JP6123420B2 - 太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法 - Google Patents

太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチ及び封止材に関する。
近年、環境問題に対する意識の高まりから、クリーンなエネルギー源としての太陽電池が注目されている。現在、種々の形態からなる太陽電池モジュールが開発され、提案されている。一般に太陽電池モジュールは、透明前面基板と太陽電池素子と裏面保護シートとが、太陽電池モジュール用の封止材を介して積層された構成である。
太陽電池モジュール等を構成する各部材は、常時、強い紫外線、熱線、風雨等といった過酷な環境に曝されることになる。このため、太陽電池モジュールを構成する各部材は、これらの条件において、長期間に亘る耐久性を備える必要がある。
太陽電池モジュール用の封止材として、透明性、密着性等に優れるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)をベース樹脂としたものが従来広く用いられてきた。しかし、近年においては、EVA同等の透明性を有し、EVAに比して耐加水分解性等に優れるポリエチレン系樹脂をベース樹脂とした封止材の開発が進んでいる。
ベース樹脂としてポリエチレン系樹脂を採用する場合、シランカップリング剤の配合によってガラス等との密着性が向上できることが知られている。そして、更に密着性を改善するため、アルコキシシランをグラフト重合させた変性エチレン系樹脂を用いた封止材が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1の封止材は、架橋処理を行わないことを前提としているために、融点80℃以上の変性エチレン系樹脂を用いることが必須の構成となっている。このことは、実施例中のシラン変性エチレン−αオレフィン共重合体の実施例において180℃の高温で押出し成形を行っていることからも明らかである。
このように、ベース樹脂がポリエチレン系樹脂の場合、従来は、高温の押出し成形が必要となっていたので、架橋剤含有の組成物では成形中に架橋が進んでしまい成形ができなかった。又、ベース樹脂等の融点が高いので密度が高くなり、透明性が劣るという欠点があった。
そこで、ベース樹脂がポリエチレン系樹脂でありながら、低温で押出し可能であって、後架橋させることができ、その結果、透明性、密着性に優れ、且つ、耐久性にも優れる太陽電池モジュール用の封止材として、直鎖低密度ポリエチレンにエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト重合した低密度、低融点のシラン変性ポリエチレン系樹脂と、架橋剤と、を含有する封止材組成物を用いた封止材が提案されている(特許文献2)。
特開2002−235048号公報 特開2012−234965号公報
しかしながら、特許文献2に記載に従って、シランカップリング剤、有機過酸化物を単に混合しても、必ずしも、十分な密着性を得ることはできない。例えば、上記のグラフト重合を行うには、シランカップリング剤と有機過酸化物とを添加したベース樹脂を加熱する方法が一般的であるが、そのような加熱後に、尚、未反応のシランカップリング剤が多く存在する場合には、特にガラスへの密着耐久性が低下するという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ポリエチレン系樹脂をベース樹脂とする太陽電池モジュール用の封止材の製造において、ガラス等の透明基板との高い密着性に加えて、優れた密着耐久性を有する太陽電池モジュール用の封止材を提供することにある。
本発明者らは、太陽電池モジュール用の封止材の製造過程において、封止材の製造に用いる封止材組成物にシラン変性ポリエチレン系樹脂を添加するための封止材マスターバッチについて、シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比に着目し、その強度比の値を特定範囲に限定することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1) シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有する太陽電池モジュール封止材用マスターバッチの製造方法であって、密度0.900g/cm以下の直鎖低密度ポリエチレンを含有してなるマスターバッチ用ベース樹脂と、前記マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下のシランカップリング剤と、前記マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.1質量部以下のマスターバッチ用有機過酸化物と、を160℃以上260℃以下の温度で混練して、前記シラン変性ポリエチレン系樹脂を作成する工程を含み、前記シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比が、0.25以上0.85以下となるように、前記マスターバッチ用ベース樹脂と前記シランカップリング剤とをグラフト重合させることを特徴とする太陽電池モジュール封止材用マスターバッチの製造方法。
