JP2008266992A - 土木構造用の波付け鋼板、及び立坑 - Google Patents

土木構造用の波付け鋼板、及び立坑 Download PDF

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淳二 問屋
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英男 鈴木
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幸司 吉田
Norihiro Otaka
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Abstract

【課題】部材重量との兼ね合いで効率的に剛性を高め、立坑構築の際の補強リングを不要とする等、施工性、経済性を向上させる。
【解決手段】山部2と谷部3とが直線状の斜辺部4を介して交互に連続する断面形状をなすライナープレート1等の波付け鋼板であり、山部2及び谷部3が、その頂部又は底部にそれぞれ平坦部2a、3aを有し、その両側に斜辺部4に連続する円弧状部2b、3bを有する断面形状である。立坑等の構造物を構築する際に構造物の周方向および軸方向に接続して壁部を形成するために用いられる。山部2及び谷部3にそれぞれ平坦部2b、3bが形成されていることで、山部や谷部が単なる円弧状である場合と比較して、中立軸から遠い部分の断面積が増し、波付け鋼板の断面係数が向上(剛性が向上)する。山部2に平坦部があってもその長さSを一定以下にすることで、局所的な土圧で特に山部2が凹むことを避けることができる。
【選択図】図2

Description

この発明は、筒状若しくは半筒状の構造物を構築するために用いられる、ライナープレートやコルゲートシート等の土木構造用の波付け鋼板、及びこれを用いて構築した立坑に関する。
ライナープレートやコルゲートシートは、山部と谷部とが直線状の斜辺部を介して交互に連続する断面形状をなし、筒状若しくは半筒状の構造物を構築する際に、構造物の周方向および軸方向に接続して構造物部の壁部を形成するために用いられる。
図9に従来のライナープレート1’を示し、図10に拡大した切断端面図を示す。このライナープレート1’は、円弧状の山部2’と円弧状の谷部3’とが直線状の斜辺部4’を介して交互に連続する断面形状をなし、施工された時の構造物軸方向(図9(ハ)では上下方向、図10では左右方向)の両端に、端部を折り曲げてなるフランジ5’を備え、構造物周方向(図9(イ)、(ロ)で左右方向)の両端に端面プレート6’を溶接固定している。フランジ5’にはライナープレートどうしを軸方向に連結するためのボルト穴5a’があけられ、端面プレート6’にはライナープレートどうしを周方向に連結するためのボルト穴6a’があけられている。図10において、波のピッチ(山部2’と山部2’との間隔)をP、円弧状の山部2’及び谷部3’の曲率半径をr、山部2’及び谷部3’の円弧の中心角を2θ、斜辺部4’の長さをL、板厚をt、波高さをDで示している。
ライナープレートの仕様は、JISの規定ではないが鉄鋼業界で標準化(社団法人日本鉄鋼連盟のライナープレート設計・施工マニュアル作成委員会編集「ライナープレート設計・施工マニュアル」)されていることにもよるが、上記の通り、従来のライナープレート1’はすべて、山部2’及び谷部3’がいずれも単なる円弧状をなす断面形状である。
また、標準化されているライナープレート1’の各部の形状・寸法を示すと、幅W=500mm、板厚t=2.7〜7.0mm、波ピッチP=135mm、波高さD=52.5mm、山部2’又は谷部3’の曲率半径r=28mm、中心角2θ≒109〜117°、斜辺部4’の長さL≒26〜34mmである。また、斜辺部4’の傾斜角α≒54.5〜58.5°(斜辺部は円弧状部の接線方向に連続しており、αは山部2’又は谷部3’の中心角2θの半分θと常に等しい故)。
