JP2018161649A - 磁性体粒子の操作方法および磁性体粒子操作用デバイス - Google Patents

磁性体粒子の操作方法および磁性体粒子操作用デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な操作により、高効率で液体中に磁性体粒子を分散可能な磁性体粒子の操作方法を提供する。
【解決手段】本発明は、容器(10)内に装填された液体(31)中で、磁性体粒子(71)を分散させるための磁性体粒子の操作方法に関し、容器(10)の外壁面の近傍で磁石(9)を移動させることにより、磁性体粒子(71)に運動エネルギーを与えて、液体(31)中で磁性体粒子(71)を分散させる。磁性体粒子は、目的物質を選択的に固定可能な粒子である。
【選択図】図3−1

Description

本発明は、試料中の目的物質を選択的に磁性体粒子の表面に固定させるための磁性体粒子の操作方法に関する。また、本発明は、当該方法に用いられる磁性体粒子操作用デバイスに関する。
医学的検査、食品安全衛生上の管理、環境保全のためのモニタリング等では、多種多様な夾雑物を含む試料から、目的物質を抽出して、検出や反応に供することが求められる。例えば、遺伝子検査では、標的の核酸をPCR等により増幅させる前に、動植物の血液、血清、細胞、尿、糞便等や、ウィルス等の生体由来試料から、DNAやRNAを効率よく抽出する必要がある。
試料中の目的物質を抽出・精製するために、粒径が0.5μm〜十数μm程度の磁性体の表面に、目的物質との化学的な親和力や分子認識機能を持たせた磁性体粒子を用いる方法が開発され、実用化されている。この方法では、磁性体粒子の表面に目的物質を固定させた後、磁場操作により磁性体粒子を液相から分離・回収し、必要に応じて、回収された磁性体粒子を洗浄液等の液相に分散させ、液相から磁性体粒子を分離・回収する工程が繰り返し行われる。その後、磁性体粒子が溶出液中に分散されることにより、磁性体粒子に固定されていた目的物質が溶出液中に遊離し、溶出液中の目的物質が回収される。磁性体粒子を用いることにより、磁石による目的物質の回収が可能となり、遠心操作が不要となるため、化学抽出・精製の自動化に有利な特長を持つ。
目的物質を選択的に固定可能な磁性体粒子は、分離・精製キットの一部として市販されている。キットは複数の試薬が別々の容器に入れられており、使用時はユーザーがピペット等で試薬を分取、分注する。これらのピペット操作や磁場操作を自動化するための装置も市販されている(例えば、特許文献1)。一方、ピペット操作に代えて、溶解/固定液、洗浄液、溶出液等の水系液体層と、ゲル状媒体層とが交互に重層された管状デバイスを用い、このデバイス内で磁性体粒子を管の長手方向に沿って移動させることにより、目的物質を分離・精製する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。このような管状デバイスを用いる場合は、密閉系で一連の操作を実施できるため、開放系で行われるピペット操作に比べて、コンタミネーションの危険性が低減される。
WO97/44671号国際公開パンフレット WO2012/086243号国際公開パンフレット
ピペット操作、およびゲルが封入されたデバイスを用いた操作のいずれにおいても、磁性体粒子を用いた分離・精製では、磁性体粒子表面への目的物質の固定、磁性体粒子表面に付着した夾雑物等の洗浄除去、および目的物質の溶出の各段階において、磁性体粒子の表面と液体とを十分に接触させるために、液体中に磁性体粒子を分散させる必要がある。しかしながら、磁性体粒子が装填された容器に磁石を近付けると、磁性体粒子が凝集体を形成するため、液体中への分散が困難となる傾向がある。
特に、界面活性剤やカオトロピック塩等を含む細胞溶解液を用いて生体由来試料中の細胞を溶解させ、液体中に溶出した核酸等の目的物質を磁性体粒子の表面に固定する場合、液体中には、目的物質の他に、多種多様な夾雑物が含まれている。これらの夾雑物が磁性体粒子に付着すると、磁性体粒子の表面がマスキングされるため、目的物質の固定が妨げられ、目的物質の回収率の低下を招く。例えば、血液からの核酸抽出では、細胞由来の夾雑タンパク質が磁性体粒子の表面に付着して、磁性体粒子への核酸の固定の妨げとなる場合がある。
また、表面に付着した夾雑タンパク質等を介して磁性体粒子が強固に凝集すると、ピペット操作等の液流による液体中への粒子の分散が困難となり、目的物質の純度や回収率の低下を招く傾向がある。このような磁性体粒子の凝集に伴う不具合を防止するための方法として、一般には、細胞溶解液等の液体と磁性体粒子とを接触させる前に、プロテアーゼK等のタンパク質分解酵素を用い、核酸と結合している核タンパク質の分解を行って磁性体粒子の凝集を防止する必要がある。また、酵素処理を行わない場合は、ピペット操作やボルテックス等による撹拌に長時間を要する。そのため、磁性体粒子を用いた分離・精製操作の簡便性が失われてしまう。
上記に鑑み、本発明は、磁性体粒子を用いた目的物質の分離・精製において、簡易な操作により、高効率で液体中に磁性体粒子を分散させるための、磁性体粒子の操作方法の提供を目的とする。
本発明者らが検討の結果、容器の外壁面の近傍で磁石を移動させることにより、磁性体粒子に運動エネルギーが与えられ、液体中で磁性体粒子を効率的に分散できることを見出した。本発明の好ましい形態では、容器の外壁面の近傍で磁石を移動させながら、容器に振動を与えることにより、液体中で磁性体粒子を分散させる。例えば、容器の外壁面に設けられた凹凸構造に沿って磁石を移動させることにより、容器に振動を与えることができる。
