JP5749096B2 - 鋼製型枠装置 - Google Patents

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Description

本発明は、裏面側に複数の縦バタ材と複数の横バタ材がそれぞれ接合された鋼製型枠を用いて構築されるコンクリート躯体を効率良く養生することができる鋼製型枠装置に関する。
近年、コンクリートを打設して柱や壁等からなる鉄筋コンクリート建造物を構築する際、転用性や施工性の観点から鋼製型枠(メタルフォーム)が多く用いられる。また、打設するコンクリートについては、冬季や寒冷地のような低温環境下では所定の強度が発現しにくく、初期凍害も懸念され、一方、夏季においては、急激に乾燥してしまうと躯体表面にひび割れ等が発生する、という性質がある。そのため、型枠工事においては、コンクリートを型枠内に打設した後、保温や湿潤等を目的としたコンクリートの養生が行われる。
ここで、低温環境下におけるコンクリートの養生方法については、型枠を含むコンクリート躯体に直接、ブルーシートや保温シートを掛けて、コンクリートの水和反応熱による保温を行ったり、それらシートと型枠(躯体)との間に発熱シートなどを介在させて、コンクリート躯体を加熱することが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照。)。なお、気温が高くなる夏季の場合には、コンクリート躯体に散水したり、さらに遮熱シートを掛けて直射日光を遮断し、乾燥状態が急激に起こるのを避けることが行われている。
しかし、冬季や寒冷地、極寒地等の低温環境下におけるコンクリートの養生として、単にブルーシート等を掛けただけでは、風などによってブルーシート等が捲れ上がったり、地面との隙間などから熱が外部へ放出されたり、また冷気が内部に流入するだけでなく、ブルーシート等を介して直接熱が外部に逃げることもある。そのため、単にブルーシート等を掛ける養生方法は、コンクリートの養生に適した温度に保つことが困難であり、コンクリートが凍害を受けたり、所定の強度に発現するまで著しく時間がかかっていた。なお、熱の放出や冷気の流入などを避けるため、コンクリート躯体をシートで覆うと共に、ロープ等を巻付けて固定することも行われるが、柱や壁等の大規模なコンクリート躯体を構築する工事においては、かかる作業は出来ないし、ブルーシート等を介して直接熱が外部に逃げることは防止できない。
一方、柱や壁の型枠工事では、これまで、打設したコンクリートの圧縮強度が5N/mm以上であることを確認した段階で脱型できていたが、一昨年に「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」が改訂されたことによって、同強度の基準値が10N/mm以上に変更された。これにより、型枠の存置期間が延びることになり、工期の遅延(長期化)や施工コストが増大するといった問題が生じている。よって、特に、冬季の型枠工事においては、コンクリート躯体に対して効率的な養生を行い、コンクリートの凝固を促進させるような方法が望まれている。
そのため、発熱シートを固定させた鋼製型枠を用いることで、コンクリートの養生を効率的に行う技術が前述の特許文献1以外にも数多く提案されている(例えば、特許文献2,3参照。)。
特開平01−115884号公報 特開平08−021087号公報 特開2003−293380号公報