(2) 前記マスターバッチ用有機過酸化物が、ジアルキルパーオキサイド又はパーオキシカーボネートである(1)に記載の太陽電池モジュール封止材用マスターバッチの製造方法。
(3) 前記シランカップリング剤が、ビニル基を有するシランカップリング剤である(1)又は(2)に記載の太陽電池モジュール封止材用マスターバッチの製造方法。
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチと、封止材組成物用有機過酸化物と、密度0.900g/cm以下のポリエチレン系樹脂からなる封止材組成物用ベース樹脂と、を含有する封止材組成物を、160℃以上260℃以下で溶融押出成形する太陽電池モジュール用封止材の製造方法。
本発明によれば、ガラス等の透明基板との高い密着性に加えて密着耐久性にも優れる太陽電池モジュール用の封止材を製造可能な太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチを提供することができる。
本発明の太陽電池モジュールの層構成の一例を示す断面図である。
以下、本発明の太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチと同マスターバッチを含有する封止材組成物、同封止材組成物を用いて製造することがる太陽電池モジュール用の封止材、及び同封止材を用いた太陽電池モジュールの順に詳細に説明する。
<封止材マスターバッチ>
まず、本発明の太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチ(以下、単に「封止材マスターバッチ」とも言う)について説明する。
[封止材マスターバッチ]
封止材マスターバッチは、太陽電池モジュール用の製造に用いる封止材組成物に所要濃度のシラン変性ポリエチレン系樹脂を混合するために用いるいわゆるマスターバッチである。高濃度でシラン変性ポリエチレン樹脂を含有し、調整を容易とするためにペレット化されていることが一般的である。本発明に係る封止材組成物は、低密度ポリエチレンを封止材組成物用のベース樹脂とし、本発明の封止材マスターバッチ、及び架橋剤としての有機過酸化物を含有する。そして当該封止材組成物は、溶融押出成形されて本発明に係る太陽電池モジュール用の封止材となる。
封止材マスターバッチは、シラン変性ポリエチレン系樹脂を主たる成分とする。シラン変性ポリエチレン系樹脂は、密度0.900g/cm以下の直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)をマスターバッチ用ベース樹脂とし、同樹脂にシランカップリング剤を添加し、有機過酸化物の存在下で、ベース樹脂を主鎖とし、シランカップリング剤(エチレン性不飽和シラン化合物)を側鎖として、グラフト重合させたグラフト共重合体である。このようなグラフト共重合体であるシラン変性ポリエチレン系樹脂は、接着力に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、太陽電池モジュールにおける封止材の他の部材への密着性を向上することができる。
本発明の封止材マスターバッチは、更に、エチレン性不飽和シラン化合物のグラフト率を所定範囲に限定したものである点に特徴がある。具体的には、本発明の封止材マスターバッチは、シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比が、特定範囲となるように、グラフト重合を限定的に進行させたものである。ここで、本明細書におけるSiCピークとCHピークのピーク強度比(SiCピーク値/CHピーク値)とは、ペレット化した封止材マスターバッチを平坦にカットし、日本分光FT/IR 610のATR法にてそれぞれのピーク強度を測定し、その測定値から算出した「SiCピーク値/CHピーク値」の値のことを言うものとする。
具体的には、本発明の封止材マスターバッチは、上記定義によるシラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比が、0.25以上0.85以下であることが好ましい。シラン変性ポリエチレン系樹脂のピーク強度比が0.25未満であるとガラスへの密着維持率が不十分となり、0.85を超えると硬くなりやすく、凹凸追従性が悪くなる。ベースとなるポリエチレン系樹脂とエチレン性不飽和シラン化合物とを、SiCピークとCHピークのピーク強度比が、上記範囲となるようにグラフト重合させたシラン変性ポリエチレン系樹脂を主たる成分とする本発明の封止材マスターバッチを用いて、封止材組成物を調整することによって、封止材の密着耐久性を著しく向上させることができる。
マスターバッチ用ベース樹脂としては、密度0.900g/cm以下の直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いる。LLDPEは、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成されるものである。このようなポリエチレンは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一である。このため、分子量分布が狭く、上記のような超低密度にすることが可能であり封止材に対して柔軟性を付与できる。封止材に柔軟性が付与される結果、封止材とガラス等の透明前面基板との密着性を高めることができる。
