JP5733197B2 - 塗膜付き自動車用窓ガラスおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
一方、塗布液の塗布方法として前記方法(2)を採用して製造された塗膜付き自動車用窓ガラスは、窓ガラスを昇降させて繰り返し開閉する際に、ドア上部のガラス収納部と塗膜が擦れることで、塗膜に傷が付いて外観が悪くなる。
[1]自動車の開閉可能な窓ガラスの少なくとも一方の面に塗膜が形成されており、該塗膜は該窓ガラスの上端から所定の領域および該窓ガラスの下端から所定の領域を除いた領域に存在し、前記窓ガラスの上端から所定の領域の幅は、前記窓ガラスが閉じられた場合に、前記窓ガラスがドアの上部フレームのガラス収納部内に収納される領域の幅以上であり、前記塗膜の上端側の端部の膜厚が1μm以上である塗膜付き自動車用窓ガラス。
[2]前記塗膜の上端側の膜厚が下端側の膜厚よりも厚い[1]に記載の塗膜付き自動車用窓ガラス。
[3]前記塗膜が紫外線カット膜および赤外線カット膜の少なくとも一方である[1]または[2]に記載の塗膜付き自動車用窓ガラス。
[4]前記塗膜の膜厚が10μm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の塗膜付き自動車用窓ガラス。
[5]自動車の開閉可能な窓ガラスをその下端を上にして立てた状態で保持し、前記窓ガラスの上端側の所定の領域への塗布液の塗布を妨げながら、前記窓ガラスの少なくとも一方の面に、前記窓ガラスの下端側の所定の領域が非塗布領域となるように、該非塗布領域の上端側の境界線に沿って、塗布液を射出するノズルを相対移動させて塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布した塗布液を乾燥して、前記窓ガラスに、上端側の端部の膜厚が1μm以上である塗膜を形成する乾燥工程と、
を有し、前記窓ガラスの上端から所定の領域の幅は、前記窓ガラスが閉じられた場合に、前記窓ガラスがドアの上部フレームのガラス収納部内に収納される領域の幅以上である塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
[6]前記塗膜として紫外線カット膜および赤外線カット膜の少なくとも一方を形成する、[5]に記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
[7]前記窓ガラスの上端から所定の領域の境界線に沿って廂状のガイド部材を設置し、前記窓ガラス上を流れる塗布液が前記ガイド部材をつたって流れ落ちるようにして、前記窓ガラスの上端から所定の領域への塗布液の塗布を妨げる[5]または[6]に記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
[8]前記窓ガラスの上端から所定の領域に撥水塗膜を設けて、該領域への塗布液の塗布を妨げる[5]または[6]に記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
[9]前記塗膜の膜厚が10μm以下である、[5]〜[8]のいずれかに記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
また、本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法によれば、ドア内部で窓ガラスを支持する樹脂製のガラスホルダーに高い接着強度で接着固定でき、しかも繰り返し開閉しても窓ガラスに設けた塗膜に傷が形成され難い塗膜付き自動車用窓ガラスが得られる。
本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスは、自動車の開閉可能な窓ガラスの少なくとも一方の面に塗膜が形成されており、該塗膜が、該窓ガラスの上端から所定の領域および該窓ガラスの下端から所定の領域を除いた領域に存在している自動車用窓ガラスである。
図1および図2は、本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスの一例である、窓ガラスの一方の面に塗膜が形成されている塗膜付き自動車用窓ガラス1(以下、「塗膜付き窓ガラス1」と記し、他の例も同様に記す。)を示した図である。
なお、本明細書における側面図では、説明の便宜上、塗膜の厚みを強調して示している。
