JP5733460B1 - プラズマ発生用のアンテナおよびそれを備えるプラズマ処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 真空容器内に配置されて誘導結合型のプラズマを発生させるためのアンテナであって、アンテナ導体に金属パイプを用いており、しかもアンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができるアンテナを提供する。【解決手段】 アンテナ20は、絶縁パイプ22とその中に配置された中空のアンテナ本体24とを備えている。アンテナ本体24は、複数の金属パイプ26を中空絶縁体28を介在させて直列接続した構造をしており、かつ各中空絶縁体28の外周部に配置された層状のコンデンサ30を有していて、各金属パイプ26とコンデンサ30とを電気的に直列接続した構造をしている。各コンデンサ30は、中空絶縁体28の外周部に配置されていて一方の金属パイプ26に電気的に接続された第1の電極32と、中空絶縁体28の外周部に電極32と重なるように配置されていて他方の金属パイプ26に電気的に接続された第2の電極34と、両電極間に配置された誘電体36とを有している。【選択図】 図2

Description

この発明は、高周波電流が流されて真空容器内において誘導結合型のプラズマを発生させるためのアンテナおよびそれを備えているプラズマ処理装置に関する。なお、イオンは、この出願中では正イオンを意味する。
アンテナに高周波電流を流し、それによって生じる誘導電界によって真空容器内において誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させるためのアンテナおよびそれを備えているプラズマ処理装置が従来から提案されている。
この種のプラズマ処理装置においては、大型の基板に対応する等のためにアンテナを長くすると、当該アンテナのインピーダンスが大きくなり、それによってアンテナの両端間に大きな電位差が発生する。その結果、この大きな電位差の影響を受けてプラズマの密度分布、電位分布、電子温度分布等のプラズマの均一性が悪くなり、ひいては基板処理の均一性が悪くなるという課題がある。また、アンテナのインピーダンスが大きくなると、アンテナに高周波電流を流しにくくなるという課題もある。
このような課題を解決する等のために、アンテナとコンデンサとを直列接続している構成のプラズマ処理装置が幾つか提案されている。
例えば、特許文献1には、外部アンテナ(即ち真空容器の外部に配置されるアンテナ。以下同様)を有するプラズマ処理装置が提案されており、この装置では、ループ状のアンテナを構成する複数の直線導体を、真空容器の一部を成す誘電体窓の上部(外部)に並べて配置し、かつ当該ループ状アンテナの、誘電体窓から遠い戻り導体にコンデンサを直列接続している。
特許文献2には、内部アンテナ(即ち真空容器内に配置されるアンテナ。以下同様)を有するプラズマ処理装置が記載されており、この装置では、絶縁パイプ内にアンテナ導体を通して成る直線状のアンテナを複数本、真空容器内に並べて配置し、かつ各アンテナ間を、真空容器外に設けたコンデンサで直列接続している。
特許文献3には、内部アンテナを有するプラズマ処理装置が記載されており、この装置では、一方の主面が真空容器内に位置する平面状アンテナ(平面導体)の当該主面に、高周波電流の流れ方向と交差する方向に伸びている溝を1以上形成して当該主面を複数領域に分割し、かつ各溝内にコンデンサをそれぞれ設けて平面状アンテナの各領域と各コンデンサとを互いに電気的に直列接続している。
特表2002−510841号公報(段落0014、0028、図3、図10) 特開平11−317299号公報(段落0044、0109、図1、図12、図22) 特開2012−133899号公報(段落0006、図1、図2)
上記特許文献1に記載の技術は、アンテナ導体とコンデンサとが直列接続された構造であるので、電位の反転によるループ状アンテナ全体の両端間の電位差を低減させることはできるけれども、プラズマ発生に直接関わる、誘電体窓に近接する導体は直線状導体であるので、基板の大型化に対応する等のために当該直線状導体を長くすると、それに伴って個々の直線状導体のインピーダンスが増加する。その結果、誘電体窓に近接する個々の直線状導体の両端間に発生する電位差が大きくなり、プラズマの均一性を低下させる。また、個々の直線状導体のインピーダンス増加に伴い、高周波電流が流れにくくなり、誘導結合状態が効率的に得られなくなる。
更に、外部アンテナであって誘電体窓を通しての誘導結合であるため、誘電体窓材の厚みのためにプラズマ空間までの距離が遠く、内部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が低下する。