一実施形態では、弾性体に連結された磁石を容器外壁面の凹凸構造に当接させながら往復運動させることにより、容器に振動が与えられる。この方法は、磁性体粒子の操作を自動化する際に特に有用である。
本発明には、目的物質を選択的に固定可能な磁性体粒子が好ましく用いられる。磁性体粒子に選択的に固定され得る目的物質としては、核酸、タンパク質、糖、脂質、抗体、受容体、抗原、リガンド、細胞等の生体由来物質が挙げられる。例えば、目的物質が含まれている液体中で磁性体粒子を分散させることにより、磁性体粒子の表面に目的物質を選択的に固定することができる。本発明の一形態では、磁性体粒子を分散させる液体が、カオトロピック物質や界面活性剤等の細胞を溶解可能な成分を含む。
本発明の一形態では、上記方法により磁性体粒子の表面に目的物質が選択的に固定された後、目的物質が固定された磁性体粒子が、溶出液に接触させられる。これにより、目的物質を溶出液中に溶出させ、目的物質を回収できる。このような操作は、容器内にゲル状媒体層と液体層とが交互に配置されたデバイス内で行ってもよい。このデバイス内では、磁場操作により、液体層内の磁性体粒子が、ゲル状媒体内へ移動させられ、その後他の液体層内へ移動させられ、当該液体層内で分散させられる。例えば、液体層が洗浄液である場合は、磁性体粒子の表面に付着夾雑成分等を洗浄除去できる。液体層が溶出液である場合は、磁性体粒子の表面に固定された核酸等の目的物質を遊離回収できる。
さらに、本発明は、上記の磁性体粒子操作を行うためのデバイス、および当該デバイスを作成するためのキットに関する。
本発明の方法によれば、磁場操作によって磁性体粒子に運動エネルギーを与えることによって、液体中で磁性体粒子を効率的に分散させることができる。そのため、液体中に含まれる核酸等の目的物質を、効率的に磁性体粒子の表面に固定できる。特に、容器の外壁面の近傍で磁石を移動させながら、容器に振動を与えることにより、液体中での磁性体粒子の分散が促進され、操作効率を高めることができる。
磁性体粒子の操作方法の概要を模式的に示す図である。 容器を振動させながら磁性体粒子の操作を行うための磁性体粒子操作用デバイスの実施形態を模式的に表す図である。 核酸を分離・精製する実施形態の各工程を模式的に示す図である。 核酸を分離・精製する実施形態の各工程を模式的に示す図である。
図1は、磁性体粒子の操作方法を説明するための概念図である。本発明は、容器内に装填された液体中で、磁性体粒子を分散させるための磁性体粒子の操作方法に関する。図1(A)において、容器10内には、液体31および磁性体粒子71が含まれている。磁性体粒子71としては、例えば、所定の目的物質をその表面に固定可能な粒子が用いられる。
目的物質としては、例えば核酸、タンパク質、糖、脂質、抗体、受容体、抗原、リガンド、細胞等の生体由来物質が挙げられる。液体中で磁性体粒子を分散させることにより、磁性体粒子表面への目的物質の固定や、磁性体粒子表面に固定された目的物質の溶出液中への遊離、磁性体粒子表面に付着した夾雑物の洗浄除去等の操作を行うことができる。
[容器]
容器10は、外部からの磁場操作によって容器内の磁性体粒子を移動可能であり、液体を保持できるものであれば、その材質や形状は特に限定されない。例えば、試験管等の管状の容器や、エッペンドルチューブ等の錐形状の容器を用いることができる。また、内径1〜2mm程度、長さ50mm〜200mm程度の直管状構造体(キャピラリー)や、幅1〜2mm程度、深さ0.5〜1mm程度、長さ50mm〜200mm程度の直線状溝が形成された平面板材の上面に、別の平面板材を貼り合わせた構造体等を用いることもできる。なお、容器の形状は管状や面状に限定されず、粒子の移動経路が、十字あるいはT字等の分岐を有する構造であってもよい。
本発明では、磁場操作によって、容器10内の磁性体粒子71を移動可能であるため、試料投入後の容器を密閉系とすることができる。容器を密閉系とすれば、外部からのコンタミネーションを防止できる。そのため、RNA等の分解しやすい物質を磁性体粒子に固定して操作する場合に、特に有用である。容器を密閉系とする場合、容器の開口部を熱融着する方法や、適宜の封止手段を用いて封止することができる。操作後の粒子や水系液体を容器外に取り出す必要がある場合は、樹脂栓等を用いて、取り外し可能に開口部を封止することが好ましい。
容器10の材質としては、外部からの磁場を遮蔽しないものであれば特に限定されず、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、テトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン等の樹脂材料が挙げられる。これらの素材の他、セラミック、ガラス、シリコーン、金属等も用いられ得る。容器内壁面の撥水性を高めるために、フッ素系樹脂やシリコーン等によるコーティングが行われてもよい。
磁性体粒子の操作中あるいは操作後に、吸光度、蛍光、化学発光、生物発光、屈折率変化等の光学的測定が行われる場合や、光照射が行われる場合は、光透過性を有する容器が好ましく用いられる。また、容器が光透過性であれば、容器内の粒子操作の状況を目視確認できることからも好ましい。一方、液体や磁性体粒子等を遮光する必要がある場合は、光透過性を有していない金属等の容器が好ましく用いられる。使用目的等に応じて、光透過部分と遮光部分とを有する容器を用いることもできる。
[磁性体粒子]
