JP4651894B2 - 磁性粒子を利用した混合/分離装置及び方法 - Google Patents

磁性粒子を利用した混合/分離装置及び方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、対象物質を非磁性液体試験媒体(試験媒液)から単離(isolate)させる目的に利用する、磁性粒子(magnetic particle)を混合(mixing)及び分離(separation)させる装置と方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
磁性粒子及び親生体または親和生体反応(biospecific affinity reaction)を利用する生体分子(biomolecule)及び生体細胞の磁気分離(magnetic separation)は、その選択性、単純性並びに迅速性の観点から優れた技術である。その分離技術は分析/製造生物工学(analytical and preparative biotechnology)において非常に有用であり、細胞、プロテイン、核酸シークエンス(sequence)等の標的物質(target substance)の生体分析(bioassay)や単離の目的での利用が増大している。
【0003】
本明細書にて使用される用語“レセプター(receptor)”とは、与えられたリガンド(ligand)に対して親和生体結合性(biospecific binding affinity)を有したいかなる物質または物質群のことであり、他の物質を実質的に排除している。このような親和生体結合反応をするレセプターには、抗体(単分枝系(monoclonal)と多分枝系(polyclonal)の両方)、抗体断片(antibody fragment)、酵素、核酸、レクチン等がある。用語“リガンド”とは抗原(antigen)、ハプテン(hapten)並びに少なくとも1つの特徴的な決定子(determinant)あるいはエピトープ(epiotope)を有した細胞関与構造体(cell associated structure)のことであり、それら物質はレセプターによって生体的に認知され、結合できるものである。用語“標的物質”とは親和生体結合ペア、すなわち、対となった物質、または親和相互反応性を有した1物質と1構造体のいずれか一方であって、生体細胞あるいは細胞成分、生体特異リガンド(biospecific ligand)及びレセプターのごときを含んだものである。
【0004】
ここで使用する親和分離性とは媒液内で他の物質と混合された標的物質が親和生体結合反応によって固体相(solid phase)で表面に結合されるような公知技術のことである。標的物質に特異な分子あるいは構造を有しない物質は固体相には結合せず、結合した物質を分離させたり、その逆ステップを実施することが可能である。小型粒子、特に固体相としてのポリマー球体粒子(polymeric spherical particle)は非常に有用であることが証明されている。なぜなら、それらは生体分子で被覆(coating)することができ、非常に広い表面積を提供し、優れた反応運動(reaction kinetics)を提供するからである。結合標的物質(結合材料)を含む粒子の媒液(遊離材料(free material))からの分離は濾過または重力効果を利用して、すなわち、沈殿または遠心力を利用して達成が可能である。
【0005】
結合/遊離画分(bound/free fraction)の分離は、磁界を利用して粒子結合物質(particle bound substance)を分離させる磁性化可能粒子(magnetizable particle)を利用することで非常に単純化される。小型の磁性化可能粒子は当分野では周知であり、免疫学及び他の親和生体反応が関与する生体分離での利用も周知である。小型磁性化可能粒子は一般的に2つに分類される。一方は永久的に磁化された粒子であり、他方は磁界内でのみ磁化される粒子である。後者は強磁性あるいは超強磁性粒子と呼称され、一般的には永久磁化粒子よりも好まれる。
【0006】
多様な適用のために、強磁性粒子の表面は、抗体、レクチン、オリゴ核酸塩、あるいは他の生体反応分子(bioreactive molecule)のごとき適当なリガンドまたはリセプターにて被覆処理されることがあり、他の物質との混合体内で標的物質と選択的に結合する。小型磁性化可能粒子あるいはビーズ(bead)の例は、米国特許第4,230,685号、米国特許第4,554,088号及び米国特許第4,628,032号にて開示されている。強磁性粒子の利用は、バイオ/テクノロジー誌11:60-63(1993年)のB.ハウカネスとC.クバムの“生体分析における磁性ビーズの利用”、1984年1月14日発行のランセット誌のページ70から73にかけてのJ.G.トレリーベン他の“磁性極小球に接合された単分枝系抗体での骨髄からの神経芽腫細胞の単離”、トランスプランテーション誌43:366-71(1987年)のF.バートダル他の“ヒトの骨髄からのT型リンパ球の除去”、免疫学のスカンジナビアンジャーナル誌22:207-16(1985年)のT.リー他の“ヒトの単分枝系細胞の迅速特異分別のための磁性単一サイズポリマー粒子”、並びに、マサチューセッツ州ナチックのイートン出版社編集によるM.ウーレン他の“生体磁気分離の進歩”において掲載されている。
【0007】
磁気分離手法は典型的には、サンプルを媒液内で強磁性粒子と混合させ、親和反応性によって標的物質を結合させ、次に磁界を適用することでそのサンプル媒体から結合粒子/標的複合体を分離させるステップが関与する。コロイド状である粒子以外の全ての磁性粒子はやがて沈殿する。従って、その媒液は、親和生体結合反応が生じるだけの充分に長時間、浮遊状態(suspending)にしておくためにある程度の攪拌が必要である。周知な攪拌方法には、部分的に満たされた容器の振混(shaking)、渦混(swirling)、揺混(rocking)、回混(rotation)等がある。場合によっては、標的物質と強磁性粒子との親和結合性は比較的に弱く、媒液内での過激な攪拌によって反応が妨害されることがある。あるいは、細胞、細胞断片、酵素複合体等の生体標的物質は非常に脆く、過激な攪拌で反応妨害が発生したり、変性することがある。
【0008】
