JP5746328B2 - ヒト睾丸および副睾丸で発現される305種類の生殖関連精子局在タンパク質の検出方法 - Google Patents

ヒト睾丸および副睾丸で発現される305種類の生殖関連精子局在タンパク質の検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、検出の分野、具体的に、蛍光、酵素標識、銀標識、ビオチン、アイソトープ、チップなどの標識技術によって定性/定量で精子局在タンパク質を検出する方法を含む、ヒト睾丸および副睾丸で発現される305種類の生殖関連精子局在タンパク質の検出方法に関する。また、本発明は、前述した精子局在タンパク質を検出するためのタンパク質チップおよびその応用に関する。
男性不妊は不妊症の重要な原因の一つである。2000年の世界保健機関(WHO)の報告によると、全世界で、不妊症が約15%で、男性側の原因によるものは約半分を占め、欧州の一部の国では不妊症が30%に達している。男性不妊の原因は非常に複雑で幅広く、生殖系の解剖構造および機能、ホルモン調節、遺伝物質、感染/免疫などの多くの要素による異常および障害に関わる。
現在、これらの要素に対する研究は、単一の遺伝子のレベルおよびゲノムのレベルに止まっていることが多い。しかしながら、生体の生理機能を本当に実行するものはタンパク質であるため、上述した分子遺伝学の研究は、遺伝子の転写後の調節、タンパク質の発現レベルおよびタンパク質の翻訳後修飾などの情報を反映できず、しかも細胞内のmRNAレベルおよびタンパク質の発現量と完全に一致するわけではないため、タンパク質のレベルで男性不妊の機構を研究するのが特に重要である。
国際公開第2006/032541号パンフレット
研究では、男性不妊症は、独立した疾患ではなく、複数の疾患または要素が併せて作用した結果であることが明らかになった。男性不妊の原因は非常に複雑で幅広いが、現在、精液のルーチン検査の手段に限界があるため、全体的かつ系統的に精漿におけるタンパク質の発現レベルを分析することができない。
上述のように、未だに、ヒト精子の成熟による男性不妊関連タンパク質は詳しく知られておらず、しかもこのようなタンパク質の検出方法が十分でないため、男性生殖関連タンパク質を検出する有効的な方法および製品の開発が切望されている。
本発明の目的は、男性生殖関連タンパク質を有効的に検出する方法および製品を提供することである。
本発明の第1の形態は、男性個体の男性生殖関連タンパク質の発現状況を検出するチップまたはキットの製造のための、表2に示されているが表1に示されていないタンパク質であるヒト精子成熟/男性生殖関連タンパク質の捕捉試薬の用途を提供する。
別の好ましい例において、前記男性生殖関連タンパク質は、少なくとも、表2に示されているタンパク質のうちの5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300種類を含む。
別の好ましい例において、前記試薬は、タンパク質チップである。
別の好ましい例において、前記検出は、定性または定量の検出である。
別の好ましい例において、前記検出は、男性個体の精漿サンプルを検出するものである。
別の好ましい例において、前記検出は、男性個体の精子サンプルを検出するものである。
別の好ましい例において、前記捕捉試薬は、抗体であって、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含む。
別の好ましい例において、前記抗体は、一種または複数種の検出可能な標識物を有する。
別の好ましい例において、前記標識物は、主に、免疫蛍光、酵素標識、銀標識、ビオチン、アイソトープなどである。
別の好ましい例において、前記男性個体は人間で、特に、男性不妊者、または、結婚後1年で未出産女性の配偶者である。
本発明の第2の形態は、固相担体、および、該固相担体に存在する、表2に示されているが表1に示されていないタンパク質である男性生殖関連タンパク質の検出点を含むヒト睾丸および副睾丸で発現される精子結合タンパク質の検出に用いられるチップを提供する。