磁性体粒子71は、液体中の目的物質を選択的に固定可能な粒子である。粒子表面への目的物質の固定方法は特に限定されず、物理固定、化学固定等の各種公知の固定化メカニズムが適用可能である。例えば、ファンデルワールス力、水素結合、疎水相互作用、イオン間相互作用、π−πスタッキング等の種々の分子間力により、粒子の表面あるいは内部に目的物質が固定される。核酸、タンパク質、糖、脂質、抗体、受容体、抗原、リガンド、細胞等の目的物質は、分子認識等により、粒子表面に固定されてもよい。例えば、目的物質が核酸である場合は、シリカコーティングされた磁性体粒子を用いることにより、粒子表面に核酸を選択的に固定できる。また、目的物質が、抗体(例えば、標識抗体)、受容体、抗原およびリガンド等である場合、粒子表面のアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、アビジン、ビオチン、ジゴキシゲニン、プロテインA、プロテインG等により、目的物質を粒子表面に選択的に固定できる。
磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属、ならびにそれらの化合物、酸化物、および合金等が挙げられる。具体的には、マグネタイト(Fe)、ヘマタイト(Fe、またはαFe)、マグヘマイト(γFe)、チタノマグネタイト(xFeTiO・(1−x)Fe、イルメノヘマタイト(xFeTiO・(1−x)Fe、ピロタイト(Fe1−xS(x=0〜0.13)‥Fe(x〜0.13))、グレイガイト(Fe)、ゲータイト(αFeOOH)、酸化クロム(CrO)、パーマロイ、アルコニ磁石、ステンレス、サマリウム磁石、ネオジム磁石、バリウム磁石が挙げられる。
液体中での粒子操作を容易とする観点から、磁性体粒子の粒径は0.1〜20μm程度が好ましく、0.5〜10μm程度がより好ましい。磁性体粒子の形状は、粒径が揃った球形が望ましいが、粒子操作が可能である限りにおいて、不規則な形状で、ある程度の粒径分布を持っていてもよい。磁性体粒子の構成成分は単一物質でもよく、複数の成分からなるものでも良い。
磁性体粒子としては、上記磁性体の表面に、目的物質を選択的に固定させるための物質が付着したもの、あるいは当該物質で被覆されたものが好適に用いられる。このような磁性体粒子は、例えば、ライフテクノロジーズから販売されているDynabeads(登録商標)や、東洋紡から販売されているMagExtractor(登録商標)等の市販品を用いることもできる。
[液体]
容器内に装填された液体は、磁性体粒子表面への目的物質の固定や、目的物質の抽出、精製、反応、分離、検出、分析等の化学操作の場を提供する。液体としては、水溶液や、水と有機溶媒の混合溶液等の水系液体が好ましく用いられる。液体は、これら化学操作のための単なる媒体として機能し得る他に、化学操作に直接関与するか、あるいは当該操作に関与する化合物を成分として含んでいてもよい。液体に含まれる物質としては、磁性体粒子の表面に固定されるべき目的物質や、磁性体粒子表面に固定された目的物質と反応する物質、当該反応によって磁性体粒子の表面に固定された物質と更に反応する物質、反応試薬、蛍光物質、各種の緩衝剤、界面活性剤、塩類、およびその他の各種補助剤、並びに、アルコール等の有機溶剤等を例示することができる。水系液体は、水、水溶液、水懸濁液等の任意の態様で提供され得る。なお、以下では核酸等の目的物質を含む液体を「液体試料」と記載する場合がある。
液体試料中に含まれる目的物質を磁性体粒子の表面に固定する場合、液体中には、磁性体粒子の表面に固定されるべき目的物質の他に、多種多様な夾雑物が含まれている。例えば、目的物質が核酸である場合、液体試料中には、動植物組織、体液、排泄物等の生体試料、細胞、原虫、真菌、細菌、ウィルス等の核酸包含体を含む。体液には血液、髄液、唾液、乳等が含まれ、排泄物には糞便、尿、汗等が含まれる。また、これらの複数の組合せを用いることもできる。細胞には血液中の白血球、血小板や、口腔細胞等の粘膜細胞の剥離細胞、唾液中白血球が含まれ、これらの組合せを用いることもできる。
目的物質である核酸を含む液体試料は、例えば、細胞懸濁液、ホモジネート、細胞溶解液との混合液等の態様で調製してもよい。例えば、血液等の生体由来試料から核酸の分離・精製を行う場合、容器内の液体試料は、血液等の生体由来試料と、そこから目的物質を抽出するための細胞溶解液(核酸抽出液)との混合物である。
細胞溶解液は、カオトロピック物質や界面活性剤等の細胞を溶解可能な成分を含む。核酸の抽出を行うために用いられる細胞溶解液(核酸抽出液)としては、カオトロピック物質、EDTA等のキレート剤、トリス塩酸等を含有する緩衝液が挙げられる。また、細胞溶解液には、TritonX−100等の界面活性剤を含めることもできる。カオトロピック物質としては、グアニジン塩酸塩、グアニジンイソチアン酸塩、ヨウ化カリウム、尿素等が挙げられる。カオトロピック塩は強力な蛋白変性剤で細胞のタンパク質を溶解させ細胞核内の核酸を液中に遊離させる働きがある上、核酸分解酵素の働きを抑える効果がある。また、プロテアーゼK等のタンパク質分解酵素を用い、核酸と結合している核タンパク質の分解を行うことにより、核酸の純度および回収率を向上し得る。細胞溶解液は、上記の他に、各種の緩衝剤、塩類、およびその他の各種補助剤、並びに、アルコール等の有機溶剤等を含んでいてもよい。
[磁場操作による磁性体粒子の分散]
以下では、図1(A)〜(C)を参照しながら、液体試料31中で磁性体粒子71を分散させ、磁性体粒子71の表面に目的物質として核酸を固定させる例を中心に説明する。まず、図1(A)に示すように、容器10内に、液体試料31および磁性体粒子71が装填される。これらの装填順序は特に制限されない。例えば、予め容器10内に細胞溶解液等の溶液を装填しておき、そこに血液等を添加した後、磁性体粒子を添加することができる。先に容器10内に血液等を装填し、そこに細胞溶解液および磁性体粒子を順次あるいは同時に添加することもできる。また、容器10内に細胞溶解液とともに、磁性粒子を装填しておき、そこに血液等を添加してもよい。予め容器10内に細胞溶解液とともに、磁性体粒子を装填したものをキットとして準備しておくこともできる。液体試料および磁性体粒子を容器10内に装填した後は、容器10の上部を蓋で塞ぎ、デバイスを密閉系とすることにより、外部からの汚染を防止することが好ましい。
