本発明について、回転電機に組み込まれるステータとの関係で好適な実施形態を、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
[1.回転電機のステータの概略構成]
図1は、コイル保持方法を含む本実施形態に係る製造方法により製造されたステータ10の平面図である。ステータ10は、その内部に設けられる図示しないロータと組み合わされて回転電機を構成し、例えば、電動機又は発電機として用いられる。
ステータ10は、いわゆる3相Y型結線の突極巻のステータ、すなわち、突極集中巻の回転電機を構成するステータであり、特許文献1に開示されているステータに類似する構造を有する。具体的に、ステータ10は、図1に示すように、中空状のホルダ12と、ホルダ12に設けられた3相の入力端子U、V、Wと、中性点を形成する中性端子Nと、ホルダ12の内周面12aに沿って複数(図1では18個)の分割コア部14を円環状に配置して形成されるステータコア16とを備えている。
ステータコア16は、U相、V相、W相のコイル18をそれぞれ有する分割コア部14を6つずつ含む。この場合、ステータコア16では、複数の分割コア部14を円環状に配置することにより、U相(U1相〜U6相)、V相(V1相〜V6相)、及び、W相(W1相〜W6相)の各コイル18が、図1の反時計回りに、U1、V1、W1、U2、…、U6、V6、W6の順番に並ぶように配置される。
なお、図1では、一例として、3相の入力端子U、V、Wと中性端子Nとが配設される箇所に近接して、反時計回りに、W6相、U1相及びV1相のコイル18をそれぞれ有する各分割コア部14が配置される場合を図示している。
次に、U1相〜U6相、V1相〜V6相及びW1相〜W6相のコイル18を有する各分割コア部14(以下、U1相〜U6相、V1相〜V6相及びW1相〜W6相の各分割コア部14ともいう。)のうち、代表的に、1個の分割コア部14の構成について、図2〜図4を参照しながら説明する。なお、ここで説明する分割コア部14の構成は、全ての相の分割コア部14に共通する構成である。
分割コア部14は、プレスにより打ち抜いた略T字状の金属板(鋼板)22を矢印A方向(上下方向、積層方向)に複数枚積層して構成される分割鉄心(コア)24と、分割鉄心24を電気的に絶縁するインシュレータ26と、インシュレータ26を介して分割鉄心24に巻回されるコイル素線(コイル導線)18aにより構成されるコイル18とを有する。コイル素線18aは、断面長方形状の平角線である。
略T字状の分割鉄心24は、磁性体からなる複数の金属板22を、例えば、樹脂製の電気絶縁材料からなる接着剤27で接着することにより矢印A方向に積層して構成される。従って、各金属板22は、接着剤27により互いに電気的に絶縁されている。
そして、分割鉄心24は、矢印B1方向(ステータコア16の外側(外径側)に向かう方向)側において矢印C方向(ステータコア16の周方向)に沿って延在するヨーク部24aと、ヨーク部24aから矢印B2方向(ステータコア16の内側(内径側)に向かう方向)に向かって延在する磁極部24bとから構成される。磁極部24bの矢印B2方向の側面は、凹状の湾曲面24cとして形成されている。
また、ヨーク部24aの矢印C2方向の端部には、略半円状の嵌合凹部32が形成され、ヨーク部24aの矢印C1方向の端部には、嵌合凹部32に対応した略半円状の嵌合凸部34が形成されている。
インシュレータ26は、可撓性を有する樹脂等の電気絶縁材料で構成されている。インシュレータ26は、コイル素線18aが巻回される巻回部38と、巻回部38から矢印B1方向に突出し、コイル素線18aの端部(始端部又は終端部)を矢印C方向に沿って入力端子U、V、W及び中性端子Nの箇所にまで引き回すための引き回し部40とを有している。
巻回部38は、矢印A方向に嵌合可能な上側巻回部38aと下側巻回部38bとから構成される。
上側巻回部38aは、断面略U字状に形成された上側巻回部本体42aと、上側巻回部本体42aの矢印B2方向の端部に立設する上側内周壁44aと、上側内周壁44aと対向するように、上側巻回部本体42aの矢印B1方向の端部に立設する上側外周壁46aとを有する。
下側巻回部38bは、上側巻回部本体42aと対向するように断面略U字状に形成された下側巻回部本体42bと、上側内周壁44aと対向するように下側巻回部本体42bの矢印B2方向の端部に立設する下側内周壁44bと、下側内周壁44bと対向するように下側巻回部本体42bの矢印B1方向の端部に立設する下側外周壁46bとを有する。
従って、分割鉄心24の磁極部24bを挟み込むように上側巻回部38aと下側巻回部38bとを嵌合させると、上側巻回部本体42aと下側巻回部本体42b、上側内周壁44aと下側内周壁44b、及び、上側外周壁46aと下側外周壁46bは、それぞれ、一部が重なり合って結合する。すなわち、上側巻回部38aの下方から下側巻回部38bが挿入されることで、上側巻回部38aと下側巻回部38bとが一体化されて巻回部38が構成される。この結果、該巻回部38の中央部には、矢印B方向(ステータコア16の径方向、積層方向に対する垂直方向)に沿って孔48が形成される。
これにより、孔48に磁極部24bが嵌まり込む一方で、巻回部38における上側内周壁44a及び下側内周壁44bと、上側外周壁46a及び下側外周壁46bとの間の箇所にコイル素線18aが巻回されることによりコイル18が構成される。
一方、引き回し部40は、上側外周壁46aの上端部近傍から矢印B1方向に突出するように設けられている。
引き回し部40は、板状部材50と、板状部材50上に形成され、図1の平面視で略U字状の導線収納部52とから構成される。また、導線収納部52の背後(矢印B2方向の背面における矢印C1方向側の箇所)には、巻回部38に巻回されたコイル素線18aの終端部を固定する終端固定部54が設けられている。
導線収納部52は、巻回部38に巻回されたコイル素線18aの始端部又は終端部を矢印C方向に収納できるように構成されている。
すなわち、導線収納部52は、板状部材50の矢印C2方向側と矢印C1方向側とにそれぞれ立設するブロック52a、52bと、ブロック52a、52bの矢印B2方向の背面を連結する連結部52cとから構成される。ブロック52aには、矢印C方向に沿って延在し、平角線のコイル素線18aの始端部又は終端部を収納可能な幅(矢印A方向に沿った長さ)及び深さ(矢印B方向に沿った奥行き)を有する導線端部保持溝56a〜62aが、矢印A方向に所定間隔で設けられている。一方、ブロック52bにも、ブロック52aと同様に、矢印C方向に沿って延在し、コイル素線18aの始端部又は終端部を収納可能な幅及び深さを有する導線端部保持溝56b〜62bが、矢印A方向に所定間隔で設けられている。
なお、図4に示すように、導線端部保持溝56aと導線端部保持溝56b、導線端部保持溝58aと導線端部保持溝58b、導線端部保持溝60aと導線端部保持溝60b、導線端部保持溝62aと導線端部保持溝62bは、互いに略同一の高さに形成されている。
また、ブロック52aにおいて導線端部保持溝56a〜62aを画成する部分は、該ブロック52aの本体部64aから矢印B1方向及び矢印C2方向に平板状に延在する庇状の壁部66a〜74aとして構成される。ブロック52bについても、ブロック52aの場合と同様に、導線端部保持溝56b〜62bを画成する部分は、ブロック52bの本体部64bから矢印B1方向及び矢印C1方向に平板状に延在する庇状の壁部66b〜74bとして構成される。なお、壁部72a、72b間は、連結部76により矢印C方向に連結されている。
さらに、板状部材50の矢印C2方向側の端部は、段差部78aとして形成され、板状部材50の矢印C1方向側の端部は、段差部78bとして形成されている。従って、図5に示すように、例えば、3つの分割コア部14を矢印C方向に沿って連結する場合、左側の分割コア部14の嵌合凸部34(図3参照)と中央の分割コア部14の嵌合凹部32とを嵌合させると共に、左側の分割コア部14の段差部78bと中央の分割コア部14の段差部78aとを重ね合わせる。これにより、左側の分割コア部14と中央の分割コア部14とを連結させることができる。
