以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、空間光変調器100の外観を示す模式的斜視図である。空間光変調器100は、基板210および反射鏡230を備える。
基板210上に二次元的に配列されてマトリクスを形成する複数の反射鏡230は、それぞれ数μmから百数十μm程度の寸法を有し、基板210に対して個別に揺動させることができる。よって、図示のように一部の反射鏡230が揺動して傾斜した状態で光を反射させると、反射光の照度分布が変化する。よって、反射鏡230の揺動を制御することにより、任意の照度分布を形成できる。
図2は、単位素子200の模式的分解斜視図である。単位素子200は1枚の反射鏡230に係る構造物であり、空間光変調器100においては、複数の反射鏡230のそれぞれが同様の構造物に支持される。
単位素子200は、基板210の上に搭載される駆動部220と、駆動部220に搭載される反射鏡230とを有する。また、基板210の表面には、電極212、214、216が配される。
駆動部220は、固定枠222および可動部226を有する。固定枠222は、上面が開放された中空の部材により形成されて、単位素子200の外周を包囲する方形の枠をなす。固定枠222は、基板210上で、電極216の上に固定される。なお、図1に示したように、空間光変調器100では、単位素子200が多数配列されるが、電極216は共通な電位、例えば接地電位に接続され、空間光変調器100全体の基準電位を共通にする。
固定枠222が基板210に対して固定された場合、基板210上の一対の電極212、214は、図中に点線で示すように、可動部226の縁部近傍に位置する。よって、可動部226の下面と、電極212、214とは、互いに対向する。
可動部226は、固定枠222の内側において、固定枠222の内側の面から捩じり軸部224を介して支持される。捩じり軸部224の一端は、固定枠222の内面に対して固定される。
捩じり軸部224の他端は、可動部226の周縁部から下方に延在するリブ225に対して固定される。捩じり軸部224は、弾性的に捩じり変形するので、可動部226は、捩じり軸部224を揺動軸として基板210に対して揺動する。しかしながら、リブ225により高い曲げ剛性を有するので、可動部226は変形し難い。
なお、リブ225の下端には、可動部226の外方に向かって広がったフランジ様の部分がある。これは、リブ225を含む層をパターニングする場合に残った領域で、無くてもよい。しかしながら、可動部226の剛性を低下させるものではなく、むしろ向上させる場合もあるので残してもよい。これにより、パターニングの精度を著しく高くすることが避けられるので生産性向上にも寄与する。
反射鏡230は、上面に反射率の高い反射面234を有する。反射面234は、薄膜として堆積された金属、例えばアルミニウム薄膜により形成される。反射鏡230の下面には、下方に向かって突出したポスト232が配される。
ポスト232は、図中に点線で示す可動部226の略中央に固定される。これにより、可動部226が基板210に対して揺動した場合、反射鏡230も可動部226と共に揺動する。
このように、駆動部220と反射鏡230とを個別に形成できる構造を有するので、それぞれの機能に適した構造と材料を選択できる。また、駆動部220の面積よりも大きい面積の反射面234を形成できるので、反射効率の高い単位素子200を形成できる。
図3は、単位素子200の模式的断面図である。単位素子200は、固定枠222を基板210に固定し、反射鏡230を可動部226に固定した状態で、図2に示したA−A断面を示す。図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、可動部226は、下面に電極228を有する。電極228は、基板210上の電極212と対向する。
また、可動部226は、縁部から下方に延びたリブ225を有する。これにより、可動部226は、高い曲げ剛性を有する。一方、捩じり軸部224は、リブ225に相当する要素を有していない。よって、可動部226に後述する駆動力が作用した場合、捩じり軸部224が弾性変形して、可動部226は、変形することなく変位する。
図4は、単位素子200模式的の断面図であり、図2に示したB−B断面を示す。なお、図2および図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、基板210上の一対の電極212、214のそれぞれは、可動部226の端部近傍に対向する。よって、電極212、214のいずれかに駆動電圧を印加した場合、電極228のいずれかの端部に静電力が作用する。
このように、可動部226は、捩じり軸部224により固定枠222に結合されている。よって、電極212、214のいずれかから電極228に静電力が作用した場合、可動部226は、捩じり軸部224を揺動軸として揺動する。よって、可動部226に対して固定された反射鏡230も揺動する。
