JP5742360B2 - 鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法 - Google Patents

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Description

本発明は、亜鉛を含有する鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼し、鉄鋼ダスト中の亜鉛を揮発回収する鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法に関する。
鉄鋼の製造工程において発生する鉄鋼ダストには、鉄以外に有価金属である亜鉛が比較的多く含まれている。そのため、従来から鉄鋼ダストを、ロータリーキルンを用いる還元焙焼法、いわゆるウェルツ法により還元焙焼し、鉄鋼ダスト中に含まれる亜鉛を還元揮発させて、粗酸化亜鉛として回収することが行われている。一方、還元焙焼によってロータリーキルン内に発生した鉄を含む残渣は、含鉄クリンカーとして回収される。
この還元焙焼法では、製鋼メーカーにおいて必要に応じて予め適当な大きさのペレット状に成形された鉄鋼ダストを、コークス等の炭素質還元剤とともに、最高温度が1100〜1200℃に制御されたロータリーキルンに連続的に装入し、還元焙焼させる。
近年、鉄鋼ダストそのものの発生量を抑制しようとする動きがあり、鉄鋼ダストを産出している鉄鋼メーカーにおいて、鉄鋼ダスト中の鉄が回収され、亜鉛の濃縮された鉄鋼ダストが排出されるようになってきた。しかしながら、亜鉛含有量が多い鉄鋼ダストの場合、従来のロータリーキルンによる還元焙焼法では、亜鉛を十分に揮発させることができず、亜鉛の回収率が著しく低下するという問題があった。
還元焙焼法において亜鉛の回収率を高める方法としては、還元焙焼温度を高くすることが知られている。しかしながら、例えば1300℃まで還元焙焼温度を高くすると、還元焙焼による反応生成物が軟化・溶融してロータリーキルンの内壁に付着し、操業時間の経過とともに、付着物がリング状に成長する。その結果、成長した付着物が、鉄鋼ダスト等の原料がロータリーキルン内を移動する際の障害物となり、操業が困難となることが多い。
また、他の方法としては、従来の還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法において、鉄鋼ダストに、鉄の総量が鉄鋼ダスト中の亜鉛量に対して0.5以上の質量比となるように、鉄又は鉄酸化物を添加する方法が報告されている(特許文献1参照)。この方法によれば、たとえ亜鉛含有量が多い鉄鋼ダストであっても亜鉛を十分に揮発させることができるが、鉄又は鉄酸化物と、鉄鋼ダストとを十分に混合してペレット化するという煩雑な前処理が必要であり、効率の良い方法とはいえなかった。
特開2003−342648号公報
ところで、鉄鋼ダストの還元焙焼により発生する残渣である含鉄クリンカーは、従来、その大部分が産業廃棄物として埋め立て処分されていた。しかしながら、近年、環境負荷への配慮から、含鉄クリンカーを鉄資源として再利用する試みがなされている。含鉄クリンカーを鉄資源として有効利用するためには、亜鉛含有量が十分に低い必要がある。その許容範囲は製鋼炉にもよるが、2.0質量%を超えるものは一般的に鉄資源とすることは困難であり、依然として埋め立て処分となっている。
亜鉛含有量が多い鉄鋼ダストの場合、従来の方法により還元焙焼すると、含鉄クリンカーの亜鉛含有量が増加し、鉄資源として再利用することができないという問題もあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、還元焙焼温度を通常よりも高くすることなく、また、前処理等の煩雑な作業を行うことなく、亜鉛含有量が多い鉄鋼ダストであっても、亜鉛を高い収率で回収することができ、且つ、鉄資源として利用可能な含鉄クリンカーを得ることができる鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、亜鉛含有量の多い鉄鋼ダストを、鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼した際に残渣として回収される含鉄クリンカーとともに、ロータリーキルン内で還元焙焼したところ、亜鉛の回収率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では以下のものを提供する。
