JP5751790B2 - 茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置 - Google Patents

茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置 Download PDF

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Description

本発明は、茶葉の摘採や枝幹の剪除等を行う茶刈装置における茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置に関するものであって、特にスムーズに茶刈作業を行い、また刈り取った茶枝葉をスムーズに移送・収容し、更には刈跡においても綺麗な刈取面が得られるようにした新規な移送装置に係るものである。
例えば茶葉の摘採を行う摘採装置としては、比較的大型の乗用型摘採装置(茶刈機)が存在する。このものは、摘採した茶葉の収容部として、大容量のコンテナを搭載したもの、あるいは複数の茶袋を吊り下げ状態に取り付けて収容部を形成する等、大量の茶葉を収容できるようにしたものが多い。
そして、このような摘採装置にあって、本出願人は、刈刃の後方側からダクト内に送り込む背面風の作用によって、刈り取り後の茶枝葉を移送するようにした画期的な移送手法を鋭意研究し、既に特許取得に至っている(例えば特許文献1参照)。
また、乗用型摘採装置にあっては、刈刃の上方に回転体を設け、これによって摘採した茶葉をダクト奥部に送り込む手法も案出されている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2では、通常、回転体としてブラシ(例えばナイロン製のブラシ)が適用されるため、摘採作業中にブラシの構成部材である毛が抜け落ち、製茶加工中の異物となる可能性があった。もちろん、このようなブラシにおいては、毛一本の抜け落ちが、更なる抜け落ちを誘発する要因となり得(耐久性が低い)、ブラシの劣化が加速度的に進むことにもなり、ひいては回転体(ブラシ)を頻繁に交換しなければならないという問題があった。
特開2006−50963号公報(特許第4349999号) 特開2005−143362号公報
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、従来行ってきた刈取作業をより高速で行う際に短い芽(葉)を強制的にかき込む(掃き込む)ことにより、刈り取った茶枝葉をこぼし落とすことなく、確実に刈刃の後方に移送できるようにした新規な茶枝葉の移送装置並びにこれを具えた茶刈装置の開発を試みたものである。
まず請求項1記載の、茶枝葉の移送装置は、
茶葉や枝幹等の茶枝葉を刈り取る刈刃に対し、刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する移送ダクトを具え、この移送ダクト内に刈刃の後方側から背面風を吹き込み、この背面風の風送作用によって刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する装置において、
前記刈刃は、上下に一対の刈刃体を具えて成るバリカンタイプであり、
且つ前記移送ダクトの移送開始部には、当該刈刃により刈り取った茶枝葉を、移送ダクトの奥側に送り込み、背面風に乗せるようにした掃込体を、刈刃の上方に設けるものであり、
また、この掃込体は、刈刃にほぼ沿うように設けられる回転軸と、この回転軸の外周側に突出するように設けられる本体保持部と、この本体保持部に着脱自在に取り付けられる掃込本体とを具えて成るものであり、
更に、前記掃込本体は、弾力性を有する帯状部材に、掃込先端から回転軸に向かって帯状部材の途中まで通気用スリットが形成されることにより、個々の掃込片が切り離し状態に形成されるものの、通気用スリットが形成されていない部位については各々の掃込片が一体につながった状態に形成されることを特徴として成るものである。
また請求項2記載の、茶枝葉の移送装置は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記通気用スリットは、適宜の長さでカットしただけのものではなく、隣り合う掃込片の間に適宜の隙間をあけて形成されることを特徴として成るものである。
また請求項3記載の、茶枝葉の移送装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記通気用スリットは、根元部分が円弧状に形成されることを特徴として成るものである。
また請求項記載の、茶枝葉の移送装置は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、
前記掃込体の本体保持部は、掃込体の回転軸に対しねじり状に形成されることを特徴として成るものである。
また請求項記載の、茶枝葉の移送装置は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、
前記掃込体は、回転軸の中心が、刈刃の先端よりも前方側に突出した状態に設けられるものであり、
これにより掃込体は、刈り取った茶枝葉を移送ダクトの奥側に送り込むスイープ作用に加え、刈取直前において茶枝葉を刈刃に剪断状態に送る作用も具えることを特徴として成るものである。
また請求項記載の、茶枝葉の移送装置は、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、
前記移送ダクトは、ダクト内において背面風を吹き出す吹出口が、刈刃の直後方に形成され、なお且つ、この吹出口の直後方には、移送ダクトの背板に対し上り傾斜角度が40〜70度程度に設定された移送促進板が設けられ、この移送促進板に沿って背面風を流すようにしたことを特徴として成るものである。
また請求項記載の、茶枝葉の移送装置は、前記請求項記載の要件に加え、
前記移送促進板は、掃込本体の掃込先端が描く円軌道に対し、ほぼ外接状態に設けられることを特徴として成るものである。
また請求項記載の茶刈装置は、
茶畝を跨いで走行する走行機体と、
この走行機体に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、
この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部と、
刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉を茶刈機体から収容部まで移送する移送装置とを具え、目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした装置であって、
前記移送装置には、請求項1、2、3、4、5、6または7記載の茶枝葉の移送装置が適用されることを特徴として成るものである。
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1または記載の発明によれば、掃込本体は、長手方向にほぼ一定厚さで連続した帯状部材で形成されながらも、通気用スリットが形成されるため、例えば掃込本体が移送開始部を閉塞するような姿勢(状態)になっても、移送開始部に背面風の負圧吸引作用(吸い込み作用)を確実に及ぼすことができる。また通気用スリットによって個々の掃込片が切り離し状態に形成されるため、個々の掃込片の弾力性を確保しながら、その一方で個々の掃込片の剛性・強度も確保することができる。更に、掃込本体は、通気用スリットのない部位では掃込本体が全体的につながった状態に形成されるため、刈取作業中に掃込片が裂けて千切れてしまうことを極力防止でき、これはその後の製茶加工時における異物混入防止に大きく寄与する。
また掃込体のメンテナンス時等には、掃込本体のみを本体保持部から取り外して作業できるため、洗浄や交換等を含め、このような作業が極めて能率的に行える。また、掃込本体を単独で着脱する形態であるため、一基の茶刈機(掃込体)に複数の掃込本体を装着する場合でも、一種類の掃込本体で全ての個所に取り付けることができ、高い互換性を獲得することができる。
また請求項2または8記載の発明によれば、通気用スリットは、隣り合う掃込片の間に適宜の隙間をあけて形成されるため、エアが吸い込み易くなり、移送開始部での背面風による吸引作用を維持することができる。
また請求項3または8記載の発明によれば、通気用スリットは、根元部分(最奥部)が円弧状に形成されるため、通気用スリットの根元端部に掛かる応力を分散させることができ、掃込片の裂け(亀裂)をより一層防止することができる。
また請求項4または8記載の発明によれば、本体保持部つまり掃込本体が回転軸に対しねじれた状態に装着されるため、掃込本体の回転に伴い、刈り取った茶枝葉を、刈刃に対して斜めに送る(掃き込む)ことができる。このため、例えば刈刃の両サイド部分で刈り取った茶枝葉を、刈刃の後方に向けて掃き込むだけでなく、刈刃中央部(後方側)に寄せるように送り込む(掃き込む)ことができ、当該部位で刈り取られた茶枝葉のこぼれ落ちを効果的に防止することができる。
また請求項5または8記載の発明によれば、掃込体は、刈刃の先端よりも前方側に設けられ、刈取直前における茶葉を刈刃に剪断状態に当てる作用も併せ持つため、例えば刈り取り直前の茶葉が前方に倒れ込んでいても、掃込体が事前にこれを起こし、ほぼ正立状態で刈刃に当て、確実に刈り取ることができる。なお、掃込体が刈取直前の茶葉を刈刃に送る(当てる)作用を有することは、茶刈装置を側面から視て、掃込体(回転軸)を刈刃の先端とほぼ同じ位置に設けた場合でも幾らかはあるかも知れないが、意図的に掃込体を刈刃の先端よりも前方に設け、茶葉の刈り取りを積極的に図る思想は極めて新規な着想と言える。
また請求項6または8記載の発明によれば、刈刃の直後方に、背面風の吹出口と移送促進板とが、この順番で極めて接近した連続状態で設けられるため、刈刃によって刈り取った茶枝葉を、背面風に乗せるまでの掃込体による上昇移送区間(スイープ区間)が極めて短く済み、茶枝葉を確実に上昇移送することができる。換言すれば、本発明では、摘採、掃込体によるスイープ、背面風による風送を、途切れさせることなく一連の動作としてスムーズに連続して実行することができる。
また請求項7または8記載の発明によれば、茶葉を上昇移送する主体要因について、掃込体によるスイープ作用から背面風による移送作用にスムーズに切り替えることができる。すなわち刈刃によって刈り取った茶枝葉を背面風に乗せて上昇移送するまでは、掃込体によるスイープ作用が主たる移送要因となるが、掃込体によるスイープ作用は、主に掃込本体が描く円の接線方向に働き、また背面風は移送促進板の表面に沿って流れることから、背面風による移送も、主に移送促進板の表面に沿って働くと考えられ、このため移送促進板を掃込本体の掃込先端の描く円軌道にほぼ外接するように設けることで、主たる移送要因の変更(掃込体によるスイープ作用からの背面風による移送作用への変更)が極めてスムーズに行える。
本発明の茶刈装置の一例である茶畝跨走型摘採装置を示す斜視図(a)、並びに掃込体周辺を示す側面断面図(b)及び拡大斜視図(c)である。 同上、茶畝跨走型摘採装置を示す正面図である。 同上、茶畝跨走型摘採装置を示す側面図である。 掃込体が取り付けられた刈刃周辺(移送開始部)を拡大して示す正面図である。 左右の掃込体の接続部位(合わせ部分)を示す斜視図、並びに掃込本体を掃込体から取り外し、フラットな状態で示す平面図である。 ダクトユニット周辺を示す斜視図である。 ダクトユニットを示す背面図(a)、並びに同図b−b線で破断した側面断面図(b)である。 摘採直前の茶葉を掃込体によって刈刃に当てる様子から摘採後の茶葉を背面風に乗せて上昇移送するまでの作動態様を段階的に示した側面断面図である。 一つの回転軸に対して四つの掃込本体を90度の間隔(四等配)で設けるようにした掃込体の他の実施例を示す斜視図である。 掃込本体に形成される通気用スリットの他の実施例を示す平面図である。 移送ダクトの背板自体を移送促進板として流用した他の実施例を示す側面断面図である。
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお、説明にあたっては、まず本発明の茶刈装置の一例として摘採装置を例に挙げながら、その全体構成を概略的に説明し、併せて本発明装置である茶枝葉の移送装置について説明する。また、摘採装置としては、刈り取った茶葉Aを上昇移送して収容部に収容する、いわゆる大型の乗用式摘採装置(茶畝跨走型摘採装置1)を例に挙げて説明する。
