以下、本発明の実施形態の例を説明する。本発明の重合性液晶化合物に使用できる重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH−、CH2=CCl−、CHCl=CH−、RCH=CHCOO−(Rは塩素、フッ素、または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表す)が挙げられる。これらの中でもアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。また本発明の重合性液晶化合物に使用できる芳香環、脂環、複素環及び縮合環としては、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、テトラジン、ジヒドロオキサジン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘキサノン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、テトラヒドロチオピラン、ジチアン、オキサチアン、ジオキサボリナン、ナフタレン、ジオキサナフタレン、テトラヒドロナフタレン、キノリン、クマリン、キノキサリン、デカヒドロナフタレン、インダン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、フェナンスレン、ジヒドロフェナントレン、パーヒドロフェナントレン、ジオキサパーヒドロフェナントレン、フルオレン、フルオレノン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンオン、コレステン、ビシクロ[2.2.2]オクタンやビシクロ[2.2.2]オクテン、1,5−ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン、1,5−ジチアスピロ(5.5)ウンデカン、トリフェニレン、トルクセン、ポルフィリン、フタロシアニンを使用することができる。これらの中でも、ベンゼン、シクロヘキサン、フェナントレン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレンが好ましい。これらの環は、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が望ましく、メチル基とエチル基が特に好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましく、アルカノイル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子と塩素原子が特に好ましい。環の数は2〜10個が好ましく、3〜6がさらに好ましい。選ばれた2〜6個の環は、単結合やエステル結合等の共有結合によって結合されるが、環と環の結合のうち、少なくとも一つは、−CH2CH2COO−もしくは−CH2CH2OCO−である必要がある。分子全体の形状としては、分子として液晶性を示すか、液晶材料と良好な相溶性を示すよう、液晶の技術分野で知られているように棒状、バナナ状(折れ曲がった分子)、円盤状であるのが好ましい。
で表される分子が好ましい。ここで、P1及びP2は、本発明の重合性液晶化合物に使用できる重合性官能基して上に述べた例から独立的に選ばれるのが好ましい。A1及びA2は、本発明の重合性液晶化合物に使用できる芳香環、脂環、複素環及び縮合環からなる群として上に述べた例から独立的に選ばれるのが好ましい。X1及びX2は、それぞれ独立的に単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−から選択するのが好ましい。L1のうち少なくとも一つは−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−から選ばれる連結基であるが、それ以外の連結基としては独立的に単結合、−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−OCOO−、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−から選択するのが好ましく、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−から選択するのがより好ましい。S1及びS2は2価のスペーサー基を示し、柔軟性を有するものが好ましく、隣接しない炭素原子が酸素原子で置換されていても良く、また水素原子が酸素原子、ハロゲン原子、シアノ基で置換されていても良い炭素原子数2〜18のアルキレン基、もしくはシリコン原子数が2〜18のシロキサン基から選択するのが好ましい。これらの2価のスペーサー基は直線状であっても分岐状であっても良く、不斉原子を持っていても良い。nは1〜9の整数であり、2〜5の整数であるのが好ましい。nが1〜2の整数であるときには、L1のうち、1個が−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−から選ばれる連結基であるのが好ましく、nが3〜5の整数であるときにはL1のうち、1〜2個が−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−から選ばれる連結基であるのが好ましく、nが6〜9のときにはL1のうち2〜4個が−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−から選ばれる連結基であるのが好ましい。
一般式(I)で表される棒状もしくはバナナ状の分子において−(A1−L1)n−A2−の骨格としては以下のものが挙げられるが、本発明の重合性液晶化合物において使用できる骨格はこれらに制限されるものではない。
