号を出力し、該装填信号の出力があると、磁性担体の処理が開始可能状態にあると判断されることになる。
図2に示すように、前記磁性試薬カートリッジ容器14は、検体等のサンプルを収容する検体収容部38を着脱可能に保持するために基板14aに形成された保持用孔37と、該基板14aよりも上側に突出するように開口部が形成され、前記ノズル17の下降によって該ノズル17に装着可能となるように前記分注チップ26を収容するチップ収容部21と、該基板14aよりも上側に突出するように開口部が形成され、該カートリッジ容器14の液収容部22の開口部を覆うように前記基板14aに貼られたフィルム等の薄膜を穿孔するために前記ノズル17の下降によって該ノズル17に装着可能となるように先端が鋭利な先細り状に形成された穿孔用チップ50を収容する穿孔用チップ収容部20と、前記基板14aに開口部が形成され前記磁性試薬1を含む種々の試薬が収容されまたは収容可能な液収容部22と、処理によって生成された溶液を収容する生成物収容部40を着脱可能に保持するために前記基板14aに形成された保持用孔28と、前記基板14aに開口部が形成され反応を促進するために温度制御を必要とする溶液を収容する反応容器23とが一列状に配列された容器である。なお、各液収容部22、前記検体収容部38、生成物収容部40の容量は、例えば、1000μlであり、数100μlの液を収容して用いる。
前記装填箱18には、温度制御を行うヒータを有する温度制御室41が設けられ、前記磁性試薬カートリッジ容器14を装填した際に、前記生成物収容部40および前記反応容器23が前記温度制御室41内に収容される。
例えば、検体に含有する細菌の核酸を分離するための磁性担体を用いた処理を行なう場合には、前記磁性試薬カートリッジ容器14の前記検体収容部38には、検体等から抽出した細菌が懸濁する溶液を、前記液収容部22の内、液収容部22aには、磁性試薬懸濁液を、液収容部22bには細菌の核を溶解する溶解バッファ液を、液収容部22cには前記溶解バッファ液のpHの調整を行うための中和バッファ液を、液収容部22dから22fには各種洗浄液を、液収容部22gには前記磁性担体から核酸等を乖離するための乖離液を収容し、液収容部22hから22jは空にしておき、前記生成物収容部40および反応容器23も空である。このような状態で、前記液収容部22の開口部および前記反応容器23の開口部を覆うように、フィルム状の薄膜が前記基板14a上に貼着される。
ここで、前記磁性試薬1は、磁場を受けて磁化可能であって、液中の所定の化学物質としての核酸と結合可能なように表面にOH基を持つ材料で被覆され、該液中に懸濁可能な粒径、例えば、ナノサイズ、数100nmをもつ超常磁性体で形成された複数の磁性担体2と、磁場を受けて磁化可能であって、同一の磁場に対して前記磁性担体よりも大きな磁束が通るように前記磁性担体よりも大きな粒径、例えば、数100マイクロメータであり、かつより磁化率の大きい素材の強磁性体である鉄で形成された複数の処理促進用磁性体粒子3を有する懸濁液である。
または、前記磁性試薬1の代わりに、前記磁性担体の懸濁液と、処理促進用磁性体粒子の懸濁液とを別の前記液収容部22、例えば、各々液収容部22aと、液収容部22bとに別々に収容した磁性試薬キットを収容する磁性試薬カートリッジ容器を用いても良い。この場合には、磁性担体の懸濁液と前記処理促進用磁性体粒子とを混合させて用いることになる。
図3には、前記磁性試薬1を懸濁した液を収容した第1の実施の形態に係る磁性試薬カートリッジ容器14を装填して用いる第2の実施の形態に係る前記磁性担体処理装置10の3つの例を示すものである。
図3(A)は第2の実施の形態に係る磁性担体処理装置10の第1の例を示すものであって、先端に口部26aをもつ細径管26b、細径管26bよりも大きな径をもち、前記ノズル17に装着可能な装着用開口部26dをもつ太径管26c、および前記細径管26bと前記太径管26cとを連結する移行部26eを有する分注チップ26と、該分注チップ26の前記細径管26bに対して接離可能に設けられた磁石46と、前記細径管26bの口部26aが挿入可能に設けられた前記カートリッジ容器14の反応容器23とを示すものである。なお、前記分注チップ26は、例えば細径管26bの内径は約1mmから3mm程度であり、太径管26cの内径は、約8mmから9mmであり、その長手方向の長さは約100mm程度である。該磁石46が接近する細径管26bの内壁部分が捕獲領域46aに相当する。図3(A)は、前記分注チップ26が反応容器23に収容した標的を含有する溶液に該標的を結合可能な磁性担体2を有する磁性試薬1を添加したものを、前記磁石46を接近させた状態で吸引および吐出を繰り返すことで、標的を結合したナノサイズの前記磁性担体2を、処理促進用磁性体粒子3によって強化された磁力を利用して前記細径管26bの内壁および該処理促進用磁性体粒子3に吸着させたものである。なお、前記磁石46の磁場の大きさは、例えば、1000から数1000ガウスである。
図3(B)は、第2の実施の形態に係る磁性担体処理装置10の第2の例を示すものであって、第1の例に係る前記磁性担体処理装置10の磁石46を分注チップ26に対して接離可能に設ける代わりに、前記カートリッジ容器14の下側に、該カートリッジ容器14の反応容器23の底に対して接離可能に磁石146を設けたものである。前記磁性試薬1を収容した反応容器23に、該磁性試薬1に含有する磁性担体2が結合可能な標的を含有する溶液を前記分注チップ26により分注したものを攪拌させた後、前記反応容器23の底に前記磁石146を接近させることで反応容器23内に磁場を及ぼして、前記標的と結合した磁性担体2を前記処理促進用磁性体粒子3を利用して、反応容器23の底に吸着沈殿させまたは該内底に吸着沈殿した処理促進用磁性体粒子3に吸着させて分離するものである。該内底が前記捕獲領域146aに相当する。
図3(C)は、第2の実施の形態例に係る磁性担体処理装置10の第3の例を示すものであって、第1の例に係る前記磁性担体処理装置10の磁石46に代えて、前記磁性試薬1を収容した前記カートリッジ容器14の反応容器23の側面に磁石246を接離可能に設けた例を示すものである。前記磁性試薬1を収容した反応容器23に磁石246を接近させることで反応容器23内に磁場を及ぼして、前記標的と結合した磁性担体2を前記処理促進用磁性体粒子3を利用して、該反応容器23の内側面に前記磁性試薬1を吸着させたものである。この場合には、該内側面が捕獲領域246aに相当する。なお、前記反応容器23の代わりに前記カートリッジ容器14の他の液収容部の側面または底面に対して、磁石を接離可能に設ける。
図4は、第1の磁性試薬1について、磁性担体2のみを懸濁させた液(A)と、磁性担体2及び処理促進用磁性体粒子3を懸濁させた液(B)とを、分注チップ26に吸引して、その太径管に磁石46を接近させて、太径管内に磁場を及ぼす場合および磁場を除去する場合の磁場に対する状態の変化を時系列(T1,T2,T3)で示す模式図である。