また、本発明の移送装置そのものは、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業にも利用でき、このため本発明の名称中や特許請求の範囲に記載した「茶枝葉」とは、摘採した茶葉Aと剪除した枝幹とを総称するものである(茶枝葉にも茶葉と同一の符号Aを付す)。また、「茶刈」もしくは「茶刈装置」とは、摘採(摘採装置)と剪枝(剪枝装置)とを総称するものである。なお剪枝作業の具体的形態については後述する。
本発明の移送手法を適用した茶畝跨走型摘採装置1は、一例として図1〜図3に示すように、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体2と、この走行機体2によって茶畝T上面に位置するように支持される摘採機体3と、摘採機体3の後方に設けられ摘採した茶葉Aを収容する収容部4と、摘採した茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで移送する移送装置5とを具えて成るものである。
なお、本発明では、最終的には摘採した茶葉Aを刈刃22の後方から吹き出す背面風Wに乗せて収容部4等に移送するものであるが、刈刃22の上方には後述する掃込体8を設けておき、まずこのスイープ作用(掃き込み作用)によって、摘採した茶葉Aをダクト奥側に送り、背面風Wに乗せるようにしたことが大きな特徴である。以下、各構成部について説明する。
まず走行機体2について説明する。このものは、茶畝Tを跨いで茶畝間の畝地を接地走行するものであり、走行方向から見て概ね門型状に形成されたフレーム11を骨格部材とする。このフレーム11は、畝間に立ち上げ状態に設けられる脚部フレーム11Aと、この脚部フレーム11Aを繋ぐ連結フレーム11Bと、脚部フレーム11Aに対し昇降自在に取り付けられる昇降ブラケット11Cとを具えて成るものである。そして、脚部フレーム11Aの下端には一例としてクローラを適用した走行体12を設ける。もちろん、この走行体12は、このようなクローラに限らず、畝地を過剰に押し付けないような空気タイヤ、あるいは双方を適用した形態(例えば前側に空気タイヤ、後側にクローラを適用した形態)等が適宜採り得る。
更に連結フレーム11Bの上部には、茶畝跨走型摘採装置1に乗車した作業者が座る操縦者用シート13、操縦桿14、茶畝跨走型摘採装置1の制御や操作等を行うためのコントロールボックス15を設けるものである。そして操縦者用シート13の側傍には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機16を搭載するものであり、一例として、この原動機16により図示を省略する油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプにより供給される作動油によって前記走行体12の駆動や、後述する摘採機体3の刈刃22の駆動、更には前記昇降ブラケット11Cの昇降動を担うシリンダ(図示略)等の駆動を行う。
また前記連結フレーム11B上には、一例として図2・図6に示すように、刈刃22によって刈り取った茶葉Aを風送するための送風機17A・17Bを二基並設するものであり、これら送風機17A・17Bは、前記原動機16により直接駆動される。なお二基の送風機17A・17Bは、回転軸171が同軸であり、この回転軸171がプーリとベルトを介して前記原動機16により駆動される。
そして、これら送風機17A・17Bからは送風ダクト18A・18Bを介して圧力風が移送装置5(摘採機体3側)に供給される。なお送風ダクト18A・18Bは、一部または全部が、フレキシブルダクト180によって構成され、移送装置5に接続されている。
次に摘採機体3について説明する。このものは茶葉Aの摘採を実質的に行うものであり、刈刃22を主要部材として成るものである。この刈刃22は、例えば図1に示すように、上下一対の刈刃体22Aと、これら刈刃体22Aを摺動自在に支持する刈刃支持フレーム22Bと、刈刃体22Aを偏心板やエキセントリックシャフト等によって往復摺動させる駆動部22Cとを具えて成り、上下一対の刈刃体22Aを交互に往復動させることで、各刈刃体22Aに形成した刃(歯)のバリカン作用により茶葉Aを刈り取るものである。
このように刈刃22は、刈刃体22A、刈刃支持フレーム22B、駆動部22C等を一体的に組み付けた、いわゆるカセット式替刃の形態を採り、刈刃22の取り替えにより、容易に茶畝跨走型摘採装置1から浅刈装置・中刈装置等の剪枝装置に仕様変更できるものである。なお図中符号23は、このようなカセット式の刈刃22を着脱自在に保持する側板部であり、この側板部23が、例えば図3に示すように、上記昇降ブラケット11Cに支持され、刈刃22の高さが自在に設定できる構成となっている。
また、上記刈刃22の駆動部22Cも、前記油圧ポンプ(走行機体2に搭載された原動機16によって駆動される)から供給される作動油によって駆動することが望ましい構成であるが、刈刃22の駆動は別途エンジンによって行うことも可能である。
次に上記刈刃22によって刈り取った茶葉Aを収容する収容部4について説明する。収容部4は、一例として図3に示すように、コンテナ式のものを採用し、この中に直接的に茶葉Aを収容する形態を採る。もちろんコンテナ式以外の収容部4としては、収容部フレーム内に1袋または2袋以上の茶袋を支持し、これら茶袋の受入口(開放端側)を後述する移送ダクト6の吐出口37に掛け止めしておくような形態を採ることも可能である。
次に本発明装置である茶葉Aの移送装置5について説明する。移送装置5は、刈り取った茶葉Aを所定の位置に向けて移送する部位であり、ここでは茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで中継移送するものである。具体的には刈り取った茶葉Aを刈刃22から後方の収容部4に向けて上昇移送する形態を採る。ここで、茶葉Aの移送は空気流、つまりダクト内に圧力風(背面風W)を送り込んで収容部4まで移送するものであるが、摘採した茶葉Aを背面風Wに乗せるまでは、掃込体8によって茶葉Aをダクト奥部に確実に送り込むものである。また、ここではダクトとして複数のダクト部材を用いることに因み、これらをダクトユニット5Aと総称する(移送装置5の末尾に「A」を付けて示す)。
ダクトユニット5Aは、一例として図6に示すように、移送ダクト6と背面ダクト7とを主要部材として成るものであり、このうち移送ダクト6は、例えば図7(b)に示すように、刈刃22の直上部からやや斜め後方に立ち上げた後、収容部4の上方に臨むように形成されるものである。また背面ダクト7は、刈刃22の後方側、すなわち摘採方向(進行方向)に対して後方となる刈刃22の背面側から、前記移送ダクト6内に上昇流となる背面風Wを送り込むものである。以下、これら移送ダクト6や背面ダクト7等について更に詳細に説明する。