なお、図示の例では、電極214に駆動電圧が印加され、電極228の図中右側が、基板210の方に引き付けられる。これにより、反射鏡230の反射面234は右方に傾く。
再び図1を参照すると、反射鏡230のそれぞれに設けた上記のような構造に対して駆動電力を個別に供給または遮断することにより、複数の反射鏡230のそれぞれを個別に制御できる。よって、空間光変調器100にいったん反射させることにより任意の照射パターンを形成でき、可変光源、露光装置、画像表示装置、光スイッチ等として使用できる。
図5から図26までは、図1から図4までに示した空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。なお、図5から図26までに示すのは作製過程なので、空間光変調器100の対応する要素が異なる形状または状態で含まれている場合がある。そこで、これらの図について固有の参照番号を付与して各図の内容を説明した上で、図26において、図1から図4までに示した空間光変調器100との対応関係を示す。
図5に示すように、空間光変調器100が形成される基板210の表面直上には、下側の絶縁層312が堆積される。これにより、基板210の表面は絶縁層312により覆われる。
基板210の材料としては、シリコン単結晶基板の他、化合物半導体基板、セラミックス基板等、平坦な表面を有する部材を広く使用できる。絶縁層312の材料としては、例えば、基板210の材料の酸化物、窒化物等を使用できる。また、絶縁層312は、誘電率の高い多孔質体であってもよい。絶縁層312の成膜方法としては、絶縁層312の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図6に示すように、絶縁層312の上に、パターニングした導体層320が形成される。導体層320は、空間光変調器100において、電極212、214、216となる。導体層320の材料としては、アルミニウム、銅等の金属を例示できる。導体層320の成膜方法としては、導体層320の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法、鍍金法等から適宜選択できる。
次に、図7に示すように、導体層320の表面および導体層320のパターンの間隙に露出する下側の絶縁層312の表面が、上側の絶縁層314により被覆される。このとき、上側の絶縁層314の下に導体層320が存在するか否かに応じて、上側の絶縁層314の表面には起伏が生じる。
次に、図8に示すように、上側の絶縁層314の表面に形成された起伏がレジスト層332により平坦化される。これにより、平坦な下地の上で、以下に説明する工程を実行できる。なお、レジスト層332の塗布は、スピンコート法、スプレイコート法等を適宜選択できる。
次に、図9に示すように、後述する非反射膜の成膜下地が形成される。成膜下地は2層からなり、図9に示す段階では、下側のレジスト層334が平坦化された絶縁層314上に形成される。また、レジスト層334には、レジスト材料の塗布、プリベイク、露光、現像、ポストベイクを順次実行することによりパターニングされて、2対の側壁335が形成される。
次に、図10に示すように、下側のレジスト層334の上に、上側のレジスト層336が形成される。レジスト層336もパターニングされ、下側のレジスト層334の側壁335の上方にそれぞれ側壁337を、それとは別に更に2対の側壁339を形成している。これにより、上側のレジスト層336の表面から見ると、浅い側壁339と、深い側壁337、335とが形成される。
これら下側および上側のレジスト層334、336は、フォトリソグラフィによりパターニングできる。即ち、レジスト層334、336を感光性材料により形成して、設計仕様に従ったパターンで露光することにより、レジスト層334、336を要求に応じた形状に成形できる。また、プラズマエッチング等のドライエッチングの手法により、レジスト層334、336を加工してパターニングしてもよい。
ただし、フォトリソグラフィによるパターニングは平面的なものであり、側壁335、337、339のような立体的構造を形成する目的で、立体的な下地層を形成することは難しい。そこで、図9、図10に示したように、複数のレジスト層334、336を用いることにより、立体的な成膜下地を形成できる。
次に、図11に示すように、絶縁層314およびレジスト層334、336により形成された成膜下地の上に、非導体層342が堆積される。形成された非導体層342は、レジスト層334、336の形状に倣って立体的な形状を有する。これにより、形成された非導体層342を含む薄膜の構造物は、高い断面二次モーメントを有する。