LLDPEは、結晶性分布が狭く、結晶サイズが揃っているので、結晶サイズの大きいものが存在しない。又、そればかりでなく、低密度であるために結晶性自体が低い。このため、シート状に加工した際の透明性に優れる。したがって、本発明の封止材マスターバッチを含む封止材組成物からなる封止材が、透明前面基板と太陽電池素子との間に配置されても発電効率はほとんど低下しない。
LLDPEのα−オレフィンとしては、好ましくは分枝を有しないα−オレフィンが好ましく使用され、これらの中でも、炭素数が6〜8のα−オレフィンである1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテンが特に好ましく使用される。α−オレフィンの炭素数が6以上8以下であることにより、封止材に良好な柔軟性を付与することができるとともに良好な強度を付与することができる。その結果、封止材とガラス等の透明前面基板との密着性が更に高まる。
マスターバッチ用ベース樹脂であるLLDPEとグラフト重合させるシランカップリング剤は特に限定されないが、製膜性を良好にする観点からは、ビニル基を有するものを特に好ましく用いることができる。具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランより選択される1種以上からなるシランカップリング剤を好ましく用いることができる。
[封止材マスターバッチの製造方法]
封止材マスターバッチは、例えば、特開2003−46105号公報に記載されている方法に準じて製造することができる。但し、上述の通り、封止材マスターバッチにおける、SiCピークとCHピークのピーク強度比が、上記所定範囲となるように限定的にマスターバッチ用ベース樹脂とシランカップリング剤とのグラフト重合を進行させる点に本発明の製造方法の独自の特徴がある。
封止材マスターバッチを製造するには、上記のマスターバッチ用ベース樹脂と、上記のシランカップリング剤と、必要ならば、その他の不飽和モノマ−の1種ないし2種以上とを、所望の反応容器を使用し、例えば、圧力500〜4000Kg/cm位、好ましくは、1000〜4000Kg/cm位、160℃以上260℃以下、好ましくは、180〜240℃位の温度条件下で、以下に詳細を説明するマスターバッチ用有機過酸化物の存在下で、同時に、或いは、段階的にランダム共重合させ、更には、その共重合によって生成するランダム共重合体を構成するシラン化合物の部分を変性ないし縮合させる。この際、シランカップリング剤は、マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の割合で添加する。
マスターバッチ用ベース樹脂と、シランカップリング剤との共重合を促進するために用いるマスターバッチ用有機過酸化物としては、アルキルパーオキシエステル、パーオキシカーボネート、ジアルキルパーオキサイド等を用いることができるが、それらのうちでも、特に、ジアルキルパーオキサイド、又は、パーオキシカーボネートを好ましく用いることができる。これらのマスターバッチ用有機過酸化物は、マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.1質量部以下の割合で添加する。
そして、封止材マスターバッチにおけるSiCピークとCHピークのピーク強度比が、0.25以上0.85以下となるように、上記のランダム共重合を限定的に進行させることにより、本発明の封止材マスターバッチとするためのシラン変性ポリエチレン系樹脂を製造することができる。このシラン変性ポリエチレン系樹脂を、調整時の取り扱い性を高めるために、必要に応じてペレット化等の加工処理を施し、又、必要な場合には、本発明の効果を害しない微量範囲で、その他の添加物を加え、本発明の封止材マスターバッチを得ることができる。
上記の封止材マスターバッチの製造方法においては、主に、シランカップリング剤の添加量、マスターバッチ用有機過酸化物の種類と添加量等を上記の好ましい範囲とすることにより、封止材マスターバッチにおけるシラン変性ポリエチレン樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比を、0.25以上0.85以下に調整することができる。又、様々な製造条件が全て上記の好ましい範囲でない場合であっても、例えば、混錬時の加熱時間等その他の製造条件を適宜調整することによって、SiCピークとCHピークのピーク強度比が上記範囲にあるシラン変性ポリエチレン樹脂を含む封止材とする製造方法は、本発明の範囲内である。
<封止材組成物>
次に、本発明の封止材マスターバッチを含んで調整される本発明に係る封止材組成物(以下、単に「封止材組成物」とも言う)について説明する。
封止材組成物は、封止材組成物用のベース樹脂としての密度0.900g/cm以下のポリエチレン系樹脂と、本発明の封止材マスターバッチと、架橋剤としての封止材組成物用有機過酸化物とを含有する。