図1(B)に示すように、容器の外壁面に磁石9を近付けると、磁石9周辺の容器内壁面に、磁性体粒子71が引き寄せられる。磁場操作には、永久磁石(例えばフェライト磁石やネオジム磁石)や電磁石等の磁力源を用いることができる。
液体試料31中には、変性タンパク質等の夾雑物が含まれている。磁性体粒子の表面が夾雑物によりマスクされると磁性体粒子同士を付着させる作用を有するため、容器の内壁面に引き寄せられた磁性体粒子71が凝集体を形成する場合がある。磁性体粒子が凝集体を形成すると、液体試料中の核酸と磁性体粒子との接触機会が減少し、目的物質の粒子表面への固定が阻害される。磁性体粒子表面に目的物質を固定するためには、凝集した磁性体粒子を分散させる必要がある。
容器10の外壁面の近傍で磁石を移動させることにより、容器内の磁束密度が変化するために、磁性体粒子に運動エネルギーが与えられる。磁石の移動方法としては、往復運動を含む直線移動、回転運動、その他不規則な軌道を描く運動等が挙げられる。なお、磁性体粒子の操作においては、容器と磁石との位置を相対的に変化させればよく、磁石の位置を固定した状態で容器を移動させてもよい。
運動エネルギーが与えられた磁性体粒子71は、磁石9に引き寄せられながら液体中を移動するため、容器10の内壁面との衝突が頻繁に生じる。容器外壁面の近傍で磁石を移動させることにより、磁性体粒子に運動エネルギーが与えられることに加えて、磁性体粒子が容器の内壁面に衝突することにより、磁性体粒子の凝集体が粉砕されやすくなり、磁性体粒子が、液体中で迅速に分散されると推定される。
このように、本発明の方法によれば、液体試料31中の変性タンパク質等を介して磁性体粒子が凝集体を形成している場合でも、磁性体粒子を分散させることができる。凝集体を形成していた磁性体粒子が運動エネルギーを伴って液体試料中で分散されると、磁性体粒子表面に付着していた夾雑物が脱着するため、液体試料中に遊離している核酸を、選択的に磁性体粒子の表面に固定することができる。
一般に、磁性体粒子を用いた目的物質の分離・精製においては、変性タンパク質による磁性体粒子の凝集を防止するために、試料と磁性体粒子とを接触させる前に、Proteinase K等のタンパク質分解酵素を試料に添加し、50℃〜70℃の加熱下で酵素処理が行われる。酵素処理により核酸と結合するタンパク質が分解除去された後、エタノール等のアルコールを添加して、液体試料の疎水性を高めた上で、液体試料中に磁性体粒子を添加することにより、磁性体粒子の凝集が抑制される。なお、アルコールは酵素反応を阻害するため、これらの操作を行うためには、加熱条件下で酵素処理を行った後に、アルコールを添加する必要がある。また、酵素、磁性体粒子およびアルコールを、それぞれ別の容器内で保管するか、あるいは容器内に設けられた隔壁等により隔離しておき、分離・精製操作を行う際に、試料に順次添加する必要がある。そのため、磁性体粒子表面へ目的物質を固定するための操作が複雑化したり、デバイスに隔壁等を設けるための複雑な加工が必要となりデバイスの製造コスト増大を招く。
これに対して、本発明の方法によれば、磁性体粒子が凝集体を形成している場合でも、磁場操作を行うことにより、磁性体粒子に運動エネルギーを与えて、磁性体粒子の凝集状態を解き、液体試料中に分散させることができる。この方法によれば、磁性体粒子を添加する前の酵素処理を省略できる。酵素処理を省略できるために、分離・精製操作に要するコストを低減できる。また、酵素の添加を必要としないため、試料の追加や分注の操作が不要となり、操作を単純化できるとともに、閉鎖系で操作を行い得るため、コンタミネーションの危険性を低減できる。ピペット操作による分散は開放系で行う必要があるのに対して、本発明の方法は、閉鎖系で実施可能であることからも、コンタミネーションの危険性を低減できる。さらには、容器に対して磁石を相対的に移動させる単純な動作で、液体中への磁性体粒子の分散を行い得るため、自動化も容易になし得る。このように、閉鎖系を維持して、コンタミネーションを低減するためには、液体等の追加操作の回数が少ないことが好ましい。そのため、本発明の好ましい形態では、酵素処理が実施されず、液体試料31には酵素が添加されない(ただし、生体由来試料に元々含まれている酵素等が液体試料中に共存していてもよい)。
磁性体粒子を効率的に分散させるためには、磁石9を、容器10の外壁面に沿って往復運動させることが好ましい。特に、本発明においては、容器の外壁面の近傍で磁石を移動させながら、容器に振動を与えることが好ましい。容器を振動させながら磁場操作を行うことにより、磁性体粒子の分散が促進される傾向がある。これは、磁性体粒子の運動エネルギーが増加することや、磁性体粒子と容器の内壁面との衝突頻度が増加すること等に起因すると考えられる。
容器の外壁面の近傍で磁石を移動させながら容器を振動させる方法は特に限定されない。例えばボルテックスミキサー等の振動体と容器とを接触させながら磁場操作を行うことができる。また、図2に示すように、外壁面に凹凸構造13を有する容器11を用い、この容器の凹凸構造に沿って磁石9を移動させる方法が挙げられる。すなわち、容器外壁面の凹凸構造13に磁石9を圧接させながら磁石9を管の長手方向(図2(A),(B)の上下方向)に移動させれば、移動方向と交差する方向に容器を振動させることができる。この方法によれば、振動を発生させるための手段を別途用意する必要がないため、簡便かつ効率的に液体中に磁性体粒子を分散させることができる。
