JP5747245B2 - 電界効果トランジスタ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、ダイヤモンドを用いて、過酷な環境下で安定・高周波・大電流・高耐圧動作可能な高速・ハイパワー電界効果トランジスタの開発が期待されている。
現状のダイヤモンドを主材料とする電界効果トランジスタの構造は、主に4つの構造に大別できる。
しかしながら、この構造では、ダイヤモンド内部のドーパントのイオン化エネルギーが大きく、つまり活性化率が小さく、室温において電界効果トランジスタとして駆動させるための十分な電子および正孔濃度を確保することが容易ではないため、高速・ハイパワー電界効果トランジスタの実現は不可能である。
しかしながら、この構造は、ダイヤモンド水素終端表面の熱的な不安定性のために、デバイス特性が動作環境により大きく依存してしまう問題がある。
しかしながら、この構造では、ナノスケールの局所的なドーピング技術が難しく、デバイス性能の向上が難しい。
特許文献1には、窒化アルミニウム/ダイヤモンドの積層構造において、前記窒化アルミニウム膜中にシリコンをドナーとしてドーピングすることにより、膜中のシリコン準位とダイヤモンド伝導帯端エネルギー準位との位置エネルギー差を利用して、ダイヤモンド内へ電子を供給する変調ドーピングを利用する構造が開示されている。ここで、トランジスタのチャネルはダイヤモンド内の2次元的な電子である。
両者ともに、電子をキャリアとして動作させるものであり、不純物ドーパント濃度の不均一性や、残留歪分布の不均一性のために、デバイス性能のバラツキや再現性が問題となる。更に、n型ダイヤモンドと金属のポテンシャル障壁は4eV以上あるため、低抵抗なオーム性電極を得ることが極めて難しい。
以上説明したように、トランジスタ特性の再現性が高く、高速・ハイパワーダイヤモンドヘテロ接合電界効果トランジスタに関する報告はなかった。
本発明の特筆すべきところは、(1)III族窒化物半導体の膜厚を制御することで、ダイヤモンド内の正孔チャネルに対する低抵抗なオーム電極を容易に作製することができること、(2)正孔チャネルがIII族窒化物半導体下部に存在するため、自動的にチャネルが保護されており動作安定性に優れること、(3)意図的な不純物ドーピングを必要としないことである。
また、本技術は、例えばIII族窒化物半導体としてAlNを用いた場合、正孔をキャリアとして動作させるものであり、特許文献1および特許文献2に記載のエネルギーバンド図とは異なる構造を有する。
また、ダイヤモンド単結晶基板上に成長させたIII族窒化物半導体薄膜は、高濃度の転位や結晶粒界を含む結晶学的構造であり、薄膜内の残留歪はほぼ緩和しているため、正孔の発現機構は特許文献2に記載の機構とは異なる。
更に、水素終端表面を有すダイヤモンド電界効果トランジスタと差別化するために、あえて酸素終端表面を有すダイヤモンド上に窒化アルミニウムを成長させ、電界効果トランジスタ動作を実証した。
本発明は、以下の構成を有する。
本発明の電界効果トランジスタは、前記第2の電極及び/又は前記第3の電極と前記ダイヤモンド基板との間にIII族窒化物半導体層が設けられていることが好ましい。
本発明の電界効果トランジスタは、前記第2の電極及び/又は前記第3の電極と前記ダイヤモンド基板との間のIII族窒化物半導体層の層厚が、前記第1の電極と前記ダイヤモンド基板との間のIII族窒化物半導体層の層厚より薄いことが好ましい。
本発明の電界効果トランジスタは、前記III族窒化物半導体層がAlN、BN、GaN、InNの群から選ばれるいずれか一の化合物からなることが好ましい。
本発明の電界効果トランジスタの製造方法は、前記III族窒化物半導体層を形成する前に、前記ダイヤモンド基板の一面を酸性溶液処理又は熱処理することが好ましい。
本発明の電界効果トランジスタの製造方法は、リソグラフィー法により、前記III族窒化物半導体層を部分的に除去することが好ましい。
本発明の電界効果トランジスタの製造方法は、前記III族窒化物半導体層を部分的に除去して、前記III族窒化物半導体層を除去した2つの除去部を形成することが好ましい。
特に、ダイヤモンド単結晶基板上に成長させたIII族窒化物半導体薄膜のようなIII族窒化物半導体層は、高濃度の転位や結晶粒界を含む結晶学的構造であり、薄膜内の残留歪をほぼ緩和させることができ、III族窒化物半導体層の膜厚およびデバイスのサイズのみの制御でトランジスタ特性を制御できるため、再現性が良い。
以上により、安定・高周波・大電流・高耐圧動作可能であり、トランジスタ特性の再現性が高く、高速・ハイパワー電界効果トランジスタとすることができる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタ及びその製造方法について説明する。