過激な攪拌は、生体磁気分離の従来技術で利用される装置及び方法に付随するいくつかの弱点や欠陥の1つに過ぎない。粒子結合標的複合体を媒液から分離するのに利用される磁気分離装置の構造は磁性粒子の性質とサイズとによって異なる。0.1から300μmのサイズ範囲の強磁性粒子は商業的に入手が可能な磁気分離装置によって容易に単離することができる。このような磁気分離装置の例は、ニューヨーク州のレークサクセスのダイナルインク社が製造するダイナルMPCシリーズの分離機、マサチューセッツ州ケンブリッジのパーセプティブダイアグノスティック社が製造するバイオマグ分離機シリーズの装置、及び米国特許第4,895,650号に紹介されている磁気分離ラックである。これらの装置はテスト(試験)媒液を入れる容器の外部に配置された永久磁石を利用しており、分離のみを提供する。親和結合反応のためのテスト媒液内での強磁性粒子の混合は別のステップで実施されなければならない。例えば、ダイナルMPCシリーズの分離機はテスト媒液の攪拌には別体の混合装置であるダイナルサンプルミキサーを必要とする。このプロセスは混合、洗浄(washing)及び分離の各段階でモニターしなければならず、オペレータからの妨害が多くなる。従って、これら装置の効率はオペレータの技術と能率とによって影響を受ける。
【0009】
米国特許第4,910,148号は健全細胞から癌細胞を分離する装置と方法とを解説している。免疫反応性強磁性粒子と骨髄細胞とが揺混プラットフォーム上で媒液を攪拌することで混合される。それら粒子が癌細胞と結合した後は、そのプラットフォームの外部に設置された磁石によって粒子は媒液から分離される。このような混合は液動を最低限に抑えるが、粒子と標的物質との充分な接触は提供しない。さらに、この装置の利用は比較的に多量のサンプルからの細胞分離に限定される。
【0010】
米国特許第5,238,812号は、親和生体結合反応を促進させるためのミキサーとしてU形管構造体を採用して急速混合させる複雑な装置を説明している。このU形管内の液体は5秒から15秒間、急速に揺混あるいは回混され、テスト媒体内で磁性粒子を混合する。次に磁石はU形管の底部に近づけられ、これら磁性粒子が分離される。前記の特許第5,238、812号に記述されているように、この装置の利用は極小容器のテスト媒体(1000μリットル以下)の処理に限定される。
【0011】
米国特許第5,336,760号は、1個あるいは複数個の磁石を容器に近接させて配置した状態でプラットフォームに装着されたチャンバーを有しており、そのプラットフォームをギヤとモータとを有した複雑な装置で回転させる混合/磁気分離装置を解説している。免疫反応強磁性粒子はテスト媒液内にて、まずステンレススチール製の“キーパ”をチャンバーと磁石との間に配置してそれを磁界から遮断するように設置し、次にプラットフォームを垂直ポジションと水平ポジションとの間で回転させることで混合される。テスト媒液内の粒子はチャンバーの上下回転運動(end-over-end movement)で混合され、標的物質の結合が促進される。この混合の後に、“キーパ”は取り出され、磁性粒子は適用されている磁界によって捕捉される。複雑な機構を必要とするばかりではなく、上下回転運動による媒液の攪拌は比較的に高浮力を有した粒子を効率よく混合せず、液体動乱は標的物質をせん断(shear off)または損傷させるであろう。
【0012】
米国特許第5,110,624号は磁性化可能孔質粒子の製法に関するものであり、細胞溶解質(cell lysate)からプロティンを単離するための流通磁力安定液化ベッド(MSFB:flow-through magnetically stabilized fluidized bed)カラム(column)を解説している。このMSFBカラムは磁性化可能粒子のベッドで緩やかにパックされており、このカラムを通過する液流と平行に走る固定磁界の創出手段を備えている。これら粒子は溶液の流量と磁力とを調整することでMSFB内に維持される。これは複雑な技術を要求し、流速と磁力の正確な調整が必要であり、液体流速と磁気力の組み合わせ効果は正確に粒子の重力に対抗する。さらに、MSFBのデザインは小容積に対する使用では最良状態とはなっておらず、生体分析や細胞分離に対しては最良にすることができない。
【0013】
1991年6月27日発行の国際特許願WO91/09308は分離と再浮遊(resuspension)方法及び装置を開示している。この出願は、常磁性粒子を収容した容器周囲で磁石を回転させることで粒子は密圧塊体状態となり、互いに回転すると教示する。また、この方法は粒子の再浮遊を成功させないと教示している。さらに、再浮遊させるには磁性粒子は対面して配置された連続的な磁界を必要とすると教示する。この出願は、2個の磁石で交互に磁性粒子を結合させるようにエネルギー供与及び脱エネルギーされる2個の電磁石間に配置されたチャンバーを含んで成る装置を開示している。さらに、これら2個の電磁石を充分に急速に交互にエネルギー供与及び脱エネルギーすると粒子はチャンバーの中心で浮遊すると教示する。この方法は粒子の移動を比較的に短距離に制限し、粒子と標的物質との間の衝突頻度を大きく減少させる。このことは媒液内で常磁性粒子を混合させる主たる理由である親和結合に必要である。さらに、粒子間の大きな摩擦によってチャンバーの底部に重力沈降することで磁界から脱却させるであろう。
【0014】
日本特許第58193687号「微小物質の攪拌と分離」は磁力を帯びた極細磁性ワイヤを磁性粒子を含有した微生物と混合させることで微生物を分離させる技術を開示している。この混合は回転磁界で達成される。回転磁界は混合ステップ後に微生物を分離するようにも作用する。この特許は極小磁性粒子を内蔵した微生物の分離に関する。このような微生物は当業界では周知であり、粒子例はマグネトスピリリウムであり、極小磁性粒子を合成するバクテリアとして知られている。このような微生物は、本願発明が提供するような標的物質の混合及び分離のための磁性粒子としては使用できない。線状に連結された極小磁性粒子に必要なこの日本特許の要件はワイヤであり、磁鉄鉱含有バクテリアをこれらワイヤの表面で収集するために高傾度(グラジエント)磁界(HGMF)を創出させるのに使用されるであろう。このような技術は本発明が想定するところの、テスト媒体から標的物質を親和分離させる方法には適用できない。なぜなら、それは反応を発生させるために微生物の磁性粒子(標的物質自体)に依存するからである。
【0015】