容器外壁面の凹凸構造13は、容器11の外壁面に沿って連続して複数の凹凸を有することが好ましい。磁石の移動に伴って容器を振動させることが可能であれば、凹凸の大きさは特に限定されない。凹凸の高さは、例えば、0.5mm〜10mm程度に設定される。容器の外壁面に凹凸構造を設ける方法としては、容器本体と一体で凹凸構造成型する方法や、容器の表面に適宜の接着手段を介して凹凸構造体を取り付ける方法等が挙げられる。
操作者が磁石9を把持しながら、容器外壁面の凹凸に沿って磁石9を移動させることにより、磁石を移動させながら、容器11に振動を与えることができる。また、磁石の動きを容器の凹凸構造に追従させるために、図2(B)に模式的に示すように、磁石と弾性体とが連結された追従機構を用いることもできる。図2(B)に示す追従機構では、枠体21内に弾性体としてバネ25が設けられており、枠体21内に固定された固定部材27にバネ25の一端が連結されている。バネ25の他端は、可動部材29に連結されており、可動部材29に磁石9が嵌合固定されることにより、磁石9とバネ25とが連結されている。また、磁石9にはガイドバー28が連結されており、ガイドバー28は、固定部材27の中央部に設けられた挿通孔27a内に挿通されており、可動部材29,磁石9およびガイドバー28は、枠体21内で長手方向(図の左右方向)に移動可能に構成されている。この追従機構20の枠体21を把持した状態で容器11の外壁面に沿って追従機構を上下移動させれば、バネ25の弾性力により、凹凸構造13に磁石9を圧接させた状態を維持しながら、磁石を上下方向に移動させることができる。そのため、より効率的に容器を振動させ、磁性体粒子を分散させることができる。
特に、磁性体粒子の操作を自動化する際は、磁石と弾性体とが連結された追従機構を用いることが好ましい。例えば、カムやクランクを介して、ステッピングモータ等の回転機構と追従機構とを連結することにより、容器外壁面の凹凸構造に圧接させながら、磁石を往復運動させ、磁性体粒子を分散させることができる。この際、容器は適宜の固定治具を用いて固定しておくことが好ましい。なお、容器を効率的に振動させるために、緩衝材等の弾性部材を介して容器が固定されることが好ましい。
なお、図2(B)に示す追従機構20では、凹凸構造13に磁石9が圧接するように、磁石9にバネ25が連結されているが、磁石に連結される弾性体は、圧接力以外の力を付与するものでもよい。例えば、磁石と板バネとを連結した追従機構を用いて、凹凸構造の凸部に磁石を衝突させながら移動させることにより、容器を振動させることもできる。
[溶解/固定後の操作]
目的物質が固定された磁性体粒子71は、液体試料31から分離され、別の工程に供される。例えば、核酸の分離・精製では、磁性体粒子71を洗浄液中で洗浄して表面に付着した夾雑物を洗浄除去した後、溶出液中で磁性体粒子に固定されていた核酸を遊離溶出させることにより、目的物質である核酸を回収できる。回収された核酸は、必要に応じて濃縮や乾固等の操作を行った後、分析や反応等に供することができる。
洗浄や溶出の操作は、公知の方法で実施できる。例えば、容器に磁石を近付けて磁性体粒子を磁石付近の容器内に固定した状態で、容器内の液体を除去した後、新たな液体(洗浄液や溶出液)を容器内に投入し、液体中で磁性体粒子を分散させることにより、洗浄操作や溶出操作を行うことができる。液体中での磁性体粒子の分散は、ピペット操作、ボルテックス等の撹拌操作により行い得る。洗浄や溶出の操作においても、容器の外壁面の近傍で磁石を移動させることにより、磁性体粒子に運動エネルギーを与えて磁性体粒子を分散させてもよい。
上記では、磁性体粒子を用いて、核酸の分離・精製を行う例を中心に示したが、磁性体粒子の表面に固定される目的物質は核酸に限定されず、本発明は、核酸以外の各種の目的物質に対しても適用可能である。例えば、protein Gやprotein A等の抗体を選択的に固定化可能な分子で表面がコートされた磁性体粒子を用い、上記と同様の磁場操作を行うことにより、目的物質である抗体を、磁性体粒子の表面に選択的に固定することができる。抗体が固定化された磁性体粒子を、被検抗原を含む液体や酵素標識第二次抗体と順次接触させた後、磁性体粒子表面に固定された第二次抗体に結合している酵素と発色物質との発色反応をモニターすることにより、酵素免疫固定測定(ELISA; Enzyme-linked immuno-sorbent assay)を行うことができる。
このように、目的物質の種類や、目的とする操作に応じて、デバイス内に装填される液体の種類を変更すれば、本発明は、目的物質の抽出、精製、分離のみならず、各種の反応、検出、定性・定量分析等にも応用できる。
[ゲル状媒体が封入されたデバイスを用いた操作]
本発明の方法は、前述の特許文献2(WO2012/086243)に開示されているような、水系液体層と、ゲル状媒体層とが交互に重層されたデバイスを用いた目的物質の分離・精製にも適用できる。このようなデバイスを用いる場合は、密閉系で一連の操作を実施できるため、開放系で行われるピペット操作に比べて、コンタミネーションの危険性を低減できる。
以下では、図3を参照しながら、水系液体層と、ゲル状媒体層とが交互に重層されたデバイスを用いて、核酸の分離・精製を行う例について説明する。図3−1(A)に示す管状デバイス150では、磁性体粒子171を移動させる方向に沿って、核酸抽出液130、第一の洗浄液132、第二の洗浄液133、および核酸溶出液134が、それぞれの間にゲル状媒体層121,122,123を介して、管状の容器110内に装填されている。
