JP5732872B2 - 異形金属リングの製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属リングを製造する方法に関する。
この種異形金属リングの代表的なものとして、従来、可変ノズルベーン付きターボチャージャに用いられている、ノズルベーン回動用のユニゾンリングが知られている。
例えば下記特許文献1,特許文献2,特許文献3にこのユニゾンリングを含むノズルベーン装置が開示されている。
ターボチャージャでは、エンジンの排気によりタービンホイールを回転させることで、共通のシャフトにて一体に繋がったコンプレッサホイールを回転させ、そしてコンプレッサホイールの回転により空気を圧縮して、エンジンに吸入空気として供給する。
可変ノズルベーンは、タービンハウジングにおける上記タービンホイールへの排気の供給口に配置され、羽根の向きを変えることでタービンホイールに向けての排気の流路面積を変化させ、エンジンの回転数に応じてタービンホイールへの排気の供給量を調節する。
ユニゾンリングは、駆動アームによる駆動にて回転させられ、上記のノズルベーンを共に回動、即ち開閉動作させるリング部材である。
図14はその具体例を示している。
図に示すユニゾンリング10の場合、外周形状が、周方向に沿って凸形状部12と凹形状部14とを複数有する凹凸形状をなしている。
また内周形状が、周方向に沿って凸形状部12の内側に位置する凹形状部16を有する凹凸形状をなしている。
内周側には、更に、周方向所定個所において径方向内方に突出する凸形状部18が設けられており、そしてこの凸形状部18と同一の周方向位置において、外周側には凹形状部14とは異なった形状の凹形状部20が設けられている。
ここで内周側の凹形状部16は、ノズルベーンにおける各羽根との係合用の部分であり、また凸形状部18は、駆動アームとの連結用の部分である。
駆動アームにてユニゾンリング10が中心周りに回転すると、凹形状部16にてこれと係合状態にあるノズルベーンの各羽根が軸周りに回転し、排気流路の開度を増減変化させる。
このユニゾンリング10は、例えば外径がφ133mm程度,内径がφ108mm程度,厚みtが9mm程度のもので、従来にあっては、これを次にようにして製造していた。
即ち、図15に示しているように先ずシート状の金属板材200に対してプレス打抜加工を施し、外周形状が所望形状をなす中間リング品10Aとなし、次に内周面に対し切削加工(内径加工)を施して凹形状部16を形成してユニゾンリング10となしていた。
但し厳密にはその後において熱処理等を施して最終製品とする。
しかしながらこの製造方法の場合、プレス打抜加工の際、材料の多くの部分が打抜屑となって、打抜歩留りが18%と低く、またこれに続く内径加工の加工歩留りも69%程度で、全体の歩留りが12%程度と低く、このためユニゾンリングの製造コストが高くなる問題が生じていた。
この製造方法ではまた、ユニゾンリング10の1つ1つをプレス打抜加工にて得ることとなるため、製造の工数も多く、このこともまたユニゾンリングの製造コストを高める要因となっていた。
以上ユニゾンリングを代表例として説明したが、同様の問題は歯車その他の異形金属リング、即ち外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属リングを製造するに際して同様に生じる問題である。
そこでこのような金属板材のプレス打抜加工によらないで、金属の棒材から得た押出用素材に押出加工を施し、外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属パイプを得た後、その異形金属パイプを軸直角方向の切断面で所定幅に切断することによって、上記異形金属リングを得るようになすことが考えられる。
このようにすれば、上記の金属板材のプレス打抜加工による製造方法に比べて歩留りを大幅に高めることができ、また所要工数も少なくし得て、異形金属リング製造のためのコストを大きく削減することが可能となる。
ところでこの押出加工では、ダイスの内面に、全周に亘り径方向内方に突出する、異形金属パイプの外周面の凸形状部を成形する凹型部と、凸形状部と凸形状部との間の凹形状部を成形する凸型部とを備えた絞り部としてのランド部を設けて、上記素材をそのランド部を軸方向に通過させることで異形金属パイプを成形する方法を用いることができる。