適用可能な知られた手法は欠点を有している。例えば、物理的に複雑な混合機構を必要としたり、様々な制限や、非能率性が関与する。本発明は、比較的に簡単な構造であり、操作が容易で、大量、少量に拘わらずテスト媒液を処理することができ、複数のテストサンプルを同時的に処理できる装置と方法とを提供する。
【0016】
加えて、本発明は混合と分離を実行でき、不都合な液体乱流を引き起こさずに媒液内の常磁性粒子の混合効率を最大とする装置と方法とを提供する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、標的物質のテスト媒液からの親和分離は、表面固定リガンド(surface immobilized ligand)あるいはレセプターを有した磁性粒子を混合し、その磁性粒子と標的粒子とを含んだテスト媒液を収容する容器を本発明装置内に取り外し可能に搭載する。1好適実施例においては1つの磁界グラジエントがそのテスト媒液内に創出される。この磁界グラジエントは磁性粒子を磁源に最も近い容器壁の内側方向に移動させる。磁源と凝集する磁性粒子との相対移動はテスト媒液内での磁性粒子の混合を促し、親和反応で標的物質の最良結合に充分な時間だけ継続される。加えて、相対運動と同時的に、磁源は容器の1端から他端に移動することができ、磁界グラジエントによって容器に沿って効果的にスキャニングさせる。磁石と磁性粒子との間の相対移動が停止すると、磁性粒子は磁源に近い容器壁内側に密集して固定される。テスト媒液は吸出され、磁性粒子は容器壁に残されて適当な後処理が施される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下の説明は当業者に本発明の利用を可能にさせることも目的とし、本発明の実施のために本発明者により最良であると考えられる態様を詳細に記述している。しかしながら、それらの多様な改良は当業者にとって容易であろう。本発明の原理は、磁石手段によって磁性粒子に移動力を付与することで磁性粒子を含むサンプル液を混合させ、媒液乱流を引き起こすことなく磁性粒子を混合させ、混合効率を最大とする装置と方法とを提供するように定義されているからである。
【0019】
本発明は、テスト媒液からの標的物質の迅速で効率的な分離を可能にし、例えば、生体分析反応混合物、細胞媒体、体液等々から対象の有機、生物化学または細胞成分を親和磁力分離させるのに特に有効である。本発明は新規な混合システムを含んでおり、磁性粒子は、テスト媒液を収容する容器の外部に設置された磁石手段で相対的に不動であるテスト媒液内で混合される。本発明は装置と方法も含んでいる。磁性粒子は磁界領域で混合されるとき低濃度の磁性粒子で親和分離される。本発明は1体の装置に提供された共通磁石手段で混合処理及び分離処理の両方を実行する装置を提供する。よって、単純構造であり、実用的である。
【0020】
本発明の装置は、少なくとも1体のテスト媒液収容容器と、テスト媒液内で磁界グラジエントを発生させる外部磁石手段と、テスト媒液内で磁性粒子の移動を促す手段とを含んで構成されている。本発明の装置は線状移動機構をも含むことができ、大量のテスト媒液のスキャニングのために磁力手段を移動させる。この混合及び分離を実行するための容器は好適には円筒状であり、ガラスやプラスチック等の非磁性材料で製造されている。好適には、容器は少なくとも1つの開口部を有しており、磁性粒子を含んだテスト媒液を受領及び排出する。
【0021】
磁力手段はテスト媒液内で磁界グラジエントを発生させるために容器の外部に提供された永久磁石または電磁石を含むことができる。1好適実施例においては、磁石はネオジミウム-鉄-ボロンまたはサマリウム-コバルトで成る異方性燒結物体のごとき稀土合金の永久磁石である。磁石は容器の外側に設置され、テスト媒液の望む断面で磁界グラジエントキャビティを提供する。この“キャビティ”なる用語は、磁界グラジエントが、その“キャビティ”内に収納されているかのように磁性粒子を密集させる理由により採用された。磁石と容器との間の距離は調整でき、テスト媒液の磁界キャビティ内で望む磁界強度を発生させる。
【0022】
この磁界キャビティの磁力は磁石に接近した容器の内面部分(磁力のローカス(locus))のほうがキャビティの他の箇所よりも強力であり、キャビティの外側では無視できる程度の強度となる。その結果、このローカス近辺の磁性粒子は離れた磁性粒子よりも強力に磁力の影響を受ける。好適実施例によっては、2体の磁石が容器の反対側に好適には同性磁極が対面した状態で配置され、磁力線を歪め、1キャビティを形成する2部分の磁界グラジエントと2部分のローカスの磁力を発生させる。このようなアレンジは磁性粒子の攪拌に特に有効である。特に有用なアレンジでは、磁石の垂直構造体を含む構造体が容器の外部に配置され、テスト媒液内の望む断面に多層の磁界グラジエントキャビティを提供する。
【0023】
本発明はテスト媒液内での磁性粒子の攪拌と混合を提供し、テスト媒液を容器に対して相対的に不動(静止)状態に保つ。静止磁界グラジエントキャビティを定義する静止磁石に対して容器を回転させることでテスト媒液を通じて磁性粒子を移動させる。この移動は容器内の凝集粒子と磁石との間の角ポジションの変化によって引き起こされる実質的に不動であるテスト媒液に対する磁性粒子内の角移動を誘導する。磁性粒子もまた容器に沿って磁界グラジエントキャビティを定義する磁石を移動させることでテスト媒液内で移動される。
【0024】
磁性粒子に対して不動である磁界グラジエントキャビティはテスト媒液内の磁性粒子を磁石手段に接近している容器の横壁の内面上で比較的コンパクトな塊体に凝集させる。磁性粒子は全て磁石手段の近辺に凝集するので、圧縮と表面張力の非磁力作用で互いに結合する。凝集程度は磁力により決定され、通常の親和分離で使用される数ミクロン径の粒子の場合には特に磁力の影響を受ける。そのようなコンパクト化された磁性粒子は磁力を取り除いた後にも凝集状態を保ち、再浮遊させるにはテスト媒液の激しい揺動を必要とする。テスト媒液内の注意深く調整された磁力は磁性粒子を浮遊状態から凝集状態にするが、凝集状態が固化することがない程度に保たれる。
【0025】