別の好ましい例において、前記検出点に前記男性生殖関連タンパク質の捕捉試薬(例えば抗体)が固定化されている。
別の好ましい例において、前記男性生殖関連タンパク質は、少なくとも、表2に示されているタンパク質のうちの5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300種類を含む。
別の好ましい例において、前記固相担体は、ガラスシート、プラスチックシート、ニトロセルロース膜、ポリフッ化ビニリデン膜、マイクロスフェアなどの担体から選ばれる。
本発明の第3の形態は、前記チップで、表2に示されているが表1に示されていないタンパク質である男性生殖関連タンパク質を鑑別する方法であって、
a)検出される対象からの精漿サンプルを男性生殖関連タンパク質に対する捕捉試薬を含むチップと接触させる工程、
b)サンプルから男性生殖関連タンパク質を捕捉し、第1の信号を形成させる工程、
c)第1の信号を(陽性対照と陰性対照を含む)標準品の信号と比較し、定性または定量で前記男性生殖関連タンパク質の発現量を確定する工程、及び
d)発現量から男性不妊を引き起こすタンパク質の候補を確定する工程
を有する方法を提供する。
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上述の各技術特徴および下述(例えば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、又は好ましい技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
Aは副睾丸の組織のタンパク質の2D参照図で、Bは副睾丸の管腔液のタンパク質の2D参照図で、CはHEL−S−128mの質量分析による同定結果である、副睾丸および睾丸のタンパク質の二次元ゲル電気泳動による分離(2D)および質量分析による同定を示す図である。 pET32b(+)担体で構築された組換え発現担体の模式図である。 HEL−S−154w、HEL−S−65p、HEL−S−6aタンパクが精子の免疫蛍光による分布解析でそれぞれ精子の全体、尾部および先体に位置することを示す図である。 HEL−S−154wタンパクが顕著な抑菌活性を有することを示す図である。 HEL−S−154wタンパクの抗菌活性を示す図である。
本発明者は、幅広く深く研究したところ、初めて、ヒト副睾丸、睾丸で発現される、男性生殖に関連する複数種の特異的なタンパク質を見出したことで、不妊の発生と関わる重要なタンパク質群を確定した。それに基づき、男性生殖関連タンパク質を検出する方法およびチップの検出手段を開発することによって、本発明を完成させた。本発明で開示された男性生殖に関連するタンパク質群の利用は、キータンパク質の分子作用機構および相互作用の関係の解明に寄与し、男性不妊の原因の究明に斬新なアプローチを提供する。
男性生殖関連タンパク質
ここで用いられるように、用語の「男性生殖関連タンパク質」とは、男性の哺乳動物(特に人間)の睾丸および/または副睾丸で発現される、男性生殖に関連するタンパク質を指す。通常、前述の男性生殖関連タンパク質は、精子を保護するタンパク質、精子の運動能力に関するタンパク質、精子の卵細胞への進入に関するタンパク質を含む。
ここで用いられるように、「哺乳動物」とは、胎生で且つ乳腺で子を育てる動物の種類であって、脊椎動物に属する代表的な哺乳動物は、例えば、人間、サル、ヒツジ、ウシ、ウサギ、ウマ、マウス、ラットなどを含むが、これらに限定されず、人間が特に好ましい。
特に本発明に適する男性生殖関連タンパク質の一種は、睾丸および/または副睾丸の分泌タンパクで、これらの分泌タンパクは、精漿に存在したり、精子に存在したりする。本発明の研究では、これらの男性生殖関連タンパク質が精子の成熟などの過程と密接に関連し、精子が正常の機能を獲得するには重要である。
ここで用いられるように、用語の「本発明のタンパク質」、「本発明の生殖関連タンパク質」または「本発明の男性生殖関連タンパク質」は、いずれも本発明で初めて開示された、男性生殖に関連する、睾丸および/または副睾丸で発現される、精子に局在するタンパク質を指し、入れ替えて使うことができる。代表的な本発明のタンパク質は表2に示す。