しかし、前述の特許文献1に記載の従来技術は、木製の型枠を対象にしているため、固定金具によって型枠に平板状の発熱体(フィルムヒーター)等を容易に取り付けることが可能であるが、鋼製型枠に適用した場合には、加工等によって予め固定手段を設けておく必要があり、手間がかかる、という問題がある。また、型枠に対して高さ方向に所定の間隔で固定金物を取り付けるため、作業性が悪いと共に、その固定金物は金属製で熱伝導率が高く、熱が逃げやすいことから、固定金物を固定している位置と、固定していない位置とで、コンクリートの凝固状態が異なり、強度にムラが生じ易い、という問題もある。さらに、発熱シート等の養生部材を使用した場合、局所的に固定金具によって型枠に固定されることから、発熱シート等が固定金具によって強く押し潰される可能性もあり、その結果、発熱シート中の発熱体(フィルムヒーター)を断線させてしまうなど、養生部材を損傷させるおそれがある。
また、特許文献2に記載の従来技術では、発熱体や断熱材等の養生部材を全て鋼製型枠の裏面に形成された複数のリブ間にそれぞれ嵌め込むことにより固定するため、作業性が悪い、という問題がある。
また、特許文献3に記載の従来技術では、マグネットの磁力を利用して発熱体を鋼製型枠に固定するため、コストがかかる、という問題がある。
そこで、本発明は、鋼製型枠を用いて構築されるコンクリート躯体に対して、作業性も良く、安価で、かつ、効率良く養生することができる、鋼製型枠装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の鋼製型枠装置は、裏面側に複数の縦バタ材が水平方向に沿って所定間隔ごとにそれぞれ接合されるとともに、当該縦バタ材に、その材軸方向に沿って複数の横バタ材がそれぞれ固定された鋼製型枠を用いてコンクリート躯体を構築する鋼製型枠装置であって、前記複数の横バタ材は、前記鋼製型枠の裏面に対し隙間を有する状態で前記縦バタ材に固定され、当該隙間における前記複数の縦バタ材間にコンクリートの養生部材を設けるとともに、前記養生部材と前記複数の横バタ材との間に、流体の入出により膨縮する膨縮部材を設け、当該膨縮部材の膨張により前記養生部材が前記鋼製型枠の裏面に押し当てられて固定する、ことを特徴とする。
これにより、作業性も良く、安価で、かつ、効率良く、鋼製型枠を用いて構築されるコンクリート躯体を養生することができる。
また、本願の請求項2に係る発明の鋼製型枠装置は、請求項1記載の鋼製型枠装置において、前記流体が、空気である、ことを特徴とする。
これにより、流体として現場等での管理や取り扱いが容易な空気を使用することで、さらに、作業性が良くなり、効率良くコンクリート躯体を養生することができるとともに、養生終了後に排出しても現場環境に悪影響を与えることがない。
また、本願の請求項3に係る発明の鋼製型枠装置は、請求項1または請求項2記載の鋼製型枠装置において、前記養生部材が、発熱部材、保温部材、および遮熱部材のいずれか一つ以上を備えている、ことを特徴とする。
これにより、寒冷地や極寒地などの温度条件の厳しい場所での工事や、冬季だけでなく夏季に亘っても行われるような長期間の工事の場合においても、その時の現場環境に応じ、養生部材としての発熱部材、保温部材、および遮熱部材を適宜1つ以上選択することにより、効率良くコンクリート躯体を養生することができる。
本発明の鋼製型枠装置によれば、養生部材と複数の横バタ材との間に、流体の入出により膨縮する膨縮部材を設け、当該膨縮部材の膨張により養生部材が鋼製型枠の裏面に対して一様に押し当てられて固定するようにしたので、作業性も良く、安価で、かつ、効率良く、鋼製型枠によって構築されたコンクリート躯体を養生することができる。
本発明に係る鋼製型枠装置の組み立て状態を示す斜視図である。 図1に続く本発明に係る鋼製型枠装置の組み立て状態を示す斜視図である。 本発明に係る鋼製型枠装置の養生部材として適用した発熱シートの構造の一例を示す説明図である。 図2に続く本発明に係る鋼製型枠装置の組み立て状態を示す斜視図である。 本発明に係る鋼製型枠装置を用いた施工の一実施形態を示す平面図、及びその平面図におけるA部分とB部分をそれぞれ示す拡大断面図である。 図5に示す一実施形態の側面図である。 図5に示す一実施形態の正面図である。