まず移送ダクト6について説明する。このものは、上述したように刈り取り後の茶葉Aを背面風Wに乗せて収容部4まで上昇移送するものである。このような移送形態に因み、移送ダクト6は、例えば図6に示すように、摘採装置の正面側に設けられる前面板31と、摘採装置の後方側に設けられる背板32と、その間を接続する側板33とによって、内部が空洞状(風洞状)に形成され、ダクトの上下両端部が開口状態に形成されて成るものである。ここで、摘採した茶葉Aの移送が始まる下部開口を移送開始部35とし、茶葉Aの移送が終わる上部開口を移送終端部36とするものであり、この移送終端部36には収容部4に臨む吐出口37が形成される。なお、移送開始部35における刈刃22の上方には、上述したように掃込体8が設けられるものである。
また移送ダクト6は、例えば図7に示すように、下端底部に刈刃22が設けられ、刈刃22から適宜の高さで前方側が開口されて成り、ここが上記移送開始部35となる。このため、開口部としての移送開始部35の下端は、刈刃22とほぼ同じ高さ(位置)に設定されるものである。
また、移送ダクト6における移送開始部35(開口部)は、刈刃22と同様に、茶畝Tの上面形状に合わせて、例えば中央がやや高い湾曲状に形成されるとともに、刈刃22とほぼ同じ長さ(茶畝Tの幅方向の寸法)に形成される。
また、移送ダクト6には、例えば移送開始部35の近傍において、背面ダクト7から上向きの背面風Wが吹き込まれるものであり、この噴出口を吹出口38とする。もちろん、この吹出口38は、背面風Wと称されるように、刈刃22の後方に設けられるものである(本実施例では刈刃22の直後方に設けられる)。
一方、移送終端部36は、摘採装置の側面から視た状態で、吐出口37が収容部4に臨むように適宜湾曲形成されるものである(図3参照)。因みに、摘採した茶葉Aを茶袋に収容する形態を採る場合には、この吐出口37に、茶袋の開放端側を取り付けるフック37aが設けられるものである(図6参照)。
また、移送ダクト6は、一例として直立状態(垂直線)から約8度程度、後方側に傾斜状態に設置されるものであり、これは刈り取られた茶葉Aが移送ダクト6(移送開始部35)から前方側にこぼれ落ちにくく、スムーズに吹き上げられることを意図したためである。もちろん、移送ダクト6の後傾角度は、茶畝跨走型摘採装置1の後方への過剰な張り出しを防ぐことを前提として、直立状態から約5〜45度の範囲内の適宜の角度に設定することができる。
また、移送ダクト6は、移送開始部35から吐出口37(移送終端部36)に至る移送途中において、幅寸法や断面積等を急激に変化させないことが好ましく、これは移送に伴う茶葉Aの傷みを極力低減させるためである。また移送路は、例えば図6・図7に示すように、移送途中に分岐部39が形成され、移送路が二股状に分かれるように形成される。この分岐部39は、上昇移送する茶葉Aを左右に分ける部位となるため、茶葉Aが分岐部39に当たっても極力茶葉Aが傷まないように、移送路内が滑らかなR状つまり移送路としては略U字状を成し、スムーズに茶葉Aを左右に振り分けるような構成が好ましい。
また、このような移送ダクト6(ダクトユニット5A)は、少なくとも一部が入れ子状もしくはフレキシブル状に形成され、刈刃22とともに上下動できる構成が望ましい。
また、移送ダクト6の前面板31には、例えば図6・図7(b)に示すように、前方側に張り出す前面突出板310が設けられる。この前面突出板310は、刈刃22の上方に掃込体8を設けることにより、移送開始部35に形成される隙間を極力なくすためのものであり、これにより移送開始部35から確実に茶葉Aを吸い込むようにしている。また、このようなことから前面突出板310は、前方先端が下方に折り曲げ形成され、掃込体8(後述する掃込本体83)との隙間も極めて小さくなるように形成される。
更にまた、前記移送ダクト6には、一例として図7(b)に示すように、背面風Wを噴出する吹出口38の直後方から移送ダクト6の背板32に対し、上り傾斜状態に移送促進板41が設けられる。この移送促進板41の上り傾斜角は、同図7(b)に併せ示すように、水平方向(刈刃22)から約55度に設定されるが、茶葉Aの刈り取り長さや、送風機17A・17Bの風量等によって適宜変更されるものであり、およそ40〜70度程度の上り傾斜角に設定される。なお、この移送促進板41によって、吹出口38から噴出された背面風Wが、移送促進板41に沿ってスムーズに上方に(やや後方へ向けて)吹き上がるため(いわゆるコアンダ効果)、移送ダクト6の移送開始部35等に乱れを生じさせることがないものである。なお、移送促進板41は、後述する掃込体8(掃込本体83)が描く円軌道に対し、ほぼ外接状態に設けることが好ましい。
次に、背面ダクト7について説明する。このものは、上述したように刈刃22の後方側から移送ダクト6内(例えば移送開始部35の近傍)に背面風Wを送り込むためのダクトであり、移送ダクト6の背面側に密着状態に設けられる。なお、ダクトユニット5Aを形成するにあたっては、移送ダクト6と背面ダクト7とを全く別々のダクト状に形成しておき、これらを張設することも可能であるし、移送ダクト6の背板32を背面ダクト7の前面として使用することも可能である(共通化させる言わば一体的構成)。
また背面ダクト7は、茶畝跨走型摘採装置1の背面から視た場合、一例として図6・図7(a)に示すように、裾広がり状に形成され、上方から圧力風を取り込み、下方、つまり刈刃22の後方側から上昇流として吹き出すように形成される。ここで、圧力風の取り込み口を導入口46とするものであり、この導入口46は、左右に二つ並んで形成され、これら導入口46にそれぞれ送風機17A・17Bに接続された送風ダクト18A・18Bが接続される。なお、前記送風機17A・17Bは一基で実施することも可能であり、その場合には、背面ダクト7の導入口46を一つにすることも可能であるが、一本の送風ダクトを途中で二本に分岐して二つの導入口46に接続することが好ましく、これは圧力風(背面風W)を幅方向において均等に且つ安定して送り込むためである。