(1) 亜鉛含有鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼し、上記亜鉛含有鉄鋼ダスト中の亜鉛を揮発回収するロータリーキルンの操業方法において、鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼した際に残渣として回収される含鉄クリンカーを、上記亜鉛含有鉄鋼ダストとともに還元焙焼用ロータリーキルン内に装入することを特徴とする鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法。
(2) 上記含鉄クリンカーにおける亜鉛の含有量が2.0質量%を超える(1)に記載の鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法。
(3) 上記亜鉛含有鉄鋼ダストにおける亜鉛の含有量が25〜35質量%である(1)又は(2)に記載の鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法。
本発明の鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法によれば、還元焙焼温度を通常よりも高くすることなく、また、前処理等の煩雑な作業を行うことなく、亜鉛含有量が多い鉄鋼ダストであっても、亜鉛を高い収率で回収することができ、且つ、鉄資源として利用可能な含鉄クリンカーを得ることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本発明の鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法(以下、操業方法という。)は、亜鉛含有鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼し、上記亜鉛含有鉄鋼ダスト中の亜鉛を揮発回収するロータリーキルンの操業方法において、鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼した際に残渣として回収される含鉄クリンカーを、上記亜鉛含有鉄鋼ダストとともに還元焙焼用ロータリーキルン内に装入することを特徴とする。ここで、鉄鋼ダストとは、例えば、鉄鋼の製造工程等において発生する煙灰類をいう。炭素質還元剤は、特に限定されないが、例えば、コークス、石炭等が挙げられる。本発明の操業方法では、その他必要に応じて、石灰石や硅石等の溶剤を装入してもよい。本発明の操業方法は、鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼した際に残渣として回収される含鉄クリンカーによれば、亜鉛含有鉄鋼ダストからの亜鉛の回収率を向上できることを見出した点に意義がある。
鉄鋼ダスト中では、亜鉛は酸化亜鉛(ZnO)の形態で存在する。まず、この酸化亜鉛が還元焙焼用ロータリーキルン内においてどのような反応によって、回収されるのかについて説明する。ロータリーキルンを用いる還元焙焼法では、鉄鋼ダストともにロータリーキルン内に装入されるコークス等の炭素質還元剤が、ロータリーキルン炉内ガス中の二酸化炭素(CO)と反応して、一酸化炭素(CO)を生成する。鉄鋼ダスト中の酸化亜鉛は、この一酸化炭素によって還元され、金属亜鉛蒸気となる。また、一方で、特開2003−342648号公報に記載されているように、鉄鋼ダスト中の酸化鉄が上記一酸化炭素によって金属鉄に還元され、ある温度を境に亜鉛と鉄との対酸素親和性が逆転するため、一部の酸化亜鉛が金属鉄により還元され、金属亜鉛蒸気となる。このように発生した金属亜鉛蒸気は、放出されると同時に雰囲気ガス中の酸素により酸化され、酸化亜鉛となり、雰囲気ガスとともにロータリーキルンより排出されると考えられる。