その際、ランド部における材料の流れの上流側である上面を、径方向内方に進むにつれて流れの下流側である下方へと移行する形状のテーパ面となしておくことが好適である。
ところが本発明者らがこの方法を具体的に検討したところ、次のような問題の生じることが判明した。
図16は、本発明者がこの方法の実施に際して検討したダイスのランド部とその周辺部を示している。
同図において、22はダイス24に設けた絞り部としてのランド部で、全周に亘りダイス24の内面から径方向内方に突出している。
このランド部22の上面は、その外周端から径方向内方に向うにつれて下方即ち材料流れの下流側へと漸次移行する形状のテーパ面26をなしている。
このランド部22には、異形金属パイプ(つまりは異形金属リング)の外周形状における凸形状部を成形するための凹型部28、及び凸形状部と凸形状部との間の凹形状部を成形するための凸型部30が周方向に複数且つ交互に備えられている。
ところが本発明者がこのようなランド部22を設けたダイス24とポンチとを用いて押出用素材を押出加工したところ、図16(B)に示すように凹型部28内に材料が十分に充填されずに、そこに隙間Kが生じてしまい、その隙間Kの部分が欠肉部分となってしまう問題を生じることが判明した。
従って、このようなランド部22を持つダイス24とポンチを用いて押出加工をすると、目的とする外周形状即ち凹凸形状が良好に形成されず、従ってこのままでは上記の押出加工によって目的とする異形金属パイプ、つまりは目的とする異形金属リングを得ることができない。
特開2002−47941号公報 特開2005−207373号公報 実開平3−92502号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、押出加工を用いてユニゾンリングその他の異形金属リングを良好に且つ安価に製造することのできる、異形金属リングの製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属リングを製造する方法であって、金属の棒材から得た押出用素材に、2段階の押出加工を施し、第1段目では後方押出加工を行い、内周面が径方向内方に突出する凸形状部を有する円筒状の金属パイプを得、しかる後第2段目の前方押出加工を施し、外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属パイプを得た後、該異形金属パイプを軸直角方向の切断面で所定幅に切断することによって前記異形金属リングを得るようになし、前記前方押出加工では、ダイスの内面に、全周に亘り径方向内方に突出する、前記異形金属パイプの外周面の凸形状部を成形する凹型部と、該凸形状部と凸形状部との間の凹形状部を成形する凸型部とを備えたランド部を設けて、前記素材をポンチの押込みにより該ランド部を軸方向に通過させて成形するようになし、前記ランド部における材料の流れの上流側である上面を、径方向内方に進むにつれて流れの下流側である下方へと移行する形状のテーパ面となすとともに、該テーパ面には、前記ランド部の外周端から前記凹型部の上端に到る溝を付加してあることを特徴とする。


請求項2のものは、請求項1において、前記溝を付加することによって、前記凹型部の上端を、前記凸型部の上端と同じ軸方向の高さ位置に位置させてあることを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記溝の周方向の溝幅が前記外周端で最も広く、内周端に向うにつれて溝幅が漸次狭小化するものとなしてあることを特徴とする。
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記異形金属リングが、可変ノズルベーン付きターボチャージャにおけるノズルベーン回動用のユニゾンリングであることを特徴とする。
発明の作用・効果
以上のように本発明は、ランド部における材料の流れの上流側である上面を、径方向内方に進むにつれて流れの下流側である下方へと移行する形状のテーパ面となすとともに、そのテーパ面には、ランド部の外周端からランド部における凹型部の上端に到る溝を付加し、そしてそのようなランド部を有するダイスとポンチを用いて押出加工を施すことで、異形金属パイプを、更には異形金属リングを得るようになしたものである。
