JP3560176B2 - 歯形付きリング状品の冷間成形金型 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、歯車や、回転検出用パルサーリング、リング状スプライン等の歯形を有するリング状品の冷間成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、この種のリング状品は、切削加工により歯形を形成している。しかし、切削加工では加工時間が長く、また材料歩留りが悪いために、加工費が高くなってしまう。そのため塑性加工が望まれる。
このため、図5に示すしごき加工で歯形を成形することを考えた。すなわち、予めカップ状に絞り成形した素材W′を、ダイス51内にポンチ52で押し込むことにより、ダイス51の歯形の成形面53で素材W′の外径面に歯形部Tを加工する方法である。リング状品とする場合は、素材W′の端板部Wdを切り落とす。
この提案例の加工方法によると、切削加工に比べて生産性は良いが、成形時にダイス51の歯形成形面53の上端と、ポンチ52の先端間で、素材W′の周壁部Weに大きな引っ張り応力fが作用し、素材Wの周壁部Weが軸方向に延びる。そのため、成形された歯形部Tの歯先面にテーパ状のひけが生じ、正確な歯先形状が得られないという問題点があった。また、歯高を高く成形することが難しかった。
【0003】
このような問題点を解消するものとして、本出願人は、図6に示すようにリング状素材Wを用い、リング状素材Wの幅面を段付き軸状のポンチ62の段面62aで押してダイス61に通す方法を提案した(例えば、特願平5−240657号、特願平5−329894号)。この方法によれば歯高を高く形成でき、かつ歯高のテーパが緩和できた。
【0004】
しかし、ダイス61はポンチ導入部61aと歯部加工部61bとが一体になっており、加工時に素材Wから内圧を受けてダイス61の内径が広がるため、ポンチ導入部61aでダイス内面とポンチ62との間に隙間が生じる。そのためポンチ62がダイス61に対して偏心し、僅かではあるが、リング状品W0に偏肉が生じるおそれがある。このため、リング状品W0の肉厚を高精度に均一化することが難しかった。
【0005】
この発明の目的は、偏肉が防止でき、また歯高を高く、かつ歯高のテーパも少なく成形できる歯形付きリング状品の冷間成形金型を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の金型は、リング状素材の外径面に歯形を塑性加工して歯形付きリング状品とする金型であって、歯部加工ダイスとポンチ導入ダイスとに分割したことを特徴とする。歯部加工ダイスは内径面が歯形の凹凸面に形成され、ポンチは、段付き軸状に形成されて小径部がリング状素材に内嵌しかつ段面でリング状素材の幅面を押す。ポンチ導入ダイスは、歯部加工ダイスの入口側に重ねて配置され、内径孔に前記ポンチの大径部を嵌入させる。
この構成において、前記歯部加工ダイスおよび導入ダイスをリング状とし、これら歯部加工ダイスおよびポンチ導入ダイスの外周に各々嵌合する導入部補強リングおよび加工部補強リングを設ける。
この場合に、前記歯部加工ダイスおよびポンチ導入ダイスの外径面を、互いに連続する下広がりのテーパ面とし、前記導入部補強リングおよび加工部補強リングの内径面を前記各ダイスに各々嵌合するテーパ面に形成する。
【0007】
【作用】
この構成の金型によると、ポンチ導入ダイスに挿入されたリング状素材は、幅面がポンチの段面で押されて歯部加工ダイス内に押し込まれ、歯部加工ダイスの凹凸面で歯形が形成される。このとき、リング状素材には歯部加工ダイスの凹凸面とポンチの段面との間で軸方向の圧縮荷重が作用する。一方、歯部加工ダイスとポンチの小径部間の径方向隙間は一定に保たれる。そのため、成形された歯形部の各歯は、歯高を十分に高くすることができ、また歯高にテーパが生じることが緩和される。
この成形時の加圧により、歯部加工ダイスは内圧を受けて広がるが、歯部加工ダイスが広がってもポンチ導入ダイスは広がらない。そのため、ポンチが偏心することがなく、成形された歯形付きリング状品に偏肉が起きない。