非導体層342の材料としては、各種酸化物、窒化物を使用できる。また、非導体層342を形成する方法としては、非導体層342の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図12に示すように、レジスト層334、336の側壁335、337の内側底部を除去して、導体層320に到達するコンタクトホール315を形成する。コンタクトホール315は、例えば、ドライエッチングにより形成できる。
次に、図13に示すように、非導体層342の上に、パターニングされた導体層344が形成される。これにより、コンタクトホール315の内側から側壁335、337の上端に到達する一対の柱状の構造物と、側壁339に挟まれたレジスト層336のランド上に形成された平坦な領域とが導体層344として残る。側壁335、337の内側に形成された導体層344の構造物は、導体層320のいずれかのランドと電気的に結合される。
次に、図14に示すように、非導体層342および導体層344の表面全体を覆う導体層346が形成される。これにより、パターニングされた導体層344は、今度の導体層346により電気的に結合される。導体層346の材料は、導体層344の材料と同じであっても、異なっていてもよい。
次に、図15に示すように、導体層346の表面全体を覆う上側の非導体層348が形成される。上側の非導体層348は、導体層344、346の下側に位置する非導体層342と同じ材料により形成される。成膜方法も、下側の非導体層342と同じ方法で成膜できる。
これにより、互いに同じパターンと形状を有する、下側の非導体層342、導体層344、346および上側の非導体層348により3層構造の非反射膜340が形成される。なお、非反射膜340の表面は、反射膜の材料には向かない非導体層342、348が現れているので、3層構造全体を非反射膜340と呼んでいる。しかしながら、後述する反射膜と区別する目的で非反射膜340と記載しているに過ぎない。
ここで、非反射膜340は、表裏に同じ材料で形成された非導体層342、348を有するので、温度変化により導体層344、346および非導体層342、348の間で生じるバイメタル効果が打ち消される。これにより、非反射膜340の形状が安定する。また、非反射膜340全体としては、後述する反射膜と同じ材料を用いて形成されているので、反射膜との熱膨張率差も生じない。
次に、図16に示すように、非反射膜340の一部が除去され、駆動部220の外形が形成される。これにより、非反射膜340の両端において、非反射膜340の下層に位置するレジスト層334が露出される。非反射膜340は、ドライエッチングによりパターニングできる。
次に、図17に示すように、非反射膜340の上面、即ち、非導体層348の表面を、レジスト層352により平坦化する。これにより、再び平坦な下地の上で、以下に説明する工程を実行できる。なお、レジスト層332の塗布は、スピンコート法、スプレイコート法等を適宜選択できる。
次に、再び2層構造のレジストにより成膜下地を生成する。即ち、まず、図18に示すように、平坦化されたレジスト層352および非導体層348の表面に、2層構造のうち下側のレジスト層354が形成される。更に、レジスト層354はパターニングされ、略中央に側壁353が形成される。
次に、図19に示すように、下側のレジスト層354の上に、2層構造のうち上側のレジスト層356が形成される。上側のレジスト層356もパターニングされており、下側のレジスト層354の側壁353の上方に形成された側壁355と、側方両端近傍に形成された側壁357とを有する。こうして、レジスト層354、356により、立体的な成膜下地が形成される。
次に、図20に示すように、レジスト層354、356の表面全体に、反射膜材料層362が形成される。このとき、側壁353の内側では、反射膜材料層362が、非反射膜340の表面に結合される。
反射膜材料層362の形成に用いる反射膜材料としては、例えばアルミニウム等の金属材料を例示できる。また、反射膜材料として、非反射膜340の導体層344、346と同じ材料を用いてもよい。反射膜材料層362の形成方法としては、反射膜材料層362の材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図21に示すように、反射膜材料層362の表面全体に、非反射膜材料層364を堆積させる。非反射膜材料層364を形成する非反射膜材料としては、非反射膜340の非導体層342、348と同じ材料を用いてもよい。非反射膜材料層364の形成方法としては、非反射膜材料層364の材料に応じて各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
次に、図22に示すように、反射膜材料層362および非反射膜材料層364の一部が除去され、反射鏡230の外形状に形成される。これにより、反射膜材料層362および非反射膜材料層364の両側端において、反射膜材料層362の下層に位置するレジスト層354が露出される。反射膜材料層362および非反射膜材料層364は、ドライエッチングによりパターニングできる。
