JP5724197B2 - 被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ケイ素(Si)を含有する非晶質炭素膜(以下「DLC−Si膜」という。)で表面が被覆された基材からなる被覆部材およびその製造方法に関する。
部材の強度、摩擦摺動特性、潤滑性、絶縁性、ガスバリア性などを向上させるために、その表面に種々の表面処理がなされることが多い。中でも、種々の優れた特性を発揮し、比較的低コストで形成可能な非晶質炭素膜(ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜)の利用が現在注目されている。最近では、さらに優れた特性を発揮するSiを含有したDLC−Si膜も利用されており、それに関する記載が例えば下記の特許文献1または2にある。
特許文献1では、耐摩耗性および相手攻撃性の改善のために、DLC−Si膜中のSi濃度を基材側で高濃度とし、膜表面側で基材側よりも低濃度とすることを提案している。具体的には、基材側のSi濃度を13原子%、膜表面側のSi濃度を10原子%としたDLC−Si膜を提案している。
特許文献2では、耐熱性の向上を図るために、特許文献2と同様にSi濃度を表面側よりも基材側で高くしたDLC−Si膜を提案している。具体的には、基材側のSi濃度を約30原子%程度、膜表面側のSi濃度を20原子%としたDLC−Si膜を提案している。
特開2006−291355号公報 特開2007−308753号公報
ところでDLC膜(DLC−Si膜を含む)は、その主成分がCであるため、温度上昇と共にその構造は非晶質構造からグラファイト的構造へ変化し易い。このためDLC膜の耐熱性は一般的に劣るといわれてきた。高温域でのDLC膜の利用を拡大するにはその耐熱性の向上が不可欠である。
ここで上述した特許文献を観ると、特許文献1では、DLC−Si膜に関する耐熱性や高温特性について、全く触れられていない。特許文献2では、300℃以上の温度に曝される機械部品などへの利用を想定してDLC−Si膜の耐熱性を検討している。しかし特許文献2では、500℃および600℃の環境下に3時間保持したときに、DLC−Si膜にクラックが発生するか否かが検討されているに過ぎない。つまり、そのDLC−Si膜が現実的な高温での使用環境下において、十分な耐久性、耐摩耗性または摺動性等の耐熱性を有するか否かは、特許文献2の記載からでは全くわからない。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、基材表面がDLC−Si膜で被覆されており現実的な耐熱性を備える被覆部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、DLC−Si膜のSi濃度を、従来とは逆に、本来的な機能性確保に重要な表面側で高め、基材との密着性確保に重要な基材側で低めることを思いつき、このようにしたDLC−Si膜が現実的な耐熱性を発現することに新たに確認した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《被覆部材》
(1)本発明の被覆部材は、基材と、該基材の少なくとも一部を被覆し、ケイ素(Si)、水素(H)および残部である炭素(C)からなる非晶質炭素膜とを有し、該非晶質炭素膜により最表面が形成される被覆部材であって、前記非晶質炭素膜は、Si濃度前記基材との界面に臨み該基材の最表面までの該非晶質炭素膜の領域である臨界部よりも、該臨界部から連なり該非晶質炭素膜の最表面までの領域である表面部の方が高く、Siが該臨界部から該表面部にわたって連続的に分布しており、該臨界部に該基材側から該表面部側にかけて該Si濃度が漸増すると共にCが漸減する傾斜部を有することを特徴とする。
(2)本発明の被覆部材が高温環境下で使用される場合でも、本発明に係る非晶質炭素膜(DLC−Si膜)は、十分な耐酸化性、摩擦摺動特性、耐摩耗性等を有する。しかも、このDLC−Si膜は、被覆部材が高温環境下で使用される場合でも、耐割れ性や耐剥離性等に優れ、高い高温耐久性を示す。なお、以下では、本発明に係るDLC−Si膜が有する優れた高温域における特性(耐酸化性、摩擦摺動特性、耐摩耗性、耐久性、耐割れ性または耐剥離等)をまとめて「耐熱性」という。
ところで、本発明に係るDLC−Si膜がこのように優れた特性を発現するメカニズムは、必ずしも定かではない。現状では次のように考えられる。
すなわち本発明に係るDLC−Si膜は、そのSi濃度が、先ず、高温環境下に曝されたり、相手材と接触したりする基材の表面近傍(表面側)で相対的に高くなっている。これにより、DLC−Si膜の表面部分における耐酸化性や硬さが高まり、高温雰囲気下における被覆部材の耐久性または耐摩耗性等が向上したと考えられる。