まず、本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタの一例を示す図であって、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A’線における断面図である。
図1(a)に示すように、本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタ10は、平面視略矩形状のダイヤモンド基板11と、平面視略矩形状のIII族窒化物半導体層12と、平面視略矩形状の第1の電極15、第2の電極13及び第3の電極14とを有して概略構成されている。
III族窒化物半導体層12には、2つの段部12e、12fが設けられるとともに、2つの段部12e、12fの一面12cから突出する突出部12dが設けられており、突出部12dの一面12a上に第1の電極15が設けられている。
2つの段部12e、12fの一面12cには、それぞれ、第2の電極13及び第3の電極14が設けられている。
III族窒化物半導体層12の他面12bは、ダイヤモンド基板11の一面11aと接しており、III族窒化物半導体層12とダイヤモンド基板11の界面17とされている。界面17を介して、ダイヤモンド基板11とIII族窒化物半導体層12はヘテロ接合されている。
なお、ダイヤモンド基板11は、その一面11aを水素終端表面処理または水素と酸素とが混合した終端表面処理したものを用いても構わない。
なお、六方晶のIII族窒化物半導体および立方晶のIII族窒化物半導体を用いることもできる。また、両材料の成長方法も任意である。
また、第2の電極13及び第3の電極14の間で、III族窒化物半導体層12の突出部12dを介在させて、第1の電極15が設けられている。
特に、複数の金属からなる積層構造体として形成することが好ましい。これにより、第2の電極13、第3の電極14から正孔伝導チャネル領域16への電流注入特性を向上させることができ、第1の電極15から正孔伝導チャネル領域16内のキャリアを制御可能な電圧を効率的に印加できるとともに、外部の水や空気に対する各電極の安定性を向上させることができる。
前記積層構造体としては、膜厚25nmのチタン、膜厚100nmのアルミニウム、膜厚50nmのチタン、膜厚250nmの金を基板側この順序及び膜厚で成膜した4層構造体や、膜厚200nmのニッケル、膜厚200nmの金を基板側からこの順序で成膜した2層構造体等を挙げることができる。
なお、図1(b)で、第2の電極13及び第3の電極14とダイヤモンド基板11との間のIII族窒化物半導体層12の層厚t2は同じ厚さとされているが、第2の電極13及び第3の電極14とダイヤモンド基板11との間のIII族窒化物半導体層12の層厚が異なっていてもよい。その場合、厚い方の層厚をt2として、これがt1より薄くされていることが好ましい。
第1の電極15とダイヤモンド基板11との間のIII族窒化物半導体層12の層厚t1は、70nm以上500nm以下とすることが好ましく、100nm以上350nm以下とすることがより好ましい。70nm未満の場合には、漏れ電流が発生するので好ましくない。
第2の電極13及び第3の電極14とダイヤモンド基板11との間のIII族窒化物半導体層12の層厚t2は、70nm以下とすることが好ましく、10nm以下とすることがより好ましい。70nm超の場合には、第2の電極13及び第3の電極14から正孔伝導チャネル領域16内にキャリアを注入して、電流を流すことが困難となる。
第2の電極13及び第3の電極14とダイヤモンド基板11との間には、III族窒化物半導体層12を無くしてもよい。この場合でも、第2の電極13及び第3の電極14とダイヤモンド基板11との間の抵抗を低くすることができ、ソース電極である第2の電極13と、ドレイン電極である第3の電極14との間で、正孔伝導チャネル領域16内に効率よく電流を流すことができる。
次に、本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタの製造方法について説明する。
本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタの製造工程は、MOVPE法により、ダイヤモンド基板の一面にIII族窒化物半導体層を形成する工程(III族窒化物半導体層形成工程)と、前記III族窒化物半導体層を部分的に除去する工程(III族窒化物半導体層パターン形成工程)と、前記ダイヤモンド基板の一面側に第2の電極及び第3の電極を形成するとともに、前記III族窒化物半導体層の一面に第1の電極を形成する工程(第1の電極、第2の電極及び第3の電極形成工程)とを有して概略構成されている。