時刻T1では、懸濁液を分注チップ内26に吸引させた際に、磁石46を前記分注チップの太径管26cに接近させた場合の磁性担体2が直接的に吸着可能な領域である捕獲領域46bを示すものであり、M1およびM2は該捕獲領域46bに基づく有効磁場到達範囲(面積)を表す。(A)側は、磁性担体2のみを懸濁させた液を分注チップ26内に吸引した場合を示し、まだ、磁性担体2は前記捕獲領域46bには吸着していない。前記有効磁場到達範囲M1は、前記捕獲領域46bそのものであることを示している。一方、(B)側は、磁性担体2および処理促進用磁性体粒子3を懸濁した液を吸引した場合を示し、磁性担体2よりも強い磁力を受けかつ発生させる処理促進用磁性体粒子3が前記捕獲領域46bに直接的に吸着しまたは他の処理促進用磁性体粒子3を介して間接的に吸着して磁力線に沿うように処理促進用磁性体粒子3が鎖状に連結している状態を示している。これによって磁性担体2が直接的に吸着可能な前記捕獲領域46bが、処理促進用磁性体粒子3の表面積を含む有効磁場到達範囲(面積)M2にまで拡大されたことを示す。したがって、M2はM1よりも格段に大きいことが示されている。
時刻T2の段階では、磁石46が接近したまま、各分注チップ26内で吸引吐出が複数回行なわれ吸引状態になっていることを示すものである。(A)側では、磁性担体2のみが懸濁した液であるため、前記有効磁場到達範囲M1内を通った一部の磁性担体2は前記捕獲領域46bに直接的または間接的に吸着しているが、捕獲領域46bの該有効磁場到達範囲M1は磁石46が接近した側の内壁近傍でしかないため、それより離れた大部分の場所にある磁性担体2は捕獲されずに懸濁状態にあることを示している。一方、(B)側では、磁性担体2および処理促進用磁性体粒子3を懸濁した液であるため、前記有効磁場到達範囲M2内を通った磁性担体2が前記捕獲領域46bに直接的または間接的に吸着し、捕獲領域46bに基づく該有効磁場到達範囲がM2にまで拡大されたため、磁石46が接近した側の内壁よりも離れた場所にある磁性担体2でも捕獲されている。
時刻T3の段階では、前記磁石46を前記分注チップ26の太径管から離間させるとともに分注チップ26内で吸引吐出が複数回行なわれ吸引状態になっていることを示すものである。(A)側では、捕獲された磁性担体2同士が密着しているため、吸引吐出を繰り返しても該磁性担体2は相変わらずペレット状に前記捕獲領域46bまたは有効磁場到達範囲M1に捕獲されたままであり、捕獲されなかった磁性担体2のみが懸濁した状態である。一方、(B)側では、太径管内の磁場を除去した後、吸引吐出を繰り返すと、前記処理促進用磁性体粒子3は、液の移動の影響を受けて磁性担体2よりも分散または懸濁され易く、磁性担体2同士は密着しておらず処理促進用磁性体粒子3に吸着しているので乖離または離脱しやすく磁性担体2は短時間で再懸濁されることになる。
続いて、図5は、前記磁性試薬1の処理促進用磁性体粒子3の存在によって、その周りの磁場(磁束密度)が強化されることをシミュレーションによって示す。
このシミュレーションでは、縦横1mmの2次元空間内に、大きさ縦1mm横0.32mmで磁束密度が1ガウスの磁石46を模した2次元の磁石モデル(46)を前記2次元空間の図上左側に設置し、磁石モデル(46)の右側の各升目4(縦横0.04mm)には水に対して1000倍の透磁率をもつ鉄粉が静止して置かれたものとする。各矢印5は、鉄粉が置かれた位置におけるシミュレーションで得られた磁束密度ベクトルを示すものである。
ここで、図5(A)には、粒径が0.32mmの2個の処理促進用磁性体粒子3を模した2次元の粒子モデル(3)が、磁石モデル(46)に対してその法線方向に沿って鎖状に連結して磁石モデル(46)に吸着した場合の、該粒子モデル(3)内および前記各鉄粉に及ぼされる磁束密度ベクトルを示すものであり、図5(B)には、該粒子モデル(3)が存在しない場合の各鉄粉に及ぼされる磁束密度ベクトルを示すものである。この2つの図を比較すると、処理促進用磁性体粒子3の存在によって、それがない場合に比較して、磁石46よりも十分に離れた位置でも、その磁場(磁束密度)が強化されていることがわかる。
図6および図7は、磁性担体の回収率が、処理促進用磁性体粒子の存在によって向上することを示す実験結果を示すグラフ等である。
本実験は、磁性担体としては、酸化鉄で形成された核酸捕獲用のナノサイズの磁性担体を含有する懸濁液を用いるが、それらが懸濁液中に凝集している可能性があるものである。そこで、分散処理前の磁性担体を用いた場合と、それらを分散処理した後の磁性担体を用いた場合とを各々測定する。ここで、分散処理は遠心分離によって行う。
使用する磁性試薬に含有する処理促進用磁性体粒子としては、次の4種類の処理促進用磁性体粒子のいずれかを用いる。すなわち、第1の処理促進用磁性体粒子としては、製品名が「スチールショット」、コード名が「TSH30」(IKKショット株式会社製)で、粒径は、425-125μmであり、成分は鉄中に、炭素0.8〜1.2%、ケイ素が0.4%以上、マンガンが0.35〜1.0%未満、リンが0.05%以下、硫黄が0.05%以下含まれるものである。第2の処理促進用磁性体粒子としては、製品名が「スチールショット」、コード名が「TSH60」(IKKショット株式会社製)で、第1の処理促進用磁性体粒子とは粒径が異なり、850-355μmである。第3の処理促進用磁性体粒子としては、製品名が「スチールビーズ」、コード名が「SB50」(株式会社不二製作所製)で、粒径が425‐125μmであり、成分は、鉄中に、炭素0.9〜1.1%、ケイ素が1.3%以上、マンガンが1.0%以下、リンが0.05%以下、硫黄が0.05%以下含まれるものである。第4の処理促進用磁性体粒子としては、製品名が「PSSビーズ」(PSS株式会社製)で、粒径0.5μmから2μmで、粒径190nmのFe3O4表面にOH基を持つ材料で被覆した核酸精製粒子であって形状は不定形である。
そこで、10個の前記磁性試薬カートリッジ容器14を用意し、第1の磁性試薬カートリッジ容器14の前記液収容部22aには、分散処理前の磁性担体懸濁液および前記第1の処理促進用磁性体粒子20個を懸濁または分散する第1の磁性試薬を500μl収容し、液収容部22bには洗浄液(例えば、蒸留水)500μlを収容する。同様にして、第2の磁性試薬カートリッジ容器14の液収容部22aには分散処理前の前記磁性担体懸濁液および前記第1の処理促進用磁性体粒子50個を懸濁する第2の磁性試薬を収容し、液収容部22bには同様に洗浄液500μlを収容し、第3の磁性試薬カートリッジ容器14の液収容部22aには、分散処理前の前記磁性担体懸濁液および前記第3の処理促進用磁性体粒子20個を懸濁する第3の磁性試薬を500μl収容し、液収容部22bについては同様に洗浄液を収容する。第4の磁性試薬カートリッジ容器14に対の液収容部22aには、分散処理前の前記磁性担体懸濁液および前記第3の処理促進用磁性体粒子50個を懸濁する第4の磁性試薬を500μl収容し、液収容部22bには洗浄液を同様に収容する。
第5の磁性試薬カートリッジ容器14の前記液収容部22aには、分散処理前の前記磁性担体のみを500μl収容し、液収容部22bには洗浄液を同様に収容する。第6の磁性試薬カートリッジ容器14の液収容部には、分散処理前の前記磁性担体懸濁液、前記第3の処理促進用磁性体粒子20個、および第2の処理促進用磁性体粒子1個を含有する第5の磁性試薬500μlを収容し、液収容部22bには洗浄液を同様に収容する。第7の磁性試薬カートリッジ容器14の液収容部22aには、分散処理前の前記磁性担体および第4の処理促進用磁性体粒子を30μl懸濁する第6の磁性試薬を500μl収容し、液収容部22bには、洗浄液を同様に収容する。