上記特許文献2に記載の技術では、基板の大型化に対応する等のために各アンテナを長くすると、それに伴って個々のアンテナのインピーダンスが増加する。その結果、個々のアンテナの両端間に発生する電位差が大きくなり、プラズマの均一性を低下させる。また、個々のアンテナのインピーダンス増加に伴い、高周波電流が流れにくくなり、誘導結合状態が効率的に得られなくなる。
上記特許文献3に記載の技術は、内部アンテナであるので外部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が高く、かつ平面状アンテナの真空容器内側の主面に設けた1以上の溝内にコンデンサをそれぞれ設けているので、基板の大型化に対応する等のために平面状アンテナを長くしてもその両端間に発生する電位差を小さく抑えることができるという特長を有しているけれども、平面状アンテナはその平面内で2次元方向の電位分布を持ちやすく、それに相当するプラズマ分布が発生し、それが基板表面の膜に転写されやすいので、このような点を改善する観点からは、アンテナ導体はパイプ状のものが好ましい。しかし、アンテナ導体をパイプ状のものにする場合は、特許文献3に記載のような平面状アンテナの溝内にコンデンサを設ける技術を適用することはできない。コンデンサ周りに新たな工夫が必要である。
そこでこの発明は、真空容器内に配置されて誘導結合型のプラズマを発生させるためのアンテナであって、アンテナ導体に金属パイプを用いており、しかもアンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができるアンテナを提供することを一つの目的としている。また、そのようなアンテナを備えるプラズマ処理装置を提供することを他の目的としている。
この発明に係るアンテナは、真空容器内に配置され、かつ高周波電流が流されて、当該真空容器内に誘導結合型のプラズマを発生させるためのアンテナであって、絶縁パイプと、その中に配置されていて内部に冷却水が流される中空のアンテナ本体とを備えており、前記アンテナ本体は、(a)複数の金属パイプを、隣り合う金属パイプ間に中空絶縁体を介在させて直列接続した構造をしていて、各接続部は真空および前記冷却水に対するシール機能を有しており、(b)かつ前記各中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサを有していて、各中空絶縁体の両側の前記金属パイプと当該コンデンサとを電気的に直列接続した構造をしており、前記各中空絶縁体および前記各コンデンサは、前記真空容器内に配置されるものであり、前記各コンデンサは、(a)前記中空絶縁体の外周部に配置された電極であって、当該中空絶縁体の一方側に接続された前記金属パイプに電気的に接続された第1の電極と、(b)前記中空絶縁体の外周部に、前記第1の電極と重なるように配置された電極であって、当該中空絶縁体の他方側に接続された前記金属パイプに電気的に接続された第2の電極と、(c)前記第1の電極および第2の電極間に配置された誘電体とを有している、ことを特徴としている。
上記アンテナによれば、それを構成するアンテナ本体は、複数の金属パイプを、中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサで電気的に直列接続した構造をしていて、アンテナ本体の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナのインピーダンスを低減させることができる。その結果、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができる。
前記各コンデンサは、前記第1の電極、第2の電極および誘電体をそれぞれ複数層有していても良い。
前記アンテナ本体は、前記絶縁パイプ内に空間を介して配置されていても良い。
この発明に係るプラズマ処理装置は、真空排気されかつガスが導入される真空容器と、前記真空容器内に配置された前記アンテナと、前記アンテナに高周波電流を流す高周波電源とを備えていて、前記アンテナによって発生させたプラズマを用いて基板に処理を施すように構成されている。
請求項1に記載の発明によれば、真空容器内に配置される内部アンテナであるので、外部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が高い。
