以下、図面を参照して、本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_n”(nは数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.通信処理系統:基本
3.パラメータ設定機能
4.信号処理モジュール
5.マルチプル伝送:基本
基本概念、ノード配置
6.マルチプル伝送:指向性・偏波による分離
7.マルチプル伝送:送信電力への情報重畳
8.マルチプル伝送:具体的な適用例(3点間伝送)
実施例1:宛先情報の伝送(受信電力設定値が各別)
実施例2:宛先情報の伝送(受信電力設定値が共通)
実施例3:フレーム情報の伝送
実施例4:フレーム長情報の伝送
<全体概要>
先ず、基本的な事項について以下に説明する。本明細書で開示する信号伝送装置、通信装置、電子機器、信号伝送方法においては、例えば、誘電体或いは磁性体で構成された高周波信号導波路を筺体内に配置しておき、通信機能を有する信号処理モジュール(通信装置)を高周波信号導波路に実装することで、高周波信号導波路を伝わる高周波信号の通信を確立する。こうすることで、高速のデータ伝送を、マルチパス、伝送劣化、不要輻射等を少なくして機器内通信或いは機器間通信を実現する。つまり、ミリ波等の電磁波を低損失で伝送できる高周波信号導波路を機器内に配置しておき、通信機能を持つ信号処理モジュールを置くことで、高周波信号導波路内を通してミリ波等の電磁波を伝えることにより、信号処理モジュール間でのデータ転送を実現する。ここで、信号処理モジュールの相対位置が決まれば伝搬損失等の送受信間の伝送特性が既知となる。これを踏まえれば、伝送対象信号を高周波信号に変換して通信処理を行なうだけでなく、伝送対象信号とは異なる第2の情報を高周波信号の強度で表して他の通信装置に送信することもできる。
電気配線の接続に対して、高周波信号導波路とカップラ(高周波信号の伝達機能を持つ伝達構造体)の配置は、電気配線のコネクタのようにピン配置や接触位置を特定するのもではなく、相当程度(数ミリメートル〜数センチメートル)の誤差を許容できる。無線接続に対して、電磁波の損失を低くできるので、送信機の電力を低くでき、受信側の構成を簡略化できるし、機器外からの電波の干渉や、逆に、機器外への放射を抑圧することもできる。
伝送対象信号を高周波信号に変換して伝送するので、高速伝送が可能となるし、高周波信号導波路を使用することで、カップリングが良く、ロスが小さいため消費電力が小さい。高周波信号の伝送機能を持つ高周波信号導波路に近接或いは接触させて信号処理モジュールを配置させればよく、送受信の接続が簡単であるし、広い範囲で接続が可能である。高周波信号導波路として、入手の容易なプラスチックを使用することもでき導波装置及び電子機器を安価に構成できる。高周波信号導波路に高周波信号が閉じ込められるため、マルチパスの影響が小さいしEMCの問題も小さい。
例えば、一般的な電気配線での接続(金属配線接続)の場合、伝送媒体との繋がりはパッド等により高精度で固定されている。この場合、特性により通信可能容量が制限される。入出力機構の増加に伴う面積やコスト増加の問題から更なる複線化には難ある。又、個別のチップやモジュールに応じて配線を設計する必要があり手間が掛かる。一方、野外に適用される無線接続の場合、伝送媒体との繋がりはアンテナで位置関係は自由である。しかしながら、空間を電波が伝送するので伝搬損失は大きく、通信範囲が制限される。又、このような無線伝送をそのまま機器内や機器間の通信に適用すると、個別の筐体形状に伝搬状況が依存し、伝送状態の見積もりに手間がかる。又、不要輻射対策が必要となるし、相互干渉の問題から複線化に難がある等、解決すべき事項がある。
これに対して、本実施形態では、通信装置と高周波信号導波路は、接続部分に特別な機構を持つ必要がない、或いは、単純な機構のみでよく、大容量通信が可能である。例えば、誘電体素材や磁性体素材で構成されている高周波信号導波路を使用することで、伝送損失は自由空間の場合よりも小さくできる。又、高周波信号を高周波信号導波路内に閉じ込めて伝送することができるから、機器内の部材による反射や不要輻射等の問題は改善され、複線化(マルチレーン化)も容易に可能となる。一般的な通信と同様に、時分割多重や周波数分割多重(単一導波路内に複数周波数を伝搬)を適用することもできるので、伝送容量の効率が向上する。
送信側には、第1の情報及び第2の情報を送信する通信装置を備える。第1の情報は、例えば、宛先情報やフレーム情報が該当する。第2の情報は、例えば、第1の情報が宛先情報の場合はフレーム情報が該当し、第1の情報がフレーム情報の場合は宛先情報が該当する。送信側の通信装置は、第1の情報を受信側の通信装置に向けて送信する際に、その送信信号の強度を第2の情報に基づいて制御する。通信装置は、第1の情報及び第2の情報に加え、第3の情報も送信してもよく、この場合、第1の情報又は第2の情報の少なくとも一方は、第3の情報の属性情報を含むとよい。第3の情報は、例えば、データコンテンツが該当する。例えば、通信機能を持つモジュール(通信装置)を所定位置に配置する。通信装置は、第1の情報(伝送対象信号)を高周波信号に変換して通信処理を行なう。この通信処理の際には、伝送対象信号とは異なる第2の情報(以下では「予備情報」と記すこともある)に基づいて、高周波信号の強度を設定する。つまり、予備情報を送信信号(高周波信号)の強度で表して他の通信装置に送信する。送信信号は、伝送対象信号を伝送するために使用されるだけでなく、その強度情報が、第2の情報を伝送するために利用される。好ましくは、送受信間の伝搬特性(例えば伝送損失等)が既知であり、通信装置間の伝搬特性に基づいて送信信号の強度を設定するのがよい。
送信側の通信装置(本開示の第2の態様に係る通信装置と対応)は、第1の情報及び第2の情報の送信処理を行なう送信処理部と、第1の情報を送信する際に、その送信信号の強度を第2の情報に基づいて制御する制御部、とを備えるとよい。送信側の通信装置から制御部を取り外した構成にすることもできる。受信側の通信装置(本開示の第3の態様に係る通信装置と対応)は、受信した信号の強度に基づいて第2の情報を特定する情報特定部と、情報特定部が特定した第2の情報に基づいて第1の情報の再生処理を行なう再生処理部、とを備える。
電子機器を構成する場合、送信側の通信装置を備えたもの(本開示の第4の態様に係る電子機器と対応)、受信側の通信装置を備えたもの、或いは、送信側及び受信側の双方の通信装置を備えたもの(本開示の第5の態様に係る電子機器と対応)、の各態様を採ることができる。
好適には、送信側及び受信側の双方の通信装置を備えたものであり、この場合の電子機器は、第1の情報及び第2の情報の送信処理を行なう送信処理部と、信号を伝送する信号導波路と、第1の情報を送信する際にその送信信号の強度を第2の情報に基づいて制御する制御部と、信号導波路を介して受信した信号の強度に基づいて第2の情報を特定する情報特定部と、情報特定部が特定した第2の情報に基づいて第1の情報の再生処理を行なう再生処理部、とを備える。ここで、送受信間の伝搬特性が既知であり、制御部は、伝搬特性に基づいて送信信号の強度を制御する。
第2の情報に基づいて信号の強度を設定して他の通信装置に送信するように制御する制御部を何れかの箇所に設けるが、その制御部の配置箇所は通信装置でもよいし、通信装置とは別に設けてもよい。例えば、電子機器内での信号伝送の場合、送受信の各通信装置とは別に制御部を設ける構成をとることができる。
好ましくは、通信装置は、時分割で送信処理を行なうのがよい。換言すると、各通信装置の送信処理タイミングが規定されているのがよい。更に好ましくは、各通信装置の送信処理タイミングが予め規定されているのがよい。換言すると、各通信装置の送信順及び1回当たりの送信処理時間が規定されているのがよい。送信処理タイミングは、送信処理順、各送信処理の時間幅、1サイクル分の送信処理総数(換言すると1サイクル分の通信装置の総数)等で規定される。総数は、処理順から割り出すこともできる。
好ましくは、各通信装置は同期した処理を行なうのがよい。このためには、例えば、一の通信装置は、他の通信装置からの(高周波)信号を受信しないときに、自身を特定するマスター情報を含む伝送対象信号の送信処理(伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理)を開始し、他の通信装置は、受信したマスター情報に基づいて自分の送信処理タイミングを特定し送信処理を開始するのがよい。変形例としては、マスター情報を送信信号とは別に送ってもよい。例えば、電子機器内での信号伝送(機器内伝送)の場合であれば、送受信の各通信装置間における信号伝送とは別の系統で、マスター情報を通知する構成をとることができる。
或いは、一の通信装置は、他の通信装置からの(高周波)信号を受信しないときに、全体の処理タイミングを規定する同期信号を含む伝送対象信号の送信処理(伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理)を開始し、他の通信装置は、受信した同期信号に基づいて自分の送信処理タイミングを特定し送信処理を開始するのがよい。例えば、電子機器内での信号伝送(機器内伝送)の場合であれば、送受信の各通信装置間における信号伝送とは別の系統で、同期信号を通知する構成をとることができる。
或いは又、中央制御部(送信するように制御する制御部を兼ねてもよい)が全体をコントロールしてもよい。機器内伝送の場合に好適な形態である。即ち、全体の処理タイミングを制御する中央制御部を備え、中央制御部は、各通信装置に当該通信装置の送信処理可能な時点を通知し、各通信装置は、通知された送信処理可能な時点に送信処理を行なうのがよい。
例えば、伝送対象信号と対応する本体部分と付加情報の部分とからなる通常の通信パケットの内の付加情報の少なくとも一部を第2の情報として扱うことができる。この場合、通信パケットは、第2の情報の分が付加情報の部分から除去されているのが好適である。
付加情報の少なくとも一部を第2の情報として扱う場合、例えば、宛先情報を第2の情報として扱うことができる。受信側では、高周波信号の強度の相違から、受信した高周波信号が自分宛であるのか否かを特定することができる。この場合、受信した高周波信号が自分宛であるか否かを特定する受信強度情報が宛先情報として各(受信側の)通信装置に規定しておくのがよい。送信側の通信装置は、伝送対象信号の宛先の通信装置の受信強度情報に応じた強度で高周波信号を送信するのがよい。受信側の通信装置は、自分用に規定されている受信強度情報に適合する高周波信号に基づいて伝送対象信号を再生するのがよい。好ましくは、通信装置は、自分用に規定されている受信強度情報に適合しない高周波信号を受信すると一定時間低消費電力状態になるのがよい。
各通信装置の受信強度情報は、各通信装置のそれぞれで異なっていてもよいし、受信強度情報が同じものが存在していてもよい。後者の場合、全ての通信装置の受信強度情報が同じでもよい。
本体部分と付加情報の部分とからなる通信パケットの内の本体部分が、伝送対象信号と制御情報の何れかを含む場合、伝送対象信号と制御情報を区別する情報を第2の情報として扱うことができる。この場合、伝送対象信号を送信する際の高周波信号の強度と、制御情報を送信する際の高周波信号の強度とを異ならせるのがよい。受信側では、高周波信号の強度の相違から、伝送対象信号と制御情報を区別する情報(第2の情報)を特定することができる。
本体部分と付加情報の部分とからなる通信パケットの長さを示す情報を第2の情報として扱うことができる。この場合、通信パケットの長さを示す情報に応じて高周波信号の強度を異ならせるのがよい。受信側では、高周波信号の強度の相違から、通信パケットの長さを区別する情報(第2の情報)を特定することができる。
[その他]
好ましくは、高周波信号導波路上に複数の通信装置(モジュールの形態でもよい)を配置し、複数の伝送パスを形成して、通信装置間でデータを送受信するとよい。通信装置は、所望の伝送帯域が得られるように配置するのが望ましい。
通信装置と高周波信号導波路との間で高周波信号の電磁結合をとる高周波信号結合構造体(高周波信号の入出力部)は、指向性や偏波を利用して高周波信号の分離を行なうのが好ましい。例えば、水平方向に指向性を持つアンテナを使用し、送受信間を高周波信号導波路に対して水平に伝送する。或いは、垂直方向に指向性を持つアンテナを使用し、送受信間を高周波信号導波路に対して垂直に伝送する。これらは、指向性と垂直偏波を組み合わせたものであるが、垂直偏波に代えて、或いは、垂直偏波と組み合わせて、円偏波を適用してもよい。
<通信処理系統:基本>
図1〜図2は、本実施形態の信号伝送装置及び電子機器の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。換言すると、本実施形態の信号伝送装置及び電子機器における通信処理に着目した機能ブロック図の基本を示す図である。ここで、図1は、信号伝送装置或いは電子機器の全体概要を示し、図2は、信号伝送装置の機能ブロック図である。
図1に示すように、信号伝送装置1及び電子機器8は、4個の通信装置(送受信機)(2つの第1通信装置100と2つの第2通信装置200)を備え、それらが高周波信号導波路308と電磁的に結合可能になっている。例えば、高周波信号導波路308上に第1通信装置100_1と第2通信装置200_2と第1通信装置100_3と第2通信装置200_4が配置される。第1通信装置100_1と第2通信装置200_2とには、例えば、データ送受信部、信号変換部、高周波信号入出力部が設けられる。高周波信号導波路308としては例えば誘電体伝送路を使用する。高周波信号導波路308と、高周波信号導波路308上に配置した複数の通信装置とから構成される信号伝送装置1において、通信装置間の高周波信号導波路308に複数の伝送パスを形成し、通信装置間でマルチプル伝送する。
必要に応じて、伝送対象信号とは異なる第2の情報を、高周波信号の強度で表して他の通信装置に送信するように制御する制御部7を通信装置(第1通信装置100や第2通信装置200)とは別に設けてもよい。制御部7の機能を各通信装置に設けてもよい。
図2には、信号伝送装置1の機能ブロック図の詳細が示されている。図2は、第1通信装置100_1において送信系統を詳細に示しており、第2通信装置200_2において受信系統を詳細に示している。信号伝送装置1は、第1の無線機器の一例である第1通信装置100と第2の無線機器の一例である第2通信装置200がミリ波信号伝送路9(高周波信号導波路308の一例)を介して結合され高周波信号(例えばミリ波帯)で信号伝送を行なうようになっている。
第1通信装置100にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200にはミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203が設けられている。例えば、第1のモジュール実装領域には、第1通信装置100_1が設けられており、第2のモジュール実装領域には第2通信装置200_2が設けられており、第3のモジュール実装領域には第1通信装置100_3が設けられており、第4のモジュール実装領域には第2通信装置200_4が設けられている。