本発明では、このような反応機構を有する還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法において、還元焙焼温度を通常よりも高くすることなく、また、前処理等の煩雑な作業を行うことなく、亜鉛含有鉄鋼ダストから亜鉛を高い収率で回収するために、鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼した際に残渣として回収される含鉄クリンカーを、上記亜鉛含有鉄鋼ダストとともに還元焙焼用ロータリーキルン内に装入する。含鉄クリンカーには、酸化亜鉛、酸化カルシウム、二酸化ケイ素等が含まれているが、主成分は鉄成分である。含鉄クリンカーに含まれる鉄成分は、金属鉄(Fe)及び酸化鉄(FeO)であり、8〜9割を金属鉄が占める。金属鉄によれば、一酸化炭素により還元される必要もなく、直接、酸化亜鉛を還元することができ、また、酸化鉄であっても、一酸化炭素による一段階の還元で金属鉄となり、酸化亜鉛を還元することができる。したがって、含鉄クリンカーによれば、例えば二段階の還元によって金属鉄となる三酸化二鉄(Fe)と比較して、亜鉛の還元速度が速く、非常に効率良く鉄鋼ダスト中の亜鉛を揮発回収することができると考えられる。
還元焙焼温度は、通常、最高温度が1100〜1200℃に制御されている。しかしながら、これよりも高い温度で還元焙焼すると、亜鉛の揮発率は向上するものの、ロータリーキルン内では、鉄鋼ダストの主成分である鉄が三酸化二鉄から金属鉄へ還元されていく過程で、酸化鉄含有率の高い低融点物質が生成される。これが半熔融し、ロータリーキルンの内壁に付着し、操業時間の経過とともに、付着物がリング状に成長する。その結果、成長した付着物が、鉄鋼ダスト等の原料がロータリーキルン内を移動する際の障害物となり、操業が困難となることが多い。しかしながら、鉄成分として金属鉄(Fe)及び酸化鉄(FeO)を含む含鉄クリンカーによれば、亜鉛の効率良く還元することができるので、従来のように亜鉛の揮発率を高めるために、還元焙焼の最高温度を通常よりも高くする必要がなく、効率的な操業を実現することができ、また、炉体の延命にも繋がる。
また、鉄成分として金属鉄(Fe)及び酸化鉄(FeO)を含む含鉄クリンカーによれば、亜鉛を効率良く還元することができるので、従来のように、鉄鋼ダスト中の亜鉛と鉄源とを接触させるために、還元焙焼の前に予めこれらを十分に混合してペレット化するという煩雑な前処理を必要とせず、ロータリーキルン内に個々に装入すればよい。含鉄クリンカーが、鉄鋼ダスト中に含まれる亜鉛を効率良く還元することができる理由としては、以下のことが考えられる。鉄鋼ダストと含鉄クリンカーとは、ほぼ同じ嵩比重や粒度を有している。そのため、鉄鋼ダストと含鉄クリンカーとは、分散し、ロータリーキルンの回転に伴い、鉱層内で均等に分散し、鉱層内で亜鉛の周囲に鉄が存在するというマクロな予混合状態が生じ、亜鉛の還元反応の進行が良好になると考えられる。
鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼した際に残渣として回収される含鉄クリンカーには、鉄鋼ダストに由来する酸化亜鉛が含まれている。近年では、含鉄クリンカーを鉄資源として再利用する試みがなされているものの、亜鉛含有量が多い含鉄クリンカーの場合には、鉄資源としての再利用することが困難であるため、産業廃棄物として埋め立て処分されている。鉄資源として再利用することが可能な亜鉛含有量は、その許容範囲が製鋼炉によって異なるが、一般的に亜鉛含有量が2.0質量%を超える含鉄クリンカーは処分されている。本発明の操業方法によれば、従来、産業廃棄物として取り扱われていた亜鉛含有量が2.0質量%を超える含鉄クリンカーについても、使用することができる。そして、本発明の操業方法によれば、含鉄クリンカーとして、このように亜鉛含有量の多いものを使用した場合には、亜鉛含有鉄鋼ダスト中の亜鉛を高い収率で回収できるだけでなく、亜鉛含有鉄鋼ダストの還元焙焼後のロータリーキルン内に残渣として回収される含鉄クリンカーを、亜鉛含有量が少なく、鉄資源として利用可能なものにすることができるので、廃棄物の削減に繋がる。
本発明の操業方法では、含鉄クリンカーの装入量が多いほど亜鉛の回収率は向上するが、過剰な装入は、含鉄クリンカーの温度を上昇させるための熱量がかさみ、温室効果ガスの排出量を増加させることになる。なお、発明者らによれば、ロータリーキルンの排ガス温度がある特定の温度(例えば680〜700℃)に維持されるように、含鉄クリンカーの装入量を調整すると、排ガスの余熱が含鉄クリンカーの昇温に再利用され、新たな熱源の投入が不要となるという知見を得ている。例えば、上記温度では、鉄鋼ダストに対して10〜15質量%の含鉄クリンカーを装入すると熱的バランスが良好である。
