JP2008082072A - 土木構造用の波付け鋼板および同波付け鋼板の製造方法ならびに同波付け鋼板を用いて構築される構造物 - Google Patents

土木構造用の波付け鋼板および同波付け鋼板の製造方法ならびに同波付け鋼板を用いて構築される構造物 Download PDF

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Abstract

【課題】通水孔の穿設位置に工夫を施すことにより、通水性に優れた開口率を確保して、しかも剛性(断面係数、断面二次モーメント等の断面性能)が十分に大きく、更に経済性にも優れた土木構造用の波付け鋼板及び同波付け鋼板の製造方法並びに同波付け鋼板を用いて構築される構造物を提供する。ここで、前記土木構造用の波付け鋼板は、ライナープレート、或いはコルゲートパイプを指す。
【解決手段】山部10と谷部11が交互に連続する波形鋼板1を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する、通水孔4を有する土木構造用の波付け鋼板1であって、波形鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る中立軸c上に通水孔を設ける。
【選択図】図1

Description

この発明は、山部と谷部が交互に連続する波付け鋼板を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート、或いはコルゲートパイプの総称とする。以下、同じ。)の技術分野に属し、更に云えば、通水孔を通水性に必要な開口率で設けると共に、剛性(断面性能)に優れた土木構造用の波付け鋼板、および同波付け鋼板の製造方法、並びに同波付け鋼板を用いて構築される構造物に関する。
ここで、構造物とは、前記ライナープレートにより構築される取水井戸、復水井戸、地すべり対策工の1つである集水井工(集水井戸)、或いは前記コルゲートパイプにより構築される配管等の構造物全般を指す。
山部と谷部が交互に連続する波付け鋼板を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する土木構造用の波付け鋼板は、軽量で強度が高く、施工性、耐食性、再利用が可能である等の理由から、推進工法用立坑、深礎工法用立坑、集水井戸、或いは配管等を構築する際に好適に使用されている。ちなみに、前記土木構造用の波付け鋼板中、ライナープレートに係る技術は、例えば、特許文献1〜4に開示され、コルゲートパイプに係る技術は、例えば、特許文献5に開示されている。
前記土木構造用の波付け鋼板の中で、図12に示したように、通水孔aを有するライナープレートbがある(例えば特許文献1〜3も参照)。この種のライナープレートbは、ライナープレート自身で集水効果を得ることができる利点があり、取水井戸、復水井戸、或いは集水井戸を構築する際に好適に使用され、近年、その需要が益々高まっている。とりわけ、通水孔aの数を増やし開口率を大きくして通水性を高めたライナープレートは、集水性能(或いは排水性能)に優れた取水井戸、復水井戸、或いは集水井戸を提供できるので、その社会的要求が高い。ちなみに、通水孔aの開口率を大きくする手法は、通水孔aの数を増やす方法のほかに、通水孔aの孔径を大きくする方法も考えられるが、ライナープレート外側の土砂が内側に流入するおそれが高まるのであまり好ましい方法とは云えない。
従来、通水孔aを備えたライナープレートbは、孔なしライナープレートにプレスにて孔あき加工を行うため、加工容易性の観点から必然的に、図12に示したように、波付け鋼板の頂部(山部)cに孔aを開けて実施していた(前記特許文献1の第3図、特許文献2の第3図、及び特許文献3の第11図も参照)。そのため、通水孔aを備えたライナープレートbは、孔なしライナープレートと比して断面係数及び断面二次モーメントがかなり小さくなるので、波付け鋼板の頂部cに孔aを開けて孔aの数を増やす手法は、断面係数及び断面二次モーメントの低下を招き、ライナープレートとしての用をなさないという問題があった。そのため、前記図12に係るライナープレートbには2個の通水孔、前記特許文献1、2に係るライナープレートには共に8個の通水孔(排水孔)、前記特許文献3に係るライナープレートには9個の通水孔(集水孔)しか設けられていないのが現状である。