本実施形態では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。これらミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、従前と同様の手法で信号の接続をとる。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。後述する各信号生成部はミリ波信号生成部或いは電気信号変換部の一例である。
第1通信装置100は、基板102上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、前段信号処理部の一例であるLSI機能部104と送信処理用の信号生成部107_1(伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理を行なう送信処理部の一例)及び受信処理用の信号生成部207_1を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。LSI機能部104は、第1通信装置100の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方に送信したい各種の信号を処理する回路や、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。図示しないが、LSI機能部104、信号生成部107_1、信号生成部207_1はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。因みに、半導体チップ103内に伝送路結合部108を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部108とミリ波信号伝送路9とが結合する箇所(つまり無線信号を送信する部分)が送信箇所或いは受信箇所であり、典型的にはアンテナがこれらに該当する。
第2通信装置200は、基板202上に、ミリ波帯での送受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は伝送路結合部208と接続される。因みに、半導体チップ203内に伝送路結合部208を内蔵した構成にすることもできる。伝送路結合部208は、伝送路結合部108と同様のものが採用される。半導体チップ203は、後段信号処理部の一例であるLSI機能部204と受信処理用の信号生成部207_2及び送信処理用の信号生成部107_2を一体化したLSIである。図示しないが、LSI機能部204、信号生成部107_2、信号生成部207_2はそれぞれ各別の構成でもよいし、何れか2つが一体化された構成にしてもよい。
伝送路結合部108及び伝送路結合部208は、高周波信号(ミリ波帯の電気信号)をミリ波信号伝送路9に電磁結合させるもので例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。或いは、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路そのものでもよい。
信号生成部107_1は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、ミリ波信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_1は、ミリ波信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。信号生成部107_2は、LSI機能部204からの信号をミリ波信号に変換し、ミリ波信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。信号生成部207_2は、ミリ波信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114(PS変換部)、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。なお、変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことで、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。本実施例では、特に、受信側で同期検波方式を採用し得る方式を採る。
周波数変換部116は、変調部115によって変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号(高周波信号)を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30ギガヘルツ〜300ギガヘルツの範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず、上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
周波数変換部116としては様々な回路構成を採り得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の高周波信号をミリ波信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、例えばアンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップとミリ波信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、ミリ波信号伝送路9との電磁的な(電磁界による)結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を(この例では高周波信号導波路308を介して)ミリ波信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227(SP変換部)、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。又、注入同期(インジェクションロック)方式を適用して復調搬送信号を生成してもよい。伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とシリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
第1通信装置100と第2通信装置200の間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_n(nは1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。
LSI機能部204は、第2通信装置200の主要なアプリケーション制御を司るもので、例えば、相手方から受信した種々の信号を処理する回路が含まれる。例えば、LSI機能部204は、受信した高周波信号の強度に基づいて伝送対象信号とは異なる第2の情報を特定する情報特定部と、情報特定部が特定した第2の情報に基づいて伝送対象信号の再生処理を行なう再生処理部の機能を備える。
図1との関係では、例えば、LSI機能部104から信号生成部107のパラレルシリアル変換部114まで、又、LSI機能部204からシリアルパラレル変換部227までがデータ送受信部に対応する。変調部115から増幅部117まで或いは増幅部224から復調部226までが高周波信号変換部に対応する。伝送路結合部108や伝送路結合部208が高周波信号入出力部に対応する。
[パラメータ設定]
本実施形態の信号伝送装置1は、更に、パラメータ設定機能を備えている。例えば、第1通信装置100は、第1設定値処理部7100を備える。図では、第1設定値処理部7100を基板102上に備える例で示しているが、第1設定値処理部7100は半導体チップ103が搭載されている基板102とは別の基板に搭載されていてもよい。又、図に示す例では、第1設定値処理部7100は半導体チップ103の外部に備える例で示しているが、第1設定値処理部7100を半導体チップ103に内蔵してもよく、この場合は、第1設定値処理部7100は制御対象となる各機能部が搭載されている基板102と同一の基板102に搭載される。第2通信装置200は、第2設定値処理部7200を備える。図では、第2設定値処理部7200 を基板202上に備える例で示しているが、第2設定値処理部7200は半導体チップ203が搭載されている基板202とは別の基板に搭載されていてもよい。又、図に示す例では、第2設定値処理部7200は半導体チップ203の外部に備える例で示しているが、第2設定値処理部7200を半導体チップ203に内蔵してもよく、この場合は、第2設定値処理部7200は制御対象となる各機能部が搭載されている基板202と同一の基板202に搭載される。更には、第1設定値処理部7100及び第2設定値処理部7200は、通信装置とは別に設けてもよい。
第1設定値処理部7100及び第2設定値処理部7200は、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する。特に本実施形態では、図1に示した制御部7と対応する機能を備え、伝送対象信号とは異なる第2の情報を高周波信号の強度で表して他の通信装置に送信するように制御する。第1設定値処理部7100及び第2設定値処理部7200についての詳細は後述する。
[信号伝送路]
ミリ波の伝搬路であるミリ波信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよいが、本実施形態では、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有する高周波信号導波路308とする。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路9Aにするとよい。誘電体伝送路9Aは、例えば、回路基板そのものでもよいし、基板上に配設されていてもよいし、基板に埋め込まれていてもよい。プラスチックを誘電体素材として使用することもでき、誘電体伝送路9Aを安価に構成できる。尚、ミリ波信号伝送路9(高周波信号導波路308)は誘電体素材に代えて磁性体素材を使用することもできる。
〔片方向通信への対応〕
図2に示した例は、双方向通信に対応した構成であるが、信号生成部107_1と信号生成部207_1の対、或いは、信号生成部107_2と信号生成部207_2の対にすれば、片方向通信に対応した構成になる。因みに、図2に示した構成の「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルであるミリ波信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式と、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex)等が適用される。
[接続と動作]
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信機や受信機等が用いられている。
これに対して、本実施例で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信機や受信機等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯で使用され、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことで高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象としており、装置構成によっては、第1通信装置100と第2通信装置200は、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備えることになる。
信号生成部107は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、LSI機能部104から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107及び信号生成部207は、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介してミリ波信号伝送路9に供給される。
伝送路結合部108は、例えばアンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108はミリ波信号伝送路9と電磁結合され、ミリ波信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。ミリ波信号伝送路9の他端には第2通信装置200側の伝送路結合部208が結合されている。ミリ波信号伝送路9を第1通信装置100側の伝送路結合部108と第2通信装置200側の伝送路結合部208の間に設けることにより、ミリ波信号伝送路9にはミリ波帯の電磁波が伝搬する。伝送路結合部208は、ミリ波信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、設定値(パラメータ)に基づいて予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しLSI機能部204へ供給する。ここまでは第1通信装置100から第2通信装置200への信号伝送の場合で説明したが、第2通信装置200のLSI機能部204からの信号を第1通信装置100へ伝送する場合も同様に考えればよく双方向にミリ波の信号を伝送できる。
[比較例]
図3は、比較例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。図3(A)には、その全体概要が示されている。比較例の信号伝送装置1Zは、第1装置100Zと第2装置200Zが電気的インタフェース9Zを介して結合され信号伝送を行なうように構成されている。第1装置100Zには電気配線を介して信号伝送可能な半導体チップ103Zが設けられ、第2装置200Zにも電気配線を介して信号伝送可能な半導体チップ203Zが設けられている。第1実施形態のミリ波信号伝送路9を電気的インタフェース9Zに置き換えた構成である。電気配線を介して信号伝送を行なうため、第1装置100Zには信号生成部107および伝送路結合部108に代えて電気信号変換部107Zが設けられ、第2装置200Zには信号生成部207および伝送路結合部208に代えて電気信号変換部207Zが設けられている。第1装置100Zにおいて、電気信号変換部107Zは、LSI機能部104に対し、電気的インタフェース9Zを介した電気信号伝送制御を行なう。一方、第2装置200Zにおいて、電気信号変換部207Zは、電気的インタフェース9Zを介してアクセスされ、LSI機能部104側から送信されたデータを得る。
例えば、デジタルカメラ等の固体撮像装置を使用する電子機器においては、固体撮像装置は光学レンズ近傍に配置され、固体撮像装置からの電気信号の画像処理、圧縮処理、画像保存等の各種の信号処理は固体撮像装置の外部の信号処理回路にて処理されることが多い。固体撮像装置と信号処理回路の間では、例えば、多画素化、高フレームレート化に対応するため電気信号の高速転送技術が必要となっている。この対処のするためにLVDSが多く用いられている。LVDS信号を精度よく伝送するためには整合の取れたインピーダンス終端が必要であるが、消費電力の増加も無視できない状況になってきているし、同期が必要な複数のLVDS信号を伝送するためには配線遅延が十分少なくなるように互いの配線長を等しく保つ必要がある。電気信号をより高速転送するために、LVDS信号線数を増やす等の対応を採ることもあるが、この場合、プリント配線板の設計の困難さは増し、プリント配線板やケーブル配線の複雑化と、固体撮像装置と信号処理回路との間を接続する配線のための端子数の増加を招き、小型化、低コスト化の課題となる。さらに、信号線数の増加は次のような新たな問題を生む。線数が増えることによって、ケーブルやコネクタのコストの増大を招く。