検出方法
また、本発明において、本発明の男性生殖関連タンパク質を検出する方法を提供する。前述の方法は、ヒト精子局在タンパク質の定性または定量の検出、およびたんぱく質チップの検出を含むが、これらに限定されない。
ヒト精子における局在タンパク質の定性または定量の検出
通常、特異的抗体を検出標本(精子)とともにインキュベートした後、標識発色で精子局在タンパク質の定性または定量を行い、発色基質は、通常の酵素発色剤、化学発光剤または放射性同位体などでもよい。また、第2の抗体で信号を増幅し、且つ感度の高い発色手段を使用することによって、感度を大幅に向上させることができる。
特異的抗体は、溶液に溶解させ、精子の表面に結合させ、フローサイトメトリーなどの検出手段で定性または定量的に流れる精子の表面におけるタンパク質の含有量を測定してもよいし、抗体を支持物(例えばポリエチレン板、免疫マイクロスフェア、ガラスシート、ニトロセルロース (NC)膜、PVDF膜(登録商標)など)に固定化し、通常のスキャナーで定性または定量的に陽性の精子の百分率含有量を測定してもよい。
タンパク質チップおよびそのヒト精漿の検出における応用
また、本発明は、男性生殖関連タンパク質の検出に用いられるタンパク質チップを提供する。このようなチップは、定性または定量的に測定サンプルにおける男性生殖関連タンパク質の検出結果を提供することができる。これらの検出結果は、補助的に例えば男性不妊の原因の判断に用いることができる。用語の「タンパク質アレイ」または「タンパク質チップ」は、いずれも捕捉試薬がタンパク質標識物と結合できるアレイを指し、入れ替えて使うことができる。典型的に、捕捉試薬は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体で、特異的なタンパク質と結合することができる。言い換えれば、タンパク質と特異的に結合できるタンパク質、ポリペプチド、核酸または他の分子もしくは表面は、いずれもタンパク質アレイに応用することができる。これらのアレイは、通常、数百または数千のアドレス指定可能な区域にある、異なる捕捉試薬を含む。標識物が検出可能な分子で標識されると、タンパク質アレイにある捕捉試薬と標識物との結合は、通常、定量される。
本発明のタンパク質チップの特徴は、前述のチップに男性生殖関連タンパク質の検出点が設けられていることにあるが、これらの検出点は、無作為に分布してもよいし、チップの異なる検出区域に分布してもよいし、または、比較的にチップの一つまたは複数の特定の検出区域に集中して分布してもよい。
ここで用いられるように、用語の「検出点」とは、タンパク質チップに位置し、あるタンパク質の検出のためのサンプル添加点を指すが、例えばHEL−75タンパクの検出のための検出点は、通常、抗HEL−75タンパクのモノクローナル抗体をチップの基板に添加して形成したものである。
好ましい例において、タンパク質チップは、精子の成熟の各段階または異なる機能評価に相応する区域、例えば、精子の受精能獲得の検出区域、精子の運動関連タンパク質の検出区域、精子の卵細胞への進入に関するタンパク質の検出区域から選ばれる一つまたは複数の検出区域を含むことによって、より便利に異なる機能または種類の男性生殖関連タンパク質を検出することができる。前述の検出区域は、物理上で比較的に集中した区域で、例えば、チップを異なる検出区域A、B、Cに分け、検出区域Aが精子の受精能獲得の検出区域で、検出区域Bが精子の運動関連タンパク質の検出区域で、検出区域Cが精子の卵細胞への進入に関するタンパク質の検出区域であってもよいと理解されるべきである。また、前述の検出区域は、物理上で集中しないが、データの解析または処理の時は分類して処理されることで、例えば精子の受精能獲得の検出区域などの特定の検出区域を構成してもよい。例えば、一つのチップに無作為に配列したいくつかの検出点をデータの解析または処理の時に精子の受精能獲得の検出区域として分類して処理すると、タンパク質チップに前述の精子の受精能獲得の検出区域が存在するとみなしてもよい。一つの男性生殖関連タンパク質Aが複数の機能に関わる可能性がある場合、このような様態では当該タンパク質Aのチップへの重複の添加を避けるのに有利で、即ち、一つだけのタンパク質Aの検出点を設置することで、複数の検出区域を設置して各検出区域にタンパク質Aの検出点を設けなくても済む。