まず、本発明に係る鋼製型枠装置の組み立て手順を、図面を参照して説明する。
≪鋼製型枠装置の組み立て手順≫
図1は、本発明に係る鋼製型枠装置を構成する鋼製型枠1の裏面1a側に、複数の縦バタ材2を所定間隔ごとにそれぞれ接合した状態を示す斜視図である。
まず、図1に示すように、コンクリート躯体を構築するのに必要とする枚数の鋼製型枠1を、その表面1b側を地面側にしてそれぞれ敷き並べ、専用のクリップ等により隣接する鋼製型枠1同士を連結する。その後、鋼製型枠1の裏面1a側に複数の縦バタ材2を、その鋼製型枠1の水平方向(同図上、長手方向)に沿って互いに所定の間隔を空けて載置し、それぞれ取付金具やボルト等の周知の方法により鋼製型枠1と接合する。なお、各縦バタ材2には、後述する横バタ材を貫通して固定できるように、複数の開口部21が材軸方向に沿って形成されている。
図2は、上記状態の鋼製型枠1の裏面1aに発熱部材41と保温部材43を設け、複数の縦バタ材2間に複数の横バタ材3を架設した状態を示す斜視図である。
図2に示すように、鋼製型枠1の裏面1a側において、まず、複数の縦バタ材2間には、打設したコンクリートを養生するための養生部材として、発熱機能を有する発熱シート41を敷き詰める。また、鋼製型枠1の裏面1aの両端部(同図上、長手方向の左右両端部)には、リブで囲まれた凹部に保温機能を有する断熱材43を、同じく養生部材として嵌め込む。
さらに、図2では示していないが、鋼製型枠1の裏面1aにおける複数の縦バタ材2間には、発熱シート41の上面側に、他の養生部材として、外からの熱を遮断する機能を備えた遮熱シート42を設ける(図4参照)。なお、発熱シート41と遮熱シート42はそれぞれ別々のシートでなく、それらシートが積層されて、1枚のシートとして構成されたものでも良い。さらには、発熱シート41と遮熱シート42との間に、別途、保温機能を有する保温シートや断熱シート(図示せず。)を設けるようにしてもよい。また、遮熱シート42を設けずに、発熱シート41だけを用いても勿論よい。
そして、鋼製型枠1の裏面1側における複数の縦バタ材2間に、発熱シート41と遮熱シート42を敷き詰めた後、図2に示すように、例えば、複数の縦バタ材2の開口部21に2本の横バタ材3を一つおきに通し、取付金具等によって縦バタ材2と横バタ材3を固定する。
その際、本発明の鋼製型枠装置では、鋼製型枠1の裏面1a側に敷き詰めた発熱シート41および遮熱シート42と、複数の横バタ材3との間に、後述する収縮状態の膨縮部材が通る数cm程度の隙間を空けて、複数の横バタ材3を各縦バタ材2に固定する。なお、縦バタ材2に横バタ材3を固定した後に、発熱シート41と遮熱シート42を敷き詰めるようにしても勿論よい。
図3は、養生部材として適用した発熱シート41の構造の一例を示す説明図である。
図3に示すように、本発明の鋼製型枠装置で使用する発熱シート41は、表面が紫外線による劣化を防止するUV保護シート41a,41dで覆われ、その内部に、通電により熱を発生するフィルム状の発熱体(フィルムヒーター)41bと、発熱体41bが発生した熱をなるべく外に逃がさないようにするためのフィルム状の保温(断熱)シート41cが積層状態で設けられている。なお、この発熱シート41の構造は、一例であり、保温シート41cやUV保護シート41a,41dが省略されたものでも良いし、また、保温シート41cの上にさらに遮熱シートが積層されたものでも勿論良い。要は、コンクリートの養生のために発熱(加熱)できるものであれば良い。
図4は、鋼製型枠1の裏面1a側における遮熱シート42と横バタ材3との間に配設した膨縮部材5によって、鋼製型枠1に発熱シート41と遮熱シート42が積層状態で固定された状態を示す斜視図である。