また、中央の分割コア部14の嵌合凸部34と右側の分割コア部14の嵌合凹部32とを嵌合させると共に、中央の分割コア部14の段差部78bと右側の分割コア部14の段差部78aとを重ね合わせる。これにより、中央の分割コア部14と右側の分割コア部14とを連結させることができる。なお、図5では、分割コア部14のうちインシュレータ26のみ図示している。
前述のように、ステータコア16において、各分割コア部14では、同一形状の平角線のコイル素線18aがインシュレータ26の巻回部38にそれぞれ巻回されてコイル18を構成する。この場合、巻回部38に巻回されたコイル素線18aの始端部は、ブロック52aの矢印C2方向の側部から矢印B1方向に向かって延在する。一方、コイル素線18aの終端部は、終端固定部54に固定されて、ブロック52bの矢印C1方向の側部から矢印B1方向に向かって延在する。そのため、導線収納部52では、コイル素線18aの始端部又は終端部について、平角線の長辺側を底面100a〜106a、100b〜106bに沿わせた状態で(図4参照)、矢印C方向に引き回し、各導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに収納する。
すなわち、図4に示すように、各導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bは、略同一の幅(高さ)を有する。また、各導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bのうち、最上部の導線端部保持溝56a、56bの深さは、他の導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bの深さよりも深い。さらに、他の導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bの深さは、略同一の深さである。
そして、導線端部保持溝56aと導線端部保持溝56b、導線端部保持溝58aと導線端部保持溝58b、導線端部保持溝60aと導線端部保持溝60b、導線端部保持溝62aと導線端部保持溝62bには、互いに同じコイル素線18aの始端部又は終端部が引き回され、収納される。
具体的に、U1相〜U6相のコイル18を構成する各コイル素線18aの始端部は入力端子Uに接続される。V1相〜V6相のコイル18を構成する各コイル素線18aの始端部は入力端子Vに接続される。W1相〜W6相のコイル18を構成する各コイル素線18aの始端部は入力端子Wに接続される。全ての相(U1〜U6相、V1〜V6相、W1〜W6相)のコイル18を構成する各コイル素線18aの終端部は中性端子Nに接続される。
そのため、最も深い導線端部保持溝56a、56bには、全ての相から合計で18本のコイル素線18aの終端部が引き回されて収納される。
また、導線端部保持溝56a、56bよりも浅い深さの他の導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bについても、導線端部保持溝58a、58bには、U1相〜U6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部が引き回されて収納される。導線端部保持溝60a、60bには、V1相〜V6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部が引き回されて収納される。導線端部保持溝62a、62bには、W1相〜W6相の合計で6本のコイル素線18aの始端部が引き回されて収納される。
なお、図4では、引き回しの一例として、各コイル素線18aの終端部を導線端部保持溝56a、56bに引き回して収納した場合を図示している。
[2.本実施形態に係る製造装置及び製造方法の説明]
回転電機に組み込まれるステータ10は、以上のように構成されるものである。次に、本実施形態に係る製造装置(コイル保持装置、コア保持装置)110及び製造方法(コイル保持方法)について、図6〜図17Bを参照しながら説明する。なお、この説明では、必要に応じて、図1〜図5も参照しながら説明する。
図6は、製造装置110によるステータ10の製造工程を示したフローチャートである。また、図7〜図12は、製造装置110の主要部分及びその作用を説明するための各種の図面である。さらに、図13〜図17Bは、製造装置110によるコイル素線18aの始端部及び終端部の引き回しの一例を概略的に図示した説明図である。
ここでは、本実施形態の特徴的な機能に関して、製造装置110の主要部分の構成を最初に説明し、次に、製造装置110を用いたステータ10の製造工程について説明する。
[2−1.製造装置の主要部分の説明]
図7は、製造装置110を構成するテーブル112等の主要部分の平面図である。図8は、図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。
テーブル112は、略円盤状に形成されたテーブルであり、複数の分割コア部14を円環状に配置することが可能である。テーブル112は、略半円状の第1プレート112a及び第2プレート112bを有する。
第1プレート112a及び第2プレート112bは、外周側の一部(外径方向である矢印D1方向の一部)が互いに重なり合い、図8に示すように、重なり合った一部分に回動軸112cが上下方向(矢印E方向)に貫通している。また、テーブル112の中心には、第1プレート112aを貫通する回転軸112dが設けられている。
第1プレート112a及び第2プレート112bにおいて、回転軸112dを挟んで、回動軸112cとは略反対側の箇所には、矢印D1方向に延出する連結部材114a、114bが設けられている。連結部材114aには、軸部116a及び支持部材118aを介してアクチュエータ120の本体部120aが軸支されている。本体部120aは、外部からの駆動信号の供給に起因してロッド部120bを矢印F方向に進退させる。ロッド部120bの先端に取り付けられた支持部材118bは、軸部116bを介して連結部材114bに軸支されている。
従って、駆動信号の供給によりアクチュエータ120が駆動し、本体部120aからロッド部120b及び支持部材118bが矢印F2方向(連結部材114bの方向)に進行すると、連結部材114bの軸部116b側の部分は、矢印F2方向に変位する。これにより、連結部材114bに連結された第2プレート112bは、回動軸112cを中心として、アクチュエータ120側の部分が第1プレート112aから離間するように回動する。
すなわち、アクチュエータ120の駆動によるロッド部120bの矢印F2方向への進行によって、第2プレート112bは、回動軸112cを中心として、所定角度回動し、この結果、第1プレート112a及び第2プレート112bのアクチュエータ120側の部分は、所定角度離間した状態で開くことになる。
一方、アクチュエータ120の駆動によって、ロッド部120b及び支持部材118bが矢印F1方向(連結部材114aの方向)に退動すると、連結部材114bの軸部116b側の部分も矢印F1方向に変位する。これにより、第2プレート112bは、回動軸112cを中心として、アクチュエータ120側の部分が第1プレート112aと接触するように回動する。この結果、第1プレート112a及び第2プレート112bは、図7に示す状態に戻る。
このように、第1プレート112a及び第2プレート112bは、回動軸112cを介して連結されると共に、連結部材114a、114b、軸部116a、116b、支持部材118a、118b及びアクチュエータ120を介して連結されている。そのため、図示しない回転モータによって回転軸112dが回転すると、第1プレート112a及び第2プレート112bは、回転軸112dを中心として、矢印G方向(テーブル112の周方向)に一体的に回転する。