なお、III族窒化物半導体層の材料として窒化アルミニウム(AlN)を用い、複数の電界効果トランジスタを一括して形成する方法を一例として説明する。
図2及び図3は、本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタの製造工程の一例を示す工程図である。
まず、高温高圧合成で単結晶のダイヤモンド基板を作製する。なお、市販のダイヤモンド単結晶基板を用いてもよい。
次に、前記ダイヤモンド基板を、硝酸と塩素酸ナトリウム(NaClO3)混合溶液中で1時間沸騰処理を行い、その後、硝酸とフッ化水素酸混合溶液中で1時間沸騰処理を行う。これにより、ダイヤモンド基板の表面の不純物を除去するとともに、一面が酸素終端表面であるダイヤモンド基板とすることができる。
なお、前記酸性溶液処理又は前記熱処理のみを実施してもよい。これにより、一面が酸素終端表面であるダイヤモンド基板とすることができる。
なお、酸素終端表面を有するダイヤモンドを得た後、水素雰囲気にて前記ダイヤモンド基板を水素アニール処理(熱処理)してもよい。また、水素とアンモニアの混合雰囲気にてアニール処理(熱処理)してもいい。前記アニール処理時間は、例えば、5分とする。
前記熱処理の加熱温度は、800℃〜2000℃の温度とすることが好ましく、1000℃〜1500℃とすることがより好ましく、1200℃〜1400℃とすることが更に好ましい。
有機金属気相成長法(MOVPE法)の成膜条件は、有機金属気相成長装置内にトリメチルアルミニウムガス(TMAIガス)、アンモニアガス(NH3ガス)及び水素ガス(H2ガス)を流通させた状態で、1〜760Torr以下の減圧条件にて、前記ダイヤモンド基板を1200℃〜2000℃の温度に加熱する。
なお、MOVPE法の成膜における前記熱処理の加熱温度は、1220℃〜1500℃とすることがより好ましく、1240℃〜1400℃とすることが更に好ましい。
また、MOVPE法の成膜における前記熱処理の減圧条件は、10Torr〜500Torrとすることがより好ましく、20Torr〜300Torrとすることが更に好ましい。
例えば、TMAIガスの流量は10〜1000sccm、NH3ガスの流量は0.01〜1slmとする。
なお、NH3ガスは、窒化アルミニウム成長後でも、成長温度が600℃以下に降温するまで供給し続けることが好ましい。
また、III族窒化物半導体層の膜厚は、100〜2000nmとすることが好ましく、300〜1600nmとすることがより好ましい。
次に、前記ダイヤモンド基板上のAlNをパターニングし、パターン下部のAlNを残し、パターン以外のAlNを完全にエッチングし除去する。
次に、パターニングは通常のフォトリソグラフィー法を用い、AlNのエッチングは誘導結合プラズマエッチング装置を用いる。エッチングガスには塩素Cl2を用いて、ドライエッチングプロセス技術を用いることができる。これにより、図2(b)に示す素子分離構造を形成することができる。
なお、AlNのパターニング加工は、通常のフォトリソグラフィー法に限られるものではなく、電子ビームリソグラフィーやレーザリソグラフィーを用いても構わない。また、以下の工程で示す電極のパターニングその他薄膜層のパターニングでも同様に、通常のフォトリソグラフィー法に限られるものではなく、電子ビームリソグラフィーやレーザリソグラフィーを用いても構わない。
また、上記の素子分離等のエッチング工程では、結晶成長時の選択成長技術や、ウエットエッチング技術を用いても構わない。
具体的には、図2(c)に示すように、所定の位置のIII族窒化物半導体層12を部分的に除去して、前記III族窒化物半導体層12の層厚をより薄くした2つの段部12e、12fを形成して、突出部12dを有する凸構造のAlNとする。
次に、蒸着法又はスパッタ法を用いて、ダイヤモンド基板11の一面11a側に金属膜又は複数の金属の積層構造体を形成してから、これをパターニングして、第1の電極15、第2の電極13及び第3の電極14を形成する。
次に、フォトリソグラフィー法により、リフトオフによりパターンを作製する。
次に、4層構造体の熱処理を行う。この熱処理時間は、400℃〜1400℃とすることが好ましく、600℃〜1200℃とすることがより好ましい。熱処理時間は、10sec〜10minとすることが好ましく、30sec〜5minとすることがより好ましい。例えば、900℃、1minの条件とする。
これにより、図3(a)に示すように、ソース電極及びドレイン電極として用いる第2の電極13及び第3の電極14を形成する。