次に本発明の特徴的構成である掃込体8について説明する。掃込体8は、刈刃22の上方となる移送開始部35に設けられるものであり、刈刃22によって摘採した茶葉Aを、ダクトの奥側、例えば上記吹出口38付近まで送り、茶葉Aを確実に背面風W(上昇流)に乗せるためのものである。
掃込体8は、一例として図1・図4に示すように、移送開始部35においてほぼ刈刃22に沿うように設けられる直線状の回転軸81と(ここでは左右二分割の構成)、この回転軸81の外周側にほぼ一定の突出寸法でねじり状に設けられる(固定される)本体保持部82と、この本体保持部82に着脱自在に取り付けられる掃込本体83とを具えて成るものである。ここで左右の掃込体8を区別して示す場合には、操縦者用シート13に座った操縦者から見て右側を掃込体8R、左側を掃込体8Lとする。
このように、本実施例では、摘採時に掃込体8の回転軸81を回転させることで、本体保持部82に取り付けた掃込本体83で茶葉Aをダクト奥部に掃き込むもしくはかき込むものである(これをスイープ作用とする)。
以下、掃込体8について更に説明する。まず回転軸81について説明する。回転軸81は、掃込体8が左右二分割であることから、左右の軸が、刈刃中央上部で屈曲し、全体的に山形状を成すように形成され、左右の回転軸81は、この刈刃中央上部で、後述する垂下板85に対して、回転自在に接続される。
また回転軸81は、左右両端部(刈刃22の両端部)が、刈刃22の両サイドを保持する前記側板部23に対して取り付けられ、この側板部23に左右の回転軸81を回転させるための油圧モータ等の駆動部が設置される。
また回転軸81の上方にも刈刃中央上部で山形状に屈曲形成された角パイプ材等が設けられ(後述する掃込体フレーム84の主要部材)、この角パイプ材によって左右の側板部23がブリッジ状に連結されるように形成される。また角パイプ材のほぼ中央からは、垂下板85が設けられ、ここに左右の回転軸81が回転自在に取り付けられる。このように、掃込体8は、上部の角パイプ材を始めとして、両側部や中央部等が側板部23や垂下板85等の部材で枠組状に形成されており、これら全体で掃込体8の剛性を獲得する掃込体フレーム84が構成されている。なお、上記角パイプ材は、前記前面突出板310の上方に覆い被さるように設けられる。
次に掃込本体83について説明する。掃込本体83自体は、一例として図5に示すように、回転軸81から取り外された非装着状態では、平面から視て適宜の長さを有する帯状部材であり、取付時には、帯状部材の長手方向が刈刃22の幅方向になるように取り付けられる。もちろん、ここでは上述したように掃込体8が左右二分割構成であることから、掃込本体83の長手方向寸法は、刈刃22のほぼ半分程度の長さに設定される(実際は回転軸81に対しねじり状に取り付けられるため刈刃22の半分よりもやや長くなる)。
また、掃込本体83には、掃込先端832から回転軸81に向かって多数の通気用スリット831が、ほぼ同一のピッチで形成されるが、この通気用スリット831は、本体保持部82に取り付けられる被保持部833(根元部分)には到達しないものである。このため通気用スリット831同士の間をみると、この部位は個々に切り離された細長い短冊状に形成されるものの(これを掃込片830とする)、通気用スリット831が形成されていない部位(被保持部833)では、各々の掃込片830が一体につながった状態に形成され、これにより摘採掃込中に掃込片830が千切れてしまうことが極力防止される。すなわち、少なくとも本来一本ずつに分離していた毛を適宜の長さに固定した(束ねた)ブラシに比べれば、掃込片830が裂けてしまう心配(欠けてしまう心配)は格段に低いものである。もちろん掃込片830の裂け(亀裂)を、より一層防止するには、図5に併せ示すように、通気用スリット831の根元部分(最奥部)を円弧状等に形成し、スリット端部に掛かる応力を分散させることが望ましい。
なお通気用スリット831は、移送開始部35での茶葉Aの吸い込みを阻害しないようにするため、換言すれば例えば掃込本体83が移送開始部35を閉塞するような姿勢(状態)になっても、移送開始部35に背面風Wによる吸い込み(負圧吸引)を効果的に及ぼすようにするものである。しかし、通気用スリット831は、個々の掃込片830を切り離し状態に形成するものでもあり、これにより個々の掃込片830の剛性・強度を確保しながら、弾力性も確保するものであり、この弾力性によって茶葉Aと接触しても、茶葉Aへの葉傷みを防止するように考慮している。
また掃込本体83の素材としては、搬送用ベルト等に用いられるゴムが好ましく、これは掃込本体83の弾力性をより高めるためであり、ひいては茶葉Aへの葉傷みを一層防止するためである。もちろん、ゴム製の掃込本体83であれば、ブラシに比べ格段に高い耐久性が得られるものである。
また、ゴム製の掃込本体83は、非装着時でのフラット姿勢、装着時でのねじり姿勢を呈し易く(姿勢の追従性が良く)、クセの付きにくさや、掃除等のメンテナンスのし易さの点でも効果を奏するものである。
因みに掃込本体83は、一例として板厚が1.6mm程度である。また通気用スリット831は、長さが40mm程度で、切り込み幅(隙間)が3mm程度であり、またスリットピッチは12mm程度である(図5参照)。なお、通気用スリット831の切り込み幅が0(つまり掃込本体83を適宜の長さでカットしただけの言わば「のれん状スリット」)では、移送開始部35での背面風Wによる吸引作用がそれほど機能せず、エアを吸い込み難いことが本出願人によって確認されている。
また掃込本体83を本体保持部82に着脱自在に取り付けるにあたっては、例えば図5に併せ示すように、被保持部833にネジ止め用の孔を複数個所あけておき、ネジ止めにより本体保持部82に固定することが可能であるが、ネジ止め作業を減らしたい場合等には、被保持部833を全体的に挟み込むクランプ形態を採ることも可能であるし、あるいはこれらを併用し、例えば位置決め用に被保持部833を二カ所程度ネジ止めしておき、その後、被保持部833を全体的にクランプする固定方法も採り得る。
また、本実施例では一基の掃込体8(摘採機体3)に計四つの掃込本体83を装着するが、左右の掃込体8L・8Rで、掃込本体83の自然長(非装着時におけるフラット状態での全長)や掃込片830の全数、取付ピッチ等を全て共通化すれば、四つの掃込本体83を左右の掃込体8L・8Rのどの部位にも取り付けることができ、また取り付けの際に掃込本体83の表裏を気にすることもなく取り付けられ、極めて取付性・互換性が良いものである。逆に言えば、四つの掃込本体83が各取付部位によって取付ピッチ等の仕様が異なった場合には、本摘採装置を所有する営農者は、常に四種の掃込本体83を予備として用意しておかなければ安心できないが、各掃込本体83がどの部位にも取り付けられれば、予備の掃込本体83として一個または二個程度のストックでも安心できるものである。なお、図5中の「P1」という表記は、掃込本体83の両端から取付孔(ネジ孔)までの距離を左右両端で同じにする意味で付したものである。