第8の磁性試薬カートリッジ容器14の液収容部22aには、分散処理後の前記磁性担体懸濁液を500μl収容し、液収容部22bには、洗浄液を同様に収容する。第9の磁性試薬カートリッジ容器14の液収容部22aには、分散処理後の前記磁性担体、第3の処理促進用磁性体粒子20個、および第2の処理促進用磁性体粒子1個の懸濁液からなる第7の磁性試薬を500μl収容し、液収容部22bには、洗浄液を同様に収容する。第10の磁性試薬カートリッジ容器14の液収容部22aには、分散処理後の前記磁性担体懸濁液および第4の処理促進用磁性体粒子30μlからなる第8の磁性試薬を500μl収容し、液収容部22bには、洗浄液を同様に収容する。
すると、第1の磁性試薬カートリッジ容器14を前記磁性担体処理装置10に装填し、分注チップ26を用いて、前記液収容部22aに該分注チップ26の先端を挿入させ、該懸濁液を吸引する際に、前記磁石46を前記細径管26bに接近させて該細径管26b内に磁場を及ぼすことによって、前記第1の磁性試薬の磁性担体および第1の処理促進用磁性体粒子を該分注チップ26の細径管26bの内壁に吸着させ、吸着させたまま、該分注チップ26をZ軸方向に上昇させて該液収容部22aから該分注チップ26を抜出し、前記ノズルヘッド15を前記カートリッジ容器14に沿って移動させることで、該分注チップ26を液収容部22bの位置にまで移動させて、該分注チップ26の先端を該液収容部22b内に挿入させ、前記磁石46を前記細径管26bに接近した状態で前記洗浄液の吸引吐出を繰り返すことで、前記磁性担体および第1の処理促進用磁性体粒子を洗浄した後、前記磁石46を前記細径管26bから離間させて該細径管26b内の磁場を除去し吸引吐出を繰り返すことで液中に懸濁させる。
そこで、液収容部22aの残液を吸光度計480nmで測定することによって、磁性担体の回収率を算出する。
すると、その結果は、図6の棒・折れ線グラフの(1)に示すように、分散処理前で凝集しているかもしれない磁性担体の回収率は約86.3%程度であり、第1の処理促進用磁性体粒子の回収個数は、10個程度であることがわかった。
同様にして、第1の処理促進用磁性体粒子の個数を50個に増加させた第2の磁性試薬カートリッジ容器14については、図6の棒・折れ線グラフの(2)に示すように、磁性担体の回収率が増加して、89.0%程度を示し、第1の処理促進用磁性体粒子の回収個数は50個程度であることがわかった。
同様にして、第3の磁性試薬カートリッジ容器14を用いた場合については、図6の棒・折れ線グラフの(3)、第4の磁性試薬カートリッジ容器14を用いた場合には、図6の棒・折れ線グラフの(4)に示す通りであり、処理促進用磁性体粒子の個数の増加が磁性担体の回収率の向上につながることが示されている。
また、第5の磁性試薬カートリッジ容器14を用いた場合には、分散処理前の前記磁性担体であって、処理促進用磁性体粒子が存在しない場合には、図7(A)の棒グラフの(1)に示すように、その回収率は約82%程度であり、第6の磁性試薬カートリッジ容器14のように、分散処理前の前記磁性担体であって、処理促進用磁性体粒子が存在する場合には図7(A)の棒グラフの(2)に示すように、ない場合に比較して回収率が上昇している。同様に、第7の磁性試薬カートリッジ容器14を用いた場合については、図7(A)の棒グラフの(3)に示されている。その際、第5のカートリッジ容器14を前記ノズルの吸引吐出の液の流速を約4倍に増加させた場合(ステッピングモータのパルス数を62から262に増加)については、図7(A)の棒グラフの(4)に示され、回収率は処理促進用磁性体粒子がない場合の図7(A)(1)と比較して下がっていることを示している。これは、前記磁性担体の磁場に対する応答性が低いため、吸引吐出の流速を上げると回収率に影響を与えるためである。一方、第6のカートリッジ容器14を用いた、分散前の磁性担体であって、処理促進用磁性体粒子が存在する場合には、図7(A)の棒グラフの(5)に示すように、それがない場合の図7(A)(2)と比較し、たとえ流速が4倍になったとしても回収率はそれ程下がっていないことを示している。したがって、処理促進用磁性体粒子を用いた場合には、それがない場合には約20分かかっていた処理が、回収率をそれ程損なうことなく、約5分で行うことができることになり、処理速度を増加させることができることになる。
図7(B)の写真(1)は、分散処理前の前記磁性担体として用いた懸濁液を400倍の顕微鏡で観測したものであり、図7(B)の写真(2)は、分散処理前の前記懸濁液を2000Gの遠心分離を行なってその上澄み液を400倍の顕微鏡で観測したものである。該上澄み液には、大きい粒子は見られるが、その粒子数は減り、液の色がオレンジ色であることから、懸濁している磁性担体はナノサイズの粒径を持つことを示している。
図7(C)の棒グラフの(1)は、第8の磁性試薬カートリッジ容器14を用いた場合を示し、分散処理後の前記磁性担体の懸濁液を用いて、処理促進用磁性体粒子が存在しない場合を示し、その回収率は30%に満たないことを示している。図7(C)の棒グラフの(2)は、第9の磁性試薬カートリッジ容器14を用いた場合を示し、分散処理後の前記磁性担体を含有する第7の磁性試薬500μlを用いた場合には、その磁性担体の回収率は50%を越えることを示している。図7(C)の棒グラフの(3)は、第10の磁性試薬カートリッジ容器14を用いた場合を示し、分散処理後の前記磁性担体を含有する第8の磁性試薬500μlを用いた場合には、その磁性担体の回収率も、50%を越えていることを示している。
すなわち、通常、磁性担体を処理に使用する場合には分散処理が必要であることから、この処理促進用磁性体粒子を用いた場合には、用いない場合に比較して、この例では2倍以上の磁性担体の回収率を得ることができ、処理促進用磁性体粒子を投入することにより大幅に磁性担体の回収率を伸ばすことができることが示された。
図8は、第1の実施の形態に係る磁性試薬カートリッジ容器14および第2の実施の形態に係る前記装置10を用いて、磁性担体を捕獲する処理の流れ図を示す。
例えば、前記カートリッジ容器14の前記検体収容部38には、サンプルとして患者等から予め抽出した細菌7を含有するサンプル溶液を収容しておく。液収容部22aには、核酸捕獲用のシリカで被覆され、粒径がナノサイズで超常磁性体の磁性担体2、および粒径が例えば、数10μmで強磁性体で形成された処理促進用磁性体粒子3からなる磁性試薬の懸濁液を収容しておく。また、液収容部22bには、前記細菌を溶解する溶解バッファ液を収容し、液収容部22cには、中和バッファ液が収容され、液収容部22dから液収容部22iには、各種洗浄液が収容され、液収容部22jには、溶出液が収容されている。
ステップS1において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に移動させ、ノズル17を前記カートリッジ容器14のチップ収容部21に保持された分注チップ26の上方に位置させる。次に、前記Z軸移動体35を下降させることによって、前記分注チップ26の装着用開口部26d内に挿入させて嵌合させて装着して上昇させ、該分注チップ26の先端が前記カートリッジ容器14の基板14aの上方にまで位置させる。
次に、該ノズルヘッド15をX軸の正方向にさらに移動させて、前記検体収容部38の上方にまで移動し、Z軸移動体35を下降させることで、前記分注チップ26の先端を該検体収容部38内に挿入させて、前記細菌を含有するサンプル溶液の一部を吸引して、上昇させ、前記分注チップ26の先端を前記カートリッジ容器14の基板14a上に位置させる。次に、該ノズルヘッド15をX軸の負方向に沿って移動させて、反応容器23の上方に位置させる。Z軸移動体35を下降させることで、反応容器23内に前記サンプル液を吐出する。
