JP5731646B2 - 波付鋼板の設計方法、及び波付鋼板パイプ - Google Patents
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Description
このコルゲートパイプは日本工業規格JISG3471に円形1形、円形2形などが規定されている。
図10に円形1形のコルゲートパイプを示し、そのコルゲートパイプを構成する円形1形のセクション(コルゲートセクション)を図11に示す。Dは管径(呼称径)を示す。円形1形のコルゲートセクションの波のピッチbは68mm、波の深さHは13mmと規定されている。
図8に円形2形のコルゲートパイプを示し、そのコルゲートパイプを構成する円形2形のセクション(コルゲートセクション)を図9に示す。Dは管径(呼称径)を示す。円形2形のコルゲートセクションの波のピッチbは150mm、波の深さHは48mm又は50mmと規定されている。
また、円形1形コルゲートパイプの径は、400mm〜1800mmの範囲が表に規定されている。円形2形コルゲートパイプの径は、1500mm〜15000mmの範囲が表に規定されているが、道路の下部排水路などの土木構造物の施工では実際には、1500mm〜4500mmの範囲で行なわれている。
また、特許文献1や特許文献2の波付鋼板パイプは、波の深さが102mm(10.2cm)や150mmなどと大であるが、同じく、波付鋼板パイプの強度に対する鋼材使用量の効率性に関して根拠のあるものではない。
波付鋼板の断面形状を変更するに当たって、波付鋼板パイプの強度との関係で鋼材使用量が必要以上に多くなることは、材料費増により施工コストが高くなるので避ける必要があり、波付鋼板パイプの強度と鋼材使用量との関係で効率的な断面形状にすることが求められる。
しかし、道路の下部水路等のように周囲から外圧を受ける構造(土被りを有する構造など)の波付鋼板パイプに用いる波付鋼板について、そのような効率的な断面形状(特に波形状)を算出する方法がないのが現状である。
但し、
r:円環半径(=管径D/2) mm
pcr:円環座屈相当圧力 N/mm2
py:降伏相当圧力 N/mm2
E:弾性係数 N/mm2
σy:降伏応力N/mm2
B:波付鋼板の幅(=波付鋼板パイプの幅(管軸方向の長さ))mm
I:波付鋼板の幅B当たりの断面二次モーメントmm4
A:波付鋼板の幅B当たりの断面積mm2
但し、
a:波の振幅(=H/2)mm
t:板厚mm
但し、
a:波の振幅(=H/2)mm
但し、
a:波の振幅(=H/2)mm
t:板厚mm
r:円環半径(=管径D/2)mm
したがって、円環座屈と降伏とが概ね同時に起きる。円環座屈が生じた時に降伏に対して余裕があるということ、あるいはその逆に、降伏した時に円環座屈に対して余裕があるということは、波付鋼板パイプの部材断面が作用荷重に対して全面的に負担していないということであるが、円環座屈と降伏とが概ね同時に起きるということは、部材断面が作用荷重に対して全面的に負担していることである。したがって、そのような断面形状は、波付鋼板パイプの強度と鋼材使用量との関係で効率的な断面形状(波形状)であると言える。
請求項3は、請求項2の発明により波付鋼板の波の深さH(=2a)を設定するための直接的な式を示している。この式において板厚tの数値を決めれば、直ちに管径D(=2r)と波の深さH(=2a)との関係が得られる。
請求項4も、請求項2の発明により波付鋼板の波の深さH(=2a)を設定するための直接的な式を示すが、この請求項4では、請求項3の式において板厚tの影響が微小であることから、板厚tの項を省略して、管径D(=2r)と波の深さH(=2a)との直接的な関係として簡略化した式を示す。これにより、波付鋼板の波形の設計が極めて簡易になる。
[実施例1]
そのことを図1で説明すると、(a)のように波付鋼板パイプ1が外面に均等外圧(矢印で表している)を受ける場合、(b)に破線で示すように円環が円形を保てずに座屈する円環座屈の場合と、(c)に破線で示すように円環が円形を保ったまま円周方向に圧縮され降伏する場合とがある。