次に、図23に示すように、非反射膜材料層364の表面と、露出したレジスト層354の表面との上に、反射膜材料層366が堆積される。こうして形成された、下側の反射膜材料層362、非反射膜材料層364および上側の反射膜材料層366により形成された3層構造では、非反射膜340の場合と同様に、反射膜材料層362、366および非反射膜材料層364の間で生じるバイメタル効果が打ち消される。よって、温度変化に起因する内部応力の作用に対して形状が安定する。
反射膜材料層366は、最終的に空間光変調器100において入射光を反射する面となる。従って、反射膜材料層366の形成に先立って、その下地となる非反射膜材料層364の表面を化学機械研磨して鏡面化してもよい。また、反射膜材料層366そのものの表面を化学機械研磨して鏡面化してもよい。更に、非反射膜材料層364および反射膜材料層366の両方を化学機械研磨してもよい。
次に、図24に示すように、反射膜材料層366の表面に保護層368が形成される。即ち、反射膜材料層366としてAl等の金属層を形成した場合、その表面は大気中の酸素等と反応して径年変化する。これにより空間光変調器100の特性も変化する。しかしながら、反射膜材料層366の表面を緻密な保護膜で被覆することにより、反射膜材料層366と雰囲気との反応を阻止または抑制できる。
保護層368の材料としては、アルミナ等の無機材料の薄膜を例示できる。なお、保護層368は、反射膜材料層366において反射される光に対して透明であるべきことはいうまでもなく、当該光を透過させる厚さで形成される。こうして、反射膜材料層362、366、非反射膜材料層364および保護層368が積層された反射膜360が形成される。
次に、図25に示すように、反射膜360の一部が除去され、反射鏡230の外形状に形成される。これにより、反射膜360の両側端において、反射膜材料層362の下層に位置するレジスト層354が露出される。反射膜材料層362および非反射膜材料層364は、ドライエッチングによりパターニングできる。
次に、図26に示すように、非反射膜340の成膜下地となったレジスト層332、334、336と、反射膜360の成膜下地となったレジスト層352、354、356とを除去する。ここで、反射膜360の両側端においてレジスト層354の表面が露出している。反射膜360の内側にあるレジスト層356は、レジスト層354の上に積層されているので、両者は連続する。
また、レジスト層354は、レジスト層352の上に積層されているので、両者は連続する。非反射膜340の両側端においてレジスト層352とレジスト層334、332とは連続する。更に、非反射膜340の内側に位置するレジスト層336は、レジスト層334の上に積層されているので、両者は連続する。
このように、全てのレジスト層332、334、336、352、354、356が連続しているので、図25に示した状態から一括して除去することができる。よって、反射面234を形成する反射膜360に、レジスト除去のためのエッチングホールを設けなくてもよい。これにより、反射面234の反射効率を向上させることができる。
レジスト層332、334、336、352、354、356の除去は、溶解材を用いたウェットプロセスであってもよい。また、プラズマを用いた灰化によるドライプロセスであってもよい。更に、レジスト層332、334、336、352、354、356は、犠牲材料の層の一例に過ぎず、他の犠牲材料を用いても同様のプロセスを実施できる。
こうして、図1から図4までに示した空間光変調器100と同じ構造を有する空間光変調器100を、リソグラフィ技術により製造できる。リソグラフィ技術で製造することにより微細な単位素子200を形成できるので、解像度の高い空間光変調器100を製造できる。
なお、各層の材料の組み合わせとしては、例えば、導体層320、344、346および反射膜材料層362、366をアルミニウムにより、非導体層342、348および非反射膜材料層364を窒化珪素により、保護層368をアルミナとすることができる。ただし、各部の材料が上記のものに限られるわけではなく、例えば、SiOx、SiNx,Al,Cr,Al合金、などから適宜選択できる。
図26に示した単位素子200において、基板210上の導体層320は、電極212、214、216のいずれかに相当する。非反射膜340の中央部分は、可動部226に相当する。また、可動部226相当部分の下面に位置する導体層344は、電極228に相当する。更に、可動部226相当部分の側方外側に位置する部分は、一対の捩じり軸部224に相当する。更に、捩じり軸部224相当部分の外側は、固定枠222に相当する。
なお、非反射膜340の両側端は、固定枠222となる部分よりも更に外側まで水平に延在する。この部分は、隣接する単位素子200との間隙から基板210に向かって差し込む光を遮断する遮光部341を形成する。これにより、空間光変調器100における基板210の温度が照射光により上昇することが防止される。また、入射光により、基板210上のCMOS素子等が劣化することが防止される。
