以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、下記の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、空間光変調器100の外観を示す模式的斜視図である。空間光変調器100は、基板211および反射部240を備える。
基板211上に二次元的に配列されてマトリクスを形成する複数の反射部240は、それぞれが一辺数μmから百数十μm程度の正方形の反射面を有し、基板211に対して個別に揺動させることができる。これにより、図示のように一部の反射部240が揺動して傾斜した状態で光を反射させると、反射光の照度分布が変化する。よって、反射部240の揺動を制御することにより任意の照度分布を形成できる。
図2は、空間光変調素子200の模式的分解斜視図である。空間光変調素子200は1つの反射部240に対応して形成される。空間光変調器100においては、複数の反射部240のそれぞれについて同様の構造が形成される。空間光変調素子200の各々は、基板211、駆動部220、平坦部230および反射部240を有する。
基板211は、複数の電極212、214、216と、当該電極212、214に駆動電力を供給するCMOS回路とを有する。なお、空間光変調器100においては、空間光変調素子200が多数配列されるが、電極216は共通な電位、例えば接地電位に接続され、空間光変調器100全体の基準電位を共通にする。
駆動部220は、基板211上に形成され、固定枠222および可動部226を有する。固定枠222は、上面が開放された中空の部材により形成されて、空間光変調素子200の外周を包囲する方形の枠体をなす。固定枠222は、基板211上で、電極216の上に固定される。
固定枠222が基板211に対して固定された場合、基板211上の一対の電極212、214は、図中に点線で示すように、可動部226の縁部近傍に位置する。よって、可動部226の下面と、電極212、214とは、互いに対向する。
可動部226は、固定枠222の内側において、固定枠222の内側の面から捩じり軸部224を介して支持される。捩じり軸部224の一端は、固定枠222の内面に対して固定される。
捩じり軸部224の他端は、可動部226の周縁部から下方に延在するリブ225に対して固定される。捩じり軸部224は、弾性的に捩じり変形するので、可動部226は、捩じり軸部224を揺動軸として基板211に対して揺動する。しかしながら、リブ225により高い曲げ剛性を有するので、可動部226は変形し難い。
なお、リブ225の下端には、可動部226の外方に向かって広がったフランジ様の部分がある。これは、リブ225を含む層をパターニングする場合に残った領域で、無くてもよい。しかしながら、可動部226の剛性を低下させるものではなく、むしろ向上させる場合もあるので残してもよい。
平坦部230は、平坦面234とポスト232とを含む。平坦面234は、図中上方に向いた平滑な平面をなす。ポスト232は、図中下方に向かって突出して、図中に点線で示す可動部226の略中央に固定される。
これにより、平坦部230は可動部226から離間した状態で、可動部226に対して連結される。また、可動部226が基板211に対して揺動した場合、平坦部230も可動部226と共に揺動する。なお、平坦部230は、例えば、薄膜として堆積された酸化物、窒化物、炭化物等により形成される。
なお、平坦部230は、周縁部に沿って形成されたリブ236を有する。これにより、平坦部230は、材料の物性と寸法により決まる剛性を超える高い曲げ剛性を有する。
反射部240は、平板部242および誘電体膜244を有する。平板部242は、平滑な板状の部材であり、駆動部の平坦面234により支持される。よって、平坦部230が揺動した場合は、平板部242も共に揺動する。
誘電体膜244は、平板部242の図中上面に配され、平板部242により支持される。誘電体膜244は、互いに屈折率が異なる材料を交互に積層させて形成される。これにより、入射光に対して極めて高い反射率を有する。また、換言すれば、入射光に対する反射率が高いので、入射光のエネルギーを吸収することによる温度上昇が少ない。
このように、空間光変調素子200を有する空間光変調器100は、平坦部230と反射部240とを個別に形成する構造なので、それぞれの機能に適した構造、材料、製法を個別に選択できる。また、平坦部230の面積よりも大きい反射面積を有する反射部240を形成できるので、空間光変調器100の反射効率を向上させることができる。
図3は、空間光変調素子200の模式的断面図である。空間光変調素子200は、固定枠222を基板211に固定し、平坦部230を可動部226に固定した状態で、図2に示したA−A断面を示す。図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、可動部226は、下面に電極228を有する。電極228は、基板211上の電極212と対向する。
また、可動部226は、縁部から下方に延びたリブ225を有する。これにより、可動部226は、高い曲げ剛性を有する。一方、捩じり軸部224は、リブ225に相当する要素を有していない。よって、可動部226に後述する駆動力が作用した場合、捩じり軸部224が弾性変形して、可動部226は、変形することなく変位する。
図4は、空間光変調素子200模式的の断面図であり、図2に示したB−B断面を示す。なお、図2および図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、基板211上の一対の電極212、214のそれぞれは、可動部226の端部近傍に対向する。よって、電極212、214のいずれかに駆動電圧を印加した場合、電極228のいずれかの端部に静電力が作用する。
可動部226は、捩じり軸部224により固定枠222に結合されている。よって、電極212、214のいずれかから電極228に静電力が作用した場合、可動部226は、捩じり軸部224を揺動軸として揺動する。これにより、可動部226に対して固定された平坦部230も揺動する。これにより、反射部240も揺動する。
なお、図示の例では、電極214に駆動電圧が印加された場合、電極228の図中右側が、基板211の方に引き付けられる。これにより、平坦部230の平坦面234は右方に傾く。
再び図1を参照すると、反射部240のそれぞれに設けた上記のような構造に対して駆動電力を個別に供給または遮断することにより、複数の反射部240の傾きをそれぞれを個別に制御できる。よって、空間光変調器100にいったん反射させることにより任意の照射パターンを形成でき、可変光源、露光装置、画像表示装置、光スイッチ等として使用できる。
図5から図38までは、図1から図4までに示した空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。図5から図17までは、基板211上に、電極212、214、216および駆動部220を形成する過程を示す。図18から図26までは、駆動部220に平坦部230を搭載する過程を示す。図27から図33までは、反射部240を作製する過程を示す。図34から図38までは、反射部240を平坦部230に取り付ける過程を示す。
なお、図5から図38までに示すのは空間光変調器100の作製過程なので、空間光変調器100において対応する要素が異なる形状または状態で含まれている場合がある。そこで、これらの図について固有の参照番号を付与して各図の内容を説明した上で、各要素が完成した段階で、図1から図4までに示した空間光変調器100との対応関係を随時説明する。
図5に示すように、空間光変調器100が形成される基板211の表面直上には、下側の絶縁層312が堆積される。これにより、基板211の表面は絶縁層312により覆われる。
基板211の材料としては、シリコン単結晶基板の他、化合物半導体基板、セラミックス基板等、平坦な表面を有する部材を広く使用できる。絶縁層312の材料としては、例えば、基板211の材料の酸化物、窒化物等を使用できる。また、絶縁層312は、誘電率の高い多孔質体であってもよい。絶縁層312の成膜方法としては、絶縁層312の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図6に示すように、絶縁層312の上に、パターニングした導体層320を形成する。導体層320は、空間光変調器100において、電極212、214、216となる。導体層320の材料としては、アルミニウム、銅等の金属を例示できる。導体層320の成膜方法としては、導体層320の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法、鍍金法等から適宜選択できる。