テーブル112を構成する第1プレート112a及び第2プレート112bは、複数の分割コア部14を矢印G方向に沿って円環状に配置可能である。この場合、図8に示すように、分割コア部14を図2の状態に対して上下反対にひっくり返し、引き回し部40がテーブル112の外側(外径方向である矢印D1方向)を向き、且つ、分割鉄心24の磁極部24b及び湾曲面24cがテーブル112の中心(内径方向である矢印D2方向)を向くように、該分割コア部14を配置する。
ここで、第1プレート112a及び第2プレート112bにおける分割コア部14の配置箇所には、上方向である矢印E1方向に向かって膨出した載置台112eが設けられている。分割コア部14は、引き回し部40を下方向である矢印E2方向に向け、当該引き回し部40を載置台112eに載置した状態で第1プレート112a及び第2プレート112bに配置される。
なお、一例として、図7では、1個の分割コア部14(U4相の分割コア部14)を第1プレート112aに配置する場合を図示している。また、図8では、第1プレート112aに載置台112e等を設け、該載置台112eにV1相の分割コア部14を配置した場合を図示している。本実施形態では、第1プレート112aの他の箇所や、第2プレート112bの所定箇所においても、同様に、他の分割コア部14を配置することが可能である。
そして、第1プレート112a及び第2プレート112bには、分割コア部14の配置箇所よりも矢印D2方向側に、分割コア部14を保持可能な複数の個別保持装置122が円環状に配置されている。製造装置110では、ステータ10を製造するために、当該ステータ10を構成する分割コア部14の個数と同数の個別保持装置122を、矢印G方向に沿って、第1プレート112a及び第2プレート112b上に円環状に配置している。
すなわち、前述のように、製造装置110では、分割コア部14を1個ずつ図2の状態から上下反対にして第1プレート112a及び第2プレート112bに配置する。そのため、図7に示すように、テーブル112には、U1相〜U6相、V1相〜V6相及びW1相〜W6相の各分割コア部14が、時計方向(矢印G2方向)に沿って、U1、V1、W1、…U6、V6、W6の順に配置されることになる。このうち、第1プレート112aには、V1、W1、…W3、U4の9個の分割コア部14が、矢印G2方向に沿って順に配置され、第2プレート112bには、V4、W4、…W6、U1の9個の分割コア部14が、矢印G2方向に沿って順に配置される。
また、製造装置110では、分割コア部14を上下反対にして第1プレート112a及び第2プレート112bに配置するため、図2〜図5に示す矢印A方向と、図8に示す矢印E方向とが、いずれも金属板22の積層方向を示していても、互いに逆向きとなる。
同様に、図2、図3及び図5に示す矢印C方向と、図7及び図9に示す矢印G方向とについても、互いに逆向きとなり、矢印C1方向が矢印G2方向に対応し、矢印C2方向が矢印G1方向に対応することになる。一方、図2〜図4に示す矢印B方向と、図7〜図9に示す矢印D方向とについては、矢印B1方向が矢印D1方向に対応し、矢印B2方向が矢印D2方向に対応する。
なお、以下の説明は、主として、製造装置110及び製造方法に関する説明であるため、方向に関しては、矢印A方向、矢印B方向及び矢印C方向に代えて、矢印D方向、矢印E方向及び矢印G方向で説明する場合がある。
図7〜図9に戻り、各個別保持装置122は、分割コア部14を構成する磁極部24bの湾曲面24cを吸着保持する電磁石として機能する。すなわち、各個別保持装置122は、矢印D2方向に設けられた基端部124aと、該基端部124aから三又状に分割鉄心24に向かって延伸する3つの突出部124b〜124dとから構成されるコア(電磁石側鉄心)124を有する。3つの突出部124b〜124dは、基端部124aから湾曲面24cに向かって延伸する板状部分である。
ここで、3つの突出部124b〜124dのうち、両端の突出部124b、124dは、先端部分が湾曲面24cに沿った形状である。そのため、両端の突出部124b、124dの先端部分は、湾曲面24cに対して面接触可能である。
一方、真ん中の突出部124cの先端部分は、突出部124b、124dの先端部分よりも僅かに矢印D1方向に突出している。但し、両端の突出部124b、124dの先端部分が湾曲面24cに面接触する場合、真ん中の突出部124cの先端部分は、湾曲面24cから僅かに離間する程度に突出している。
前述のように、基端部124aから3つの突出部124b〜124dが矢印D1方向に延伸しているため、分割コア部14から個別保持装置122を見た場合、3つの突出部124b〜124dの間は、分割コア部14に対して開放した空間となっている。そこで、真ん中の突出部124cには、インシュレータ126が取り外し可能に装着され、該インシュレータ126には、コイル素線(コイル導線)128aが巻回されることでコイル128が形成されている。
基端部124aの上面には、ネジ部材130を介して端子部132が取り付けられている。端子部132は、ネジ部材130が貫通し且つ電気絶縁材料からなる端子台132aと、端子台132aに設けられた2つの端子132b、132cとを有する。2つの端子132b、132cは、コイル128の始端部又は終端部に接続されると共に、駆動電源(駆動装置)134に接続されている。
この場合、駆動電源134から端子132b、132cを介してコイル128に電流を供給すると、真ん中の突出部124cに磁束が発生し、個別保持装置122は、電磁石として機能する。なお、個別保持装置122の電磁石としての機能の詳細は、後述する。
図9では、1個の個別保持装置122に駆動電源134が接続されている場合を図示しているが、実際には、テーブル112に配置された全ての個別保持装置122に駆動電源134が接続されている。従って、駆動電源134は、全ての個別保持装置122について、個別に、電流を供給し、又は、供給を停止することにより、電磁石としての各個別保持装置122の駆動を個別にオン又はオフさせることができる。また、駆動電源134は、全ての個別保持装置122について、同時に電流を供給し、又は、供給を同時に停止することにより、電磁石としての各個別保持装置122の駆動を一斉にオン又はオフさせることもできる。
第1プレート112a及び第2プレート112bには、各個別保持装置122の個数と同数の支持機構136が円環状に配置され、各個別保持装置122は、それぞれ、支持機構136を介して第1プレート112a又は第2プレート112bに配置されている。
支持機構136は、図8に示す略L字状の支持部材138を有する。支持部材138には、ネジ部材140を介して、コア124の基端部124aが固定されている。また、支持部材138は、ネジ部材142により載置台112eに固定された支持部144に、軸部146を介して軸支されている。さらに、支持部材138の底部における矢印D2方向の箇所には、半球状の受け部148が設けられ、第1プレート112a及び第2プレート112bを矢印E方向に貫通するロッド部150の当接部150aに接触可能である。
この場合、図示しないアクチュエータによりロッド部150が矢印E方向に進退(上下動)すると、ロッド部150の当接部150aに接触する受け部148を介して、支持部材138にロッド部150からの上下動の力が伝達される。これにより、支持部材138は、軸部146を中心として、個別保持装置122と一体的に回動する。この結果、分割コア部14を構成する磁極部24bの湾曲面24cに対して、個別保持装置122を矢印D方向に進退させることができる。
ここで、電磁石としての個別保持装置122の機能について、図10〜図12を参照しながら説明する。
分割コア部14を上下反対にして引き回し部40を載置台112eに載置し、且つ、支持機構136によって磁極部24bの湾曲面24cと個別保持装置122(の3つの突出部124b〜124d)とを近接させた状態で、駆動電源134から端子132b、132cを介してコイル128に電流を供給する。これにより、真ん中の突出部124cに磁束152が発生する。そのため、真ん中の突出部124cに発生した磁束152は、基端部124aと、両端の突出部124b、124dと、磁極部24bと、真ん中の突出部124cとで形成されるループの磁路に沿って分割鉄心24に鎖交する。