ステップS2において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に沿って移動させ、前記液収容部22bの上方に位置させ、Z軸に沿って下降させて該分注チップ26の先端を該液収容部22b内に挿入して該液収容部22b内に収容されている溶解バッファ液を吸引する。
吸引後、該分注チップ26をZ軸方向に上昇させて、前記カートリッジ容器14の基板14a上に位置させた後、X軸の負方向に移動させて、前記反応容器23上に位置させる。該分注チップ26を下降させて、該分注チップ26の先端を前記反応容器23内に挿入し、該溶解バッファ液を該反応容器23内に吐出させる。そして、該分注チップ26によって、吸引吐出を繰り返すことで、該溶解バッファ液を前記サンプル液と攪拌させる。所定時間インキュベーションを行う。これによって懸濁している細菌及び細菌の核が破壊され、核酸が溶解バッファ液を含有する液中に溶け出す。
ステップS3において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に沿って移動させ、前記液収容部22cの上方に位置させた後、Z軸に沿って下降させて該分注チップ26の先端を該液収容部22c内に挿入し、前記中和バッファ液を吸引する。
吸引後、該分注チップ26をZ軸方向に上昇させて、前記カートリッジ容器14の基板14a上に位置させた後、X軸の負方向に移動させて、前記反応容器23上に位置させる。該分注チップ26を下降させて、該分注チップ26の先端を前記反応容器23内に挿入し、該中和バッファ液を該反応容器23内に吐出させる。そして、該分注チップ26によって、吸引吐出を繰り返すことで、該中和バッファ液を該反応容器23内に収容されている液と攪拌し前記溶解バッファ液と反応させて中和する。
ステップS4において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に移動させて前記液収容部22aの上方にまで位置させた後、Z軸に沿って下降させて該分注チップ26の先端を該液収容部22a内に挿入し、前記磁性試薬1としての磁性担体2及び処理促進用磁性体粒子3との懸濁液を吸引する。
次に、該分注チップ26をZ軸方向に上昇させ、前記カートリッジ容器14の基板14aの上方に位置させ、ノズルヘッド15をX軸の負方向に移動させて前記反応容器23の上方に位置させた後、Z軸方向に下降させて、前記磁性担体2および処理促進用磁性体粒子3の懸濁液を前記反応容器23内に吐出させる。該反応容器23内に収容された核酸8の溶液に磁性担体2及び処理促進用磁性体粒子3が懸濁または分散する懸濁液について、前記分注チップ26により吸引吐出を繰り返すことで攪拌させ、前記磁性担体2と核酸8とを遭遇させて該磁性担体2に核酸8を結合させる。
ステップS5において、前記磁石46を前記分注チップ26の細径管26bに接近させた状態で、前記懸濁液を吸引する際に細径管26b内に磁場を及ぼすことで、前記懸濁液中の前記核酸8と結合した磁性担体2および前記処理促進用磁性体粒子3を磁化する。すると、懸濁液中に分散または懸濁する前記処理促進用磁性体粒子3は前記磁性担体2よりも粒径が大きくかつ磁化率が高いので、その処理促進用磁性体粒子3の周囲に懸濁する前記磁性担体2を引き付けまたは吸着させながら、前記磁石46が接近している側の前記分注チップ26の内壁である捕獲領域46aに前記磁性担体2よりも強い磁力で引き付けられて直接的または間接的にそこに吸着する。その状態で吸引吐出を繰り返すことで前記懸濁液中の前記磁性担体2を効率よく内壁に捕獲することができることになる。
ステップS6において、前記分注チップ26の細径管(26b)に前記磁石46を接近させた状態で前記磁性担体2および前記処理促進用磁性体粒子3を該分注チップ26の細径管の内壁に捕獲した状態で、Z軸に沿って該分注チップ26を上昇させて該反応容器23から抜出して、前記カートリッジ容器14の上方に位置させる。該分注チップ26を内部に前記磁性担体2および前記処理促進用磁性体粒子3を捕獲したままX軸に沿ってその正方向に移動させて、液収容部22dの上方に位置させる。前記分注チップ26の細径管に前記磁石46を接近させた状態で、Z軸に沿って分注チップ26を下降させて前記液収容部22d内に該分注チップ26の先端を挿入させる。その後、該磁石46を離間させて、磁場を除去した状態で、該液収容部22d内に収容されている洗浄液の吸引吐出を行なうことで、磁性担体2および処理促進用磁性体粒子3を洗浄する。
必要な場合には、ステップS7において、さらに液収容部22eに移動してさらに洗浄を行なう。洗浄が終了した場合には、前記分注チップ26の細径管に前記磁石46を接近させた状態で、吸引吐出を繰り返すことで前記磁性担体2および処理促進用磁性体粒子3を捕獲する。該磁性担体2および該処理促進用磁性体粒子3を捕獲した状態のまま、前記磁石46を接近させたままZ軸に沿って上昇させて、前記カートリッジ容器14の基板14aの上方にまで位置させる。
ステップS8において、前記ノズルヘッド15をさらにX軸の負方向に移動させることで、液収容部22jにまで移動させて、前記磁石46を前記分注チップ26の細径管に接近させた状態で、Z軸方向に下降させてその先端を該液収容部22jに収容された溶出液に挿入させ、磁場を及ぼした状態で、吸引吐出を繰り返すことによって、前記磁性担体2に結合した核酸8を該磁性担体2から液中に溶出させる。
図9は、第3の実施の形態の2つの例に係る磁性試薬カートリッジ容器114、115に収容されるべき処理促進用磁性体粒子封入チップ56、57に対し磁石46を離間または接近させた場合を示す。
第3の実施の形態の第1の例に係る磁性試薬カートリッジ容器114では、前記カートリッジ容器14の液収容部22aに相当する部分は、前記磁性試薬1の懸濁液の代わりに磁性担体2のみが懸濁する懸濁液を収容し、前記チップ収容部21内には、分注チップ26の代わりに、処理促進用磁性体粒子6が液の移動または磁場によって移動可能に封入された処理促進用磁性体粒子封入チップ56を収容する。
第1の例に係る該処理促進用磁性体粒子封入チップ56は、先端に入出口56aを持つ細径管56b、細径管56bよりも大きな径をもち、前記ノズル17に装着可能な装着用開口部56dをもつ太径管56c、および前記細径管56bと前記太径管56cとを連結する移行部56eを有するとともに、前記太径管56cには、液を通過させるが処理促進用磁性体粒子3が通過できないフィルタ56f、気体を通過させるが液及び処理促進用磁性体粒子3は通過できない56gによって、複数(例えば、数10個)の前記処理促進用磁性体粒子6(例えば、粒径1mmの鉄粒)を前記液の移動および磁場によって移動可能であるように封入したものである。磁石46は太径管56cの2つのフィルタ56f、56gの間の処理促進用磁性体粒子6が封入されている部分に対して接近および離間可能に設けられている。
第3の実施の形態の第2の例に係る磁性試薬カートリッジ容器115では、前記カートリッジ容器14の液収容部22aに相当する部分には、前記磁性試薬1の懸濁液の代わりに磁性担体2のみが懸濁する懸濁液を収容し、前記チップ収容部21内には、分注チップ26の代わりに、処理促進用磁性体粒子6が液の移動または磁場によって移動可能に封入された処理促進用磁性体粒子封入チップ57を収容する。