本発明に適用されるタンパク質チップは特に制限されず、本分野で既知の各種類の構造の空白のタンパク質チップを使用することができる。通常、これらのタンパク質チップの担体は、免疫マイクロスフェア、ガラスシート、プラスチックシート、ニトロセルロース(NC)膜、PVDF膜などを含むが、中でも、免疫マイクロスフェアおよび各種の基板が特に好ましい。in−situ合成、機械による添加または共役結合の方法でポリペプチド、タンパク質、または抗体を順に各種の担体に固定化して検出用のチップとし、蛍光標識抗体または他の成分をチップと相互に作用させ、洗浄してチップにあるタンパク質と相補的に結合しなかった成分を除去し、さらに蛍光などのスキャナーまたは共焦点レーザー走査技術でチップまたは他の担体における各点の蛍光強度および標識物の強度を測定して各種のタンパク質の含有量を分析することによって、各種のタンパク質の測定する目的を実現させる。
本発明のタンパク質チップは、1種または複数種、好ましくは5種以上、より好ましくは10種以上、最も好ましくは20種以上の本発明で初めて開示された男性生殖関連タンパク質の検出点を含んでもよい。例えば、少なくとも、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300種類、ひいては全部(305種類またはそれ以上)の本発明のタンパク質の検出点を含む。
上述のように、本発明のタンパク質チップは、比較的に独立した検出区域を含むことが好ましい。一つまたは複数のこれらの検出区域を含む場合、各検出区域は少なくとも2種、好ましくは少なくとも5種の本発明のタンパク質の検出点を含むことが好ましい。
本発明のタンパク質チップは、全面的で、即ち、全部またはほとんどの男性生殖関連タンパク質を検出するものでもよいし、ある特定の機能の男性生殖関連タンパク質だけに対するもので、例えば精子の受精能獲得の検出点だけを含むものでもよいし、または発症と最も関わる(即ち、大半の不妊症の原因である)本発明のタンパク質だけに対するものでもよい。
一つの好ましい例において、本発明は、免疫学的解析のためのタンパク質チップおよびその製造方法を提供する。高速全自動スポッターでタンパク質のサンプル(本発明のタンパク質の抗体)を化学処理されたスライドガラスにアレイにスポットし、タンパク質が化学結合でスライドガラスに結合して固定化されてもよい(例えばスライドガラスの表面のアルデヒド基でアミノ基と共役結合を形成する)。前述のタンパク質サンプルのスポットアレイは正方形のアレイとし、各アレイにタンパク質サンプルのアレイを設け、分析の過程をチップの表面に集積させ、蛍光標識物でタンパク質の分子を標識し、最後にチップの蛍光走査解析システムでタンパク質のサンプルを検出して分析することができる。
産業上の応用
本発明に基づき、男性生殖関連タンパク質の検出方法および検出手段は、不妊症患者の精漿における生殖関連タンパク質の含有量の検出に有用である。
本発明の主な利点は以下の通りである。
(a)迅速に、有効的に個体における男性生殖に関連する複種のタンパク質を定性または定量的に検出した結果をスクリーニングすることができる。
(b)科学研究、特に生殖関連分野の研究に有用である。
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下述する実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、例えばSambrook等の、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989)に記載の条件などの通常の条件に、或いは、メーカー推奨の条件に従う。
実施例1