また、前述のように、両端の突出部124b、124dの先端部分は、湾曲面24cに沿った形状であると共に、該湾曲面24cに面接触する。一方、真ん中の突出部124cの先端部分は、両端の突出部124b、124dの先端部分が湾曲面24cに面接触しても、湾曲面24cから僅かに離間している。そのため、コア124が分割鉄心24に接触する際、両端の突出部124b、124dの先端部分は、湾曲面24cに対してがたつくことなく面接触する。これにより、分割鉄心24の吸着時には、該分割鉄心24を確実に且つ効率よく吸着することが可能となる。
しかも、個別保持装置122は、図8に示すように、矢印E方向に沿って、湾曲面24cに対向するように配置されている。そのため、発生した磁束152は、図10〜図12で模式的に示すように、各金属板22の積層方向(矢印E方向)に対する垂直方向である矢印D方向に沿って、該各金属板22に鎖交する。
さらに、製造装置110では、矢印G方向に隣接する各個別保持装置122について、コイル素線128aの巻回方向を互いに異なる方向にするか、又は、駆動電源134から供給される電流の向きを互いに異なる方向にする。これにより、図10及び図11に示すように、矢印D方向に沿った電磁石の極性を互いに逆方向(逆極性)とし、互いに異なる方向の磁束152を発生させることができる。
図10及び図11に模式的に示す一例において、左側の個別保持装置122では、真ん中の突出部124cの湾曲面24c側がN極であると共に、基端部124a側がS極である。一方、右側の個別保持装置122では、真ん中の突出部124cの湾曲面24c側がS極であると共に、基端部124a側がN極である。
これにより、左側の個別保持装置122のN極、左側の分割鉄心24、右側の分割鉄心24、右側の個別保持装置122のS極との間には、磁束152a(磁束152の一部)を左右の分割鉄心24に及ぼすための磁路が形成される。この結果、左側の個別保持装置122のN極から出た磁束152aは、左側の分割鉄心24の磁極部24bからヨーク部24a及び嵌合凸部34を通過し、右側の分割鉄心24の嵌合凸部34、ヨーク部24a及び磁極部24bを介して、右側の個別保持装置122のS極に至る。
このように、製造装置110では、(1)矢印D方向に沿って各金属板22に磁束152を鎖交させ、(2)隣接する個別保持装置122の電磁石としての極性が互いに逆極性であり、(3)一方の個別保持装置122から2つの分割コア部14(の分割鉄心24)を介して他方の個別保持装置122に磁束152aが鎖交することにより、分割コア部14に対する電磁石としての個別保持装置122の吸着力を大きくすることができる。
これにより、個別保持装置122は、載置台112eに載置された分割コア部14を確実に保持することができる。そのため、個別保持装置122は、コイル素線18aの始端部及び終端部の引き回し作業の際に、コイル素線18aに発生する張力に耐え得るだけの吸着力で分割コア部14を保持することができる。
なお、図10及び図11は、説明の便宜上、2つの個別保持装置122を簡略的に図示すると共に、湾曲面24cを平坦に図示した模式的な説明図としている。
[2−2.製造装置を用いたステータの製造方法の説明]
次に、本実施形態に係る製造方法について、製造装置110との関係で、図6〜図12を参照しながら説明する。
ここでは、図6のフローチャートを参照しながら、主として、前述した製造装置110の主要部分の動作に着目したステータ10の製造工程について、説明する。
先ず、図6のステップS1において、ステータ10(図1参照)に組み込まれる全ての分割コア部14について、分割鉄心24(図2及び図3参照)にインシュレータ26を嵌合させた状態で、該インシュレータ26にコイル素線18aを巻回してコイル18をそれぞれ構成する。この場合、各分割コア部14について、コイル素線18aの始端部は、ブロック52aの矢印C2方向の側部から矢印B1方向に延在し、一方で、コイル素線18aの終端部は、ブロック52bの矢印C1方向の側部から矢印B1方向に延在する。
このように、ステップS1では、全ての分割コア部14を予め作り置きしておく。次に、テーブル112(図7及び図8参照)に分割コア部14を円環状に配置してステータコア16を構成する場合、今回配置する1個の分割コア部14が最後に配置される分割コア部14でなければ(ステップS2:NO)、次のステップS3(保持工程)において、該テーブル112上の所定箇所、すなわち、所定の個別保持装置122よりも矢印D1方向側に設けられた載置台112eに、引き回し部40を下にした状態で、当該1個の分割コア部14を載置する。
この場合、入力端子U〜W及び中性端子Nに近い分割コア部14から順に1個ずつ配置していく。すなわち、図1のようなステータ10を製造する場合、分割コア部14を上下反対にしてテーブル112に配置するので、第1プレート112aには、回動軸112cに近い箇所から矢印G2方向に、例えば、V1、W1、U2、…の順に分割コア部14がステータコア16の半周分配置される。また、第2プレート112bについては、例えば、U1、W6、V6、…の順に分割コア部14がステータコア16の他の半周分配置される。
次のステップS4(保持工程)において、図示しないアクチュエータによりロッド部150を矢印E1方向に進行させることにより、軸部146を中心として、支持部材138及び個別保持装置122を一体的に回動させる。これにより、個別保持装置122を構成するコア124の両端の突出部124b、124dは、分割コア部14を構成する磁極部24bの湾曲面24cに面接触する。
この状態で、駆動電源134から端子132b、132cを介してコイル128に電流を供給すると、真ん中の突出部124cに磁束152が発生する。発生した磁束は、基端部124a、両端の突出部124b、124d、磁極部24b及び真ん中の突出部124cにより形成されるループの磁路に沿って、分割鉄心24に鎖交する。
これにより、電磁石としての個別保持装置122がオンとなり、該個別保持装置122から分割鉄心24に対する吸着力が発生する。この結果、前記吸着力で分割鉄心24を吸着し、載置台112eに載置された分割コア部14を確実に保持することができる。しかも、両端の突出部124b、124dの先端部分は、磁極部24bの湾曲面24cに沿った形状に形成され、一方で、真ん中の突出部124cは、湾曲面24cから僅かに離間している。そのため、両端の突出部124b、124dの先端部分は、湾曲面24cに対してがたつくことなく面接触することになり、両端の突出部124b、124dで分割鉄心24を確実に且つ効率よく吸着することができる。
なお、矢印G方向に沿って複数の分割コア部14が保持されている場合、矢印G方向に隣接する各分割コア部14には、図10及び図11に示す磁束152aが及ぼされる。これにより、各分割コア部14に対する各個別保持装置122の吸着力を一層大きくすることができる。
次のステップS5において、図示しない回転モータで回転軸112dを回転させることにより、テーブル112を全体的に矢印G方向に回転させながら、ステップS4で保持した1個の分割コア部14について、導線端部保持溝56a、56bにコイル素線18aの終端部を挿入すると共に、導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bのうち、同一高さの保持溝にコイル素線18aの始端部を挿入し、該コイル素線18aの始端部及び終端部を、入力端子U〜W及び中性端子Nが設けられる位置にまで引き回す。
ここで、例えば、入力端子U〜W及び中性端子Nから離れた箇所に1個の分割コア部14を配置する場合には、入力端子U〜W及び中性端子Nに向う方向に他の分割コア部14が既に配置されている(一例として、U6相の分割コア部14を配置する場合には、V6、W6、U1の各相の分割コア部14が既に配置されている)。そのため、コイル素線18aの始端部及び終端部を外部に露出させることなく、且つ、コイル素線18aの始端部及び終端部を弛ませることなく、入力端子U〜W及び中性端子Nが設けられる位置にまで引き回すことができる。