しかも、アンテナを構成するアンテナ本体は、複数の金属パイプを、中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサで電気的に直列接続した構造をしていて、アンテナ本体の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナのインピーダンスを低減させることができる。その結果、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができる。従って、当該アンテナの両端間に大きな電位差が発生するのを抑えることができる。それによって均一性の良いプラズマを発生させることが可能になる。
また、アンテナを長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができるので、アンテナに高周波電流が流れやすくなり、誘導結合型のプラズマを効率良く発生させることが可能になる。
更に、アンテナ本体は、中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサを有しているので、金属パイプとその外側の絶縁パイプとの間の距離をあまり増大させずに済み、かつ内部に流される冷却水の流れに対する抵抗をあまり増大させずに済む。
請求項2に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、各コンデンサは、第1の電極、第2の電極および誘電体をそれぞれ複数層有しているので、各コンデンサの静電容量を大きくすることが容易になり、それによって、アンテナ本体の前記合成リアクタンスをより小さくしてアンテナのインピーダンスを低減させることがより容易になる。
請求項3に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、アンテナ本体は絶縁パイプ内に空間を介して配置されているので、当該空間の存在によって絶縁パイプ表面の電位上昇を抑えることができ、それによってプラズマ電位の上昇を抑えることができる。
請求項4に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、上記のようなアンテナを備えていて、均一性の良いプラズマを効率良く発生させることができるので、基板処理の均一性および効率を高めることができる。
請求項5に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、直線状のアンテナを複数、基板の表面に沿う方向に並列に配置しているので、より広い領域で均一性の良いプラズマを発生させることができ、従ってより大型の基板処理に対応することができる。
この発明に係るアンテナを備えているプラズマ処理装置の一例を示す概略縦断面図である。 図1中のアンテナのコンデンサ周りの一例を拡大して示す概略断面図である。 アンテナのコンデンサ形成に用いるフィルム状の誘電体および電極の一例を展開して示す平面図である。 アンテナの中空絶縁体周りの他の例を拡大して示す概略断面図である。 図1に示すアンテナの等価回路(A)および直列共振条件を満たしている場合の電位分布(B)の一例を示す図である。 直線状のアンテナを複数有しているプラズマ処理装置の一例を示す概略横断面図である。
図1に、この発明に係るアンテナを備えているプラズマ処理装置の一例を示し、図2に図1中のアンテナのコンデンサ周りの一例を拡大して示す。
このプラズマ処理装置は、真空排気されかつガス8が導入される真空容器2と、この真空容器2内に配置されていて高周波電流IR が流されて真空容器2内に誘導結合型のプラズマ16を発生させるためのアンテナ20と、このアンテナ20に高周波電流IR を流す高周波電源56とを備えていて、発生させたプラズマ16を用いて基板10に処理を施すように構成されている。
基板10は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等であるが、これに限られるものではない。
基板10に施す処理は、例えば、CVD法等による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
このプラズマ処理装置は、CVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はプラズマスパッタリング装置とも呼ばれる。
真空容器2は、例えば金属製の容器であり、その内部は真空排気装置4によって真空排気される。真空容器2はこの例では電気的に接地されている。