副睾丸および睾丸の標本は、事故死の青年男性(27から30歳)から採取され、生前に子持ちで、生殖系疾患の記録がなく、その家族と医学研究ための献体の契約を締結し、同時に煙台毓▲黄▼頂病院倫理委員会によって承認された。手術で標本を得た後、すぐ副睾丸の管腔液および睾丸組織のタンパク質サンプルの抽出およびタンパク質の定量を行い、3個体以上の標本を等量で混合して2次元ゲル電気泳動で分離し、3回重複した電気泳動で共有するタンパク質の点を取って質量分析で同定した。中では、精子における分布がわかったタンパク質は319種あった。
実施例2 精子の準備
正常精液を37℃で恒温液化を30分行い、1.0mlの精液を吸い取って37℃、5%COおよび飽和湿度の条件で12時間安定化したEarle液に入れ、試験管を45°程度傾けて60分インキュベートし、比較的に元気な精子を充分に泳がせ、600gで10分間遠心した。上清液を捨て、洗浄を2回繰り返し、使用に備えた。正常精液は、提供者の同意を得てから、煙台毓▲黄▼頂病院生殖センターによって提供された。
実施例3 発現ベクターの構築およびタンパク質の精製
上述した319種類の遺伝子のタンパク質製品は以下のような方法で得られた。遺伝子配列によって、成熟コーディング領域を増幅するための一対の特異的プライマーを合成した。通常の方法で調製されたヒト副睾丸cDNAライブラリーを鋳型とし、PCRで目的の遺伝子を直接増幅し、さらに市販のベクターのpGM−Tvector(上海貝博生物公司から購入)にクローンして配列決定で正確と確認した。配列決定で確認した遺伝子を制限酵素切断部位で発現ベクターのpET32b(+)(上海貝博生物公司から購入)にクローンし、融合タグの読み枠と一致させた。組換え発現ベクターを通常のE. coli BL21(DE3)の感受性細胞に導入し、操作菌を得た。1mM IPTGによって32℃で発現が誘導され、ベクターにおけるHis−Tagタグによって、「二段階ネッケル親和性クロマトグラフィー」で組換えタンパク質を分離して精製した。(図1)精製された組換えタンパク質はBradford(Bradford 1976)法で定量した後、凍結乾燥して保存した。
実施例4 モノクローナル抗体の調製および活性テスト
上述した319種類のタンパク質のモノクローナル抗体は以下のような方法で得られた。実施例1で調製された組換えタンパク質でBALB/Cマウスを免疫させた。簡単に言うと、各マウスは1日目に50μgの組換えタンパク質と等量の完全フロイントアジュバント(CFA)を注射した。その後、15、30および45日目に25μgの組換えタンパク質と等量の不完全フロイントアジュバント(IFA)を注射して免疫を強化した。最後の免疫から3〜4日後、脾臓細胞を分離してSp2骨髄腫細胞株と混合し、さらにPEGを入れて細胞を互いに融合させ、融合した細胞を適当に希釈し、培養プレートに置いて培養し、通常は0.8個細胞/穴まで希釈し、穴の底の20%を覆うように細胞を培養した時点で、培養の上清液を吸い取ってELISAで抗体の含有量を測定した。陽性細胞株を選んでマウスの腹腔に接種し、腹水を収集し、ブドウ球菌のプロテインAで親和性クロマトグラフィーのカラムを調製し、抗体を結合させた後、溶離し、モノクローナル抗体を回収した。
実施例5 HEL−S−65p、HEL−S−154w、HEL−S−6aの3つの代表的なタンパク質の免疫蛍光による分布解析
精子を収集してPBSで洗浄した後、1%ゼラチンで覆われたスライドガラスに塗布し、自然に乾燥させ、さらにメタノールで10分間固定した。精子を含むスライドガラスを3%BSAで室温で1時間ブロックした後、各種のタンパク質のモノクローナル抗体(1:200)を添加し、4℃で一晩置いた。PBST(0.1%のTween−20を含むPBS)で3回洗浄し、相応のFITC−標識ヒツジ抗マウスIgGである第2抗体(1:200)を入れた。スライドガラスをPBSTで3回洗浄した後、80%グリセリンで封じた。オリンパスBX−52顕微鏡で結果を観察した。
結果は図3に示されるように、HEL−S−65p、HEL−S−154w、HEL−S−6aタンパクがそれぞれ精子の尾部、全体および先体に位置することを示した。
実施例6 HEL−S−65pのタンパク質の精子運動に対する影響
