JP5732288B2 - 自立基板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、昇華法を用いた自立基板の製造方法、及び、これにより製造されたAlN自立基板、並びに、これを用いたIII族窒化物半導体デバイスに関する。
近年、低温バッファ層技術によりサファイア基板上のIII族窒化物半導体の結晶品質が著しく改善し、窒化物の導電性の制御技術と相俟って、青色のような可視短波長領域の光デバイスが実現された。現在、III族窒化物半導体は、紫外領域の光デバイスの材料として期待されている。
紫外発光素子の高性能化にはAlN単結晶基板の作製技術の確立が非常に重要である。AlN基板作製技術には昇華法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、フラックス法、融液成長法等が報告されている。このうち昇華法は、原料を昇華させ、結晶化させる方法で、装置が簡便であり量産性が高いという特長を有している。昇華法でAlN単結晶基板を作製する場合、自然核発生による方法と、異種基板上に作製する方法の2種類がある。
自然核発生による方法では、高品質のAlNを作製することができるが、大口径とすることは難しい。これに対し、異種基板上に作製する方法であれば、大口径に対応することができる反面、異種基板と成長材料の熱膨張係数等が異なるために、成長材料中にクラックが生じたり、結晶性が悪くなるという問題がある。
特開2009−256192号公報
このように、種結晶基板を用いる昇華法で自立基板を作製すると、自立基板の結晶中に欠陥が生じてしまう。そして、欠陥が生じている自立基板を用いたデバイスでは、高性能化を期待することはできない。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、種結晶基板を用いた昇華法であっても、品質の良い結晶を得ることのできる自立基板の製造方法、この製造方法により製造されたAlN自立基板、及び、このAlN自立基板を用いたIII族窒化物半導体デバイスを提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明では、種結晶基板の表面上に、昇華法により成長材料を成長させる材料成長工程と、前記成長材料の成長時に、前記種結晶基板を昇華させる種結晶昇華工程と、を含む自立基板の製造方法を提供する。
本発明によれば、成長材料の成長時に種結晶基板が除去されるので、種結晶基板と成長材料との間における熱膨張係数の違いに起因して、成長材料中に欠陥が生じることは殆どない。
また、成長材料の原料も種結晶基板も昇華させるため、昇華のための1つの製造装置で、2つの材料の昇華に対応することができる。
上記自立基板の製造方法において、前記成長材料の原料と前記種結晶基板との間に、前記成長材料の成長温度よりも融点が高く前記原料及び前記種結晶基板とともに密閉空間を形成するスペーサを介在させた状態で、当該密閉空間にて前記成長材料を成長させてもよい。
これによれば、種結晶基板の近傍の密閉空間にて原料の昇華及び成長が行われるため、成長速度を向上させるとともに、原料の使用効率を飛躍的に高めることができる。
上記自立基板の製造方法において、前記スペーサと前記原料、並びに、前記スペーサと前記種結晶基板を、少なくとも成長温度で凝固する接着剤で接着した状態で、前記密閉空間にて前記成長材料を成長させてもよい。
これによれば、加熱前にスペーサと原料及び種結晶基板との間に接着剤を充填しておき、加熱後の成長温度にて凝固しているので、各材料間の気密性を高めることができる。
上記自立基板の製造方法において、前記成長材料はIII族窒化物半導体であり、前記種結晶基板は六方晶系単結晶であってもよい。
上記自立基板の製造方法において、前記成長材料はAlNであり、前記種結晶基板はSiCであってもよい。
上記自立基板の製造方法において、前記種結晶基板は、前記材料成長工程にて前記成長材料が成長する成長面を含む第1層と、前記種結晶昇華工程にて昇華する第2層と、を含んでよい。
上記自立基板の製造方法において、前記成長材料はAlNであり、前記種結晶基板の前記第1層はAlNであり、前記種結晶基板の前記第2層サファイア、Si又はSiCであってもよい。
また、本発明は、上記の製造方法で製造されたAlN自立基板を提供する。
さらに、本発明は、上記AlN自立基板と、前記AlN自立基板上に成長され、発光層を含むIII族窒化物半導体層と、を備えるIII族窒化物半導体デバイスを提供する。