一方、DLC−Si膜のSi濃度は、基材の界面近傍(基材側)で低くなっている。これによりDLC−Si膜は、界面部分で硬さが抑制されて高靱性になっている。それ故に、高温環境下で被覆部材が使用され、DLC−Si膜に種々の応力や衝撃等が作用する場合でも、それらを巧く吸収または逃し、DLC−Si膜は基材に密着した状態を安定的に維持し得る。これにより、高温環境下でも、優れた耐割れ性や耐剥離性等を発揮すると考えられる。
いずれにしろ、そのようなDLC−Si膜で被覆された本発明の被覆部材は、高温環境下に曝されたり、高温環境下で使用されたり、さらには冷熱サイクルが繰り返し付与される場合でも、安定的に性能を発揮し得る。
《被覆部材の製造方法》
上述した本発明の被覆部材またはDLC−Si膜の成膜方法は特に限定されないが、例えば次のような製造方法により得られる。すなわち、基材を載置した処理炉内を排気して真空状態とする排気工程と、該処理炉内へ少なくともSi、HおよびCを含有する原料ガスを導入して該基材の少なくとも一部に非晶質炭素膜を形成する成膜工程と、を備える被覆部材の製造方法であって、前記成膜工程は、前記処理炉内に導入する前記原料ガス中のSi濃度を該原料ガスの導入前期よりも該原料ガスの導入後期に高くする工程であることを特徴とする製造方法を用いると好適である。
《その他》
特に断らない限り、本明細書でいう「x〜y」は、下限値xおよび上限値yを含む。また、本明細書に記載した種々の下限値または上限値は、任意に組合わされて「a〜b」のような範囲を構成し得る。さらに、本明細書に記載した範囲内に含まれる任意の数値を、数値範囲を設定するための上限値または下限値とすることができる。
直流プラズマCVD成膜装置の概略図である。 ボール・オン・ディスク試験装置の概略図である。 ボール・オン・ディスク試験で用いたディスクの摩耗深さ(同図(a))とボールの摩耗痕径(同図(b))とを示す説明図である。 本発明の一実施例に係るDLC−Si膜のEPMA分析結果である。 本発明に係る表面部と臨界部に関する説明図である。
1 直流プラズマCVD成膜装置
2 ボール・オン・ディスク試験装置
10 チャンバー
11 載置台
12 ガス導入管
13 排気管
14 陽極板
15 基材
16 プラズマ直流電源
20 試験片
21 ボール
200 非晶質炭素膜(DLC−Si膜)
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含めて本明細書で説明する内容は、本発明に係る被覆部材のみならず、その製造方法等にも適宜適用され得る。上述した本発明の構成に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成を付加し得る。この際、製造方法に関する構成は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物に関する構成ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《非晶質炭素膜》
(1)臨界部と表面部
本発明に係る非晶質炭素膜(DLC−Si膜)の少なくとSi濃度(Si組成)は、界面側(基材側)で低く、表面側で高くなっている。この間のSi濃度変化は、界面近傍における局所的な変化でも、膜厚方向(基材界面から膜表面)に向かう緩やかな変化でもよい。もっともDLC−Si膜中のSi濃度変化は、通常、基材の界面近傍で大きく変化し、膜表面側(膜最表面側は必ずしも含まない。)でSi濃度はあまり変化せずに安定している。そこでDLC−Si膜は、通常、基材との界面に臨む臨界部と、この臨界部に連なり表面側へ延びる表面部とに分けて考えることができる。被覆部材の室温域および高温域における優れた特性は、そのDLC−Si膜の表面部が担う。一方、室温域は勿論のこと高温域でもDLC−Si膜を基材に安定して密着保持させるのは、その臨界部が担う。もっとも、臨界部から表面部にかけてSi濃度が過度に急激な変化をすると、使用中に応力集中などが生じて割れや剥離等を招来して好ましくない。そこで臨界部において、Si濃度は連続的に、滑らかに変化すると好ましい。具体的には、Si濃度が基材側から表面部側にかけて漸増する傾斜部を臨界部が有すると好ましい。
DLC−Si膜の膜厚は、DLC−Si膜の特性や用途に応じて異なる。もっとも、主要特性を担うのは表面部であるから、臨界部の厚さ(t)を小さく、表面部の厚さ(t)を厚くすると良い。そこで例えば、臨界部の厚さ(t)は、DLC−Si膜全体の厚さ(t=t+t:表面部の厚さt )に対して50%、25%以下さらには20%以下でもよい。もっとも、DLC−Si膜と基材との密着性を確保したり、臨界部におけるSi濃度の急激な変化を避けるために、臨界部の厚さは全体の5%以上さらには10%以上であると好ましい。