これに対して、本実施形態によれば、比較例の電気信号変換部107Z及び電気信号変換部207Zを、信号生成部107及び信号生成部207と伝送路結合部108及び伝送路結合部208に置き換えることで、電気配線ではなく高周波信号(例えばミリ波帯)で信号伝送を行なう。信号の伝送路が、配線から電磁波伝送路に置き換わる。電気配線による信号伝送で用いられていたコネクタやケーブルが不用になり、コストダウンの効果を生むし、コネクタやケーブルに関わる信頼性を考慮する必要がなくなり、伝送路の信頼性を向上する効果を生む。コネクタやケーブルを使用する場合は、その嵌合のための空間や組立時間が必要になるが、高周波信号伝送を利用することで、組立のための空間が不用になり機器を小型化できるし、組立時間を削減できるので生産時間を削減することもできる。
特に、本実施形態では、ミリ波等の電磁波を低損失で伝送できる高周波信号導波路をクレードル装置内に設けておき、高周波信号導波路上に伝送路結合部(カプラ)を有する携帯型電子機器420を置くことで、高周波信号導波路内を通してミリ波等の電磁波を伝えことで、データ転送を行なう。電気配線の接続と比べた場合、高周波信号導波路と伝送路結合部(いわゆるカプラー)の配置は電気配線のコネクタのようにピン配置や接触位置を特定するのもではなく、数ミリメートル〜数センチメートルの誤差を許容できる。高周波信号導波路に伝送路結合部により高周波信号を電磁結合させることで、野外での無線通信をはじめとする一般的な無線接続と比べた場合、電磁波の損失を低くできるので、送信機の電力を低くでき、受信側の構成を簡略化できるので、通信機能の消費電力を低くできるし、通信機能のサイズを小さくできるし、通信機能のコストを低くできる。野外での無線通信をはじめとする一般的な無線接続と比べた場合、機器外からの電波の干渉、逆に、機器外への放射を抑圧することができるので、干渉対策に要するコストやサイズを縮小できる。
<パラメータ設定機能>
図4〜図6は、第1設定値処理部7100及び第2設定値処理部7200のパラメータ設定機能を説明する図である。ここで、図4〜図5は、第1設定値処理部7100と信号生成部107との接続関係及び第2設定値処理部7200と信号生成部207との接続関係を示す図である。図6は、送信電力制御機能を説明する図である。
図4に示す第1例では、第1通信装置100は、第1設定値決定部7110と、第1設定値記憶部7130と、第1動作制御部7150とを具備した第1設定値処理部7100を基板102上に備える。第1設定値決定部7110は、半導体チップ103の各機能部の動作(換言すると第1通信装置100の全体動作)を指定するための設定値(変数、パラメータ)を決定する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。第1設定値記憶部7130は、第1設定値決定部7110により決定された設定値を記憶する。第1動作制御部7150は、第1設定値記憶部7130から読み出した設定値に基づいて半導体チップ103の各機能部(この例では、変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)を動作させる。特に、本実施形態では、第1動作制御部7150には、LSI機能部104から伝送対象信号以外の第2の情報が電力制御情報として入力されており、第1設定値記憶部7130に記憶した情報(伝搬特性等)だけでなく、この電力制御情報(第2の情報)にも基づいて増幅部117を制御して高周波信号の強度を設定する。
図に示す例では、第1設定値処理部7100を基板102上に備える例で示しているが、第1設定値処理部7100は半導体チップ103が搭載されている基板102とは別の基板7102に搭載されていてもよい。又、図に示す例では、第1設定値処理部7100は半導体チップ103の外部に備える例で示しているが、第1設定値処理部7100を半導体チップ103に内蔵してもよく、この場合は、第1設定値処理部7100は制御対象となる各機能部(変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)が搭載されている基板102と同一の基板102に搭載されることになる(図示は割愛する)。
第2通信装置200は、第2設定値決定部7210と、第2設定値記憶部7230と、第2動作制御部7250とを具備した第2設定値処理部7200を基板202上に備える。第2設定値決定部7210は、半導体チップ203の各機能部の動作(換言すると第2通信装置200の全体動作)を指定するための設定値(変数、パラメータ)を決定する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。第2設定値記憶部7230は、第2設定値決定部7210により決定された設定値を記憶する。第2動作制御部7250は、第2設定値記憶部7230から読み出した設定値に基づいて半導体チップ203の各機能部(この例では、増幅部224、周波数変換部225、復調部226等)を動作させる。
図に示す例では、第2設定値処理部7200 を基板202上に備える例で示しているが、第2設定値処理部7200は半導体チップ203が搭載されている基板202とは別の基板7202に搭載されていてもよい。又、図に示す例では、第2設定値処理部7200は半導体チップ203の外部に備える例で示しているが、第2設定値処理部7200を半導体チップ203に内蔵してもよく、この場合は、第2設定値処理部7200は制御対象となる各機能部(増幅部224、周波数変換部225、復調部226)が搭載されている基板202と同一の基板202に搭載されることになる(図示は割愛する)。
図5に示す第2例は、装置外部にて決定された設定値を記憶する点に特徴がある。以下では、第1例との相違点を中心に説明する。第2例では、第1設定値決定部7110に代えて第1入出力インタフェース部7170を備え、第2設定値決定部7210に代えて第2入出力インタフェース部7270を備えている。第1入出力インタフェース部7170と第2入出力インタフェース部7270のそれぞれは、設定値を外部から受け付ける設定値受付部の一例である。第1入出力インタフェース部7170は、第1設定値記憶部7130との間のインタフェース機能をなし、外部から与えられる設定値を第1設定値記憶部7130に記憶し、又、第1設定値記憶部7130に記憶されている設定値を読み出して外部に出力する。第2入出力インタフェース部7270は、第2設定値記憶部7230との間のインタフェース機能をなすもので、外部から与えられる設定値を第2設定値記憶部7230に記憶し、又、第2設定値記憶部7230に記憶されている設定値を読み出して外部に出力する。
第2例の場合、第1設定値処理部7100や第2設定値処理部7200にて設定値を決定するのではなく、外部にて設定値を決定する。例えば、設計パラメータと実機の状態から設定値を決定してもよいし、装置の実働試験に基づいて設定値を決定してもよい。又、何れの場合も、装置ごとに個別の設定値を決定するのではなく、各装置に共通の設定値を決定してもよい。設計パラメータから設定値を決定する場合は、概ねこの場合に該当するし、標準の装置での実働試験に基づいて設定値を決定する場合も、この場合に該当する。
信号伝送装置1や電子機器8においては、送信側の通信装置(実質的には送信処理部:送信部とも称する)と受信側の通信装置(実質的には再生処理部:受信部とも称する)の内の少なくとも一方を備える。送信処理部は、伝送対象信号を高周波信号に変換して無線通信処理の技術を適用して送信する。再生処理部は、送信処理部から送信された高周波信号を受信し伝送対象信号を再生する。ここで、送信部と受信部との間の伝送特性が既知であるものとする。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部と受信部のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送信部と受信部との間の伝送特性を予め知ることができる。そして、送信部の前段及び受信部の後段の内の少なくとも一方には更に、信号処理部と設定値処理部とを備える。信号処理部は、設定値に基づいて、予め定められた信号処理を行なう。設定値処理部は、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する。
伝送特性に対応した設定値や機器内や機器間の信号伝送には限るものではなく、例えば、回路素子のバラツキ補正のためのパラメータ設定も含むが、好ましくは、設定値処理部は、送信部と受信部との間の伝送特性に対応して予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力するのがよい。送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることでパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の無線伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、そのパラメータを装置内部に保持しておくことで、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。
各種回路パラメータを予め決定する際には、機器内で自動的に生成する第1の手法と、無線伝送装置(或いは電子機器)の外部で生成したものを利用する第2の手法の何れをも採り得る。第1の手法をとる際には、設定値処理部は、設定値を決定する設定値決定部と、設定値決定部が決定した設定値を記憶する記憶部と、記憶部から読み出した設定値に基づいて信号処理部を動作させる動作制御部とを有するものとするのがよい。第2の手法をとる際には、設定値処理部は、設定値を外部から受け付ける設定値受付部と、設定値受付部が受け付けた設定値を記憶する記憶部と、記憶部から読み出した設定値に基づいて信号処理部を動作させる動作制御部とを有するものとするのがよい。
信号処理のパラメータ設定としては信号増幅回路(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)、位相調整量、周波数特性等種々のものがあるが、本実施形態では特に送信強度(つまり送信電力設定)に着目する。因みに、ゲイン設定は、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用される。これらの場合、信号処理部は、入力信号の大きさを調整し調整済みの信号を出力する信号処理を行なう振幅調整部を有するものとし、設定値処理部は、入力信号の大きさを調整するための設定値を振幅調整部に入力する。
図6には、送信側に設けられる変調機能部8300の構成が示されている。伝送対象の信号(ベースバンド信号:例えば12ビットの画像信号)はパラレルシリアル変換部8114(P−S:パラレルシリアル変換部114と対応)により、高速なシリアル・データ系列に変換され変調機能部8300に供給される。変調機能部8300は、パラレルシリアル変換部8114からの信号を変調信号として、予め定められた変調方式に従ってミリ波帯の信号に変調する。変調機能部8300としては、変調方式に応じて様々な回路構成を採り得るが、例えば、振幅を変調する方式であれば、2入力型の周波数混合部8302(ミキサー回路、乗算器)と送信側局部発振部8304を備えた構成を採用すればよい。送信側局部発振部8304(第1の搬送信号生成部)は、変調に用いる搬送信号(変調搬送信号)を生成する。周波数混合部8302(第1の周波数変換部)は、パラレルシリアル変換部8114からの信号で送信側局部発振部8304が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号(被変調信号)を生成して増幅部8117(増幅部117と対応)に供給する。伝送信号は増幅部8117で増幅されアンテナ8136から放射される。
[作用効果]
ここで、図6に示すように、送信側においては、増幅部8117から出力される送信信号のレベルを制御する第1設定値処理部7100が設けられている。第1設定値処理部7100は、第1動作制御部7150として、増幅部8117の出力レベルを設定する出力レベルDAC7152を備えている。第1設定値処理部7100は、第2例を採用しているが、第1例のように、第1入出力インタフェース部7170に代えて第1設定値決定部7110を備えてもよい。出力レベルDAC7152は、第1設定値記憶部7130に記憶されている設定値を読み出して、その設定値に基づいて増幅部8117を制御することで、送信出力レベルが適正な値になるようにする。例えば、第1入出力インタフェース部7170には通信装置間の伝搬損失を示す情報等が入力されており、第1動作制御部7150には第2の情報が入力されている。出力レベルDAC7152は、伝搬損失を示す情報だけでなく、第2の情報にも基づいて送信出力レベルを設定可能である。
送信出力レベルを如何様に設定するかについての詳細は後述するが、本実施形態では、特に、伝送対象信号とは異なる第2の情報を高周波信号の強度で表して送信するように設定する。つまり、送信電力を管理するための機構が設けられるのであるが、その目的は、過剰レベルにならないよう、或いは、過小レベルにならないように、或いはSNR(Signal Noise Ratio:信号雑音比、信号対雑音比、S/N)が過小レベルにならないようにすることに限らず、第2の情報を表し得るように高周波信号の強度を設定する。送受信機の配置による伝送距離や伝送路の状態等の伝送特性(通信環境特性)に基づき送信出力レベルを適切に管理することで、高周波信号の強度によって第2の情報の伝送を実現する。
送信電力を管理するための機構として、固定設定(いわゆるプリセット設定)にするのか自動制御にするのか、又、設定レベルの判断を如何様にするのか等の観点から様々な手法を採り得る。例えば、送受信間の伝送特性(通信環境)に基づいて送信出力レベルをプリセット設定する手法を採ることができる。その際には、好ましい態様として、送信装置である送信チップと受信装置である受信チップの間の伝送特性の状態を検知する伝送特性指標検知部を設け、その検知結果である伝送特性指標信号を参照して、送信チップ側の送信出力レベルをプリセット設定できるようにする。例えば、第1設定値決定部7110や第2設定値決定部7210が伝送特性指標検知部の機能をなすようにする。例えば伝送特性指標検知部を受信チップ側に設け(或いは、伝送特性指標検知部は受信チップに内蔵しなくてもよい)、受信した無線信号の状態を検知し、その検知結果である状態検知信号を参照して、送信チップ側の送信出力レベルをプリセット設定する(決定した設定値を第1設定値記憶部7130に記憶しておく)。この手法は、フィードバックによる自動制御の手法ではないが、送信レベルをプリセット設定する際の判断指標として受信側の受信レベルを参照する趣旨である。送受信機の配置による伝送距離や伝送路の状態等の伝送特性に応じて受信レベルが変化するので、送受信間の距離を直接に判断するのではなく、実際の伝送特性を反映した受信レベルを判断指標として使用して、送信レベルを管理するようにする。