一例として、孔なしライナープレート(図11A参照)と波付け鋼板の頂部に通水孔aを有するライナープレート(図11B、C参照)との断面性能について以下に対比検討する。ちなみに、図11A〜Cに係るライナープレートの大きさ及び材質は同一(一般構造用圧延鋼材SS330)とする。なお、断面係数(Z)はY軸に対するもので、断面二次モーメント(I)は図心を通るY軸に対するものである。
A)図11Aに示したライナープレート(標準型ライナープレート)の断面性能
断面積(S)は約19.88cm、断面係数(Z)は約22.99cm、断面二次モーメント(I)は約70.51cm
B)図11Bに示した波付け鋼板の中段の頂部(山部)に通水孔a(孔径は50mm)を1箇所設けたライナープレートの断面性能
断面積(S)は約18.27cm、断面係数(Z)は約18.18cm、断面二次モーメント(I)は約59.69cm
C)図11Cに示した波付け鋼板の上下段の頂部(山部)に通水孔a(孔径は50mm)を2箇所設けたライナープレートの断面性能
断面積(S)は約16.66cm、断面係数(Z)は約13.23cm、断面二次モーメント(I)は約46.83cm
上記A)〜C)の解析結果を対比すると、A)に対するB)の断面係数は、約79.1%にまで低減し、断面二次モーメントは、約84.6%にまで低減していることが分かる。また、A)に対するC)の断面係数は、約57.5%にまで低減し、断面二次モーメントは、約66.4%にまで低減していることが分かる。
したがって、従来の手法によると、通水孔aの数を増やして通水性を向上させるには自ずと限界があり、通水性及び剛性(断面係数、断面二次モーメント等の断面性能)に優れたライナープレートを実現することは至難であった。
ところで、特許文献4には、集水スリットを設けたライナープレートAが開示されている。このライナープレートAは、第2図に示したように、枠体1の内側に長辺方向に伸張した補強板2を適宜間隔毎に並設し、第1図と第5図に示したように、該枠体1の外側の開口部全面には短辺方向に沿って前記補強板2と交差した状態で集水スリット3を設け、該集水スリット3が断面角形状の集水線材3aで形成され、その角部を開口部側に向けて僅かな間隔をもって並列状に突設すると共に、一方向へ傾斜して形成されている。
この特許文献4に係る集水スリットを設けたライナープレートAによると、水平方向に設けた複数の補強板2と鉛直方向に設けた多数の集水スリット3により、ライナープレート全面にわたって格子状の通水孔を設けて実施することができるので、通水性に優れていることは一応認められる。また、枠体の長辺方向に伸張した補強板2を適宜間隔ごとに並設して実施しているので、剛性に優れていることも一応認められる(詳しくは、同文献4の発明の効果の欄を参照)。
特開平2−225734号公報 特開平2−225735号公報 特開平3−100238号公報 特開平4−66999号公報 特開昭61−126212号公報
上記特許文献4に係る集水スリットを設けたライナープレートは、上記段落[0007]の記載、及び同文献4の第1図〜第5図から明らかなように、部材点数が非常に多いことに加え、緻密な加工精度が要求されるので、製作費用が非常に嵩み、不経済にすぎるという問題がある。一般に、取水井戸、復水井戸、或いは集水井戸を構築する場合に多数のライナープレートが使用されることを鑑みると、この問題は甚大かつ致命的であり、実現性に乏しい。
以上が、前記土木構造用の波付け鋼板中、通水孔を有するライナープレートについての問題点であるが、配管等を構築するのに好適に使用されるコルゲートパイプについても同様の波付け鋼板を用いるのでやはり、ライナープレートと同様の問題点を孕んでいると云える。
本発明の目的は、通水孔の穿設位置に工夫を施すことにより、通水性に優れた開口率を確保して、しかも剛性(断面係数、断面二次モーメント等の断面性能)が十分に大きく、更に経済性にも優れた土木構造用の波付け鋼板及び同波付け鋼板の製造方法ならびに同波付け鋼板を用いて構築される構造物を提供することにある。
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した土木構造用の波付け鋼板は、山部と谷部が交互に連続する波付け鋼板を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する、通水孔を有する土木構造用の波付け鋼板であって、
