JP6123420B2 - 太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法 - Google Patents
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Description
まず、本発明の太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチ(以下、単に「封止材マスターバッチ」とも言う)について説明する。
封止材マスターバッチは、太陽電池モジュール用の製造に用いる封止材組成物に所要濃度のシラン変性ポリエチレン系樹脂を混合するために用いるいわゆるマスターバッチである。高濃度でシラン変性ポリエチレン樹脂を含有し、調整を容易とするためにペレット化されていることが一般的である。本発明に係る封止材組成物は、低密度ポリエチレンを封止材組成物用のベース樹脂とし、本発明の封止材マスターバッチ、及び架橋剤としての有機過酸化物を含有する。そして当該封止材組成物は、溶融押出成形されて本発明に係る太陽電池モジュール用の封止材となる。
封止材マスターバッチは、例えば、特開2003−46105号公報に記載されている方法に準じて製造することができる。但し、上述の通り、封止材マスターバッチにおける、SiCピークとCH2ピークのピーク強度比が、上記所定範囲となるように限定的にマスターバッチ用ベース樹脂とシランカップリング剤とのグラフト重合を進行させる点に本発明の製造方法の独自の特徴がある。
次に、本発明の封止材マスターバッチを含んで調整される本発明に係る封止材組成物(以下、単に「封止材組成物」とも言う)について説明する。
本発明の太陽電池モジュール用の封止材は、本発明の封止材マスターバッチを含んでなる上記の封止材組成物を、従来公知の方法で成型加工して得られるものであり、シート状又はフィルム状としたものである。なお、本発明におけるシート状とはフィルム状も含む意味であり両者に差はない。
図1は、本発明の封止材マスターバッチを用いて製造した封止材の好ましい一実施形態である太陽電池モジュール1について、その層構成の一例を示す断面図である。太陽電池モジュール1は、入射光の受光面側から、透明前面基板2、前面封止材3、太陽電池素子4、背面封止材5、及び裏面保護シート6が順に積層されている。太陽電池モジュール1は、前面封止材3及び/又は背面封止材5として、本発明の封止材マスターバッチを用いて製造した封止材を使用するものである。
下記に記載の材料を、それぞれ表1に記載の組成(質量部換算)で混合し、190〜210℃で溶融、混練した樹脂をペレット化して、実施例1〜6及び比較例1〜5の封止材マスターバッチを製造した。上記の熔融、混錬の処理には、二軸押出機(日本製鋼所製TEX)用いて混練して押出し、その際のスクリューの一分当りの回転数をそれぞれ表1に「スクリュー回転数」として記した。尚、スクリュー回転数と反応時間は、反比例する。
マスターバッチ用ベース樹脂(表1中にて「MB/PE」と記載)
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。
シランカップリング剤1(表1中にて「SC1」と記載)
:ビニルトリメトキシシラン。(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM―1003」)
シランカップリング剤2(表1中にて「SC2」と記載)
:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン。(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM―5103」)
マスターバッチ用有機過酸化物1(表1中にて「MB/過酸化1」と記載)
ジアルキルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックス101」)。1分間半減期温度181℃
マスターバッチ用有機過酸化物2(表1中にて「MB/過酸化2」と記載)
パーオキシカーボネート(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックスTBEC」)。1分間半減期温度166℃
マスターバッチ用有機過酸化物3(表1中にて「MB/過酸化3」と記載)
アルキルパーオキシエステル(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックス570」)。1分間半減期温度152℃
上記の実施例1〜5、比較例1〜5、参考例のいずれかの封止材マスターバッチ15質量部と、下記に記載の封止材組成物用ベース樹脂80質量部と、下記に記載の封止材組成物用有機過酸化物5質量部と、下記に記載の、その他添加物とを混合してなる封止材組成物を溶融し、常法Tダイ法により厚さ400μmとなるように、製膜温度220℃で成膜して、実施例、比較例、及び参考例の各封止材を得た。尚、実施例1の封止材マスターバッチを用いて製造した封止材を実施例1の封止材とし、比較例1のマスターバッチを用いて製造した封止材を比較例1の封止材とした。そして、以下同様に、それぞれの封止材マスターバッチを用いた封止材について、実施例2〜6の封止材、及び、比較例2〜5の封止材、及び参考例の封止材とした。