<信号処理モジュール>
図7〜図8は、通信機能を持つモジュールの一例である信号処理モジュールの構成例を説明する図である。尚、図示しないが、必要に応じて、電波の周波数帯の高周波信号での伝送の対象としない信号用(電源用も含む)として、従前のようにコネクタ(電気配線)で電気的な接続をとる。
図7(A)に示す第1例の信号処理モジュール320Aは、当該信号処理モジュール320Aとしての主要機能を有する半導体チップ323(半導体チップ103や半導体チップ203と対応する)が高周波信号導波路332上に配置されている。高周波信号導波路332の半導体チップ323とは反対側の面上において、半導体チップ323の近傍に高周波信号(例えばミリ波)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体342(伝送路結合部108や伝送路結合部208と対応)が設けられている。信号処理モジュール320Aは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、半導体チップ323と反対側(図中に破線で示す高周波信号導波路308への設置面側)は、電子機器300の高周波信号導波路308上に配置し易いように、平坦であることが好ましい。更に好ましくは、高周波信号結合構造体342が高周波信号導波路308と接触するように、高周波信号結合構造体342の部分を露出させるとよい。
高周波信号結合構造体342は、電子機器300の高周波信号導波路308と高周波信号を電磁的に結合可能なものであればよく、例えば、誘電体素材そのものの他に、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路そのものが採用されるがこれには限定されない。
因みに、誘電体素材そのもののを高周波信号結合構造体342として使用する場合には、高周波信号導波路332と同じ材質のものが好適であり、異なる材質の場合には誘電率が同じ材質のものが好適である。更には、誘電体素材そのもののを高周波信号結合構造体342として使用する場合には、高周波信号導波路308も、高周波信号導波路332及び高周波信号結合構造体342と同じ材質のものが好適であり、異なる場合には誘電率が同じ材質のものが好適である。何れも、誘電体素材の材質、幅、厚さ等の諸元は使用する周波数に応じて決める。
このような構造の信号処理モジュール320Aを、高周波信号結合構造体342の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ323からの高周波信号を高周波信号導波路332及び高周波信号結合構造体342を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。高周波信号結合構造体342として、マイクロストリップライン等の高周波伝送線路やパッチアンテナ等のアンテナ構造を採用せずに誘電体素材そのもののを使用する場合、高周波信号導波路308、高周波信号導波路332、及び、高周波信号結合構造体342の全てを誘電体素材で連結させることができる。いわゆるプラスティック同士を接触させて高周波信号の伝送路を構成すると云う極めて簡易な構成で、ミリ波通信を確立することができる。
図7(B)に示す第2例の信号処理モジュール320Bは、当該信号処理モジュール320Bとしての主要機能を有する半導体チップ323が高周波信号導波路334上に配置されている。高周波信号導波路334内の半導体チップ323の近傍には、高周波信号(例えばミリ波帯の電気信号)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体344(伝送路結合部108や伝送路結合部208と対応)が構成されている。高周波信号結合構造体344は、電子機器300の高周波信号導波路308と高周波信号を電磁的に結合可能なものであればよく、例えば、アンテナ構造が採用される。アンテナ構造としては、パッチアンテナ、逆F型アンテナ、八木アンテナ、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)等を備えたものが採用されるが、その中でも好適には、実質的に平面アンテナとみなせるものを備えたものを採用するとよい。
信号処理モジュール320Bは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、半導体チップ323と反対側(高周波信号導波路308への設置面側)は、電子機器300の高周波信号導波路308上に配置し易いように、平坦であることが好ましく、更に好ましくは、高周波信号結合構造体344の部分を露出させるとよい。このような構造の信号処理モジュール320Bを、高周波信号結合構造体344の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ323からの高周波信号を高周波信号導波路334及び高周波信号結合構造体344を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
図7(C)に示す第3例の信号処理モジュール320Cは、当該信号処理モジュール320Cとしての主要機能を有する半導体チップ324(半導体チップ103や半導体チップ203と対応する)内に、アンテナ構造等の高周波信号(例えばミリ波帯の電気信号)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体346(伝送路結合部108や伝送路結合部208と対応)が構成されている。実質的に、半導体チップ324そのもので信号処理モジュール320Cが構成されている。高周波信号結合構造体346のアンテナ構造としては、好適にはパッチアンテナや逆F型アンテナ等の実質的に平面アンテナとみなせるものが備えられるが、これに限らず、八木アンテナ、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)等を備えたものでもよい。
半導体チップ324は、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、高周波信号導波路308への設置面側は、電子機器300の高周波信号導波路308上に配置し易いように、平坦であることが好ましく、更に好ましくは、高周波信号結合構造体346の部分を露出させるとよい。このような構造の信号処理モジュール320Cを、高周波信号結合構造体346の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ324からの高周波信号を高周波信号結合構造体346を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
図7(D)に示す第4例の信号処理モジュール320Dは、図7(C)に示した第3例の信号処理モジュール320C(実質的には半導体チップ324)を、高周波信号導波路334上に配置されている。信号処理モジュール320Dは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、高周波信号導波路334の部分を露出させるとよい。このような構造の信号処理モジュール320Dを、高周波信号導波路334の下部に高周波信号導波路308が対向して配置されるように設置すれば、半導体チップ324からの高周波信号を高周波信号導波路334を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
図8(A)に示す第5例の信号処理モジュール320Eは、半導体チップ323が基体上に配置され、基体上の半導体チップ323と同じ面上において、半導体チップ323の近傍に高周波信号(例えばミリ波)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体342が設けられている。半導体チップ323と高周波信号結合構造体342の接続は任意の手法を用いてよい。高周波信号結合構造体342は、矩形の高周波信号導波路332(モジュール筐体)の辺縁に配置されている。信号処理モジュール320Eは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、高周波信号導波路308と高周波信号結合構造体342とが直接に接触するように、高周波信号結合構造体342の部分を露出させるとよい。
このような構造の信号処理モジュール320Eに対して、高周波信号結合構造体342と対向して配置されるように高周波信号導波路308を設置すれば、半導体チップ323からの高周波信号を高周波信号結合構造体342を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。高周波信号結合構造体342として、マイクロストリップライン等の高周波伝送線路やパッチアンテナ等のアンテナ構造を採用せずに誘電体素材そのもののを使用する場合、高周波信号導波路308及び高周波信号結合構造体342の全てを誘電体素材で連結させることができる。いわゆるプラスティック同士を接触させて高周波信号の伝送路を構成すると云う極めて簡易な構成で、ミリ波通信を確立することができる。
図8(B)に示す第6例の信号処理モジュール320Fは、当該信号処理モジュール320Fとしての主要機能を有する半導体チップ324(半導体チップ103や半導体チップ203と対応する)内に、アンテナ構造等の高周波信号(例えばミリ波帯の電気信号)の伝達(カップリング)機能を持つ高周波信号結合構造体346(伝送路結合部108や伝送路結合部208と対応)が構成されている。実質的に、半導体チップ324そのもので信号処理モジュール320Fが構成されている。高周波信号結合構造体346は、矩形の半導体チップ324の辺縁に配置されている。高周波信号結合構造体346のアンテナ構造としては、好適にはパッチアンテナや逆F型アンテナ等の実質的に平面アンテナとみなせるものが備えられるが、これに限らず、八木アンテナ、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)等を備えたものでもよい。半導体チップ324は、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、高周波信号導波路308との電磁結合面側は、高周波信号導波路308との電磁結合をとり易いようにしておくとよい。このような構造の信号処理モジュール320Fに対して、高周波信号結合構造体346と対向して配置されるように高周波信号導波路308を設置すれば、半導体チップ324からの高周波信号を高周波信号結合構造体346を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
図8(C)に示す第7例の信号処理モジュール320Gは、図8(B)に示した第6例の信号処理モジュール320F(実質的には半導体チップ324)が基体上に配置されている。信号処理モジュール320Gは、好ましくは全体が樹脂等でモールドされるがこのことは必須でない。因みに、モールドする場合でも、好ましくは、高周波信号結合構造体346の部分を露出させるとよい。このような構造の信号処理モジュール320Gをに対して、高周波信号結合構造体346と対向して配置されるように高周波信号導波路308を設置すれば、半導体チップ324からの高周波信号を高周波信号結合構造体346を経由して高周波信号導波路308に伝えることができる。
尚、図8(A)に示す第5例〜図8(C)に示す第7例の何れも、信号処理モジュール320は、高周波信号結合構造体342或いは高周波信号結合構造体346(纏めてカプラとも称する)を、矩形の各部材の辺縁に配置している。しかしながらこれは一例であり、例えば矩形の頂点近傍に配置してもよい。又、信号処理モジュール320の全体的な形状は矩形に限らず、円状や三角形状や六角形状等でもよい。
<マルチプル伝送:基本>
[基本概念]
本実施形態においては、高周波信号導波路と、高周波信号導波路と電磁結合可能に配置した複数の送受信機とで信号伝送装置を構成し、各送受信機間に伝送パスを形成し、送受信機間で、マルチプル伝送する(多重伝送を行なう)。基本概念としては、「伝送パス形成に対して、細工のない高周波信号導波路」を使用し、「伝搬損失を利用した伝送方式」を実現する点に特徴がある。送受信機は、半導体パッケージ、モジュール、通信機器等、広範に亘る。
今日、電子機器内や電子機器間の信号伝送において、大容量のデータを扱え或いは高速(例えばリアルタイム)に伝送する技術が求められている。ここで、LVDSや配線数を増やす手法における問題を解決する手法として、例えば、特開2005−204221号公報や特開2005−223411号公報には、電気配線を無線化して伝送する手法が提案されている。しかしながら、一般的な野外(屋外)で使用されているような無線方式(無線通信手法)を適用したのでは、筐体や筐体内の部材による反射等の影響を受け、データ伝送を適正に行なうことが難しいし、電子部材への不要輻射対策等も必要になる等、解決すべき課題がある。
又、特開2005−204221号公報や特開2005−223411号公報にも、電気配線を無線化して伝送する手法が提案されている。例えば、特開2001−060130号公報に記載の技術は、データ伝送をワイヤレスで行ない、極めて少ない端子数で半導体(LSI)を構成することで、全体の簡略化や小型化に貢献している。しかしながら、特開2001−060130号公報に記載の技術のように高周波信号を空間伝搬すると云った、一般的な野外(屋外)で使用されているような無線方式(無線通信手法)を適用したのでは、筐体や筐体内の部材による反射等の影響を受け、データ伝送を適正に行なうことが難しいし、電子部材への不要輻射対策等も必要になる等、解決すべき課題がある。多重伝送を行なう場合にも、これらの問題は、伝送パスを効率的に分離し、高周波信号の干渉を抑えると云う点において問題となる。
特開平11−111890号公報に記載の技術は、両面導体基板にビアホール導体群を一定方向に並べ、誘電体導波管を形成する。マイクロ波およびミリ波等の高周波信号を利用する半導体パッケージなどの高周波配線基板として提供され、製品コスト低減や各種製品仕様に適用できる。しかしながら、同公報の技術では、高周波信号導波路を構成するのに、ビアホール導体群のような特別な構造を必要とするので、製造が面倒であるし、コスト高の問題に繋がる。又、主に回路コンポーネントの接続用途に使用されており、複数の送受信機間で伝送パスを構成し、マルチ伝送を行なうことには特に言及されていない。仮に、同公報の技術を適用してマルチ伝送を行なう場合には構造がさらに複雑化し、前記問題が顕著となる。
特開2005−204221号公報や特開2005−223411号公報に記載の技術を踏まえると、部材による影響や部材に与える影響を抑えつつ、高速或いは大容量の信号伝送を簡易な構成で実現できる技術を実現すること望ましい。又、特開2005−204221号公報や特開2005−223411号公報に記載の技術を踏まえると、高周波信号導波路に複数の伝送パスを構成する際に、特殊な構造を持つことなく、周波数干渉を回避して高速なマルチ伝送できる構成が望ましい。つまり、部材による影響や部材に与える影響を抑えつつ、高速或いは大容量の信号伝送を簡易な構成で実現できる技術であるのがよく、好ましくは、部材による影響や部材に与える影響を抑えつつ、高速或いは大容量の多重伝送を簡易な構成で実現できる技術であるのがよい。