ゲル状媒体層121,122,123を形成するゲル状媒体は、粒子操作前においてゲル状、若しくはペースト状であればよい。ゲル状媒体は、それに隣接する液体層の液体に不溶性または難溶性であり、化学的に不活性な物質であることが好ましい。液体層が水系液体からなる場合、ゲル状媒体は、水系液体に不溶または難溶の油性ゲルであることが好ましい。また、ゲル状媒体層は、化学的に不活性な物質であることが好ましい。ここで、液体に不溶性または難溶性であるとは、25℃における液体に対する溶解度が概ね100ppm以下であることを意味する。化学的に不活性な物質とは、液体層との接触や磁性体粒子の操作(すなわち、ゲル状媒体中で磁性体粒子を移動させる操作)において、液体層、磁性体粒子や磁性体粒子に固定された物質に、化学的な影響を及ぼさない物質を指す。
ゲル状媒体の材料や組成等は、特に限定されない。ゲル状媒体は、例えば、液体油脂、エステル油、炭化水素油、シリコーン油等の非水溶性または難水溶性の液体物質に、ゲル化剤を添加してゲル化することにより形成される。ゲル化剤によって形成されるゲル(物理ゲル)は、水素結合、ファンデルワールス力、疎水的相互作用、静電的吸引力等の弱い分子間結合力により、三次元ネットワークを形成しており、熱等の外部刺激により可逆的にゾル・ゲル転移する。ゲル化剤としては、ヒドロキシ脂肪酸、デキストリン脂肪酸エステル、およびグリセリン脂肪酸エステル等が用いられる。ゲル化剤の使用量は、非水溶性または難水溶性の液体物質100重量部に対して、例えば0.1〜5重量部の範囲で、ゲルの物理特性等を勘案して適宜に決定される。
ゲル化の方法は特に限定されない。例えば、非水溶性または難水溶性の液体物質を加熱し、加熱された当該液体物質にゲル化剤を添加し、ゲル化剤を完全に溶解させた後、ゾル・ゲル転移温度以下に冷却することで、物理ゲルが形成される。加熱温度は、液体物質およびゲル化剤の物性を考慮して適宜に決定される。
また、ヒドロゲル材料(例えば、ゼラチン、コラーゲン、デンプン、ペクチン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、アルギン酸、あるいはこれらの誘導体等)を、液体に平衡膨潤させることによって調製されたものを、ゲル状媒体として用いることもできる。ヒドロゲルとしては、ヒドロゲル材料を化学架橋したものや、ゲル化剤(例えばリチウム、カリウム、マグネシウム等のアルカリ金属・アルカリ土類金属の塩、或いはチタン、金、銀、白金等の遷移金属の塩、さらには、シリカ、カーボン、アルミナ化合物等)によってゲル化したもの等を用いることもできる。
容器110内へのゲル状媒体および液体の装填は、適宜の方法により行い得る。管状の容器が用いられる場合、装填に先立って容器の一端の開口が封止され、他端の開口部からゲル状媒体および水系液体が順次装填されることが好ましい。内径が1〜2mm程度のキャピラリーのような小さな構造体へ、ゲル状媒体を装填する場合、例えば、ルアーロック式シリンジに金属製注射針を装着して、キャピラリー内の所定位置へゲル状媒体を押し出す方法により、装填が行われる。
容器内に装填されるゲル状媒体および液体の容量は、操作対象となる磁性体粒子の量や、操作の種類等に応じて適宜に設定され得る。容器内に複数のゲル状媒体層や液体層が設けられる場合、各層の容量は同一でも異なっていてもよい。各層の厚みも適宜に設定され得るが、操作性等を考慮した場合、層厚みは、例えば、2mm〜20mm程度が好ましい。
核酸の抽出を行うために用いられる核酸抽出液130としては、前述の細胞溶解液(例えば、カオトロピック物質、EDTA等のキレート剤、トリス塩酸等を含有する緩衝液)が挙げられる。容器110の最上部には、核酸抽出液130に加えて、磁性体粒子171が予め装填されている。磁性体粒子171は、核酸を選択的に固定可能なものであり、例えば、シリカコートされた磁性体粒子が用いられる。
液体層とゲル状媒体層とが交互に重層されたデバイス150の上部の開口部から、核酸抽出液130中に、血液等の核酸を含む試料が添加される。これにより、核酸抽出液と核酸を含む溶液(液体試料)131が調製される。液体試料131の容器側面に磁石9を近付けると、磁石9周辺の容器内壁面に、磁性体粒子171が引き寄せられる(図3−1(B))。磁石9を容器110の外壁面に沿って往復運動させることにより、液体試料131中に磁性体粒子171が分散される(図3−1(C))。この操作によって、液体試料中の核酸が、磁性体粒子の表面に選択的に固定される。容器110の外壁面に凹凸構造113が形成されている場合、この凹凸構造に沿って磁石を移動させることにより、容器110を振動させ、液体試料中への磁性体粒子の分散を効率化することができる。
磁石9を、容器外壁面に沿って移動させることにより、磁性体粒子171は、ゲル状媒体層121内へ移動させられる(図3−2(D))。磁性体粒子171がゲル状媒体層121内へ進入する際に、磁性体粒子171の周囲に液滴として物理的に付着している液体の大半は、粒子表面から脱離して液体層131の液分に残る。一方、磁性体粒子171は、粒子に固定された目的物質を保持したまま、ゲル状媒体層121内を容易に移動できる。
ゲル状媒体層121内への磁性体粒子171の進入および移動により、ゲル状媒体が穿孔されるが、チクソトロピックな性質により、ゲルは自己修復する。磁場操作により、磁性体粒子がゲル内を移動する際、剪断力が付与されると、チクソトロピックな性質により、ゲルは局所的に流動化(粘性化)する。そのため、磁性体粒子は、流動化した部分を穿孔しながら、ゲル内を容易に移動できる。磁性体粒子が通過した後、剪断力から解放されたゲルは、速やかに元の弾性状態に復元する。そのため、磁性体粒子が通過した部分に貫通孔が形成されず、磁性体粒子の穿孔部分を介して、液体がゲル内へ流入することは、ほとんど生じない。なお、磁石9の移動速度が過度に大きいと、ゲルが物理的に破壊され、復元力が失われる場合がある。そのため、磁石の移動速度は、0.1〜5mm/秒程度とすることが好ましい。