3つの0.5mL滅菌した遠心管を取り、それぞれ100μLの濃度を調整した精子懸濁液(2.0×10個/mL)を入れ、且つ、空白対照群、実験群および陽性対照群と標記した。その後、傾けて37℃、5%COおよび飽和湿度のインキュベーターで3時間インキュベートして受精能を獲得させた。受精能獲得が終わった後、空白対照群では2μLの精子受精能獲得培養液(BWW)のみを、実験群では2μLのHEL−S−65pタンパク抗体(1:200)を、陽性対照群では2μLのHEL−75抗体を入れ、均一に混合し、インキュベーターでさらに1時間インキュベートして精子をブロックした。
上述した処理後の精子に対して運動の測定を行い、測定装置はHamilton社の精子運動解析装置で、サンプル検出セルの深さは20μmであった。実験結果は表4に示す。
表AはHEL−S−65pタンパクの免疫蛍光による分布解析および精子運動に対する影響である。精子の免疫蛍光による分布解析では、HEL−S−65pタンパクが精子の尾部主部に局在することがわかったが、抗体で精子をブロックした後、精子の各運動パラメータが顕著に抑制された。
実施例7 HEL−S−154wタンパクの抑菌活性
組換えベクターpET−32b(+)−HEL−S−154wまたは空白ベクターpET−32b(+)を導入した細菌(大腸菌BL21)を一晩培養した後、LB培地で1:40で接種し、この時サンプリングしてOD600を測定し、その後1時間おきにサンプリングした。増殖対数期になった時点で、細菌を均等に2つの部分にわけた。その一方に最終濃度が0.1mMになるようにIPTGを入れ、もう一方は入れずに対照とし、その後1時間おきにOD600を測定し、毎回は平行に測定を3回繰り返し、陰性対照群として、空白のホスト菌BL21をIPTGの毒性検出に用いた(図4に示す)。
実施例8 HEL−S−154wタンパクの抗菌活性
一晩培養した大腸菌XL−1 blueが対数期(OD600=0.4〜0.5)になった後、10mMのPBS(pH7.4)で希釈した。約2×10CFU/mLの細菌を12.5〜100μg/mLのrRNASE9と混合し、37℃で培養し、培養開始後15、30、60および120分の時点でサンプリングした。サンプルを10mMのPBSで勾配希釈し、各濃度で100μL取ってプレートに塗布し、37℃で一晩培養して単集落が形成し、集落数を統計し、抗菌活性は細菌の生存百分率で表示し、式は%生存=(タンパク質処理後の生存クローン数/タンパク質処理なしの生存クローン数)×100である。
結果は図5に示されるように、HEL−S−154wタンパクが抗菌活性を有することがわかった。
実施例9 HEL−S−6aタンパクの卵への進入実験
3つの0.5mL滅菌した遠心管を取り、それぞれ100μLの上述の濃度を調整した精子懸濁液を入れ、且つ、空白対照群、実験群および陽性対照群と標記した。空白対照群では2μLのBWW液のみを、実験群では2μLのHEL−S−65p抗体(1:200)を、陽性対照群では2μLのHEL−75を入れ、均一に混合し、傾けて、37℃、5%COおよび飽和湿度のインキュベーターで3時間インキュベートしてブロックおよび受精能獲得を行った。精子懸濁液を取り、600gで10分間遠心した。添加した過剰のタンパク質の第一抗体を除去するように上清液を捨て、精子密度が3.5×10個/mLになるようにBWW液で調整した。精子懸濁液を3組90μLずつ取り、それぞれ最終濃度が10μL/Lになるように10μLの100μmol/Lのプロゲステロンを入れ、受精能獲得後の精子のアクロソーム反応を誘導した。35mmの無菌プラスチックシャーレを取り、アクロソーム反応を誘導した精子懸濁液をそれぞれ100μLの受精液滴とし、各受精液滴に15〜20個の卵母細胞を入れた。上にパラフィンオイルを被覆した後、37℃、6%COおよび飽和湿度の二酸化炭素インキュベーターで3時間インキュベートして受精させた。受精終了後、卵母細胞を取り出してBWWで卵母細胞の表面にある精子を洗浄し、そしてカバーガラスをつけて位相差顕微鏡で受精卵を観察し、膨大の精子の頭部およびその尾部の存在または雄性前核を精子が卵に進入した指標とした。精子が卵へ進入した百分率を統計した。実験結果は表5に示す。