そこで、本実施形態では、第1の側面として、指向性や偏波を利用して信号分離を行なう。例えば、送受信機は、データ送受信部、高周波信号変換部、高周波信号入出力部により構成される。高周波信号入出力部は、伝送パスに対応して構成される。高周波信号導波路としては、例えば誘電体素材で構成された誘電体伝送路を採用する。誘電体伝送路は、例えばプラスチックの板材であり、伝送パス分離のための特別な構造を持たないことを特長とする。高周波信号導波路(例えば誘電体伝送路)上に複数の送受信機を配置し、高周波信号入出力部を介して、高周波信号導波路に高周波信号(例えばミリ波信号)を結合する。高周波信号導波路上に複数の送受信機を配置し、複数の伝送パスを形成して、送受信機相互でデータを送受信する。この際には、送受信機間において、次のように伝送パスを構成する。即ち、先ず、送受信機同士が互いに伝送可能なように送受信機を配置する。例えば、基本的な事項として、伝送パスの伝搬損失が、送受信機の送信電力或いは受信電力を満たすことが要求されるし、所望のデータ伝送レートに対応した伝送帯域が得られることが要求される。
ここで、ただ配置するだけでは良好な伝送特性(伝搬損失、伝送帯域)が得られないので、高周波信号入出力部のアンテナ指向性を利用する等構成を工夫することにより、所望の伝送帯域が得られるように配置する。例えば、高周波信号入出力部を構成するアンテナの指向性や偏波により分離する。高周波信号入出力部として、送受信機に対して水平方向の指向性を持つアンテナ(例えばダイポール、八木)を使用して分離を行なってもよい。この場合、送受信機間を高周波信号導波路に対して水平に高周波信号を伝送する。或いは、高周波信号入出力部として、送受信機に対して垂直方向の指向性を持つアンテナ(例えばパッチ)を使用して分離を行なってもよい。この場合、送受信機間を高周波信号導波路に対して垂直に高周波信号を伝送する。更には、水平方向と垂直方向とを併用した分離を行なってもよい。
更には、偏波を利用して信号分離を行なってもよい。例えば、直線偏波と円偏波を利用することで、信号分離を行なうことができる。又、直線偏波を採用する場合でも、水平偏波と垂直偏波を利用することで、信号分離を行なうことができる。又、円偏波を採用する場合でも、右旋偏波と左旋偏波を利用することで、信号分離を行なうことができる。何れも、信号分離を行なうことが可能であるから、多重伝送を行なうことができる。
因みに、円偏波は、進行方向をZ軸としたときのX軸方向の電界の振幅とY軸方向の電界の振幅とが互いに1/4λ(90度)の位相ずれを生じているものである。円偏波には、X軸方向の電界の振幅のY軸方向の電界の振幅に対する位相が進んでいるか遅れているかによって右旋偏波と左旋偏波とがある。右旋偏波と左旋偏波は、送信側と受信側で対にして使用する。つまり、送信側に右旋偏波を送信する円偏波プローブを使用する場合は、受信側に右旋偏波を受信する円偏波プローブを使用し、送信側に左旋偏波を送信する円偏波プローブを使用する場合は、受信側に左旋偏波を受信する円偏波プローブを使用する。
右旋円偏波及び左旋円偏波の直交する2つの偏波(直交偏波とも称する)を用いれば、周波数分割多重やその他の多重手法を適用せずに、同一方向の2系統の通信や双方向の通信を行なうことができる。右旋偏波を送信(又は受信)するとともに左旋偏波を送信(又は受信)する2偏波共用が可能となる。直交偏波(右旋円偏波、左旋円偏波)を利用することで、周波数分割多重やその他の多重手法を適用しなくても同じ搬送周波数を使用しながら2倍の情報を伝送することができる。
又、本実施形態では、第2の側面として、所定の伝送方式によって、高スループットなマルチ伝送を実現するとともに、この際には、伝送パワーに伝送対象情報以外の情報(第2の情報)を重畳する。送信機が規定された数種の送信電力で送信することにより、受信機に対して送信内容以外の情報を伝達するものであり、「伝送パワーに情報を(implicitに)載せる」という点に特徴がある。運用としては、高周波信号導波路の配置に際し、予め伝送パスの通過特性(特に伝搬損失や通過帯域等)が分かっているものとする。伝送パワーに重畳する「送信内容以外の情報」としては、例えば、宛先情報、フレーム情報等、様々なものがある。フレーム情報としては、フレームの種類やアプリケーションの種類や、フレーム長情報等が該当する。
例えば、受信機ごとに受信電力設定値を設定し、送信機には受信電力設定値に対応するように送信電力を調整して高周波信号を送出する機能を持たせる。受信機ごとに受信電力を設定し、受信機が、設定された受信電力で高周波信号を受信するように、送信側が送信電力制御を行なう。「受信機ごと」と称しているが、「それぞれ各別」の受信電力設定値を使用することに限らず、「全て」に或いは「一部」に共通の受信電力設定値を使用してもよい。受信機は受信した高周波信号が、自身に設定されている受信電力設定値に対応するときには、受信した高周波信号が自分宛と判断して受信処理(詳しくは復調処理)を行ない、それ以外は他の受信機宛と判断して受信処理(詳しくは復調処理)を行なわない。他の受信機宛と判断した際には、例えばスリープモード等低消費電力状態になるとよい。
好適には(例えば指向性や偏波等で伝送パスが分離されていないとき)、時分割多重し、複数の送受信機に対し、送受信スロットを割り当てる。送信スロットにおいて送出された高周波信号に対し、自身の受信電力設定値の高周波信号を自分宛と判断して受信する。複数の送受信機のデータ送信タイミングが時分割多重されることで、伝送パスが分離されていなくても、混信の影響を排除できる。
特定のタイミングにおいては、受信電力に拘わらず各受信機は受信処理(詳しくは復調処理)を試みるのがよい。例えば、送受信処理の開始時や中断後の再開時等に適用するのがよい。何れかの送信機が高周波信号を発していれば、自分の送信タイミングではないと判断し、その送信機の送信タイミングと予め定められている送信順とに基づき自分の送信タイミングを特定する。何れの送信機からも高周波信号が発っせられていないときには、自分が最初に(マスターとなって)、送信処理を開始する。この際には例えば、自分を特定する情報を高周波信号に載せる、或いは全体の送信順の基準タイミングを規定する同期信号を高周波信号に載せる、等して全体の処理が同期して行なわれるようにするとよい。
1対多の伝送を行ないたい場合には、それ専用の送信スロットを割り当て受信を試みてもよい。こうすることで、送受信機間で、高周波信号導波路を介した高速なマルチ伝送を行なうことができる。尚、周波数分割多重を適用してマルチ伝送を行なうこともできる。即ち、キャリア周波数により分離する方式である。例えば、40、60、80、100、120ギガヘルツ等をキャリア周波数に使用する。
[ノード配置]
図9〜図11は、ノード配置の一例の基本概念を説明する図である。何れも、4つのノードの配置例である。ノードには、例えば、信号処理モジュール320A〜信号処理モジュール320Dの何れかを利用したミリ波送受信機を配置する。各ノードの高周波信号結合構造体342等と電磁結合可能に高周波信号導波路308を配置する。例えば、信号処理モジュール320が搭載される回路基板そのものを高周波信号導波路308として利用することもできるし、回路基板とは別に高周波信号導波路308を使用して各ノードの高周波信号結合構造体342等と電磁結合をとってもよい。
例えば、図9(A)に示す第1例(その1)は、板状の高周波信号導波路308(例えば誘電体伝送路9A)の表面に、例えば信号処理モジュール320A〜信号処理モジュール320Dの何れかを利用した送受信機を配置している。例えば、第3例の信号処理モジュール320Cや第4例の信号処理モジュール320Dを利用する場合であれば、基板上のLSI配置として適用できる例である。この場合、ミリ波伝送の対象としない低速・低容量の信号や電源(GNDパターンも含む)用に関してはパターン配線が使用されるが、ミリ波伝送の対象とされる高速・大容量の信号に関してはパターン配線を使用しない。更には、高周波信号導波路308をなす回路基板には、ミリ波伝送のための構造を持たない。必須ではないが、高周波信号導波路308の持つ損失と指向性或いは偏波を利用してグループ分け等を行なってもよい。
図9(B)に示す第1例(その2)は、回路基板とは別の高周波信号導波路308を使用する例であり、回路基板に搭載された各信号処理モジュール320の高周波信号結合構造体342等を連結するように高周波信号導波路308を設けている。
図9(C)に示す第1例(その3)は、板状の高周波信号導波路308の側面に、信号処理モジュール320を配置し、平行に並べる例である。基板間を接続するコネクタへの応用として好適な態様である。
図10に示す第2例は、図10(A)に示すように、リング状の高周波信号導波路308(導波管)を利用して、円周状に高周波信号を伝送する形態である。導波管として機能する高周波信号導波路308には終端がないので、高周波信号は円周上を安定したモード(例えばTE)で伝送する。図10(B)に示すように、ミリ波送受信機からプローブを垂直方向に挿入して導波管結合させる。送受信機が高周波信号導波路308の伝送特性に影響を与えないように間隙を設けている。第2例は、所定の伝送方式(時分割、アービトレーション)により共有バスを実現するのに好適な形態である。
図11に示す第3例は、扇型の高周波信号導波路308の表面或いは側面に、送受信機を配置する形態である。第3例は、1対多のマルチプル伝送を行なう上で、伝送距離を一定にすることができる形態である。
<マルチプル伝送:指向性・偏波による分離>
図12〜図18は、指向性を利用したマルチプル伝送を説明する図であって、詳しくは、高周波信号結合構造体の指向性と、高周波信号導波路との間の電磁結合度及び高周波信号の伝送方向との関係を説明する図である。ここで、図12は、高周波信号導波路の同一平面内での水平方向の指向性に着目した図である。図13は、高周波信号導波路の同一平面内での垂直方向の指向性に着目した図である。図14は、高周波信号導波路の表裏での垂直方向の指向性に着目した図である。図15は、高周波信号導波路の同一平面内での水平方向の指向性と表裏での垂直方向の指向性とに着目した図である。図16は、直線偏波による分離を説明する図である。図17は、円偏波による分離を説明する図である。図18は、直線偏波及び円偏波による分離を説明する図である。
[同一平面内:水平方向]
例えば、図12は、高周波信号導波路の同一平面内に着目した場合における指向性が水平方向の場合を示す。送受信機に対して、水平方向の指向性を持つアンテナ(ロッド、ダイポール、八木等)による分離を行なう形態である。この場合、ダイポールアンテナや八木アンテナを板状の高周波信号導波路332上に配置する。例えば、ダイポールアンテナや八木アンテナを送受信機の底面に構成(例えば基板パターンにより構成)し、板状の高周波信号導波路308上に配置する。当該アンテナの指向性は高周波信号導波路332の長手方向に向いており、放射された高周波信号は水平方向に高周波信号導波路308と結合して高周波信号導波路308内を伝わる。高周波信号導波路308内を水平方向に伝わる高周波信号の電力は、進行方向に対して強く、進行方向から離れるに従い弱くなる。更に、伝送パスから距離が離れるほど誘電体損による高周波信号の減衰が大きくなる。従って、指向性と減衰を利用して、同一の高周波信号導波路308に伝送パスを分離して複数形成することができる。例えば、図示のように、90度方向にアンテナを配置することにより、4方向に伝送パスを形成することができる。
[同一平面内:垂直方向]
一方、信号処理モジュール320と高周波信号導波路308との間の高周波信号の電磁気的な結合をとる点では垂直方向の指向性を持つアンテナを使用して結合させるのが好適とも云える。図13は、高周波信号導波路の同一平面内に着目した場合における指向性が垂直方向の場合を示す。この場合、高周波信号結合構造体342等としては、例えば、パッチアンテナを、板状の高周波信号導波路332(図7参照)上に配置する。パッチアンテナの指向性は高周波信号導波路308の垂直方向に向いており、放射された高周波信号は垂直方向(厚み方向)に高周波信号導波路308と結合し、向きを水平方向に変えて高周波信号導波路308内を伝わる。水平方向に向きを変える際に、その方向を規定する部材(方向規定部材308a)を高周波信号導波路308に設けておくとよい。水平方向の指向性と比べると、高周波信号導波路308との電磁結合度が優るが、高周波信号導波路308内を水平方向に高周波信号を伝送させる効率は劣る。
[高周波信号導波路の表裏:垂直方向]
垂直方向の指向性を利用すれば、高周波信号導波路の表裏での高周波信号の結合が好適になる。例えば、図14は、高周波信号導波路の表裏に着目した場合における指向性が垂直方向の場合を示す。送受信機に対して、垂直方向の指向性を持つアンテナ(例えばパッチアンテナやスロットアンテナ)による分離を行なう形態である。この場合、高周波信号結合構造体342等としては、例えば、パッチアンテナを、板状の高周波信号導波路332(図7参照)の底面に構成(例えば基板パターンにより構成)し、板状の高周波信号導波路308上に配置する。パッチアンテナの指向性は高周波信号導波路308の垂直方向に向いており、放射された高周波信号は垂直方向(厚み方向)に高周波信号導波路308と結合し、高周波信号導波路308内を垂直方向(厚み方向)に伝わる。水平方向の場合と同様、指向性と減衰を利用して(厚みが薄い場合は指向性に依存)、同一の高周波信号導波路308に伝送パスを分離して複数形成することができる。
[水平方向+垂直方向]
更には、図15に示すように、水平方向の指向性と垂直方向の指向性を併用することもできる。送受信機に対して、水平方向の指向性を持つアンテナによる分離と、垂直方向の指向性を持つアンテナによる分離を行なう形態である。水平方向に関しては、ダイポールアンテナや八木アンテナを送受信機の底面に構成(例えば基板パターンにより構成)し、板状の高周波信号導波路308上に配置する。垂直方向に関しては、例えば、パッチアンテナを、板状の高周波信号導波路332の底面に構成(例えば基板パターンにより構成)し、板状の高周波信号導波路308上に配置する。こうすることで、1つの高周波信号導波路308で水平方向の伝送パスと垂直方向の伝送パスを形成することができる。
[偏波:直線偏波(水平偏波、垂直偏波)]
図16は、直線偏波を利用したマルチプル伝送を説明する図である。ここでは、図12に対しての変形例で示すが、その他の図13〜図15にも適用できる。図12〜図15に示した例では、偏波については触れておらず、換言すると同じ偏波であることを前提に説明した。しかしながら、例えば、直線偏波を利用しても信号分離を行なうことができる。指向性による信号分離と併用することで、同一の高周波信号導波路308に更に多くの伝送パスを分離して複数形成することができる。例えば、図中の高周波信号結合構造体342の参照子の末尾“H”は水平偏波を示し、末尾“V”は垂直偏波を示す。こうすることで、指向性を利用して形成される各伝送パスのそれぞれについて、更に2種の高周波信号を伝送することができる。
[偏波:円偏波(右旋偏波、左旋偏波)]