上記のようなゲルのチクソトロピックな性質による復元力が、磁性体粒子171に付随する液体を搾り取る作用を奏する。そのため、磁性体粒子171が凝集体となり、その中に液滴が取り込まれた状態でゲル状媒体層121内へ移動した場合でも、ゲルの復元力によって、磁性体粒子と液滴とが分離され得る。
ゲル状媒体層121内を通過した磁性体粒子171は、磁場操作により、ゲル状媒体層121から液体層132へと移動させられる。上述のように、ゲル状媒体層121の磁性体粒子が通過した部分には貫通孔が形成されないため、液体層132への液体試料131の流入はほとんど生じない。
液体層132は、例えば洗浄液である。洗浄液は、核酸が磁性体粒子の表面に固定された状態を保持したまま、磁性体粒子に付着した核酸以外の成分(例えばタンパク質、糖質等)や、核酸抽出等の処理に用いられた試薬等を洗浄液中に遊離させ得るものであればよい。洗浄液としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム等の高塩濃度水溶液、エタノール、イソプロパノール等のアルコール水溶液等が挙げられる。なお、液体層133も洗浄液であってもよい。液体層132,133がいずれも洗浄液である場合、これらの洗浄液の組成は、同一でもよく異なっていてもよい。
液体層132の側面に沿って磁石9を移動させると、磁性体粒子171も、磁石9の移動に伴って液体層内を移動する。この際、磁石を往復運動させることにより、凝集体を形成していた磁性体粒子171が、液体層132内で分散される(図2−2(E))。液体試料131は、変性タンパク質等の大量の夾雑物を含むのに対して、液体層(洗浄液)132,133、および液体層(溶出液)134に含まれる夾雑物は少量(磁性体粒子に付随して持ち込まれた夾雑物のみ)である。そのため、これらの液体中では、磁性体粒子表面に目的物質を固定する場合に比して、磁性体粒子の分散は容易である。なお、洗浄や溶出の際にも、容器を振動させながら磁石を移動させることにより、磁性体粒子の分散を促進してもよい。
その後、磁石9を液体層132の側面から、ゲル状媒体層122の側面に移動させる(図3−2(F))。さらに、磁石9を液体層133の側面へ移動させた後、磁石を往復運動させることにより、磁性体粒子を十分に分散させ、液体層133中で磁性体粒子の洗浄が行われる(図3−2(G))。
なお、図3では、容器110内に、ゲル状媒体層122を介して、洗浄液として2層の液体層132,133が装填された例が示されているが、洗浄液は1層のみでもよく、3種以上が用いられてもよい。また、分離の目的や、用途における不所望の阻害が生じない範囲において、洗浄を省略することもできる。
磁石9を第二の洗浄液133の側面から、ゲル状媒体層123の側面に移動させ、磁性体粒子171を、ゲル状媒体層123内へ移動させる(図3−2(H))。さらに、磁石9を、核酸溶出液134の側面に移動させ、磁性体粒子171を、核酸溶出液134内へ移動させる。
核酸溶出液としては、水または低濃度の塩を含む緩衝液を用いることができる。具体的には、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、蒸留水等を用いることができる。中でも、pH7〜9に調整された5〜20mMトリス緩衝液を用いることが一般的である。核酸が固定された粒子が核酸溶出液中に移動することにより、磁性体粒子の表面に固定された核酸を遊離させることができる。核酸を遊離させる具体的方法は、上記溶出液中で粒子を分散させる方法が挙げられる。例えば、核酸溶出液134の側面に沿って磁石9を移動させると、磁性体粒子171に運動エネルギーが与えられ、磁性体粒子171が核酸溶出液内で分散される(図3−2(I))。これにより、磁性体粒子171の表面に固定されていた核酸が効率的に脱着され、核酸溶出液内に遊離するために、核酸の回収率が高められる。
その後、必要に応じて、図3−2(J)に示すように、磁石9を容器の外壁面に沿ってゲル状媒体層123側へ移動させ、磁性体粒子171をゲル状媒体層123内へ再び進入させる。この操作によって、核酸溶出液134から磁性体粒子171が除去されるため、核酸溶出液の回収が容易となる。
上記のように、液体層とゲル状媒体層とが交互に重層されたデバイスを用いる場合、液体層は、ゲル状媒体層間やゲル状媒体層と容器との間に保持されているため、密閉系を保ったままで外部からアクセスできない。この実施形態では、密閉系を保持したままで、液体層中に磁性体粒子を分散できるため、ピペット操作により磁性体粒子を分散させる場合に比べて、外部からのコンタミネーションを抑制できる。
この実施形態では、ゲル状媒体層中で磁性体粒子を移動させることにより、固液分離が行われる。そのため、ピペット操作により、磁性体粒子と洗浄液や溶出液等の試薬との固液分離を行う場合に比して、より少ない磁性体粒子や試薬量で、目的物質を効率よく分離・回収することが可能となる上に、廃液量も大幅に抑制し得る。また、溶解/固定液(核酸抽出液)に、血液等の試料を添加した後は、容器の外壁面に沿って磁石を移動させるのみの単純な操作で、目的物質の固定から溶出までを行い得るため、操作の自動化も容易になし得る。
[粒子操作用デバイスおよびキット]