また、図26に示した単位素子200において、反射膜360は、空間光変調器100における反射鏡230に相当する。ここで、反射膜360の中央部に形成された陥没部361の下面は、反射鏡230のポスト232に相当する。また、反射膜360の上面は、反射面234に相当する。
図27は、他の構造を有する単位素子200の模式的分解斜視図である。なお、この単位素子200は、以下に説明する部分を除くと、図2に示した単位素子200と同じ構造を有する。そこで、図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
単位素子200は、基板210の上に重ねて配される駆動部220および反射鏡230を有する。反射鏡230は、図1に示した単位素子200と同じ形状を有する。一方、基板210の表面には、電極212、214、216に加えて、もう一対の電極213、215が配される。
駆動部220は、固定枠222および可動部226の間に、いわば同芯状に配された可動枠227を更に有する。可動枠227は、一対の捩じり軸部223を介して固定枠222から支持される。これにより、可動枠227は、固定枠222に対して、捩じり軸部223を揺動軸として揺動する。捩じり軸部223は、捩じり軸部224に対して直交する。
可動部226を支持する捩じり軸部224の一端は、可動枠227の内側に結合される。これにより、可動部226は、可動枠227に対して、捩じり軸部224を揺動軸として揺動する。よって、可動部226は、固定枠222に関して、互いに直交する二つの捩じり軸部223、224について揺動する。
なお、可動枠227は、外側および内側の縁部から下方に向かって延在するリブ229を有する。これにより、可動枠227を高い曲げ剛性および捩じり剛性を有する。よって、可動枠227および可動部226が個別に揺動して捩じり軸部223、224が弾性変形した場合も、可動枠227および可動部226は殆ど変形しない。また、残留応力の緩和等により内部応力が作用した場合も、可動枠227および可動部226は変形し難い。
図28は、単位素子200の模式的断面図である。単位素子200は、固定枠222を基板210に固定し、反射鏡230を可動部226に固定した状態で、図27に示したC−C断面を示す。なお、図27と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、可動枠227は電極221を下面に有する。電極221は、基板210上の電極213、215と対向する。よって、電極213、215に駆動電圧が印加された場合、可動枠227の図中左側または右側が基板210に向かって引き付けられる。
また、可動枠227は、縁部から下方に延びたリブ229を有する。これにより、可動枠227は高い曲げ剛性を有する。一方、捩じり軸部224は、リブ225に相当する要素を有していない。よって、電極212、214に印加された電圧により可動部226に駆動力が作用した場合、捩じり軸部224が弾性変形して、可動部226は、可動枠227に対して揺動する。
なお、リブ229の下端には、可動枠227の外方および内方に向かって広がったフランジ様の部分がある。これは、リブ229を含む層をパターニングする場合に残った領域で、無くてもよい。しかしながら、可動枠227の剛性を低下させるものではなく、むしろ向上させる場合もあるので残してもよい。これにより、パターニングの精度を著しく高くすることが避けられるので生産性向上にも寄与する。
図29は、単位素子200の模式的断面図であり、図27に示したD−D断面を示す。図27および図28と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、固定枠222および可動枠227を結合する捩じり軸部223は、リブ229に相当する要素を有していない。よって、電極213、215のいずれかに駆動電圧を印加した場合、可動枠227は、捩じり軸部223を揺動軸として、基板210に対して揺動する。
図30は、上記のような単位素子200を含む空間光変調器100の外観を示す模式的斜視図である。反射鏡230のそれぞれに設けた上記のような構造に対して駆動電力を個別に供給または遮断することにより、複数の反射鏡230のそれぞれを個別に制御できる。各反射鏡230は、駆動部220の可動枠227と捩じり軸部223、224とにより形成されたジンバル構造によって、反射光の伝播方向をより広い範囲に変化させる。
図31は、露光装置400の模式図である。この露光装置400は、空間光変調器100を備え、光源マスク最適化法を実行する場合に、照明光学系600に任意の照度分布を有する照明光を入射できる。即ち、露光装置400は、照明光発生部500、照明光学系600および投影光学系700を備える。