図4に示すように、鋼製型枠1の裏面1a側における複数の縦バタ材2間にあって、遮熱シート42と複数の横バタ材3との間に、流体の入出により膨縮する円筒状で密閉状態を保持可能な膨縮部材5を3つずつ設けている。この膨縮部材5としては、一般的に市場に広く流通しているエアーチューブが施工性や価格的な面で最適である。なお、膨縮部材5の数量は、3つに限るものではなく、任意に設定できる。また、その形状も円筒状に限らず、縦バタ材2間における鋼製型枠1の裏面1a全体を覆うような矩形状の座布団のような形態でも良く、特に形状に制約を受けるものではない。さらに、その材質はゴム製や軟質塩化ビニル樹脂製など、膨張状態にあっても弾力性を有するものであれば良く、入出する流体についても、空気や窒素ガス等の気体、水等の液体など、その弾力性を損なわないものであれば良い。
そして、発熱シート41および遮熱シート42と横バタ材3との隙間に配設した各膨縮部材5の内部に、例えば、コンプレッサー(図示せず。)からの圧縮空気を注入すると、膨縮部材5が膨張し、その膨張圧で発熱シート41および遮熱シート42が鋼製型枠1の裏面1aに対して一様に押し当てられて固定する。
このように、本発明に係る鋼製型枠装置では、発熱シート41等の養生部材を鋼製型枠1の裏面1aに固定させる手段として、流体の入出により膨縮する膨縮部材5を採用したので、従来技術のように、金属製の固定金物やマグネットを使用する必要もなく、また、鋼製型枠1の裏面1aに形成された複数のリブ間の全てに断熱材等の養生部材を嵌め込む作業も不要になる。よって、作業性も良く、安価で、かつ、効率良く、養生部材を鋼製型枠1の裏面1aに固定させることができる。
さらに、発熱シート41および遮熱シート42を鋼製型枠1の裏面1aに固定する場合でも、流体によって膨らんだ状態の膨縮部材は弾力性を有しているため、発熱シート41中のフィルムヒーター等の発熱体が損傷することを防止し、作業性が向上する。また、膨縮部材5により、発熱シート41が鋼製型枠1の裏面1aに対して一様に押し当てられて固定するため、コンクリートの凝固状態がほぼ均一となり、強度にムラが生じ難くなることから、コンクリート躯体の品質も向上する。
さらに、膨縮部材5に注入した空気は、熱伝導率が金属よりも大幅に低いことから、コンクリート躯体の熱が外に逃げにくい。また、現場にあるコンプレッサーを利用することができるため、管理や取り扱いが容易であり、工事終了後にその空気を排出しても、現場の環境に悪影響を及ぼすようなことがなく、環境性の点でも優れている。
なお、本実施形態の鋼製型枠装置では、鋼製型枠1の裏面1aの両端部(図2および図4上、長手方向の左右両端部)において、それぞれ縦バタ材が両側に存在しないことから、仮に膨縮部材5をそれら範囲に設けたとしても、鋼製型枠1から外れてしまう可能性がある。それが故に、膨縮部材5を設けずに、鋼製型枠1の裏面1aに形成されたリブ間の凹部に保温部材である断熱材43を設けた例を挙げて説明したが、膨縮部材5が鋼製型枠1から外れなければ、それら両端部に膨縮部材5を設けても良く、その際、保温部材である断熱材43に替えて、上述したシート状の養生部材にしても勿論よい。
次に、本発明の組み立て後の鋼製型枠装置を用いた施工の一実施形態について説明する。
≪組み立て後の鋼製型枠装置の一実施形態≫
図5(a)は、本発明の鋼製型枠装置を用いた施工の一実施形態を示す平面図であり、図5(b)および図5(c)は、それぞれ同平面図におけるA部分とB部分を示す拡大断面図である。また、図6および図7は、それぞれ図5に示す一実施形態の側面図と正面図である。
図5〜図7に示す鋼製型枠装置は、中高層マンション等のコンクリート壁を構築する場合の施工を示す一実施形態であり、対向する一対の鋼製型枠をそれぞれコンクリート壁の厚さ分だけ離間させた状態で組み立てられる。