なお、本発明において、塗膜が領域Aおよび領域Bを除く領域に存在するとは、後述する手段によって塗布液の塗布を妨げても不可避的に形成される塗膜を除いて、領域Aおよび領域Bに塗膜が実質的に形成されずに、領域Aおよび領域Bを除く領域に塗膜が形成されていることを意味する。
窓ガラス10の形状は、図1に示すように、一方の側端18(以下、単に「側端18」という。)が他方の側端20(以下、単に「側端20」という。)よりも長く、上端14が曲線状になっている形状である。また、窓ガラス10の側端18と、塗膜付き窓ガラス1をドアに取り付けたときの水平方向xとがなす角度αは90°よりも大きくなっており、側端20と前記水平方向xとがなす角度βが90°よりも小さくなっている。さらに、窓ガラス10は、図2に示すように、自動車に組み付けられたときに内側となる面10a(以下、「内面10a」という。)が凹状、外側となる面10b(以下、「外面10b」という。)が凸状となるように湾曲している。窓ガラス10は、側端20側を前、側端18側を後ろにして、内面10aが車内側、外面10bが車外側となるように自動車の前部のドアに取り付けられる。
窓ガラス10は、下端16側が、ドアの内部で窓ガラスを保持する樹脂製のガラスホルダーに接着固定されることでドアに組み付けられる。また、窓を閉じた状態では、窓ガラス10の上端14側の一部はドアの上部フレームのガラス収納部に収納され、窓ガラス10の下端16側におけるドアのベルトラインより下側の領域はドア内部に収納されたままになっている。
窓ガラス10における上端14から所定の領域Aには、塗膜12が形成されていない。これにより、ドアに組み付けた塗膜付き窓ガラス1を繰り返し開閉しても、塗膜12に傷が形成されて外観が悪くなることを抑制できる。
前記幅aは、自動車のドアにおいて塗膜付き窓ガラス1が閉じられた場合に、窓ガラス10におけるドアの上部フレームのガラス収納部内に収納される領域の幅(以下、「ガラス収納幅」という。)以上であることが好ましい。
前記幅aがガラス収納幅以上であれば、窓を繰り返し開閉しても、窓ガラス10の領域Aはドアの上部フレームのガラス収納部に完全には収納されなくなる。そのため、塗膜12の上端は前記ガラス収納部に擦れることがなく、窓を繰り返し開閉しても塗膜12に傷が付いて外観が悪くなることを抑制できる。また、塗膜12による機能が充分に得られやすい点から、前記幅aはガラス収納幅にできるだけ近いことが好ましい。
なお、塗膜12がドアの上部フレームのガラス収納部に擦れて傷付くのを抑制するという機能を損なわない範囲内であれば、前記幅aはガラス収納幅以下であってもよい。この場合、塗膜12の上端が傷つくことを抑制しやすいことから、前記幅aはガラス収納幅にできるだけ近いことが好ましい。
なお、領域Bは、塗膜12による効果を損なわない範囲であれば、領域Cと領域Dを合わせた領域よりも大きくてもよい。この場合、塗膜12による効果が充分に得られやすいことから、領域Bの大きさは、領域Cと領域Dを合わせた領域の大きさに近いことが好ましい。
塗膜12としては、紫外線カット膜もしくは赤外線カット膜が好ましい。
前記効果が得られやすくなることから、塗膜12の上端14側の端部の膜厚は、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。また、境界線の段差が大きいと昇降時に剥離および傷がそこから入り易くなることから、塗膜12の上端14側の端部の膜厚は、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。
なお、塗膜12の膜厚は、全体的に均一であってもよく、下端16側の膜厚が上端14側の膜厚よりも厚くなっていてもよい。
本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスは、図3に示すように、窓ガラス10の内面10aに塗膜12が形成され、外面10bに塗膜22が形成された塗膜付き窓ガラス2であってもよい。塗膜付き窓ガラス2において塗膜付き窓ガラス1と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
窓ガラス10の外面10bに形成する塗膜22も、塗膜12と同様に、窓ガラス10における上端14から所定の領域Aと、下端16側の所定の領域Bを除く領域に存在する。これにより、窓ガラス10の外面10bに形成した塗膜22が開閉の繰り返しによって傷付くことを抑制でき、さらに窓ガラス10をドア内部のガラスホルダーに高い接着強度で接着固定できる。