なお、分割コア部14は、個別保持装置122によって吸着保持されており、該分割コア部14に及ぼされる吸着力は、コイル素線18aの始端部及び終端部の引き回しの際に、当該コイル素線18aに発生する張力に耐え得る程度の大きさの吸着力である。そのため、コイル素線18aの引き回し作業を安定に且つ確実に行うことができる。
次のステップS6において、コイル素線18aの始端部及び終端部が導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bにそれぞれ挿入された状態で、コイル素線18aの始端部及び終端部のうち、一方の端部が、入力端子U〜W又は中性端子Nまで先に引き回されたときに、回転モータによる回転軸112dの回転を停止させ、テーブル112の回転を一旦停止する。次に、導線端部保持溝58a〜62a、58b〜62bから矢印D1方向に伸びている該一方の端部を所定量残して、ハサミ等の切断部200(図15A及び図16B参照)で切断する。
次に、前記一方の端部に対する引き回し作業は完了しても、他方の端部に対する引き回し作業がまだ完了していない場合(ステップS7:NO)には、該他方の端部に対してステップS5及びS6の処理を引き続き行う。これにより、前記他方の端部についても入力端子U〜W又は中性端子Nまで引き回すことができる。
その後、コイル素線18aの始端部及び終端部が入力端子U〜W及び中性端子Nまでそれぞれ引き回されることにより、該コイル素線18aの端部に対する引き回し作業は完了したが(ステップS7:YES)、全ての分割コア部14に対するコイル素線18aの始端部及び終端部の引き回し作業まで完了していなければ(ステップS8:NO)、ステップS2に戻り、次の分割コア部14に対して、ステップS2〜S8の処理を繰り返し実行する。
そして、ステップS2において、今回配置する1個の分割コア部14が最後に配置される分割コア部14(U4相又はV4相の分割コア部14)であれば(ステップS2:YES)、次のステップS9において、アクチュエータ120を駆動させて、ロッド部120bを矢印F2方向に進行させる。これにより、支持部材118b及び軸部116bを介して、連結部材114bの軸部116b側の部分が矢印F2方向に変位し、第2プレート112bは、回動軸112cを中心として、第1プレート112aに対して所定角度回動する。
この結果、第1プレート112a及び第2プレート112bのアクチュエータ120側において、第1プレート112aと第2プレート112bとの間で隣接する2つの分割コア部14は、矢印G方向に沿って所定角度離間することになる。
なお、最後に配置される分割コア部14がU4相の分割コア部14であれば、第1プレート112aのW3相の分割コア部14と、第2プレート112bのV4相の分割コア部14とが互いに離間することになる。また、最後に配置される分割コア部14がV4相の分割コア部14であれば、第1プレート112aのU4相の分割コア部14と、第2プレート112bのW4相の分割コア部14とが互いに離間することになる。
このように、第1プレート112aに対して第2プレート112bが回動することにより、最後に配置される分割コア部14の配置箇所が広くなった状態で、ステップS3と同様の方法により、当該最後の分割コア部14を所望の配置箇所に配置することができる(ステップS10(保持工程))。
次のステップS11(保持工程)において、ステップS4と同様に、最後に配置された分割コア部14に対する保持を行う。そのため、最後に配置された分割コア部14に対する個別保持装置122による保持動作の説明については省略する。
次のステップS12において、アクチュエータ120を駆動させてロッド部120bを矢印F1方向に退動させる。これにより、支持部材118b及び軸部116bを介して、連結部材114bの軸部116b側の部分が、矢印F1方向に変位し、第2プレート112bは、回動軸112cを中心として、第1プレート112aに向かって回動する。
この結果、第1プレート112a及び第2プレート112bのアクチュエータ120側の箇所が連結し、最後に配置された分割コア部14を含め、全ての分割コア部14が順に連結される。
その後、最後の分割コア部14に対してステップS5及びS6の処理を実行する。これにより、最後の分割コア部14を構成するコイル素線18aの端部に対する引き回し作業が完了すれば(ステップS7:YES、ステップS8:YES)、全ての分割コア部14が円環状に配置されると共に、入力端子U〜W及び中性端子Nが設けられる箇所にまで全てのコイル素線18aの端部が引き回された状態となり、ステータコア16が完成する。
次のステップS13(解除工程)において、駆動電源134から全ての個別保持装置122に対する電流の供給を停止させることにより、磁束152、152aの発生を停止させ、電磁石としての各個別保持装置122をオフさせる。これにより、全ての分割コア部14は、各個別保持装置122からの磁束152、152aに起因した吸着状態から解放され、該各分割コア部14に対する保持状態が解除される。
そして、図示しないアクチュエータによりロッド部150を矢印E2方向に退動させ、軸部146を中心として、支持部材138及び個別保持装置122を一体的に回動させることにより、全ての分割コア部14から全ての個別保持装置122を離間させることができる。
次に、保持状態から解除されたステータコア16を製造装置110から取り出してホルダ12内に収納し、各コイル素線18aの端部に対して、入力端子U〜W及び中性端子Nをそれぞれ取り付けることにより、ステータ10が完成する。最後に、該ステータ10を回転電機に組み込むことにより、前記回転電機が完成する。
なお、上記の説明では、ステップS2〜S8の処理を繰り返し行うことにより、分割コア部14の配置及び保持を1個ずつ行い、最後のステップS13で、全ての分割コア部14の保持状態を解除する場合について説明した。
本実施形態では、図5でも説明したように、隣接する分割コア部14を連結することにより仮固定の状態となる。また、コイル素線18aの始端部及び終端部を矢印G方向に引き回すことにより、仮固定の状態が一層強固なものとなる。
そこで、本実施形態では、第1プレート112a及び第2プレート112bに配置される分割コア部14の個数が3個以上である場合には、ステップS4後のステップS14(保持工程)において、矢印G方向に沿った、両端の分割コア部14に対する保持状態を維持する(又は保持状態に切り替える)一方で、両端の分割コア部14の間で連結されている他の分割コア部14については、保持状態を解除してもよい。
これにより、保持状態が解除されても、他の分割コア部14については、配置された状態を維持することができると共に、他の分割コア部14に対応する個別保持装置122への電流供給が停止することで、当該他の分割コア部14の個数分だけの電力消費を抑えることができる。
また、上記の説明では、予め作り置きした複数の分割コア部14を用いてステータ10を製造する場合について説明したが、本実施形態では、例えば、各分割コア部14に対して、1個ずつステップS1〜S8の処理を繰り返し行うことも可能である。
[2−3.コイル素線の端部の引き回し作業の説明]
次に、本実施形態に係る製造方法について、一例として、V1相の分割コア部14をテーブル112(の第1プレート112a)に配置してコイル素線18aの端部を引き回す場合について、図6〜図17Bを参照しながら説明する。なお、この引き回し作業は、テーブル112及び個別保持装置122を含む製造装置110の主要部分や、個別保持装置122を用いた分割コア部14の保持の点以外は、概ね、特許文献1の開示内容と同様である。
図13は、第1プレート112aにV1相の分割コア部14を配置する直前の状態を図示している。