本発明では、ランド部の外周端から、異形金属パイプの欠肉を生じ易い凸形状部を成形する、ランド部の凹型部に到るまで溝がランド部の上面即ちテーパ面に設けてあるため、材料が凸型部の上端に到る前に、予め溝の内部に導入され、更にその溝に案内されて凹型部へと到らしめられる。
またテーパ面に凹型部に到る溝を設けることで、凹型部の上端位置が低くなる。
そしてそれらによって、後に具体的に説明するように凸形状部での欠肉の発生を防ぐことが可能となり、外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属パイプを、ひいては異形金属リングを良好に成形できるようになる。
本発明に従えば、従来のように金属板材のプレス打抜加工によらないで、押出加工を用いて異形金属リングを製造することが可能となる。
そして押出加工を用いて異形金属リングを製造できるようになることで、異形金属リングの生産性を高め、歩留り率を従来に比べ大幅に高め得て、また製造コストを安価となすことができる。
本発明では、上記溝を付加することにより、凹型部の上端を凸型部の上端と同じ軸方向の高さに位置させておくことが望ましい(請求項2)。
このようにすることで、凹型部による凸形状部(異形金属パイプの凸形状部で厚肉部となる部分)の成形開始と、凸型部による凹形状部(異形金属パイプの薄肉部となる部分)の成形開始とを時間差なく同時に合せることができ、凸型部による凹形状部の成形の開始が、凹型部による凸形状部の成形の開始よりも遅れることによって、凹型部の内部に隙間が生成すること、即ち欠肉が生じるのをより有効に防ぐことができ、従って異形金属パイプの凹凸形状をより高精度で良好に形成することが可能となる。
本発明においてはまた、溝の周方向の溝幅を、外周端で最も広く、内周端に向うにつれて溝幅が漸次狭小化するものとなしておくことができる(請求項3)。
このようにした場合、材料を凹型部に向けて、より効果的に誘導し案内することができる。
本発明は、異形金属リングが可変ノズルベーン付きのターボチャージャにおけるノズルベーン回動用のユニゾンリングである場合に適用して特に好適である(請求項4)。
本発明の適用対象のユニゾンリングの一例を示した図である。 本発明の製造方法にて用いられる異形金属パイプの図である。 図2の異形金属パイプの横断面を拡大して示した図である。 図1のユニゾンリングを製造する本実施形態の製造方法の各工程を示した図である。 同実施形態における後方押出加工で使用する型の構成説明図である。 同実施形態における後方押出加工の作用説明図である。 同実施形態における後方押出加工にて得られる成形品の図である。 同実施形態における前方押出加工で使用する型の構成説明図である。 同実施形態における前方押出加工の作用説明図である。 図8の型の要部を示した図である。 同実施形態における前方押出加工の利点の説明図である。 図2の成形品のフランジ部を除去した成形品の図である。 同実施形態の製造方法により得られた異形金属パイプの実測形状を設計形状と比較して示した図である。 従来のユニゾンリングの一例を示した図である。 従来のユニゾンリングの製造方法を示した図である。 図15とは異なる比較例の製造方法における問題点を説明するための図である。
次に本発明の実施形態を図面に基づいて以下に詳しく説明する。
図1はユニゾンリング10を表しており、図示のようにこのユニゾンリング10は、円形リング体の外周面と内周面とに、周方向に沿って凹凸を付けた形態の異形リング形状をなしている。
詳しくは、このユニゾンリング10は外周形状が、略台形状の凸形状部12を24°ごとの一定間隔で複数(ここでは15個)有するとともに、それら凸形状部12と12との間に略逆台形状の凹形状部14を有する形状をなしており、また内周形状が、凸形状部12の位置においてU字状の凹形状部16を複数(ここでは15個)有する形状をなしている。
但し外周面の図1(A)中上端の位置には、略逆台形状の凹形状部14とは形状の異なった、U字状の凹形状部20が設けられている。
また内周面の図1(A)中上端の位置には、凹形状部20の位置において下向きに即ち径方向内方に突出する、凸形状部18が設けられている。
ここで凸形状部18は略U字状をなしている。
本実施形態においてこのユニゾンリング10は、図2及び図3に示す異形金属パイプ32を軸直角方向に切断した後、内径加工(及び凹形状部20Aの加工を含む外径加工)を施すことによって得られる。