(式中、L2、L3、L4、L5は、−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−、単結合、−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−OCOO−、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−を表し、1,4−フェニレン基は、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。また、1,4−フェニレン基中の炭素原子は窒素原子で一つ以上置換されていても良い。また、1,4−フェニレン基全体を1,4−シクロヘキシル基、ナフタレン−2,6−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルで置換しても良く、これらの環は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、また環中の炭素原子は窒素原子、酸素原子、硫黄原子で置換されていても良い)
S1及びS2の2価のスペーサー基としては、以下のものが挙げられるが、本発明の重合性液晶化合物において使用できるスペーサー基はこれらに制限されるものではない。
(式中、m1は2〜18の整数を表し、m2は1〜6の整数を表し、m3は1〜3の整数を表し、m4は1〜9の整数を表す)
以上のような一般式(I)で表されるような棒状もしくはバナナ状の分子のうち、棒状分子がさらに好ましい。このような棒状分子としては、一般式(II)で表される化合物が特に好ましい。
(式中、W1、W2はそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−、−OCO−を表し、Y1、Y2はそれぞれ独立的に−COO−、−OCO−を表し、p、qはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表し、1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い)
一般式(II)で表される化合物は、特に液晶下限温度が低い傾向にあるため、好ましい。p、qはそれぞれ独立的に3〜8の整数が好ましく、3〜6の整数が特に好ましい。一般式(II)で表される化合物の具体的な例を以下に挙げるが、本発明の重合性液晶化合物はこれらに限定されるものではない。
(式中、p、qはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す)
また、円盤状の分子としては、一般式(III)
で表される分子が好ましい。ここで、P1は、本発明の重合性液晶化合物に使用できる重合性官能基して上に述べた例から独立的に選ばれるのが好ましい。A1、A2は本発明の重合性液晶化合物に使用できる芳香環、脂環、複素環及び縮合環からなる群として上に述べた例から独立的に選ばれるのが好ましい。L1のうち少なくとも一つは−CH2CH2COO−、−CH2CH2OCO−、−COOCH2CH2−、−OCOCH2CH2−から選ばれる連結基であるが、それ以外の連結基としては独立的に単結合、−CH2−、−O−、−S−、−CO−、−OCOO−、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−から選択するのが好ましい。X1及びX2は、それぞれ独立的に単結合、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−から選択するのが好ましい。S1及びS2は、2価のスペーサー基を示し、柔軟性を有するものが好ましく、隣接しない炭素原子が酸素原子で置換されていても良く、また水素原子が酸素原子、ハロゲン原子、シアノ基で置換されていても良い炭素原子数2〜18のアルキレン基、もしくはシリコン原子数が2〜18のシロキサン基から選択するのが好ましい。これらの2価のスペーサー基は直線状であっても分岐状であっても良く、不斉原子を持っていても良い。nは2〜9の整数であり、mは0〜2の整数を表す。R1は、水素原子、もしくはP1と同じ意味を表す。
一般式(III)で表される円盤状の分子において、−S1−P1及び−S2−R1を除いた骨格としては、以下のものが挙げられるが、本発明の重合性液晶化合物において使用できる骨格はこれらに制限されるものではない。
次に本発明の重合性液晶組成物について説明する。本発明の重合性液晶組成物には、本発明の重合性液晶化合物を少なくとも30質量%以上含有させるのが好ましく、50質量%以上含有させるのがさらに好ましく、70質量%以上含有させるのが特に好ましい。また、本発明の重合性液晶組成物には、本発明の重合性液晶化合物を2種以上含有させるのが特に好ましい。
本発明の重合性液晶組成物には、本発明の重合性液晶化合物の他にも、公知の重合性液晶化合物を含有することができる。この場合、分子内に通常この技術分野で液晶骨格と認められる骨格と重合性官能基を同時に有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。しかしながら、当該液晶骨格は、少なくとも2つ又は3つの6員環を有するものが特に好ましい。重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、エチニル基、メルカプト基、マレイミド基、ClCH=CHCONH−、CH2=CCl−、CHCl=CH−、RCH=CHCOO− (Rは塩素、フッ素、または炭素原子数1〜10の炭化水素基を表す)が挙げられるが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、メルカプト基がさらに好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。一分子中に複数の重合性官能基を有する化合物の場合には、重合性官能基の種類が異なっていてもよい。例えば、重合性官能基を2つ有する化合物の場合、一方がアクリロイルオキシ基、他方がビニルオキシ基であってもよい。一分子中に一つの重合性官能基を有する単官能重合性液晶化合物としては、一般式(IV)
(式中、X7は水素原子又はメチル基を表し、rは0又は1の整数を表し、6員環A、B、Cはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基を表し、これらの6員環A、B、Cは、さらに炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y3、Y4はそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−を表し、Y5は単結合、−O−、−OCO−、−COO−、−CH=CH−COO−を表し、Z1は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子1〜20の炭化水素基を表す)で表される液晶性(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