次に、図7に示すように、導体層320の表面および導体層320のパターンの間隙に露出する下側の絶縁層312の表面を、上側の絶縁層314により被覆する。このとき、上側の絶縁層314の下に導体層320が存在するか否かに応じて、上側の絶縁層314の表面には起伏が生じる。
次に、図8に示すように、上側の絶縁層314の表面に形成された起伏がレジスト層332により平坦化される。これにより、平坦な下地の上で、以下に説明する工程を実行できる。なお、レジスト層332の塗布は、スピンコート法、スプレイコート法等を適宜選択できる。
次に、図9に示すように、非反射膜を形成する場合の成膜下地を形成する。成膜下地は2層からなり、図9に示す段階では、下側のレジスト層334が平坦化された絶縁層314上に形成される。レジスト層334は、レジスト材料の塗布、プリベイク、露光、現像、ポストベイクを順次実行することによりパターニングでき、2対の側壁335が形成される。
次に、図10に示すように、下側のレジスト層334の上に、上側のレジスト層336を形成する。レジスト層336もパターニングされ、下側のレジスト層334の側壁335の上方にそれぞれ側壁337を、それとは別に更に2対の側壁339を形成する。これにより、上側のレジスト層336の表面から見ると、浅い側壁339と、深い側壁337、335とが形成される。
これら下側および上側のレジスト層334、336は、フォトリソグラフィによりパターニングできる。即ち、レジスト層334、336を感光性材料により形成して、設計仕様に従ったパターンで露光することにより、レジスト層334、336を要求に応じた形状に成形できる。また、プラズマエッチング等のドライエッチングの手法により、レジスト層334、336を加工してパターニングしてもよい。
ただし、フォトリソグラフィによるパターニングは平面的なものであり、側壁335、337、339のような立体的構造を形成する目的で、立体的な下地層を形成することは難しい。そこで、図9、図10に示したように、複数のレジスト層334、336を用いることにより、立体的な成膜下地を形成できる。
次に、図11に示すように、絶縁層314およびレジスト層334、336により形成された成膜下地の上に、非導体層342を堆積する。形成された非導体層342は、レジスト層334、336の形状に倣って立体的な形状を有する。これにより、形成された非導体層342を含む薄膜の構造物は、高い断面二次モーメントを有する。
非導体層342の材料としては、各種酸化物、窒化物を使用できる。また、非導体層342を形成する方法としては、非導体層342の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図12に示すように、レジスト層334、336の側壁335、337の内側底部を除去して、導体層320に到達するコンタクトホール315を形成する。コンタクトホール315は、例えば、ドライエッチングにより形成できる。
次に、図13に示すように、非導体層342の上に、パターニングされた導体層344を形成する。これにより、コンタクトホール315の内側から側壁335、337の上端に到達する一対の柱状の構造物と、側壁339に挟まれたレジスト層336のランド上に形成された平坦な領域とが導体層344として残る。側壁335、337の内側に形成された導体層344の構造物は、導体層320のいずれかのランドと電気的に結合される。
次に、図14に示すように、非導体層342および導体層344の表面全体を覆う導体層346を形成する。これにより、パターニングされた導体層344は、今度の導体層346により電気的に結合される。導体層346の材料は、導体層344の材料と同じであっても、異なっていてもよい。
次に、図15に示すように、導体層346の表面全体を覆う上側の非導体層348を形成する。上側の非導体層348は、導体層344、346の下側に位置する非導体層342と同じ材料により形成される。成膜方法も、下側の非導体層342と同じ方法で成膜できる。
これにより、互いに同じパターンと形状を有する、下側の非導体層342、導体層344、346および上側の非導体層348により3層構造の不透明膜340が形成される。なお、不透明膜340の表面が光学的な機能には適していない非導体層342、348により形成されるので、他の膜構造と区別する目的で、3層構造全体をここでは不透明膜340と呼ぶ。しかしながら、予め定めた光学特性を目して形成したわけではない。
不透明膜340は、表裏に同じ材料で形成された非導体層342、348を有するので、温度変化により導体層344、346および非導体層342、348の間で生じるバイメタル効果が打ち消される。これにより、不透明膜340の形状が安定する。また、不透明膜340全体としては、後述する平坦膜と同じ材料を用いて形成されているので、平坦膜との熱膨張率差も生じない。
次に、図16に示すように、不透明膜340の一部を除去して、駆動部220の外形を形成する。これにより、不透明膜340の両端において、不透明膜340の下層に位置するレジスト層334が露出する。不透明膜340は、ドライエッチングによりパターニングできる。こうして、図2に示した基板211および駆動部220の構造が形成される。
次に、図17に示すように、不透明膜340の上面、即ち、非導体層348の表面を、レジスト層352により平坦化する。これにより、既存の駆動部220の構造を保護して、後述の反射鏡貼り付け段階に備える。なお、レジスト層332の塗布は、スピンコート法、スプレイコート法等を適宜選択できる。
次に、再び2層構造のレジストにより成膜下地を生成する。即ち、図18に示すように、平坦化されたレジスト層352および非導体層348の表面に、2層構造のうち下側のレジスト層354が形成される。更に、レジスト層354はパターニングされ、略中央に側壁353が形成される。
次に、図19に示すように、下側のレジスト層354の上に、2層構造のうち上側のレジスト層356を形成する。上側のレジスト層356もパターニングされており、下側のレジスト層354の側壁353の上方に形成された側壁355と、側方両端近傍に形成された側壁357とを有する。こうして、レジスト層354、356により、立体的な成膜下地が形成される。
次に、図20に示すように、レジスト層354、356の表面全体に、非導体層362を形成する。このとき、側壁353の内側では、非導体層362が、不透明膜340の表面に結合される。
非導体層362の材料としては、SiNX等の各種酸化物、窒化物、炭化物等を使用できる。また、非導体層342を形成する方法としては、非導体層342の材料に応じて、物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図21に示すように、非導体層362の表面全体に、平坦構造層364を堆積させる。平坦構造層364は、平坦部230に接合する反射部240のポスト232の材料と馴染みのよいものを選択することが好ましい。
平坦構造層364は、アルミニウム等、不透明膜340または非導体層342、348と同じ材料で形成してもよい。また、平坦構造層364の形成方法としては、平坦構造層364の材料に応じて各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図22に示すように、非導体層362および平坦構造層364の側端部が除去され、平坦部230の外形が形成される。これにより、非導体層362および平坦構造層364の両側端において、非導体層362の下層に位置するレジスト層354が露出する。非導体層362および非導体層362は、ドライエッチングによりパターニングできる。
次に、図23に示すように、平坦構造層364の表面と、露出したレジスト層354の表面との上に、非導体層366が堆積される。こうして、下側の非導体層362、平坦構造層364および上側の非導体層366により形成された3層構造が形成される。
不透明膜340の場合と同様に、三層構造を形成することにより、非導体層362、366および平坦構造層364の間で生じるバイメタル効果が打ち消される。よって、温度変化に起因する内部応力の作用に対して形状が安定する。ただし、平坦膜360の構造は三層構造に限られるわけではなく、後述する反射部240の接合に適した表面性状を有する材料が表面に存在するならば、単層構造であっても、より多層の構造であってもよい。