図2は波付鋼板パイプに用いる一般的な波付鋼板の波形状を示し、波のピッチをb、波の深さをH、板厚をtで示す。
一般的な波付鋼板の波形状は図2に示したように、また、規格化あるいは標準化されたコルゲートパイプのセクションやライナープレートの波形状を示す図9、図11、図13に示すように、直線と曲線との組み合わせによって形成されているが、計算の簡略化の観点から波形状を図3に示すように、近似的にsin波(サインカーブ)として取り扱う。
波付鋼板パイプが外面に均等外圧を受けるという前記の前提について補足説明する。波付鋼板パイプが立坑である場合には、その前提は当然妥当である。
波付鋼板パイプが横坑である場合、波付鋼板パイプに鉛直荷重が加わると、鉛直方向の径が縮小し水平方向の径が拡大しようとし、その結果、パイプはパイプ両側の土砂を圧縮し抵抗土圧を受ける。この傾向は変形量が大きいほど著しいので、最終的には鉛直、水平の両荷重がほとんど同一の値となって安定する。すなわち、波付鋼板パイプは鉛直土圧によって容易に変形することで、パイプに加わる外圧が全周にわたって均等化される。したがって、前記の前提は妥当である。
この場合、円環座屈相当圧力pcrは式(1)で表され、降伏相当圧力pyは式(2)で表される。
なお、円環座屈相当圧力pcrの式(1)はチモシェンコの座屈理論で用いられている式である。 但し、(1)式は波付鋼板の幅(=波付鋼板パイプの幅(管軸方向の長さ)Bを入れている。
降伏相当圧力pyの式(2)については、円周方向降伏圧縮力がT=py・r・Bで求められ、また降伏するときの圧縮力Tはσy・Aで表されるので式(2)が得られる(T、B、A、σyは下記参照)。
T:円周方向降伏圧縮力 N
r:円環半径(=管径D/2)mm
pcr:円環座屈相当圧力N/mm2
py:降伏相当圧力 N/mm2
E:弾性係数 N/mm2
σy:降伏応力N/mm2
B:波付鋼板の幅(=波付鋼板パイプの幅(管軸方向の長さ))mm
I:波付鋼板の幅B当たりの断面二次モーメントmm4
A:波付鋼板の幅B当たりの断面積mm2
波付鋼板の幅Bの断面積Aを求める式(4)を導く要領を図4に示す。図4のURSVで囲まれる部分の面積は、波のピッチbの4分の1の部分の面積であるから、断面積Aの4分の1(A/4)である。この断面積A/4(=面積URSV)は、URZで囲まれる面積−VSZで囲まれる面積である。したがって、式(4)が得られる。式(4)の右辺を解くと、式(5)が得られる。
波付鋼板のI(断面二次モーメント)を求める式(6)を導く要領を図5に示す。図5のURSVで囲まれる部分の断面二次モーメントiは、1波長(波のピッチb)分の断面二次モーメントの4分の1である。そして、この断面二次モーメントi(=URSVの部分の断面二次モーメント)は、URZで囲まれる部分の断面二次モーメントi1−VSZで囲まれる部分の断面二次モーメントi2である(i=i1−i2)。したがって、I=4・B/b・iであり、式(6)が得られる。
なお、例えばURZで囲まれる部分の断面二次モーメントi1は、図5中の微小面積ΔKの部分についての中立軸(X軸)回りの断面二次モーメントy2・ΔKを、y=0からy=a+t/2まで積分したものである。断面二次モーメントi2についても同様である。
式(3)におけるA及びIとして、式(5)のA及び式(7)のIを代入し、波の振幅aについて整理すると、式(8)が得られる。
式(8)から分るように、波のピッチbは円環座屈相当圧力pcrと降伏相当圧力pyとが等しくなる条件に関与していない。但し、円環座屈相当圧力pcr及び降伏相当圧力py自体の大きさには式(1)、式(2)の通り、当然関与している。
なお、式(8)において、
E=2.1×105N/mm2、
σy=205N/mm2、
とした。
図6の通り、管径Dと波の深さHとの関係を表す関係線は殆んど直線である。また、板厚tが2.7mmの場合における管径Dと波の深さHとの関係と、板厚tが4.0mmの場合における管径Dと波の深さHとの関係とは、図6で関係線が1本に見える通り、殆んど同じである(実際には2本の線であり、カラーで表示したグラフでは識別できる)。