一般式(IV)で表される単官能重合性液晶化合物の中でも、一般式(V)
(式中、X
7は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す)で表される化合物や、一般式(VI)
(式中、X
7は水素原子又はメチル基を表し、R
2は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す)で表されるものが好ましい。これら一般式(V)と一般式(VI)の化合物は、単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。組み合わせて用いる場合、一般式(V)と一般式(VI)の化合物の濃度を等しくするのが好ましい。
一般式(IV)で表される化合物の具体的な例として、式(a−1)〜(a−25)の化合物の構造と相転移温度を以下に示す。しかしながら、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、数字は相転移温度を表し、Cは結晶相、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体相をそれぞれ表す)
また、本発明の液晶組成物には、一般式(IV)で表されるような単官能重合性液晶化合物以外にも、他の単官能重合性液晶化合物を含有させても良い。このような化合物の具体例として、式(a−26)〜(a−35)の化合物の構造と相転移温度を以下に示す。しかしながら、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。(式中、シクロヘキサン環はトランスシクロヘキサン環を表し、数字は相転移温度を表し、Cは結晶相、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体相をそれぞれ表す)
さらに、一般式(VII)
(式中、X8は水素原子又はメチル基を表し、sは2〜18の整数を表し、tは0又は1の整数を表し、6員環D、E、Fはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基を表し、これらの6員環D、E、Fは、さらに炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、又はシアノ基、ハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、Y6、Y7はそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH2)4−、−CH2CH2CH2O−、−OCH2CH2CH2−、−CH=CH−CH2CH2−、−CH2CH2−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−を表し、Y8は単結合、−O−、−OCO−、−COO−、−CH=CH−COO−を表し、Z2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子1〜20の炭化水素基を表す)で表される単官能重合性液晶化合物を含有することも好ましい。このような化合物においては、sは2〜12の整数が好ましく、2〜8の整数がさらに好ましく、2〜6の整数が特に好ましい。一般式(VII)で表される化合物の具体的な例として、式(a−36)〜(a−50)の化合物の構造を以下に示す。しかしながら、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。
(式中、s、X8は一般式(VII)におけるものと同じ意味を表し、R3は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。)
一分子中に2つの重合性官能基を有する2官能重合性液晶化合物としては、式(a−51)〜式(a−60)の化合物を挙げることができる。しかしながら、本発明の液晶組成物において使用することができる化合物はこれらに限定されるものではない。
(式中、X9、X10はそれぞれ独立的に、水素原子又はメチル基を表し、u、vはそれぞれ独立的に2〜18の整数を表す。)
また、特開平10−310612公報に開示されている式(a−61)のような分子内に2つ以上の液晶骨格を有する2官能重合性液晶化合物を含有しても良い。
(式中、wは2〜18の整数を表す)
また、USP5593617に開示されている式(a−62)のような3官能重合性液晶化合物を含有しても良い。
(式中、mは4〜11の整数を表す)
また、USP5567349に開示されている式(a−63)のような4官能重合性液晶化合物を含有しても良い。
(式中、wは4〜12の整数を、w'は2〜12の整数を表す)
本発明の重合性液晶組成物には、重合性を有していない液晶性化合物を含有していても良い。重合性を有さない液晶化合物としては、一般式(VIII)、(IX)
(式中、R4、R5、R6はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数1〜16のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数3〜16のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、環G、環H、環I、環J及び環Kはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、2−メチル−1,4−フェニレン基、3−メチル−1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、フェナンスレン−2,7−ジイル基、フルオレン−2,7−ジイル基、トランス−1,4−シクロへキシレン基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、トランス−1