本発明によれば、種結晶基板を昇華させて除去するようにしたので、成長材料中に欠陥が生じることは殆どない。従って、種結晶基板を用いた昇華法の利点を活かしつつ、品質の良い結晶を得ることができる。
図1は、本発明の一実施形態を示す自立基板の製造装置の模式断面図である。 図2は、AlN焼結体、SiC基板及びリングの配置状態を示す模式斜視図である。 図3Aは、SiC基板上にAlNが成長されていく状態を示す説明図である。 図3Bは、SiC基板が昇華によりAlNから除去された状態を示す説明図である。 図4Aは、変形例を示すものであり、種結晶基板上にAlNが成長されていく状態を示す説明図である。 図4Bは、変形例を示すものであり、種結晶基板のSiC層が昇華によりAlNから除去された状態を示す説明図である。 図5は、作製されたAlN自立基板のSEM画像である。 図6は、作製されたAlN自立基板の微分干渉顕微鏡で観察された画像である。 図7は、作製されたAlN自立基板の平面SEM画像である。 図8は、作製されたAlN自立基板の2θ/ωスキャンによるXRD(X‐Ray Diffraction)プロファイルである。 図9は、実施例と従来例の(0002)回折のFWHM(Full Width at Half Maximum)を比較したAlN膜厚を依存性を示すグラフである。
図1から図3Bは本発明の一実施形態を示すものであり、図1は自立基板の製造装置の模式断面図、図2はAlN焼結体、SiC基板及びリングの配置状態を示す模式斜視図である。
この自立基板の製造装置1は、昇華法により自立基板を製造するためのものである。図1に示すように、製造装置1は、容器2と、容器2内に配置されたヒータ3と、ヒータ3により加熱されるAlN焼結体5が載置される載置台4と、を備えている。本実施形態においては、容器2及び載置台4はタングステン(W)からなり、ヒータ3はタングステンヒータである。載置台4には原料としてのAlN焼結体5が載置され、AlN焼結体5の上方には種結晶基板としてのSiC基板6が配置される。AlN焼結体5とSiC基板6の間には、スペーサとしてのリング7が介在している。
容器2は、図示しない圧力制御機構により、内部の圧力を調整可能に構成されている。載置台4は、上下に延び、容器2の中央に配置される。ヒータ3は、載置台4を取り囲むように、載置台4の側方に配置される。
ここで、容器2、ヒータ3及び載置台4の材質は任意であるが、成長材料としてAlNを用いる場合は、非カーボン材料で構成することが好ましい。得られるAlN結晶にカーボン(C)が含まれないようにするためである。
また、ヒータ3は、AlN焼結体5よりも下側に配置されることが好ましい。AlN焼結体5、SiC基板6及びリング7の温度勾配を的確に制御するためである。
多結晶のAlN焼結体5は、形状等は任意であるが、図2に示すように四角板状とすることができる。また、厚さについても任意であり、成長させるAlNの所望厚さ等に応じて適宜変更することができる。
SiC基板6は、成長材料がAlNの場合、6H型を用いることが好ましい。また、SiC基板6の形状等は任意であるが、図2に示すように四角板状とすることができる。また、厚さについても任意である。
リング7は、AlN焼結体5及びSiC基板6とともに、密閉空間8を形成する。リング7は、AlN焼結体5とSiC基板6の間隔を調整するスペーサとして機能している。リング7は、成長材料の成長温度よりも融点の高い材料であり、本実施形態においてはタンタル(Ta)から構成されている。また、リング7の形状は任意であるが、図2に示すように円環状とすることができる。リング7とAlN焼結体5及びSiC基板6の間には、AlNの成長温度で凝固する接着材が充填される。
以上のように構成された自立基板の製造装置1による自立基板の製造方法について、図3A及び図3Bを参照して説明する。図3AはSiC基板上にAlNが成長されていく状態を示す説明図、図3BはSiC基板が昇華によりAlNから除去された状態を示す説明図である。
この自立基板の製造方法は、SiC基板6の表面上に昇華法によりAlNを成長させる材料成長工程と、AlNの成長時にSiC基板を昇華させる種結晶昇華工程と、を含んでいる。この製造方法では、成長材料の原料も種結晶基板も昇華させるため、昇華のための1つの製造装置で、2つの材料の昇華に対応することができる。尚、材料成長工程と種結晶昇華工程とは同時並行とすることが望ましいが、材料の成長後に種結晶を昇華させるようにしてもよい。
