JP6127594B2 - 太陽電池モジュール用の封止材組成物及び封止材 - Google Patents
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Description
まず、本発明の太陽電池モジュール用の封止材組成物(以下、単に「封止材組成物」とも言う)について説明する。封止材組成物は、溶融押出し成形して太陽電池モジュール用の封止材(以下、単に「封止材」とも言う)とするために使用される。封止材組成物は、低密度ポリエチレンからなるベース樹脂(以下、単に「ベース樹脂」とも言う)、直鎖低密度ポリエチレンにエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト重合してなる、低密度、低融点のシラン変性ポリエチレン系樹脂(以下、単に「シラン変性ポリエチレン系樹脂」とも言う。)、及び、架橋剤を必須の構成要素とし、更に、その他のポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。以下、ベース樹脂、シラン変性ポリエチレン系樹脂、架橋剤及び、その他のポリエチレン系樹脂について説明する。
本発明の封止材組成物においてベース樹脂として用いる低密度ポリエチレン樹脂は、密度0.900g/cm3以下、融点80℃未満であり、シラン未変性であり、オレフィンモノマーから構成されるものであることが好ましい。又、ベース樹脂は、下記に詳細を説明するシラン変性ポリエチレン系樹脂との融点差が20℃以内、より好ましくは10℃以内である。更に、ベース樹脂は、シラン変性ポリエチレン系樹脂の主鎖のポリエチレン系樹脂と同じ樹脂であることがより好ましい。尚、本明細書におけるベース樹脂とは、本発明の封止材組成物において、後に詳細を説明するシラン変性ポリエチレン系樹脂を除いた部分の主成分となるポリエチレン系樹脂全般のことを言うものであり、封止材組成物への添加用樹脂、或いは、後述のその他の成分をマスターバッチ化するために使用するものも含む概念である。
本発明の封止材組成物で使用されるシラン変性ポリエチレン系樹脂は、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)に、エチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合してなる。このようなグラフト共重合体は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける封止材の他の部材への密着性を向上することができる。尚、本明細書におけるシラン変性ポリエチレン系樹脂とは、例えば、下記の製造方法によって製造することができるシラン変性ポリエチレン系樹脂のことを言い、主鎖となる直鎖低密度ポリエチレン樹脂の少なくとも一部が、エチレン性不飽和シラン化合物とグラフト重合してなる樹脂のことを示す概念である。
架橋剤は公知のものが使用でき、特に限定されるものではなく、例えば公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物、又は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジクミルパーオキサイド、といったシラノール縮合触媒等を挙げることができる。
本発明においては、好ましくは炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマー、より好ましくは多官能モノマーの官能基がアリル基、(メタ)アクリレート基、ビニル基である架橋助剤を用いることができる。これによって適度な架橋反応を促進させて封止材とガラス等の透明前面基板との密着性を向上させているとともに、本発明においては、この架橋助剤が直鎖低密度ポリエチレンの結晶性を低下させ透明性を維持する。これによって、封止材とガラス等の透明前面基板との密着性のみならず、透明性と低温柔軟性に優れる封止材を得ることができ、具体的には上記密着性とともにポリエチレン系樹脂であってもEVAと同程度の透明性や低温柔軟性を得ることができる。
本発明の封止材組成物においては、ラジカル重合開始剤となる上記の架橋助剤と、それをクエンチするラジカル吸収剤とを併用することにより、架橋の程度を調整することができる。このようなラジカル吸収剤としては、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤や、ヒンダードアミン系の耐候安定化等が例示できる。架橋温度付近でのラジカル吸収能力が高い、ヒンダードフェノール系のラジカル吸収剤が好ましい。ラジカル吸収剤の含有量は、封止材の全樹脂成分の合計100質量部に対して0.01質量部〜3質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05質量部〜2.0質量部の範囲である。この範囲内であれば適度に架橋反応を抑制し、透明基板と封止材の密着性を向上させることができる。
封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、本発明の封止材組成物から作製された封止材に耐候性を付与するための耐候性マスターバッチ、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の成分が例示される。これらの含有量は、その粒子形状、密度等により異なるものではあるが、それぞれ封止材の全樹脂成分の合計100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内であることが好ましい。これらの添加剤を含むことにより、封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
本発明の太陽電池モジュール用の封止材は、例えば、上記の条件を満たす封止材組成物を、従来公知の方法で成型加工して得られるものであり、シート状又はフィルム状としたものである。尚、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。
図1は、本発明の太陽電池モジュールについて、その層構成の一例を示す断面図である。本発明の太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材3、太陽電池素子4、背面封止材5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。本発明の太陽電池モジュール1は、前面封止材3及び/又は背面封止材5として、本発明の封止材を使用する。
<封止材の製造>
表1及び下記に記載の通りの組成からなる封止材組成物を溶融し、常法Tダイ法により厚さ400μmとなるように成膜して実施例及び比較例の未架橋の封止材を得た。成膜の際の成形温度は90℃〜100℃とした。ただし、実施例3のみについては、成形温度は105℃とした。
ベース樹脂i
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、MFRが30g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。融点58℃。ポリスチレン換算の数平均分子量55000。
ベース樹脂ii
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、190℃でのメルトマスフローレート(MFR)が8g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。融点62℃。ポリスチレン換算の数平均分子量77000。
シラン変性ポリエチレン系樹脂i(表1中でSi樹脂iと示す)