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基またはピリダジン−2,5−ジイル基を表し、j、kはそれぞれ独立的に0、1もしくは2を表し、Y9、Y10、Y11、Y12はそれぞれ独立的に単結合、−CH2CH2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−CH2O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−を表し、Z4はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、水素原子、3,3,3−トリフルオロエトキシ基、R4または−OR4を表し、R4は炭素原子数1〜12のアルキル基または、2〜12のアルケニル基を表し、Z3、Z5は水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す)を挙げることができる。このような非重合性の液晶化合物を含有させる場合には、一般式(VIII)及び一般式(IX)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上含有させるのが好ましい。R4、R5、R6はそれぞれ独立的にフッ素置換されていても良い炭素原子数2〜8のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基、又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基で置換された炭素原子数2〜8のアルキル基が好ましく、環G、環H、環I、環J及び環Kはそれぞれ独立的にフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、トランス-1,4−シクロへキシレン基、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましく、Y9、Y10、Y11、Y12はそれぞれ独立的に単結合、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−が好ましく、単結合、−COO−、−OCO−がさらに好ましい。また、Z3、Z4、Z5のうち2つがフッ素原子であり、他の一つが水素原子であることや、Z4がシアノ基であることが好ましい。本発明の重合性液晶組成物において、非重合性液晶化合物から構成される成分は、成分それ自体でネマチック液晶性もしくはキラルスメクチックC相を呈するように設計するのが好ましい。キラルスメクチックC相を呈するよう設計する場合には、環構造としてピリミジンを、連結基としてエステル構造を有する化合物を含有するよう設計するのが好ましい。
本発明の重合性液晶組成物を受動的な素子、つまり電界や磁界の印加によっても特性が変化しない素子、例えば、位相差フィルムや光学的ローパスフィルターの材料として用いる場合には、重合性を有していない液晶性化合物の含有量は、0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がさらに好ましく、0〜10質量%が特に好ましい。本発明の重合性液晶組成物を能動的な素子、つまり電界や磁界の印加によって特性が変化し、光学的なスイッチとして機能するような素子、例えば、高分子安定化素子の材料として用いる場合には、重合性を有していない液晶性化合物の含有量は、5〜99質量%が好ましく、40〜98質量%がさらに好ましく、80〜98質量%が特に好ましい。添加することができる重合性を有していない液晶性化合物は特に制限がなく、この技術分野において液晶性化合物と認識されるものであれば使用することができるが、極性基としてシアノ基やフッ素原子等のハロゲン原子を有する液晶性化合物は、電界の印加によって配向を制御しやすいので、このような化合物を用いることは好ましい。特に極性基としてフッ素原子等のハロゲン原子のみを有するように重合性液晶組成物を設計すると、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)等の能動素子による駆動に適した高い保持率を示す液晶組成物を得られるので特に好ましい。
さらに本発明の重合性液晶組成物には、重合性官能基を有する化合物であって、液晶性を示さない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、その添加量は組成物として液晶性を呈するように調整する必要がある。
本発明の液晶組成物は、光学素子の作製に応用する場合には、室温で、典型的には25℃において液晶相を呈することが好ましい。
本発明の液晶組成物は、通常この技術分野で液晶相と認識される相を示す組成物であればよい。そのような組成物の中でも、液晶相として、ネマチック相、スメクチックA相、(キラル)スメクチックC相、コレステリック相、ディスコティック相を発現するものが好ましい。この中でも、ネマチック相は良好な配向性を有するため、特に好ましい。また、(キラル)スメクチックC相を示す場合には、該(キラル)スメクチックC相の温度領域より高い温度領域でスメクチックA相を、該スメクチックA相の温度領域より高い温度領域でネマチック相を、それぞれ発現する液晶組成物は、良好な配向性を得られる傾向にあるので好ましい。
本発明の重合性液晶組成物の液晶下限温度は40℃以下であることが望ましい。液晶下限温度が低いほど、低い温度において配向させることや、低い温度において紫外線等の活性エネルギー線の照射により配向固定を行うことができ、良好な均一性の確保が容易になる。このことから、液晶下限温度は30℃以下がさらに好ましく、25℃以下が特に好ましい。
本発明の重合性液晶組成物の透明点は、90℃以下に調整するのが好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、55℃以下が特に好ましく、50℃以下が非常に好ましい。このようにすると、注入工程等において本発明の液晶組成物を等方性液体相にする必要がある場合でも、90℃を越えるような高い温度にする必要が無く、結果として望ましくない熱重合の誘起を避けることができる。