波付け鋼板の断面における山部と谷部を横切る中立軸上に通水孔を設けたことを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した土木構造用の波付け鋼板において、前記中立軸が、波付け鋼板の山部と谷部との間の傾斜辺部にあり、前記傾斜辺部に通水孔を設けたことを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した土木構造用の波付け鋼板において、前記通水孔の形状は、円形、楕円形、或いは水平方向に長い長円形であることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板において、前記通水孔は、千鳥状配置に設けられていることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した土木構造用の波付け鋼板において、前記千鳥状配置に設けられた通水孔は、各通水孔の中心を通る波付け鋼板の断面における山部と谷部を横切る線上に、1個ずつ〜3個ずつ配置されていることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板において、前記通水孔の開口率は、5%〜10%の範囲内に設定することを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、請求項1〜6のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板において、前記波付け鋼板は、その四辺に連結孔を備え、同連結孔を利用して周方向及び軸方向に接続して構造物を構築することを特徴とする。
請求項8に記載した発明は、請求項1〜6のいずれか一に記載した土木構造用の波付け
鋼板において、前記波付け鋼板は、その四辺に連結孔を有する周方向フランジおよび軸方向フランジを備え、同連結孔を利用して周方向及び軸方向に接続して構造物を構築することを特徴とする。
請求項9に記載した発明に係る土木構造用の波付け鋼板の製造方法は、請求項1〜8のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板について、薄鋼板の所要の位置に孔開き加工を施した後、波付け加工して製造することを特徴する。
請求項10に記載した発明に係る土木構造用の波付け鋼板を用いて構築される構造物は、請求項1〜8のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板を、壁面材の一部又は全部に使用して構築されていることを特徴とする。
請求項1〜請求項8に係る土木構造用の波付け鋼板によれば、波付け鋼板の断面における山部と谷部を横切る中立軸上(主に、傾斜辺部)に通水孔を設けるので、通水孔の開口率を大きくして(特には、通水孔の個数を増加させて)通水性を高めても、前記開口部による断面欠損に起因する断面係数および断面二次モーメントの低下を抑制することができる。よって、通水性に優れて、しかも剛性(断面係数、断面二次モーメント等の断面性能)が十分に大きい土木構造用の波付け鋼板を実現することができる。
請求項9に係る土木構造用の波付け鋼板の製造方法によれば、波付け加工する前の薄鋼板(平板プレート)の状態で、傾斜辺部に相当する所定の位置にプレスにて孔開き加工を施した後、波付け加工して製造しているので、合理的且つ経済的である。
請求項10に係る土木構造用の波付け鋼板を用いて構築される構造物によれば、取水井戸、復水井戸、集水井戸、或いは配管等、その使用目的に応じたバリエーションに富む構造物を構築することができる。
本発明に係る土木構造用の波付け鋼板は、図1〜図8に5つのバリエーションを例示したように、山部10と谷部11が交互に連続する波付け鋼板1を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する(例えば、図9と図10を参照)、通水孔4(4a、4b)を有する土木構造用の波付け鋼板1であって、波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る中立軸c(図11D、Eの破線)上に通水孔4(4a、4b)が設けられている(請求項1記載の発明)。ちなみに、図中の符号13は、水抜き孔を示している。
なお、前記土木構造用の波付け鋼板1は、大別して、ライナープレートとコルゲートパイプとがあるが、本実施例では、ライナープレートを中心に説明する。