次に、図24に示すように、非導体層366の縁部を除去することにより平坦膜360の外縁形状が形成される。非導体層366は、ドライエッチングによりパターニングできる。これにより、平坦膜360の両側端において、非導体層362の下層に位置するレジスト層354が露出する。
図25は、図24までの手順で作製された下部構造物201の断面図である。図25では、レジスト層332、334、336、352、354、356を除いて、作製された下部構造物201を単独で示す。
ただし、空間光変調器100の製造におけるこの段階では、以降の工程において下部構造物201を保護する目的で、図22までに示したレジスト層332、334、336、352、354、356を残しておく。また、明細書を簡潔にする目的で、以降の記載において複数のレジスト層332、334、336、352、354、356をまとめてレジスト層350と記載する場合がある。
下部構造物201において、基板211上の導体層320は、電極212、214、216のいずれかに相当する。不透明膜340の中央部分は、可動部226に相当する。また、可動部226相当部分の下面に位置する導体層344は、電極228に相当する。更に、可動部226相当部分の側方外側に位置する部分は、一対の捩じり軸部224に相当する。更に、捩じり軸部224相当部分の外側は、固定枠222に相当する。
また、下部構造物201において、平坦膜360は、空間光変調器100における平坦部230に相当する。ここで、平坦膜360の中央部に形成された陥没部361の下面は、平坦部230のポスト232に相当する。また、平坦膜360の上面は、平坦面234に相当する。
なお、不透明膜340の両側端は、固定枠222となる部分よりも更に外側まで水平に延在する。この部分は、隣接する空間光変調素子200との間隙から基板211に向かって差し込む光を遮断する遮光部341を形成する。これにより、基板211上のCMOS素子等に入射光が差し込んで劣化することが防止される。
図26は、上記のような下部構造物201が形成された基板211の様子を模式的に示す図である。図示のように、基板211上に複数の下部構造物201が一括して形成される。
複数の下部構造物201は、ひとつの空間光変調器100を形成する個数毎に集まり、複数の群を形成する。これにより、1枚の基板211に対するウェハプロセスで、多数の空間光変調器100を一括して製造できる。なお、図示の段階では、下部構造物201の各々はレジスト層350に埋設され、露出した平坦面234の表面とレジスト層350の表面とが略面一になっている。
続いて、図27から図33までを参照して、反射部240の作製過程を説明する。まず、図27に示すように、用意されたバルク基板372の表面に、誘電体膜380が形成される。バルク基板372は、例えばシリコン単結晶基板であり、高度に平滑化された表面性状を有する。よって、バルク基板372の表面には、反射膜として高品質な誘電体層を形成できる。
図28は、誘電体膜380の断面図である。図示のように、誘電体膜380は、屈折率の異なる2種以上の誘電体薄膜、例えばAl2O3薄膜382およびSiO2薄膜384を交互に堆積させることにより形成される。Al2O3薄膜382およびSiO2薄膜384の組は数十組以上に及ぶ場合もある。誘電体膜380の成膜方法としては、イオンビームスパッタ法を例示できるが、この方法に限られるわけではない。
なお、バルク基板372上に形成された誘電体膜380には不可避に残留応力が生じている。よって、誘電体膜380を堆積させたバルク基板372をアニール処理することにより、残留応力を大幅に緩和できる。これにより、使用時に加熱と冷却を繰り返す誘電体膜380の安定性を向上させ、空間光変調器100の寿命を延ばすことができる。
次に、図29に示すように、バルク基板372の内部に、表面と平行に剥離層374を形成する。剥離層374は、例えば、イオン注入法により水素イオンをバルク基板372の内部に注入して形成できる。
続いて、図30に示すように、仮接着層392を介して誘電体膜380を上にダミー基板390に仮接着する。更に、誘電体膜380を含むバルク基板372を加熱した状態で負荷をかけることにより、バルク基板372は、剥離層374を劈開面として厚さ方向に剥離される。これにより、誘電体膜380側には、薄い平板膜370が残る。
なお、平板膜370は、機械研磨あるいは化学機械研磨によりバルク基板372を薄化して形成してもよい。また、スマートカット法により形成した平板膜370を、更に機械研磨あるいは化学機械研磨により更に薄化してもよい。
なお、仮接着層392は、例えばレジスト材により形成できる。また、ダミー基板390には、それ自体を厚さ方向に貫通するスルーホール394を設けておいてもよい。スルーホール394は、後の工程においてダミー基板390を剥離する場合に利用できる。
次に、図31に示すように、ダミー基板390に保持された平板膜370および誘電体膜380を、空間光変調器100における反射部240の形状に合わせてパターニングする。パターニング方法は、ドライエッチングまたはウェットエッチングの各種方法を適宜選択できる。
次に、図32に示すように、パターニングされた平板膜370の各々の下面に、接合層376を形成する。接合層376としては、Sn−Cu、Sn−Ag、Sn−Zn、Sn−Pb、Sn−Bi、Sn−Zn−Bi、Sn−Au等の合金材料を使用できる。
なお、上記の例では、平板膜370をパターニングした後に接合層376を設けた。しかしながら、パターニングする前の平板膜370に接合層376を形成した後に、接合層376を平板膜370と共にパターニングしてもよい。
次に、図33に示すように、ダミー基板390をダイシングする。これにより、ダミー基板390に保持された平板膜370および誘電体膜380のチップは、単一の空間光変調器100に相当する分ずつ、分割されたダミー基板390に保持される。
図34から図38は、空間光変調器100の組立過程を示す。まず、図34に示すように、基板211上に形成された下部構造物201に対して、ダミー基板390に保持された平板膜370および誘電体膜380を位置合わせする。
次に、図35に示すように、溶融させた状態で接合層376を下部構造物201の平坦面234に突き合わせ、平板膜370および平坦面234を接合する。これにより、平板膜370および平坦面234は一体化される。
次に、図36に示すように、ダミー基板390を除去する。ここで、ダミー基板390は、仮接着層392を溶融させることにより剥離できる。溶剤は、ダミー基板390のスルーホール394を通じて、誘電体膜380に接した部分にも作用する。
こうして、基板211上では、下部構造物201の上に平板膜370が接合され、平板膜370の表面に誘電体膜380が上方に向かって露出する。誘電体膜380は、図2から図4に示した誘電体膜244に相当し、空間光変調器100における反射部240となる。
次に、図37に示すように、ダイシングにより、基板211は空間光変調器100の個毎に切り分けられる。続いて、図38に示すように、下部構造物201を保護していたレジスト層350を除去する。
ここで、再び図22を参照すると、平坦膜360の両側端においてレジスト層354の表面が露出している。平坦膜360の内側にあるレジスト層356は、レジスト層354の上に積層されているので、両者は連続している。
また、レジスト層354は、レジスト層352の上に積層されているので、両者は連続する。不透明膜340の両側端においてレジスト層352とレジスト層334、332とは連続する。更に、不透明膜340の内側に位置するレジスト層336は、レジスト層334の上に積層されているので、両者は連続する。
このように、全てのレジスト層332、334、336、352、354、356が連続しているので、図37に示した状態から一括して除去することができる。よって、平坦面234を形成する平坦膜360に、レジスト除去のためのエッチングホールを設けなくてもよい。
なお、レジスト層332、334、336、352、354、356の除去は、溶解材を用いたウェットプロセスであってもよい。また、プラズマを用いた灰化によるドライプロセスであってもよい。更に、レジスト層332、334、336、352、354、356は、犠牲材料の層の一例に過ぎず、他の犠牲材料を用いても同様のプロセスを実施できる。