次に掃込本体83の装着状態つまり回転軸81に対する掃込本体83のねじれ状態について説明する。まず回転軸81つまり掃込本体83の回転方向は、刈刃22に対して茶葉Aを挟むすれ違い方向(剪断状態)に回転させるものである。これは摘採する茶葉A、特に前方側に倒れ込んだものを事前に起こし、刈刃22に確実に当てるようにするためである。
これに対し掃込本体83のねじれ状況は、刈刃22の両サイド部分で刈り取られた茶葉Aが、上記掃込本体83の回転に伴い、左右の掃込体8L・8Rの中央部に送られる態様が望ましい(図5参照)。つまり刈刃22の両サイド部分で摘採された茶葉Aは、後方に移送される際、掃込体8の中央に向けても移送されることが好ましいと考えられ、これは特に刈刃22の両サイド部分で摘採された茶葉Aが前方側にこぼれ落ち易く、このような茶葉Aでも確実に収容部4まで移送・回収するためである。具体的には、例えば図5に併せ示すように、掃込体8Lの両端(刈刃中央上部と刈刃22のサイド部分)の掃込本体83がほぼ垂直状態のとき、掃込体8Lの刈刃中央上部の掃込本体83がほぼ水平状態となるように設定される。因みに、このような態様であるために、本明細書では、「螺旋」という用語を使用せずに「ねじれ(ねじり)」という用語を使用したものであるが、回転軸81に対する掃込本体83の取付状況としては、軸に対して常に同じ方向に巻き付く螺旋状(螺旋階段状)でも構わない。
なお、左右の掃込体8L・8Rにおける刈刃中央上部での掃込本体83の接続状態については、上記図5に示したように、左右の掃込本体83の状態を例えば90度異ならせるようにするだけでなく、図4に示すように、左右の掃込体8L・8Rにおける掃込本体83同士をともに垂直状態等、同じ状態で連続するように取り付けても構わない。
また掃込体8は、例えば図7(b)・図8等に示すように、回転軸81の中心が刈刃22の先端よりも前方に突出するように設けることが好ましく(一例として12mm程度前方)、これは掃込体8が摘採後の茶葉Aをダクト奥側に送り込むスイープ作用のみならず、刈り取り直前の茶葉Aを刈刃22に剪断状態に押し当て、茶葉Aの確実な摘採作用も担うようにするためである。具体的には、例えば摘採時に摘採装置の前方側に茶葉Aが倒れ込んでいても、掃込体8が事前にこれを起こし、ほぼ正立状態で刈刃22に当てながら茶葉Aの摘採を確実に行うものであり、またこれにより刈跡も綺麗な状態にできるものである。
なお、掃込体8が、刈刃22に対し刈取直前の茶葉Aを剪断状態に当てる作用を有することについては、摘採装置を側面から視て、掃込体8(回転軸81)を刈刃22の先端とほぼ同じ位置に設けた場合でも(あえて積極的に掃込体8を刈刃22よりも前方に設けなくても)、幾らかは同じ作用を有するかも知れない。しかし、掃込体8を意図的に刈刃22の先端よりも前方に設けた本実施例では、少なくとも前方側に倒れ込む茶葉Aをより広範囲にわたって起こすという効果を奏するものであり、このように掃込体8によっても積極的に茶葉Aの刈り取りを確実に行うという思想自体、極めて新規な着想であると考えられる。
また本実施例では、刈刃22の直後方に、背面風Wの吹出口38を設けるとともに、この吹出口38の直後方に移送促進板41を設けるものであり、これら刈刃22、吹出口38、移送促進板41を極めて接近した状態で設けている。このような構成により掃込体8による茶葉Aの上昇移送距離(移送高さ)を極めて小さく押さえることができ、掃込体8の負荷を低減できるものである。すなわち、上記構成では、掃込体8による茶葉Aの上昇移送は、刈刃22から吹出口38を越え、移送促進板41付近までで済み、例えば掃込本体83の回転角としては、約30度程度の範囲内である。もちろん、このように刈刃22、吹出口38、移送促進板41を極めて接近した状態で設ける構成自体、より掃込体8を刈刃22の先端よりも前方側に設け易い構造となっている。
また、図8に示すように、移送促進板41は、掃込本体83(掃込先端832)が描く円軌道に、ほぼ外接する状態に設けられることが好ましい。これは茶葉Aを上昇移送する主体要因を、掃込体8によるスイープ作用から背面風Wによる移送作用にスムーズに変更(移行)するためであり、これにより刈刃22による茶葉Aの摘採〜掃込体8による上昇移送(背面風Wに乗せるまでの掃き込み)〜背面風Wによる本格的な上昇移送までが、一連の連続した動作(流れ)となって、これらの動作変更がスムーズに進行し、茶葉Aへの葉傷みをほとんど生じさせないものである。
本発明の茶刈装置の一例である茶畝跨走型摘採装置1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下この摘採装置による茶刈態様(摘採態様)について説明する。
(1)各種の設定
摘採作業を行うにあたっては、まず摘採する茶葉Aの長さに応じて摘採機体3を適宜昇降動させ、刈刃22の高さを調整するものである。なお、摘採機体3の昇降動に伴い、移送ダクト6も昇降動し、移送開始部35や掃込体8の高さ調整も同時に行えるものである。
また、このような高さ設定の後、移送ダクト6内に背面風Wを生じさせるものであり、これには、まず走行機体2上の原動機16を駆動し、二基の送風機17A・17Bによって圧力風を生起する。生起された圧力風は、その後、各送風ダクト18A・18B(フレキシブルダクト180)を通して背面ダクト7内に取り込まれる。そして背面ダクト7内に導入された圧力風は、背面ダクト7内で幅方向に拡がり、刈刃22の直後方で、なお且つ移送促進板41の直前の吹出口38から背面風Wとして移送ダクト6内(例えば移送開始部35の近傍)に送り込まれる。この背面風Wは、刈刃22の後方から、上方に向かう上昇流であり、少なくとも茶葉Aを移送ダクト6の吐出口37(移送終端部36)まで搬送する移送能力を有する。
また、移送ダクト6内に背面風Wを生じさせることに伴い、掃込体8(掃込本体83)も回転させるものである。なお、掃込本体83の回転は、刈刃22による茶葉Aの摘採(剪断)を補うようなすれ違い方向(剪断状態)に回転させるものである。