本発明の重合性液晶組成物には、その重合反応性を向上させることを目的として、光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。その添加量は、液晶組成物に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.02〜1質量%がさらに好ましく、0.03〜1質量%の範囲が特に好ましい。また、本発明の重合性液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β-ナフチルアミン類、β-ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5質量%がさらに好ましく、0.03〜0.1質量%が特に好ましい。
本発明の重合性液晶組成物には、液晶骨格の螺旋構造を内部に有する重合体を得ることを目的として、キラル化合物を添加することもできる。そのような目的で使用するキラル化合物は、それ自体が液晶性を示す必要は無く、また重合性官能基を有していても、有していなくても良い。また、その螺旋の向きは、重合体の使用用途によって適宜選択することができる。そのようなキラル化合物としては、例えば、キラル基としてコレステリル基を有するペラルゴン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、キラル基として2−メチルブチル基を有するビーディーエイチ社(BDH社;イギリス国)製の「CB−15」、「C−15」、メルク社(ドイツ国)製の「S−1082」、チッソ社製の「CM−19」、「CM−20」、「CM」;キラル基として1−メチルヘプチル基を有するメルク社製の「S−811」、チッソ社製の「CM−21」、「CM−22」などを挙げることができる。キラル化合物を添加する場合の好ましい添加量は、液晶組成物の用途によるが、重合して得られる重合体の厚み(d)を重合体中での螺旋ピッチ(P)で除した値(d/P)が0.1〜100の範囲となる量が好ましく、0.1〜20の範囲となる量がさらに好ましい。
また、本発明の重合性液晶組成物を偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等を添加することもできる。
次に本発明の重合体について説明する。本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を重合させることによって製造される重合体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された重合体は、物理的性質に異方性を有しており、有用である。このような重合体は、例えば、本発明の重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiO2を斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させることによって製造することができる。
重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、重合性液晶組成物に有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、セロソルブ類を挙げることができる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と重合性液晶組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。また、その添加量は90質量%以下が好ましい。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。重合性液晶材料の塗布性をさらに向上させるためには、基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けることや、重合性液晶材料にレベリング剤を添加するのも有効である。基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けるのは、重合性液晶材料を重合させて得られる重合体と基板の密着性が良くない場合に、密着性を向上させる手段としても有効である。
重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を基板間に挟持させる方法としては、毛細管現象を利用した注入法が挙げられる。基板間に形成された空間を減圧し、その後、重合性液晶材料を注入する手段も有効である。
ラビング処理、あるいはSiO2の斜方蒸着以外の配向処理としては、液晶材料の流動配向の利用や、電場又は磁場の利用を挙げることができる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いても良い。さらに、ラビングに代わる配向処理方法として、光配向法を用いることもできる。この方法は、例えば、ポリビニルシンナメート等の分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜、光で異性化する官能基を有する有機薄膜又はポリイミド等の有機薄膜に、偏光した光、好ましくは偏光した紫外線を照射することによって、配向膜を形成するものである。この光配向法に光マスクを適用することにより配向のパターン化が容易に達成できるので、重合体内部の分子配向も精密に制御することが可能となる。
基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
これらの基板を布等でラビングすることによって適当な配向性を得られない場合、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしても良い。また、通常のツイステッド・ネマチック(TN)素子又はスーパー・ツイステッド・ネマチック(STN)素子で使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜は、重合体内部の分子配向構造を更に精密に制御することができることから、特に好ましい。また、電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用する。この場合、電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成するのが好ましい。