ここで、本実施形態の鋼製型枠装置は、前述したように、鋼製型枠1の裏面1a側において、複数の縦バタ材2が、鋼製型枠1の水平方向に沿って所定間隔ごとにそれぞれ接合されるとともに、複数の横バタ材3が、その裏面1aに対して、収縮状態の膨縮部材5が通る数cm程度の隙間を有する状態で、各縦バタ材2に形成された開口部21にそれぞれ挿通して固定されている。
そして、図5(b)に示すように、鋼製型枠1の裏面1a側における複数の縦バタ材2間には、通電により発熱する発熱シート41と、熱を遮断する遮熱シート42が重ねられた状態で、流体を注入して膨張させた膨縮部材5により鋼製型枠1に固定されている。
これに対し、鋼製型枠1の裏面1aにおいて、その両端側にそれぞれ位置する最外列の縦バタ材2の外側には、図5(c)に示すように、保温機能を有する断熱材43がリブ間の凹部に嵌め込まれている。なお、ここでは、断熱材43を2枚重ねた状態で嵌め込んでいるが、2枚でなくても勿論良い。
そして、図6および図7に示すように、縦バタ材2には、その上端の適所に吊り込み用のアイボルト62が取り付けられ、下端の適所には、高さ調整用のねじ式ジャッキ(図示せず。)が取り付けられている。鋼製型枠1は、縦バタ材2および横バタ材3によって平坦性が確保された状態で、アイボルト62を利用してクレーン(図示せず。)で所定の設置位置に吊り込まれると共に、ねじ式ジャッキ(図示せず。)を用いて高さ調整および水平調整がなされて所定の位置に立設される。
また、立設した鋼製型枠1は、図7に示すように、アンカーボルト63aを介してスラブコンクリート61に固定された建込み調整用サポート63を縦バタ材2の上部に支持させることで、鋼製型枠1間に打設されるコンクリートの側圧や作業時の水平方向荷重に耐えうるように固定される。なお、図7において、64は対向する鋼製型枠1間の幅を決める幅決め材、65はセパレータであり、幅決め材64によって対向する鋼製型枠1間の間隔を決めるとともに、それら鋼製型枠1同士をセパレータ65によって締め付けて固定する。また、66は横バタ材3を縦バタ材2に固定するための取付金具であり、67と68はそれぞれ、対向する縦バタ材2間の間隔、すなわち、鋼製型枠1間の間隔を保持するためのサポート部材と締結ボルトである。また、図7において、建込み調整用サポート63は、図上右側の鋼製型枠1にのみ設けているが、実際には両側に設けている。
以上のようにして本実施形態の鋼製型枠装置を組み上げ、対向する鋼製型枠1間にコンクリートを打設する。コンクリート打設後、冬季等の低温時には、発熱シート41に通電させる一方、夏季等の高温時には、発熱シート41に通電せずにコンクリートの養生を行う。これにより、年間を通じて常に最適なコンクリートの養生温度を保ちつつ、コンクリート躯体を養生することができるので、打設したコンクリートを脱型するときの圧縮強度が10N/mm以上という所望の圧縮強度になるまでの期間、すなわちコンクリートの初期強度発現までの期間が長くなることなく、予定通りの日数で脱型が可能となる。
従って、本発明の鋼製型枠装置によれば、発熱シート41や遮熱シート42などの養生部材を鋼製型枠1の裏面1aに固定させる手段として、流体の入出により膨縮する膨縮部材5を採用したので、従来技術のように、金属製の固定金物やマグネットを使用する必要もなく、また、鋼製型枠1の裏面1aに形成された複数のリブ間の全てに断熱材等の養生部材を嵌め込む作業も不要になる。よって、作業性も良く、安価で、かつ、効率良く、養生部材を鋼製型枠1の裏面1aに固定することができる。
また、発熱シート41および遮熱シート42を鋼製型枠1の裏面1aに固定する場合でも、流体によって膨張状態にある膨縮部材は弾力性を有しているため、発熱シート41中の発熱体(加熱体)41aや配線等を損傷させずに固定することができる。さらに、膨縮部材5により、発熱シート41は鋼製型枠1の裏面1aに対して一様に押し当てられて固定するため、コンクリートの凝固状態がほぼ均一となり、強度にムラが生じ難くなることから、コンクリート躯体の品質も向上する。