【0008】
歯部加工ダイスおよびポンチ導入ダイスの外周に各々補強リングを設けた場合は、これら補強リングで各ダイスの広がりが防止され、リング状品の偏肉が一層生じ難くなる。この場合に、導入部補強リングと加工部補強リングとに分けてあり、加工部補強リングの広がりが導入部補強リングに伝わらないので、さらに偏肉防止が確実となる。また、歯部加工ダイスの広がり防止によって歯形の成形が安定する。
歯部加工ダイスおよびポンチ導入ダイスの外径面をテーパ面として前記各補強リングを嵌合させた場合は、これら補強リングを軸方向に押し込むことで、これら補強リングの嵌合が隙間なく行われる。これによっても、各ダイスの広がり防止効果が向上し、偏肉防止が確実になると共に、歯形の成形がより安定する。
【0009】
【実施例】
この発明の一実施例を図1ないし図4に基づいて説明する。この実施例の金型は、図1(B)に示すように外径面に歯形部Tを有するリング状品W0を、円筒素材の輪切り品状のリング状素材Wから塑性加工するものである。リング状素材Wの材質は、軟鋼材、あるいはステンレス材等である。この成形金型は、リング状のダイス1と、ポンチ2と、補強リング6とで構成される。ダイス1はダイホルダ3上に設置され、ポンチ2はダイス1に対して駆動装置で昇降させられる。ポンチ2は、大径部となる円筒状の外ポンチ2bから、小径部となるマンドレル2aを突出させた段付き軸状としてあり、外ポンチ2bの下端面がリング状素材Wの幅面を加圧する段面2cとなる。
【0010】
ダイス1は、互いに上下に重ねたポンチ導入ダイス1Aと歯部加工ダイス1Bとに分割され、さらに外径矯正ダイス1Cが最下段に重ねられている。これら3つのダイス1A〜1Cで前記ダイス1が構成される。ポンチ導入ダイス1Aは、内径孔が外ポンチ2bが嵌合する円筒面に形成されている。
補強リング6は、ポンチ導入ダイス1Aの外周に嵌合した導入部補強リング6Aと、歯部加工ダイス1Bおよび外径矯正ダイス1Cに渡って外周に嵌合した加工部補強リング6Bとからなる。各ダイス1A〜Cの外径面は、互いに連続する下広がりのテーパ面に形成され、各補強リング6の内径面も、各ダイス1A〜Cのテーパ状の外径面に嵌合するテーパ面に形成されている。補強リング6の外径面は円筒面である。加工部補強リング6Bの上面の外周縁にはリング状の係合突条7が一体に形成され、この係合突条7は、導入部補強リング6Aの下面外周縁に形成された環状凹部8に嵌合している。
【0011】
歯部加工ダイス1Bは、内径面を歯形の凹凸面20に形成したものであり、この凹凸面20は、リング状品W0の歯形部Tの各歯間の谷部形状に対応する歯成形突部4(図3(A))と、隣合う歯成形突部4,4間に位置する歯先整形突部5とで形成される。歯成形突部4は円周方向に一定ピッチで設け、横断面形状は台形状としてある。歯成形突部4の縦断面形状は、図3(B)に拡大して示すように、歯部加工ダイス1Bの上端の円筒面部分から次第に突出する半径R1の円弧状に形成され、下部4bが軸方向に平行に延びる直線に形成されている。歯成形突部4の突出高さh1は、歯成形突部4の先端面がリング状品W0の歯底径に略一致する高さとする。
歯先整形突部5は、歯成形突部4の軸方向の中間部から歯成形突部4よりも下方に延びて設けられている。歯先整形突部5の縦断面形状は、突部先端面の上部5aが、内径面1aから次第に突出する半径R2の円弧状に形成され、下部5bが軸方向に平行に延びる直線に形成されている。歯先整形突部5の歯成形突部4よりも下方に突出した部分は、ダイス1の全周に続く円筒面状に形成しても良く、また隣合う歯成形突部4,4間の幅で延びたものとしても良い。歯先整形突部5の突出高さは、歯成形突部4との高さの差h2が、リング状品W0の歯高に略一致する高さになるように設定する。
【0012】
外径矯正ダイス1Cは、内径面が歯部加工ダイス1Bの歯先整形突部5よりも僅かに小径の円筒面に形成され、内径面の上縁は断面が直線または円弧状曲線となる絞り面23に形成してある。外径矯正ダイス1Bの内径面と歯先整形突部5の先端との半径方向位置の差h4は、例えば直径に換算して0.05mm程度に設定してある。