重合性液晶化合物または重合性液晶組成物の配向状態としては、液晶の技術分野で一般的に知られている種々の配向状態をとらせることができる。配向状態の一例としては、ホモジニアス(水平)配向、傾いたホモジニアス配向、ホメオトロピック(垂直)配向、傾いたホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、ツイステッドネマチック配向、スーパー・ツイステッド・ネマチック配向状態を挙げることができる。また、これらの配向の組み合わせや、場所ごとに配向状態を変えてパターン化しても良い。傾いたホモジニアス配向、及び傾いたホメオトロピック配向の場合、双方の場合とも基板面と液晶分子長軸のなす角度が0度または90度以外になっている状態を意味する。基板面と液晶分子長軸のなす角度は、作製する重合体の用途・機能によって選択すれば良い。基板面と液晶分子長軸のなす角度を10〜80度、さらに好ましくは、20〜70度の範囲に設定した場合、製造される重合体は、液晶ディスプレイの視野角を広く改善するための光学部材として使用可能である。また、液晶組成物の配向状態をハイブリッド配向にした場合も、製造される重合体は液晶ディスプレイの視野角を広く改善するための光学部材として使用可能である。また、基板面と液晶分子長軸のなす角度を30〜60度、さらに好ましくは、40〜50度、特に好ましくは45度に設定した場合、製造される重合体には、偏光分離能を効率良く付与することができる。このような重合体は、偏光分離素子や光学的ローパスフィルターとして有用である。また、液晶組成物の配向状態をハイブリッド配向にした場合も、製造される重合体は偏光光学素子や光学的ローパスフィルターとして有用である。一方、ツイステッドネマチック配向、スーパー・ツイステッド・ネマチック配向、コレステリック配向に代表されるような螺旋構造を有する配向構造も有用である。ねじり角度を60〜270度に設定した場合、液晶表示素子の光学補償用途に有用である。また、螺旋ピッチを調節し、特定の波長領域を選択的に反射するように設定した場合、製造される重合体はノッチフィルターや反射型カラーフィルターとして利用可能であり、有用である。また、選択的に反射する波長領域を赤外線の領域に設定すれば、熱線カットフィルターとしても有用である。また、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向状態にした場合、プラスチックを延伸処理したものと比較して、屈折率の異方性が大きいため、重合体としての厚みが薄くてすむという利点があり、有用である。また、液晶セル内部に、光学補償板を作り込める可能性もある。反射型液晶表示素子の光学補償に用いる場合、この特性は重要であり、特に1/4波長板としての利用は極めて重要である。
本発明の重合性液晶化合物または重合性液晶組成物を重合させる方法としては、迅速な重合の進行が望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場または温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、さらに活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いても良い。また、照射時の温度は、本発明の液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。特に、光重合によって重合体を製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm2〜2W/cm2が好ましい。強度が0.1mW/cm2以下の場合、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2W/cm2以上の場合、重合性液晶化合物または重合性液晶組成物が劣化してしまう危険がある。
重合によって得られた本発明の重合体は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50〜250℃の範囲で、また熱処理時間は30秒〜12時間の範囲が好ましい。
このような方法によって製造される本発明の重合体は、基板から剥離して単体で用いても、剥離せずに用いても良い。また、得られた重合体を積層しても、他の基板に貼り合わせて用いてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1) 重合性液晶化合物の合成(1)
4−ヒドロキシ安息香酸138.1g、6−クロロ−1−ヘキサノール136.1g、水酸化ナトリウム84.0g、ヨウ化カリウム25.0g、エタノール440ml、水440mlから成る混合物を撹拌しながら、80℃で32時間加熱した。得られた反応液を室温まで冷却後、反応液に飽和食塩水1000mlを加え、反応液の水層が弱酸性になるまで希塩酸を加えた。この反応溶液に酢酸エチル1000mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗した後、有機溶媒を減圧留去し、さらに風乾して式(s−1)の化合物を223.9g得た。
式(s−1)の化合物110.0g、アクリル酸133.1g、p−トルエンスルホン酸27.0g、ヒドロキノン6.0g、トルエン420ml、n−へキサン180ml、テトラヒドロフラン260mlから成る混合物を加熱撹拌し、生成してくる水を留去しながら6時間還流させた。反応液を室温まで冷却後、反応液に飽和食塩水1000ml、酢酸エチル800mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗した後、有機溶媒を減圧留去して粗生成物231.4g得た。次に、n−へキサン400mlとトルエン100mlの混合物からの再結晶を2回行い、式(s−2)の化合物を111.8g得た。