表BはHEL−S−6aタンパクの免疫蛍光による分布解析および卵への進入活性を示す。精子の免疫蛍光による分布解析では、HEL−S−6aタンパクが精子の先体に局在することがわかったが、その抗体は受精能獲得前および獲得後の精子の卵への進入能力を顕著に抑制することができた。
実施例10 タンパク質チップの製造
以下の方法でタンパク質チップNo.1−4を製造した。
(a)スライドガラスのチップ
(1)高速スポッターで複数穴の板における各タンパク質サンプル(抗本発明のタンパク質の抗体)を直接高密度で化学処理した、表面に活性アルデヒド基があるスライドガラスにスポットし、各アレイに16(4×4)個のサンプル点があり、各サンプル点は直径0.4mmであった。
(2)室温で一晩または37℃で1時間インキュベートし、タンパク質のアミノ基をスライドガラスにおけるアルデヒド基と縮合反応させ、サンプルを固定化した。
(3)スライドガラスにおけるタンパク質と結合しなかった活性アルデヒド基を還元させ、されに充分に洗浄して室温で乾燥した。
(4)最後に、遮光材料で密封して包装し、4℃の環境で保存した。
(b)PDVF膜のチップ
(1)高速スポッターで複数穴の板における各タンパク質サンプル(抗本発明のタンパク質の抗体)をPDVF膜にスポットし、各アレイに16(4×4)個のサンプル点があり、各サンプル点は直径0.4mmであった。
(2)緩衝液で膜を2〜3回、毎回3〜6分間洗浄した。
(3)5%のウシ胎児血清または脱脂粉乳で室温で1〜2時間ブロックした。
(4)さらに緩衝液で膜を2〜3回、毎回3〜6分間洗浄した。
(5)乾燥後、遮光材料で密封して包装し、4℃の環境で保存した。
ここで、各チップに含まれる検出点は以下の表Cに示す。
実施例11 タンパク質チップの応用
実施例10で製造されたチップNo.4で21例の男性不妊症の患者の精漿における各男性生殖関連タンパク質の含有量を検出した。検出結果から、5例の精子無力症である男性不妊症の患者の精漿にHEL−S−162ePタンパクが欠けていることがわかった。
その後、HEL−S−162ePタンパクが欠けているその5例の精子無力症である男性不妊症の患者の精子に対して精子の運動能力の測定を行った結果、5例の男性不妊症の患者はいずれも精子の運動能力が劣っている(正常の精子対照の30%よりも低い)ことがわかった。そして、精子の免疫蛍光実験では、精子の表面におけるHEL−S−162ePタンパクが少なくなっているまたは欠けていることがわかった。
HEL−S−162ePタンパクに対する精子の分布解析試験では、すでに、HEL−S−162ePタンパクが赤道+尾部主部(表2を参照)に分布することがわかり、精子の運動能力と関わることが示唆された。
上述の検出結果から、HEL−S−162ePタンパクの欠陥はこれらの男性不妊の主因であることが示唆された。
検討
現在、臨床ではすでにいくつかの精漿タンパクが補助的に不妊症の診断および治療に用いられ、複数のマーカーを合わせて検出すると、スクリーニングができ、診断の陽性率が向上する。通常の免疫学的な検出方法は、放射免疫測定(RIA)、酵素結合免疫測定(ELISA)、化学発光免疫測定(CLIA)などを含み、それぞれ利点があるが、これらの技術は共通の制限があり、即ち、毎回1種の不妊症タンパクマーカーしか検出できない。これは臨床上の同時に複数の不妊症マーカーの検出の要求に応えられず、タンパク質チップは同一の標本における複数の異なる目的のタンパク質を同時に分析することができ、また同時に複数の標本を検出することもできるため、効率が大幅に向上し、感度と精度が高く、信号雑音比が良く、微量の標本で済み、操作が簡単で、再現性が優れる。
本発明で選ばれた305種類のヒト精子局在タンパク質は、精子の成熟に重要なタンパク質で、マーカーとしてキットを開発し、男性不妊症の研究および臨床のルーチン検査の診断試薬に用いることができる。
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。

Claims (9)

  1. 男性個体の男性生殖関連タンパク質の発現状況を検出するチップまたはキットの製造のために用いられる捕捉試薬であって、