第2の例に係る処理促進用磁性体粒子封入チップ57は、先端に口部57aをもつ細径管57b、細径管57bよりも大きな径をもち、前記ノズル17に装着可能な装着用開口部57dをもち前記細径管57bと別体に形成された太径管57c、および前記太径管57cと一体に形成され先細りに形成された移行部57eを有するとともに、該細径管57bには、複数個(この例では10個)の前記処理促進用磁性体粒子6が1列状に封入されている。複数個の該処理促進用磁性体粒子6は、液の移動および磁場によって列の順序を乱さずに該列方向に沿って移動可能となるように、前記処理促進用磁性体粒子6の複数個分よりも大きな間隔(好ましくは、前記処理促進用磁性体粒子6の密接した列長の2倍以上)を空けて前記細径管57bに設けた2つの止め部57fおよび止め部57gの間に封入されている。止め部57fおよび止め部57gは、図上、前後方向および左右方向のように90度捩れる方向に前記細径管57bをかしめて細径管57bの内方に向かって中央に隙間を残しながら陥没させたものである。これによって、両者とも液は通過可能であるが前記粒子6は通過不能である。磁石46は細径管57bの10個の前記処理促進用磁性体粒子6が封入された部分の中央あたりで接離可能となるように設けられている。
図10には、前記磁性試薬キットを収容した、磁性試薬カートリッジ容器114に収容されるべき第3の実施の形態の第2の例に係る処理促進用磁性体粒子封入チップ57を用いた場合について磁性担体2の回収率の実験例を示す。該処理促進用磁性体粒子封入チップ57には、粒径が1mmの12個の鉄粒子が液の移動または磁場によって移動可能となるように細径管57bに封入されている。前記磁性試薬カートリッジ容器114としては、液収容部22aには、分散処理後の前記磁性担体2の懸濁液を収容し、液収容部22bには蒸留水を100μl収容し、前記チップ収容部21には、前記処理促進用磁性体粒子封入チップ57が収容されている。
比較のため、第11の磁性試薬カートリッジ容器14として、液収容部22aには、分散処理後の前記磁性担体懸濁液を80μl収容し、液収容部22bには蒸留水を100μl収容し、前記チップ収容部21には、分注チップ26を収容する。
さらに、比較のために、第12の磁性試薬カートリッジ容器14として、液収容部22aには、分散処理後の前記磁性担体と、粒径0.5μmから2μmであって、表面にセルロースAcを有する磁性体Fe3O4(190nm)を8μlのPSSビーズとが懸濁した懸濁液80μlを収容しておき、液収容部22bには蒸留水100μlを収容しておく。
まず、第11の磁性試薬カートリッジ容器14を前記磁性担体処理装置10に装填し、分注チップ26を用いて、前記液収容部22aに前記分注チップ26の先端を挿入させ、該懸濁液を吸引する際に、前記磁石46を前記細径管26bに接近させて該細径管26b内に磁場を及ぼすことによって、前記磁性担体2を該分注チップ26の細径管26bの内壁に吸着させ、吸着させたまま、前記液収容部22bにまで移動して、前記洗浄液の吸引吐出によって洗浄後、前記磁石46を前記細径管26bから離間させて該細径管26b内の磁場を除去し吸引吐出を繰り返すことで、液中に懸濁させる。そこで、液収容部22aの残液を吸光度計480nmで測定することによって、磁性担体2の回収率を算出する。
その結果は、図10(1)に示すように、磁性担体の回収率は、約20%以下であることがわかった。
次に、前記磁性試薬カートリッジ容器114を前記磁性担体処理装置10に装填し、前記ノズルヘッド15を移動させて、該磁性試薬カートリッジ容器114の前記チップ収容部21から前記処理促進用磁性体粒子封入チップ57をノズルに装着した後、該封入チップ57を用いて、前記液収容部22aにその先端を挿入させ、前記磁石146を、前記細径管57bに接近させて該細径管57b内に磁場を及ぼすことによって、前記磁性担体2について吸引吐出を繰り返すことで、磁化された磁性担体2を該封入チップ57の細径管57b内の磁化された処理促進用磁性体粒子6に吸着させるとともに該内壁に吸着させることで捕獲する。該液収容部22aの残液を前記吸光度計480nmで測定することによって、磁性担体2の回収率を算出する。その結果は、図10(2)に示すように、50%を越えており、処理促進用磁性体粒子がない場合に比較して、回収率が3倍以上であることを示している。
比較のために、第12の磁性試薬カートリッジ容器14を前記磁性担体処理装置10に装填し、分注チップ26を用いて、該液収容部22aに収容した磁性担体2と前記処理促進用磁性体粒子としての8μlの懸濁液を、前記磁石46を前記細径管26bに接近させて、吸引吐出を繰り返すことによって該細径管26bの内壁に吸着させ、吸着させたままで前記分注チップ26を液収容部22bに移動して、洗浄液の吸引吐出によって洗浄する。そこで、液収容部22aの残液を吸光度計480nmで測定することによって、磁性担体2の回収率を算出する。
その結果は、図10(3)に示すように、磁性担体2の回収率は、約30%を越える程度であり、処理促進用磁性体粒子がない場合に比較して回収率が2倍以上であることを示している。
続いて、図11に基づいて、第3の実施の形態に係る磁性試薬カートリッジ容器114(または115)および第2の実施の形態に係る前記装置10を用いて、磁性担体を捕獲する処理の流れ図を示す。
前記カートリッジ容器114(または115)の前記検体収容部38には、サンプルとして患者等から予め抽出した細菌7を含有するサンプル溶液を収容しておく。液収容部22aには、核酸捕獲用のシリカで被覆され、粒径がナノサイズで超常磁性体の磁性担体2の懸濁液を収容しておく。また、液収容部22bには、前記細菌7を溶解する溶解バッファ液を収容し、液収容部22cには、中和バッファ液が収容され、液収容部22dから液収容部22iには、各種洗浄液が収容され、液収容部22jには、溶出液が収容されている。
ステップS11において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に移動させ、ノズル17を前記カートリッジ容器114(または115)に保持された前記処理促進用磁性体粒子封入チップ56(または57)の上方に位置させる。次に、前記Z軸移動体35を下降させることによって、前記封入チップ56(または57)の装着用開口部56d(または57d)内に挿入させて嵌合させて装着して上昇させ、該封入チップ56(または57)の先端が前記カートリッジ容器114(または115)の基板(14aに相当)の上方にまで位置させる。
次に、該ノズルヘッド15をX軸方向にさらに移動させて、前記検体収容部38の上方にまで移動し、Z軸移動体35を下降させることで、前記封入チップ56(または57)の先端を該検体収容部38内に挿入させて、前記細菌7を含有するサンプル溶液の一部を吸引して、上昇させ、前記封入チップ56(または57)の先端が前記カートリッジ容器114(または115)の基板上に位置させる。次に、該ノズルヘッド15をX軸の負方向に沿って移動させて、反応容器23の上方に位置させる。Z軸移動体35を下降させることで、反応容器23内に前記サンプル液を吐出する。
ステップS12において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に沿って移動させ、前記液収容部22bの上方に位置させ、Z軸に沿って下降させて該封入チップ56(または57)の先端を該液収容部22b内に挿入して該液収容部22b内に収容されている溶解バッファ液を吸引する。