図1と図2は、請求項1に記載した土木構造用の波付け鋼板の実施例を示している。この土木構造用の波付け鋼板1は、前記したように、山部10と谷部11が交互に連続する波付け鋼板を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する、通水孔4を有する土木構造用の波付け鋼板1であって、波付け鋼板の断面における山部10と谷部11を横切る中立軸c上に通水孔4が設けられている(請求項1記載の発明)。
具体的には、前記中立軸cが、波付け鋼板1の山部10と谷部11との間の傾斜辺部にあり、前記傾斜辺部に通水孔4がバランスよく設けられている(請求項2記載の発明)。
なお、図示例に係る土木構造用の波付け鋼板1は、ライナープレートで実施している。このライナープレートは、前記波付け鋼板1の四辺に連結孔12を有する周方向フランジ2および軸方向フランジ3を備え、同連結孔12を利用して周方向及び軸方向に接続して構造物を構築するのに供される(請求項8記載の発明)。また、前記通水孔4は、ライナープレート1の正面(一例として、図1A参照)について、下向きの傾斜辺部に設けた通水孔を符号4aで示し、上向きの傾斜辺部に設けた通水孔を符号4bで示している。更に、前記通水孔4の形状は応力集中を回避可能な形状、即ち円形、楕円形、或いは水平方向に長い長円形で実施することが好ましい(請求項3記載の発明)。三角形や四角形等の角形状の孔で実施すると、当該角に応力が集中し強度的に弱くなるからである。以下の実施例についても同様の技術的思想とする。
この実施例1に係る前記通水孔4は、図2B、Cに示したように、千鳥状配置に設けて実施されている(請求項4記載の発明)。ちなみに、図2B、C中の破線Tは波付け鋼板1の谷部の頂点を示し、一点鎖線Yは波付け鋼板1の山部の頂点を示している。前記通水孔4は、ライナープレート1の正面(図1A参照)について、下向きの傾斜辺部に設けた通水孔4aと上向きの傾斜辺部に設けた通水孔4bとを段違いに6個ずつほぼ等間隔で設け、全体として計36個の通水孔4を、各通水孔4a、4bの中心を通る鉛直線上、すなわち波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る線上に3個ずつ位置するように、波付け鋼板1の全面(すべての傾斜辺部)にわたって縦横方向にバランスよく配設されている(請求項5記載の発明)。
なお、図示例に係る通水孔4は、各傾斜辺部に設けて実施しているがこれに限定されず、下向きの傾斜辺部にのみ設けて実施することもできるし、上向きの傾斜辺部にのみ設けて実施することもできる。また、前記通水孔4の数は36個に限定されないことは勿論であり、適宜増減して設計変更可能である(例えば、図8参照)。以下の実施例についても同様の技術的思想とする。
次に、この実施例1に係るライナープレート1の断面性能について検討する。図11D、Eに係るライナープレートは、最も断面性能の低下が予想される通水孔4b(又は4a)を3個設けた部位(一例として、図2BのX−X線)の端面図を示している。ちなみに、図11D、Eに係るライナープレート1の大きさ及び材質は、図11A〜Cに係るライナープレートと同一(一般構造用圧延鋼材SS330)とする。なお、断面係数(Z)はY軸に対するもので、断面二次モーメント(I)は図心を通るY軸に対するものである。
D)図11Dに示した波付け鋼板1の上向きの傾斜辺部に設けた通水孔4b(孔径は40mm)を3箇所設けたライナープレート1の断面性能
断面積(S)は約16.64cm、断面係数(Z)は約21.44cm、断面二次モーメント(I)は約67.26cm
E)図11Eに示した波付け鋼板1の上向きの傾斜辺部に設けた通水孔4b(孔径は50mm)を3箇所設けたライナープレート1の断面性能
断面積(S)は約15.82cm、断面係数(Z)は約20.44cm、断面二次モーメント(I)は約64.44cm
上記D)、E)の解析結果をそれぞれ検討すると、上記A)に対するD)の断面係数は、約93.3%を維持し、断面二次モーメントは、約95.4%を維持していることが分かる。また、上記A)に対するE)の断面係数は、約88.9%を維持し、断面二次モーメントは、約91.4%を維持していることが分かる。