こうして、図1から図4までに示した空間光変調器100と同じ構造を有する空間光変調器100を、リソグラフィ技術により製造できる。リソグラフィ技術で製造することにより微細な空間光変調素子200を形成できるので、解像度の高い空間光変調器100を製造できる。
また、反射部240において反射面となる誘電体膜380を、下部構造物201の作製とは別の工程で作製するので、誘電体膜380の成膜条件を最適化できると共に、成膜後にアニール処理して残留応力を緩和できる。これにより、熱履歴に対して安定性の高い空間光変調器100を形成できる。
更に、平坦な平板膜370に形成した誘電体膜380をそのまま反射面とすることができる。よって、反射面としての誘電体膜380も平坦に仕上げることができ、空間光変調器100における有効な反射面積をより広くすることができる。
なお、各層の材料の組み合わせとしては、例えば、導体層320、344、346をアルミニウムにより、非導体層342、348および平坦構造層364を窒化珪素により、形成することを例示できる。ただし、各部の材料が上記のものに限られるわけではなく、例えば、SiOx、SiNx,Al,Cr,Al合金、などから適宜選択してもよい。
また、上記の例では、複数の下部構造物201が形成された基板211に対して、空間光変調器100の個毎に複数の反射部240を搭載する手順とした。しかしながら、一括して作製した反射部240を保持したダミー基板390をダイシングすることなく、下部構造物201の基板211と反射部240の基板を一括して貼り合わせてもよい。
逆に、下部構造物201側の基板211を、空間光変調器100の個毎にダイシングして、いわゆるチップトゥチップで反射部240と貼り合わせてもよい。更に、ひとつの下部構造物201を単位とし、反射部240も個毎に切り分けて個別に取り付けてもよい。このような組立手順の選択は、下部構造物201および反射部240の製造歩留り、完成する空間光変調器100に対する要求精度等に応じて適宜選択できる。
図39は、他の構造を有する空間光変調素子200の模式的分解斜視図である。なお、この空間光変調素子200は、以下に説明する部分を除くと、図2に示した空間光変調素子200と同じ構造を有する。そこで、図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
空間光変調素子200は、基板211の上に重ねて配される駆動部220、平坦部230および反射部240を有する。反射部240は、図1に示した空間光変調素子200と同じ形状を有する。一方、基板211の表面には、電極212、214、216に加えて、もう一対の電極213、215が配される。
駆動部220は、固定枠222および可動部226の間に、いわば同芯状に配された可動枠227を更に有する。可動枠227は、一対の捩じり軸部223を介して固定枠222から支持される。これにより、可動枠227は、固定枠222に対して、捩じり軸部223を揺動軸として揺動する。捩じり軸部223は、捩じり軸部224に対して直交する。
可動部226を支持する捩じり軸部224の一端は、可動枠227の内側に結合される。これにより、可動部226は、可動枠227に対して、捩じり軸部224を揺動軸として揺動する。よって、可動部226は、固定枠222に関して、互いに直交する二つの捩じり軸部223、224について揺動する。
なお、可動枠227は、外側および内側の縁部から下方に向かって延在するリブ229を有する。これにより、可動枠227を高い曲げ剛性および捩じり剛性を有する。よって、可動枠227および可動部226が個別に揺動して捩じり軸部223、224が弾性変形した場合も、可動枠227および可動部226は殆ど変形しない。また、残留応力の緩和等により内部応力が作用した場合も、可動枠227および可動部226は変形し難い。
図40は、空間光変調素子200の模式的断面図である。空間光変調素子200は、固定枠222を基板211に固定し、反射部240を平坦部230に、平坦部230を可動部226に順次固定した状態で、図39に示したC−C断面を示す。なお、図39と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、可動枠227は電極221を下面に有する。電極221は、基板211上の電極213、215と対向する。よって、電極213、215に駆動電圧が印加された場合、可動枠227の図中左側または右側が基板211に向かって引き付けられる。
また、可動枠227は、縁部から下方に延びたリブ229を有する。これにより、可動枠227は高い曲げ剛性を有する。一方、捩じり軸部224は、リブ225に相当する要素を有していない。
よって、電極212、214に印加された電圧により可動部226に駆動力が作用した場合、捩じり軸部224が弾性変形して、可動部226は、可動枠227に対して揺動する。更に、可動部226に支持される平坦部230および反射部240も揺動する。
なお、リブ229の下端には、可動枠227の外方および内方に向かって広がったフランジ様の部分がある。これは、リブ229を含む層をパターニングする場合に残った領域で、無くてもよい。
しかしながら、可動枠227の剛性を低下させるものではなく、むしろ向上させる場合もあるので残してもよい。これにより、パターニングの精度を著しく高くすることが避けられるので生産性向上にも寄与する。
図41は、空間光変調素子200の模式的断面図であり、図39に示したD−D断面を示す。図39および図40と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、固定枠222および可動枠227を結合する捩じり軸部223は、リブ229に相当する要素を有していない。よって、電極213、215のいずれかに駆動電圧を印加した場合、可動枠227は、捩じり軸部223を揺動軸として、基板211に対して揺動する。更に、可動部226に支持される平坦部230および反射部240も揺動する。
図42は、空間光変調器100を模式的に示す斜視図である。空間光変調器100は、単一の基板211と、基板211上に配された複数の反射部240とを備える。反射部240の表面は入射光を反射する反射面をなす。
複数の反射部240は、基板211上にマトリクス状に配置される。複数の反射部240のひとつひとつは、それぞれが空間光変調素子200の一部であって、基板211に対して個別に揺動する。これにより、空間光変調器100は、反射光に照度分布を形成できる。
よって、例えば、均一な照度分布を有する光源光を空間光変調器100で反射することにより、反射光の伝播方向を二次元的に変化させ、意図的に偏った照射パターンを形成できる。また、不均一な照度分布を有する光源光を空間光変調器100で反射して均一な照射パターンに変えることもできる。これにより、目的の照射パターンを形成する場合の駆動パターンの自由度が拡がる。
このような空間光変調器100は、リソグラフィ技術を利用してマイクロマシンとして製造することができる。これにより、微小な空間光変調素子200を数百個から数百万個備えた、解像度の高い空間光変調器100を製造できる。そのような空間光変調器100は、可変光源、露光装置、画像表示装置、光スイッチ等として用いることができる。
空間光変調器100を用いる場合の照射光の利用効率は、空間光変調素子200の反射部240における反射率に依存するので、反射率は高いことが好ましい。また、製造後の空間光変調素子200においては、反射部240の劣化による反射率低下を抑制することにより、空間光変調器100の寿命を長くすることができる。
図43は、上記空間光変調素子200の構造を模式的に示す分解斜視図である。空間光変調素子200は、順次積層された回路部210、支持部250および反射部260を備える。
回路部210は、基板211と電極212、213、214、215、216とを有する。基板211は、図42に示した空間光変調器100の基板211の一部であり、CMOS回路が造り込まれている。
一部の電極212、213、214、215は、2対の対向した位置に配される。これら2対の電極212、213、214、215は、基板211に造り込まれたCMOS回路から駆動電圧が供給される。他の電極216は、基板211の周辺部を全体に覆い、規準電圧、例えば接地電圧に結合される。
図44は、支持部250の形状を単独で示す平面図である。図43と共通の要素には同じ参照番号を付す。支持部250について、図43および図44を併せて参照しつつ説明する。