吸引後、該封入チップ56(または57)をZ軸方向に上昇させて、前記カートリッジ容器114(または115)の基板上に位置させ、X軸の負方向に移動させて、前記反応容器23上に位置させる。該封入チップ56(または57)を下降させて、該封入チップ56(または57)の先端を前記反応容器23内に挿入し、該溶解バッファ液を該反応容器23内に吐出させる。そして、該封入チップ56(または57)によって、吸引吐出を繰り返すことで、該溶解バッファ液を前記サンプル液と攪拌させる。所定時間インキュベーションを行う。これによって懸濁している細菌7及び細菌7の核が破壊され、核酸8が溶解バッファ液を含有する液中に溶け出す。
ステップS13において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に沿って移動させ、前記液収容部22cの上方に位置させ、Z軸に沿って下降させて該封入チップ56(または57)の先端を該液収容部22c内に挿入し、前記中和バッファ液を吸引する。
吸引後、該封入チップ56(または57)をZ軸方向に上昇させて、前記カートリッジ容器114(または115)の基板上に位置させ、X軸の負方向に移動させて、前記反応容器23上に位置させる。該封入チップ56(または57)を下降させて、該封入チップ56(または57)の先端を前記反応容器23内に挿入し、該中和バッファ液を該反応容器23内に吐出させる。そして、該封入チップ56(または57)によって、吸引吐出を繰り返すことで、該中和バッファ液を該反応容器23内に収容されている液と攪拌し前記溶解バッファ液と反応させて中和する。
ステップS14において、前記ノズルヘッド15をX軸の正方向に移動させて前記液収容部22aの上方にまで位置させ、Z軸に沿って下降させて該封入チップ56(または57)の先端を該液収容部22a内に挿入し、前記磁性試薬の一部である磁性担体の懸濁液を吸引する。
次に、該封入チップ56(または57)をZ軸方向に上昇させ、前記カートリッジ容器114(または115)の基板の上方に位置させ、ノズルヘッド15をX軸の負方向に移動させて前記反応容器23の上方に位置させ、Z軸方向に下降させて、前記磁性担体2の懸濁液を前記反応容器23内に吐出させる。該反応容器23内に収容された核酸8の溶液に磁性担体2が懸濁する懸濁液について、前記封入チップ56(および57)により吸引吐出を繰り返すことで攪拌させ、前記磁性担体2と核酸8とを遭遇させて該磁性担体2に核酸8を結合させる。
ステップS15において、前記磁石46を前記封入チップ56(または57)の太径管56c(細径管57b)に接近させた状態で、前記懸濁液を吸引する際に細径管56b(または太径管57c)内に磁場を及ぼすことで、前記懸濁液中の前記核酸8と結合した磁性担体2および前記封入チップ56(または57)内に封入された前記処理促進用磁性体粒子6を磁化する。すると、懸濁液中に分散または懸濁する前記処理促進用磁性体粒子6は前記磁性担体2よりも粒径が大きくかつ磁化率が高いので、その処理促進用磁性体粒子6の周囲に懸濁する前記磁性担体2を引き付けまたは吸着させながら、前記磁石46が接近している前記封入チップ56(または57)の内壁に前記磁性担体2よりも強い磁力で引き付けられまたはそこに直接的または間接的に吸着する。その状態で吸引吐出を繰り返すことで前記懸濁液中の前記磁性担体2を効率よく内壁に捕獲することができることになる。
ステップS16において、前記封入チップ56(または57)の太径管56c(または細径管57b)に前記磁石46を接近させた状態で前記磁性担体2および前記処理促進用磁性体粒子6を該封入チップ56(または57)の太径管56c(または細径管57b)の内壁に捕獲した状態で、Z軸に沿って該封入チップ56(または57)を上昇させて該反応容器23から抜出して、前記カートリッジ容器114(または115)の上方に位置させる。該封入チップ56(または57)の内部にある前記磁性担体2および前記処理促進用磁性体粒子6を捕獲領域、ここでは封入チップ56(または57)の内壁に捕獲したままX軸に沿ってその正方向に移動させて、液収容部22dの上方に位置させる。前記封入チップ56(または57)の太径管56c(または細径管57b)に前記磁石46を接近させた状態で、Z軸に沿って封入チップ56(または57)を下降させて前記液収容部22d内に該封入チップ56(または57)の先端を挿入させる。その後、該磁石46を離間させて、磁場を除去した状態で、該液収容部22d内に収容されている洗浄液の吸引吐出を行なうことで、磁性担体2および封入されている処理促進用磁性体粒子6を洗浄する。
必要な場合には、ステップS17において、さらに液収容部22eに移動してさらに洗浄を行なう。洗浄が終了した場合には、前記封入チップ56(または57)の太径管56c(または細径管57b)に前記磁石46を接近させた状態で、吸引吐出を繰り返すことで前記磁性担体2および処理促進用磁性体粒子6を前記封入チップ56(または57)の内壁に捕獲する。前記磁石46を接近させて該磁性担体2および該処理促進用磁性体粒子6を捕獲した状態のまま、Z軸に沿って上昇させて、前記カートリッジ容器114(または115)の基板の上方にまで位置させる。
ステップS18において、前記ノズルヘッド15をさらにX軸の負方向に移動させることで、液収容部22jにまで移動させて、前記磁石46を前記封入チップ56(または57)の太径管56c(または細径管57b)に接近させた状態で、Z軸方向に下降させてその先端を該液収容部22jに収容された溶出液に挿入させ、磁場を及ぼした状態で、吸引吐出を繰り返すことによって、前記磁性担体2に結合した核酸8を該磁性担体2から液中に溶出させる。
次に、図12乃至図14に基づいて、第4の実施の形態に係る磁性担体処理装置310について説明する。なお、図12および図13では、装置内部の説明の必要上、筐体は取外されている。
該磁性担体処理装置310は、例えば、第1の実施の形態に係る磁性試薬および磁性持薬キットを収容した4行(X軸方向に延びる)および6列(Y軸方向に延びる)のマトリクス状に液収容部322を配列した24穴のマイクロプレート314を、ステージに装填して磁性試薬の処理に利用するものである。
該磁性担体処理装置310は、ステージを除いて、例えば、500〜600mm程度(X軸方向)、幅500〜600mm程度(Y軸方向)、高さ500〜600mm程度(Z軸方向)の大きさである。ステージ上には、前記マイクロプレートを、例えば12枚装填して用いる。または、例えば、96穴のマイクロプレートであれば、最大8枚程度用いる。
12枚の前記マイクロプレートの1の前記マイクロプレート314には、磁性担体2および処理促進用磁性体粒子3からなる磁性試薬1を懸濁した懸濁液が収容されている。残りのマイクロプレートにはその他の各種試薬等、例えば、溶解バッファ液、中和バッファ液、各種洗浄液、乖離液、24種類の検体から抽出した細菌等が収容され、または収容可能な状態になっている。
該磁性担体処理装置310は、分注機のノズルヘッド315と、前記ステージ上に装填された前記マイクロプレート314を含むステージの全範囲に対して前記ノズルヘッド315を移動可能とする移動機構319とを有する。
図12では、該ノズルへッド315には、ヘッド枠体315aが設けられ、その上側に吸引吐出用モータ349を有し、その下側には、該吸引吐出用モータ349によってピストンが内部に摺動可能に設けられたシリンダと連通するノズル317に着脱可能に装着された4行(X軸方向に延びる)および6列(Y軸方向に延びる)の24本の分注チップ26が設けられている。前記分注チップ26の先端26aは前記各液収容部322内に一斉に挿入可能に設けられている。