塗膜22としては、塗膜付き窓ガラス1で挙げた塗膜12と同じものが挙げられ、なかでも、撥水膜、親水膜、防曇膜、防汚膜が好ましい。
塗膜24、26としては、塗膜付き窓ガラス1で挙げた塗膜12と同じものが挙げられる。撥水膜は、紫外線カット膜や赤外線カット膜に比べて硬く傷が付き難い。そのため、窓ガラス10の外面10bに紫外線カット膜や赤外線カット膜と撥水膜を積層する場合は、塗膜24を紫外線カット膜または赤外線カット膜とし、塗膜26を撥水膜とすることが好ましい。
塗膜28、30としては、塗膜付き窓ガラス1で挙げた塗膜12と同じものが挙げられる。撥水膜は、紫外線カット膜や赤外線カット膜を形成する際の硬化温度における耐熱性が不充分であるので、窓ガラス10の内面10aに紫外線カット膜や赤外線カット膜と撥水膜を積層する場合は、塗膜28を紫外線カット膜または赤外線カット膜とし、塗膜30を撥水膜とすることが好ましい。
また、図7に示すように、窓ガラス10の内面10aに塗膜12が形成され、外面10bに塗膜24と塗膜26が積層され、それら塗膜12、塗膜24および塗膜26がそれぞれ領域Aおよび領域Bを除く領域に存在する塗膜付き窓ガラス6であってもよい。塗膜付き窓ガラス6において塗膜付き窓ガラス1、3と同じ部分は同じ符号を付して説明を省略する。
本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法は、前述した本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスを製造する方法である。以下、本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法の一例として、塗膜付き窓ガラス1の製造方法について説明する。塗膜付き窓ガラス1の製造方法は、下記塗布工程および乾燥工程を有する。
塗布工程:図8および図9に示すように、窓ガラス10を下端16を上にして立てた状態で保持し、窓ガラス10の領域Aへの塗布液の塗布を妨げながら、窓ガラス10の内面10aに、窓ガラス10の領域Bが非塗布領域となるように、該非塗布領域の上端14側の境界線Lに沿って、塗布液を射出するノズル50を相対移動させて、塗布液を塗布する。
乾燥工程:前記塗布工程で塗布した塗布液を乾燥して、図1および図2に示すように窓ガラス10の内面10aに塗膜12を形成する。
塗布工程においては、窓ガラス10をその下端16を上にして立てた状態で保持する。そして、図9に示すように、窓ガラス10の内面10aにおける上端14から所定の幅aの領域Aにマスキング部材52を設けた状態で、前記非塗布領域(領域B)における上端14側の境界線Lに沿ってノズル50を相対移動させながら塗布液を供給し、境界線Lの上端14側の領域にフローコート法により塗布液を塗布する。
境界線Lは、窓ガラス10をドアに組み付けて、窓を閉じたときにドアのベルトラインに一致することが好ましい。
マスキング部材52としては、3M製スコッチブランドテープ、ダイヤテックス製パイオランテープ、積水化学製ポリエチレンポリエチレンテープ等が挙げられる。
方法(X):内面10aに対し、側端18、境界線L、側端20に順に沿うようにノズル50を相対移動させて塗布液を塗布する方法。
方法(Y):内面10aに対し、側端20、境界線L、側端18に順に沿うようにノズル50を相対移動させて塗布液を塗布する方法。
方法(X)では、図9に示すように、窓ガラス10とノズル50を下記工程(X−1)〜工程(X−3)の順で相対移動させながら塗布液を吐出する。
(X−1)内面10aの側端18に沿って、境界線Lまでノズル50を上方向に相対移動させる第1工程。
(X−2)内面10aの境界線Lに沿って、側端18から側端20までノズル50を相対移動させる第2工程。
(X−3)内面10aの側端20に沿って、境界線Lから下方向にノズル50を相対移動させる第3工程。
方法(X)における窓ガラス10とノズル50の相対移動は、窓ガラス10の位置を固定してノズル50を移動させてもよく、ノズル50の位置を固定して窓ガラス10を移動させてもよく、窓ガラス10とノズル50を互いに移動させてもよい。なかでも、塗布液の液割れ、塗布液の反対側のガラス面への回り込みを抑制しやすいことから、窓ガラス10の位置を固定してノズル50を移動させることが好ましい。