真空容器2内に、例えば流量調節器(図示省略)およびガス導入管6を経由して、ガス8が導入される。ガス8は、基板10に施す処理内容に応じたものにすれば良い。例えば、プラズマCVDによって基板10に膜形成を行う場合は、ガス8は、原料ガスを希釈ガス(例えばH2 )で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiH4 の場合はSi 膜を、SiH4 +NH3 の場合はSiN膜を、SiH4 +O2 の場合はSiO2 膜を、それぞれ基板10の表面に形成することができる。
真空容器2内に、基板10を保持する基板ホルダ12が設けられている。この例のように、基板ホルダ12にバイアス電源14からバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のパルス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマ16中の正イオンが基板10に入射するときのエネルギーを制御して、基板10の表面に形成される膜の結晶化度を制御することができる。この例のように、基板ホルダ12内に、基板10を加熱するヒータ13を設けておいても良い。
アンテナ20は、この例では直線状のアンテナであり、真空容器2内の上部付近に、基板10の表面に沿うように(例えば、基板10の表面と実質的に平行に)配置されている。真空容器2内に配置するアンテナ20は、一つでも良いし、複数でも良い。複数にする場合の一例を、後で図6を参照して説明する。
アンテナ20は、絶縁パイプ22と、その中に配置されていて内部に冷却水44が流される中空のアンテナ本体24とを備えている。アンテナ本体24は、この例では、絶縁パイプ22内に空間23を介して配置されている。その理由は後述する。
絶縁パイプ22の材質は、例えば、石英、アルミナ、フッ素樹脂、窒化シリコン、炭化シリコン、シリコン等であるが、これらに限られるものではない。
絶縁パイプ22を設ける理由は次のとおりである。即ち、公知のように、導体と高周波プラズマとが近接する構造の場合、プラズマ中のイオンよりも電子の方が軽くて遥かに多く導体に入射するので、プラズマ電位が導体よりも正側に上昇する。これに対して、上記のような絶縁パイプ22を設けておくと、絶縁パイプ22によって、プラズマ16中の荷電粒子がアンテナ本体24を構成する金属パイプ26に入射するのを抑制することができるので、金属パイプ26に荷電粒子(主として電子)が入射することによるプラズマ電位の上昇を抑制することができると共に、金属パイプ26が荷電粒子(主としてイオン)によってスパッタされてプラズマ16および基板10に対して金属汚染(メタルコンタミネーション)が生じるのを抑制することができる。
アンテナ本体24は、複数の金属パイプ26を、隣り合う金属パイプ26間に中空絶縁体28を介在させて直列接続した構造をしていて、各接続部は真空および冷却水44に対するシール機能を有している。このシール機能は、公知のシール手段で実現することができる。例えば、パッキンを用いても良いし、図4に示すような管用テーパねじ構造を用いても良い。これについては後述する。
この例では金属パイプ26の数は二つであり、従って中空絶縁体28(ひいてはその外周部に配置されたコンデンサ30)の数は一つであるが、金属パイプ26の数は三つ以上でも良く、いずれにしても中空絶縁体28(ひいてはその外周部に配置されたコンデンサ30)の数は金属パイプ26の数よりも一つ少ないものになる。
アンテナ本体24は、各中空絶縁体28の外周部に配置された層状のコンデンサ30を有していて、各中空絶縁体28の左右両側の金属パイプ26と当該コンデンサ30とを電気的に直列接続した構造をしている(図5の等価回路参照)。
各コンデンサ30は、主に図2を参照して、(a)中空絶縁体28の外周部に配置された電極であって、当該中空絶縁体28の一方側に接続された金属パイプ26に電気的に接続された第1の電極32と、(b)中空絶縁体28の外周部に、第1の電極32と重なるように配置された電極であって、当該中空絶縁体28の他方側に接続された金属パイプ26に電気的に接続された第2の電極34と、(c)第1の電極32および第2の電極34間に配置された誘電体36とを有している。電極32、34のリード部と金属パイプ26とは、例えば、半田付け等による接合、熱収縮チューブを用いての圧接等によって電気的に接続しても良い。
金属パイプ26の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金、ステンレス等であるが、これらに限られるものではない。
中空絶縁体28は、図2に示す例では絶縁パイプである。中空絶縁体28の材質は、例えば、アルミナ、フッ素樹脂、ポリエチレン(PE)、エンジニアリングプラスチック(例えばポリフェニンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など)等であるが、これらに限られるものではない。