また、本実施形態において、膨縮部材5に注入した空気は、金属よりも熱伝導率が大幅に低く、保温性(断熱性)も高いため、金属性の固定金物やマグネットで養生部材を固定するよりもコンクリート躯体の熱が外に逃げにくい。また、現場にあるコンプレッサーを利用することができるため、管理や取り扱いが容易であり、工事終了後にその空気を排出しても、現場の環境に悪影響を及ぼすようなことがなく、環境性の点でも優れている。
以上のことから、本発明の鋼製型枠装置によれば、従来技術よりも加熱性および保温性が向上し、特に、冬季や寒冷地のような低温環境下での型枠工事において、打設したコンクリートの初期凍害を防止することや、そのコンクリートの初期養生における強度発現を促進することが可能となる。そして、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」の改訂に伴って、打設したコンクリートを脱型するときの圧縮強度の基準値が変更されたが、前述のようにコンクリート躯体に対し、効率的で品質が向上するようなコンクリートの養生が可能になったため、型枠の存置期間が延びることなく、予定通りの期間で脱型が可能となる。
なお、本実施形態では、鋼製型枠1の裏面1a側における複数の縦バタ材2間において、膨縮部材5により鋼製型枠1の裏面1aに押し当てて固定される養生部材として、発熱シート41および遮熱シート42を例に挙げて説明したが、これら養生部材についてはシート状のものでなくても良く、例えば、保温部材として示した断熱材43のような矩形のタイル(ブロック)状のようなものでも良い。
また、本実施形態では、鋼製型枠1の裏面1a側における複数の縦バタ材2間に発熱シート41を設けた事例について説明したが、その発熱シート41を鋼製型枠1の表面1b側、すなわちコンクリートの打設面側に設けても良い。その際、鋼製型枠1の裏面1a側の縦バタ材2間には、遮熱シート42のみ、あるいは保温材43または保温シート等と遮熱シート42を設けるようにして良い。
さらに、本実施形態では、中高層マンション等のコンクリート壁を構築する場合の施工を例示して説明したが、本発明の鋼製型枠装置はこれに限定されるわけではなく、例えば、擁壁や橋脚、水路等の鉄筋コンクリート構造物にも適用可能であることは言うまでもない。
1 鋼製型枠
1a 裏面
1b 表面
2 縦バタ材
21 開口部
3 横バタ材
41 発熱シート(発熱部材・養生部材)
42 遮熱シート(遮熱部材・養生部材)
43 断熱材(保温部材・養生部材)
5 エアーチューブ(膨縮部材)

Claims (3)

  1. 裏面側に複数の縦バタ材が水平方向に沿って所定間隔ごとにそれぞれ接合されるとともに、当該縦バタ材に、その材軸方向に沿って複数の横バタ材がそれぞれ固定される鋼製型枠を用いてコンクリート躯体を構築する鋼製型枠装置であって、
    前記複数の横バタ材は、前記鋼製型枠の裏面に対し隙間を有する状態で前記複数の縦バタ材に固定され、
    当該隙間における前記複数の縦バタ材間にコンクリートの養生部材を設けるとともに、
    前記養生部材と前記複数の横バタ材との間に、流体の入出により膨縮する膨縮部材を設け、
    当該膨縮部材の膨張により前記養生部材が前記鋼製型枠の裏面に押し当てられて固定する、
    ことを特徴とする鋼製型枠装置。
  2. 請求項1記載の鋼製型枠装置において、
    前記流体が、空気である、
    ことを特徴とする鋼製型枠装置。
  3. 請求項1または請求項2記載の鋼製型枠装置において、
    前記養生部材が、
    発熱部材、保温部材、および遮熱部材のいずれか一つ以上を備えている、
    ことを特徴とする鋼製型枠装置。
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