このことは本発明の混合ステップにおいては特に重要である。容器と磁石の相対的な角ポジションは相当に急速に変動するので、磁性粒子の凝集体は容器の壁と共にさらに弱い磁界ポジションに移動する。このポジションで、磁石手段近辺のさらに強力な磁界により凝集体から磁性粒子を分離し始め、磁性粒子の移動軌跡は凝集体と磁石の角ポジションに応じて引き離される。磁性粒子は引き付けられると、適用された磁界によって磁性粒子上に誘導された磁気双極子により移動して磁性粒子鎖を形成する。磁性粒子鎖が磁石方向に加速すると、流体のドラッグ力により粒子は分離し、媒液内で磁性粒子の雲が創出される。連続回転時に磁石と凝集磁性粒子を含んだ容器の内面との間の相対的角ポジションは連続的に縮小し、磁性粒子軌道を変更して磁性粒子を再浮遊させ、混合する。
【0026】
連続的な粒子軌道の変更は、磁石と常磁性粒子との間の連続的角変動で作用する磁力作用に基いている。このことにより、液体を流動させずに磁性粒子の混合が提供される。さらに、この混合ステップは磁性粒子と標的物質との衝突頻度を高め、親和結合反応の効率をアップさせる。
【0027】
磁性粒子鎖の破断は磁石の極性を急激に変化させる追加的な手段を提供することで助長される。例えば、磁石のN極が容器に面していれば、S極に変化されるであろう。このような磁極の急激な逆転により発生する反発力は磁性粒子鎖の破断の助けとなる。このような磁極の逆転は回転装置によって可能である。逆転頻度は変化させることができる。一般的に、再浮遊と混合を確実に提供するための容器と磁石の角ポジションの特定変動速度、すなわち回転速度の変動は磁性粒子のサイズ、密度及び磁性粒子に対する磁気影響力、容器の直径、テスト媒液の密度と粘度、並びに磁界の強度に影響を受ける。磁性粒子に関しては、媒液内で磁性粒子を引き付ける磁力は磁気飽和及び磁界グラジエントと磁性粒子移動を妨げる粘度とが関与し、ストークスの法則に従っている。適当な回転速度は重力、浮力、液体摩擦力及び磁力を考慮して計算できる。しかし、所定のパラメータでの磁界強度と適当な回転速度は実験的に調整されるべきものである。回転速度が速過ぎると磁性粒子は凝集体から分離しなくなり、磁性粒子は容器の内壁に広がる。同様に、回転速度が遅過ぎると磁性粒子凝集体はそのまま回転する。両方の場合に、磁性粒子の再浮遊と混合は妨害される。テスト媒液の磁界キャビティの磁界強度もバランスされて、凝集磁性粒子が容器の壁と共に移動するようにしなければならない。固定磁石ポジションは望む磁性粒子サイズが相当に変動する場合には不便である。そのような場合には、磁石と容器の距離を調整し、テスト媒液の磁界キャビティに最良磁界強度を提供することが望ましい。
【0028】
連続回転は磁性粒子の充分な混合を提供するが、状況によっては角ポジションの調整によって所定の距離を段階的に変化させるのが望ましい。例えば、相対的な角ポジションは90°から180°まで1度に変更できる。このような変更を反復することもできる。望めば、変更の間隔を遅らせることができる。
【0029】
本発明に従ったテスト媒液からの磁性粒子の分離は磁石の容器に対する回転を停止させ、磁性粒子の攪拌を終了させることで提供される。磁石と凝集磁性粒子との間の静止ポジションにて、テスト媒液の磁界グラジエント内の磁性粒子は磁石に近い容器内壁に引き付けられて固定される。
【0030】
液体乱流を引き起こさずに凝集磁性粒子を再浮遊及び混合させる確実で容易な自動処理方法に対する需要は充分には充足されていない。出願人の発明は初めて混合と分離のプロセスを単純化して1つの装置に集約させた。
【0031】
本発明は親和磁力分離において従来技術に対する多くの利点を提供する。本発明の混合は磁性粒子の親和表面と標的物質との間の高い接触性を提供し、液体の乱流を引き起こさずに親和結合を増強する。その結果、水力せん断力は低いままであり、磁性粒子と標的物質複合体との間の親和結合に影響を及ぼしたり、標的物質に対する変性を妨害しない。あるいは標的物質に損傷を及ぼさない。本発明のプロセスは100μリットル程度の容積のサンプルに利用でき、100mリットル以上のサンプルの処理にまで応用できる。本発明は多彩な細胞治療に必要な人間の稀細胞の分離に特に有効である。なぜなら、今まで不可能であった効率レベルが可能になるからである。
【0032】
特定の親和磁力分離により得られた標的物質の純度と産量は、標的物質と磁性粒子の表面との間の親和結合反応を促進させるのに利用される混合プロセスによって決定される。結合反応は親和表面と標的物質との間の緊密な接触を必要とする。反応速度は2種の物体間の衝突頻度と磁性粒子の表面更新速度によって決定される。表面更新は親和表面の媒液の薄層を取り除き、新鮮な媒液と交換するプロセスである。親和表面での水力せん断力は注意深くバランスされなければならず、親和結合を妨害せずに媒液の薄層を取り除く必要がある。このことは媒液を攪拌する従来の混合方法では達成が困難であった。本発明は、本質的には静止状態である媒液内で磁性粒子の機械的に制御された移動を提供することで高衝突頻度と実質的にバランスされた水力せん断力を提供する。
【0033】
親和磁力分離において、粒子密度は典型的には標的物質よりずっと高く、標的物質の産量を増強する。これは、粒子と細胞の比20:1が望む隔離効率には必要である哺乳類のヘモポイエチン細胞(mammalian hemopoietic cell)のごとき稀細胞種の分離に特に重要である。そのような利用においては、均等サイズの磁石ビーズが必要である。これらビーズは高価格である。非常に純粋な幹細胞(stem cell)を隔離する能力はリンパ腫や白血病その他の治療に有効であろう。しかし、人間の幹細胞の隔離においては、大量サンプルの処理が必要である。このようなプロセスは多量の磁石ビーズを消費する。よって、必要な高純度と産量を犠牲とせずに磁石ビーズの密度を減少させる必要がある。本発明の1実施例では、回転する容器の軸に沿って垂直に移動する磁石を組み合わせることで常磁性粒子を比較的に低濃度として大量のサンプルが処理される。
【0034】
本発明の混合と分離プロセスは分離のために生体特異親和結合反応が関与する様々な研究および臨床プロセスで特別な利用性がある。そのようなプロセスでは、テスト媒液内で対象物質と特に親和結合させることができる特異親和結合性磁性粒子が使用される。すなわち、リガンドやレセプターが利用される。
【0035】
そのような生体特異親和結合反応は生体サンプルの幅広い標的物質の決定または単離に利用できる。標的物質の例には、細胞、細胞成分、細胞サブ集団(成熟核細胞及び原子核細胞)、バクテリア、ウィルス、パラサイト、アンチゲン、特定抗体、核酸、等々がある。本発明の装置と方法は、骨髄からの腫瘍細胞、末梢血液または骨髄からのT型リンパ球、末梢血液、単核細胞からのCD2、CD4、CD8及びCD34等のリンパ球サブセット、顆粒球並びに他の細胞種その他の細胞の分析または単離を行う免疫特異細胞分離の実施に利用される。種々な細胞タイプの除去も同様に実施される。本発明は食料品、媒質、体液等々からのバクテリアや寄生物の分離または分析にも利用できる。同様に、本発明の装置及び方法は、免疫分析及び核酸プローブ分析等の生体分析、原始細胞溶解質からの直接的なDNA及びmRNAの単離及び検出、並びにプロテインの単離や検出にも利用される。