支持部250は、下部ポスト252、ショートフレクシャ253、支持枠254、ロングフレクシャ256および揺動板258を有する。4本の下部ポスト252は、空間光変調素子200ひとつ分の基板211の四隅に固定され、基板211の表面に対して直立する。
支持枠254は全体として矩形々状を有して、四隅が下部ポスト252の近傍に配される。支持枠254の角部は、支持枠254の外側に配されたショートフレクシャ253により、下部ポスト252の上端にそれぞれ結合される。
ショートフレクシャ253は、屈曲を繰り返す線状の形状を有する。これにより、ショートフレクシャ253は小さな弾性率を有するので容易に変形する。
支持枠254の内側には、支持枠254の対角線方向に2対のロングフレクシャ256が配される。ロングフレクシャ256も、屈曲を繰り返す線状の形状を有する。また、ロングフレクシャ256は、ショートフレクシャ253よりも長いので、ショートフレクシャ253よりも更に変形しやすい。
揺動板258は、ロングフレクシャ256を介して、支持枠254の四隅に結合される。これにより、揺動板258は、基板211と平行に、基板211の略中央に位置決めされる。
再び図43を参照すると、反射部260は、上部ポスト262および平坦部264を有する。平坦部264は、図中上側に平面を有する。
上部ポスト262は、平坦部264の図中下面中央から図中下方に向かって突出する。上部ポスト262の下端面は、揺動板258と略同じ形状を有して、揺動板258に結合される。
なお、図43において、空間光変調素子200における支持部250の形状と位置を、回路部210の表面に点線で示す。これにより、支持部250の各部と電極212、213、214、215との位置関係が判る。即ち、基板211上の電極212、213、214、215とロングフレクシャ256とは、互いに重なる位置を避けて配される。これにより、電極212、213、214、215において生じた静電力が平坦部264に効率よく作用する。
図45は、空間光変調素子200の模式的断面図である。図45には、図43に矢印Aで示す断面が示される。図45において、図43と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
下部ポスト252の下端は、基板211の電極216に対して固定される。下部ポスト252の上端は、ショートフレクシャ253を介して支持枠254に結合される。下部ポスト252の高さは支持枠254の厚さよりも大きいので、支持枠254は、基板211から離間した状態で、基板211と平行に位置決めされる。
ショートフレクシャ253は容易に変形するので、基板211の熱膨張等が生じた場合でも、支持枠254に変位を伝えない。このように、ショートフレクシャ253が、下部ポスト252を含む基板211側からの機械的な影響を遮断するので、空間光変調素子200の温度特性が安定する。
また、支持枠254は、ショートフレクシャ253の厚さに対して大きな厚さを有する。よって、支持枠254は、ショートフレクシャ253に対して相対的に高い剛性を有する。よって、基板211の熱膨張等により下部ポスト252が変位したような場合であっても、支持枠254は変形し難い。
揺動板258は、ロングフレクシャ256を介して支持枠254に結合される。ロングフレクシャ256は変形しやすいので、揺動板258は基板211に対して容易に揺動できる。
揺動板258はロングフレクシャ256と同程度の厚さを有するので、それ自体の曲げ剛性は低い。しかしながら、上部ポスト262と結合された状態では、殆ど変形しなくなる。
揺動板258の上面には、反射部260の上部ポスト262下端が一体的に結合される。これにより、反射部260の平坦部264は支持部250の上方に水平に支持される。また、揺動板258に結合された反射部260は、揺動板258と共に基板211に対して揺動する。
反射部260における平坦部264の図中上面には、反射膜266が配される。反射膜266は、入射光に対して高い反射率を有する。反射部260が揺動した場合は反射膜266も揺動するので、反射光の照射方向は、反射部の揺動に応じて変化する。
図46は、空間光変調素子200の模式的断面図である。図46には、図43に矢印Bで示す断面が示される。図46において、図43、図44および図45と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示の断面において、支持枠254および揺動板258は、基板211から離間した状態で、基板211に対して略平行に支持される。電極213、215は、上部ポスト262の中心を対称軸として互いに対称な位置に配される。電極213、215は、回路部210のCMOS回路を通じて、駆動電圧が印加される。
また、電極213、215は、平坦部264の下面に対向する。平坦部264は、電極216、支持部250および上部ポスト262を通じて規準電位に電気的に結合される。よって、電極213、215に駆動電圧が印加された場合、電極213、215と平坦部264との間には静電力が作用する。
図47は、空間光変調素子200の断面図であり、図46と同じ断面を示す。図46と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
空間光変調素子200において、一対の電極213、215に極性が反転した駆動電圧が印加された場合、静電力の作用により平坦部264は揺動して傾斜する。これにより、反射膜266も傾斜するので、反射膜266により反射された入射光の照射方向が変化する。平坦部264の傾きは、電極213、215に印加する駆動電圧の高さに応じて変化する。このように、空間光変調素子200は、電気的な制御により反射光の照射方向を変化させることができる。
なお、電極213、215に対する駆動電圧の印加が停止した場合は、ロングフレクシャ256の弾性により、揺動板258および反射部260は、基板211に対して略平行な状態に戻る。よって、駆動電圧が解除された場合は、空間光変調素子200の反射特性は初期状態に戻る。
図61を除く図48から図67までは、空間光変調素子200の製造過程を、図45と同じ断面において段階的に示す断面図である。図48および図49は回路部210を作製する過程の一部を、図50から図56までは、支持部250を作製する過程を、図57から図62までは反射部260を作製する過程をそれぞれ示す。また、図63以降は、反射膜266の保護に関連する過程を示す。
なお、作製過程の空間光変調素子200における各要素は、完成した空間光変調素子200において対応する要素と異なる形状または状態で含まれている場合がある。そこで、下記の説明においては、作製段階の要素に固有の参照番号を付して説明した上で、各要素が完成した段階で、これまでに説明した空間光変調素子200の要素との対応関係を説明する。
まず、図48に示すように、空間光変調素子200を形成する基板211を用意して、電極212、213、214、215、216となる導体層322を全面に堆積させる。基板211の材料としては、シリコン単結晶基板の他、化合物半導体基板、セラミックス基板等、平坦な表面を有する部材を広く使用できる。基板211には、駆動電力を供給する配線、CMOS回路等が予め形成されている。
導体層322は、Al、Cu等の一般的な導体材料の他、Tiを主体とする合金、Alを主体とする合金、Cuを主体とする合金等の金属により形成できる。導体層322の成膜方法は、導体層322の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法、鍍金法等から適宜選択できる。
次に、図49に示すように、導体層322がパターニングされる。これにより、空間光変調素子200における電極216が形成される。なお、図示の断面には現れていないが、他の電極212、213、214、215も同時に形成される。
また、電極212、214、216としてパターニングされた導体層322の表面を、更に、絶縁性の薄膜により被覆してもよい。これにより、電極212、213、214、215の短絡に対する耐性を向上させることができる。
絶縁層の材料としては、例えば、基板211の材料の酸化物、窒化物等を使用できる。また、絶縁層は、誘電率の高い多孔質体であってもよい。絶縁材料層の成膜方法は、材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図50に示すように、基板211および導体層322を犠牲層393により覆って、基板211および導体層322の表面よりも上方に平坦な成膜下地が形成される。犠牲層393は、例えば酸化珪素を用いることにより平坦な成膜下地を形成できる。犠牲層393の成膜方法は、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次いで、犠牲層393により形成した成膜下地の表面に金属層323を積層させる。金属層323は、例えばTiを主体とする合金、Alを主体とする合金等を材料として、各種の物理気相析出法、化学気相析出法、鍍金法等により形成できる。