電極32、34は、例えば金属の膜、箔、フィルム、シート等である。電極32、34の材質は、例えば、アルミニウム、銅、これらの合金等であるが、これらに限られるものではない。
各コンデンサ30は、第1の電極32、第2の電極34および誘電体36を、それぞれ1層ずつ有していても良いし(図2はこの場合の例を示す)、それぞれ複数層ずつ有していても良い。
第1の電極32、第2の電極34および誘電体36は、中空絶縁体28の外周部にそれぞれ個別に配置しても良いし、例えば図3に示す例のようなフィルム状(シート状とも言える。以下同様)の誘電体および電極を中空絶縁体28の外周部に巻き付けること等によって一括して配置しても良い。
図3の例は、フィルム状の誘電体36の一方の主面に第1の電極32を例えば金属蒸着等によって形成し、他方の主面(紙面の裏側)であって電極32と重なる位置に第2の電極34を例えば金属蒸着等によって形成し、両電極32、34の取り出し部に接続導体38、40をそれぞれ接続した構造をしている。
このようなフィルム状の誘電体および電極を、上記中空絶縁体28の外周部に所望回数(例えば1回または複数回)巻き付けて、接続導体38、40を左右の金属パイプ26にそれぞれ接続すれば良い。複数回巻き付ける場合は、間にもう1枚の誘電体フィルムを挟めば良い。複数回巻き付けることによって、簡単な方法で、第1の電極32、第2の電極34および誘電体36をそれぞれ複数層配置することができる。フィルム状の誘電体36の片面に電極(これは電極32または電極34に相当する)を設けたものを2枚重ねて中空絶縁体28の外周部に所望回数巻き付けても良い。電極32、34として、金属箔を用いても良い。コンデンサ30を構成する上記要素の固定・接続は、例えば、熱収縮チューブ等を用いて行っても良い。
各コンデンサ30の静電容量Cは、周知の次式で表すことができる。Sは対向している電極32、34の面積、dは両電極32、34間の距離、εは誘電体36の誘電率である。従って、これらS、d、εの内の一つ以上を変えることによって、静電容量Cを調整することができる。上述した電極32、34および誘電体36をそれぞれ複数層配置すると、上記面積Sが大きくなるので静電容量Cが大きくなる。
[数1]
C=ε・S/d
左右の金属パイプ26と中空絶縁体28との各接続部には、図4に示す例のような管用テーパねじ構造を用いても良い。即ちこの例では、左右の金属パイプ26の端部に、金属製で雌ねじのテーパねじ部42をそれぞれ接合しており、そこに、両端部に雄ねじのテーパねじ部29を有する中空絶縁体28をねじ込んでいる。この中空絶縁体28の材質は、前述した材質の内でもより硬いもの(例えばエンジニアリングプラスチック)が好ましい。各テーパねじ部42とテーパねじ部29との間には、シールテープを挟んでも良い。このような管用テーパねじ構造によっても、上記各接続部に真空および冷却水44に対するシール機能を持たせることができる。この中空絶縁体28の外周部に、前述したコンデンサ30を配置すれば良い。
再び図1を参照して、アンテナ20の両端部を真空容器2外へ貫通させる部分には、絶縁部46がそれぞれ設けられている。この各絶縁部46を、アンテナ本体24の両端部の金属パイプ26が貫通しており、その貫通部は例えばパッキン48によって真空シールされている。各絶縁部46と真空容器2との間も、例えばパッキン50によって真空シールされている。絶縁パイプ22は真空容器2内にあり、その両端部は絶縁部46によって支持されている。この例のように、真空領域から大気領域へのアンテナ20の取り出しは、金属パイプ26の部分で行う方が、加工が容易である。なお、絶縁パイプ22の両端部と絶縁部46間はシールしなくても良い。絶縁パイプ22内の空間23にガス8が入っても、当該空間23は小さくて電子の移動距離が短いので、通常は空間23にプラズマは発生しないからである。
アンテナ本体24の内部、即ち各金属パイプ26および各中空絶縁体28の内部に流す冷却水44は、電気絶縁の観点から、高抵抗の水が好ましい。例えば純水またはそれに近い水が好ましい。各金属パイプ26に高周波電流IR を流すと、各金属パイプ26は抵抗を有しているために発熱する(即ち、ジュール熱を発生する)。この熱は中空絶縁体28およびコンデンサ30にも伝わるけれども、これらの要素26、28、30は、上記冷却水44によって冷却して温度を下げることができる。コンデンサ30も、主として中空絶縁体28との間の熱伝導によって、冷却水44によって冷却することができる。