【0036】
本発明に好適な磁性粒子は非コロイド常磁性または超常磁性粒子である。このような磁性粒子は典型的には、鉄ベースの酸化物、例えば、磁鉄鉱、変移金属、または稀土元素等の少量の鉄系磁性物質を含有したポリマー材料であり、磁界によって拘束されるものである。本発明の実施に有効な常磁性粒子は、リガンドまたはレセプターである特異親和結合ペアの一方の吸着または共有結合ができる適当な結合表面を提供する。好適な粒子径は典型的には0.1から300μmである。適当な常磁性粒子はニューヨーク州のレークサクセスに所在するダイナル・インク社、マサチューセッツのケンブリッジに所在するパーセプティブダイアグノスチックス・インク社及びカルフォルニア州のサンレアンドロに所在するコルテックスバイオケム・インク社のものである。好適な磁性粒子は約1から5μm径の均一なものであり、磁性化物質を均等に含有したものである。そのような磁性粒子はダイナル・インク社の商品番号M-280とM-450として入手できる。これらビーズは薄いポリスチレン殻でコーテイングされており、種々なリガンドやレセプターの固定のための表面を提供する。このような固定は多くの従来手法で可能であり、物理的吸着または共有結合化学を利用した技術が好適である。
【0037】
磁界グラジエントは永久磁石または電磁石によって発生させることができる。実験研究レベルと、臨床診断に使用される自動装置では永久磁石が一般的には好まれる。しかし、大型装置または製薬会社用や産業利用される自動装置では電磁石の利用が有利である。なぜなら、磁界グラジエントは様々な処理ステップの自動制御のものとで容易に変動させることができるからである。
【0038】
本発明を実施する永久磁石はほとんどの磁性粒子を引き付けるのに充分な強度の表面磁界を有することが好ましい。数百ガウスから数キロガウスの範囲の表面磁界強度を有した稀土類合金の永久磁石が好ましい。ネオジミウム-鉄-サマリウム-コバルト磁石の高エネルギーで、25から45MGOe(メガガウスエールステッド)BHmax(最大エネルギー量)の永久磁石が特に好適である。そのような磁石はインディアナ州のバルパライソに所在するインターナショナルマグナプロダクツ・インク社その他が提供する。好適には、永久磁石は方形断面を有しており、機械的に非磁性保持体に固定され、永久磁石構造体を提供する。構造体は鉄磁石ハーネスを含むことができ、磁石を収容して磁界を高密化して焦点させることができる。磁石は好適には容器の垂直軸に垂直な力の磁力線方向に提供される。別な断面形状、方位性及び容器に対する磁極方位性も可能である。
【0039】
一般的に永久磁石構造体は、磁石が容器の底部にまで延びることなく容器に近接して配置される。図3に示す各磁石と容器との間の距離は約1mmから20mmに調整され、テスト媒液の磁界キャビティ内で望む磁界強度を創出する。図示されている装置は磁石と容器との距離を調整する手段を含んでいる。粒子のサイズと磁性化度、磁石の磁界強度及び容器の断面径に応じて適当な距離が実験的に決定されよう。磁界キャビティに創出された磁界強度は注意深くバランスされ、磁性粒子を浮遊状態から容器内壁に凝集状態とし、凝集粒子を容器の壁と共に動かす。しかし、磁石を容器にさらに近づけることができ、テスト媒液から磁性粒子を分離させるように磁界強度を増加させることができる。複数の容器の処理が関与する状況においては、永久磁石構造体を容器間または容器の列間に配置し、1つの永久自磁石構造体によって近くの2つの容器に磁界キャビティを発生させることができる。
【0040】
図3は複数のテスト媒液を同時的に処理する本発明の好適実施例を示す。これはポジショニング機構に搭載された線状駆動機構と回転機構を含んでいる。これら3機構は磁石構造体を垂直線状移動させ、磁石構造体と容 との間の距離の調整や容器の回転を調整する。同時的な容器の回転と磁石の線状移動は比較的に少量の磁性粒子で比較的に託量のテスト媒液の処理を可能にする。
* 図3に示す装置は2体の主要部材である線状駆動構造体111とベース構造卓112を有している。両方の構造体は非磁性材料で製造されており、アルミニザムが好適である。線状駆動構造体111は剛体フレーム113と、2本の固定ゼイド棒114と115並びに中央ネジシャフト116を含んでいる。ネジシャフト11Vの端部は滑らかでネジ溝が提供されておらず、2体の端フランジ(図示せず)に搭載されているヽネジシャフト116は自由に回転し、ロールナット(図示せず)を含んでいる。ロールナットはネジシャフト116の回転ぷ垂直平面上を線状に移動する。滑車117はフレーム113の上面138から突き出ているネジシャフト116の滑らか部分に固定されており、タイミングベルト118で、フレーム113のブラケット121に搭載された可変速電動モータのシャフトに固定された別の滑車119に接続されている。タイミングベルト118はネオプレンまたはウレタンで提供されており、内側には正確に溝が形成されている。ベルト幅と溝は滑車117と119の歯の寸法にマッチする。適したタイミングベルトとギヤ滑車はニューヨーク州ニューハイドパーク所在のストックドライブプロダクト社等から入手できる。
【0041】
キャリー体122はネジシャフト116のロールナット(図示せず)に固定されている。その垂直移動は正確に整合されたガイドロッド115と114で確実に提供される。線状駆動構造体111はフレーム113の底部プレート139をボルト固定することでベース構造体112に取り付けられている。ベース構造体112の中央孔に挿入されたノブ128を有した棒が線状スライド機構123に取り付けられている。線状スライド機構123はノブ128を容器124から望む距離に押したり引いたりすることで前後移動する。
【0042】
磁石126を有した磁石構造体125は3個のネジ127によって線状駆動キャリー体122に取り外し式に搭載される。このことは有利である。なぜなら、多様なサイズと形状の磁石の変更が容易だからである。容器からの距離はノブ128を引いたり、押したりすることで調整される。
【0043】