この種のライナープレート1’は、例えば立坑を構築する場合、掘削した竪穴内に、図11(イ)、(ロ)に模式的に示すように、周方向(図11(イ)で左右方向)および軸方向(図11(イ)で上下方向)に接続して筒状構造物10’を組み立てる。図11はライナープレートだけでは強度が確保されない場合に採用される構造であるが、その場合同図のように、上下のライナープレート間に適宜補強リング11を介在させる。補強リング11には通常H形鋼が用いられ、図12(イ)あるいは特許文献1〜3のように、H形鋼のウエブ11aを挟んでライナープレート1’のフランジ5’どうしをボルト12で接合する。なお、補強リング11どうしの周方向連結は、図示は省略するが、周方向に隣接するH形鋼の各フランジ11bに当てた連結プレートをボルトで固定して行う。また、補強リングを用いない箇所では図12(ロ)のようにフランジ5’どうしを直接ボルト13で接合する。
図13に従来のコルゲートシート41’の断面形状を示す。このコルゲートシート41’も円弧状の山部42’と円弧状の谷部43’とが直線状の斜辺部44’を介して交互に連続する断面形状であるが、施工された時の構造物軸方向(図13で左右方向)の両端にはフランジを持たないで斜辺部44’がそのまま端末(図13では左端部)となる。
図14(イ)、(ロ)は湾曲させたコルゲートシート41’を円筒状に組み立てる場合を模式的に説明する図であるが、施工された時の構造物周方向(図13で紙面と直交する方向)の両端については、特に加工しないもの(図14(イ))と、端部に折り曲げフランジ45’を持つもの(図14(ロ))とがある。コルゲートシート41’の周方向の端部及び軸方向の端部にはコルゲートシートどうしを周方向又は軸方向にボルトで連結するためのボルト穴があけられている。図13において、波のピッチをP、円弧状の山部42’及び谷部43’の曲率半径をr、山部42’及び谷部43’の円弧の中心角を2θ、斜辺部44’の長さをL、板厚をt、波の高さをDで示している。
特開2003−221996の図4 特開2002−70470 特開2000−320287の図1〜3
上記のライナープレート1’は、波付けした断面形状なので重量に対する断面性能に優れており、軽量で取り扱いが容易であり、また組立てはボルト締め作業が主体となるもので施工性に優れており、これらから経済性に優れるという大きな長所を備え、広く使用されているが、これらの長所をさらに向上させることが望まれる。
特に、組立てに際して補強リングを用いることが必要な場合が多いが、補強リングが必要になることで組立ての施工性は大きく低下するので、補強リングを必要としない構造が望まれる。
補強リングを不要とするためには、ライナープレート自体の剛性を高めること、あるいは別の補強構造を採用とすることが考えられるが、別の補強構造を採用したのでは施工性の向上は期待できないので、ライナープレート自体の剛性を高めることが適切である。
ライナープレートの剛性を高めるにしても、単に板厚を厚くしあるいは単にサイズを大きくしたのでは、鋼材の使用量が増しかえって経済性を損なうことが考えられる。したがって、剛性の向上と鋼材使用量の増大との兼ね合いが重要であり、土木構造物用という用途に特有な事情を考慮しつつ、重量増大の不利益を越えるような剛性向上が期待できる断面形状が求められる。
また、このような事情はコルゲートシートで土木構造物を構築する際にも概ね同様である。
本発明はこのような背景のもとになされたもので、重量増大の不利益を超えるような剛性向上が期待することができ、例えばライナープレートで土木構造物を構築する際には補強リングが不要となる等、施工性、経済性に優れたライナープレートあるいはコルゲートシート等の波付け鋼板を得ることを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、