アンテナ20(より具体的にはそのアンテナ本体24)の一方端である給電端52には、整合回路58を介して高周波電源56が接続されており、他方端である終端54は、戻り導体62を経由して接地点60で接地されている。終端54はコンデンサを介さずに接地しても良いけれども、この例のように戻り導体62にコンデンサ64を直列接続しておく方が好ましい。その理由は後述する。上記構成によって、高周波電源56から、整合回路58を介して、アンテナ20(より具体的にはそのアンテナ本体24)に高周波電流IR を流すことができる。
高周波電源56から出力する高周波電力、高周波電流IR の周波数は、例えば、一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではない。
アンテナ20に高周波電流IR を流すことによって、アンテナ20の周囲に高周波磁界が発生し、それによって高周波電流IR と逆方向に誘導電界が発生する。この誘導電界によって、真空容器2内において、電子が加速されてアンテナ20の近傍のガス8を電離させてアンテナ20の近傍にプラズマ(即ち誘導結合型のプラズマ)16が発生する。このプラズマ16は基板10の近傍まで拡散し、このプラズマ16によって基板10に前述した処理を施すことができる。
上記アンテナ20は、真空容器2内に配置される内部アンテナであり、当該アンテナ20を流れる高周波電流IR によって作られる高周波磁場を近くからプラズマ16の生成に効果的に使うことができるので、外部アンテナに比べてプラズマ生成の効率が高い。
しかも、アンテナ20を構成するアンテナ本体24は、複数の金属パイプ26を、中空絶縁体28の外周部に配置された層状のコンデンサ30で電気的に直列接続した構造をしていて、アンテナ本体24の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナ20のインピーダンスを低減させることができる。
これを詳述すると、図1に示すアンテナ20(より具体的にはそのアンテナ本体24)の等価回路を図5(A)に示す。ここでは、各金属パイプ26のインダクタンスをL、抵抗をR、コンデンサ30の静電容量をCとしている。各金属パイプ26のインダクタンスLと抵抗Rは、各金属パイプ26を互いに実質的に同じ長さにすれば、実質的に同じ値にすることができる。このアンテナ20のインピーダンスZは次式で表すことができる。ωは高周波電流IR の角周波数、jは虚数単位である。
[数2]
Z=2R+j(2ωL−1/ωC)
上記式の虚数部がアンテナ本体24の合成リアクタンスであり、誘導性リアクタンス2ωLから容量性リアクタンス1/ωCを引いた形となっているので、コンデンサ30を直列接続することによって、アンテナ20のインピーダンスZを低減させることができる。換言すれば、このアンテナ20によれば、そのアンテナ本体24を構成する金属パイプ26およびコンデンサ30の個数等を適宜選定することができるので、それによって、アンテナ20の長さに関わらず、アンテナ20のインピーダンスZを適当な値に設計することができる。
その結果、基板10の大型化に対応する等のためにアンテナ20を長くする場合でもそのインピーダンスZの増大を抑えることができる。従って、当該アンテナ20の両端間に大きな電位差が発生するのを抑えることができる。それによって均一性の良いプラズマ16を発生させることが可能になる。ひいては、基板10の処理の均一性を高めることができる。
また、アンテナ20を長くする場合でもそのインピーダンスZの増大を抑えることができるので、アンテナ20に高周波電流IR が流れやすくなり、誘導結合型のプラズマ16を効率良く発生させることが可能になる。ひいては、基板10の処理の効率を高めることができる。
上記説明からも分るように、コンデンサ30の静電容量Cは、アンテナ本体24のインピーダンスの虚数部(例えば上記数2の虚数部)が、より厳密に言えばプラズマ16の生成時における当該虚数部が、できるだけ小さくなるように設定しておくのが好ましい。「プラズマ16の生成時」と言っているのは、プラズマ生成時に上記インダクタンスLが低下することが経験上分っており、この低下分を見込んで設計しておくのが好ましいからである。上記虚数部が0になるときが直列共振条件を満たしている場合であり、そのようにするのが一番好ましいけれども、必ずしも直列共振条件を満たしている必要はなく、上記虚数部が例えば±50Ω以下、好ましくは±10Ω以下になるようにしても良い。
図5(A)の回路において、アンテナ20に高周波電流IR を流したとき、上記直列共振条件を満たしている場合のアンテナ20の電位分布の一例を図5(B)中に実線Aで示す。この図5(B)では、説明の簡略化のために、抵抗Rを無視すると共に、アンテナ20の終端54の電位を基準に示している。傾斜部S1 は誘導性リアクタンスωLによる電位上昇分、傾斜部S2 は容量性リアクタンス1/ωCによる電位降下分である。