モータ120はネジシャフト116を回転させる。ロールナット(図示せず)はこの回転モーションを線状モーションに変換し、磁石構造体125を垂直に移動させる。磁石構造体125の線状移動方向はモータコントローラによるモータの時計回り、あるいは反時計回りで制御される。磁石構造体125の上下移動は自由に制御でき、望むサイクル数で反復できる。
【0044】
キャリー体122の線状上下運動のポジションとストローク長は2個のポジションセンサー(図示せず)でコントロールされ、キャリー体125の最低と最高間の移動を制御する。これらセンサーからの電子信号はモータ回転の逆転に使用され、対応する磁石126によって容器の望む長さを反復的にスキャニングさせる。
【0045】
電子モータコントローラとポジションセンサーは周知であり、市販されている。永久磁石が採用されるなら、好適には稀土材料製であり、適当な寸法と形状を有しており、望む磁界強度の磁界キャビティを定義し、望む断面を各容器のテスト媒液内に提供する。
【0046】
ベース構造体112はシャフトに固定されたギヤ滑車130を有した可変速電動モータ129を有した回転機構を含んでいる。滑車ロータ131は複数のホルダー134のそれぞれに取り付けられる。タイミングベルト132は滑車130のギヤとロータ131のそれぞれの周囲に巻き付けられる。1つのロータ131のみが容器124のホルダー134の隣に示されているが、それぞれの容器ホルダー134はベルト132で駆動されるものと関連するロータ131を有している。モータ129とロータ滑車130、131はベース構造体112に固定された上部金属プレート133によって正確なポジションに固定される。ギヤ滑車ロータ131は自由回転し、それぞれのシャフトはプレート133の対応する穴から突き出る。ベルト幅とタイミングベルト132の内側の溝ピッチは寸法的にモータギヤ滑車130のギヤ歯及びロータ131とマッチし、正で非スリップ状のパワー伝達を提供する。望むなら、アイドリングローラが滑車間に設置でき、さらに確実なパワー伝達を提供するようにギヤ歯周囲に巻き付けられる。モータ129はタイミングベルト132を回転させ、全ての滑車ロータ131を同時的に回転させる。
【0047】
ホルダー134はプレート133の対応する穴から突き出るロータシャフト135のテーパされた端部に取り外し式に搭載され、容器124を保持する手段を垂直に提供する。取り外し式ホルダーデザインは好都合である。なぜなら、対応する容器形状に合わせてホルダーを変えるだけで多彩な容器サイズに対応することができるからである。
【0048】
磁石構造体125のポジションは容器124の列から必要な距離に調整できる。モータ129は容器124を縦軸周囲で回転させる。容器が回転すると、各容器内の凝集磁性粒子の対応する磁石126との相対的角ポジションは連続的に変化し、磁性粒子を磁界グラジエントのキャビティ内で混合させる。容器124が回転しているときモータ120にはスイッチが入れられ、磁石126を垂直平面で上下運動させ、磁界キャビティを容器の垂直軸と整合するように移動させる。容器の望む長さに到達すると、磁石構造体125の移動方向は逆になる。このプロセスは粒子混合の間中、反復される。
【0049】
磁性粒子は磁界キャビティ内に閉じ込められている。磁性粒子と標的物質との比は磁界キャビティ内で比較的に高いレベルに調整でき、親和結合を促進させる反応条件が提供される。線状移動する磁界キャビティを磁界キャビティ内に閉じ込められている磁性粒子の角移動と組み合わせることで、粒子濃度を増加させずに大量のテスト媒液を処理する単純で効率的な手段が得られる。このようなことは従来では不可能であった。
【0050】
モータ129は相対的角ポジションでの所定の距離の段階的な変化を提供する電動ステップモータでよい。同様に、モータ120は垂直面で所定の距離を段階的に変化させる電動ステップモータでよい。回転及び線状移動の連続式及び段階的移動の様々な組み合わせも利用できる。回転と線状移動の最良の速度は実験的に求められる。
【0051】
分離処理のためには線状駆動モータ120のスイッチが切られる。磁石構造体125はホームポジションに戻される。回転駆動モータ129はスイッチが切られる。容器124内の磁性粒子は磁石126に近い内壁に引き付けられて固定される。容器124の垂直側部の凝集磁性粒子は吸引等でテスト媒液が除去される。望むならば、磁石構造体125は移動ノブ128によって容器124の近くに移動される。これで磁性粒子は容器124の内壁にさらに固く凝集され、テスト媒液の除去に貢献する。
【0052】
図1Aから図1Fは、生体分析あるいは生体液のサンプル溶液または懸濁液からの細胞または分子の単離のための約2.8μmの親和反応磁性粒子を使用した好適実施例の方法の好適ステップを図示している。
【0053】
図1Aはサンプル溶液内の磁性粒子58の懸濁液がピペット59で約10mm径の試験管23内に注入される様子を図示している。約400ガウスの表面磁界を有した磁石21が試験管23から約5mmの距離に移動される。この好適距離は実験で決定された。モータにスイッチが入れられ、磁性粒子58は試験管23周囲で磁石21を回転させることで混合される。図5Bは混合が終了した状態である。磁性粒子58は固定磁石21に近い試験管23の内壁で固定される。
【0054】
図1Cは洗浄ステップ中の装置を示す。このステップでは外側管59Aは上澄みテスト媒液を吸引し、内側管59Bは適当な洗浄液を試験管23内に加える。続いて磁性粒子58は洗浄液内で混合される。古い洗浄液は吸引され、新しい洗浄液が加えられる。この洗浄ステップは必要に応じて反復される。
【0055】
図1Dは、標的物質を磁石または磁性粒子58から溶離させる目的で生体分析や化学置換反応のための望む分析反応を行わせるためにピペット59による試薬液の追加のために停止された状態の装置を示す。
【0056】
図1Eは望む反応を実施するために磁性粒子58を分散または混合させるためにスイッチが入れられた状態の装置を示す。
【0057】
図1Fは反応媒液から磁性粒子58を分離させるために停止された状態の装置を示す。生体分析の場合、上澄み液は試験管23内で直接的、あるいはどこかに移し変えて測定したり、その他のどのような測定方法で測定してもよい。細胞や分子の単離を目的として上澄み液は適当な容器に移される。mRNAとプロテインの実際の吸引の例はシグリスリサーチ・インク社の“ミックスセップ”技術雑誌に記載されている。
【0058】