関係線より上の領域は、座屈荷重が降伏荷重より大きい領域である。すなわち、この領域ではコルゲートパイプの破壊は降伏により起きる。また、関係線より下の領域は、降伏荷重が座屈荷重より大きい領域である。すなわち、この領域ではコルゲートパイプの破壊は座屈により起きる。管径Dと波の深さHとの関係が関係線から上又は下にずれるほど、座屈荷重と降伏荷重との差が大きくなり、効率の悪い断面形状となり、要求される許容荷重に対して鋼材使用量が増大する。
上記の通り、管径Dと波の深さHとの関係が、図6の関係線上にあるのが、要求される許容荷重と鋼材使用量という効率性の観点では最適である。
しかし、座屈荷重が降伏荷重より大きければ、座屈破壊が降伏破壊に先行するということがなく、コルゲートパイプを用いた構造物の靭性が向上し、急激な破壊の発生が防止されるので、関係線より上の領域である座屈荷重が降伏荷重より大きい領域の範囲を採用することが望ましい。
すなわち、管径D(=2r)と波の深さH(H=2a)との関係で言えば、式(9)のように設定するのが、急激な破壊の発生が防止する上で望ましい。
・材料強度を有効に利用する事が可能となり、鋼材を効率的に使用でき、鋼材使用量の節約に繋がる。
・大管径の波付鋼板パイプ構造物への適用が可能となる。
・土被りを大きく取る事が可能となる。
・断面剛性(断面二次モーメント)が高くなるので、同じ荷重条件では板厚を薄くする事が可能となる。
・ライナープレートを用いた円形立坑又は横坑に適用した場合、ライナープレートを補強する補強リング(上下に連結するライナープレート間に介在させるリング状のH形鋼)の数を削減できる。
・座屈荷重を降伏荷重より大きく設定した場合には、座屈破壊が降伏破壊に先行するということがなく、コルゲートパイプを用いた構造物の靭性が向上し、急激な破壊の発生が防止される。これにより、コルゲートパイプの適用範囲が拡大され、例えば建築物としての適用の可能性も出てくる。
したがって、式(8)に代えて、実用的な次の式(10)の近似式を用いることができる。
[実施例2]
例えば図7に示すように、管径Dに対して2000mm毎に波の深さHを変える設定方法を採用することができる。
段階的に変える場合において、急激に破壊が起きる座屈破壊より、急激な破壊とはなりにくい降伏破壊の方が構造物の破壊態様として適切と言えるので、降伏破壊が先行するように設定、すなわち、「座屈荷重>降伏荷重」の領域において設定(「座屈荷重<降伏荷重」の領域に入らないように設定)するのがよい。図7の段階的な関係線は、そのような設定である。管径範囲毎の波の深さHを具体的に示すと、次の通りである。
管径Dが2000mmφ〜4000mmφの範囲で波の深さHが103mm
管径Dが4000mmφ〜6000mmφの範囲で波の深さHが155mm
管径Dが6000mmφ〜8000mmφの範囲で波の深さHが205mm
管径Dが8000mmφ〜10000mmφの範囲で波の深さHが260mm
上記のように、波の深さHを図7の関係線に沿うような形で段階的に深くすることで、前述した種々の効果が得られるとともに、座屈破壊ではなく降伏破壊が先行するので、コルゲートパイプを用いた構造物の靭性が向上し、急激な破壊の発生が防止される。これにより、前述したコルゲートパイプの例えば建築物としての適用範囲拡大の可能性がより高くなる。
(i)波付鋼板パイプが外面に均等外圧を受けるという前提のもとで、当該波付鋼板パイプが座屈する時の円環座屈相当圧力pcrと降伏する時の降伏相当圧力pyとが等しくなるような管径Dと波の深さHの第1の関係線(図6に示す「座屈荷重=降伏荷重」の関係線)を設定する。
(ii)第1の関係線に基づき、管径Dに対して所定の区間毎(図7の例では、2000mm毎の区間が設定されている)に、波の深さHが段階的に変わる第2の関係線(図7に示す段階的な関係線)を設定する。
(iii)第2の関係線に基づいて、管径Dに対する波の深さHを設定する。
[実施例3]
1a 波付鋼板
11 円形1形コルゲートパイプ
11a 円形1形のコルゲートセクション
12 円形2形コルゲートパイプ
12a 円形2形のコルゲートセクション
13a ライナープレート」
