JP5740909B2 - セメント材料用付着保持材及び該保持材を用いたコンクリート構造物の補修方法 - Google Patents
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Description
特に、セメント材料による補修工法は、コンクリートとの付着性のよい材料であるセメントを用いており、取り扱いが容易で作業性に優れる工法である。
そのため、従来では、コンクリート構造物の補修工事では、その補修材料とコンクリート構造物躯体との付着を強化するために、アクリル系樹脂、EVA系樹脂等を水で希釈した下地処理剤や接着性を有するエポキシ樹脂等を主成分とした下地処理剤をコンクリート構造物躯体に塗布して用いている。
また、これらの水分吸収を防ぐ下地処理剤を、コンクリート構造物躯体に適用しない場合には、コンクリート構造物と接触する部分から補修用のセメント材料の水分がコンクリートへ吸収されないように、コンクリート構造物躯体表面に水を塗布する(「水湿し」と称する)手法を用いている。
これは、セメント補修材の混練水が凍結しないことにより強度発現が十分に保持できるからである。
特に、寒冷地において環境温度が0℃を下回った場合、前記した水希釈タイプの下地処理剤をコンクリート構造物躯体に塗布しても、また、前記「水湿し」を行っても、いずれの場合でも水が存在するため、瞬時に凍結してしまい、所要の効果を得られない。
また、エポキシ樹脂系などの水を含まない下地調整剤を使用しても、内部が低温環境下となっている、下地のコンクリート構造物躯体に熱を吸収され、コンクリート構造物躯体に接するセメント系補修材の界面で初期凍結が生じ、補修用セメント材料自身の圧縮強度、曲げ強度が確保されたとしても、コンクリート構造物躯体とセメント補修材料との間の付着力が必ずしも十分ではなかった。
具体的には、寒冷地や冬季、特に5℃以下の環境温度において、コンクリート構造物を補修するにあたり、補修用のセメント材料の凍結を防止する下地処理材料として用いることができ、コンクリート構造物とセメント補修材料とが良好な接着保持力を有する、セメント材料用付着保持材及び該保持材を用いたコンクリート構造物の補修方法を提供することにある。
好適には、上記本発明のセメント材料用付着保持材において、セメント材料は、超速硬セメントであることを特徴とする。
好適には、上記本発明のセメント系材料用付着保持材を用いたコンクリート構造物の補修方法において、セメント材料用付着保持材を塗布する前に、劣化したコンクリート構造物をはつりとることを特徴とする。
特に補修セメント材料を超速硬セメントとすることで、自己水和発熱による凍結防止や早期に付着強度を発現することが可能となる。
また、本発明のコンクリート構造物の補修方法は、本発明の上記セメント材料用付着保持材をコンクリート躯体またはモルタル躯体に塗布することにより、環境温度が5℃以下であっても、補修材料のコンクリート構造物への付着力が優れているため、寒冷地や冬季、時に環境温度5℃以下、0℃以下において極めて有効なコンクリート構造物の補修方法である。
本発明のセメント材料用付着保持材は、温度5℃以下の環境下で使用するセメント材料用付着保持材であって、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウムからなる群より選ばれる物質が固形分濃度5〜50質量%で溶解している水溶液である。
亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウムからなる群より選ばれる材料を少なくとも1種類で用いる。
これらの材料を本発明の付着保持材に用いることで、寒冷地や冬季、特に5℃以下、好ましくは0℃以下の環境温度下でコンクリート構造物の表面に塗布すると、補修用のセメント材料の氷点を下げることができ、凍結を防止し、従ってコンクリート構造物とセメント材料との接着保持性を良好にすることができる。
さらに、コンクリート表面より内部の鉄筋まで浸透して、防錆効果も期待できる。
濃度が、固形分換算で水溶液中5〜50質量%としたのは、5質量%未満であると水溶液が凍結する恐れがあり、50質量%を超えると水溶液を製造することが困難となるからである。
また付着保持材が水溶液の形態であると、コンクリート構造物に刷毛やスプレー等で塗布しやすく作業性が向上するからである。
すなわち、本発明のコンクリート構造物の補修方法は、温度5℃以下の環境下でコンクリート構造物を補修するにあたり、コンクリート構造物に、上記本発明のセメント材料用付着保持材を塗布し、その上に補修用のセメント材料を打設するものである。