永久磁石と電磁石は相互交換可能である。しかし、磁石の移動を必要とする形態では永久磁石のほうが簡単である。電磁石は電気を移動磁石に送る整流器等のアレンジを要する。電磁石が好都合な場合もある。図2Aは支持フレーム104に搭載され、テスト媒液と磁性粒子103を収容した容器102の外部で180°離れた2個の電磁石コイル101Aと101Bを示す。図2Bはテスト媒液と磁性粒子103を収容し、支持フレーム104に搭載された個別の電磁石コイル101Aと101Rの環体で囲まれた1体の容器102の断面を示す。
【0059】
ここでは、容器102も電磁石101も実際には動かない。角移動は電磁石を作動させることで容器102内部のテスト媒液103内の磁性粒子に提供される。この連続的作動は“バイナリー”(オンとオフ)または“アナログ”であり、第1電磁石は徐々にエネルギーが高められ、続いて徐々にエネルギーが弱められる。次の電磁石も同様である。磁性粒子103の運動速度は連続的電磁石間の変化速度とオーバーラップ程度によって調整できる。
【0060】
連続式電磁石の正確な数は容器102と他の要因によって決定される。1磁石から別磁石への角移動は最も簡単な形態では180°であり、テスト媒液103内の磁性粒子は容器102内を比較的に直線状に前後運動する。極性を調整したり、電流のパワーレベルを調整することで磁性粒子の軌跡に変化をつけ、磁界を変動させて磁極の方向を変えたりすることが望ましい。
【0061】
容器の周囲に等間隔に配置された4個の電磁石の場合には、電磁石の順番の作動及び極性逆転で磁性粒子の非常に優れた攪拌が提供されることが判明している。
【0062】
混合及び分離チャンバーを提供する容器は、テスト媒液を加えたり取り出すための少なくとも1つの開口部を含んでいる。容器は好適には円筒状であり、プラスチックやガラス等の磁力透過性物質で提供されている。さらに、1好適実施例ではチャンバーの内面は生体共立性であり、テスト媒液の無菌処理のために殺菌されている。容器の容積はチャンバーを収容し、テスト媒液の望む断面を提供するような適当な磁界が提供される限り大きな問題ではない。
【0063】
テスト媒液を収容する容器は試験管でも円錐底部を有したエッペンドルフ管でもよい。試験管の容積は好適には通常の250μリットルから18mリットルである。装置は容易にスケールアップでき、臨床用の大容量テスト媒液を処理することもできる。磁石のサイズと形状は調整でき、特定サイズの容器内のテスト媒液の磁界キャビティ内に適当な磁界強度を発生させる。
【0064】
特に研究用に好適な本発明の実施例は試験管等の容易な交換が可能な容器を利用するが、本発明の技術を応用する診断用及び他の装置は混合及び分離用の永久設置チャンバーを利用する。
【0065】
当業者であれば理解しようが、テスト媒液を静止状態に保ちながらテスト媒液内の磁性粒子の角移動を行わせることで親和反応磁性粒子が容器内でテスト媒液と混合されるこれら好適実施例の変形や改良は本発明のスコープ及び精神内で容易に可能である。相対的角移動は磁界を静止容器周囲で回転させたり、静止磁界に対して容器を回転させることで磁性粒子に付与される。磁界を提供する磁石は容器の外側に設置され、テスト媒液内に磁界グラジエントのキャビティを提供する。どのような容器形状でも利用できる。例えば、ドーナツ型でもよい。そのような容器の場合には、ドーナツの穴内に設置された磁界源は容器の外側であり、同時に容器の内側に存在すると考えられる。よって、「特許請求の範囲」のスコープにおいて、本発明は実施例以外の形態でも実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1A】図1Aは本発明による磁性粒子を利用した標的物質の混合と分離の方法のステップを概略的に図示している。
【図1B】図1Bは本発明による磁性粒子を利用した標的物質の混合と分離の方法のステップを概略的に図示している。
【図1C】図1Cは本発明による磁性粒子を利用した標的物質の混合と分離の方法のステップを概略的に図示している。
【図1D】図1Dは本発明による磁性粒子を利用した標的物質の混合と分離の方法のステップを概略的に図示している。
【図1E】図1Eは本発明による磁性粒子を利用した標的物質の混合と分離の方法のステップを概略的に図示している。
【図1F】図1Fは本発明による磁性粒子を利用した標的物質の混合と分離の方法のステップを概略的に図示している。
【図2A】図2Aは容器の両側に設置された2個の電磁石の使用状態を示す断面図である。
【図2B】図2Bは容器を包囲する電磁石環体の設置状態を示す断面図である。
【図3】図3は本発明の好適実施例の斜視図であり、線状駆動機構によって移動する垂直移動構造体に搭載された磁石列が図示されており、共通機構によって回転する対応回転容器から望む距離にて配置される。

Claims (21)

  1. 磁性粒子を混合し、媒液から分離する装置であって、
    媒液と、該媒液内に存在する一定量の磁性粒子(58)とを収容するための壁部を有した透磁性容器(124)と、
    前記透磁性容器(124)の壁部の外側に配設され、前記媒液の一部において該透磁性容器(124)内に磁界勾配を発生させ、該媒液内に磁界領域を形成する磁石(126)と、
    前記透磁性容器(124)を該容器の縦軸周囲で回転させて該透磁性容器(124)内の前記磁性粒子(58)と前記磁石(126)との間の相対的な位置を変動させ、前記媒液内の前記磁界領域内で前記磁性粒子(58)を混合する手段(129)と、
    を含んだものであり、本装置は、前記磁性粒子(58)と前記磁石(126)との間の相対的な位置の変動と同時的に、一度又は反復的に前記透磁性容器(124)の周壁の外側に沿って垂直方向に前記磁石(126)を移動させるための手段(116、117、118、119、121)をさらに含んでおり、前記透磁性容器(124)内の前記媒液内で、前記磁界領域内で前記磁性粒子(58)を混合するのと同時的に該磁界領域を垂直方向に移動させることを特徴とする装置。
  2. 磁性粒子の粒径は0.1μmから300μmであることを特徴とする請求項1記載の装置。
  3. 磁石は200ガウスから5000ガウスの強度であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  4. 透磁性容器の回転を停止させて該透磁性容器内の前記磁性粒子と前記磁石との間の相対的な位置を一定に維持させたときに、前記透磁性容器にさらに接近させ、又はそこからさらに離れさせるように磁石を移動させる手段をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載の装置。