内面10aに供給された塗布液は、自重によって内面10aを上端14に向かって流れていく。工程(X−1)を行わず、工程(X−2)のみで窓ガラス10の内面10aに塗布液54を塗布しようとすると、側端18は上端14側が末広がりとなっているため、塗りもれが生じやすい。また、工程(X−3)を行わず、工程(X−2)のみで窓ガラス10の内面10aに塗布液54を塗布しようとすると、側端20側は上端14に行くに従ってインカーブしているので、外面10bに塗布液の回り込みが生じやすくなる。
これに対し、工程(X−1)を行うことで、側端18側に塗りもれが生じることを容易に抑制できる。また、工程(X−3)を行うことで、側端20に沿って塗布液54が塗布された部分が、側端20の上部側(下端16側)に供給された塗布液54が流れる際、塗布液54の流れをガイドする道筋として作用することで、塗布液54が側端20に沿って流れ、窓ガラス10の外面10bに塗布液が回り込むことが抑制されやすい。
加えて、工程(X−2)によって供給された塗布液54の上端14への流れは、予め工程(X−1)で塗布された塗布液54に沿って流れやすいので、よりスムーズになる。そのため、塗布液54の流れが枝分かれすることによる液割れが抑制される。
前記窓ガラス10の水平面に対する傾斜角θとは、窓ガラス10における凸状の外面10bの中央部分に接触する平面と、水平面とがなす角度を意味する。
窓ガラス10の内面10aに対するノズル50の角度φとは、ノズル50の先端が位置する点で内面10aに接する平面と、ノズル50とがなす角度を意味する。
工程(X−1)と工程(X−3)における窓ガラス10とノズル50の相対移動のベクトルは、垂直方向が主成分であって、水平方向の成分は小さい。一方、工程(X−2)における窓ガラス10とノズル50の相対移動のベクトルは水平方向が主成分である。液割れは水平方向の相対移動速度が大きい程発生しやすいので、工程(X−1)におけるノズル50の相対移動速度v1と、工程(X−2)におけるノズル50の相対移動速度v2と、工程(X−3)におけるノズル50の相対移動速度v3との関係は、相対移動速度v1、v3が相対移動速度v2よりも速いことが好ましい。
前記ノズル50の相対移動速度v1、v2、v3は、各々一定の速度であっても、途中で変化してもよいが、相対移動速度v2は側端18側が側端20側よりも遅いことが好ましい。なぜなら、ノズル50から内面10aに供給された塗布液54は、上端14に向かって流れる距離が長いほど、揮発成分の揮発によって固形分濃度が上昇するので上端14近傍の流速が低下する。窓ガラス10は、側端20から側端18にいくにしたがって高さが高くなっているため、内面10aの側端18側の方が塗布液54の流れる距離が長い。そのため、工程(X−2)におけるノズル50の相対移動速度v2は、ノズル50が側端18に近いほど遅いことが好ましい。これにより、高さの高い側端18側においても、塗布液54が上端14に向かって流れやすくなり、塗布液54の流速の低下による液割れが生じ難くなる。
方法(Y)は、図12に示すように、窓ガラス10とノズル50を下記工程(Y−1)〜工程(Y−3)の順で相対移動させながら塗布液を吐出する方法である。
(Y−1)内面10aの側端20に沿って、境界線Lまでノズル50を上方向に相対移動させる第1工程。
(Y−2)内面10aの境界線Lに沿って側端20から側端18までノズル50を相対移動させる第2工程。
(Y−3)内面10aの側端18に沿って境界線Lから下方向にノズル50を相対移動させる第3工程。
方法(Y)における窓ガラス10とノズル50の相対移動は、方法(X)と同様に、窓ガラス10の位置を固定してノズル50を移動させてもよく、ノズル50の位置を固定して窓ガラス10を移動させてもよく、窓ガラス10とノズル50を互いに移動させてもよい。なかでも、塗布液の液割れ、塗布液の反対側のガラス面への回り込みを抑制しやすい点から、窓ガラス10の位置を固定してノズル50を移動させることが好ましい。
方法(Y)は、窓ガラス10とノズル50の相対移動を開始する位置と終了する位置、すなわち塗布液の塗布を開始する位置と終了する位置が反対である以外は、方法(X)と同じ方法である。方法(Y)によれば、方法(X)と同じ理由で、塗布液の塗りもれ、塗布液の液割れ、および外面10bへの塗布液の回り込みを容易に抑制できる。