次に、フォトリソグラフィー法により、リフトオフによりパターンを作製する。
次に、2層構造体の熱処理を行う。この熱処理時間は、400℃〜1400℃とすることが好ましく、600℃〜1200℃とすることがより好ましい。熱処理時間は、10sec〜10minとすることが好ましく、30sec〜5minとすることがより好ましい。例えば、900℃、1minの条件とする。
これにより、図3(b)に示すように、ゲート電極として用いる第1の電極15を形成する。
以上の工程により、図3(c)に示すように、本発明の実施形態である電界効果トランジスタ10を製造することができる。
次に、本発明の第2の実施形態である電界効果トランジスタについて説明する。
図4は、本発明の実施形態である電界効果トランジスタの別の一例を示す図であって、図4(a)は平面図であり、図4(b)は図4(a)のB−B’線における断面図である。
図4(a)に示すように、本発明の第2の実施形態である電界効果トランジスタ20は、第2の電極13及び第3の電極14とダイヤモンド基板11との間にIII族窒化物半導体層22が設けられていないことを除いて本発明の第1の実施形態である電界効果トランジスタ10と同様の構成とされている。
<ヘテロ接合構造体の作製>
まず、IIa型絶縁性(111)面方位ダイヤモンド基板を、硝酸と塩素酸ナトリウム(NaClO3)混合溶液中で1時間沸騰処理を行い、その後、硝酸とフッ化水素酸混合溶液中で1時間沸騰処理を行った。
次に、有機金属気相成長装置(MOVPE装置)に搬入し、水素とアンモニアの混合雰囲気にて、100Torr、1250℃の条件で、5分間、アニール処理(熱処理)した。
次に、そのまま、MOVPE装置内で、表1に示す成長条件で、有機金属気相成長法(MOVPE法)により、前記ダイヤモンド基板の一面上に窒化アルミニウムを層厚が1.6μmとなるように成長させた。なお、従来のMOVPE装置は、成長温度が1000℃程度だが、本実施例の装置では1250℃以上に加熱可能なように改良した。
なお、NH3は、窒化アルミニウム成長後でも、成長温度が600℃以下に降温するまで供給し続けた。
次に、実施例1のヘテロ接合構造体の結晶学的評価を行った。
まず、実施例1のヘテロ接合構造体の1.6μm成長させた窒化アルミニウムをX線回折法により評価した。
図5は、実施例1のヘテロ接合構造体のAlNのX線回折法の2θ−ωスキャンのプロファイル結果を示すグラフである。図5(a)はダイヤモンド(111)を中心に2θをワイドレンジである30°〜90°の範囲で測定した時の2θ−ωスキャンの結果を示すグラフであり、図5(b)は、AlNの(0002)を中心に2θを詳細に測定した結果を示すグラフであり、図5(c)は、AlNの(10−11)を中心に2θを詳細に測定した結果を示すグラフである。
また、図5(b)(c)により、回折角2θとブラッグの法則により窒化アルミニウムの格子定数を求めたところ、c軸格子定数(cAlN)は4.978Å、a軸格子定数(aAlN)は3.115Åであった。
図6(a)に示すように、実施例1のヘテロ接合構造体の窒化アルミニウムは高密度の欠陥(転位および結晶粒界)を有し緩和しており、連続膜というよりは、コラム(グレイン)構造に酷似した構造であることがわかる。
また、図6(b)、(c)に示す透過電子回折パターンより、窒化アルミニウムは2つのドメイン構造を有していることがわかる。
また、配向関係は(0001)窒化アルミニウムと(111)ダイヤモンドが平行であることがわかる。更に、(1−100)窒化アルミニウム及び(11−20)窒化アルミニウムと(0−22)ダイヤモンドが平行であることがわかる。
次に、実施例1のヘテロ接合構造体の窒化アルミニウムをパターニングして、ダイヤモンド基板上に複数の素子が分離されてなる素子分離構造を形成した。
なお、パターニングはフォトリソグラフィー法を用い、AlNのエッチングは誘導結合プラズマエッチング装置を用い、エッチングガスには塩素Cl2を用いた。また、エッチングの際、フォトレジストにより形成したパターン下部の窒化アルミニウムを残し、パターン以外の窒化アルミニウムを完全にエッチングし除去した。
これにより、凸構造を形成した。
次に、フォトレジストを塗布した後、フォトリソグラフィー法により、フォトレジストをソース電極及びドレイン電極の形状にパターニングしてから、リフトオフにより前記4層構造体をパターン化した。
なお、1枚のダイヤモンド基板上には複数の正方形状のソース電極及びドレイン電極を作製した。前記正方形状のソース電極及びドレイン電極は150μm角とした。
次に、前記4層構造体の金属を900℃、1minの条件で熱処理して、ソース電極及びドレイン電極を形成した。