前記ノズルヘッド315は、行方向(X軸方向)に沿ってノズル317が配列されたノズル行に分注チップ26が装着されたチップ列および列方向(Y軸方向)に沿ってノズル317が配列されたノズル列に分注チップ26が装着されたチップ列が形成されている。
前記分注機の前記ノズルヘッド315は、前記移動機構319によりX軸方向およびY軸方向にのみ移動可能なXY軸移動体311に対してZ軸移動用ボール螺子334により駆動されて上下方向に移動可能に設けられたZ軸駆動板335と連結し、Z軸に沿って移動可能である。前記XY軸移動体311には、前記ボール螺子334を回転可能に支持するとともに回転駆動するモータ330cが設けられ、該XY軸移動体311の底板339の下側には、前記ノズル317に装着されたチップ26の細径管26bの内部に磁場を及ぼしかつ除去することが可能な磁力手段360が設けられている。また、前記ステージには、前記分注チップ26等のチップを前記ノズル317から脱着させるために前記ノズル317の径よりも大きく前記チップ26の最も太い部分の外径よりも細いU字状スリットが形成されたチップ脱着板が設けられている。
前記移動機構319は、前記XY軸移動体311を前記マイクロプレート314に対してX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構319xと、該XY軸移動体311を該マイクロプレート314に対してY軸方向に沿って移動させるY軸移動機構319yと、該XY軸移動体311に対して前記ノズルヘッド315をZ軸方向に沿って移動させるZ軸移動機構319zとを有する。
図12に示すように、該X軸移動機構319xは、該磁性担体処理装置310の本体に取付けられた機構支持板351dに支持されたX軸駆動用モータ330aと、該モータ330aによって回転駆動されるプーリ351bおよび前記機構支持板351dに軸支されたプーリ351cと、これらのプーリ351b、351cに掛け渡されたタイミングベルト351aと、該タイミングベルト351aと連結して、X軸方向に沿って移動可能なX軸駆動板351eと、該X軸駆動板351eを案内する2本のガイド用シャフト331とを有する。
また、前記Y軸移動機構319yは、前記X軸駆動板351aに支持されたY軸駆動用モータ330bと、該モータ330bによって回転駆動されるプーリ352bおよび前記X軸駆動板351eに軸支されたプーリ352cと、これらのプーリ352b、352cに掛け渡されたタイミングベルト352aと、前記X軸駆動板351eに設けられ該タイミングベルト352aと連結してY軸方向に沿って移動可能な前記XY軸移動体311と、該XY軸移動体311をY軸方向に沿って案内するガイドレール352dとを有する。
なお、前記モータ330c、前記Z軸駆動板335、ボール螺子334は、前記Z軸移動機構319zに相当する。
図12および図13に示すように、磁力手段360は、前記チップ26に対して前記行方向(X軸方向)に沿って移動可能に設けられ前記ノズル317に装着された24本のチップ26の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように各チップ26に対応して両側から挟むように配列した24個の円柱状の磁石346が、略定位置で変向可能に支持配列した磁石配列部材361と、変向用磁場を及ぼすことによって前記磁石346の磁極を変向することが可能な磁極変向器としての6個の電磁石344と、前記底板339と連結し、前記ノズル317に装着したチップ26の細径管26bの高さ位置で各チップ26に隣接するように行方向、すなわちX軸方向に沿って、前記電磁石344を1列状に6個配列した電磁石支持板343と、該電磁石支持板343に間接的に支持され前記磁石配列部材361を移動可能とする磁石移動機構とを有する。
該磁石移動機構は、前記電磁石支持板343に設けられたモータ(図示せず)により回転駆動されるプーリ342および該支持板343に軸支されたプーリ342と、これらのプーリ341,342に掛け渡されたタイミングベルト340と、該タイミングベルト340と前記磁石配列部材361を連結する連結部347と、該連結部347を案内するガイドレール348とを有する。なお、符号361eは、前記磁石配列部材361から磁石346が抜け落ちることを防止するための被覆板である。
図14は、図13に示した前記第4の実施の形態に係る磁石配列部材361および前記電磁石344を拡大して示したものである。
該磁石配列部材361は、少なくとも3本が前記チップ行間に挿入可能な幅を有し、挿入した際に24本の全ノズルに装着されたチップ26に隣接する行方向に延びる長さを有する5本の櫛歯部材361aと、該櫛歯部材361aと一体的に形成された基部361dとを有する。前記各櫛歯部材361aには、前記各ノズルに装着されたチップ26に接近させた際に、各チップ26に対応する位置に列間隔で配列された6個の円柱状の磁石346が設けられ、隣接する2本の櫛歯部材361aの各間に形成された隙間361bに挿入された各チップ26に対して1組の対応する2個の磁石が両側から異なる磁極が向き合うように挟む。
すなわち、該磁石配列部材361は、各チップ26に重複を許して2個1組で対応する全24個の円柱状磁石346と、略定位置で変向可能に該磁石346を支持配列する略円筒状の有底の穴361cとを有している。該穴361cの前記各チップ26に最も接近する側壁は磁石346が外れない程度に取り除かれて該磁石346がよりチップ26に接近することを可能にしている。なお、該穴361cは、収容された磁石346がその回転対称軸線について円滑に回転可能となる程度の半径をもつ。
各チップ26に接近した際には、該各チップ26に対して1組の2個の磁石346の異なる磁極が前記各チップ26を両側から挟んで向き合って配列されるように前記電磁石344により変向用磁場を及ぼして磁極を変向させまたは磁極を反転させる。なお該磁石346は、円柱(回転体)状に形成されているので、その回転対称軸線に関し回転して略定位置で磁極の変向や反転が行われる。
前記電磁石344の各磁石の変向用磁場を及ぼすことで、6個の各電磁石344に最も近い櫛歯部材361aに配列された前記各磁石346をまず反転または変向させる。すると、各磁石346の反転または変向により、順次連鎖的に各櫛歯部材361aの磁石346を反転または変向させることができることになる。これによって、前記各チップ26内に磁場の変動を与えることによって該チップ26内に収容されている前記磁性担体または処理促進用磁性体粒子に変動を与えて攪拌を行なうことができる。
図15は、第5の実施の形態に係る磁石配列部材362および前記電磁石344を示すものである。該磁石配列部材362は、図13に示した装置310において、第4の実施の形態に係る磁石配列部材361と置き換えて用いるものである。該磁石配列部材362は、磁石配列部材361と異なり、円柱状磁石346に代えて球状磁石446を用いるものである。該球状磁石446は、磁極を変向可能に収容する24個の略円筒状の穴362cに収容されている。各チップ26に接近した際には、該チップ26に対して1組の2個の磁石446の異なる磁極が該各チップ26を両側から挟んで向き合うように配列されるように前記電磁石344により磁極の変向用磁場を及ぼして磁極を変向させまたは反転させる。なお、該磁石446は、球状に形成されているので、略定位置で磁極の変向や反転が行われる。なお、球状磁石446は、該穴362cと接する面積が前記円柱状磁石346に比較して小さいので変向や反転がより円滑に行なわれる。なお、その他、ほぼ前記磁石配列部材361で説明した通りである。