側端20近傍と側端18近傍は、工程(Y−1)と工程(Y−3)における窓ガラス10とノズル50の相対移動のベクトルは垂直方向が主成分であり、一方、工程(Y−2)における窓ガラス10とノズル50の相対移動のベクトルは水平方向が主成分である。液割れは水平方向の相対移動速度が大きい程発生しやすいので、工程(Y−1)におけるノズル50の相対移動速度v4と、工程(Y−2)におけるノズル50の相対移動速度v5と、工程(Y−3)におけるノズル50の相対移動速度v6との関係は、相対移動速度v4、v6が相対移動速度v5よりも速いことが好ましい。
また、工程(Y−1)〜(Y−3)におけるノズル50の相対移動速度v4、v5、v6は、各々一定の速度であっても、途中で変化させてもよいが、相対移動速度v5は側端18に近いほど遅いことが好ましい。これにより、高さの高い側端18側においても塗布液の液割れが生じ難くなる。ノズル50の相対移動速度v4と、相対移動速度v6は境界線Lに近いほど遅いことが好ましい。
窓ガラス10の内面10aに塗布された塗布液54は、有機溶剤等の揮発成分が空気中に揮発し、固形分濃度が上昇して濃縮されながら流れるので、図11に示すように、内面10aの上端14側ほど塗布液54の厚みが厚くなる傾向がある。この塗布液54の厚みの変化は、塗布液54が流れる距離が長いほど顕著であるため、側端20の長さに比べて側端18の長さが長い窓ガラス10では、側端18側の方が側端20側よりも上端14側の塗布液54の厚みが厚くなりやすい。一方、塗布液54を塗布してから窓ガラス10が立てられた状態で維持される時間(塗り置き時間)が長いほど、窓ガラス10の上端14側から塗布液54が流れ落ちていくため、内面10aの上端14側の塗布液54の厚みが薄くなる傾向がある。
方法(X)では、長さがより長い側端18側に先に塗布液を塗布するので、側端18側に塗布された塗布液54は側端20側に塗布された塗布液54よりも塗り置き時間が長くなり、上端14側から流れ落ちる量が多くなる。そのため、方法(X)によれば、内面10aの側端18側は、側端20側に比べて塗布液が流れる距離が長いために塗布液の厚みが厚くなりやすい一方で、側端20側に比べて塗り置き時間が長くなって上端14側から流れ落ちる塗布液量が多くなるので、塗布液の厚みの増加が小さくなる。そのため、側端18側と側端20側の上端14側の厚みのバランスを取りやすい。
また、ノズル50から、同じ吐出量で塗布液を吐出する場合、前記複合ノズル、スリットノズル等のように吐出される塗布液の幅が広い方が、幅の狭い単一のノズルに比べて、吐出する塗布液の線速度が遅くなるため、特に側端18側と側端20側において塗布液が勢い余って外面10bに回り込んでしまうことを抑制しやすい。
本発明の製造方法における乾燥工程では、塗布液に含まれている有機溶剤等の揮発成分を蒸発させて除去して乾燥する。乾燥工程は、特に限定されず、公知の乾燥工程を採用できる。本発明における乾燥工程としては、例えば、塗布液が塗布された窓ガラス10を一定時間置くことで、内面10aに塗布した塗布液を仮乾燥する仮乾燥工程と、塗布液が塗布された窓ガラス10を加熱して塗布液を完全に乾燥させる本乾燥工程を有する工程が挙げられる。
塗布液が塗布された窓ガラス10を加熱する方法としては、特に限定されず、例えば、塗布液が塗布された窓ガラス10をコンベア上に載せ、加熱炉内に送ることで加熱する方法が挙げられる。本乾燥工程で内面を下向きにしてコンベア上に載せる場合、塗膜が窓ガラスの上端の端部まで存在すると、上端の端部に位置する塗膜が加熱された加熱炉のコンベアに接触し、塗膜が白化するという外観上の問題が生じる。一方、本発明の製造方法によれば、塗膜12が窓ガラス10の上端14の端部まで存在しないため、このような外観上の問題は生じない。
また、形成する塗膜を、塗膜中の成分を硬化させて硬化塗膜とする場合等は、必要に応じて乾燥工程後に硬化工程等の他の工程を行ってもよい。
本発明の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法の塗布工程において、領域Aへの塗布液の塗布を妨げる手段は、前記したマスキング部材52を設ける手段には限定されない。
マスキング部材を設ける手段以外の領域Aへの塗布液の塗布を妨げる手段としては、例えば、図13に示すように、領域Aの境界線に沿って廂状のガイド部材56を設置し、窓ガラス10の内面10a上を流れる塗布液54がガイド部材56をつたって流れ落ちるようにすることで、窓ガラス10の領域Aへの塗布液の塗布を妨げる手段が挙げられる。
ガイド部材56の材質としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