まず、蓋(図示せず)等を閉めて容器2を密閉状態とし、容器2内が所定の圧力以下となるまで排気する。この後、容器2内に所定の設定圧力となるよう窒素ガスを充填する。そして、ヒータ3によりAlN焼結体5を第1温度、SiC基板6を第2温度となるように、それぞれ加熱する。ここで、第1温度は、設定圧力でAlNが固体から気体となる温度に設定される。また、第2温度は、設定圧力でAlNが気体から固体となるとともに、SiCが固体から気体となる温度に設定される。AlNとSiCの組み合わせの場合、第1温度と第2温度の差は、例えば約50度である。また、AlNとSiCの組み合わせの場合、例えば、100Pa以上で大気圧以下、1800度以上で2600度以下の条件であれば、AlNの成長及びSiCの昇華を行うことができる。
AlN焼結体5及びSiC基板6が所期の温度に到達したら、所定時間だけ温度を維持して、SiC基板6の表面にAlNを成長させる。このとき、成長温度にて接着剤が凝固していることから、密閉空間8内は完全に気密された状態となっている。これにより、密閉空間8内でAlNを昇華、成長させることにより、高速の結晶成長が可能となる。
また、AlNの成長と並行してSiC基板6が昇華する。これにより、AlNが所望の厚さまで成長させてAlN自立基板9となった時点で、SiC基板6が除去されることとなる。このとき、AlN自立基板9は、リング7に支持されているので、SiC基板6が完全に除去されても脱落することはない。
この後、AlN自立基板9を室温まで低下させる。このとき、SiC基板6が除去されているので、AlNとSiCの熱膨張係数の差に起因してクラックが発生するようなことはない。そして、AlN自立基板9をリング7から取り外すことで、結晶品質の良いAlN自立基板9を得ることができる。
こうして得られたAlN自立基板9は、結晶中に欠陥が殆ど存在せず、これに発光層を含むIII族窒化物半導体層を成長させることにより、高品質のIII族窒化物半導体デバイスを得ることができる。これにより、将来的な紫外発光素子の高性能化にも十分に対応することができる。
また、密閉空間8でAlNを成長させるため、成長速度を向上させることができることは勿論、原料の使用効率を飛躍的に高くすることができる。条件にもよるが、同様の温度、圧力等で従来の坩堝を用いて成長させた場合と比較すると、例えば約2倍以上の成長速度と、例えば約2倍以上の原料の使用効率を達成することができる。
尚、前記実施形態においては、成長材料の成長と種結晶基板の昇華とが並行して行われるものを示したが、成長材料の成長後に種結晶基板を昇華させてもよい。この場合、成長材料と種結晶基板との間の、熱膨張係数差に基づく応力が極力発生しないように、温度を高温に保ったままにする必要がある。
また、前記実施形態においては、種結晶基板が単一層からなり全て昇華するものを示したが、例えば図4A及び図4Bに示すように、種結晶基板16が複数の層16a,16bからなり一部の層が昇華するものであってもよい。例えば、成長材料がAlNの場合、AlNが成長する成長面を含む第1層としてのAlN層16bと、種結晶昇華工程にて昇華する第2層としてのSiC層16aと、を含む種結晶基板16を用いることができる。この場合、図4Aに示すように、AlN層16bの成長面にAlNが成長するので、格子定数の違いに起因する欠陥が生じることは殆どない。そして、図4Bに示すように、SiC層16aが昇華により除去されるので、異種材料間の熱膨張係数の違いに起因する欠陥も生じることは殆どない。ここで、AlN層16bは、SiC層16a上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング法を用いて形成することができる。尚、この場合、第2層としてSiCの他に、サファイア、Si等を用いることができる。
また、前記実施形態においては、成長材料としてAlNを用いたものを示したが、他のIII族窒化物半導体であってもよいことは勿論、昇華法が適用可能な他の材料にも適用することができる。さらに、種結晶基板としてSiCを用いたものを示したが、他の材料を用いてもよいことは勿論である。成長材料がIII族窒化物半導体である場合は、種結晶基板は六方晶系単結晶であることが好ましい。
また、前記実施形態においては、リング7の材料としてTaを用いたものを示したが、成長材料の成長温度よりも融点が高いものであれば他の材料を用いてもよい。前記実施形態においては、例えばMoをリング7の材料としても差し支えない。
また、前記実施形態における容器2、ヒータ3、AlN焼結体5、SiC基板6等の形状や配置状態も任意であるし、具体的な細部構造等について適宜に変更可能であることは勿論である。