なお、歯部加工ダイス1Aの歯先整形突部5は必ずしも設けなくても良い。設けない場合は、歯の凹凸面20の歯先成形面部分は、歯部加工ダイス1Bの上端と同じ径の円筒面となり、その円筒面から前記の差h4だけ外径矯正ダイス1Bの内径面が小径に設定される。
【0013】
つぎに成形方法を説明する。この方法では、ダイス1内にリング状素材Wを順次押し込み、ダイス1内に加工途中の素材Wを数個残留させつつ、押し出し加工を行う。すなわち、ダイス1内にリング状素材Wを1個入れ、リング状素材Wの1個の厚さ分に相当する高さだけポンチ2で押し込む。これにより、先に入れられた加工途中の素材Wをダイス1内に残留させつつ、完成品である歯付きリング状品W0がダイス1の下に1個排出される。
【0014】
このように押し出しを行うことにより、素材Wの外径部は歯成形突部4でしごかれて歯形形状となる。この場合に、図4(A)に示すように、加工初期では素材Wの外径面Waはテーパ状にひける傾向にあるが、そのひけた外径面Waは、歯先整形突部5で絞られて所定径に整えられる。そのため、正確な形状の歯形形状が得られる。また、この成形方法では、成形中の素材Wには軸方向の圧縮荷重が作用するため、図4(A)に示した外径面Waのひけの程度は、図5の提案例に比べて小さくなる。そのため、歯先整形突部5を設けることと相まって、歯形部Tの歯高を高くすることが容易である。
しかも、歯部加工ダイス1Aで成形された歯形付きリング状品W0(図2)は、外径矯正ダイス1Aを通過するときに、周方向各部の歯高のばらつきが矯正され、また前記テーパ状のひけがさらに矯正され、歯先面となる外径面の円筒度が高精度に得られる。
【0015】
前記の成形過程において、歯部加工ダイス1Bは内圧を受けて広がるが、ポンチ導入ダイス1Aは歯部加工ダイス1Bと分離されているため、歯部加工ダイス1Bが広がってもポンチ導入ダイス1Aは広がらない。そのため、ポンチ2が偏心することがなく、成形された歯形付きリング状品W0に偏肉が起きない。また、各ダイス1A〜1Cの外周に各々補強リング6A,6Bが設けられているため、各ダイス1A〜1Cの広がりが防止され、リング状品W0の偏肉が一層生じ難くなる。この場合に、補強リング6A,6Bもポンチ導入ダイス1Aと歯部加工ダイス1Bとの間で分けてあるため、加工部補強リング6Bの広がりが導入部補強リング6Aに伝わらず、さらに偏肉防止が確実となる。また、歯部加工ダイス1Bの広がり防止によって歯形の成形が安定する。
【0016】
各補強リング6A,6Bは互いにテーパ面で各ダイス1A〜1Cに嵌合しているため、これら補強リング6A,6Bを軸方向に押し込むことで、補強リング6A,6Bの嵌合が隙間なく行われる。これによっても、各ダイス1A〜1Cの広がり防止効果が向上し、偏肉防止が確実になると共に、歯形の成形がより安定する。また、上下の補強リング6A,6Bは互いに環状突部7と環状凹部8で嵌合するため、環状突部7によってもポンチ導入ダイス1Aの広がり防止作用が得られる。
このように塑性加工で正確な歯形や円筒度,均一肉厚を有するリング状品W0を得ることができる。そのため、加工時間が短縮され、材料歩留りが向上し、加工費の低減につながる。
【0017】
なお、前記各実施例では数個の素材Wを成形金型内に残しておいて、順次先に入れられたものを排出するようにしたが、素材Wを1個ずつ成形金型内に入れて加工完了させ、その後に次の1個の素材Wを入れて加工するようにしてもよい。その場合、ポンチ2,12は先端部が歯成形突部4に干渉しない形状とする。
【0018】
【発明の効果】
この発明の歯形付きリング状品の冷間成形金型は、歯部加工ダイスとポンチ導入ダイスとに分割したため、歯部加工ダイスが内圧を受けて広がってもポンチ導入ダイスは広がらず、そのためリング状品の偏肉が防止される。また、段付き軸状のポンチでリング状素材の幅面を押さえて歯部加工ダイスに押し込むので、リング状素材に軸方向の圧縮荷重が作用し、そのため歯高が高く、かつ歯高のテーパの少ない歯形形成が行える。