図5(B)中の二点鎖線Bは、アンテナが上記コンデンサ30に相当するものを有していない従来の単なる導体の場合の電位分布である。
この図5(B)から分るように、上記アンテナ20の場合は、その両端間の電位差を小さく抑えることができる。従って、均一性の良いプラズマ16を生成することができ、ひいては基板処理の均一性を高めることができる。
上述した直列共振条件を満たしていない場合は、例えば、図5(B)中の点bの電位が幾らか正側または負側にシフトし、それに応じて他の部分の電位もシフトすることになる。それでも、二点鎖線Bで示す従来の単なる導体の場合に比べれば、アンテナの両端間のの電位差を小さく抑えることができる。
上記アンテナ20を構成するアンテナ本体24は、中空絶縁体28の外周部に配置された層状のコンデンサ30を有しているので、金属パイプ26とその外側の絶縁パイプ22との間の距離をあまり増大させずに済み、かつ内部に流される冷却水44の流れに対する抵抗をあまり増大させずに済む。
これを詳述すると、仮に、上記コンデンサ30の代わりに、例えば上記特許文献3の図2等に記載のような電子部品(パーツ)としてのコンデンサ(即ち、それ自身で電子部品として完成していて、独立して電子部品として取り扱うことのできるコンデンサ)を中空絶縁体28の外側に取り付けるとすると、耐圧および静電容量を確保するために当該コンデンサは大型のものにならざるを得ないため、絶縁パイプ22をかなり太くしなければならなくなる。そのようにすると、(a)当該絶縁パイプ22の内側の金属パイプ26と外側のプラズマ16との間の距離が大きくなるので、プラズマ16の生成効率が低下する、(b)太くした絶縁パイプ22内で不要なプラズマが発生する可能性が高まる、等の不都合が生じる。上記コンデンサ30によれば、このような不都合発生を防止することができる。
また、仮に電子部品(パーツ)としてのコンデンサを中空絶縁体28の内側に取り付けるとすると、(a)当該コンデンサが冷却水44の流れを大きく阻害してアンテナの冷却が難しくなる、(b)これを改善するために金属パイプ26および中空絶縁体28をかなり太くすると、上記特許文献3の課題の所でも説明したように、金属パイプ26の面積が大きくなってその電位分布が基板表面の膜に転写されやすくなり膜厚分布が乱れる、等の不都合が生じる。上記コンデンサ30によれば、このような不都合発生をも防止することができる。
次に、アンテナ20の構造等の他の例を説明する。
前述したように、アンテナ20のアンテナ本体24を構成する金属パイプ26を三つ以上にし、その各金属パイプ26間に上記中空絶縁体28およびコンデンサ30をそれぞれ設けても良い。そのようにすると、アンテナ20の電位分布を、図5に示したものよりも小分けにして、アンテナ20の両端間の電位差をより小さくすることができる。
各コンデンサ30は、前述したように、第1の電極32、第2の電極34および誘電体36をそれぞれ複数層有していても良い。そのようにすると、各コンデンサ30の静電容量Cを大きくすることが容易になり、それによって、アンテナ本体24の前記合成リアクタンスをより小さくしてアンテナ20のインピーダンスZを低減させることがより容易になる。
アンテナ20を構成するアンテナ本体24は、図1等に示す例のように、絶縁パイプ22内に空間23を介して配置しておくのが好ましい。そのようにすると、当該空間23の存在によって絶縁パイプ22の表面の電位上昇を抑えることができ、それによってプラズマ電位の上昇を抑えることができる。
これを詳述すると、前述したように、高周波電流IR を流すことによってアンテナ本体24の電位は上昇する(例えば図5参照)。その場合、アンテナ本体24と絶縁パイプ22間に空間23が存在していると、アンテナ本体24と絶縁パイプ22の表面との間には、当該空間23に存在する小さな静電容量C3 と、絶縁パイプ22の厚さ内に存在する比較的大きな静電容量C4 とが直列接続された形になるので、この直列合成静電容量は小さい。従って、絶縁パイプ22の表面はアンテナ本体24の電位上昇の影響を受けにくくなるので、絶縁パイプ22の表面の電位上昇を抑えることができる。それによって、プラズマ16の電位上昇を抑えることができる。これに対して、上記空間23を介さずにアンテナ本体24(具体的にはその金属パイプ26)が絶縁パイプ22の内壁に接していると、上記直列の静電容量C3 が存在しなくなるので、絶縁パイプ22の表面はアンテナ本体24の電位上昇の影響を受けやすくなり、絶縁パイプ22の表面の電位上昇も大きくなる。それによって、プラズマ16の電位上昇も大きくなる。