:ベース樹脂i100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm3、MFRが24g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂を得た。融点58℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂ii(表1中でSi樹脂iiと示す)
:ベース樹脂i100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.885g/cm3、MFRが13g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂を得た。融点58℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂iii(表1中でSi樹脂iiiと示す)
:ベース樹脂ii100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.15質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm3、MFRが1g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂を得た。融点62℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂iv(表1中でSi樹脂ivと示す)
:ベース樹脂ii100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm3、MFRが4g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂を得た。融点62℃。
シラン変性ポリエチレン系樹脂v(表1中でSi樹脂vと示す)
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、MFRが45g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(融点58℃。ポリスチレン換算の数平均分子量49000)100質量部に対して、ビニルトリメトキシシラン2質量部と、ラジカル発生剤(反応触媒)としてのジクミルパーオキサイド0.1質量部とを混合し、200℃で溶融、混練し、密度0.884g/cm3、MFRが35g/10分であるシラン変性ポリエチレン系樹脂を得た。融点58℃。
架橋剤i
:t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックスTBEC」)。1分間半減期温度166℃
架橋剤ii
:2,5−ジメチル−2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富株式会社製、商品名:「ルペロックス101」)。1分間半減期温度177℃。
以上の材料を表1に記載の通りの組成で用いた。そして、上記材料の他、全ての実施例及び比較例に共通の材料として、以下の材料を、以下に記載の通りの組成で用いた。
架橋助剤
:(TAIC):トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製、商品名「タイク」)。各実施例及び比較例に0.8質量部添加。
UV吸収剤
:ケミプロ化成株式会社製、商品名KEMISORB12。各実施例及び比較例に0.25質量部添加。
耐候安定剤
:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Tinuvin770。各実施例及び比較例に0.2質量部添加。
酸化防止剤
:チバ・ジャパン株式会社製、商品名Irganox1076。各実施例及び比較例に0.05質量部添加。
シランカップリング剤
:信越化学工業株式会社製、商品名KBM1003。比較例4にのみ、0.5質量部添加。
これらの実施例、比較例の各封止材について、下記の基準に基づいて、製膜適性を評価した。結果を表2に示す。
(製膜適性評価基準)
A:製膜時の目視による表面状態評価で問題未発生。
B:製膜時の目視による表面状態評価で微小のゲル物発生。
C:製膜時の目視による表面状態評価で樹脂同士の未相溶要因の多量のゲル物発生。
D:発熱発生
上記の実施例、比較例の未架橋の封止材を用いて、下記の通り、密着性評価用サンプルモジュールを作成して、下記の試験条件におけるガラス密着維持率を評価した。結果を表3に示す。
上記同様に評価用の封止材を作成した。ガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に、実施例、比較例の各封止材を密着させて、150℃、18分で、真空加熱ラミネータ処理を行い評価用の封止材を得た。
剥離試験方法:ガラス基板上に密着している評価用サンプルモジュールの封止材を15mm幅にカットし、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行いガラス密着強度を測定した。
耐久試験方法:下記ダンプヒート(D.H.)試験前の密着強度を初期ガラス密着強度とし、D.H.試験後のガラス密着強度の初期剥離強度に対しての維持率を測定した。D.H.試験は、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で評価用サンプルモジュールの耐久性試験を500時間行った。試験後の評価用サンプルモジュールについて密着性試験を実施した。
2 透明前面基板
3 前面封止材
4 太陽電池素子
5 背面封止材
6 裏面保護シート
Claims (7)
- 密度0.900g/cm3以下の低密度ポリエチレンからなるベース樹脂と、直鎖低密度ポリエチレンにエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト重合した密度0.900g/cm3以下、融点80℃未満のシラン変性ポリエチレン系樹脂と、架橋剤と、を含有する太陽電池モジュール用の封止材組成物であって、
前記ベース樹脂のJIS K6922−2により測定したMFRが、20.0g/10min以上40.0g/10min以下であり、
前記シラン変性ポリエチレン系樹脂の前記MFRが、前記ベース樹脂の前記MFRの70%以上130%以下である太陽電池モジュール用の封止材組成物。 - 前記シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCH2ピークのピーク強度比が、0.15以上0.85以下である請求項1に記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物。
- 前記ベース樹脂に対する前記シラン変性ポリエチレン系樹脂の含有量比が、5質量%以上30質量%以下である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物。
- 樹脂成分の合計100質量部に対して前記架橋剤を0.5質量部以上2.0質量部以下含有する請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物。
- 請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物を100℃以下で溶融押出し成形する太陽電池モジュール用の封止材の製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用の封止材組成物で構成される密着強化層を備える太陽電池モジュール用の封止材。
- 請求項6に記載の太陽電池モジュール用の封止材と、ガラス基板と、が対向する態様で積層されている太陽電池モジュール。
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