続いて、図51に示すように、ドライエッチング等により金属層323がパターニングされる。これにより、空間光変調素子200において支持枠254の一部となる金属パターンが形成される。
次に、空間光変調素子200における支持部250の支持枠254以外の部分が形成される。まず、図52に示すように、犠牲層393および金属層323の表面全体に新たな犠牲層395を堆積させる。これにより、金属層323が犠牲層395に埋め込まれる。犠牲層395の材料および成膜方法は、最初の犠牲層393と同じでもよいが、異なっていてもよい。
続いて、図53に示すように、犠牲層395の表面の高さが調整され、犠牲層395の表面と金属層323の表面とが連続した表面をなす状態にされる。犠牲層395表面の高さは、例えば、犠牲層395の表面をHF蒸気法により厚さ方向に一部除去することにより調整できる。
次に、図54に示すように、2つの犠牲層393、395が併せてパターニングされ、導体層322に達するコンタクトホール317が形成される。コンタクトホール317は、例えば、ドライエッチングにより形成できる。こうして、基板211上には、立体的な形状を有する成膜下地が形成される。
次に、図55に示すように、露出している導体層322、犠牲層395および金属層323の表面全体に、新たな金属層325が堆積される。これにより、金属層325の一部は、金属層323と一体化される。
こうして、厚さの異なる領域を含む一体的な金属層が形成される。金属層325は、例えばTiを主体とする合金、Aを主体とする合金等、一部の下地となる金属層323と同じ材料か、少なくとも親和性の高い材料により形成できる。成膜方法は、各種の物理気相析出法、化学気相析出法、鍍金法等から適宜選択できる。
次に、図56に示すように、金属層325が、ドライエッチング等によりパターニングされる。これにより、空間光変調素子200における支持部250の要素が形成される。即ち、図中に括弧で囲んで示すように、下部ポスト252、ショートフレクシャ253、支持枠254、ロングフレクシャ256および揺動板258が、金属層323、325により形成される。
金属層325と下層の金属層323は一体化しているので、支持枠254は、ショートフレクシャ253、ロングフレクシャ256および揺動板258よりも膜厚が大きく、支持枠254は高い剛性を有する。このように、2層の犠牲層393、395を成膜下地として用いることにより、リソグラフィ技術で立体的な構造を形成できる。
次に、図57に示すように、新たな犠牲層397を堆積する。これにより、金属層325および犠牲層395の表面が、犠牲層397に埋め込まれる。犠牲層395の材料および成膜方法は、最初の犠牲層393と同じでもよいが、異なっていてもよい。
更に、図58に示すように、犠牲層397がパターニングされ、コンタクトホール319が形成される。コンタクトホール319は、金属層325により形成された揺動板258の表面に達する。コンタクトホール319は、例えば、ドライエッチングにより形成できる。こうして、基板211上の最表面には、再び立体的な形状を有する成膜下地が形成される。
続いて、図59に示すように、犠牲層397および金属層325の表面全体に、新たな金属層327が堆積される。金属層327は、例えばTiを主体とする合金、Aを主体とする合金等により形成できる。成膜方法としては、各種の物理気相析出法、化学気相析出法、鍍金法等から適宜選択できる。
こうして形成された金属層327は、金属層325が形成する揺動板258に隣接する部分では、反射部260の上部ポスト262となる。また、金属層327のうち、犠牲層397の上面に堆積された部分は、反射部260における平坦部264となる。
なお、上記の例では、金属層327により上部ポスト262および平坦部264を一括して形成した。このため、平坦部264の中央に陥没部が生じている。このような陥没部が生じることを避ける場合は、陥没部を他の犠牲層で埋めた上で改めて平坦部264を形成してもよい。これにより、全体に平坦な平坦部264を形成できる。
続いて、図60に示すように、誘電体多層膜381が、金属層327の表面に堆積される。誘電体多層膜381は、空間光変調素子200において反射膜266となる。
図61は、誘電体多層膜381の構造を示す模式的な断面図である。誘電体多層膜381は、屈折率の異なる2種以上の誘電体薄膜、例えばAl2O3薄膜382およびSiO2薄膜384を交互に堆積させることにより形成される。
Al2O3薄膜382およびSiO2薄膜384の組を積層する。Al2O3薄膜382およびSiO2薄膜384の各々の膜厚は、数十から数百nm程度であり、積層数は数十組以上に及ぶ場合もある。誘電体多層膜381の成膜方法は、イオンビームスパッタ法を例示できるがこの方法に限られるわけではない。
なお、材料の組み合わせにより、金属層327と誘電体多層膜381の最下層との間で化学反応、拡散等が生じる場合がある。このような場合は、金属層327の表面に誘電体多層膜381を堆積させる前に、金属層327の表面に障壁層を設け、当該障壁層の表面に誘電体多層膜381を堆積させることが好ましい。
また、誘電体多層膜381の平坦性は、反射膜266としての反射率に影響する。また、誘電体多層膜381の平坦性は、下地となる金属層327の平坦性の影響を受ける。よって、誘電体多層膜381の形成に先立って、研磨等により金属層327の表面を平坦にする処理をしてもよい。
更に、金属層327の表面に形成した誘電体多層膜381には残留応力が生じる場合がある。よって、誘電体多層膜381を堆積させた後に加熱する等して残留応力を緩和させてもよい。これにより反射膜266の平坦性が安定するので、反射効率を向上させることができる。
続いて、図62に示すように、誘電体多層膜381の縁部がトリミングされる。これにより、金属層327の一部が露出する。誘電体多層膜381は、例えばドライエッチングによりトリミングできる。
次に、図63に示すように、誘電体多層膜381の表面と、その周囲に露出した金属層327の表面に、犠牲保護層396が堆積される。上記トリミングにより金属層327が誘電体多層膜381の側方に延在しているので、犠牲保護層396は、誘電体多層膜381の上面と側面とを隙間なく覆う。
犠牲保護層396の材料としては、金属層327の下層に形成された犠牲層393、395、397を除去する場合に用いるエッチャントに対して耐性を有するものであれば、任意の材料を選択できる。ただし、犠牲保護層396の材料は、それ自体が誘電体多層膜381に対して化学的に安定であることが望ましい。
そのような材料としては、例えばポジレジスト、ナノインプリント用有機膜等を例示できる。犠牲保護層396としてレジストを用いる場合は、スピンコートにより塗布できる。
次に、図64に示すように、犠牲保護層396の縁部がトリミングされる。犠牲保護層396は、例えばドライエッチングによりトリミングできる。これにより、犠牲保護層396の周囲に金属層327の一部が露出する。
犠牲保護層396をトリミングする場合は、犠牲保護層396が、誘電体多層膜381よりも広い領域に残ることが好ましい。これにより、犠牲保護層396は、誘電体多層膜381の側端面を保護できる。
次に、図65に示すように、犠牲保護層396をマスクとして、金属層327をパターニングする。金属層327は、例えばドライエッチングによりパターニングできる。これにより、金属層327および犠牲保護層396の外側の領域に、犠牲層397の上面が露出する。誘電体多層膜381の表面は、側端面も含めて、すべて金属層327または犠牲保護層396に覆われている。
なお、犠牲層397を露出させるという観点からは、金属層327の一部が除去されれば十分だが、一枚の基板211の上に複数の空間光変調素子200を一括して形成する場合は、この段階で、隣接する空間光変調素子200の金属層327が切断される。これにより、空間光変調素子200毎に独立した平坦部264が形成される。
続いて、図66に示すように、犠牲層393、395、397が除去される。3層の犠牲層393、395、397は互いに連続して形成されているので、気体のエッチャントを用いるHF蒸気法で一括して除去できる。