また、各ダイスの外周に補強リングを各々設けたので、各ダイスの広がりが防止され、また加工部補強リングの広がりが導入部補強リングに伝わらず、偏肉防止が一層確実になると共に、歯形の形成が安定する。
さらに、各ダイスと補強リングの嵌合面をテーパ面としたので、補強リングが隙間なくダイスに嵌合し、さらに確実に偏肉防止と歯形成形の安定化が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例にかかる成形金型の部分断面図およびリング状品の部分平面図である。
【図2】同成形金型の図1と異なる動作状態を示す部分断面図である。
【図3】(A)はその成形金型の部分拡大平面図、(B)は同部分拡大断面図である。
【図4】成形過程の作用説明図である。
【図5】歯形付きリング状品の冷間成形方法の提案例を示す断面図である。
【図6】歯形付きリング状品の冷間成形方法の他の提案例を示す断面図である。
【符号の説明】
1…ダイス、1A…ポンチ導入ダイス、1B…歯部加工ダイス、1C…外径矯正ダイス、2…ポンチ、2a…マンドレル(小径部)、2b…外ポンチ(大径部)、2c…段面、4…歯成形突部、5…歯先整形突部、6…補強リング、6A…導入部補強リング、6B…加工部補強リング、20…歯形の凹凸面、W…リング状素材、W0…歯形付きリング状品、T…歯形部
Claims (1)
- リング状素材の外径面に歯形を塑性加工して歯形付きリング状品とする成形金型であって、内径面が歯形の凹凸面に形成された歯部加工ダイスと、段付き軸状に形成されて小径部がリング状素材に内嵌しかつ段面でリング状素材の幅面を押すポンチと、前記歯部加工ダイスの入口側に重ねて配置されて内径孔に前記ポンチの大径部を導入するポンチ導入ダイスとを備え、前記歯部加工ダイスおよびポンチ導入ダイスをリング状とし、これら歯部加工ダイスおよびポンチ導入ダイスの外周に各々嵌合する導入部補強リングおよび加工部補強リングを設け、前記歯部加工ダイスおよびポンチ導入ダイスの外径面を、互いに連続する下広がりのテーパ面とし、前記導入部補強リングおよび加工部補強リングの内径面を前記各ダイスに各々嵌合するテーパ面に形成した歯形付きリング状品の冷間成形金型。
Priority Applications (1)
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JP14228094A JP3560176B2 (ja) | 1994-05-31 | 1994-05-31 | 歯形付きリング状品の冷間成形金型 |
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Publications (2)
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JPH07323348A JPH07323348A (ja) | 1995-12-12 |
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JP14228094A Expired - Lifetime JP3560176B2 (ja) | 1994-05-31 | 1994-05-31 | 歯形付きリング状品の冷間成形金型 |
Country Status (1)
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US7131311B1 (en) | 2005-11-10 | 2006-11-07 | Honda Motor Co. Ltd. | Method of and apparatus for forming forging blank |
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-
1994
- 1994-05-31 JP JP14228094A patent/JP3560176B2/ja not_active Expired - Lifetime
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