コンクリート構造物は、摩耗・欠損が生じたり、その表面が脆弱化して粗となっていたり、劣化、及び凍害等によるコンクリート構造物の耐久性の低下、ひび割れ等の問題が発生していることから、望ましくは、補修をするにあたり、本発明の付着保持材を塗布する前に、劣化コンクリート構造物の脆弱化部分を予めはつりとることが望ましい。
本発明のコンクリート構造物の補修工法は、コンクリート構造物体の脆弱化部分での剥離の危険性を少なくすることもできる。
その塗布方法は、時に限定されず、刷毛、ローラー、吹付け、加圧散布器等による、任意の塗布方法が可能である。
本発明の付着保持材は、適用するコンクリート構造物の塗布または噴霧等する面1m2に対して、50〜1000g程度の塗布、好ましくは100〜200g程度の塗布が好ましく、これにより上記本発明の効果をさらに有効に発現することができる。
セメント材料に用いるセメントとしては、特に限定されず、現場の施工条件等を考慮して選定することができ、例えば、ポルトランドセメント、その他の混合セメント、超速硬系セメント等を特に制限なく使用できる。ポルトランドセメントとしては、低熱、中庸熱、普通、早強、超早強、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメントが挙げられ、また、混合セメントとしては、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等が挙げられる。
これらのセメントを単独または2種以上で用いることができる。
特に5℃以下の施工温度でも早期強度を発現することから、超速硬セメントを用いることが好ましい。
ここでセメント材料には、セメント、モルタル、コンクリートが含まれる。
当該水の量は、特に限定されないが、通常、水/セメント質量比が、0.3〜0.6、好ましくは0.35〜0.55となるように添加調整される。これにより、上記効果をより有効に発現させることができる。
粉末成分を予め混合する装置としては、均一に混合できるものであれば特に限定されず、既存の任意の装置を使用でき、例えば、ヘンシェルミキサー、オムニミキサー、V型ミキサーやナウターミキサー等が挙げられる。
コテ均しは、セメント材料の表面を水や養生剤等を使用して行うことで、平滑性を更に良好にすることが可能となる。
(実施例1〜16、比較例1)
次の表1〜4に記載するように、亜硝酸ナトリウム(関東化学(株)社製)、亜硝酸カルシウム(関東化学(株)社製)、硝酸カルシウム(関東化学(株)社製)、亜硝酸リチウム(日産化学工業(株)社製)を用いて、それぞれ各固形分濃度の水溶液を調製して、付着保持材とした。%は質量%を表す。
また比較のために、「水湿し」用の水を付着保持材とした(表5)。
当該付着試験をする際の付着供試体の断面の概要を図1に示す。
なお、図1に示すように、コンクリート平板1の側面には、発砲スチロール4を設置して、横方向への材料温度の散逸を防止し、またセメント系材料の周囲には蓋5を設けて実施した。
その結果も、下記表1〜5に示す。
2・・・付着保持材
3・・・セメント系材料
4・・・発泡スチロール
5・・・蓋
Claims (4)
- コンクリート構造体をセメント系材料で補修するための下地処理材として温度5℃以下の環境下で使用するセメント材料用付着保持材であって、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウムからなる群より選ばれる物質が固形分濃度5〜50質量%で溶解している水溶液であることを特徴とする、セメント材料用付着保持材。
- 請求項1記載のセメント材料用付着保持材において、セメント材料は、超速硬セメントであることを特徴とする、セメント材料用付着保持材。
- 温度5℃以下の環境下でコンクリート構造体を補修するにあたり、コンクリート構造体に、請求項1又は2記載のセメント材料用付着保持材を塗布してコンクリート構造体の下地処理を行い、その上にセメント系材料を打設することを特徴とする、セメント系材料用付着保持材を用いたコンクリート構造物の補修方法。
- 請求項3のセメント系材料用付着保持材を用いたコンクリート構造物の補修方法において、請求項1又は2記載のセメント材料用付着保持材を塗布する前に、劣化したコンクリート構造物をはつりとることを特徴とする、コンクリート構造物の補修方法。
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