山部と谷部とが直線状の斜辺部を介して交互に連続する断面形状をなし、筒状若しくは半筒状の構造物を構築する際に構造物の周方向および軸方向に接続して壁部を形成するために用いる土木構造用の波付け鋼板であって、
前記山部及び谷部が、その頂部又は底部にそれぞれ平坦部を有し、その両側に前記斜辺部に連続する円弧状部を有する断面形状であることを特徴とする。
請求項2は、請求項1の波付け鋼板において、斜辺部の長さLが材料板厚tの50倍以下(L≦50t)であることを特徴とする。
請求項3は、請求項1又は2の波付け鋼板において、平坦部の長さSが前記円弧状部の半径rより小(S≦r)であることを特徴とする。
請求項4は、請求項1〜3の波付け鋼板が、その四辺に連結孔を備えており、前記連結孔を利用して構造物の周方向及び軸方向に複数接続して筒状若しくは半筒状の構造物を構築可能であることを特徴とする。
請求項5は、請求項1〜3の波付け鋼板が、その四辺に連結孔を有する周方向フランジおよび軸方向フランジを備えており、前記連結孔を利用して構造物の周方向及び軸方向に複数接続して筒状若しくは半筒状の構造物を構築可能であることを特徴とする。
請求項6は、請求項5の波付け鋼板を用いた立坑であって、掘削した穴内に、複数の前記の波付け鋼板を周方向フランジどうしを直接ボルト接合して周方向に接続するとともに、軸方向フランジどうしについてもボルト接合して軸方向に接続することにより円筒状の筒状構造物を構築し、この筒状構造物の外面と穴内面との隙間を埋め戻し材にて埋め戻したことを特徴とする。
本発明の波付け鋼板によれば、山部の頂部及び谷部の底部にそれぞれ平坦部が形成されていることで、山部や谷部が単なる円弧状である場合と比較して、中立軸から遠い部分の断面積が増し、したがって、波付け鋼板の断面係数が向上、すなわち剛性が向上する。
その場合に、単に山部及び谷部に平坦部を設けるというだけでは、重量増大を招きまた土木構造物として他の面で不利益になる可能性があるので、適切な条件を採用することで、重量増大の不利益を超えるような剛性向上を図ることができ、また、土木構造物としての性能を損なうことを避けることができる。
波付け鋼板で例えば円形立坑を構築した場合、その外周面に半径方向の土圧が作用し、その土圧により波付け鋼板には周方向の圧縮力(軸力)が生じる。波付け鋼板の剛性として、この圧縮力により座屈しないことが重要である。
ところで、薄板軽量形鋼に圧縮応力が作用する場合、全断面引張り応力の場合と異なり、必ずしも、部材断面の全てが圧縮応力を負担するために有効とはならない。「薄板軽量造建築物設計の手引き」(下記参照)によれば、軽量リップ溝形鋼あるいは軽量形鋼におけるウエブについて、圧縮応力下におけるウエブ(幅b)の有効幅(be1)を、
e1=740t/√F ……(1)
但し、t:板厚mm、 F:降伏応力
と算定している(図5参照)。
「薄板軽量造建築物設計の手引き」:国土交通省国土技術政策総合研究所・独立行政法人・建築研究所監修、社団法人日本鉄鋼連盟「薄板軽量造建築物設計の手引き」編集委員会編、技報堂出版発行
上記「手引き」では、材の断面の折り曲げ円弧部を除いた平坦な部分を「板要素」(フランジやウエブやリップ等の部分)と呼び、折り曲げ円弧部については実際寸法のまま算定し、板要素について有効幅を実際寸法より短く算定するものとしているので、そして、波板の場合も同等に扱うことができるとしているので、この算定方式をライナープレートに適用する場合、直線状の斜辺部4をウエブとして扱うことは、妥当であると考えられる。
そこで、上記の算定式(1)をライナープレートに適用すると、ライナープレートの使用材料はJIS規定のSS400であり、降伏応力が245N/mm以上とされているので、上記の有効幅be1は、
e1=47.2768t≒50t