テーブル112の第2プレート112bには、V1相の分割コア部14を配置する前に、W6相の分割コア部14と、U1相の分割コア部14とが既に円環状に配置されている。
配置前のV1相の分割コア部14は、クランプ部材156、158によりクランプされている。クランプ部材156は、インシュレータ26の上側内周壁44a及び下側内周壁44b(図2及び図3参照)側を押さえ、クランプ部材158は、インシュレータ26の上側外周壁46a及び下側外周壁46b側を押さえている。従って、V1相の分割コア部14は、矢印D方向に沿ってクランプされている。
また、V1相の分割コア部14のインシュレータ26に巻回されたコイル素線18aの始端部は、プーリ160によって仮巻きされ、コイル素線18aの終端部は、プーリ162によって仮巻きされている。各プーリ160、162は、コイル素線18aの端部(始端部又は終端部)を仮巻き可能なHプーリであり、図示しない支持部材によって回転可能にそれぞれ支持されている。
さらに、テーブル112の近傍には、円板状の押込治具170〜176が配置されている。各押込治具170〜176は、支持部材180〜186によってそれぞれ支持され、第1プレート112a又は第2プレート112bに配置された各分割コア部14の導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに対して進退可能である。また、押込治具170〜176は、導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに進入して該導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bに挿入されたコイル素線18aの端部を押込可能な厚み(導線端部保持溝56a〜62a、56b〜62bの幅よりも若干小さな厚み)を有する。
具体的に、押込治具170及び支持部材180は、第1プレート112a又は第2プレート112bに配置された各分割コア部14の導線端部保持溝56a、56bに、該押込治具170が進入可能な高さ位置に配置されている。また、押込治具172及び支持部材182は、第1プレート112a又は第2プレート112bに配置された各分割コア部14の導線端部保持溝58a、58bに、該押込治具172が進入可能な高さ位置に配置されている。
さらに、押込治具174及び支持部材184は、第1プレート112a又は第2プレート112bに配置された各分割コア部14の導線端部保持溝60a、60bに、該押込治具174が進入可能な高さ位置に配置されている。さらにまた、押込治具176及び支持部材186は、第1プレート112a又は第2プレート112bに配置された各分割コア部14の導線端部保持溝62a、62bに、該押込治具176が進入可能な高さ位置に配置されている。
各支持部材180〜186の側部には、プーリ160、162に仮巻きされたコイル素線18aの端部を押さえることにより、コイル素線18aの端部がプーリ160、162から外れたり、ばらけたり、あるいは、弛んだりすることを防止するための押さえ部材190〜196も設けられている。
これらのクランプ部材156、158、プーリ160、162、押込治具170〜176、支持部材180〜186、及び、押さえ部材190〜196も、製造装置110の構成要素の一部である。
ここで、V1相の分割コア部14を第1プレート112aに配置し、該分割コア部14のコイル素線18aの端部を引き回す場合には、下記のような工程で作業を行えばよい。
先ず、図示しない移動機構により、V1相の分割コア部14を図13に示す位置から図14Aに示す位置に移動させて、第1プレート112a上に配置し、その後、クランプ部材156、158による分割コア部14のクランプ状態を解除して、該分割コア部14からクランプ部材156、158を退動させる(図6のステップS3)。
なお、図14A〜図17Bでは、説明の容易化のために、W6相及びU1相の各分割コア部14のコイル素線18aの端部の図示を省略している。また、ステップS3後、ステップS4において、V1相の分割コア部14に対する個別保持装置122による保持が行われるが、該個別保持装置122による保持については、既に詳述したので、ここでは、その説明を省略する。
V1相の分割コア部14では、コイル素線18aの始端部がプーリ160に仮巻きされると共に、コイル素線18aの終端部がプーリ162に仮巻きされている。また、コイル素線18aの始端部は、入力端子Vが設けられる位置(図1及び図14AではV1相の分割コア部14が配置される位置)にまで引きまわされ、一方で、コイル素線18aの終端部は、中性端子Nが設けられる位置(図1及び図14AではW6相の分割コア部14の位置)にまで引き回される。
すなわち、コイル素線18aの始端部と、該コイル素線18aの終端部とは、図14A〜図17Bの平面視で、クロスした状態で引き回されることになる。このような引き回しを実現するためには、下記のように始端部及び終端部を引き回せばよい。
先ず、支持部材180をV1相の分割コア部14に向けて進行させることにより、押込治具170を導線端部保持溝56b(図4参照)に挿入し、コイル素線18aの終端部に接触させる共に、プーリ162に仮巻きされたコイル素線18aの終端部に押さえ部材190を接触させる。一方、支持部材184もV1相の分割コア部14に向けて進行させることにより、プーリ160に仮巻きされたコイル素線18aの始端部に押さえ部材194を接触させる。なお、各プーリ160、162は、コイル素線18aの始端部及び終端部の弛みの発生を防止する程度に、始端部及び終端部を巻き取る方向に回転している。
この状態で、回転軸112dの回転によってテーブル112が図14Bの時計方向(矢印G2方向)に回転すると、テーブル112上の各分割コア部14も矢印G2方向に回転し、この結果、各プーリ160、162の巻き取り方向への回転に抗して、コイル素線18aの始端部及び終端部は、各プーリ160、162からそれぞれ引き出される。
前述のように、回転前のV1相の分割コア部14の導線端部保持溝56bに押込治具170が挿入されているので、該押込治具170は、テーブル112及び各分割コア部14の矢印G2方向への回転によって、プーリ162から引き出されるコイル素線18aの終端部を各分割コア部14の導線端部保持溝56a、56bに押し込みつつ(挿入しつつ)、矢印G2方向に沿って該終端部を引き回すことになる(図6のステップS5)。
この場合、押込治具170の形状が円板状であるため、コイル素線18aの終端部に対して必要以上に面圧をかけることなく、該終端部を導線端部保持溝56a、56bの底面100a、100b側まで確実に押し込むことができる。また、コイル素線18aの終端部を押し込んで引き回す際に、押込治具170とコイル素線18aとの接触による該コイル素線18aの終端部での傷の発生等も回避することができる。
そして、図15Aに示すように、V1相の分割コア部14を構成するコイル素線18aの終端部が中性端子Nの設けられる箇所に到達したときに、切断部200を用いて、導線端部保持溝56bから所定量(中性端子Nと接続可能な程度の突出量)だけ残して、コイル素線18aの終端部を切断する(ステップS6)。
この場合、コイル素線18aの終端部における導線端部保持溝56b側の部分は、押込治具170によって導線端部保持溝56bに押し込まれ、プーリ162に仮巻きされた部分は、押さえ部材190によって押さえられている。これにより、前記切断によって、各分割コア部14の導線端部保持溝56a、56bに挿入されたコイル素線18aの終端部の一部が外方に外れたり、プーリ162に仮巻きされたコイル素線18aの終端部の一部が外れたり、ばらけたり、又は、弛んだりすることを防止することができる。
なお、コイル素線18aの始端部は、プーリ160からV1相の分割コア部14に向かって直線状に引き出され、押さえ部材194によって押さえられているため、外れ、ばらけ、弛み等の問題は発生しない。
このようにして、V1相の分割コア部14について、中性端子Nが設けられる箇所までのコイル素線18aの終端部の引き回しが完了すると、図15Bに示すように、押込治具170、支持部材180及び押さえ部材190は、テーブル112から退動する。これにより、押込治具170及び押さえ部材190は、コイル素線18aの終端部から離間する。