通水孔4の孔径50mmの同等の条件で従来技術と対比検討すると、図11Bに係るライナープレートは、通水孔aの数が1個で断面積が約18.27cmで、A)に対するB)の断面係数は約79.1%で、断面二次モーメントは約84.6%であり、図11Cに係るライナープレートは、通水孔aの数が2個で断面積が約16.66cmで、A)に対するC)の断面係数は約57.5%で、断面二次モーメントは約66.4%であるのに対し(前記段落[0005]参照)、図11Eの実施例1に係るライナープレート1は、通水孔4bの数が3個で断面積が約15.82cmと、図11B、Cと比して大きく低減しているにも拘わらず、A)に対するE)の断面係数は約88.9%で、断面二次モーメントは約91.4%と、図11B、Cと比して大きく上昇しており、通水孔4の開口部による断面欠損に起因する断面係数及び断面二次モーメント、ひいては断面性能の低下を抑制していることが分かる。
したがって、この実施例1に係る通水孔4を有するライナープレートは、通水孔4の開口率を大きくして通水性を高めても、前記開口部による断面欠損に起因する断面性能の低下を抑制することができると云え、通水性に優れて、しかも剛性(断面性能)が十分に大きいライナープレート1を実現することができるのである。また、汎用されるライナープレートに孔開け加工を施して製造することができるので経済的でもある。
ライナープレートの波付け鋼板1の傾斜辺部に通水孔4(4a、4b)を設ける意義について説明すると、波付け鋼板(部材)1に曲げが発生した場合、湾曲した部材1の内側(凹側)では縮み、外側(凸側)では伸びが生じる。そして、縮む側には圧縮の力、伸びる側には引張りの力が作用している。つまり、全断面が一様な圧縮、引張りの力を受けているのではなく、内側と外側で性質の異なった力を受けていることになる。このことを波付け鋼板(部材)1の内部について考えると、内側(圧縮側)と外側(引張り側)との間には圧縮も引張りも発生しない応力がゼロの面が存在する。これを一般に中立軸(中立面)と云うが、本願発明は、波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る中立軸c上の部位、すなわち、図11D、Eの破線Cを通過する部位を狙って通水孔4を設けて断面性能の低減を抑制しているのである。以下の実施例についても同様の基本原理に基づいている。
また、図2B、Cに係るライナープレートの開口率は、孔径が40mmの場合で、約5.8%(図11D参照)、孔径が50mmの場合で、約7.5%(図11E参照)で実施しているが、これに限定されないことは勿論である。但し、この開口率は、5〜10%の範囲内に設定して実施することが好ましい(請求項6記載の発明)。通水孔4の開口率が5%未満だと通水性の向上を十分に図ることができず、また、開口率が10%より大きいと、ライナープレート1の断面性能に悪影響を与えるおそれがあるからである。以下の実施例についても同様の技術的思想とする。
前記ライナープレート1の製造方法については、既に波付け加工が施されたライナープレート1の傾斜辺部に通水孔4を開ける作業は面倒、且つ困難であるとの理由から、波付け加工する前の薄鋼板(平板プレート)の状態で、傾斜辺部に相当する所要の位置にプレスにて孔開き加工を施した後、波付け加工して製造している(請求項9記載の発明)。以下の実施例についても同様の技術的思想とする。
図9と図10は、実施例1に係るライナープレート1を使用して構築した筒状構造物5、6を示している。図9は、前記ライナープレート1のみを使用して構築した筒状構造物5を示し、集水井戸等に好適に実施される。図10は、下部に前記ライナープレート1を使用し、その上方に孔なしライナープレート(標準型ライナープレート)を使用して構築した筒状構造物6を示し、取水井戸、或いは復水井戸等に好適に実施される。このように、前記ライナープレート1を、壁面材の一部又は全部に使用して、所要の目的に応じた構造物を構築することができるのである(請求項10記載の発明)。また、筒状構造物5、6の使用目的に応じて、通水孔4を有するライナープレート1の外周に当該通水孔4の孔径より大きい小石を積み重ねる等して所謂フィルターの役割を果たさせて実施することも勿論できる。以下の実施例についても同様の技術的思想とする。
図3と図4は、請求項1に記載した土木構造用の波付け鋼板の異なる実施例を示している。この実施例2に係る土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)1は、上記実施例1に係る土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)1と比して、通水孔4の穿設位置を設計変更していることのみ相違する。