尚異形金属パイプ32は、軸方向一端に径方向外向きに張り出したフランジ部34を有しているが、実際には異形金属パイプ32に対しフランジ部34を除去する加工を行った後に切断し、その後内径側の凹形状部16の加工と内周面全体の切削仕上げ加工を含む内径加工、及び外周面全体の切削仕上げ加工を含む外径加工を行うことでユニゾンリング10が得られる。
この異形金属パイプ32の横断面形状の寸法、詳しくは凸形状部12から12までの寸法a=φ133mm、凹形状部14から14までの寸法b=φ122mm,内形c=108.1mmである。
また中心Oから凸形状部18までの寸法d=47.9mmであり、中心Oから凹形状部20までの寸法e=61.7mmである。
本実施形態において、ユニゾンリング10は次のようにしてこれを製造する。
先ず、図4に示しているように金属(ここではオーステナイトステンレス鋼であるJIS SUS310S)の断面円形の長尺材36に対して切断具38により軸直角方向に切断加工を行い、所定サイズの中実の丸棒40を、第1段目の前工程の後方押出加工の押出用素材として用意する。
ここでは丸棒40のサイズは外径φ160mm×高さ125mmLである。
以上のようにして丸棒40を得たら、次に押出加工を行う。
ここでは押出加工として先ず後方押出加工を行い、しかる後前方押出加工を行う。
図5,図6は、後方押出加工の方法を具体的に示している。
図5において、42はポンチ,46はダイスで、58は押出成形された成形品50(図7参照)を突き出すエジェクタである。
尚成形品50は、次の2段目の前方押出加工の押出用素材となる。
ポンチ42には、図1の凸形状部18を成形するための、凸形状部18に対応した凹型部44が備えられている。
更にダイス46には、成形品50に対して図7(A)の凸形状部56を成形するための凹型部60が備えられている。
この後方押出加工では、図6(A)に示しているようにポンチ42を図中上方に後退させた状態で、ダイス46の内部に上記の丸棒40をセットし、続いてポンチ42を図中下方に押し込んで丸棒40を押圧する。
するとポンチ42にて押圧された丸棒40は、図6(B)に示しているように塑性変形を起して、ポンチ42の外周面とダイス46の内周面とに接触しながら、それらポンチ42とダイス46との間の環状空間48内を上向きに(後方に)這い上がり、底部52付きの円筒カップ状の成形品50に成形される。
以上のようにして成形品50を成形したら、ダイス46内の成形品50をエジェクタ58によって突き上げ、ダイス46から離脱させる。
ここにおいて図4及び図7の底部52付きの円筒カップ状の成形品50が得られる。
図7は、このようにして得られた有底の円筒カップ状の成形品50の具体的形状を表している。
図において52は底部を、54は円筒状の周壁部を表している。
また18は、周壁部54の内周側に形成された凸形状部を示しており、更に56は、凸形状部18と同じ周方向位置において、周壁部54の外周側に形成された凸形状部を表している。
尚この後方押出加工によって得た成形品50は、例えば外径がφ160mm×内径φ108mmで、高さが215mmLの寸法である。
尚、底部52の厚みは10mmである。
以上の後方押出加工は、例えば次のような条件の下で行う。
即ち、丸棒40の炉出し温度を1177〜1233℃とし、押出加工(鍛造)前の温度を1087〜1112℃とし、押出加工後の温度を936〜1025℃の温度とし、また鍛圧を約950tとして鍛造即ち後方押出加工を行う。
以上のような後方押出加工を終えたら、次に2段目の後工程の押出加工として前方押出加工を行う。
図8及び図9はその具体的な内容を示している。
これらの図において、62はポンチで、図1の凸形状部18に対応した凹型部44が備えられている。
64はダイスで、後述のランド部68よりも上側の内面66には、図7の凸形状部56に対応した形状の凹型部60が備えられている。
ランド部68は、押出用素材としての成形品50を軸方向に通過させる際に、これを径方向内方に絞って、成形品(前方押出加工後の成形品である図2及び図4の異形金属パイプ32)の外周面に凹凸形状を付与し成形する部分で、全体的にダイス64の内面66から径方向内方に全周に亘り突出せしめられている。