この段階では、誘電体多層膜381は、犠牲保護層396に覆われているので、エッチャントに接触しない。犠牲保護層396は、HF蒸気等のエッチャントに対して耐性を有するので、誘電体多層膜381をエッチャントから保護できる。
次に、図67に示すように、犠牲保護層396が除去される。犠牲保護層396は、例えば酸素プラズマを用いたドライエッチングにより、誘電体多層膜381に影響を与えることなく取り除くことができる。こうして、高い反射率を有する誘電体多層膜381により形成された反射膜266を備える空間光変調素子200が完成する。
上記の製造過程では、犠牲保護層396により保護されることにより、犠牲層393、395、397を除去する場合に用いるエッチャントから誘電体多層膜381の劣化が防止される。よって、このような空間光変調素子200を、単一の基板211に複数一括して形成することにより、反射率の高い空間光変調器100を製造できる。
また、誘電体多層膜381を保護した犠牲保護層396を取り除くことにより、犠牲保護層396の表面に残留していたエッチャントの成分も完全に除去される。これにより、空間光変調素子200における反射効率の経時的な劣化が抑制される。
なお、上記の例では、図64に示した段階で犠牲保護層396をトリミングした後に、図65に示した段階で金属層327をパターニングした。しかしながら、誘電体多層膜381を傷めるプロセスさえ避ければ、金属層327を先にパターニングした後に犠牲保護層396を形成して、更に犠牲保護層396をパターニングする手順でもよい。いずれの場合も、犠牲保護層396の存在下で犠牲層393、395、397を除去することにより、誘電体多層膜381をエッチャントから保護することが好ましい。
図68は、上記の例とは別の構造を有する誘電体多層膜383の断面図である。誘電体多層膜383は、図60に示した段階で、金属層327の表面に形成される。
図示の誘電体多層膜383は、互いに水平に積層された屈折率の異なる2種以上の誘電体薄膜、例えばAl2O3薄膜382およびSiO2薄膜384を交互に堆積して形成される。更に、誘電体多層膜383における最上層のAl2O3薄膜382は、誘電体多層膜383の側面に回り込んで、金属層327の表面まで連続して形成される。
誘電体多層膜383を形成するAl2O3薄膜382およびSiO2薄膜384のうち、Al2O3薄膜382は、犠牲層393、395、397を除去する場合に用いるHF蒸気のようなエッチャントに対して化学的耐性を有する。よって、上記のような構造を有する誘電体多層膜383は、それ自体のAl2O3薄膜382を恒久保護層398とすることができる。なお、Al2O3薄膜382を、例えばスパッタリング法、化学気相析出法等の成膜法で堆積させることにより、誘電体多層膜383の表面から側端面まで連続した恒久保護層398を成膜できる。
これにより、図63から図66までに示した犠牲保護層396の形成、パターニングおよび除去の段階を省くことができる。また、恒久保護層398は、誘電体多層膜381の一部と同じ材料で形成されるので、誘電体多層膜381の成膜環境で引き続き成膜できる。よって、空間光変調素子200の製造過程を一層簡素化できる。
また、Al2O3薄膜382による恒久保護層398は、空間光変調素子200の完成後も、誘電体多層膜381の保護層として恒久的に利用できる。これにより、空間光変調素子200の経時的な特性劣化を抑制して、寿命を長くすることができる。
恒久保護層398としてのAl2O3薄膜382は、他のAl2O3薄膜382よりも膜厚を大きくすることが好ましい。これにより、恒久保護層398として性能を向上させることができる。
また、恒久保護層398は、空間光変調素子200の完成後も誘電体多層膜381の表面に残り、照射光および反射光を透過させる。よって、照射光および反射光に対して光学的な影響が生じることを防止する目的で、恒久保護層398は、誘電体多層膜381が反射する入射光の波長に対して1/2波長の整数倍となる膜厚を有することが好ましい。
図69は、他の誘電体多層膜385の断面図である。図60に示した段階で、金属層327の表面に形成される。
図示の誘電体多層膜385は、誘電体互いに水平に積層された屈折率の異なる2種以上の誘電体薄膜、例えばAl2O3薄膜382およびSiO2薄膜384を交互に堆積して形成される。ただし、誘電体多層膜385における最上層は、犠牲層393、395、397のエッチャントに対して耐性を有するAl2O3薄膜382が充てられる。
また、誘電体多層膜385は、誘電体多層膜383の側端面を上端から金属層327の表面まで連続して覆う恒久保護層398を更に有する。これにより、犠牲層393、395、397のエッチャントに対する耐性がないSiO2薄膜384を、外部から遮断できる。
よって、図68に示した誘電体多層膜383の場合と同様に、犠牲保護層396を用いることなく、犠牲層393、395、397を除去できる。また、恒久保護層398を、誘電体多層膜381の成膜環境で連続して形成できる。更に、空間光変調素子200の完成後も誘電体多層膜381を保護できる。
なお、誘電体多層膜381の側面に形成される恒久保護層398は、誘電体多層膜381の反射膜266としての特性に影響しない。よって、恒久保護層398の厚さおよび形状は自由に選択できる。
図70は、空間光変調素子202の断面図である。空間光変調素子202は、誘電体多層膜381により形成された反射膜266の表面を覆う恒久保護層398を備える点を除いて、図67に示した空間光変調素子200と同じ構造を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
空間光変調素子200を製造する場合は、犠牲保護層396を取り除いた後、改めて恒久保護層398を形成する。これにより、既に説明した通り、犠牲層393、395、397を除去する場合に犠牲保護層396の表面に残留したエッチャントの成分を除去できる。また、恒久保護層398を設けることにより、大気中の酸素等から誘電体多層膜381を恒久的に保護して、空間光変調素子202の寿命を延ばすことができる。
ここまで、単独の空間光変調素子200について作製過程を説明した。しかしながら、空間光変調素子200は、ひとつの基板211上に複数一括して作製することにより空間光変調器100とすることができる。また、大型の基板211を用いて、それぞれが複数の空間光変調素子200を有する、複数の空間光変調器100を製造することもできる。
図71から図73は、複数の空間光変調器100を製造する場合の製造過程の一部を模式的に示す図である。図70までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。なお、図71から図73における犠牲層391は、図65までにおいて示した3層の犠牲層393、395、397をまとめて示している。
図71に示す状態においては図65に示した状態と同様に、金属層327のパターニングを含めて空間光変調素子200に対する加工は既に完了している。しかしながら、空間光変調素子200の平坦部264よりも下方の部分は犠牲層391に埋まっている。また、金属層327および誘電体多層膜381の表面は、犠牲保護層396により覆われている。
既に説明したように、犠牲保護層396の存在下で犠牲層391を除去することにより基板211上に空間光変調素子200が完成する。しかしながら、犠牲層391を除去してしまうと、空間光変調素子200における反射部260が揺動しやすくなる。
そこで、図72に点線Dで示すように、犠牲層391および犠牲保護層396を残したまま基板211をダイシングしてもよい。これにより、ダイシングおよび搬送により生じる振動等の機械的負荷から空間光変調素子200の支持部250、反射部260等を保護できる。
ダイシングして切り分けられた空間光変調器100には犠牲保護層396が残っているので、図73に示すように、HF蒸気法等の方法で犠牲層391を除去しても、誘電体多層膜381を劣化させることはない。こうして、空間光変調器100の製造歩留りを向上させることができる。
なお、上記の例では、空間光変調素子200において、誘電体多層膜381以外の構造物を主に金属材料を用いて形成した。しかしながら、空間光変調素子200の材料は金属材料に限定されるわけではなく、例えば、基板211を形成する材料の酸化物、窒化物、炭化物等を用いることもできる。また、それぞれの層を、複数の材料を用いたラミネート構造として、部材の軽量化等を図ることもできる。