すなわち、この実施例2に係るライナープレート1は、上記実施例1と同様に、山部10と谷部11が交互に連続する波付け鋼板1を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する、通水孔4を有するライナープレートであって、波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る中立軸c上に通水孔4が設けられている(請求項1記載の発明)。
具体的には、前記中立軸cが、波付け鋼板1の山部10と谷部11との間の傾斜辺部にあり、前記傾斜辺部に通水孔4がバランスよく設けられている(請求項2記載の発明)。
ただし、上記実施例1に係る通水孔4は、各通水孔4a、4bの中心を通る波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る線上に3個ずつ位置するように配設されているのに対し(図2B、C参照)、この実施例2に係る通水孔4は、図4B、Cから分かるように、各通水孔4a、4bの中心を通る波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る線上に2個ずつ位置するように配設されていることが相違する(請求項5記載の発明)。
よって、この実施例2に係るライナープレート1の断面性能について上記実施例1と対比検討すると、最も断面性能の低下が予想される通水孔4b(又は4a)を2個設けた部位(一例として、図4BのX−X線)の端面図について、断面積は、通水孔4の数が3個から2個に減少しているのでその分大きくなる関係上、断面係数および断面二次モーメントも実施例1と比して大きくなることは容易に推定できる。
したがって、この実施例2に係る通水孔4を有するライナープレート1は、実施例1と同様若しくはそれ以上に、通水孔4の開口率を大きくして通水性を高めても、前記開口部による断面欠損に起因する断面性能の低下を抑制することができると云え、通水性に優れて、しかも剛性(断面係数)が十分に大きいライナープレート1を実現することができると云える。また、汎用されるライナープレートに孔開け加工を施して製造することができるので経済的でもある。
図5と図6は、請求項1に記載した土木構造用の波付け鋼板の異なる実施例を示している。この実施例3に係る土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)1は、上記実施例1に係る土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)1と比して、通水孔4の穿設位置を設計変更していることのみ相違する。
すなわち、この実施例3に係るライナープレートは、上記実施例1と同様に、山部10と谷部11が交互に連続する波付け鋼板1を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する、通水孔4を有するライナープレートであって、波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る中立軸c上に通水孔4が設けられている(請求項1記載の発明)。
具体的には、前記中立軸cが、波付け鋼板1の山部10と谷部11との間の傾斜辺部にあり、前記傾斜辺部に通水孔4がバランスよく設けられている(請求項2記載の発明)。
ただし、上記実施例1に係る通水孔4は、各通水孔4a、4bの中心を通る波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る線上に3個ずつ位置するように配設されているのに対し(図2B、C参照)、この実施例3に係る通水孔4は、図6B、Cから分かるように、各通水孔4a、4bの中心を通る波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る線上に1個ずつ位置するように配設されていることが相違する(請求項5記載の発明)。
よって、この実施例3に係るライナープレート1の断面性能について上記実施例1と対比検討すると、最も断面性能の低下が予想される通水孔4b(又は4a)を1個設けた部位(一例として、図6BのX−X線)の端面図について、断面積は、通水孔4の数が3個から1個に減少しているのでその分大きくなる関係上、断面係数および断面二次モーメントも実施例1と比して大きくなることは容易に推定できる。
したがって、この実施例3に係る通水孔4を有するライナープレート1は、実施例1と同様若しくはそれ以上に、通水孔4の開口率を大きくして通水性を高めても、前記開口部による断面欠損に起因する断面係数の低下を抑制することができると云え、通水性に優れて、しかも剛性(断面係数)が十分に大きいライナープレート1を実現することができると云える。また、汎用されるライナープレートに孔開け加工を施して製造することができるので経済的でもある。