照明光発生部500は、光源520、制御部510、空間光変調器100、プリズム530、結像光学系540、ビームスプリッタ550および計測部560を含む。光源520は、照明光Lを発生する。光源520が発生した照明光Lは、光源520の発光機構の特性に応じた照度分布を有する。このため、照明光Lは、照明光Lの光路と直交する断面において原画像I1を有する。
光源520から出射された照明光Lは、プリズム530に入射する。プリズム530は、照明光Lを空間光変調器100に導いた後、再び外部に出射させる。空間光変調器100は、制御部510の制御の下に入射した照明光Lを変調する。空間光変調器100の構造と動作については、既に説明した通りである。
空間光変調器100を経てプリズム530から出射された照明光Lは、結像光学系540を経て、後段の照明光学系600に入射される。結像光学系540は、照明光学系600の入射面612に照明光画像I3を形成する。
ビームスプリッタ550は、結像光学系540および照明光学系の間において、照明光Lの光路上に配される。ビームスプリッタ550は、照明光学系600に入射する前の照明光Lの一部を分離して計測部560に導く。
計測部560は、照明光学系600の入射面612と光学的に共役な位置で照明光Lの画像を計測する。これにより、計測部560は、照明光学系600に入射する照明光画像I3と同じ画像を計測する。よって、制御部510は、計測部560により計測される照明光画像I3を参照して、空間光変調器100を帰還制御できる。
照明光学系600は、フライアイレンズ610、コンデンサ光学系620、視野絞り630および結像光学系640を含む。照明光学系600の出射端には、マスク710を保持したマスクステージ720が配される。
フライアイレンズ610は、並列的に緻密に配された多数のレンズ素子を備え、後側焦点面にレンズ素子の数と同数の照明光画像I3を含む2次光源を形成する。コンデンサ光学系620は、フライアイレンズ610から出射された照明光Lを集光して視野絞り630を重畳的に照明する。
視野絞り630を経た照明光Lは、結像光学系640により、マスク710のパターン面に、視野絞り630の開口部の像である照射光画像I4を形成する。こうして、照明光学系600は、その出射端に配されたマスク710のパターン面を、照射光画像I4によりケーラー照明する。
なお、照明光学系600の入射面612でもあるフライアイレンズ610の入射端に形成される照度分布は、フライアイレンズ610の出射端に形成される2次光源全体の大局的な照度分布と高い相関を示す。よって、照明光発生部500が照明光学系600に入射させる照明光画像I3は、照明光学系600がマスク710に照射する照明光Lの照度分布である照射光画像I4にも反映される。
投影光学系700はマスクステージ720の直後に配され、開口絞り730を備える。開口絞り730は、照明光学系600のフライアイレンズ610の出射端と光学的に共役な位置に配される。投影光学系700の出射端には、感光性材料を塗布された基板810を保持する基板ステージ820が配される。
マスクステージ720に保持されたマスク710は、照明光学系600により照射された照明光Lを反射または透過する領域と吸収する領域とからなるマスクパターンを有する。よって、マスク710に照明光画像I4を照射することにより、マスク710のマスクパターンと照明光画像I4自体の照度分布との相互作用により投影光画像I5が生成される。投影光画像I5は、基板810の感光性材料に投影されて、要求されたパターンを有するレジスト層を基板810の表面に形成する。
なお、図31では照明光Lの光路を直線状に描いているが、照明光Lの光路を屈曲させることにより露光装置400を小型化できる。また、図31は、照明光Lがマスク710を透過するように描いているが、反射型のマスク710が用いられる場合もある。
図32は、照明光発生部500の部分拡大図であり、露光装置400における空間光変調器100の役割を示す図である。プリズム530は、一対の反射面532、534を有する。プリズム530に入射した照明光Lは、一方の反射面532により、空間光変調器100に向かって照射される。
既に説明した通り、空間光変調器100は、個別に揺動させることができる複数の反射鏡230を有する。よって、制御部510が空間光変調器100を制御することにより、要求に応じた任意の光源画像I2を形成できる。
空間光変調器100から出射された光源画像I2は、プリズム530の他方の反射面534により反射され、図中のプリズム530右端面から出射される。プリズム530から出射された光源画像I2は、結像光学系540により、照明光学系600の入射面612に照明光画像I3を形成する。
図33は、単位素子200の模式的断面図であり、駆動部220の変形例を示す。以下に説明する部分を除くと図29に示した単位素子200と同じ構造を有するので、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図29に示した単位素子200では、捩じり軸部223が、可動枠227のリブ229の下端に結合されていた。これに対して、図33に示す例では、捩じり軸部223が、リブ229の上端に結合される。また、捩じり軸部223の他端は、固定枠222の上端に結合される。