    前記男性生殖関連タンパク質は、表2に示されているが表1に示されていないタンパク質、且つ、表2における番号7のHEL−S−7a、番号13のHEL−S−13a、番号29のHEL−S−29a、番号93のHEL−S−49e、番号116のHEL−S−74p、番号250のHEL−S−168mPおよび番号312のHTL−S−49mPに該当するタンパク質以外のタンパク質であり、
    前記男性生殖関連タンパク質は、少なくとも、表2に示されているタンパク質のうちの5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200または250種類を含み、
    前記5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200または250種類のタンパク質は、少なくともHEL−S−65p、HEL−S−6aおよびHEL−S−162ePに該当するタンパク質を含む
    ことを特徴とするヒト精子成熟/男性生殖関連タンパク質の捕捉試薬。
  2. 抗体であって、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を含むことを特徴とする請求項1に記載の捕捉試薬。
  3. 前記補足試薬はタンパク質チップの形態をなしていることを特徴とする請求項1に記載の捕捉試薬。
  4. 前記検出は定性または定量の検出であることを特徴とする請求項1に記載の捕捉試薬。
  5. 前記検出は、男性個体の精漿サンプルにおける精子局在タンパク質を定性または定量的に検出することを特徴とする請求項1に記載の捕捉試薬。
  6. 前記検出は、男性個体の精子における局在タンパク質を定性または定量的に検出することを特徴とする請求項1に記載の捕捉試薬。
  7. 前記男性個体は、人間で、男性不妊または結婚後1年で未出産女性の配偶者であることを特徴とする請求項1に記載の捕捉試薬。
  8. 前記男性生殖関連タンパク質は、表2における番号5、6、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、88、89、94、95、96、97、98、99、100、101、107、109、111、112、113、114、115、129、133、134、135、136、137、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、227、228、229、231、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、251、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、313、314、315、316、317及び319に該当するタンパク質であることを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の捕捉試薬。
  9. 固相担体および該固相担体に存在する、表2に示されているが表1に示されていないタンパク質、且つ、表2における番号7のHEL−S−7a、番号13のHEL−S−13a、番号29のHEL−S−29a、番号93のHEL−S−49e、番号116のHEL−S−74p、番号250のHEL−S−168mPおよび番号312のHTL−S−49mPに該当するタンパク質以外のタンパク質であり、少なくとも、表2に示されているタンパク質のうちの5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200または250種類を含み、前記5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200または250種類のタンパク質は、少なくともHEL−S−65p、HEL−S−6aおよびHEL−S−162ePに該当するタンパク質を含む男性生殖関連タンパク質を検出するためのサンプル添加点である検出点を含むチップであって、ヒト睾丸および副睾丸で発現される精子結合タンパク質の検出に用いられることを特徴とするチップ。
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