一方、V1相の分割コア部14においては、入力端子Vが設けられる箇所までのコイル素線18aの始端部の引き回しがまだ完了していないため(ステップS7:NO)、回転軸112dの回転により、今度は、テーブル112を図15Bの反時計方向(矢印G1方向)に回転させる。矢印G1方向への回転により、プーリ160から引き出されたコイル素線18aの始端部が撓むおそれがあるため、該プーリ160は、矢印G1方向への回転に対応して、コイル素線18aの始端部を巻き取ればよい。
そして、図16Aに示すように、V1相の分割コア部14が当初の配置位置にまで戻った時点で、テーブル112の回転を一旦停止し、押込治具174、支持部材184及び押さえ部材194をV1相の分割コア部14に進行させる。これにより、押込治具174は、V1相の分割コア部14の導線端部保持溝60a(図4参照)に挿入されて、コイル素線18aの始端部に接触すると共に、プーリ160に仮巻きされたコイル素線18aの始端部の一部は、押さえ部材194に引き続き押さえられる。
この状態で、テーブル112の矢印G1方向への回転を再開すると、プーリ160からコイル素線18aの始端部がさらに引き出され、押込治具174は、引き出されたコイル素線18aの始端部を各分割コア部14の導線端部保持溝60a、60bに押し込みつつ(挿入しつつ)、矢印G1方向に沿って該始端部を引き回す(図6のステップS5)。
この場合、押込治具174は、押込治具170と同様に円板状であるため、コイル素線18aの始端部に対して必要以上に面圧をかけることなく、該終端部を導線端部保持溝60a、60bの底面104a、104b側まで確実に押し込むことができる。また、コイル素線18aの始端部を押し込んで引き回す際に、押込治具174とコイル素線18aとの接触による該コイル素線18aの始端部での傷の発生等も回避することができる。
そして、図16Bに示すように、コイル素線18aの始端部が入力端子Vの設けられる箇所に到達したときに、切断部200を用いて、V1相の分割コア部14の導線端部保持溝60bから所定量(入力端子Wと接続可能な程度の突出量)だけ残して、該コイル素線18aの始端部を切断する(図6のステップS6)。この場合でも、コイル素線18aの始端部における導線端部保持溝60b側の部分は、押込治具174によって導線端部保持溝60bに押し込まれ、プーリ160に仮巻きされた部分は、押さえ部材194によって押さえられている。そのため、前記切断によって、導線端部保持溝62a、62bに挿入されたコイル素線18aの始端部の一部が外方に外れたり、プーリ160に仮巻きされたコイル素線18aの始端部の一部がプーリ160から外れたり、ばらけたり、あるいは、弛んだりすることを防止することができる。
このようにして、V1相の分割コア部14について、入力端子Vが設けられる位置までのコイル素線18aの始端部の引き回しが完了すると、図17Aに示すように、押込治具174、支持部材184及び押さえ部材194は、テーブル112から退動する。これにより、押込治具174及び押さえ部材194は、コイル素線18aの始端部から離間する。この結果、V1相の分割コア部14に対するコイル素線18aの始端部及び終端部の引き回し作業が完了する(ステップS7:YES)。
なお、他の分割コア部14についても同様にしてコイル素線18aの始端部及び終端部を引き回すことができる。
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態において、各個別保持装置122は、テーブル112における各分割コア部14(を構成するコイル18)の配置箇所よりも矢印D2方向側(ステータコア16の内径側)で円環状に配置されている。しかも、各個別保持装置122が個別に1個の分割コア部14を保持可能であるため、各分割コア部14に対する保持又は保持状態の解除を個別に行うことができる。これにより、各分割コア部14を円環状に1個ずつ確実に配置することができる。
また、各個別保持装置122が各分割コア部14よりも矢印D2方向側に配置されているため、限られたスペース内で各分割コア部14を安定して保持することができると共に、各分割コア部14よりも矢印D1方向側(ステータコア16の外周部分)で各コイル18のコイル素線18aの端部の引き回し等の各種の加工作業を容易に行うことができる。
このように、本実施形態によれば、各分割コア部14を個別に保持し、又は、保持状態を解除することにより、各分割コア部14を効率よく円環状に配置することが可能となる。
また、各個別保持装置122は、それぞれ、1個の分割コア部14を構成する分割鉄心24の湾曲面24cを吸着可能な電磁石として機能する。これにより、電磁石としての個別保持装置122の駆動時には、1個の分割コア部14の湾曲面24cを確実に吸着して、当該1個の分割コア部14(に設けられた1個のコイル18)を確実に保持することができる。一方、個別保持装置122の停止時には、1個の分割コア部14の湾曲面24cが吸着状態から解放されるので、1個の分割コア部14を保持状態から確実に解除することができる。
また、駆動電源134から各個別保持装置122に対して個別に電流を供給することにより、各個別保持装置122を個別にオン又はオフさせるので、配置したい分割コア部14に対応する個別保持装置122のみをオンにすることで、当該分割コア部14の湾曲面24cが確実に吸着され、分割コア部14を所定の配置箇所に確実に配置することができる。
さらに、隣接する各個別保持装置122について、矢印D方向に沿った電磁石の極性(真ん中の突出部124cの極性)を互いに逆方向にすることで、各個別保持装置122からの磁束152(の一部である磁束152a)が分割コア部14の分割鉄心24を介して隣接する個別保持装置122に鎖交する。この結果、隣接する2つの個別保持装置122と分割鉄心24とによって磁束152、152aのループが形成され、分割コア部14に対する各個別保持装置122の吸着力を大きくすることができる。
しかも、個別保持装置122から分割コア部14に及ぼされる吸着力が、コイル素線18aの始端部及び終端部の引き回し作業の際に、当該コイル素線18aに発生する張力に耐え得る程度の吸着力であれば、限られたスペース内においても、コイル素線18aの引き回し作業を安定に且つ確実に行うことができる。
また、本実施形態では、各分割コア部14を1個ずつ円環状に配置しながら、各分割コア部14を保持するステップS3、S4、S10、S11、S14と、各分割コア部14を円環状に配置した後、各分割コア部14の保持状態を解除するステップS13とを実行する。これにより、各分割コア部14に対する保持又は保持状態の解除を個別に行うことができるので、各分割コア部14を円環状に1個ずつ確実に配置することができる。
具体的に、図6に示すように、本実施形態では、複数の分割コア部14をテーブル112に配置する場合、ステップS2〜S8の処理を繰り返し行うことにより、保持工程としてのステップS3、S4の処理が繰り返し行われる。これにより、1個の分割コア部14の配置と、1個の個別保持装置122による当該分割コア部14の保持とが交互に行われる。この結果、各分割コア部14を円環状に1個ずつ確実に且つ効率よく配置することが可能となる。また、各個別保持装置122が分割コア部14よりも矢印D2方向側に配置されているため、限られたスペース内で各分割コア部14を安定して保持することができると共に、ステータコア16の外径側で各コイル素線18aの端部の引き回し等の各種の加工作業を容易に行うことができる。
また、円環状に各分割コア部14を配置する場合、途中で円弧状に複数の分割コア部14が配置されていれば、両端の分割コア部14によって挟まれた他の分割コア部14は、仮固定の状態となる。そこで、ステップS14の処理を実行し、両端の分割コア部14に対する保持状態を維持すると共に、他の分割コア部14に対する保持状態を解除することにより、該保持状態が解除されても、他の分割コア部14については、配置された状態を維持することができると共に、他の分割コア部14に対応する個別保持装置122の電力消費を抑えることができる。