次に、フォトレジストを塗布した後、フォトリソグラフィー法により、フォトレジストをゲート電極の形状にパターニングしてから、リフトオフにより前記2層構造体をパターン化した。
なお、一対のソース電極及びドレイン電極の間には、ゲート電極の長さ(ゲート長)Lgが10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、ゲート電極の幅(ゲート幅)Wgが160μmのものを作製した。また、各ゲートには一端側に正方形状の端子部を形成した。前記正方形状の端子部の1辺の長さは150μmとした。
次に、前記2層構造体を900℃、1minの条件で熱処理して、ゲート電極を形成した。
実施例1の電界効果トランジスタのデバイス特性評価結果を以下に記述する。
図7は、実施例1の電界効果トランジスタの表面光学顕微鏡像(a)、(b)及び断面模式図(c)である。図7(a)が平面図であり、図7(b)が拡大図であり、図7(c)が断面模式図である。図7(a)に示す数値は各トランジスタのゲート長のサイズである。
図7(a)及び図7(b)に示すように、正方形状のソース電極及びドレイン電極の1辺の長さは160μmである。
また、各電界効果トランジスタのゲート電極の幅Wgは160μmであり、ゲート電極の長Lgは10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μmである。各ゲート電極の一端側には正方形状の端子部が形成されている。
更に、図7(c)に示すように、ゲート電極は、凸構造AlN上に形成されている。
ドレイン電流(Id)はゲート幅(Wg)にて規格化している。また、ゲート電流(Ig)は、ゲートリーク電流である。
また、負のドレイン電圧(Vd)に対して負のドレイン電流(Id)が得られているので、キャリアは正孔であることがわかる。
更に、図9(a)及び図9(b)に示すように、ドレイン電流(Id)はゲートリーク電流(Ig)と比較して十分大きい。
なお、図9の結果から、最大ドレイン電流(Idmax)および最大相互コンダクタンス(gmmax)を算出でき、それぞれ、Idmax=6.8mA/mm、gmmax=2.9mS/mmであった。
図10に示すように、Vg=7〜10V付近においては空乏層の広がりを確認することができる。
また、Vg=−3〜7V付近においては、キャリアの蓄積による静電容量(空乏層)が一定(C=6.8×10−13F)になっている。
更に、Vg=−10〜−3V付近においては、キャリアの増加に伴い、ゲートリーク電流(Ig)が増加してしまい、静電容量は減少した。
そのため、先ほどの静電容量C=6.8×10−13Fを用いて、その時の実効移動度(μ)および閾値電圧(Vt)を、算出した。
その結果、Vd=−5Vと時の実効移動度(μ)および閾値電圧(Vt)は、それぞれμ=316cm2/VsおよびVt=3Vと見積もられた。また、Vdが−5V、Vgが−5Vのとき、相互コンダクタンス(gm)は3mS/mmとなった。
なお、ゲート幅(Wg)160μm、ゲート長(Lg)30μmの電界効果トランジスタにおいて、Vd=−5V、Vg=−5V印加時、ドレイン電流Id≧6.8mA/mm、実効移動度μ≧300cm2/Vs、相互コンダクタンスgm≧2.5mS/mmが得られ、高速・ハイパワーであると評価した。さらに測定環境に対する動作安定性も優れていた。
図12(a)は本発明の電界効果トランジスタの空乏状態のバンド構造であり、図12(b)はフラットバンド状態のバンド構造であり、図12(c)は正孔蓄積の状態のバンド構造である。
図12(a)に示すように、Vg>Vtの場合、ダイヤモンド−窒化アルミニウム界面は空乏化している。
また、Vg=Vtにてフラットバンドを形成する。更に、Vg<Vtにおいて、正孔キャリアの蓄積が起こると考察した。
AlNの成長後、成長条件と同じ条件で、水素アニール処理(熱処理)を行った他は実施例1と同様にして、複数の電界効果トランジスタ素子を有するダイヤモンド基板(実施例2)を形成した。
実施例1と同様に方法で、トランジスタ特性を測定して、キャリアの有無を調査したところ、電流は装置の検出限界以下であったため、AlNを堆積することがキャリアの生成を担っていることを傍証する結果であった。
Claims (14)
- ダイヤモンド基板と、前記ダイヤモンド基板の一面側に離間して形成された第2の電極及び第3の電極と、前記2つの電極の間に離間して形成された第1の電極と、を有する電界効果トランジスタであって、
前記第1の電極と前記ダイヤモンド基板との間にIII族窒化物半導体層が設けられ、前記ダイヤモンド基板と前記III族窒化物半導体層との界面の近傍領域に正孔伝導チャネル領域が形成されており、