その内周側の部分には、図10及び図11に示すように、図1のユニゾンリング10における凸形状部12(厳密には図3の異形金属パイプ32における対応する凸形状部12)を成形するための、対応した形状の凹型部28と、凸形状部12と12との間の凹形状部14を成形するための(厳密には図3の異形金属パイプ32における凹形状部14を成形するための)、対応した形状の凸型部30とを周方向に交互に備え、更に図1における凹形状部20に対応した凸型部(図示省略)を備えている。
このランド部68は、その上面詳しくは材料の流れの上流側の面がテーパ面26とされている。
この2段目の後工程の押出加工である前方押出加工では、図8に示しているように、ポンチ62をダイス64から図中上向きに後退させた状態の下で、ダイス64の内部に、1段目の後方押出加工にて成形したカップ状の成形品50を、図9(A)に示すようにセットし、その状態でポンチ62を図中下方に押し込んで行く。
するとダイス64内にセットされていたカップ状の成形品48が、ポンチ62とともに図中下向きに押し出され、そしてランド部68を通過することで、そこで成形品50がポンチ62とランド部68との間でしごかれ、図2に示す横断面形状のフランジ部34付きの異形金属パイプ32が得られる(図4参照)。
尚、フランジ部34については、この後の工程の外削加工によって除去せしめられ、ここにおいて図2及び図4の異形金属パイプ32が図12及び図4に示す異形金属パイプ32となる。
この実施形態において、2段目の前方押出加工の条件は、例えば押出加工(鍛造)前温度を896〜1008℃とし、押出加工後の温度を832〜905℃とし、鍛圧を約1400tとして行うことができる。
この実施形態では、図10(A)に示しているようにランド部68の上面のテーパ面26には、ランド部68の外周端から上記の凹型部28の上端28aに到る溝67が付加してあり、図10(B)に示しているようにこの溝67の付加によって、凹型部28の上端28aの位置が、凸型部30の上端30aと同じ軸方向の高さに位置させてある。
また溝67は、その溝幅が外周端で最も拡く、内周端に向うにつれて溝幅が漸次狭小化するものとなしてある。
ここで溝67の溝幅Wは、互いに隣接する溝67と67との間の部分が、ランド部68の外周端から同じ幅で凸型部30の上端(内周端)30aに到るように寸法が定められている。
本実施形態では、ランド部68の形状を上記形状となした結果、図11に示すように凹型部28の内部に材料が十分に充填されて、そこに隙間Kが生成せず、図2の凸形状部12に欠肉を生ぜしめることなく良好に異形金属パイプ32、従ってユニゾンリング10を成形できることを確認した。
その理由は以下の通りである。
ランド部22を、図16に示す形状となした場合、凹型部28の上端28aと、凸型部30の上端30aとの軸方向位置、即ち高さ位置が異なっているため、材料をランド部22に対して通過させる過程で、先ず凹型部28の上端28aにて凸形状部12の外形部分の形状を規定したとしても、そのすぐ後に、凸型部30における上端30aにより、凹形状部14の外形部分が成形され且つ形状規定されることとなる。
その際に、一旦は凹型部28の上端28aにて成形開始され、形状規定された凸形状部12の外形部分が、径方向内方に引張られてしまい(凹形状部14の外形部分を凸型部30の上端30aにて形状規定する際に、材料が径方向内方に押されるため)、そのことが凹型部28の内部に材料が十分に充填されず、特に外形部分において隙間Kを生じ、これが欠肉を生ぜしめる原因となっていた。
しかるに本実施形態では、ランド部68における上面つまりテーパ面26に、ランド部68の外周端から凹型部28に到るまで溝67が付加されているために、材料が凸型部30の上端30aに到る前に、予め溝67の内部に導入され、更にその溝67により溝幅方向に拘束されつつ凹型部28に向けて案内され、凹型部28へと到らしめられる。
加えてこの実施形態では、凸形状部12の外形部分の形状を規定する凹型部28の上端28aと、凹形状部14の外形部分の形状をを規定する凸型部30の上端30aとが、同じ高さ位置にあるために、凸形状部12の外形部分の形状規定と、凹形状部14の外形部分の形状規定とが同時に行われ、凸形状部12の外形部分の形状規定に対して、凹形状部14の外形部分の形状規定が遅れることによって,凹型部28の内部で材料の充填不良が生じるのを良好に防止することができる。
これにより,本実施形態によれば凸形状部12,凹形状部14を含む,図2の異形金属パイプ32の外周形状を予め設定した形状に良好に成形することができる。