式(s−2)の化合物10.6g、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアルコール4.0g、4−ジメチルアミノピリジン0.5g、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩7.0g、4−ジメチルアミノピリジン0.5g、塩化メチレン150mlからなる混合物を室温で20分間撹拌した。この反応液に、式(s−2)の化合物10.6g、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩7.0g、4−ジメチルアミノピリジン0.5g、塩化メチレン50mlからなる混合物を加え、さらに8時間室温で撹拌した。反応終了後、反応液を水洗し、有機層を減圧留去することにより粗生成物24.5g得た。得られた粗生成物を酢酸エチルを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Rf=1.0)、及び60mlのエタノールからの再結晶、メタノール60ml及び塩化メチレン25mlからなる混合溶媒からの再結晶により精製して、式(s−3)の重合性液晶化合物を13.5g得た。
式(s−3)の重合性液晶化合物を昇温させると、61℃でネマチック相へ相転移し、81℃で等方性液体相に相転移した。
(実施例2)重合性液晶化合物の合成(2)
4−ヒドロキシ安息香酸メチル91.3g、3−クロロ−1−プロパノール68.1g、炭酸カリウム99.0g、ジメチルホルムアミド360mlからなる混合物をを撹拌しながら、80℃で16時間加熱還流した。得られた反応液を室温まで冷却後、反応液に飽和食塩水800mlを加え、反応液の水層が弱酸性になるまで希塩酸を加えた。この反応溶液にテトラヒドロフラン1000mlを加えて抽出を行った。有機溶媒を減圧留去し、式(s−4)の粗生成物を133.1g得た。
式(s−4)の粗生成物133.1g、水酸化ナトリウム50.0g、メタノール100ml、水100mlから成る混合物を、撹拌しながら4時間加熱還流させた。反応液を室温まで冷却後、反応液に塩酸を加えて中和した。次に反応液に飽和食塩水1000mlを加え、さらにテトラヒドロフラン1000mlを加えて抽出を行った。有機溶媒を減圧留去し粗生成物118.5g得た。次に、トルエン200ml及びテトラヒドロフラン100mlからなる混合溶媒を用いた再結晶を行い、式(s−5)の化合物88.0g得た。
式(s−5)の化合物44.0g、アクリル酸96.8g、p−トルエンスルホン酸20.0g、ヒドロキノン4.0g、トルエン200ml、ヘキサン1504ml、テトラヒドロフラン150mlからなる混合物を加熱撹拌し、生成してくる水をディーンスターク水分離器で留去しながら、8時間還流させた。反応液を室温まで冷却後、反応液に飽和食塩水1000mlを加えて反応液を洗浄した。有機層に酢酸エチル900ml加えた後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液300mlで2回洗浄した。さらに有機層を水1000mlで3回洗浄した後、有機溶媒を減圧留去して粗生成物54.2gを得た。トルエン300mlとヘキサン200mlの混合溶媒からの再結晶、トルエン200mlとヘキサン100mlの混合溶媒からの再結晶により精製し、式(s−6)の化合物を45.3g得た。
式(s−6)の化合物12.3g、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアルコール3.2g、4−ジメチルアミノピリジン0.6g、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩9.4g、テトラヒドロフラン150mlからなる混合物を6時間室温で撹拌した。反応液に飽和食塩水200ml、酢酸エチル400mlを加えて抽出を行った。有機層を水洗した後、有機溶媒を減圧留去して粗生成物15.7g得た。得られた粗生成物をトルエンと酢酸エチルの混合溶媒(容量比で酢酸エチル:トルエン=1:5、Rf=0.50)を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び40mlのメタノールからの再結晶により精製し、式(s−7)の重合性液晶化合物3.0gを得た。
式(s−7)の重合性液晶化合物を昇温させると、60℃でネマチック相へ相転移し、84℃で等方性液体相に相転移した。
(実施例3)重合性液晶組成物の調製(1)
化合物(a−1)の重合性液晶化合物50質量部
及び化合物(a−4)の重合性液晶化合物50質量部
から成る組成物(A)を調製した。組成物(A)は、室温(25℃)でネマチック液晶相を呈した。ネマチック相−等方性液体相転移温度は46℃であった。また、589nmで測定したne(異常光の屈折率)は1.662で、no(常光の屈折率)は1.510、複屈折率は0.152であった。
実施例2で合成した重合性液晶化合物(s−7)30質量部、組成物(A)70質量部から成る組成物(B)を調製した。この組成物(B)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は56℃であった。また3時間以上、結晶が析出しなかった。
(実施例4)重合性液晶組成物の調製(2)
実施例2で合成した重合性液晶化合物(s−7)40質量部、組成物(A)60質量部から成る組成物(C)を調製した。この組成物(C)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は60℃であった。また1時間以上、結晶が析出しなかった。
(実施例5)重合性液晶組成物の調製(3)
実施例2で合成した重合性液晶化合物(s−7)50質量部、組成物(A)50質量部から成る組成物(D)を調製した。この組成物(D)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は64℃であった。また1時間以上、結晶が析出しなかった。
(実施例6)重合性液晶組成物の調製(4)
実施例2で合成した重合性液晶化合物(s−7)60質量部、組成物(A)40質量部から成る組成物(E)を調製した。この組成物(E)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は67℃であった。また30分以上、結晶が析出しなかった。
(実施例7)重合性液晶組成物の調製(5)
実施例2で合成した重合性液晶化合物(s−7)70質量部、組成物(A)30質量部から成る組成物(F)を調製した。この組成物(F)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は71℃であった。また30分以上、結晶が析出しなかった。
(実施例8)重合性液晶組成物の調製(6)