図17は、円偏波を利用したマルチプル伝送を説明する図である。ここでは、図14に対しての変形例で示すが、その他の図12〜図13、図15にも適用できる。図12〜図15に示した例では、偏波については触れておらず、換言すると同じ偏波であることを前提に説明した。しかしながら、例えば、円偏波を利用しても信号分離を行なうことができる。指向性による信号分離と併用することで、同一の高周波信号導波路308に更に多くの伝送パスを分離して複数形成することができる。例えば、図中の高周波信号結合構造体342の参照子の末尾“L”は左旋偏波を示し、末尾“R”は右旋偏波を示す。こうすることで、指向性を利用して形成される各伝送パスのそれぞれについて、更に2種の高周波信号を伝送することができる。
[偏波:直線偏波+円偏波]
図18は、直線偏波及び円偏波を利用したマルチプル伝送を説明する図である。ここでは、図12に対しての変形例で示すが、その他の図13〜図15にも適用できる。図16に示した直線偏波と図17に示した円偏波とを組み合わせることで、更に多くの種の高周波信号を伝送することができる。例えば、水平偏波と垂直偏波の何れか一方(図は水平偏波)と、右旋偏波と左旋偏波の何れか一方(図は右旋偏波)とを組み合わせることで、指向性を利用して形成される各伝送パスのそれぞれについて、更に2種の高周波信号を伝送することができる。図示しないが、水平偏波及び垂直偏波並びに右旋偏波及び左旋偏波を組み合わせることで、指向性を利用して形成される各伝送パスのそれぞれについて、更に4種の高周波信号を伝送することができる。
<マルチプル伝送:送信電力への情報重畳>
[電力強度を利用した情報重畳の原理]
図19は電力強度を利用した情報重畳の原理を説明する図であって、送受信機の配置条件を説明する図である。この図から、2点間伝送におけるノード配置と伝搬損失との関係が理解される。
図19(A)に示すように、2つの通信装置(Node_A、Node_B)の間に高周波信号導波路308が存在している。例えば、2つの通信装置(Node_A、Node_B)が平板状の高周波信号導波路308の面に配置されており、高周波信号導波路308を介して高周波信号の伝送が能になっている。高周波信号導波路308は、フェージングの影響等を大きく受ける一般的な無線伝送とは違い、「固定的なロス」として伝送路を見積もれる点に特徴があり、それを利用する。つまり、「規定できる伝搬損失を利用した伝送方式」といえる。2つの通信装置(Node_A、Node_B)の間(伝送パス1)の信号伝送における高周波信号導波路308によるロス(伝搬損失)をLs_1とする。
送信機の送信電力と伝送パスの伝搬損失Ls_1によって、受信機の受信電力が決まる。受信レベルが受信回路の動作範囲内となるように伝送を行なうためには、図19(B)に示すように、伝搬損失Ls_1に対して、送信電力及び受信電力が送受信回路の特性を満たす必要がある。送信機から発せられた高周波信号は、受信機で受信されたとき、伝搬損失Ls_1分だけ減衰する。更に、図19(C)に示すように、所望のデータ伝送レートに対応した伝送帯域が得られる必要がある。例えば、伝送帯域を半値幅で規定する。伝搬損失Ls_1は、通過特性における平坦部から3デシベル低下した伝送帯域(半値幅)が与えられる部分までと規定する。これらを踏まえて、受信電力強度(受信レベル)が、受信機の動作可能範囲内となるように、送信機は、伝搬損失Ls_1分を見越して送信電力強度(送信レベル)を設定する。動作可能範囲内で送信電力値を使い分けることで、伝送データとは異なる情報を送信電力へ重畳すること、つまり、伝送対象信号とは異なる第2の情報を高周波信号の強度で表して伝送することができる。
<マルチプル伝送:具体的な適用例>
以下に、送信電力への情報重畳を適用した場合に着目して、本実施形態のマルチプル伝送の具体的な適用例について説明する。尚、以下では、理解を容易にするべく、3つのノード(送受信機:Node_A、Node_B、Node_C)間でのミリ波伝送(単に「3点間伝送」とも称する)の例で説明する。各通信装置には、伝送相手に対する伝送パスの伝搬損失が既知として与えられているとする。
[3点間伝送]
図20は、3点間伝送におけるノード配置と伝搬損失との関係を説明する図である。本実施形態の3点間伝送においては、図20(A)に示すように、第1の通信装置(送受信機)が第1のノード(Node_A)に配置されており、第2の通信装置(送受信機)が第2のノード(Node_B)に配置されており、第3の通信装置(送受信機)が第3のノード(Node_C)に配置されている。第1のノード(Node_A)と第2のノード(Node_B)との間の伝送パスを伝送パス1とし、その伝送パス1における伝搬損失を第1の伝搬損失(Ls_1)とする。第2のノード(Node_B)と第3のノード(Node_C)との間の伝送パスを伝送パス2とし、その伝送パス2における伝搬損失を第2の伝搬損失(Ls_2)とする。第1のノード(Node_A)と第3のノード(Node_C)との間の伝送パスを伝送パス3とし、その伝送パス3における伝搬損失を第3の伝搬損失(Ls_3)とする。各ノード間で伝送される高周波信号としては例えばミリ波帯(ミリ波信号)を使用する。送信ノード(通信装置の送信機能部分)αから受信ノード(通信装置の受信機能部分)βへの送信電力強度(送信レベル)をM_αβ(α、βはA、B、Cの何れかでありα≠β)とし、送信ノードαからの高周波信号を受信した受信ノードβにおける受信電力強度(受信レベル)をN_αβ(α、βはA、B、Cの何れかでありα≠β)とする。
この場合における、送信電力強度と受信電力強度との関係は、図20(B)に示すようなレベルダイヤグラムで表すことができる。尚、図20(B)では、後述の実施例1及び実施例2との対応のため、ある受信ノードにおける受信電力強度が一定の値となるように、各送信ノードにおける送信電力強度を設定する場合で示している。送信ノードαからの高周波信号を受信した受信ノードβにおける受信電力強度N_αβは「第1のノードの送信電力強度−伝送パス1の伝搬損失」となるので、「N_αβ=M_αβ−Ls_γ」となる。例えば、第1のノード(Node_A)から第2のノード(Node_B)へ高周波信号が伝送されるとき、第2のノード(Node_B)における受信電力強度N_12は「M_12−Ls_1」となり、第1のノード(Node_A)から第3のノード(Node_C)へ高周波信号が伝送されるとき、第3のノード(Node_C)における受信電力強度N_13は「M_13−Ls_3」となる。第2のノード(Node_B)から第1のノード(Node_A)へ高周波信号が伝送されるとき、第1のノード(Node_A)における受信電力強度N_21は「M_21−Ls_1」となり、第2のノード(Node_B)から第3のノード(Node_C)へ高周波信号が伝送されるとき、第3のノード(Node_C)における受信電力強度N_23は「M_23−Ls_2」となる。第3のノード(Node_C)から第1のノード(Node_A)へ高周波信号が伝送されるとき、第1のノード(Node_A)における受信電力強度N_31は「M_31−Ls_3」となり、第3のノード(Node_C)から第2のノード(Node_B)へ高周波信号が伝送されるとき、第2のノード(Node_B)における受信電力強度N_32は「M_32−Ls_2」となる。
実施例1は、伝送パワーを利用して宛先情報を送る点に特徴がある。詳しくは、各通信装置(Node_A、Node_B、Node_C)に対して、受信電力設定値Xを固定的に与え、送りたい相手(受信ノード)における受信電力強度が予め定められた受信電力設定値Xになるように送信ノードにおける送信電力強度を制御する点に特徴がある。換言すると、受信電力強度が予め定められた値になるように送信電力を制御して高周波信号(例えばミリ波)を送出することにより、送りたい相手(受信ノード)を特定する方式であり、送信電力強度(或いは受信電力強度)に受信ノードを特定する情報(つまり宛先情報)を重畳する点に特徴がある。送信機(送信側の通信装置)は、宛先(受信側)の通信装置との間の伝搬損失に基づいて高周波信号の強度を設定する。詳しくは、受信電力設定値Xに伝搬損失分を加算した値を送信電力強度に設定する。特に、後述の実施例2との相違点として、各ノードに対して、各別の受信電力設定値Xを固定的に与え、各ノードは、受信レベルと自身に設定されている受信電力設定値Xとを比較し、その差が一定範囲内であれば、受信信号を自身宛の信号であると判断する点に特徴がある。
[送信電力設定]
図21は、実施例1の3点間伝送におけるノード配置と伝搬損失との関係を説明する図である。例えば、受信ノードごとに固定の受信電力設定値を設定する。送信ノードは、受信電力設定値に対応するように送信電力を制御して高周波信号(例えばミリ波信号)を送出する。各送信ノードが使用する搬送周波数は同じであるとする。この場合、各送信信号が混信しないように、時分割多重を適用する。
例えば、3つの通信装置に対し、送信スロットを割り当てる(後述の図22〜図24を参照)。電子機器内の通信の場合や通信相手が特定可能な比較的近距離の機器間通信の場合、事前でのスロット数の割り当てが可能である。例えば、N点間伝送では、1フレームインターバル当たりのスロット数をNとする。1フレームインターバルとは総スロット数(本例では3スロット)である。スロットサイズやフレームインターバル等の時間情報を既知とすることができるし、A→B→Cの順にスロット割当てがなされることも既知とすることができる。3つの通信装置は、自身に割り当てられたタイムスロット時に送信処理を行なう。この際には、好ましくは、各送信ノードが同期して送信処理を行なうことが好ましく、そのためには、何れかの送信ノードがマスターとなり、その他はスレーブとなり、マスターの送信ノードから送られた高周波信号に重畳されている同期用の基準信号に基づいて信号処理用の同期信号を例えば位相同期回路等により生成(再生)し、この再生した同期信号に同期して処理を行なえばよい。
受信ノードは、各送信スロットにおいて送出された高周波信号に関し、スロット先頭部を受信してその受信レベルを判定し、自身の受信電力設定値Xの高周波信号であるときには自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。必須ではないが、スロット先頭部を受信した結果、自分宛の高周波信号ではないと判断したときは、当該スロットでは受信動作を継続せずにパワーセーブしてもよい。尚、1対多の通信形態をとりたい場合(典型的にはブロードキャストしたい場合)は、ブロードキャスト用のスロットを設け、その区間ではどのパワーであれば受信を試みるとよい。
図21(A)に示した例では、受信電力設定値X_γ(γはA、B、Cの何れかである)として、第1のノード(Node_A)には受信レベルa(=X_A)、第2のミリ波送受信機(Node_B)には受信レベルb(=X_B>受信レベルa)、第3のミリ波送受信機(Node_C)には受信レベルc(=X_C>受信レベルb)が固定的に与えられている。又、下限側と上限側の各閾値が同じあるとし、閾値Th_γ(γはA、B、Cの何れかである)が設定される。尚、下限側の閾値と上限側の閾値とは同じある必要はなく異なっていてもよい。第1のミリ波送受信機(Node_A)は、受信レベルN_α1が受信レベルa±閾値Th_A内にあれば、当該タイムスロットの受信信号を自身宛の高周波信号であると判断する。第2のミリ波送受信機(Node_B)は、受信レベルN_α2が受信レベルb±閾値Th_B内にあれば、当該タイムスロットの受信信号を自身宛の高周波信号であると判断する。第3のミリ波送受信機(Node_C)は、受信レベルN_α3が受信レベルc±閾値Th_C内にあれば、当該タイムスロットの受信信号を自身宛の高周波信号であると判断する。
他の受信ノード宛の高周波信号を、自身宛の高周波信号であると誤判定しないようにすることが好ましい。このためには、前例であれば、図21(B)に示すように、「(受信レベルa+閾値Th_A)<(受信レベルb−閾値Th_B)」かつ「(受信レベルb+閾値Th_B)<(受信レベルc−閾値Th_C)」となるようにすればよい。
例えば、第1の伝搬損失Ls_1は「2」であり、第2の伝搬損失Ls_2は「4」であり、第3の伝搬損失Ls_3は「6」であるとする。受信レベルaは「10」であり、受信レベルbは「11」であり、受信レベルcは「12」であるとする。即ち、第1の受信ノードに対して与えられる受信電力設定値N_α1は「10」であり、第2の受信ノードに対して与えられる受信電力設定値N_α2は「11」であり、第3の受信ノードに対して与えられる受信電力設定値N_α3は「12」であるとする。この場合における、送信電力強度と受信電力強度との関係は、図21(C)に示すようなレベルダイヤグラムで表すことができる。即ち、第1のノード(Node_A)から第2のノード(Node_B)へ高周波信号を伝送するときの第1のノード(Node_A)における送信電力強度M_12は、「N_12+Ls_1=11+2=13」を基準に閾値Th_B内にすればよい。第1のノード(Node_A)から第3のノード(Node_C)へ高周波信号を伝送するときの第1のノード(Node_A)における送信電力強度M_13は、「N_13+Ls_3=12+6=18」を基準に閾値Th_C内にすればよい。第2のノード(Node_B)から第1のノード(Node_A)へ高周波信号を伝送するときの第2のノード(Node_B)における送信電力強度M_21は、「N_21+Ls_1=10+2=12」を基準に閾値Th_A内にすればよい。第2のノード(Node_B)から第3のノード(Node_C)へ高周波信号を伝送するときの第2のノード(Node_B)における送信電力強度M_23は、「N_23+Ls_2=12+4=16」を基準に閾値Th_C内にすればよい。第3のノード(Node_C)から第1のノード(Node_A)へ高周波信号を伝送するときの第3のノード(Node_C)における送信電力強度M_31は、「N_31+Ls_3=10+6=16」を基準に閾値Th_A内にすればよい。第3のノード(Node_C)から第2のノード(Node_B)へ高周波信号を伝送するときの第3のノード(Node_C)における送信電力強度M_32は、「N_32+Ls_2=11+4=15」を基準に閾値Th_B内にすればよい。
[動作シーケンス:送信開始時]
図22は、実施例1におけるマルチプル伝送の送信処理開始当初の動作シーケンスを説明する図である。前述のように、1フレームインターバル当たりのスロット数を3とし、A→B→Cの順にスロット割当てがなされるとする。送信開始時、各通信装置は、少なくとも1フレームインターバル分受信処理を行なう。そして、送信処理を開始したい何れかの通信装置は、任意のスロットで送信処理を開始する。最初は、だれもいないので任意のスロットで送信処理を開始できる。例えば、第2のノード(Node_B)がマスターとなって最初に任意のスロットで送信処理を開始したとする。この場合、その任意の送信スロットが第2のノード(Node_B)用のタイムスロットBとなる。
このとき、第2のノード(Node_B)は、自身を示すマスター情報を高周波信号に載せて送出する。つまり、最初に送信処理を開始するマスターのノードは、自身を特定するマスター情報を含む伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理を開始する。マスター情報としては、例えば、送信者情報(Transmitter Address)を使用する。他のノードは、受信したマスター情報から最初に送信処理を開始したノードを特定し、そのマスター情報から自身に割り当てられる送信スロットを特定する。つまり、マスターのノード以外のノードは、受信したマスター情報に基づいて自分の送信処理タイミングを特定し送信処理を開始する。