となる。したがって、斜辺部4の長さLを板厚の50倍以下(L≦50t)にすれば、圧縮部材として全断面を有効にすることができ、したがって、部材重量との兼ね合いで効率的に剛性を高めることができる。
ライナープレートにおける山部や谷部には外部から土圧が加わるが、土圧の場合は、水圧の場合のように均一な圧力になるとは限らず、局所的な力が加わる場合が多々あり、その場合に平坦であると凹みが生じ易い。したがって、山部や谷部は、局所的な力による凹みを防ぐ点では、本来、従来の断面形状のように円弧状にするのが有利である。しかし、山部や谷部の平坦部がそれほど長くなければ、局所的な力による凹みを充分有効に防ぐことが可能である。そこで、本発明では、局所的な力による凹みを充分有効に防ぐことが可能な平坦部の長さSとして、円弧状部の半径rに対してS≦rを設定した。
これにより、山部や谷部に平坦部を形成したにもかかわらず、局所的な力による凹み発生を有効に防ぐことが可能となる。
請求項6は請求項5の波付け鋼板を用いて構築した立坑であるが、その波付け鋼板の剛性が充分高くなっていることで、波付け鋼板を軸方向に接続する際に補強リングを用いずに接続することが可能となっている。これにより、立坑構築の施工性及び経済性が大幅に向上する。
以下、本発明の土木構造用の波付け鋼板の実施例を、図1〜図8参照して説明する。
図1は発明の土木構造用の波付け鋼板の一実施例を示すもので、(イ)はライナープレート1の正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は(イ)のB−B断面図、図2は図1(イ)の拡大したB−B切断端面図(但し横向きにした図)である。図3は(イ)は図2における1つの山部及びその両側部分を拡大して示した図、図4は図3(イ)の要部を拡大して各部の詳細形状を説明する図である。
これらの図に示すように、このライナープレート1は、山部2と谷部3とが直線状の斜辺部4を介して交互に連続する断面形状をなし、施工された時の構造物軸方向(図1(ハ)では上下方向、図2では左右方向)の両端に、端部を折り曲げてなるフランジ5を備え、構造物周方向(図1(イ)、(ロ)で左右方向)の両端に端面プレート6を溶接固定している。フランジ5にはライナープレートどうしを軸方向に連結するためのボルト穴5aがあけられ、端面プレート6にはライナープレートどうしを周方向に連結するためのボルト穴6aがあけられている。図2〜図4において、波のピッチをP、斜辺部4の長さをL、板厚をt、波高さをDで示している。
本発明では、前記山部2及び谷部3が、単なる円弧状部ではなく、その頂部又は底部にそれぞれ平坦部2a、3aを有し、その両側に前記斜辺部4に連続する円弧状部2b、3bを有する断面形状である。山部2の円弧状部2bの曲率半径r及び中心角θと谷部3の円弧状部3bの曲率半径r及び中心角θとはそれぞれ等しい。平坦部2a、3aの長さをSで示す。
上記実施例のライナープレート1の各部の形状・寸法を示すと、幅W=750mm、波ピッチP=360mm、波高さD=150mm、円弧状部2b、3bの曲率半径r=70mm、円弧状部2bの中心角θ=30°、斜辺部L=92.5mmである。そして、山部2及び谷部3に形成した平坦部2a、3aの長さS=20mmである。また、斜辺部4の傾斜角α=30°である(αは円弧状部2bの中心角θと常に等しい)。
上記のライナープレート1は、山部2の頂部及び谷部3の底部にそれぞれ平坦部2a、3aが形成されていることで、山部や谷部が単なる円弧状である場合と比較して、中立軸から遠い部分の断面積が増し、したがって、波付け鋼板の断面係数が向上、すなわち剛性が向上する。
その場合に、単に山部及び谷部に平坦部を設けるというだけでは、重量増大を招きまた土木構造物として他の面で不利益になる可能性があるので、適切な条件を採用することで、重量増大の不利益を超えるような剛性向上を図ることができ、また、土木構造物としての性能を損なうことを避けることができる。