前記ダイヤモンド基板が単結晶基板であり、その一面が(111)結晶面と平行であり、
前記III族窒化物半導体層が六方晶結晶粒子を有する多結晶体からなり、転位や結晶粒界を含む結晶学的構造であり、
前記III族窒化物半導体層の(0001)面が前記ダイヤモンド基板の(111)結晶面と平行であり、
前記III族窒化物半導体層が2つのドメイン構造を有し、
前記2つのドメイン構造が、前記III族窒化物半導体層の(1−100)面が前記ダイヤモンド基板の(0−22)面と平行であるドメイン構造と、前記III族窒化物半導体層の(11−20)面が前記ダイヤモンド基板の(0−22)面と平行であるドメイン構造であることを特徴とする電界効果トランジスタ。 - 前記正孔伝導チャネル領域が、前記ダイヤモンド基板内に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
- 前記第2の電極及び/又は前記第3の電極と前記ダイヤモンド基板との間にIII族窒化物半導体層が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電界効果トランジスタ。
- 前記第2の電極及び/又は前記第3の電極と前記ダイヤモンド基板との間のIII族窒化物半導体層の層厚が、前記第1の電極と前記ダイヤモンド基板との間のIII族窒化物半導体層の層厚より薄いことを特徴とする請求項3に記載の電界効果トランジスタ。
- 前記第1の電極がゲート電極であり、前記第2の電極がソース電極であり、前記第3の電極がドレイン電極であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタ。
- 前記III族窒化物半導体層がAlN、BN、GaN、InNの群から選ばれるいずれか一の化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
- 前記ダイヤモンド基板の一面が酸素修飾されていることを特徴とする請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
- MOVPE装置内で、減圧、1250℃以上の高温条件下で、ダイヤモンド基板を水素・アンモニア雰囲気にて熱処理する工程と、
同じMOVPE装置内で、MOVPE法により、減圧、1250℃以上の高温条件を保ったそのままの状態で、前記ダイヤモンド基板の一面にIII族窒化物半導体層を形成する工程と、
前記III族窒化物半導体層を部分的に除去する工程と、
前記ダイヤモンド基板の一面側に第2の電極及び第3の電極を形成するとともに、前記III族窒化物半導体層の一面に第1の電極を形成する工程とを有することを特徴とする電界効果トランジスタの製造方法。 - 前記MOVPE法の成膜条件が、ダイヤモンド基板を内部に配置した容器内にトリメチルアルミニウムガス、アンモニアガス及び水素ガスを流通させた状態で、1〜760Torrに減圧しながら、前記ダイヤモンド基板を1250℃〜2000℃の温度に加熱することを特徴とする請求項8に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
- 蒸着法及び/又はスパッタ法により、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記第3の電極を形成することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
- 前記III族窒化物半導体層を形成する前に、前記ダイヤモンド基板の一面を酸性溶液処理又は熱処理することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
- リソグラフィー法により、前記III族窒化物半導体層を部分的に除去することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
- 前記III族窒化物半導体層を部分的に除去して、前記III族窒化物半導体層の層厚をより薄くした2つの段部を形成することを特徴とする請求項12に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
- 前記III族窒化物半導体層を部分的に除去して、前記III族窒化物半導体層を除去した2つの除去部を形成することを特徴とする請求項13に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
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