(2)掃込体による刈刃への送り込み作用
上記掃込体8(掃込本体83)の作用により、刈り取り直前の茶葉Aは、例えば図8(a)に示すように、刈刃22に対して剪断状態に当てられる(送られる)。これにより、たとえ茶葉Aが摘採装置の前方側に倒れ込んでいても、掃込体8が摘採直前でこのような状態の茶葉Aをほぼ起立状態に起こして刈刃22に当て、綺麗に刈り取ることができるものである。
なお掃込本体83には通気用スリット831が形成されており、また掃込本体83自体がゴム製であるために、個々の掃込片830がしなり易く(撓み易く)、茶葉Aを傷めずに茶葉Aを起立させ、また刈刃22に送り込むことができるものである。もちろん、掃込本体83に、隙間を有する通気用スリット831が形成されていることから、掃込本体83が移送開始部35を部分的に閉塞するような位置(姿勢)になっても、この通気用スリット831を通して背面風Wによる吸引効果が移送開始部35にまで確実に及ぶものである。
このように掃込体8は、確実な摘採(つまり刈刃22による正確な剪断)にも寄与するものであり、これは掃込体8(回転軸81の中心)が刈刃22の先端よりも前方(一例として12mm程度)に位置していることにも起因する。
(3)掃込体による上昇移送(スイープ作用)
刈刃22によって摘採(剪断)された茶葉Aは、その後、図8(b)に示すように、掃込体8によってダクト奥側に押し込まれ(かき込まれ)、背面風Wの吹出口38付近まで掃き込まれる(送られる)。もちろん、背面風Wは、摘採中ずっと吹き込まれるため、上述したように刈刃22部分(移送開始部35)にも背面風Wによる負圧吸引作用が働くものであり、従って摘採後の茶葉Aを、掃込体8によって必ずしも吹出口38まで掃き込まなくても、背面風Wに乗せることができるかも知れない。しかし、ここでは少なくとも刈刃22から吹出口38付近までについては、掃込体8が主たる移送要因となって茶葉Aの移送を確実に行い、その後、茶葉Aが吹出口38を通過した辺りからは、主たる移送要因が徐々に背面風Wに移行・変換して行くものである。
なお、上記主たる移送要因の移行・変換をより一層スムーズに行うには、図8(c)に併せ示すように、移送促進板41を、掃込体8の掃込先端832が描く円にほぼ外接状態に設けることが好ましい。これは掃込体8による移送作用については、掃込本体83(掃込先端832)が描く円の接線方向に作用し易いと考えられ、一方、背面風Wは、移送促進板41の表面に沿って流れることから、背面風Wによる移送作用も移送促進板41に沿った方向に作用し易く(コアンダ効果)、これらの方向を一致させることで、主たる移送要因をスムーズに移行・変換できるものと考えられる。
また、刈刃22から吹出口38の区間における茶葉Aの上昇移送をより確実に行うには、当該区間における掃込体8の回転角度範囲を小さく押さえることが好ましく、ここでは約30度以内に収められる。
(4)吹出口以降
茶葉Aは、吹出口38以降、例えば図8(c)に示すように、主に背面風Wに乗って移送ダクト6内上部に送られる。もちろん、茶葉Aが背面風Wに乗って吹出口38よりも上方に送られても(高位置に送られても)、掃込体8のスイープ作用が及ぶ範囲(掃込体8の回転半径内)では、茶葉Aは、掃込体8による押込作用も受け、移送ダクト6内を上昇移送するものである。
このようにして摘採後の茶葉Aは、移送ダクト6内を確実に上昇移送するものであり、ダクト内での茶葉Aの詰まり(移送の停滞)や、移送開始部35からのこぼれ落ち(逆流)が防止されるものである。
その後、背面風Wに乗って移送ダクト6内を上昇した茶葉Aは、吐出口37から収容部4内に収容されるものである。
なお、本実施例では、上述したように刈刃22の直後方から背面風Wをダクト内に吹き込むようにしており、このため背面風Wによる吸引作用(負圧吸引作用)も刈刃22に及び易いと考えられるが、これは背面風Wの吹出口38が刈刃22(移送開始部35)から離れている場合でも起こる現象である。すなわち摘採された茶葉Aが刈刃22の後方側(吹出口38)に移送される現象は、刈刃22の後方から吹き出す背面風Wにより、刈刃22の後方付近、具体的には、背面風Wの吹出口38近傍に負圧が形成されるため(背面風Wの負圧吸引作用)、これが移送開始部35(刈り取り部)まで及ぶものと考えられる。
〔他の実施例〕
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず先に述べた基本の実施例では、掃込体8は、一つの回転軸81に対し二つの掃込本体83を対向するように設けたが(角度の間隔としては180度となる)、掃込体8としては例えば図9に示すように、一つの回転軸81に対して90度の間隔で四つの掃込本体83を設けること(四等配)も可能である。
また基本の実施例では、掃込本体83を回転軸81に対しねじり状に設けたが、掃込体8としては必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば図9に併せ示すように、掃込本体83(本体保持部82)をねじらずに、回転軸81の径方向に真っ直ぐに(フラット状に)形成することも可能である。ただし、掃込本体83を単に回転軸81に対しフラット状に設けるだけでは、刈刃端部付近で摘採した茶葉Aがこぼれ落ち易いことが考えられる。このため、この図9では、例えば左側の掃込体8Lを三分割で形成し、各掃込本体83の接続部分を約45度ずらし、刈刃端部付近で摘採した茶葉Aを幾らかでも掃込体8Lの中央部寄りに送るように(回収し易いように)意図している。
また、このようなことからすれば、図9に示す実施例は、掃込体8を必ずしも左右二分割で形成しない実施例とも言える。つまり、基本の実施例では、掃込体8を左右二分割で形成する構成を示したが、掃込体8の分割構造は、必ずしもこれに限定されるものではなく、左右二分割以外の種々の形態が採り得るものである。
また、上述した基本の実施例では、通気用スリット831をほぼストレート状に形成したが、通気用スリット831は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば図10(a)に示すように、隙間を有する通気用スリット831全体を波線状(ウェーブ状)に形成することも可能であるし、あるいは図10(b)に示すようにジグザグ線状に形成することも可能である。