封止材組成物用ベース樹脂として用いる低密度ポリエチレン樹脂は、密度0.900g/cm以下、融点80℃未満であり、シラン未変性であり、オレフィンモノマーから構成されるものであることが好ましい。又、封止材組成物用ベース樹脂は、封止材マスターバッチとの融点差が20℃以内であることが好ましく、より好ましくは10℃以内である。更に、封止材組成物用ベース樹脂は、マスターバッチ用ベース樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。
ここで、封止材組成物用ベース樹脂のMFRは、20.0g/10min以上40.0g/10min以下であることが好ましく、又、25.0g/10分以上35g/10分以下であることがより好ましい。封止材組成物用ベース樹脂のMFRを、20.0g/10min以上40.0g/10min以下という高い値とすることにより、封止材に柔軟性が付与され、封止材とガラス等の透明前面基板との密着性等を高めることができる。封止材用ベース樹脂のMFRが20.0g/10min未満であると、粘度が高すぎて、成型時の発熱により成型時に架橋反応が起こり成型不可能となる。一方、封止材用ベース樹脂のMFRが40.0を超えると、モジュール作製時の封止材の膜厚変化が大きすぎ不具合が生じる。又、過酷な環境下に長時間晒される太陽電池モジュール用の封止材としての耐熱性を十分なものとすることが困難となる。
封止材組成物用有機過酸化物としては公知のものが使用でき、特に限定されるものではなく、例えば、ジアルキルパーオキサイド又はパーオキシカーボネートを好ましく用いることができる。その他、使用可能な有機過酸化物として、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類;ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐パーオキシ)ヘキシン‐3等のジアルキルパーオキサイド類;ビス‐3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o‐メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシオクトエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシフタレート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン‐3、t‐ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等を挙げることができる。
封止材組成物用有機過酸化物の含有量としては、封止材組成物の全樹脂成分の合計100質量部に対して0.5質量部以上2.0質量部以下の含有量であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下の範囲である。この範囲の封止材組成物用有機過酸化物を添加することにより、封止材に十分な耐久性を付与することができる。
封止材組成物には、更にその他の成分を含有させることができる。例えば、その他のポリオレフィン系樹脂、或いは、例えば炭素−炭素二重結合及び/又はエポキシ基を有する多官能モノマー等である架橋助剤や、各種フィラー、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の添加剤成分が例示される。その他のポリオレフィン系樹脂は、密度0.900g/cm以下、融点80℃未満であり、シラン未変性であり、オレフィンモノマーから構成されるものが好ましい。したがって、その他のポリオレフィン系樹脂には、上記条件を満足するLLDPEの他、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等も含まれる。これらは、例えば添加用樹脂として用いてもよく、その他の成分をマスターバッチとするために使用することができる。又、上記の添加剤成分を適量範囲で含むことにより、封止材組成物に対して、長期に亘って安定した機械強度や、黄変やひび割れ等の防止効果等を付与することができる。
[封止材]
本発明の太陽電池モジュール用の封止材は、本発明の封止材マスターバッチを含んでなる上記の封止材組成物を、従来公知の方法で成型加工して得られるものであり、シート状又はフィルム状としたものである。なお、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。
封止材組成物のシート化は、160℃以上260℃以下の成形温度で、従来公知の押出成形により行う。これにより、上記封止材組成物をシート化することにより、本発明に係る封止材が得られる。この溶融押出成形時にゲル分率の増加を伴わない限定的な弱い架橋が進むようにしてもよいし、未架橋のまま製膜し、後のモジュール化の工程内で架橋を進行させるようにしてもよい。
又、封止材は、単層シートであってもよく、多層シートであってもよい。多層シートの場合、太陽電池モジュール内でのガラス基板等との密着性を向上させるために、ガラス基板等との界面側に封止材マスターバッチを含む封止材組成物からなる密着強化層が配置されていればよい。このため、例えば封止材を2層構成として一方の層のみに密着強化層を配置してもよく、コア層を挟んで3層以上の構成として少なくとも一方の最外層に密着強化層を配置してもよい。
<太陽電池モジュール>