例えば、第2のノード(Node_B)がマスターとなって最初に任意のスロットで送信処理を開始するとき、第1のノード(Node_A)の送信スロットの次に送信を行なうことが基本であるが、だれもいないので任意のスロットで送信処理を開始する。この際の高周波信号を受信した第1のノード(Node_A)及び第3のノード(Node_C)は、当該スロットは第2のノード(Node_B)用のタイムスロットBであると特定することができる。これを踏まえて、第3のノード(Node_C)はタイムスロットBの次の送信スロットを自身用のタイムスロットCとして送信処理を行なうことができ、又、第1のノード(Node_A)はタイムスロットBの前の送信スロットを自身用のタイムスロットAとして送信処理を行なうことができる。更に、第2のノード(Node_B)はタイムスロットAの次の送信スロットを自身用のタイムスロットBとして送信処理を行なうことができる。例えば、第1のノード(Node_A)は、第2のノード(Node_B)がいるようなので、その前のスロットが自分(A)のものと認識し、送信を開始する。第3のノード(Node_C)は、第1のノード(Node_A)や第2のノード(Node_B)がいるようなので、それらの次のスロットが自分(C)のものと認識し、送信を開始する。同期信号を使用せずに、最初に送信処理を開始したマスターのノードが自身を特定する情報を送出することでも実質的に同期した処理を行なうことができる。
各通信装置のそれぞれが各別に処理サイクルを管理すると、それぞれの処理サイクルに発生し得るずれが規定範囲を超えることが起こり得る。この不都合を解消するべく、マスターのノード(この例では第2のノード(Node_B))は、マスター情報を一定サイクルごと(送信処理ごとには限定されない)に送信するとよい。
[送信開始時:第1の変形例]
最初に送信処理を開始するマスターのノードは、自身を特定するマスター情報を含む伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理を開始する代わりに、全体の処理タイミングを規定する同期信号を含む伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理を開始してもよい。例えば、フレームインターバルの先頭のタイミングを規定する同期信号を高周波信号に載せて送出する。そして、第2のノード(Node_B)は、第1のノード(Node_A)の送信スロットの次に送信を行なうのであるから、同期信号から1スロット分後のスロットで(つまり第1のノード(Node_A)用のタイムスロットAを開けて)、送信処理を開始する。他のノードは、この同期信号をトリガにして、自身のスロットタイミングで送信処理を行なう。こうすることで、各ノードが使用するタイムスロットに不整合が生じないようにできる。この場合にも、各通信装置のそれぞれが各別に処理サイクルを管理すると、それぞれの処理サイクルに発生し得るずれが規定範囲を超えることが起こり得る。この不都合を解消するべく、マスターのノード(この例では第2のノード(Node_B))は、同期信号を一定サイクルごと(送信処理ごとには限定されない)に送信するとよい。
[送信開始時:第2の変形例]
マスターのノードが自身を特定するマスター情報或いは全体の処理タイミングを規定する同期信号を含む伝送対象信号を高周波信号に変換して送信処理を開始するのではなく、全体の処理タイミングを制御する制御部を設け、制御部の制御の元で各通信装置が処理を行なうようにしてもよい。この場合、制御部は、各通信装置に当該通信装置の送信処理可能な時点を通知する。通信装置は、通知された送信処理可能な時点に送信処理を行なう。
[送受信処理]
図23〜図24は、実施例1における送受信処理中の動作を説明する図である。ここで、図23は、実施例1におけるアクセス制御を説明する図である。図24は、実施例1におけるマルチプル伝送の送受信処理中の動作シーケンスを説明する図である。
図23(A)に示すように、数値例は前例の通りである。第1のノード(Node_A)は、自身に割り当てられたタイムスロット(図23(B)中や図24中のA_n:nは整数)時に、送りたい相手の受信ノードの受信電力設定値に対応するように送信電力強度を設定して送信処理を行なう。因みに、各ノードは、送信権利は順番(A→B→C)にやってくることが既知である。各送信ノードは、各フレームインターバルにおける自身に割り当てられたタイムスロット時に送りたい相手の受信ノードの受信電力設定値に対応するように送信電力強度を設定して送信処理を行なう。受信ノードは、受信した高周波信号の強度に基づいて自分宛の信号か否かを判別し、自分宛であれば受信して復調処理を行なうが、自分宛でなければ破棄する。好ましくは、自分用に規定されている受信強度情報に適合しない高周波信号を受信すると一定時間低消費電力状態になるとよい。
例えば、第1のフレームインターバルにおいて先ず、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットA_1のときに、第2のノード(Node_B)との間の第1の伝搬損失Ls_1(=2)及び第2のノード(Node_B)用の受信電力設定値X_B(=受信レベルb=11)に適合するように、送信電力強度M_12(=11+2=13)で高周波信号を送出する。これにより、第2のノード(Node_B)の受信電力強度N_12は「M_12−Ls_1=13−2=11」となるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットA_1にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_13は「M_12−Ls_3=13−6=7」であるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットA_1にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットB_1のときに、第3のノード(Node_C)との間の第2の伝搬損失Ls_2(=4)及び第3のノード(Node_C)用の受信電力設定値X_C(=受信レベルc=12)に適合するように、送信電力強度M_23(=12+4=16)で高周波信号を送出する。これにより、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_23は「M_23−Ls_2=16−4=12」となるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットB_1にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_21は「M_23−Ls_1=16−2=14」であるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットB_1にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットC_1のときに、第1のノード(Node_A)との間の第3の伝搬損失Ls_3(=6)及び第1のノード(Node_A)用の受信電力設定値X_A(=受信レベルa=10)に適合するように、送信電力強度M_31(=10+6=16)で高周波信号を送出する。これにより、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_31は「M_31−Ls_3=16−6=10」となるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットC_1にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第2のノード(Node_B)の受信電力強度N_32は「M_31−Ls_2=16−4=12」であるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットC_1にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
更に、第2のフレームインターバルにおいて先ず、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットA_2のときに、第3のノード(Node_C)との間の第3の伝搬損失Ls_3(=6)及び第3のノード(Node_C)用の受信電力設定値X_C(=受信レベルc=12)に適合するように、送信電力強度M_13(=12+6=18)で高周波信号を送出する。これにより、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_13は「M_13−Ls_3=18−6=12」となるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットA_2にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第2のノード(Node_B)の受信電力強度N_12は「M_13−Ls_1=18−2=16」であるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットA_2にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットB_2のときに、第1のノード(Node_C)との間の第1の伝搬損失Ls_1(=2)及び第1のノード(Node_A)用の受信電力設定値X_A(=受信レベルa=10)に適合するように、送信電力強度M_21(=10+2=12)で高周波信号を送出する。これにより、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_21は「M_21−Ls_1=12−2=10」となるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットB_2にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_23は「M_21−Ls_2=12−4=8」であるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットB_2にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットC_2のときに、第2のノード(Node_B)との間の第2の伝搬損失Ls_2(=4)及び第2のノード(Node_B)用の受信電力設定値X_B(=受信レベルb=11)に適合するように、送信電力強度M_32(=11+4=15)で高周波信号を送出する。これにより、第2のノード(Node_C)の受信電力強度N_32は「M_32−Ls_2=15−4=11」となるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットC_2にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_31は「M_32−Ls_3=15−6=9」であるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットC_2にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
このような実施例1のマルチプル伝送処理によれば、高周波信号導波路内において、伝送パスを効率的に分離し、高周波信号の干渉を抑えて、1対多或いは多対多の信号伝送が可能となる。高周波信号導波路に特別な構成を与えることがないので、安価な材料、構成方法で伝送路を実現できる。特に、実施例1では、通常のマルチプルアクセスで必要な宛先ヘッダ(情報)の付加が不要となり、スループットが向上する効果が得られる。
実施例2は、各通信装置(Node_A、Node_B、Node_C)に対して、受信電力設定値Xを固定的に与え、送りたい相手(受信ノード)における受信電力強度が予め定められた受信電力設定値Xになるように送信ノードにおける送信電力強度を制御する点に特徴がある。換言すると、受信電力強度が予め定められた値になるように送信電力を制御して高周波信号(例えばミリ波)を送出することにより、送りたい相手(受信ノード)を特定する方式であり、送信電力強度(或いは受信電力強度)に受信ノードを特定する情報を重畳する点に特徴がある。特に、前述の実施例1との相違点として、各ノードに対して、共通の受信電力設定値を固定的に与え、各ノードは、受信レベルと自身に設定されている受信電力設定値Xとを比較し、その差が一定範囲内であれば、受信信号を自身宛の信号であると判断する点に特徴がある。
[送信電力設定]
図25は、実施例2の3点間伝送におけるノード配置と伝搬損失との関係を説明する図である。例えば、図25(A)に示すように、第1の伝搬損失Ls_1は「1」であり、第2の伝搬損失Ls_2は「2」であり、第3の伝搬損失Ls_3は「3」であるとする。受信電力設定値Xは「10」であるとする。この場合における、送信電力強度と受信電力強度との関係は、図25(B)に示すようなレベルダイヤグラムで表すことができる。即ち、第1のノード(Node_A)から第2のノード(Node_B)へ高周波信号を伝送するときの第1のノード(Node_A)における送信電力強度M_12は、「N_12+Ls_1=10+1=11」を基準に閾値Th_B内にすればよい。第1のノード(Node_A)から第3のノード(Node_C)へ高周波信号を伝送するときの第1のノード(Node_A)における送信電力強度M_13は、「N_13+Ls_3=10+3=13」を基準に閾値Th_C内にすればよい。第2のノード(Node_B)から第1のノード(Node_A)へ高周波信号を伝送するときの第2のノード(Node_B)における送信電力強度M_21は、「N_21+Ls_1=10+1=11」を基準に閾値Th_A内にすればよい。第2のノード(Node_B)から第3のノード(Node_C)へ高周波信号を伝送するときの第2のノード(Node_B)における送信電力強度M_23は、「N_23+Ls_2=10+2=12」を基準に閾値Th_C内にすればよい。第3のノード(Node_C)から第1のノード(Node_A)へ高周波信号を伝送するときの第3のノード(Node_C)における送信電力強度M_31は、「N_31+Ls_3=10+3=13」を基準に閾値Th_A内にすればよい。第3のノード(Node_C)から第2のノード(Node_B)へ高周波信号を伝送するときの第3のノード(Node_C)における送信電力強度M_32は、「N_32+Ls_2=10+2=12」を基準に閾値Th_B内にすればよい。
[送受信処理]
図26〜図27は、実施例2における送受信処理中の動作を説明する図である。ここで、図26は、実施例2におけるアクセス制御を説明する図である。図27は、実施例2におけるマルチプル伝送の送受信処理中の動作シーケンスを説明する図である。