図7は、請求項1に記載した土木構造用の波付け鋼板の異なる実施例を示している。この実施例4に係る土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)1は、上記実施例1〜3に係る土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)1を、云うならば逆向きに湾曲させたものであり、これにより周方向フランジ2が円周方向外側に向けられているため、円周外部からの組み立てを可能とする。この種のライナープレート1は、構築する筒状構造物の径が小さい場合等に好適に使用される。ちなみに、通水孔4の穿設位置は、上記実施例3に倣っている。
すなわち、この実施例4に係るライナープレートもまた、上記実施例1と同様に、山部10と谷部11が交互に連続する波付け鋼板1を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する、通水孔4を有するライナープレートであって、波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る中立軸c上に通水孔4が設けられている(請求項1記載の発明)。
具体的には、前記中立軸cが、波付け鋼板の山部10と谷部11との間の傾斜片部にあり、前記傾斜辺部に通水孔4がバランスよく設けられている(請求項2記載の発明)。
ただし、上記実施例1に係る通水孔4は、各通水孔4a、4bの中心を通る波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る線上に3個ずつ位置するように配設されているのに対し(図2B、C参照)、この実施例4に係る通水孔4は、上記実施例3と同様に、各通水孔4a、4bの中心を通る波付け鋼板1の断面における山部10と谷部11を横切る線上に1個ずつ位置するように配設されていることが相違する(請求項5記載の発明)。
よって、この実施例4に係るライナープレート1の断面性能について上記実施例1と対比検討すると、上記実施例3と同様に、最も断面性能の低下が予想される通水孔4b(又は4a)を1個設けた部位(一例として、図6BのX−X線)の端面図について、断面積は、通水孔4の数が3個から1個に減少しているのでその分大きくなる関係上、断面係数および断面二次モーメントも実施例1と比して大きくなることは容易に推定できる。
したがって、この実施例4に係る通水孔4を有するライナープレート1は、実施例1と同様若しくはそれ以上に、通水孔4の開口率を大きくして通水性を高めても、前記開口部による断面欠損に起因する断面係数の低下を抑制することができると云え、通水性に優れて、しかも剛性(断面係数)が十分に大きいライナープレート1を実現することができると云える。また、汎用されるライナープレートに孔開け加工を施して製造することができるので経済的でもある。
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、図示例に係るライナープレート1の平面形状は、1/4円弧形状(所謂C形)で実施しているがこれに限定されず、直線形状(所謂S形)、直線形状を直角に組み合わせたL字形状(所謂L形)、或いは円弧形状と直線形状を組み合わせたJ字形状(所謂J形)でも勿論実施可能である。すなわち、前記C形を周方向に4個組み合わせて断面円形状の筒状構造物(図7、8参照)を構築できることは勿論、L形とS形を組み合わせた断面矩形状の筒状構造物も構築できるし、C形、J形、S形を組み合わせた断面が小判形状の筒状構造物も構築することができる。また、前記筒状構造物は、前記実施例1〜3に係るライナープレート1を適宜組み合わせて構築することも勿論できる。
また、本実施例では、前記土木構造用の波付け鋼板の中で、通水孔を有するライナープレートを中心に説明したが、通水孔を有するコルゲートパイプでもほぼ同様に実施することができる。前記コルゲートパイプは、その四辺に連結孔を備え、同連結孔を利用して周方向及び軸方向に接続して構造物を構築するのに供される(請求項7記載の発明)。すなわち、前記コルゲートパイプは、前記ライナープレート1と比して、主に、周方向と軸方向にフランジを備えていないことのみ相違するので、波付け鋼板に設ける通水孔4の穿設位置、及び穿設手法は、上記実施例1〜4とほぼ同様に実施することができる。よって、上記実施例1〜4とほぼ同様の作用効果を奏することができると云える。