r:(波付鋼板パイプの)円環半径(=管径D/2)mm
pcr:円環座屈相当圧力 N/mm2
py:降伏相当圧力 N/mm2
E:弾性係数 N/mm2
σy:降伏応力N/mm2
B:波付鋼板パイプの幅(管軸方向の長さ)mm
I:幅B当たりの断面二次モーメントmm4
A:幅B当たりの断面積mm2
t:板厚mm
H:波の深さmm
a:波の振幅(=H/2)mm
Claims (7)
- 波の深さHの波形の波付鋼板からなる管径Dの波付鋼板パイプを構成する前記波付鋼板の波形状を設計する際に、波付鋼板パイプが外面に均等外圧を受けるという前提のもとで、当該波付鋼板パイプが座屈する時の下記の(1)式で表される円環座屈相当圧力pcrと降伏する時の(2)式で表される降伏相当圧力pyとが等しくなるように、管径Dに対する波の深さHを設定することを特徴とする波付鋼板の設計方法。
但し、
r:円環半径(=管径D/2)mm
p cr :円環座屈相当圧力 N/mm 2
p y :降伏相当圧力 N/mm 2
E:弾性係数 N/mm 2
σ y :降伏応力N/mm 2
B:波付鋼板の幅(=波付鋼板パイプの幅(管軸方向の長さ))mm
I:波付鋼板の幅B当たりの断面二次モーメントmm 4
A:波付鋼板の幅B当たりの断面積mm 2
- 次式(8)により、管径Dに対する波の深さHを設定することを特徴とする請求項1に記載の波付鋼板の設計方法。
但し、
a:波の振幅(=H/2)mm
t:板厚mm
- 次式(10)により、管径Dに対する波の深さHを設定することを特徴とする請求項1に記載の波付鋼板の設計方法。
但し、
a:波の振幅(=H/2)mm
- 波の深さHの波形の波付鋼板からなる管径Dの波付鋼板パイプを構成する前記波付鋼板の波形状を設計する際に、波付鋼板パイプが外面に均等外圧を受けるという前提のもとで、当該波付鋼板パイプが座屈する時の下記の(1)式で表される円環座屈相当圧力pcrと降伏する時の(2)式で表される降伏相当圧力pyとが等しくなるような管径Dと波の深さHの関係に基づいて、座屈荷重が降伏荷重より大きくなるように、管径Dに対する波の深さHを設定することを特徴とする波付鋼板の設計方法。
但し、
r:円環半径(=管径D/2)mm
p cr :円環座屈相当圧力 N/mm 2
p y :降伏相当圧力 N/mm 2
E:弾性係数 N/mm 2
σ y :降伏応力N/mm 2
B:波付鋼板の幅(=波付鋼板パイプの幅(管軸方向の長さ))mm
I:波付鋼板の幅B当たりの断面二次モーメントmm 4
A:波付鋼板の幅B当たりの断面積mm 2
- 前記波付鋼板パイプが外面に均等外圧を受けるという前提のもとで、当該波付鋼板パイプが座屈する時の円環座屈相当圧力pcrと降伏する時の降伏相当圧力pyとが等しくなるような管径Dと波の深さHの第1の関係線を設定する工程と、
前記第1の関係線に基づき、管径Dに対して所定の区間毎に、波の深さHが段階的に変わる第2の関係線を設定する工程と、
前記第2の関係線に基づいて、管径Dに対する波の深さHを設定する工程と、を備え、
前記第1の関係線に対して一方の領域は、座屈荷重が降伏荷重より大きくなる領域であり、前記第1の関係線に対して他方の領域は、降伏荷重が座屈荷重より大きくなる領域であり、
前記第2の関係線は、前記一方の領域に設定され、一の前記所定の区間内で、管径Dの変化によらず波の深さHが一定であることを特徴とする請求項4に記載の波付鋼板の設計方法。 - 波の深さHの波形の波付鋼板からなる管径Dの波付鋼板パイプを構成する前記波付鋼板の波形状を設計する際に、次式(9)により、管径Dに対する波の深さHを設定することを特徴とする波付鋼板の設計方法。
但し、
a:波の振幅(=H/2)mm
t:板厚mm
r:円環半径(=管径D/2)mm
E:弾性係数 N/mm 2
σ y :降伏応力N/mm 2
- 波の深さHの波形の波付鋼板からなる管径Dの波付鋼板パイプにおける前記波付鋼板の波の深さHが、請求項1〜6のいずれか1項に記載の波付鋼板の設計方法により決定された寸法を有することを特徴とする波付鋼板パイプ。
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