実施例1と同様に、各送信ノードは、各フレームインターバルにおける自身に割り当てられたタイムスロット時に送りたい相手の受信ノードの受信電力設定値に対応するように送信電力強度を設定して送信処理を行なう。受信ノードは、受信した高周波信号の強度に基づいて自分宛の信号か否かを判別し、自分宛であれば受信して復調処理を行なうが、自分宛でなければ破棄する。
例えば、第1のフレームインターバルにおいて先ず、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットA_1のときに、第2のノード(Node_B)との間の第1の伝搬損失Ls_1(=1)及び受信電力設定値X(=10)に適合するように、送信電力強度M_12(=10+1=11)で高周波信号を送出する。これにより、第2のノード(Node_B)の受信電力強度N_12は「M_12−Ls_1=11−1=10」となるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットA_1にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_13は「M_12−Ls_3=11−3=8」であるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットA_1にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットB_1のときに、第3のノード(Node_C)との間の第2の伝搬損失Ls_2(=2)及び受信電力設定値X(=10)に適合するように、送信電力強度M_23(=10+2=12)で高周波信号を送出する。これにより、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_23は「M_23−Ls_2=12−2=10」となるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットB_1にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_21は「M_23−Ls_1=12−1=11」であるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットB_1にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットC_1のときに、第1のノード(Node_A)との間の第3の伝搬損失Ls_3(=3)及び受信電力設定値X(=10)に適合するように、送信電力強度M_31(=10+3=13)で高周波信号を送出する。これにより、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_31は「M_31−Ls_3=13−3=10」となるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットC_1にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第2のノード(Node_B)の受信電力強度N_32は「M_31−Ls_2=13−2=11」であるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットC_1にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
更に、第2のフレームインターバルにおいて先ず、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットA_2のときに、第3のノード(Node_C)との間の第3の伝搬損失Ls_3(=3)及び受信電力設定値X(=10)に適合するように、送信電力強度M_13(=10+3=13)で高周波信号を送出する。これにより、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_13は「M_13−Ls_3=13−3=10」となるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットA_2にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第2のノード(Node_B)の受信電力強度N_12は「M_13−Ls_1=13−1=12」であるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットA_2にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットB_2のときに、第1のノード(Node_C)との間の第1の伝搬損失Ls_1(=1)及び受信電力設定値X(=10)に適合するように、送信電力強度M_21(=10+1=11)で高周波信号を送出する。これにより、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_21は「M_21−Ls_1=11−1=10」となるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットB_2にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第3のノード(Node_C)の受信電力強度N_23は「M_21−Ls_2=11−2=9」であるので、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットB_2にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
次に、第3のノード(Node_C)は、タイムスロットC_2のときに、第2のノード(Node_B)との間の第2の伝搬損失Ls_2(=2)及び受信電力設定値X(=10)に適合するように、送信電力強度M_32(=10+2=12)で高周波信号を送出する。これにより、第2のノード(Node_B)の受信電力強度N_32は「M_32−Ls_2=12−2=10」となるので、第2のノード(Node_B)は、タイムスロットC_2にて受信した高周波信号は自分宛と判断して受信処理(復調処理)を行なう。このとき、第1のノード(Node_A)の受信電力強度N_31は「M_32−Ls_3=12−3=9」であるので、第1のノード(Node_A)は、タイムスロットC_2にて受信した高周波信号は自分宛ではないと判断して、受信動作を継続せずにパワーセーブする。
このような実施例2のマルチプル伝送処理においても、高周波信号導波路内において、伝送パスを効率的に分離し、高周波信号の干渉を抑えて、1対多或いは多対多の信号伝送が可能となる。高周波信号導波路に特別な構成を与えることがないので、安価な材料、構成方法で伝送路を実現できる。特に、実施例2でも、通常のマルチプルアクセスで必要な宛先ヘッダ(情報)の付加が不要となり、スループットが向上する効果が得られる。
実施例1と実施例2とを比べた場合、受信電力(=受信感度)のバラツキにも対応できるように一般化している点で、実施例1の方が良好である。
[変形例]
実施例1と実施例2とを組み合わせることもできる。この場合、例えば、3つの信号処理モジュール320で成るAグループの各受信電力強度としてレベルAを設定し、3つの信号処理モジュール320で成るBグループの各受信電力強度としてレベルB(≠A)を設定すればよい。
図28は、実施例3の3点間伝送(マルチプル伝送)を説明する図である。実施例3は、伝送パワーを利用してフレーム情報を送る点に特徴がある。フレーム情報としては、例えば、パケット通信における「制御情報区間」の情報等が該当する。例えば、図28(A)はパケット通信におけるフレーム構成例を示す図である。
フレーム構成は、送信権が順次割り当てられるものとし、ネットワーク内の全端末が導波路経由で信号の受信を試みる。尚、図28(A)、図28(C)に示すように、実施例1及び実施例2とは異なり、宛先情報はヘッダ内に格納している。
図28(B)に示すように、従前のパケット通信では、当該パケットが制御情報パケットか、ペイロード(Payload)パケットかをそれぞれに含まれる「制御情報区間」で示している。制御情報パケットには、ペイロード区間があり、例えば、伝送レート情報、セキュリティ、ネットワークID番号、時間情報、等々が、ペイロード区間に書き込まれている。
この場合に実施例3を適用すると、図28(C)に示すように、各パケットの送信パワーを変えることにより、従前の「制御情報区間」の情報を送信する必要がなくなる。通常は、宛先情報の後に制御情報が割り当てられ、最後にデータコンテンツが割り当てられているが、実施例3では、伝送パワーを利用して制御情報を送るので、フレーム構成中の制御情報を削除できる。
[変形例]
実施例3と実施例1とを組み合わせることもできる。実施例3と実施例2とを組み合わせることもできる。実施例3と実施例1と実施例2とを組み合わせることもできる。これらの場合、付加情報から宛先情報も削除することができる。
図29〜図30は、実施例4を説明する図である。ここで、図29は、実施例4の3点間伝送(マルチプル伝送)を説明する図である。図30は、受信レベルに基づいてフレーム長を特定する手法を説明する図である。
実施例4は、伝送パワーを利用してフレーム長情報を送る点に特徴がある。例えば、長フレームは伝送パワー(送信電力強度)を大として高周波信号を送出し、短フレームは伝送パワー(送信電力強度)を小として高周波信号を送出する。具体的には、パワー情報を量子化しフレーム長のパターンを幾つか規定することで各ノードの送信時間を可変長でき、ノード間で異なるトラフィック量に対応可能となる。
図29(A)はフレーム構成例を示す図である。フレーム構成は、送信権が順次割り当てられるものとし、又、各送信フレーム長(特にデータコンテンツ長)は可変である。ネットワーク内の全端末が導波路経由で信号の受信を試みる。尚、図示のように、実施例1及び実施例2とは異なり、宛先情報はヘッダ内に格納している。通常は、宛先情報の後にフレーム長情報が割り当てられ、最後にデータコンテンツ(可変長)が割り当てられているが、実施例4では、伝送パワーを利用してフレーム長情報を送るので、フレーム構成中のフレーム長情報を削除できる。
図29(B)は、実施例4における送受信処理中の動作を説明する図である。図の上部には、各ノードにおける送信処理の様子が示されている。図の下部には、各ノードにおける受信処理の様子が示されている。送信ノードは、フレーム長に対応するように送信電力を制御して高周波信号(例えばミリ波信号)を送出する。例えば、長フレームであるときには送信電力強度を大にし、短フレームであるときには送信電力強度を小にする。図示した例では、A(B宛の長フレーム)→B(C宛の短フレーム)→C(A宛の長フレーム)→A(C宛の短フレーム)→B(C宛の長フレーム)→C(A宛の短フレーム)の順に高周波信号が送出されている。
受信ノードは、送信ノードから送出された高周波信号に関し、その受信レベルを判定し、受信レベルに基づいてフレーム長を特定する。又、他のノード宛の高周波信号の受信レベルからフレーム長を判断し、当該フレーム終了まで維持(Sleep)する。例えば、図30には、フレーム長の例が図30(A)に示され、送信時のパワー設定の例が図30(B)に示され、受信時の長フレーム、短フレームの判断例が図30(C)に示されている。因みに、図30(C)は、図30(A)及び図30(B)並びに図25(A)に示した伝送損失に基づいている。
送信ノードでは、図30(B)に示すように、宛先とフレーム長の対応付けに基づいて送信パワーを設定して高周波信号を送信する。この高周波信号を受信した各受信ノードでは、送信ノードが長いフレーム長で送信してきたのか、短いフレーム長で送信してきたのかを、受信フレームの先頭部の受信電力(の閾値)により判断する。ここで、「受信フレームの先頭部」としているのは、もし受信フレームが自分宛でないときには一定時間パワーセーブモードに移行することを考慮したものである。
例えば、受信フレームが自分宛であるのか否かをフレーム情報に格納されている宛先情報に基づいて判断する。自分宛フレームであれば、図30(B)に示す図表に基づいて、その自分宛フレームの受信パワーからフレーム長を判断し、判断したフレーム長に基づいて受信処理を行なう。一方、他ノード宛フレームであれば、図30(B)に示す図表に基づいて、その他ノード(他人)宛フレームの受信パワーからフレーム長を判断し、判断したフレーム長と対応する所定時間だけパワーセーブ状態になる。「フレーム長と対応する所定時間」としているのは、次に受信しなくてはならないタイミング(フレームの切れ目)で「受信フレームの先頭部」を受信できるように、所定の時間の前から受信回路を起動する必要があることを考慮したものである。
尚、他ノード宛フレームであった場合のこのような処理はパワーセーブモードを行なうためであり、このような形態をとらない場合にはフレーム長の判定処理並びにパワーセーブモードへの移行及び再起動処理は不要であり、起動したままとしておけばよい。消費電力低減においては、当該実施例のようにパワーセーブした方がよい。更には、例えば、他ノード宛フレームを受信したノードは、自分宛フレームを受信したノードからフレーム長の判定結果の通知を受ける形態をとることもできるが、ここでは、基本的にはパケット伝送以外の補助的(Auxiliary)な信号は使わないことにしている。
例えば、図30(B)の表の下から3行目に着目すると、他ノードである第3のノード(Node_C)は、「AtoB(Frame(長))」の場合は信号電力9(12−3)の高周波信号を受信することになり、「AtoB(Frame(短))」の場合は信号電力3(6−3)の高周波信号を受信することになる。ここで、第3のノード(Node_C)が信号電力3から信号電力14までを受信できる能力があるとすれば、第3のノード(Node_C)において第1のノード(Node_A)から第2のノード(Node_B)宛に送ったフレームにおける長さ(長又は短)を推定することができ、別途規定されるフレーム長(フレーム長の例を参照)の終端まで受信回路をスリープさせることができる。
[変形例]
実施例4と実施例1とを組み合わせることもできる。実施例4と実施例2とを組み合わせることもできる。実施例4と実施例1と実施例2とを組み合わせることもできる。実施例4と実施例3とを組み合わせることもできる。これらの場合、付加情報から宛先情報やフレーム情報も削除することができる。
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。
例えば、前記実施形態では、機器内や比較的近距離の機器間における信号伝送への適用で説明したが、指向性や偏波を利用した信号分離或いは伝送パワーを利用した第2の情報(伝送対象信号以外の情報)の伝送は、原理的には、一般的な野外通信にも適用し得る。但し、送受信機の相対位置が不特定な場合は、その適用が困難である。何故なら、相手先に合わせて指向性や偏波を設定しなければならないが、送受信機の相対位置が特定されていなければその設定が難しい。又、伝送パワーを利用した第2の情報の伝送に当たっては、送受信間の伝搬損失を考慮して強度設定を行なうことが肝要となる(好ましい)が、送受信機の相対位置が特定されていなければその設定が難しい。こう云った点では、前記実施形態で説明した技術は、送受信機の相対位置を固定し得る、機器内や比較的近距離の機器間における信号伝送へ適用することが好適である。