例えば、この実施例のライナープレート1では、図9の従来のライナープレート1’と比べて、波高さDを深くし、波ピッチPを広く設定している。このことも、重量増大の不利益を超えるような断面係数の増大すなわち剛性向上を実現することに寄与している。
上記のライナープレート1を用いて立坑を構築する場合、掘削した穴内で、複数のライナープレート1を周方向及び軸方向に接続するが、その際、周方向フランジ6どうしを直接ボルト接合して周方向に接続するとともに、軸方向フランジ5どうしについても補強リングを介さずに直接ボルト接合して軸方向に接続することにより、図6に示すように補強リングを持たない円筒状の筒状構造物10を構築する。すなわち、図10で説明した従来のライナープレート1’による立坑構築工法と異なり、補強リング11を用いないで筒状構造物10を構築する。
従来図の図10で説明したように、立坑を構築する場合に、ライナープレートだけでは強度が確保されない場合、上下のライナープレート間に適宜補強リング11を介在させることが必要となるが、従来は補強リング11が必要となる場合が多かった。
しかし、上記の通り、本発明によりライナープレート1の剛性が大幅に向上したことで、このような場合に従来必要であった補強リング11を用いない構造を採用することが可能となる。
補強リングが必要になることで組立ての施工性は大きく低下するので、補強リングが不要となったことで、施工性が大幅に向上する。
また、補強リング自体のコストが高くかつ多数必要であった継手ボルトのコストが高かったのに対して、それらが不要ないし少なくなるので、この点でもコストダウンが図られる。
また、補強リングを組み立てる作業は、単なるライナープレートの組立作業と比べて複雑なので、例えば省力化のために機械化施工を図ろうとした場合、補強リングがネックになるが、それがなくなるので、機械化施工を図ることも容易になる。
次いで、この組み立てたられた筒状構造物10の外面と穴内面との隙間に埋め戻し材(図示略)を埋め戻すと、立坑が完成する。埋め戻し材としては、土又はモルタル又はコンクリート又は気泡混合処理土又はソイルセメント等を利用できる。
筒状構造物10の外面と穴内面の隙間に埋め戻し材を埋め戻す際に、埋め戻し材が波の谷部3に円滑に入り込むことができるためには、波高さ方向に対する斜辺部4の角度β(=π/2−斜辺部の傾斜角α)が埋め戻し材の内部摩擦角φより大きい必要がある。
埋め戻し材の種類によって内部摩擦角φが異なるが、その埋め戻し材の内部摩擦角φに対して、斜辺部の角度β(=π/2−斜辺部の傾斜角α)をφ°以上(β≧φ°、すなわち、α≦π/2−φ°)に設定すれば、空隙の生じない良好な埋め戻しをすることができる。
ライナープレート1で円形立坑を構築した場合、その外周面に半径方向の土圧が作用し、その土圧により波付け鋼板には周方向の圧縮力が生じる。ライナープレート1の剛性として、この圧縮力により座屈しないこと重要である。
前述したように、薄板軽量形鋼に圧縮応力が作用する場合、全断面引張り応力の場合と異なり、必ずしも、部材断面の全てが圧縮応力を負担するために有効とはならない。「薄板軽量造建築物設計の手引き」における軽量リップ溝形鋼あるいは軽量形鋼におけるウエブについての、圧縮応力下におけるウエブ(幅b)の有効幅(be1)の式
e1=740t/√F ……(1)
但し、t:板厚mm、 F:降伏応力
をこのライナープレート1に適用すると、ライナープレートの使用材料はJIS規定のSS400であり、降伏応力が245N/mm以上とされているので、上記の有効幅be1は、
e1=47.2768t≒50t