なお、上記のような空間光変調素子200において、誘電体膜380を形成する誘電体薄膜の各層の膜厚Tは、入射光線の波長λ、誘電体薄膜の屈折率n、入射光線の入射角θに対して、下記の式で示す値を含む範囲とすることが好ましい。
T=λ/(4ncosθ)[nm]
例えば、入射光線の波長λが193nmの場合、誘電体膜380において高屈折率層をAl2O3で形成し、低屈折率層をSiO2で形成すると、高屈折率層Al2O3の厚さは25nm程度、低屈折率層SiO2の厚さは30nm程度とすることが好ましい。
また、誘電体膜380を、高反射率を有する反射基材の上に重ねて形成してもよい。これにより、誘電体多層膜の層数を減らしつつ、高い反射率を得ることができる。更に、反射基材を設けない場合に比較して誘電体多層膜の層数を少なくすることができるので、誘電体多層膜の応力による反射部240、260の反りを低減できる。
入射光の波長λが193nmの場合を例にあげると、反射基材の材料として高い反射率を有する材料としてはAlまたはAl合金を例示できる。また、Alと比較すると反射率は低いが、193nmで比較的高い反射率を有する材料としてシリコンも例示できる。
シリコンには、単結晶シリコンとアモルファスシリコンがあり、アモルファスシリコンは単結晶シリコンに比べると反射率が若干低い。しかしながら、数マイクロメール程度の厚膜で成膜できるという利点がある。更に、厚膜のアモルファスシリコン上に薄膜のAl合金を形成するなどして、基材の厚膜化と高反射率化の両立を図ることもできる。
例えば、アルミニウム(Al)により形成した反射基材に、Al2O3により形成した高屈折率層と、SiO2により形成した低屈折率層とを、反射基材の直上をAl2O3にして交互に積層した構造にした場合、9層以上では95%以上の反射率が得られる。更に、層数を増やせば反射率も増加するが、19層以上では反射率の増加率が鈍る。また、ミラーの反り増大も勘案すると誘電体多層膜の層数は19層以下にすることが好ましい。
更に、上記の実施形態においては、反射部240の傾斜方向および傾斜角度を個別に変更できる空間光変調素子200を二次元的に配列することにより空間光変調器100を形成した。しかしながら、空間光変調器100を形成する場合には、他の構造を有する空間光変調素子200を用いることもできる。
他の空間光変調素子200としては、米国特許第7,206,117号公報に開示されているように、基板211に対する反射部240の高さを変化させることにより反射光の光路を変化させる素子を例示できる。このように、空間光変調素子200としては、一次元的または二次元的に配列した場合に、反射部240の位置および姿勢を個別に変更できるものを広く選択できる。
図74は、空間光変調器100を含む露光装置400の模式図である。露光装置400は、照明光発生部500、照明光学系600および投影光学系700を備える。空間光変調器100は、照明光発生部500に配される。
照明光発生部500は、制御部510、光源520、空間光変調器100、プリズム530、結像光学系540、ビームスプリッタ550および計測部560を有する。光源520は、照明光Lを発生する。光源520が発生した照明光Lは、光源520の発光機構の特性に応じた照度分布を有する。このため、照明光Lは、照明光Lの光路と直交する断面において原画像I1を有する。
光源520から出射された照明光Lは、プリズム530に入射する。プリズム530は、照明光Lを空間光変調器100に導いた後、空間光変調器100により反射された照明光Lを再び外部に射出する。空間光変調器100は、制御部510の制御の下に入射した照明光Lを変調して反射する。空間光変調器100の構造と動作については、図42を参照して既に説明した通りである。
空間光変調器100を経てプリズム530から出射された照明光Lは、結像光学系540を経て、後段の照明光学系600に入射される。結像光学系540は、照明光学系600の入射面612に照明光画像I3を形成する。
ビームスプリッタ550は、結像光学系540および照明光学系の間において、照明光Lの光路上に配される。ビームスプリッタ550は、照明光学系600に入射する前の照明光Lの一部を分離して計測部560に導く。
計測部560は、照明光学系600の入射面612と光学的に共役な位置で照明光Lの画像を計測する。これにより、計測部560は、照明光学系600に入射する照明光画像I3と同じ画像を計測する。よって、制御部510は、計測部560により計測される照明光画像I3を参照して、空間光変調器100を帰還制御できる。
照明光学系600は、フライアイレンズ610、コンデンサ光学系620、視野絞り630および結像光学系640を含む。照明光学系600の出射端には、マスク710を保持したマスクステージ720が配される。
フライアイレンズ610は、並列的に緻密に配された多数のレンズ素子を備え、後側焦点面にレンズ素子の数と同数の照明光画像I3を含む2次光源を形成する。コンデンサ光学系620は、フライアイレンズ610から出射された照明光Lを集光して視野絞り630を重畳的に照明する。
視野絞り630を経た照明光Lは、結像光学系640により、マスク710のパターン面に、視野絞り630の開口部の像である照射光画像I4を形成する。こうして、照明光学系600は、その出射端に配されたマスク710のパターン面を、照射光画像I4によりケーラー照明する。
なお、照明光学系600の入射面612でもあるフライアイレンズ610の入射端に形成される照度分布は、フライアイレンズ610の出射端に形成される2次光源全体の大局的な照度分布と高い相関を示す。よって、照明光発生部500が照明光学系600に入射させる照明光画像I3は、照明光学系600がマスク710に照射する照明光Lの照度分布である照射光画像I4にも反映される。
投影光学系700はマスクステージ720の直後に配され、開口絞り730を備える。開口絞り730は、照明光学系600のフライアイレンズ610の出射端と光学的に共役な位置に配される。投影光学系700の出射端には、感光性材料を塗布された基板810を保持する基板ステージ820が配される。
マスクステージ720に保持されたマスク710は、照明光学系600により照射された照明光Lを反射または透過する領域と吸収する領域とからなるマスクパターンを有する。よって、マスク710に照明光画像I4を照射することにより、マスク710のマスクパターンと照明光画像I4自体の照度分布との相互作用により投影光画像I5が生成される。
投影光画像I5は、基板810の感光性材料に投影されて、要求されたパターンに従って感光材料を感光させる。このように、空間光変調器100を備えた露光装置400は、光源マスク最適化法を実行できる。
なお、図74では照明光Lの光路を直線状に描いているが、照明光Lの光路を屈曲させることにより露光装置400を小型化できる。また、図74は、照明光Lがマスク710を透過するように描いているが、反射型のマスク710が用いられる場合もある。
図75は、照明光発生部500の部分拡大図であり、露光装置400における空間光変調器100の役割を示す図である。プリズム530は、一対の反射面532、534を有する。プリズム530に入射した照明光Lは、一方の反射面532により、空間光変調器100に向かって照射される。
既に説明した通り、空間光変調器100は、個別に揺動させることができる複数の反射部260を有する。よって、制御部510が空間光変調器100を制御することにより、要求に応じた任意の光源画像I2を形成できる。
空間光変調器100から出射された光源画像I2は、プリズム530の他方の反射面534により反射され、図中のプリズム530右端面から出射される。プリズム530から出射された光源画像I2は、結像光学系540により、照明光学系600の入射面612に照明光画像I3を形成する。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置およびシステムの動作、手順、ステップおよび段階等の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、前の処理の出力を後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現し得る。請求の範囲、明細書および図面において、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。