図1に示す例のように、アンテナ回路の戻り導体62にコンデンサ64を直列接続しておいても良い。この戻り導体62にもインダクタンスおよび抵抗が存在する。コンデンサ64を設けておくと、その容量性リアクタンスによって、高周波電流IR の閉ループ全体のインピーダンスの虚数部を小さくして、当該インピーダンスを小さくすることができる。従って、アンテナ20に高周波電流IR を流しやすくなる。コンデンサ64の静電容量C2 は、例えば、その容量性リアクタンスが、戻り導体62に存在する誘導性リアクタンスを打ち消すことができる程度にすれば良い。
アンテナ20は、上述した直線状のものに限定されるものではなく、曲がっていても良い。その場合でも前述した作用効果を奏することができる。例えば、アンテナ20は、基板10の平面形状に沿うように曲がっていても良い。また、アンテナ20は、中間部で折り返した形状(例えば細長いU字状)等でも良い。
図1に示すプラズマ処理装置は、上記アンテナ20を備えていて、それによって先に詳述したように均一性の良いプラズマ16を効率良く発生させることができるので、基板処理の均一性および効率を高めることができる。
図6は、直線状のアンテナ20を複数有しているプラズマ処理装置の一例を示す概略横断面図である。図1等に示した例との相違点を主に説明すると、この例のように、真空容器2内に、直線状の前述したアンテナ20を複数、基板10の表面に沿う方向に(例えば基板10の表面と実質的に平行に)並列に配置しても良い。そのようにすると、より広い領域で均一性の良いプラズマを発生させることができ、従ってより大型の基板処理に対応することができる。
上記複数のアンテナ20には、例えば、共通の高周波電源および整合回路を用いて高周波電流を供給しても良い。その場合、共通の整合回路と各アンテナ20との間に、可変インピーダンスをそれぞれ介在させて、複数のアンテナ20に流れる高周波電流のバランスを良くするようにしても良い。また、上記複数のアンテナ20には、個別の高周波電源および整合回路を用いて高周波電流を供給するようにしても良い。
図1中のコンデンサ64に相当するコンデンサを設ける場合は、当該コンデンサを、各アンテナ20の戻り導体(図1中の戻り導体62に相当)にそれぞれ直列接続すれば良い。
2 真空容器
8 ガス
10 基板
16 プラズマ
20 アンテナ
22 絶縁パイプ
23 空間
24 アンテナ本体
26 金属パイプ
28 中空絶縁体
30 コンデンサ
32 第1の電極
34 第2の電極
36 誘電体
44 冷却水
56 高周波電源
58 整合回路

Claims (5)

  1. 真空容器内に配置され、かつ高周波電流が流されて、当該真空容器内に誘導結合型のプラズマを発生させるためのアンテナであって、
    絶縁パイプと、その中に配置されていて内部に冷却水が流される中空のアンテナ本体とを備えており、
    前記アンテナ本体は、(a)複数の金属パイプを、隣り合う金属パイプ間に中空絶縁体を介在させて直列接続した構造をしていて、各接続部は真空および前記冷却水に対するシール機能を有しており、(b)かつ前記各中空絶縁体の外周部に配置された層状のコンデンサを有していて、各中空絶縁体の両側の前記金属パイプと当該コンデンサとを電気的に直列接続した構造をしており、
    前記各中空絶縁体および前記各コンデンサは、前記真空容器内に配置されるものであり、
    前記各コンデンサは、(a)前記中空絶縁体の外周部に配置された電極であって、当該中空絶縁体の一方側に接続された前記金属パイプに電気的に接続された第1の電極と、(b)前記中空絶縁体の外周部に、前記第1の電極と重なるように配置された電極であって、当該中空絶縁体の他方側に接続された前記金属パイプに電気的に接続された第2の電極と、(c)前記第1の電極および第2の電極間に配置された誘電体とを有している、ことを特徴とするアンテナ。
  2. 前記各コンデンサは、前記第1の電極、第2の電極および誘電体をそれぞれ複数層有している請求項1記載のアンテナ。
  3. 前記アンテナ本体は、前記絶縁パイプ内に空間を介して配置されている請求項1または2記載のアンテナ。
  4. 真空排気されかつガスが導入される真空容器と、
    前記真空容器内に配置された請求項1、2または3記載のアンテナと、
    前記アンテナに高周波電流を流す高周波電源とを備えていて、
    前記アンテナによって発生させたプラズマを用いて基板に処理を施すように構成されているプラズマ処理装置。
  5. 前記アンテナは直線状のアンテナであり、当該アンテナを複数、前記基板の表面に沿う方向に並列に配置している請求項4記載のプラズマ処理装置。
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