となる。したがって、斜辺部4の長さLを板厚の50倍以下(L≦50t)にすれば、圧縮部材として全断面を有効にすることができ、したがって、部材重量との兼ね合いで効率的に剛性を高めることができる。上記のライナープレート1では、斜辺部の長さL=92.5mmが、板厚2.7mmの50倍(135mm)より小さいので、斜辺部4の全体が有効幅と算定することが可能である。したがって、このライナープレート1の全断面積が圧縮力に対する有効断面となり、この点でも、部材重量に対して効率的な剛性向上が図られ、重量増大の不利益を超えるような剛性向上を実現することに寄与している。
ライナープレート1における山部2や谷部3には外部から土圧が加わるが、土圧の場合は、水圧の場合のように均一な圧力になるとは限らず、局所的な力が加わる場合が多々あり、その場合に平坦であると凹みが生じ易い。したがって、山部2や谷部3は、局所的な力による凹みを防ぐ点では、本来、従来の断面形状のように円弧状にするのが有利である。しかし、山部や谷部の平坦部がそれほど長くなければ、局所的な力による凹みを充分有効に防ぐことが可能である。この実施例のライナープレート1では平坦部2a、3aの長さSが10mmであるが、この長さは、局所的な力による凹みを充分有効に防ぐことが可能な程度である。なお、平坦部2a、3aの長さSを、円弧状部2b、3bの半径rより小さくすると、局所的な力による凹み発生を有効に防ぐことができる。
なお、平坦部2a、3aの長さSの下限値としては、明確に線引きはできないが、例えば、断面係数を増大させる上で有効な寸法として例えば、r/4以上程度とすると適切である(この場合 r/4≦S≦r となる)。
上記実施例のライナープレート1の断面形状は、山数が二山(谷部3が2つであるが、折り曲げたフランジ5の先端側(図2の下側)から見た場合の山数が二山)のものであるが、これに限らず、図7に示したライナープレート1のように一山であってもよいし、あるいは三山以上であってもよい。
上記の実施例ではライナープレートに適用する場合について述べたが、本発明はコルゲートシートに適用しても、同様な効果が得られる。
図8に本発明を適用したコルゲートシート41の端部近傍の断面形状を示す。このコルゲートシート41は、山部42と谷部43とが直線状の斜辺部44を介して交互に連続する断面形状であるが、施工された時の構造物軸方向(図8で左右方向)の両端にはフランジを持たないで斜辺部44がそのまま端末(図8では左端部)となる。
本発明では、前記山部42及び谷部43が、単なる円弧状部ではなく、その頂部又は底部にそれぞれ平坦部42a、43aを有し、その両側に前記斜辺部44に連続する円弧状部42b、43bを有する断面形状である。
図8において、波のピッチをP、山部42の円弧状部42b及び谷部43の円弧状部43bの曲率半径をr、中心角をθ、斜辺部44の長さをL、板厚をt、波高さをDで示している。山部42の円弧状部42bの曲率半径r及び中心角θと谷部43の円弧状部43bの曲率半径r及び中心角θとはそれぞれ等しい。平坦部42a、43aの長さをSで示す。このコルゲートシート41も、図13の従来のコルゲートシート41’と比べて波高さDを高くし、波ピッチPを広く設定している。
施工された時の構造物周方向(図8で紙面と直交する方向)の両端については、特に加工しないもの(図14(イ)と同様)と、端部に折り曲げフランジを持つもの(図14(ロ)と同様)とがある点は、従来と同様である。また、コルゲートシート41の周方向の端部及び軸方向の端部にはコルゲートシートどうしを周方向又は軸方向にボルトで連結するためのボルト穴があけられている点も従来と同様である。