封止材組成物用ベース樹脂
:エチレンと1−ヘキセンとの共重合体であり、密度0.880g/cm3、MFRが3.5g/10分であるメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン。
封止材組成物用有機過酸化物
:マスターバッチ用有機過酸化物1に同じ。(ジアルキルパーオキサイド(アルケマ吉富株式会社製、商品名「ルペロックス101」)。1分間半減期温度181℃)
以上の材料の他、全ての実施例、比較例、及び参考例の封止材に共通の材料として、以下の材料を、以下に記載の通りの組成で用いた。
UV吸収剤
:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤。各実施例、比較例、及び参考例に0.25質量部添加。
耐候安定剤
:ヒンダードアミン系耐光安定剤。各実施例、比較例、及び参考例に0.2質量部添加。
酸化防止剤
:ヒンダードフェノール系酸化防止剤。各実施例及び比較例に0.05質量部添加。
実施例、比較例の各封止材をガラス基板(白板フロート半強化ガラス JPT3.2 75mm×50mm×3.2mm)に密着させて、150℃、7分で真空加熱ラミネータ処理を行い評価用試料を作成した。上記の評価用試料において、ガラス基板上に密着している封止材を15mm幅にカットし、剥離試験機(テンシロン万能試験機 RTF−1150−H)にて垂直剥離(50mm/min)試験を行い、初期ガラス密着強度を測定した。結果を表2中に「初期密着」として示す。
その後、更に、上記の評価用試料について、下記ダンプヒート(D.H.)試験後のガラス密着強度の初期ガラス密着強度に対しての維持率を測定した。D.H.試験は、JIS C8917に準拠し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で評価用試料の耐久性試験を1000時間行った。試験後の評価用資料について、上記と同一の試験を行い耐久密着性を測定した。この耐久密着性の値の初期密着強度に対する比率を「耐久密着」として表2に示した。そして、この耐久密着の値が、20N/15mm以上であることをもって、耐久密着性が好ましいものであると評価した。
表2に示す通り、参考例の封止材については、太陽電池モジュール用の封止材として使用可能な程度ではあったが、製膜時に若干のゲルが発生した。一方、実施例1〜5の封止材については、製膜時にそのようなゲルの発生は全くなかった。この結果より、本発明の封止材の製造に用いるシランカップリング剤は、ビニル基を有するものを用いることが好ましいことが分かる。
2 透明前面基板
3 前面封止材
4 太陽電池素子
5 背面封止材
6 裏面保護シート
Claims (4)
- シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有する太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法であって、
密度0.900g/cm3以下の直鎖低密度ポリエチレンを含有してなるマスターバッチ用ベース樹脂と、
前記マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して1質量部以上10質量部以下のシランカップリング剤と、
前記マスターバッチ用ベース樹脂100質量部に対して0.01質量部以上0.1質量部以下のマスターバッチ用有機過酸化物と、を
160℃以上260℃以下の温度で混練して、前記シラン変性ポリエチレン系樹脂を作成する工程を含み、
前記シラン変性ポリエチレン系樹脂のSiCピークとCH2ピークのピーク強度比が、0.25以上0.85以下となるように、前記マスターバッチ用ベース樹脂と前記シランカップリング剤とをグラフト重合させることを特徴とする太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法。 - 前記マスターバッチ用有機過酸化物が、ジアルキルパーオキサイド又はパーオキシカーボネートである請求項1に記載の太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法。
- 前記シランカップリング剤が、ビニル基を有するシランカップリング剤である請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチの製造方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法によって製造された太陽電池モジュール用の封止材マスターバッチと、封止材組成物用有機過酸化物と、密度0.900g/cm3以下のポリエチレン系樹脂からなる封止材組成物用ベース樹脂と、を含有する封止材組成物を、160℃以上260℃以下で溶融押出成形する太陽電池モジュール用の封止材の製造方法。
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