撥水塗膜の形成に使用する材料としては、例えば、含フッ素シリコン撥水剤が挙げられる。前記材料を、上端に沿ってスキージーであらかじめ塗付することで、窓ガラス10の内面10aにおける領域Aに撥水塗膜を形成して塗布液の塗布を妨げることができる。
滑水処理に使用する材料としては、例えば、ポリシロキサン剤が挙げられる。前記材料を使用して、上端に沿ってスキージーであらかじめ塗付することで、窓ガラス10の内面10aにおける領域Aへの塗布液の塗布を妨げることができる。
また、窓ガラス10の内面10aと外面10bの両方に塗膜を形成する場合は、それぞれの面に逐次塗膜を形成してもよく、同時に形成してもよい。
撥水膜は、紫外線カット膜や赤外線カット膜を形成する際の加熱(180〜200℃程度)によって劣化するおそれがある。そのため、例えば窓ガラス10の外面10bに撥水膜、内面10aに紫外線カット膜や赤外線カット膜を形成する場合は、内面10aに紫外線カット膜や赤外線カット膜を形成した後に、外面10bに撥水膜を形成することが好ましい。また、窓ガラス10の一方の面に、撥水膜と紫外線カット膜や赤外線カット膜を積層する場合は、紫外線カット膜や赤外線カット膜を形成した後に、撥水膜を積層することが好ましい。
10 窓ガラス
12 塗膜
14 上端
16 下端
18、20 側端
50 ノズル
52 マスキング部材
54 塗布液
56 ガイド部材
Claims (9)
- 自動車の開閉可能な窓ガラスの少なくとも一方の面に塗膜が形成されており、該塗膜は該窓ガラスの上端から所定の領域および該窓ガラスの下端から所定の領域を除いた領域に存在し、前記窓ガラスの上端から所定の領域の幅は、前記窓ガラスが閉じられた場合に、前記窓ガラスがドアの上部フレームのガラス収納部内に収納される領域の幅以上であり、前記塗膜の上端側の端部の膜厚が1μm以上である塗膜付き自動車用窓ガラス。
- 前記塗膜の上端側の膜厚が下端側の膜厚よりも厚い請求項1に記載の塗膜付き自動車用窓ガラス。
- 前記塗膜が紫外線カット膜および赤外線カット膜の少なくとも一方である請求項1または2に記載の塗膜付き自動車用窓ガラス。
- 前記塗膜の膜厚が10μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗膜付き自動車用窓ガラス。
- 自動車の開閉可能な窓ガラスをその下端を上にして立てた状態で保持し、前記窓ガラスの上端側の所定の領域への塗布液の塗布を妨げながら、前記窓ガラスの少なくとも一方の面に、前記窓ガラスの下端側の所定の領域が非塗布領域となるように、該非塗布領域の上端側の境界線に沿って、塗布液を射出するノズルを相対移動させて塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で塗布した塗布液を乾燥して、前記窓ガラスに、上端側の端部の膜厚が1μm以上である塗膜を形成する乾燥工程と、
を有し、前記窓ガラスの上端から所定の領域の幅は、前記窓ガラスが閉じられた場合に、前記窓ガラスがドアの上部フレームのガラス収納部内に収納される領域の幅以上である塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。 - 前記塗膜として紫外線カット膜および赤外線カット膜の少なくとも一方を形成する、請求項5に記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
- 前記窓ガラスの上端から所定の領域の境界線に沿って廂状のガイド部材を設置し、前記窓ガラス上を流れる塗布液が前記ガイド部材をつたって流れ落ちるようにして、前記窓ガラスの上端から所定の領域への塗布液の塗布を妨げる請求項5または6に記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
- 前記窓ガラスの上端から所定の領域に撥水塗膜を設けて、該領域への塗布液の塗布を妨げる請求項5または6に記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
- 前記塗膜の膜厚が10μm以下である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の塗膜付き自動車用窓ガラスの製造方法。
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