本発明の土木構造用の波付け鋼板をライナープレートに適用した実施例を示すもので、(イ)はライナープレートの正面図、(ロ)は同平面図、(ハ)は(イ)のB−B断面図である。 図1(イ)の拡大したB−B切断端面図(但し横向きにした図)である。 (イ)は図1のライナープレートにおける1つの山部及びその両側部分を拡大して示した図、(ロ)は比較のために図10の従来のライナープレートにおける1つの山部及びその両側部分を拡大して示した図である。 図3(イ)の要部を拡大して各部の詳細形状を説明する図である。 本発明において、斜辺部の長さLを、L≦50t(tは板厚)とする理由を説明するための図(「薄板軽量造建築物設計の手引き」から引用した図)である。 上記のライナープレートを立坑構築のために円筒状に組み立てた状態を模式的に示すもので、(イ)は片側を断面で示した正面図、(ロ)は平面図である。 ライナープレートの断面形状の他の例を示すもので、図2に相当する図である。 本発明の土木構造用の波付け鋼板の他の実施例を示すもので、コルゲートシートの端部近傍の断面図である。 従来のライナープレートを示すもので、(イ)はライナープレートの正面図、(ロ)は同平面図、(ハ)は(イ)のA−A断面図である。 図9(イ)の拡大したA−A切断端面図(但し横向きにした図)である。 従来のライナープレートを立坑構築のために円筒状に組み立てた状態を模式的に示すもので、(イ)は片側を断面で示した正面図、(ロ)は平面図である。 図11における上下に隣接するライナープレートの連結要領を説明するもので、(イ)はC部拡大図、(ロ)はD部拡大図である。 従来のコルゲートシートの端部近傍の断面図である。 コルゲートシートを円筒状に組み立てる場合を模式的に説明するもので、(イ)は周方向端部にフランジを形成しないコルゲートシートの場合、(ロ)は周方向端部に折り曲げフランジを形成したコルゲートシートの場合を示す。
符号の説明
1 ライナープレート(波付け鋼板)
2 山部
3 谷部
2a、3a 平坦部
2b、3b 円弧状部
4 斜辺部
5 フランジ
6 端面プレート
10 筒状構造物
11 補強リング
11a ウエブ
12、13 ボルト
41 コルゲートシート(波付け鋼板)
42 山部
43 谷部
42a、43a 平坦部
42b、43b 円弧状部
44 斜辺部
t 板厚
P 波のピッチ
D 波高さ
L 斜辺部の長さ
S 平坦部の長さ
r 円弧状部の曲率半径
α 斜辺部の傾斜角
β 斜辺部の波高さ方向に対する角度
θ 円弧状部の中心角

Claims (6)

  1. 山部と谷部とが直線状の斜辺部を介して交互に連続する断面形状をなし、筒状若しくは半筒状の構造物を構築する際に構造物の周方向および軸方向に接続して壁部を形成するために用いる土木構造用の波付け鋼板であって、
    前記山部及び谷部が、その頂部又は底部にそれぞれ平坦部を有し、その両側に前記斜辺部に連続する円弧状部を有する断面形状であることを特徴とする土木構造用の波付け鋼板。
  2. 前記斜辺部の長さLが材料板厚tの50倍以下(L≦50t)であることを特徴とする請求項1記載の土木構造用の波付け鋼板。
  3. 前記平坦部の長さSが前記円弧状部の半径rより小(S≦r)であることを特徴とする請求項1又は2記載の土木構造用の波付け鋼板。
  4. 前記波付け鋼板は、その四辺に連結孔を備えており、前記連結孔を利用して構造物の周方向及び軸方向に複数接続して筒状若しくは半筒状の構造物を構築可能であることを特徴とする請求項1〜3記載の土木構造用の波付け鋼板。
  5. 前記波付け鋼板は、その四辺に連結孔を有する周方向フランジおよび軸方向フランジを備えており、前記連結孔を利用して構造物の周方向及び軸方向に複数接続して筒状若しくは半筒状の構造物を構築可能であることを特徴とする請求項1〜3記載の土木構造用の波付け鋼板。
  6. 掘削した穴内に、請求項5の複数の波付け鋼板を周方向フランジどうしを直接ボルト接合して周方向に接続するとともに、軸方向フランジどうしについてもボルト接合して軸方向に接続することにより円筒状の筒状構造物を構築し、この筒状構造物の外面と穴内面との隙間を埋め戻し材にて埋め戻したことを特徴とする立坑。
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