図1は、本発明の封止材マスターバッチを用いて製造した封止材の好ましい一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材3、太陽電池素子4、背面封止材5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。太陽電池モジュール1は、前面封止材3及び/又は背面封止材5として、本発明の封止材マスターバッチを用いて製造した封止材を使用するものである。
太陽電池モジュール1は、例えば、上記の透明前面基板2、前面封止材3、太陽電池素子4、背面封止材5、及び裏面保護シート6からなる部材を順次積層してから真空吸引等により一体化し、その後、ラミネーション法等の成形法により、上記の部材を一体成形体として加熱圧着成形して製造することができる。そして、このとき、単層シートからなる前面封止材3とガラス基板が積層されるか、又は、多層シートからなる前面封止材3の上記密着強化層が、透明前面基板2の一例であるガラス基板と対向するように積層されることで、ガラス基板と封止材との密着性を向上できる。
このようにして得られる、太陽電池モジュール1は、ガラス等から構成される透明基板と封止材の密着性に優れることが特徴である。すなわち、太陽電池モジュール1は、ガラス等から構成される透明基板と封止材との間の密着強度を向上させているため、強い紫外線、熱線、風雨等といった過酷な環境に曝される場合であっても、長期間に亘るきわめて高い耐久性を備えるものとなっている。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<封止材マスターバッチの製造>
下記に記載の材料を、それぞれ表1に記載の組成(質量部換算)で混合し、190〜210℃で溶融、混練した樹脂をペレット化して、実施例1〜6及び比較例1〜5の封止材マスターバッチを製造した。上記の熔融、混錬の処理には、二軸押出機(日本製鋼所製TEX)用いて混練して押出し、その際のスクリューの一分当りの回転数をそれぞれ表1に「スクリュー回転数」として記した。尚、スクリュー回転数と反応時間は、反比例する。
マスターバッチ用ベース樹脂(表1中にて「MB/PE」と記載)
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。
シランカップリング剤1(表1中にて「SC1」と記載)
:ビニルトリメトキシシラン。(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM―1003」)
シランカップリング剤2(表1中にて「SC2」と記載)
:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン。(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM―5103」)
マスターバッチ用有機過酸化物1(表1中にて「MB/過酸化1」と記載)
ジアルキルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックス101」)。1分間半減期温度181℃
マスターバッチ用有機過酸化物2(表1中にて「MB/過酸化2」と記載)
パーオキシカーボネート(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックスTBEC」)。1分間半減期温度166℃
マスターバッチ用有機過酸化物3(表1中にて「MB/過酸化3」と記載)
アルキルパーオキシエステル(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックス570」)。1分間半減期温度152℃
上記の通り製造した実施例、比較例の各封止材マスターバッチの状態における、シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比(SiCピーク値/CHピーク値)を「ピーク強度比」として表1中に示した。尚、SiCピークとCHピークのピーク強度は、上述の測定方法と同様、ペレット化した測定対象の樹脂を平坦にカットし、日本分光FT/IR 610のATR法にて測定を行った。SiCのピークは、1090cm−1、CHのピークは1465cm−1を利用して強度比とした。
Figure 0006123420
<封止材の製造>
上記の実施例1〜5、比較例1〜5、参考例のいずれかの封止材マスターバッチ15質量部と、下記に記載の封止材組成物用ベース樹脂80質量部と、下記に記載の封止材組成物用有機過酸化物5質量部と、下記に記載の、その他添加物とを混合してなる封止材組成物を溶融し、常法Tダイ法により厚さ400μmとなるように、製膜温度220℃で成膜して、実施例、比較例、及び参考例の各封止材を得た。尚、実施例1の封止材マスターバッチを用いて製造した封止材を実施例1の封止材とし、比較例1のマスターバッチを用いて製造した封止材を比較例1の封止材とした。そして、以下同様に、それぞれの封止材マスターバッチを用いた封止材について、実施例2〜6の封止材、及び、比較例2〜5の封止材、及び参考例の封止材とした。
封止材組成物用ベース樹脂
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。