[実施例]
図5から図9を参照して、AlN自立基板の製造方法の実施例について説明する。
前記実施形態の製造装置1により、厚さ600μmのAlN自立基板9を作製した。作製にあたり、AlN焼結体5の厚さは2mm、Taのリング7の厚さは1mm、SiC基板6の厚さは320μmとした。また、リング7の直径は、14mmとした。また、リング7と、AlN焼結体5及びSiC基板6の接着材は、AlN:10g、Y:0.5g、及び、有機溶媒:5.3gの混合物とした。この接着剤は、約2000℃で凝固する。尚、容器2、ヒータ3、載置台4には、すべてWを用いた
AlNの成長は、容器2内の所定の測定箇所が、2100℃、700Paとなる条件で行った。具体的には、容器2内に窒素を充填して圧力を700Paとし、1時間以内でAlN焼結体5及びSiC基板6を所期温度まで加熱し、この温度を1時間保持してAlNの成長及びSiCの昇華を行った。
図5は、作製されたAlN自立基板のSEM画像である。
図5に示すように、SiCは完全に除去され、1時間で600μm厚のAlNが成長されたことが理解される、尚、接着剤なしで、同様の成長条件にてAlNを成長させたところ、厚さは240μmであった。作製されたAlN自立基板は、肉眼で基板を通じて裏側のものが視認できる程度に透明であった。
図6及び図7は作製されたAlN自立基板の画像であり、図6は微分干渉顕微鏡のもの、図7は平面SEM画像のものである。
図6及び図7に示すように、AlN自立基板9の表面にクラックは観察されなかった。これは、SiCがAlNから完全に除去されたためである。
図8は作製されたAlN自立基板の2θ/ωスキャンによるXRDプロファイルである。
図8に示すように、AlNのピークのみが確認されており、AlN単結晶であることが理解される。また、ピークの位置から、c軸格子定数は0.498nmと計算された。この値は、既知のAlN自立基板の格子定数と同様であり、作製されたAlN自立基板9は緩和したものと理解される。
作製されたAlN自立基板のωスキャン測定でのX線ロッキングカープのFWHM(Full Width at Half Maximum)は、(0002)回折で137arcsec、(10−12)回折で231arcsecと、良好な値が得られた。図9は、実施例の(0002)回折のFWHMと、従来例の(0002)回折のFWHMとを比較したAlN膜厚を依存性を示すグラフである。従来例は、SiC基板を除去せずにAlN基板を作製したものである。実施例のFWHMは、従来例よりも狭く、結晶品質が改善されていることが理解される。
1 自立基板の製造装置
2 容器
3 ヒータ
4 載置台
5 AlN焼結体
6 SiC基板
7 リング
8 密閉空間
9 AlN自立基板

Claims (5)

  1. 種結晶基板の表面上に、昇華法により成長材料を成長させる材料成長工程と、
    前記成長材料の成長時に、前記種結晶基板を昇華させる種結晶昇華工程と、を含み、
    前記成長材料の原料となる板状材の上面と前記種結晶基板の下面とを対向させ、前記板状材の上面と前記種結晶基板の下面の間に前記成長材料の成長温度よりも融点が高いスペーサを介在させ、前記板状材と前記種結晶基板と前記スペーサとにより密閉空間が形成されるようにし、
    前記スペーサの下部と前記板状材の上面、並びに、前記スペーサの上部と前記種結晶基板の下面を、前記成長温度で凝固する接着剤で接着し、
    前記材料成長工程にて当該密閉空間にて前記板状材の上面を昇華させて前記成長材料を前記種結晶基板の下面に成長させ、
    前記種結晶昇華工程にて前記種結晶基板の上面全体を露出させた状態で当該上面を昇華させる自立基板の製造方法。
  2. 前記種結晶基板は、前記材料成長工程にて前記成長材料が成長する成長面を含む下面側の第1層と、前記種結晶昇華工程にて昇華する上面側の第2層と、を含む請求項1に記載の自立基板の製造方法。
  3. 前記成長材料はAlNであり、
    前記種結晶基板の前記第1層はAlNであり、前記種結晶基板の前記第2層はサファイア、Si又はSiCである請求項2に記載の自立基板の製造方法。
  4. 前記成長材料はIII族窒化物半導体であり、
    前記種結晶基板は六方晶系単結晶である請求項1に記載の自立基板の製造方法。
  5. 前記成長材料はAlNであり、
    前記種結晶基板はSiCである請求項4に記載の自立基板の製造方法。
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