図34は、駆動部220の模式的斜視図であり、図33に示した駆動部220を抜き出して示す。図示のように、可動部226および可動枠227を結ぶ捩じり軸部224も、固定枠222および可動枠227を結合する捩じり軸部223と同様に、リブ225、229の上端に結合される。
これにより、可動枠227が固定枠222に対して揺動する場合の揺動軸と、可動部226が可動枠227に対して揺動する場合の揺動軸とが、反射鏡230に対して、いずれも相対的に上昇する。よって、反射鏡230を揺動させる場合の慣性モーメントが小さくなり、空間光変調器100としての応答性を向上させることができる。
なお、図中に斜線で示す可動部226の上面に、直接に反射膜を設けても、単位素子200を形成できる。これにより、個別の反射鏡230を設けた場合に対して反射面積こそ小さくなるものの、少ない工数で、応答速度の早い空間光変調器100を形成できる。
図35は、単位素子200の模式的断面図であり、駆動部220を更に変形させた例を示す。以下に説明する部分を除くと図29に示した単位素子200と同じ構造を有するので、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
図示のように、この単位素子200では、捩じり軸部223の結合箇所が、固定枠222に対しては上端に、可動枠227に対してはリブ229の下端になっている。これにより、可動枠227は、固定枠222に対して、図中で上方に移動している。
更に、捩じり軸部224の図示は省いたが、捩じり軸部224は、可動枠227のリブ229の上端と、可動部226のリブ225の下端に結合される。これにより、可動部226は、更に上方に位置する。
このような構造により、可動部226の上面は、固定枠222および可動枠227に対して相対的に上方に位置する。よって、可動部226の上面に直接に反射面234を形成しても、反射面234に対する入射光および反射面234から出射される反射光が、固定枠222および可動枠227と干渉することがない。
また、反射鏡230を形成するプロセスが省けるので、生産性も向上される。このような構造により、空間光変調器100としての応答性を更に向上させることができるので、光スイッチのように、ビーム径の限られた信号光を反射すれば足りる用途で公的に使用できる。
図36は、反射鏡230の模式的斜視図であり、反射鏡230単独の変形例を示す。これまでに示した反射鏡230と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
この反射鏡230は、反射面234の周縁部から垂下したリブ236に換えて、ポスト232と反射面234の周縁部との中程に配された褶曲部237を有する。このような形状によっても、反射面234の曲げ剛性あるいは捩れ剛性を向上させることができる。
図37は、反射鏡230の模式的斜視図であり、反射鏡230の他の変形例を示す。この反射鏡230は、反射面234の周縁部に配されたリブ236と、その内側に配された褶曲部237とを両方有する。更に、中心に位置するポスト232から延在して、褶曲部237およびリブ236と交差する対角線状の褶曲部237も有する。このように、リブ236および褶曲部237を併せて設けることにより反射鏡230の剛性は更に高くなる。
図38は、反射鏡230の断面形状を示す模式図である。図37に記載した反射鏡230のE−E断面を示す。
図示のように、褶曲部237は、反射面234側からみると陥没して溝を形成する。このため、反射面234の一部が反射面として機能しなくなる。しかしながら、図10等に示したように段差を形成したレジストを下地として、その上に反射鏡230となる材料を堆積させることにより、リブ236および褶曲部237は、反射鏡230と共通のプロセスで併せて形成できる。よって、リブ236および褶曲部237を設けたことによる反射鏡230の生産工数の増加を防止できる。
換言すれば、後述するように、反射鏡230を形成するプロセスの工数が増えることを厭わなければ、反射面234を平坦にしたまま、リブ236または褶曲部237を形成することもできる。よって、空間光変調器100を、露光装置、画像表示装置等の用途に用いる場合は、反射面を平坦にして、反射光の品質と利用効率を向上させることができる。
また、ポスト232と共に上記のようなリブ236および褶曲部237の少なくとも一方を有する部材を、構造材として使用してもよい。即ち、リブ236、褶曲部237等を有して高い剛性を有する部材の上に平坦な反射面234を更に形成することにより、反射効率の高い単位素子200を形成できる。
図39は、反射鏡230の他の変形例を示す模式的斜視図である。これまでに示した反射鏡230と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