封止材組成物用有機過酸化物
:マスターバッチ用有機過酸化物1に同じ。(ジアルキルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックス101」)。1分間半減期温度181℃)
以上の材料の他、全ての実施例、比較例、及び参考例の封止材に共通の材料として、以下の材料を、以下に記載の通りの組成で用いた。
UV吸収剤
:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤。各実施例、比較例、及び参考例に0.25質量部添加。
耐候安定剤
:ヒンダードアミン系耐光安定剤。各実施例、比較例、及び参考例に0.2質量部添加。
酸化防止剤
:ヒンダードフェノール系酸化防止剤。各実施例及び比較例に0.05質量部添加。
<評価例1>
実施例、比較例の各封止材をガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に密着させて、150℃、7分で真空加熱ラミネータ処理を行い評価用試料を作成した。上記の評価用試料において、ガラス基板上に密着している封止材を15mm幅にカットし、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、初期ガラス密着強度を測定した。結果を表2中に「初期密着」として示す。
その後、更に、上記の評価用試料について、下記ダンプヒート(D.H.)試験後のガラス密着強度の初期ガラス密着強度に対しての維持率を測定した。D.H.試験は、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で評価用試料の耐久性試験を1000時間行った。試験後の評価用資料について、上記と同一の試験を行い耐久密着性を測定した。この耐久密着性の値の初期密着強度に対する比率を「耐久密着」として表2に示した。そして、この耐久密着の値が、20N/15mm以上であることをもって、耐久密着性が好ましいものであると評価した。
Figure 0006123420
<評価例2>
表2に示す通り、参考例の封止材については、太陽電池モジュール用の封止材として使用可能な程度ではあったが、製膜時に若干のゲルが発生した。一方、実施例1〜5の封止材については、製膜時にそのようなゲルの発生は全くなかった。この結果より、本発明の封止材の製造に用いるシランカップリング剤は、ビニル基を有するものを用いることが好ましいことが分かる。
表1、2に示す結果より、封止材組成物に添加して用いる封止材マスターバッチにおけるエチレン性不飽和シラン化合物のグラフト率を、本発明独自の所定の範囲に限定した封止材マスターバッチを用いて製造した太陽電池モジュール用の封止材は、同グラフト率が所定範囲外にあるマスターバッチを用いたその他の封止材と比較して、高い初期ガラス密着性及び、優れたガラス密着維持率を有していることが分かる。
1 太陽電池モジュール
2 透明前面基板
3 前面封止材
4 太陽電池素子
5 背面封止材
6 裏面保護シート

Claims (4)

  1. シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有する太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法であって、
    密度0.900g/cm以下の直鎖低密度ポリエチレンを含有してなるマスターバッチ用ベース樹脂と、
    前記マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下のシランカップリング剤と、
    前記マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.1質量部以下のマスターバッチ用有機過酸化物と、を
    160℃以上260℃以下の温度で混練して、前記シラン変性ポリエチレン系樹脂を作成する工程を含み、
    前記シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCHピークのピーク強度比が、0.25以上0.85以下となるように、前記マスターバッチ用ベース樹脂と前記シランカップリング剤とをグラフト重合させることを特徴とする太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法。
  2. 前記マスターバッチ用有機過酸化物が、ジアルキルパーオキサイド又はパーオキシカーボネートである請求項1に記載の太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法。
  3. 前記シランカップリング剤が、ビニル基を有するシランカップリング剤である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチと、封止材組成物用有機過酸化物と、密度0.900g/cm以下のポリエチレン系樹脂からなる封止材組成物用ベース樹脂と、を含有する封止材組成物を、160℃以上260℃以下で溶融押出成形する太陽電池モジュール用の封止材の製造方法。
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