実施例1で合成した重合性液晶化合物(s−3)20質量部、組成物(A)80質量部から成る組成物(G)を調製した。この組成物(G)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は56℃であった。また48時間以上、結晶が析出しなかった。589nmで測定したne(異常光の屈折率)は1.671で、no(常光の屈折率)は1.507、複屈折率は0.164であった。また20℃での粘度は56.3cpであった。
(実施例9)重合性液晶組成物の調製(7)
実施例1で合成した重合性液晶化合物(s−3)40質量部、組成物(A)80質量部から成る組成物(H)を調製した。この組成物(H)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は62℃であった。また1時間以上、結晶が析出しなかった。589nmで測定したne(異常光の屈折率)は1.675で、no(常光の屈折率)は1.504、複屈折率は0.171であった。
(実施例10)重合性液晶組成物の調製(8)
実施例1で合成した重合性液晶化合物(s−3)60質量部、組成物(A)80質量部から成る組成物(I)を調製した。この組成物(I)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は68℃であった。また30分以上、結晶が析出しなかった。
(実施例11)重合性液晶組成物の調製(10)
実施例5で調製した重合性液晶組成物(D)99質量部、光重合開始剤イルガキュアー651(チバスペシャリティケミカルズ社製)1質量部からなる重合性液晶組成物(J)を調製した。この組成物(J)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は62℃であった。また1時間以上、結晶が析出しなかった。
(実施例12)重合性液晶組成物の調製(11)
実施例6で調製した重合性液晶組成物(E)99質量部、光重合開始剤イルガキュアー651(チバスペシャリティケミカルズ社製)1質量部からなる重合性液晶組成物(K)を調製した。この組成物(K)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は65℃であった。また30分以上、結晶が析出しなかった。
(実施例13)重合性液晶組成物の調製(12)
実施例1で得た重合性液晶化合物(s−3)及び実施例2で得た重合性液晶化合物(s−7)を混合したところ、任意の割合で良く相溶した。(s−3)の重合性液晶化合物50質量部、(s−7)の重合性液晶化合物50質量部からなる重合性液晶組成物は、室温でネマチック相を示した。また、30分以上結晶が析出しなかった。
(比較例1)重合性液晶組成物の調製
式(s−8)の化合物20質量部(この化合物は、室温で結晶相を示した。相転移温度は、結晶−スメクチック相が87℃、スメクチック相−ネマチック相が91℃、ネマチック相−等方性液体相が110℃である)、
組成物(A)80質量部から成る組成物(L)を調製した。組成物(L)は、室温(25℃)でネマチック液晶相を示し、ネマチック相−等方性液体相転移温度は64℃であった。この重合性液晶組成物(L)は、15分以内に結晶が析出した。組成物(L)99質量部、光重合開始剤イルガキュアー651(チバスペシャリティケミカルズ社製)1質量部からなる重合性液晶組成物(M)を調製した。この組成物(M)は室温でネマチック相を示し、ネマチック−等方性液体相転移温度は60℃であった。この重合性液晶組成物(M)は、15分以内に結晶が析出した。
実施例3〜13と比較例1との比較により、本発明の重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物は、結晶が析出しにくいことがわかる。
(実施例14)重合体の作製(1)
セルギャップ50ミクロンのアンチパラレル配向液晶ガラスセル(液晶を一軸配向するよう配向処理を施したガラスセル)に、実施例11で調製した組成物(J)を室温にて注入した。注入後、均一な一軸配向が得られているのが確認できた。次に、室温(25℃)にてウルトラバイオレット社のUVGL−25を用いて1mW/cm2の紫外線を10分間照射して、組成物(J)を重合させ、重合体を得た。得られた重合体は、方向によって屈折率が異なっており、光学異方体として機能することが確かめられた。ガラスセルにいれたままの重合体のヘイズは1.8%であった。さらに、ガラス製液晶セルを分解して、得られた重合体単体を取り出し、耐熱性を検討したところ、150℃においても配向は乱れず、問題の無いことを確認できた。また、得られた重合体はゲル状ではなく機械的特性も優れていた。
(実施例15)重合体の作製(2)
セルギャップ50ミクロンのアンチパラレル配向液晶ガラスセル(液晶を一軸配向するよう配向処理を施したガラスセル)に、実施例12で調製した組成物(K)を室温にて注入した。注入後、迅速に均一な一軸配向が得られているのが確認できた。次に、室温(25℃)にてウルトラバイオレット社のUVGL−25を用いて1mW/cm2の紫外線を10分間照射して、組成物(K)を重合させ、重合体を得た。得られた重合体は、方向によって屈折率が異なっており、光学異方体として機能することが確かめられた。ガラスセルにいれたままの重合体のヘイズは1.7%であった。さらに、ガラス製液晶セルを分解して、得られた重合体単体を取り出し、耐熱性を検討したところ、150℃においても配向は乱れず、問題の無いことを確認できた。また、得られた重合体はゲル状ではなく機械的特性も優れていた。
(比較例2)重合体の作製
セルギャップ50ミクロンのアンチパラレル配向液晶ガラスセル(液晶を一軸配向するよう配向処理を施したガラスセル)に、比較例で調製した組成物(M)を室温にて注入した。注入後、均一な一軸配向が得られているのが確認できた。次に、室温(25℃)にてウルトラバイオレット社のUVGL−25を用いて1mW/cm2の紫外線を10分間照射して、組成物(M)を重合させ、重合体を得た。得られた重合体は、方向によって屈折率が異なっており、光学異方体として機能することが確かめられた。ガラスセルにいれたままの重合体のヘイズは13.5%であった。
実施例14、15及び比較例2から、本発明の重合性液晶組成物を用いて重合体を作製すると、ヘイズが低減された透明性の高いものが得られることがわかる。