Aは、実施例1に係る土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)を示した正面側斜視図であり、Bは、同裏面側斜視図である。 Aは、実施例1に係るライナープレートを示した平面図であり、Bは、同正面図であり、Cは、同裏面図である。 Aは、実施例2に係るライナープレートを示した正面側斜視図であり、Bは、同裏面側斜視図である。 Aは、実施例2に係るライナープレートを示した平面図であり、Bは、同正面図であり、Cは、同裏面図である。 Aは、実施例3に係るライナープレートを示した正面側斜視図であり、Bは、同裏面側斜視図である。 Aは、実施例3に係るライナープレートを示した平面図であり、Bは、同正面図であり、Cは、同裏面図である。 Aは、実施例4に係るライナープレートを示した正面側斜視図であり、Bは、同裏面側斜視図である。 Aは、実施例1に係るライナープレートの異なる実施例を示した正面側斜視図であり、Bは、同正面図である。 実施例1に係るライナープレートを全部に使用して構築した筒状構造物である。 実施例1に係るライナープレートを一部(下部)に使用して構築した筒状構造物である。 Aは、孔なしライナープレートの端面図であり、BとCは、従来技術に係る通水孔を有するライナープレートの端面図であり、DとEは、本発明に係る通水孔を有するライナープレートの端面図である。 従来技術に係るライナープレートを示した正面側斜視図である。
符号の説明
1 土木構造用の波付け鋼板(ライナープレート)
2 周方向フランジ
3 軸方向フランジ
4、4a、4b 通水孔
5 筒状構造物
6 筒状構造物
10 波付け鋼板の山部
11 波付け鋼板の谷部
12 連結孔
13 水抜き孔

Claims (10)

  1. 山部と谷部が交互に連続する波付け鋼板を、周方向および軸方向に接続して構造物を構築する、通水孔を有する土木構造用の波付け鋼板であって、
    波付け鋼板の断面における山部と谷部を横切る中立軸上に通水孔を設けたことを特徴とする、土木構造用の波付け鋼板。
  2. 前記中立軸が、波付け鋼板の山部と谷部との間の傾斜辺部にあり、前記傾斜辺部に通水孔を設けたことを特徴とする、請求項1に記載した土木構造用の波付け鋼板。
  3. 前記通水孔の形状は、円形、楕円形、或いは水平方向に長い長円形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した土木構造用の波付け鋼板。
  4. 前記通水孔は、千鳥状配置に設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板。
  5. 前記千鳥状配置に設けられた通水孔は、各通水孔の中心を通る波付け鋼板の断面における山部と谷部を横切る線上に、1個ずつ〜3個ずつ配置されていることを特徴とする、請求項4に記載した土木構造用の波付け鋼板。
  6. 前記通水孔の開口率は、5%〜10%の範囲内に設定することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板。
  7. 前記波付け鋼板は、その四辺に連結孔を備え、同連結孔を利用して周方向及び軸方向に接続して構造物を構築することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板。
  8. 前記波付け鋼板は、その四辺に連結孔を有する周方向フランジおよび軸方向フランジを備え、同連結孔を利用して周方向及び軸方向に接続して構造物を構築することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板。
  9. 請求項1〜8のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板は、薄鋼板の所要の位置に孔開き加工を施した後、波付け加工して製造することを特徴する、土木構造用の波付け鋼板の製造方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか一に記載した土木構造用の波付け鋼板を、壁面材の一部又は全部に使用して構築されていることを特徴とする、土木構造用の波付け鋼板を用いて構築される構造物。
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