JP5747640B2 - 太陽電池モジュール用封止材組成物及びそれを用いた封止材 - Google Patents
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Description
本発明に係る太陽電池モジュール用封止材組成物(以下単に「封止材組成物」ともいう)は、低密度のポリエチレン系樹脂と、架橋剤と、架橋助剤としてのTAICと、シラン化合物により変性されているTAIC(以下、単にシラン変性TAICともいう)とを必須とする系であるが、本発明の特徴は、架橋助剤として添加するTAICと、シラン変性TAICとを併用することにあるので、まず、TAIC及びシラン変性TAICについて説明し、以下、その他の成分について説明する。
本発明においては、架橋助剤として、多官能モノマーの官能基がアリル基であるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を用いることができる。これによって適度な架橋反応を促進させて太陽電池モジュール用封止材とガラス等の透明前面基板との密着性を向上させているとともに、本発明においては、この架橋助剤が直鎖低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ透明性を維持する。これによって、太陽電池モジュール用封止材とガラス等の透明前面基板との密着性のみならず、透明性と低温柔軟性に優れる封止材を得ることができ、具体的にはオレフィン系の樹脂についても上記密着性とともにEVAと同程度の透明性や低温柔軟性を得ることができる。
本発明の封止材組成物に含まれるシラン変性TAICは、トリアリルイソシアヌレートの三つのアリル基のうち、一又は二のアリル基がアルコキシシリルアルキル基に置換されたアルコキシシリルアルキル変性トリアリルイソシアヌレートである。
封止材組成物に含まれるベース樹脂は、例えばポリオレフィン樹脂であり、オレフィンモノマーから構成されるものであれば特に制限されるものではない。したがって、ポリオレフィン系樹脂には、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)の他、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等も含まれるが、上記のように、特に疎水性のポリエチレン樹脂において優れた効果を奏するので、以下、本発明に使用できる低密度ポリエチレンについて説明する。
本発明においては密度が0.940以下の低密度ポリエチレン(LDPE)、好ましくは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。直鎖低密度ポリエチレンはエチレンとα−オレフィンとの共重合体であり、本発明においては、その密度が0.940g/cm3以下の範囲内、好ましくは0.900g/cm3以下の範囲内、より好ましくは0.870〜0.890g/cm3の範囲である。この範囲であれば、封止材とガラス等の透明前面基板との密着性が高まる。
架橋剤は公知のものが使用でき、特に限定されるものではなく、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。架橋剤の使用量は、組成物中に0.01質量%〜2質量%含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%〜1.5質量%の範囲である。
本発明の封止材組成物においては、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋助剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整することができる。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の使用量は、組成物中に0.01質量%〜3質量%含まれることが好ましく、より好ましくは0.05質量%〜2.0質量%の範囲である。この範囲内であれば適度に架橋反応を抑制し、透明基板と封止材の密着性を向上させることができる。
太陽電池モジュール用封止材には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、本発明の封止材組成物から作製された封止材に耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材組成物中に0.001〜5質量%の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
次に、本発明の太陽電池モジュール用封止材及びそれを用いた太陽電池モジュールの一例について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の太陽電池モジュールについて、その層構成の一例を示す断面図である。本発明の太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材3、太陽電池素子4、背面封止材5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。本発明の太陽電池モジュール1は、少なくとも前面封止材3として、本発明の封止材を使用する。
<封止材の製造>
下記表1の組成の組成物を混合して溶融し、常法Tダイ法により厚さ460μmとなるように成膜して太陽電池モジュール用の未架橋の単層の封止材を得た。成膜温度は90℃〜100℃とした。
ベース樹脂(LLDPE):エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.88g/cm3、190℃でのメルトマスフローレート(MFR)8g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。ポリスチレン換算の数平均分子量77000。
架橋剤(TBEC):t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(アルケマ吉富株式会社製、商品名ルペロックスTBEC)
架橋助剤(TAIC):トリアリルイソシアヌレート(Statomer社製、商品名SR533)
UV吸収剤:ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB102
耐候安定剤:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Tinuvin770
酸化防止剤:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076
シランカップリング剤1:信越化学工業株式会社製、商品名KBM503
シランカップリング剤2:信越化学工業株式会社製、商品名KBM1003
シランカップリング剤3(シラン変性TAIC:1)(上記化合物1と化合物2の混合モル比が、化合物1/化合物2で1、信越化学工業株式会社製、商品名X−93−1428)
シランカップリング剤4(シラン変性TAIC:2)(下記の一般式(3)で表される化合物3、信越化学工業株式会社製、商品名X−40−12−956)
次に、これらの未架橋の太陽電池モジュール用封止材を150℃で18分間、真空加熱ラミネータで処理することにより、架橋処理を行って、それぞれの実施例及び比較例について架橋後の太陽電池モジュール用封止材を得た。この架橋後の太陽電池モジュール用封止材について、下記の試験条件におけるガラス密着維持率を評価した。その結果をまとめて表2に示す。
ガラス密着サンプル作製方法:ガラス基板(白板フロート半強化ガラス
JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に上記の未架橋の太陽電池モジュール用封止材を密着させて上記の真空加熱ラミネータ処理を行った。
剥離試験方法:ガラス基板上に密着している封止材を15mm幅にカットし、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行いガラス密着強度を測定した。
耐久試験方法:下記ダンプヒート(D.H.)試験前の密着強度を初期ガラス密着強度とし、D.H.試験後のガラス密着強度の初期剥離強度に対しての維持率を測定した。D.H.試験は、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で評価用サンプルモジュールの耐久性試験を500時間行った。試験後の評価用サンプルモジュールについて密着性試験を実施した。
2 透明前面基板
3 前面封止材
4 太陽電池素子
5 背面封止材
6 裏面保護シート
Claims (7)
- ベース樹脂として、密度0.940g/cm3以下のポリエチレン系樹脂を組成物中に90質量%以上含有し、
架橋剤と、架橋助剤としてのトリアリルイソシアヌレートと、を含有し、
更に、トリアリルイソシアヌレートの三つのアリル基のうち、一又は二のアリル基がアルコキシシリルアルキル基に置換されたアルコキシシリルアルキル変性トリアリルイソシアヌレートを含有する太陽電池モジュール用封止材組成物。 - 前記アルコキシシリルアルキル基のアルコキシ基がメトキシ基である請求項1に記載の太陽電池モジュール用封止材組成物。
- 前記化合物1と化合物2の混合モル比が、化合物1/化合物2で0.7以上1.5以下である請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材組成物。
- 前記ポリエチレン系樹脂100質量部に対して前記アルコキシシリルアルキル変性トリアリルイソシアヌレートを0.2以上2.5質量部以下含有する請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材組成物。
- 請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用封止材組成物で構成される密着強化層を備える太陽電池モジュール用封止材。
- 請求項6に記載の太陽電池モジュール用封止材と、ガラス基板と、が積層されている太陽電池モジュール。
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