  5. 磁性粒子と磁石との間の相対的な位置を変動させる手段は、静止状態の磁石に対して透磁性容器を10から200回転/分の回転速度で同軸回転させるように設計されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  6. 透磁性容器の周壁の外側に沿って垂直方向に磁石を移動させる手段は該磁石を連続的に移動させることを特徴とする請求項1記載の装置。
  7. 透磁性容器はその同軸で間欠的に回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  8. 透磁性容器はその同軸で間欠的に回転可能に設けられており、該透磁性容器の回転角度は所定の間隔を有して段階的に増大するように設けられていることを特徴とする請求項記載の装置。
  9. 透磁性容器の周壁の外側に沿って垂直方向に磁石を移動させる手段は該磁石の移動距離が段階的に増大するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の装置。
  10. 透磁性容器の周壁の外側に沿って垂直方向に磁石を移動させる手段は該磁石の移動距離が段階的に所定の間隔をおいて増大するように設けられていることを特徴とする請求項9記載の装置。
  11. 透磁性容器は複数の容器から成り、それら複数の容器はそれぞれ少量の磁性粒子を収容しており、それぞれの容器の外側には磁石が配設されており、それぞれの容器には、該容器を該容器の縦軸周囲で回転させて前記磁性粒子と前記磁石との間の相対的な位置を変動させ、媒液内の前記磁界領域内で前記磁性粒子(58)を混合する手段を有しており、それぞれの磁石は透磁性容器の周壁の外側に沿って垂直方向に移動させる移動手段を有していることを特徴とする請求項1記載の装置。
  12. 親和反応磁性粒子(58)とテスト媒液とを透磁性容器(124)内で混合し、該テスト媒液内の標的物質と前記磁性粒子(58)との間で親和結合反応を発生させる方法であって、前記テスト媒液を前記透磁性容器(124)に対して液体流動を引き起こさせず、静止状態に保ち、前記磁性粒子(58)の親和表面と前記標的物質との間の接触を最大にする方法であり、本方法は、
    前記テスト媒液と前記磁性粒子(58)とを、壁部を有した透磁性容器(124)内に投入するステップと、
    前記透磁性容器(124)内の前記テスト媒液の一部に磁界勾配を発生させ、前記透磁性容器(124)の一部に沿って前記壁部の外側に配設された磁石(126)によって前記テスト媒液内に磁界領域を形成させるステップと、
    前記磁石(126)と前記透磁性容器(124)との間の距離を調節することで前記磁界領域内の磁界強度を調節するステップと、
    前記透磁性容器(124)を該容器の縦軸周囲で回転させて該透磁性容器の前記壁部に凝集した前記磁性粒子(58)と前記磁石(126)との間の相対的な位置を変動させることで、前記磁性粒子(58)を前記磁界領域内で移動させ前記テスト媒液と混合させるステップと、
    前記相対的な位置の変動と同時的に、前記磁石(126)を前記透磁性容器(124)の垂直高に沿って移動させることで、前記相対的な位置の変動と同時的に該磁界領域を垂直方向に移動させるステップと、
    を含んでいることを特徴とする方法。
  13. 透磁性容器(124)の垂直高に沿って磁石を移動させる工程は望む回数で反復されることを特徴とする請求項12記載の方法。
  14. 透磁性容器(124)の垂直高に沿って磁石を移動させる工程は、移動距離を変化させる工程をさらに含んでいることを特徴とする請求項12記載の方法。
  15. 透磁性容器(124)の垂直高に沿って移動する磁石(126)を該透磁性容器(124)の所望の長さ位置で停止させるステップと、
    前記透磁性容器(124)の回転を停止させて前記磁石(126)と前記透磁性容器(124)内の磁性粒子(58)との相対的な位置を一定に維持し、前記磁性粒子(58)を前記透磁性容器(124)の内面に凝集させるステップと、
    前記磁石(126)を前記透磁性容器(124)の壁部にさらに接近させ、前記磁性粒子(58)を強固に集塊させるステップと、
    凝集した前記磁性粒子(58)を乱すことなく前記透磁性容器(124)から前記テスト媒液を排出させるステップと、
    をさらに含んでいることを特徴とする請求項12記載の方法。
  16. 磁性粒子(58)と磁石(126)との間の相対的な位置を変動させる工程は、10から200回転/分の角速度で静止状態の磁石(126)に対して透磁性容器(124)を該容器(124)の縦軸周囲で回転させる工程を含んでいることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の方法。
  17. 磁性粒子(58)と磁石(126)との間の相対的な位置を変動させる工程は、所定の間隔をおいて回転角度を段階的に増大させて容器(124)を縦軸周囲において回転させる工程を含んでいることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の方法。
  18. 磁界勾配を発生させる工程は透磁性容器(124)の周壁に沿って外側で角間隔を開けて配設される複数の電磁石の利用を含んでおり、磁性粒子(58)と電磁石(126)との間の相対的な位置を変動させる工程は前記透磁性容器(124)の周壁に沿って順番に前記複数の電磁石(126)を励起させる工程を含んでいることを特徴とする請求項12から17のいずれかに記載の方法。
  19. 媒液の別位置で透磁性容器(124)内に少なくとも1つの追加磁界勾配を発生させ、少なくとも2つの別々の磁界領域を前記媒液内に形成させるステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項12記載の方法。
  20. 磁石(126)は透磁性容器の垂直高に沿って連続的に移動することを特徴とする請求項12記載の方法。
  21. 磁石(126)は、透磁性容器の垂直高に沿って垂直方向に所定の間隔で段階的に増大されて移動することを特徴とする請求項12記載の方法。
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