つまり、ステップS14において、両端の分割コア部14に対する吸着状態を維持し、一方で、両端の分割コア部14の間に配置されている他の分割コア部14に対する吸着状態を解除すれば、他の分割コア部14を吸着する個別保持装置122に供給する電力を節約することができる。
さらに、ステップS4、S11では、駆動電源134から各個別保持装置122に対して個別に電流を供給することで各個別保持装置122がオンとなり、各個別保持装置122による各分割コア部14の吸着が行われる。一方、ステップS13では、駆動電源134から各分割コア部14に対する電流の供給を停止することで各分割コア部14が一斉にオフとなり、各個別保持装置122による各分割コア部14の吸着状態が解除される。
これにより、ステップS4、S11では、各分割コア部14の湾曲面24cを確実に吸着して、各分割コア部14に設けられたコイル18を確実に保持することができる。一方、ステップS13では、各分割コア部14が吸着状態から解放されるので、各コイル18を保持状態から確実に解除することができる。
また、ステップS4、S11では、配置したい分割コア部14に対応する個別保持装置122のみをオンにすることで、当該分割コア部14を所定の配置箇所に確実に配置することができる。
また、本実施形態において、各個別保持装置122は、電磁石として機能し、金属板22の積層方向(矢印A方向、矢印E方向)に対する垂直方向(矢印B方向、矢印D方向)から該金属板22に磁束152、152aを及ぼす。
分割鉄心24は、金属板22の積層体であり、各金属板22間は接着剤27によって電気的に絶縁されている。そして、本出願人は、鋭意努力によって、後述するように、積層方向に沿って磁束152を及ぼす(鎖交させる)と、磁力が弱くなるという知見を得た。
そこで、本実施形態では、垂直方向に沿って個別保持装置122から各金属板22に磁束152、152aを及ぼすことにより、1枚の金属板22内でループする磁路が形成され、分割鉄心24内での磁力の低下を抑制することができる。この結果、分割鉄心24に対して積層方向に磁束を及ぼす場合と比較して、より大きな吸着力を個別保持装置122から分割鉄心24に及ぼすことができる。
そのため、複数の分割コア部14に対して個別に個別保持装置122から磁束152、152aを及ぼし、当該磁束152、152aが及ぼされる分割鉄心24を吸着することにより、1個の分割コア部14(に設けられたコイル18)を確実に保持することができる。また、保持状態の1個の分割コア部14について、当該1個の分割コア部14の分割鉄心24に対する個別保持装置122からの磁束152、152aの鎖交を停止させれば、分割鉄心24が吸着状態から解放されるので、1個のコイル18の保持状態を確実に解除することができる。この結果、各分割コア部14を効率よく円環状に配置することが可能となる。
また、本実施形態では、3つの突出部124b〜124dが基端部124aから三又状に延伸している。そのため、駆動電源134からコイル128への電流の供給によって真ん中の突出部124cに発生した磁束152、152aは、基端部124a、両端の突出部124b、124d、分割鉄心24及び真ん中の突出部124cで形成されるループに沿って分割鉄心24に鎖交する。この結果、限られたスペース内であっても、分割鉄心24に対して磁束152、152aを確実に且つ効率よく鎖交させることができる。
また、本実施形態では、三又状に延伸した3つの突出部124b〜124d間で、真ん中の突出部124cにインシュレータ126を介してコイル素線128aを巻回し、コイル128を形成している。これにより、限られた狭いスペースに複数の個別保持装置122を配置せざるを得ない状況でも、コイル128の巻数を確保することができる。
さらに、コイル128に故障等が発生した場合には、当該コイル128及びインシュレータ126を分割コア部14側にスライドさせることにより、真ん中の突出部124cからコイル128及びインシュレータ126を取り外すことができる。これにより、量産可能で且つメンテナンスも容易な個別保持装置122を実現することができる。
また、分割鉄心24の磁極部24bにおける個別保持装置122側は、矢印G方向に沿って円弧状に形成された湾曲面24cとされている。この場合、個別保持装置122では、3つの突出部124b〜124dのうち、両端の突出部124b、124dは、湾曲面24cに面接触し、一方で、真ん中の突出部124cは、湾曲面24cから離間している。これにより、分割鉄心24の吸着時には、両端の突出部124b、124dは、湾曲面24cに対してがたつくことなく面接触し、限られたスペース内で安定且つ効率的に分割鉄心24を吸着させ、分割コア部14を保持することができる。
また、両端の突出部124b、124dが湾曲面24cに面接触すると共に、真ん中の突出部124cが湾曲面24cから離間している。そのため、真ん中の突出部124cで発生した磁束152、152aは、両端の突出部124b、124dを介して分割鉄心24に確実に鎖交する。これにより、分割鉄心24を安定的に吸着することができる。
ここで、本実施形態の効果について、図18A〜図19Bの模式的な説明図を参照し、比較例(第1比較例、第2比較例)と対比させながら、より詳細に説明する。なお、これらの説明では、同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて説明する。また、図18A〜図19Bでは、説明に直接関係しない構成要素については、図示を省略している。
図18Aは、第1比較例による分割鉄心24の吸着を図示したものであり、図18Bは、本実施形態による分割鉄心24の吸着を図示したものである。図18A及び図18Bでは、個別保持装置122を長方形状のブロック(磁石)として模式的に図示している。
図18A及び図18Bは、いずれも、隣接する2個の個別保持装置122が電磁石として機能する場合を示したものであるが、図18Aの第1比較例では、矢印D方向に沿った電磁石の極性が互いに同じ極性となっている。そのため、各個別保持装置122は、対向する吸着対象の分割コア部14のみに対して磁束152を及ぼすことになる。
これに対して、図18Bに示す本実施形態では、隣接する2個の個別保持装置122が電磁石として機能した場合、矢印D方向に沿った電磁石の極性は、互いに逆極性となる。そのため、左側の個別保持装置122から発生した磁束152の一部は、磁束152aとして、左側の分割コア部14から右側の分割コア部14を介して右側の個別保持装置122に鎖交する。これにより、本実施形態では、第1比較例と対比して、分割コア部14を構成する分割鉄心24に対する吸着力を大きくすることができる。
図19A及び図19Bは、第2比較例による分割鉄心24の吸着を図示したものである。
第2比較例では、個別保持装置122が電磁石として機能した場合、分割鉄心24の積層方向に磁束152を及ぼす。従って、第2比較例では、電気絶縁層である接着剤27にも磁束152が鎖交する。そして、本出願人は、接着剤27の透磁率が金属板22の透磁率よりも低いことから、磁束152が接着剤27を通過することにより、該磁束152が弱まり、分割鉄心24に対する個別保持装置122の吸着力が低下するという知見を得た。
そこで、本実施形態では、図12に示すように、それぞれの金属板22に沿って磁束152、152aを鎖交させており、当該磁束152、152aが接着剤27を通過することはない。これにより、磁束152、152aが弱まることを回避し、分割鉄心24に対する個別保持装置122の吸着力の低下を阻止している。従って、本実施形態によれば、個別保持装置122が電磁石として機能することにより、分割鉄心24を確実に吸着して、分割コア部14を確実に保持することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。