亜鉛含有量が多い鉄鋼ダストは、従来のロータリーキルンによる還元焙焼法では、亜鉛を十分に揮発させることができず、亜鉛の回収率が著しく低下するとともに、還元焙焼後のロータリーキルン内に残渣として回収される含鉄クリンカーの亜鉛含有量が増加し、鉄資源として再利用することができない場合がある。しかしながら、本発明の操業方法によれば、亜鉛含有量が多く、亜鉛を十分に揮発させることが困難な鉄鋼ダストであっても、高い収率で亜鉛を回収することができる。例えば、亜鉛含有量が25質量%以上の鉄鋼ダストにコークスを添加し、クリンカー温度を1100〜1200℃に制御したロータリーキルンにて還元焙焼する一般的な還元焙焼法によれば、還元焙焼後のロータリーキルン内に残渣として回収される含鉄クリンカーの亜鉛含有量は、鉄資源として再利用することができない2.0質量%を超える。本発明によれば、亜鉛含有量が25〜30質量%の鉄鋼ダストであっても、亜鉛を高い収率で回収することができ、還元焙焼後に回収される含鉄クリンカーの亜鉛含有量を、鉄資源として再利用可能な程度にすることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
<製造例1>
表1に示す化学組成を有する鉄鋼ダストAと、鉄鋼ダストBとを7:3の割合(質量比)で混合し、還元ロータリーキルンに装入する鉄鋼ダストの平均亜鉛品位が約26質量%の鉄鋼ダストを得た。なお、この亜鉛品位は、従来の操業では、鉄資源としての利用が困難な含鉄クリンカーが生じる数値である。
Figure 0005742360
<試験例1>
製造例1にて得られた鉄鋼ダストと、含鉄クリンカー(亜鉛品位:3.2質量%)と、炭素質還元剤であるコークスと、石灰石の粉末とを内径3.5m、長さ50mの排出端側に重油燃焼バーナーを備える還元ロータリーキルン内に、連続的に装入し、約1200℃にて約5時間焙焼した。ここで、鉄鋼ダストの装入量は、10wet−t/hrとした。また、コークスは、鉄鋼ダストに対して20質量%装入し、石灰石は、装入原料全体においてSiOに対するCaOの割合(質量比)が1.7となる量を装入した。含鉄クリンカーについては、鉄鋼ダストに対して0%、5%、10%、30%の割合となるように装入した。
還元焙焼後、還元ロータリーキルン内に残渣として残った含鉄クリンカーを取り出し、該含鉄クリンカーに残留している亜鉛量を蛍光X線分析(XRF分析)装置にて分析するとともに、亜鉛揮発率(総亜鉛量(鉄鋼ダスト及び含鉄クリンカーに含まれている亜鉛量)に対する回収亜鉛量の割合(質量比))を求めた。結果を表2に示す。
Figure 0005742360
表3に示すように、含鉄クリンカーを還元ロータリーキルン内に鉄鋼ダストとともに装入することで、亜鉛の揮発率が向上することが明らかとなった。また、還元焙焼後、還元ロータリーキルン内に残渣として残った含鉄クリンカーに残留している亜鉛量は、鉄鋼ダストとともに装入した含鉄クリンカーに含まれる亜鉛量よりも低いものであった。さらに、鉄鋼ダストとともに装入する含鉄クリンカーの装入量は、多いほど亜鉛の揮発率が向上し、還元焙焼後、還元ロータリーキルン内に残渣として残った含鉄クリンカーに残留している亜鉛量が減少することも明らかとなった。
以上の結果から、亜鉛品位が高く、鉄資源として利用することが困難な含鉄クリンカーを、鉄鋼ダストとともに還元ロータリーキルン内に装入し、還元焙焼することによって、鉄鋼ダスト中に含まれる亜鉛の揮発率が高まり、亜鉛の回収率が向上するとともに、亜鉛品位が低く、鉄資源として有効利用可能な含鉄クリンカーが得られることが確認された。

Claims (2)

  1. 亜鉛含有鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼し、前記亜鉛含有鉄鋼ダスト中の亜鉛を揮発回収するロータリーキルンの操業方法において、
    鉄鋼ダストを炭素質還元剤とともに焙焼した際に残渣として回収される含鉄クリンカーを、前記亜鉛含有鉄鋼ダストとともに還元焙焼用ロータリーキルン内に装入することを特徴とし、
    更に、前記含鉄クリンカーにおける亜鉛の含有量が2質量%を超えることを特徴とする鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法。
  2. 前記亜鉛含有鉄鋼ダストにおける亜鉛の含有量が25〜35質量%である請求項1に記載の鉄鋼ダスト還元焙焼用ロータリーキルンの操業方法。
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