また、上述した基本の実施例では、移送ダクト6の内部に、これとは別に形成した移送促進板41を設置するように説明したが、例えば図11に示すように、移送ダクト6の背板32自体を二段階で傾斜させ、吹出口38の直後方において、上り傾斜角度40〜70度に形成し、ここを移送促進板41とすることも可能である。
また、先に述べた基本の実施例では、茶畝跨走型摘採装置1の形態を例に挙げて説明したが、上述したように、本発明に係る茶枝葉の移送装置は、摘採装置のみに限らず剪枝装置にも利用できる。この場合、剪除した枝幹は、例えば移送ダクト6内を上昇移送させた後、収容部4内を通過するように設けたシュート部材によって畝間まで導き、落下させる形態が可能である(例えば本出願人の出願に係る特開2002−136214号「茶畝跨走型茶刈装置における剪除枝幹の移送構造」参照)。もちろん剪除した枝幹は、必ずしも収容部4内を経由させて畝間まで導く必要はなく、例えば移送ダクト6の吐出口37から畝間まで別のダクトを設け、剪除枝幹を畝間に落下させることも可能である。なお、茶畝跨走型摘採装置1を剪枝装置に変更する場合、先に述べたカセット式の刈刃22を剪枝機用のものに変更すれば、摘採機体3を容易に剪枝機体に仕様変更できるものである。
本発明の移送手法は、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業等にも利用できる。
1 茶畝跨走型摘採装置
2 走行機体
3 摘採機体
4 収容部
5 移送装置
5A ダクトユニット
6 移送ダクト
7 背面ダクト
8 掃込体

2 走行機体
11 フレーム
11A 脚部フレーム
11B 連結フレーム
11C 昇降ブラケット
12 走行体
13 操縦者用シート
14 操縦桿
15 コントロールボックス
16 原動機
17A 送風機
17B 送風機
171 回転軸
18A 送風ダクト
18B 送風ダクト
180 フレキシブルダクト

3 摘採機体
22 刈刃
22A 刈刃体
22B 刈刃支持フレーム
22C 駆動部
23 側板部

6 移送ダクト
31 前面板
310 前面突出板
32 背板
33 側板
35 移送開始部
36 移送終端部
37 吐出口
37a フック
38 吹出口
39 分岐部
41 移送促進板

7 背面ダクト
46 導入口

8 掃込体
8R 掃込体(右側)
8L 掃込体(左側)
81 回転軸
82 本体保持部
83 掃込本体
84 掃込体フレーム
85 垂下板

83 掃込本体
830 掃込片
831 通気用スリット
832 掃込先端
833 被保持部

A 茶葉(茶枝葉)
T 茶畝
W 背面風

Claims (8)

  1. 茶葉や枝幹等の茶枝葉を刈り取る刈刃に対し、刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する移送ダクトを具え、この移送ダクト内に刈刃の後方側から背面風を吹き込み、この背面風の風送作用によって刈り取り後の茶枝葉を所定の位置に向けて移送する装置において、
    前記刈刃は、上下に一対の刈刃体を具えて成るバリカンタイプであり、
    且つ前記移送ダクトの移送開始部には、当該刈刃により刈り取った茶枝葉を、移送ダクトの奥側に送り込み、背面風に乗せるようにした掃込体を、刈刃の上方に設けるものであり、
    また、この掃込体は、刈刃にほぼ沿うように設けられる回転軸と、この回転軸の外周側に突出するように設けられる本体保持部と、この本体保持部に着脱自在に取り付けられる掃込本体とを具えて成るものであり、
    更に、前記掃込本体は、弾力性を有する帯状部材に、掃込先端から回転軸に向かって帯状部材の途中まで通気用スリットが形成されることにより、個々の掃込片が切り離し状態に形成されるものの、通気用スリットが形成されていない部位については各々の掃込片が一体につながった状態に形成されることを特徴とする茶枝葉の移送装置。
  2. 前記通気用スリットは、適宜の長さでカットしただけのものではなく、隣り合う掃込片の間に適宜の隙間をあけて形成されることを特徴とする請求項1記載の茶枝葉の移送装置。
  3. 前記通気用スリットは、根元部分が円弧状に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の茶枝葉の移送装置。
  4. 前記掃込体の本体保持部は、掃込体の回転軸に対しねじり状に形成されることを特徴とする請求項1、2または3記載の茶枝葉の移送装置。
  5. 前記掃込体は、回転軸の中心が、刈刃の先端よりも前方側に突出した状態に設けられるものであり、
    これにより掃込体は、刈り取った茶枝葉を移送ダクトの奥側に送り込むスイープ作用に加え、刈取直前において茶枝葉を刈刃に剪断状態に送る作用も具えることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の茶枝葉の移送装置。
  6. 前記移送ダクトは、ダクト内において背面風を吹き出す吹出口が、刈刃の直後方に形成され、なお且つ、この吹出口の直後方には、移送ダクトの背板に対し上り傾斜角度が40〜70度程度に設定された移送促進板が設けられ、この移送促進板に沿って背面風を流すようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の茶枝葉の移送装置。
  7. 前記移送促進板は、掃込本体の掃込先端が描く円軌道に対し、ほぼ外接状態に設けられることを特徴とする請求項記載の茶枝葉の移送装置。
  8. 茶畝を跨いで走行する走行機体と、
    この走行機体に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、
    この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部と、
    刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉を茶刈機体から収容部まで移送する移送装置とを具え、目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした装置であって、
    前記移送装置には、請求項1、2、3、4、5、6または7記載の茶枝葉の移送装置が適用されることを特徴とする茶刈装置。
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