因みに図13は、本実施形態に従って製造した異形金属パイプ32の横断面の形状を、3次元測定器にて測定した結果を、設計形状と比較して示したものである。
図中Aが実測した形状の線を、またBが設計形状の線をそれぞれ示している。
ここでは実測形状の方が、設計形状よりも僅かに大きな形状をなしているが、これは同一の前方押出成形型を用いて30回の試作を行った上での結果であるため、その間に金型が摩耗してランド部の内形が僅かに拡大し、またポンチ62の形状が狭小化したことによるものである。
但し実測した形状と、設計した形状との差は極めて僅かであり、その差は寸法公差の範囲内である。
因みに表1に、図3における寸法a,b,c,d,eの寸法公差と、実測した寸法の最大値と最小値を示している。
Figure 0005732872
以上のようにして前方押出加工により図2及び図3に示す異形金属パイプ32を成形したら、上記のようにフランジ部34を外削して除去し、図12に示す形状の異形金属パイプ32となした後、これを軸直角方向に所定幅(9mm)で切断して、図4に示す中間リング品10Aを得、更にその後前述したように内径加工及び外径加工を行うことによって、最終的な製品としてのユニゾンリング10を得ることができる。
本実施形態に従ってユニゾンリング10を成形した場合、長尺材から図12の異形金属パイプ32までの製造歩留りは約76%、その後の中間リング品10Aからユニゾンリング10までの加工歩留りが59%で、トータルの歩留りは45%であり、従来の製造方法に比べて大幅に歩留りを高くでき、これに伴って製造コストを大幅に低減することができることを確認した。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は上記のユニゾンリング以外の他の様々な異形金属リングを製造するに際して適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
10 ユニゾンリング
12 凸形状部
14 凹形状部
26 テーパ面
28 凹型部
30 凸型部
28a,30a 上端
32 異形金属パイプ
40 丸棒
46,64 ダイス
67 溝
68 ランド部

Claims (4)

  1. 外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属リングを製造する方法であって、
    金属の棒材から得た押出用素材に、2段階の押出加工を施し、第1段目では後方押出加工を行い、内周面が径方向内方に突出する凸形状部を有する円筒状の金属パイプを得、しかる後第2段目の前方押出加工を施し、外周形状が周方向に凹凸形状をなす異形金属パイプを得た後、該異形金属パイプを軸直角方向の切断面で所定幅に切断することによって前記異形金属リングを得るようになし、
    前記前方押出加工では、ダイスの内面に、全周に亘り径方向内方に突出する、前記異形金属パイプの外周面の凸形状部を成形する凹型部と、該凸形状部と凸形状部との間の凹形状部を成形する凸型部とを備えたランド部を設けて、前記素材をポンチの押込みにより該ランド部を軸方向に通過させて成形するようになし、
    前記ランド部における材料の流れの上流側である上面を、径方向内方に進むにつれて流れの下流側である下方へと移行する形状のテーパ面となすとともに、
    該テーパ面には、前記ランド部の外周端から前記凹型部の上端に到る溝を付加してあることを特徴とする異形金属リングの製造方法。
  2. 請求項1において、前記溝を付加することによって、前記凹型部の上端を、前記凸型部の上端と同じ軸方向の高さに位置させてあることを特徴とする異形金属リングの製造方法。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、前記溝の周方向の溝幅が前記外周端で最も広く、内周端に向うにつれて溝幅が漸次狭小化するものとなしてあることを特徴とする異形金属リングの製造方法。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記異形金属リングが、可変ノズルベーン付きターボチャージャにおけるノズルベーン回動用のユニゾンリングであることを特徴とする異形金属リングの製造方法。
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