この反射鏡230は、リブ236および褶曲部237に換えて、反射面234を裏面から支持する箱状の構造材238を有する。これにより、反射鏡230はモノコックシェルを形成して、高い曲げ剛性および捩れ剛性を有する。よって、反射鏡230の形態を長期にわたって安定させることができる。
また、構造材238は中空なので、反射鏡230および構造材238を含む組立体の慣性モーメントを増加させることがない。よって、反射鏡230を高剛性化したことによる空間光変調器100の応答速度低下が防止される。
なお、構造材238に形成された抜き穴239は、構造材238の水平面を貫通して、構造材238の内外を連通させる。抜き穴239の用途については後述する。
図40は、反射鏡230の製造過程を示す模式的断面図である。図9および図10に示した段階と同じ要領で、レジストにより形成した段付きの下地に反射鏡230の材料を順次堆積させることにより、構造材238が形成される。なお、構造材238を反射鏡230と同じ材料で形成することにより、温度変化による膨張等の変化を反射鏡230と揃えることができる。
図41は、反射鏡230の製造過程の次の段階を示す模式的断面図である。形成された構造材238の底面にあたる領域をエッチングして、抜き穴239を形成する。抜き穴239は、構造材238の表裏を貫通する。更に、図17に示した段階と同じ要領で、構造材238の内側をレジストにより満たす。これにより、構造材238の上に、平坦な下地が形成される。
図42は、反射鏡230の模式的断面図である。続いて、上記のようにして構造材238の上端に形成された平坦な下地の上に、反射鏡230の材料を順次堆積させる。更に、構造材238の内部に残ったレジストを抜き穴239から排出して、反射鏡230が完成する。
このような手順により、反射面234は全面にわたって平坦に形成できる。よって、有効な反射面が広くなり、入射光を効率よく反射する。また、画像表示装置等に用いた場合は、画素間の空隙が少ない空間光変調器100を形成できる。
図43は、反射鏡230の他の変形例を示す模式的斜視図である。これまでに示した反射鏡230と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
この反射鏡230も、反射面234を裏面から支持する立体的な形状の構造材238を有する。構造材238を備える反射鏡230は、互いに交差する複数の面を有して高い曲げ剛性および捩れ剛性を有する。よって、反射鏡230の形態を長期にわたって安定させることができる。
なお、この構造材238は下方に向かって開いた形状なので、製造過程で下地となるレジストは容易に除去できる。しかしながら、ポスト232の内部には閉じた空間が形成される。そこで、例えば、ポスト232の底面および可動部226に抜き穴239を設けることが好ましい。
図44は、図43に示した反射鏡230の製造過程を示す模式的断面図である。図9および図10に示した段階と同じ要領で、レジストにより形成した段付きの下地に反射鏡230の材料を順次堆積させることにより、構造材238が形成される。構造材238は、反射鏡230と同じ材料で形成することにより、温度変化による膨張等の変化を反射鏡230と揃えることができる。
図45は、反射鏡230の製造過程の次の段階を示す模式的断面図である。形成された構造材238において、ポスト232の底面に抜き穴239を形成する。図示は省くが、駆動部220の可動部226中央に連通穴を設けることにより、抜き穴239を通じてポスト232の内外を連通させることができる。
更に、図17に示した段階と同じ要領で、構造材238の周囲をレジストにより満たす。これにより、構造材238の上面と連続した平坦な下地が形成される。
図46は、反射鏡230の模式的断面図である。続いて、上記のようにして構造材238の上に反射鏡230の材料を順次堆積させる。更に、ポスト232の内部に残ったレジストを抜き穴239から排出さけることにより除去して反射鏡230が完成する。
このような手順により、反射面234は全面にわたって平坦に形成できる。よって、有効な反射面が広くなり、入射光を効率よく反射する。また、画像表示装置等に用いた場合は、画素間の空隙が少ない空間光変調器100を形成できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置およびシステムの動作、手順、ステップおよび段階等の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、前の処理の出力を後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現し得る。特許請求の範囲、明細書および図面において、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。