図16は、第6の実施の形態に係る磁石配列部材363および前記電磁石344を示すものである。該磁石配列部材363は、2行(X軸方向に延びる)および6列(Y軸方向に延びる)からなる12個のノズル317を有するノズルヘッド(図示せず)に装着された12本のチップ26の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように各チップ26に重複を許して6個1組で対応する全54個の球状磁石446と、略定位置で変向可能に該球状磁石446を収容する3つの略円筒状の穴が、Y軸方向に沿って連結した連結穴363cが、X軸方向(行方向)に沿って設けられている。該各チップ26に対し1組6個の磁石446は3個ずつの磁石からなる2群の磁石群からなり、各磁石群は所定間隔を空けて1列状(列方向=Y軸方向に沿って)に配列された3個の磁石446からなる。
各チップ26に接近した際には、該各チップ26に対して1組の2群の磁石群に属する磁石446が該チップ26を両側から挟むようにしてY軸方向に沿って一列状に配列されている。2つの磁石群の2つの先端の磁石446(F)が前記チップ26の両側から挟むように該磁石配列部材363を移動させた際に、前記磁極変向器である前記電磁石344は、各群の後端の磁石446(B)の磁極を変向用磁場を及ぼして変向または反転させることによって先端の磁石446(F)の磁極を連鎖的に変向または反転させて前記チップ26内に及ぼす磁場を変動させる。
該磁石配列部材363は、行方向(X軸方向)に沿って移動可能に設けられ、1本が前記ノズル行間に挿入可能な幅を有し、挿入した際に12本の全ノズルに装着されたチップ26に隣接する行方向に延びる長さを有する3本の櫛歯部材363aと、該櫛歯部材363aと一体的に形成された基部363dとを有する。該各櫛歯部材363aには、前記ノズルに装着したチップ26に接近した際に、各チップ26に対応する位置に列間隔で配列された6個の連結穴363cがX軸方向に沿って設けられている。隣接する2本の櫛歯部材363aの各間に形成された隙間363bに挿入された各チップ26に対して両側から先端の磁石446の異なる磁極が向き合うように挟む1組の2群の磁石群が設けられている。
図17は、第7の実施の形態に係る磁石配列部材364を示すものである。該磁石配列部材364は、前記ノズル317に装着された24本のチップ26の内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように各チップ26に重複を許して2個1組で対応する全24個のブロック状磁石546と、定位置で磁極が変向不能となるように該磁石546を嵌合して取り付ける24個の有底のスリット状の穴364cとを有する。
該磁石配列部材364が各チップ26に接近した際には、該各チップ26に対して1組の2個の磁石546の異なる磁極が前記各チップ26を両側から挟んで向き合うように配列されている。
図17に示すように、該磁石配列部材364は、前記行方向(X軸方向)に沿って移動可能に設けられている。該磁石配列部材364は、少なくとも3本が前記ノズル行間に挿入可能な幅を有し、挿入した際に24本の全ノズルに装着されたチップ26に隣接する行方向に延びる長さを有する5本の櫛歯部材364aと、5本の該櫛歯部材364aと一体的に形成された基部364dとを有する。前記各櫛歯部材364aには、前記各チップに接近した際に、各チップ26に対応する位置に列間隔で配列された6個のブロック状磁石546が設けられ、隣接する2本の櫛歯部材364aの各間に形成された隙間364bに挿入された各チップ26に対して両側から異なる磁極が向き合うように挟む1組の対応する2個の磁石546が設けられている。
図18(a)および図18(c)は、ノズル317に装着したチップ26の細径管26bまたは容器23に対し片側から磁石346を接近させた場合、例えば、磁性担体2または処理促進用磁性体粒子3のチップ26の細径管26bまたは容器23内の状態を示すものである。この場合には、磁性担体2等が磁石246、346側の内壁の捕獲領域346a,246aのみに吸着されている状態が示されている。
図18(b)および図18(d)は両側から2つの磁石346を異なる磁極が向き合うようにして接近させた場合に、磁性担体2または処理促進用磁性体粒子3のチップ26の細径管26bまたは容器23内の状態を示すものである。この場合には、磁性担体等が前記細径管26bまたは容器23を仕切るようにフィルタ状の粒子層346L,246Lが形成された状態が示されている。
図19(a)は前記チップ26に接近したブロック状磁石546の磁極が固定されていて変向されないことを示し、図19(b)は球状磁石446が、磁極が磁極変向器としての電磁石344の変向用磁場によって各定位置で順次180度回転して反転(変向)する動作を、図19(c)は、円筒状磁石336が、前記変向用磁場によって各定位置で回転対称軸に関して順次180度回転して反転(変向)する動作を各々模式的に示すものである。
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解させる為に具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、磁性担体のサイズは、ナノサイズに限られず、マイクロサイズの場合もありうる。また処理促進用磁性体粒子のサイズについても、ナノサイズの場合もありうる。その他、以上の説明で用いた数値、回数、形状、個数、量等についてもこれらの場合に限定されるものではない。また、前記処理促進用磁性体粒子が封入される流管は、チップの他カラムや流管の一部であって着脱可能に設けられたものであっても良い。また、前記磁性試薬またはそのキットは、カートリッジ容器の他に、マイクロプレートに封入するようにしても良い。
なお、以上の例では、磁性担体および処理促進用磁性体粒子を、容器やチップの内壁を捕獲領域として直接的または間接的に吸着させる場合について説明したのであるが、これらの場合に限られることなく、該容器またはチップ内に挿入される磁石が内蔵された部材の表面に直接的または間接的に吸着することで、捕獲するようにしても良い。この場合には、該部材の表面が捕獲領域ということになる。
前記磁力手段の前記磁石配列部材はマトリクス状に配列されたチップに磁場を及ぼす場合について説明したが、マトリクス状に配列された液収容部に磁場を及ぼすようにしても良い。また、1列状または1行状に配列されたチップもしくは液収容部、または1個のチップや液収容部に磁場を及ぼすようにしても良い。なお、「列」、「行」、「X軸」、「Y軸」、「Z軸」等の空間的関係は、図面等の例示に固定されたものではない。さらに、以上の説明で用いた、磁性担体処理装置または磁性担体処理方法について用いた種々の物質、種々の部品または種々の工程、例えば、磁性担体、処理促進用磁性体粒子、もしくは各種試薬等、容器、液収容部、ノズルヘッド、チップ、移動機構、磁力手段、チップ脱着機構、磁石、磁石配列部材、櫛歯部材、もしくはモータ等、接触工程、捕獲工程、分離工程、粒子層形成工程、混合工程、もしくは変動工程等については、必要な変更を加えて、相互に組み合わせることができる。