容器内に、磁性体粒子と液体とを装填するだけで、図1または図2に示すような、溶解/固定のためのデバイスを作成できる。容器内に装填される液体は、例えば、核酸抽出液等の細胞を溶解可能な液体である。この液体は、磁性体粒子の凝集を防ぐためのアルコール等が添加されたものでもよい。特に、目的物質の溶解/固定の際の酵素処理を省略する場合は、予めデバイス内に核酸抽出液等の液体と磁性体粒子とを共存させた状態でデバイスを提供できるため、操作用デバイスの作製も容易である。
容器とは別に、磁性体粒子および液体等が、独立に提供されてもよい。例えば、容器内に、細胞を溶解可能な液体が装填されたデバイス本体とは別個に、磁性体粒子が単体あるいは液体中に分散された状態で独立に提供されてもよい。この場合、磁性体粒子は、デバイスを作製するためのキットの一構成部材として提供されてもよい。磁性体粒子を液体中に共存させた状態で、キットの構成部材として提供することもできる。
また、図3に示すような液体層とゲル状媒体層とが交互に重層されたデバイスも、容易に作製できる。容器内へのゲル状媒体および液体の装填は、粒子操作の直前に行われてもよく、粒子操作前に十分な時間をおいて行われてもよい。前述のように、ゲル状媒体が液体に不溶または難溶である場合は、装填後に長時間が経過しても、両者の間での反応や吸収はほとんど生じない。
液体層とゲル状媒体層とが交互に重層された磁性体粒子操作用デバイスは、図3−1(A)に示すように、容器内に磁性体粒子171が装填された状態で提供することもできる。デバイス内あるいはキットに含まれる磁性体粒子の量は、対象となる化学操作の種類や、各液体層の容量等に応じて適宜に決定される。例えば、容器として、内径1〜2mm程度の細長い円筒形のキャピラリーが用いられる場合の磁性体粒子の量は、通常、10〜200μg程度の範囲が好適である。
10,11,110 容器
13,113 凹凸構造
20 追従機構
25 バネ(弾性体)
71,171 磁性体粒子
31,131 液体試料
9 磁石
150 核酸抽出用粒子操作デバイス
121〜123 ゲル状媒体
130 液体層(核酸抽出液)
132,133 液体層(洗浄液)
134 液体層(核酸溶出液)

Claims (14)

  1. 容器内に装填された液体中で、磁性体粒子を分散させるための磁性体粒子の操作方法であって、
    前記磁性体粒子は、目的物質を選択的に固定可能な粒子であり、
    前記容器の外壁面の近傍で磁石を移動させることにより、前記磁性体粒子に運動エネルギーを与えて、液体中で磁性体粒子を分散させる、磁性体粒子の操作方法。
  2. 前記容器の外壁面の近傍で磁石を移動させながら、前記容器に振動を与えることにより、液体中で磁性体粒子を分散させる、請求項1に記載の磁性体粒子の操作方法。
  3. 前記容器は外壁面に凹凸構造を有し、
    前記凹凸構造に沿って磁石を移動させることにより、前記容器に振動が与えられる、請求項2に記載の磁性体粒子の操作方法。
  4. 弾性体に連結された磁石を前記凹凸構造に当接させながら往復運動させることにより、前記容器に振動が与えられる、請求項3に記載の磁性体粒子の操作方法。
  5. 前記磁性体粒子が選択的に固定し得る前記目的物質が、核酸、タンパク質、糖、脂質、抗体、受容体、抗原、リガンドおよび細胞からなる群から選択される1以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁性体粒子の操作方法。
  6. 前記液体中に前記目的物質が含まれており、
    前記液体中で前記磁性体粒子を分散させることにより、前記磁性体粒子に前記目的物質が固定される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁性体粒子の操作方法。
  7. 前記液体が、細胞を溶解可能な成分を含む、請求項6に記載の磁性体粒子の操作方法。
  8. 請求項6または7に記載の方法により、磁性体粒子の表面に目的物質が選択的に固定された後、
    前記目的物質が固定された前記磁性体粒子が、溶出液に接触させられることにより、前記目的物質が前記溶出液中に溶出される、磁性体粒子の操作方法。
  9. 容器内にゲル状媒体層と液体層とが交互に配置されたデバイス内において、
    請求項6または7に記載の方法により、第一の液体層内の目的物質が磁性体粒子の表面に選択的に固定された後、
    磁場操作により、第一の液体層内の磁性体粒子が、ゲル状媒体内へ移動させられるステップ;
    磁場操作により、前記ゲル状媒体層の内部に存在する前記磁性体粒子が、第二の液体層内へ移動させられるステップ;および
    前記磁性体粒子が第二の液体層内で分散させられるステップ
    を有する、磁性体粒子の操作方法。
  10. 外壁面に凹凸構造を有する容器内に、液体と、目的物質を選択的に固定可能な磁性体粒子とが装填されている、磁性体粒子操作用デバイス。
  11. 外壁面に凹凸構造を有する容器内に、ゲル状媒体層と液体層とが交互に配置されており、
    さらに、前記容器内において移動されるべき磁性体粒子が前記容器内に装填されている、磁性体粒子操作用デバイス。
  12. 前記容器内に装填された液体が、細胞を溶解可能な液体である、請求項10または11に記載の磁性体粒子操作用デバイス。
  13. 請求項10〜12のいずれか1項に記載の粒子操作用デバイスを作製するためのキットであって、
    外壁面に凹凸構造を有する容器;液体;および磁性体粒子を含む、磁性体粒子操作デバイス作製用キット。
  14. さらに、ゲル状媒体を含む、請求項13に記載の磁性体粒子操作デバイス作製用キット。

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