ちなみに本明細書では、表面部および臨界部を次のように定義する。その説明図を図5に示した。
(i)先ずDLC−Si膜の全体厚さ(t=t+t)を光学顕微鏡等で確定する。
(ii)次に、そのDLC−Si膜をEPMA分析して得られたSi濃度分布を示す曲線(以下「Si濃度曲線」という。/図4参照)に基づいて、DLC−Si膜の最表面から起算してDLC−Si膜の全体厚さの10〜30%に相当する領域におけるSi濃度を、積分した平均値(平均濃度)を「表面部のSi濃度」と定義する。
(iii)Si濃度曲線中のSi濃度がその平均濃度の1/2となる点Eを求める。この点Eを表面部と臨界部との境界点とする。この境界点を通り、Si濃度曲線の横軸に垂直な線が表面部と臨界部との境界線となる。被覆部材として観れば、その境界点を通る基材表面に平行な面が両者の境界面となる。
(iv)以上を踏まえて本明細書では、その境界線(境界面)からDLC−Si膜の最表面までの領域を「表面部」と、その境界線(境界面)から基材の最表面までの領域を「臨界部」と定義する。
(v)なお本明細書で規定する「臨界部のSi濃度」の上限値は、Si濃度曲線上の境界点におけるSi濃度(平均濃度の1/2のSi濃度)とする。その下限値は、Si濃度曲線上で、基材の最表面から0.5μmだけ境界点側へ移動した点HにおけるSi濃度とする。
(2)膜組成(濃度)
Siは、高温環境下におけるDLC−Si膜の耐酸化性、耐久性、硬さ、耐摩耗性などの有効な元素である。Si濃度が過小ではこれらの効果が十分に得られず、Si濃度が過大になると、DLC−Si膜の硬さは向上するが脆化し耐久性が低下し得る。また、Si濃度が過大になると、DLC−Si膜のヤング率も過大となり、DLC−Si膜に作用する応力も過大となって割れなども生じ易くなる。ちなみにDLC−Si膜のヤング率は、Si濃度が30原子%のとき190GPa、Si濃度が10原子%のとき100GPaとなり、Si濃度の増加と共にヤング率も増加する。
そこで上記の特性に大きく影響する表面部は、例えば、Si濃度が8〜30原子%さらには12〜25原子%である部分を有すると好ましい。またDLC−Si膜と基材との密着性に影響する臨界部は、Si濃度が表面部よりも小さい方が、靱性が高くなり、ヤング率が低く柔軟性に富み、密着性が向上して好ましい。もっとも、臨界部のSi濃度が過小になると、高温域での密着安定性が低下する。そこで臨界部のSi濃度は1原子%以上さらには2原子%以上であると好ましい。
なお、表面部や臨界部の大部分が上記のようなSi濃度であるほど好ましいが、表面部の最表面近傍、表面部と臨界部との境界近傍さらには臨界部と基材との界面近傍では、Si濃度が前記範囲から逸脱することはある。少なくとも表面部に関していえば、全体的に観て安定域の組成を表面部の組成(濃度)と考え、そのような安定域がない場合は表面部全体の平均的な組成をもって、表面部の組成(濃度)とする。このことは後述するH濃度やC濃度についても同様である。
Hは、DLC−Si膜の硬さ、靱性、ヤング率などに影響し、ひいてはDLC−Si膜の耐摩耗性、密着性、割れ、耐久性などに影響する元素である。H濃度が過小ではDLC−Si膜の靱性の低下やヤング率の増大を招き、密着性の低下や割れの発生につながる。H濃度が過大ではDLC−Si膜の硬さが低下し、耐摩耗性や耐久性の低下を生じ得る。表面部に関していえば、そのSi濃度とH濃度を好適な範囲にすることで、高温環境下における摩擦係数や相手材への攻撃性の低減を図ることができる。臨界部に関していえば、H濃度を適度に調整することで、DLC−Si膜の割れや剥離を抑制できる。特に、高温耐久性の向上のために表面部を厚くした場合でも、H濃度を調整することで、DLC−Si膜へ作用する高温負荷時や冷熱サイクル時の内部応力を低減でき、DLC−Si膜の密着性や耐剥離性の確保が可能である。
例えば、表面部は、H濃度が20〜40原子%さらには24〜36原子%である部分を有すると好適である。また臨界部は、H濃度が表面部よりも大きい方が好ましいが、その上限は40原子%さらには36原子%であると好適である。具体的には臨界部のSi濃度は1〜15原子%さらには2〜15原子%の範囲内にあり、H濃度は20〜40原子%さらには26〜36原子%の範囲内にあると好適である。これにより、DLC−Si膜の密着性や耐剥離性などが確保され易い。
(3)膜厚と硬さ
本発明に係るDLC−Si膜の膜厚は問わない。もっとも、耐久性等を確保する観点から、1〜50μmさらには3〜30μm程度であると好ましい。膜厚が過小では耐久性等に乏しく、過大になると割れや剥離を生じ易くなる。
本発明に係るDLC−Si膜の硬さも問わない。もっとも、耐摩耗性等を確保するため、DLC−Si膜の表面は、室温域でビッカース硬さがHv800〜3000であると好ましい。また高温環境下におけるDLC−Si膜の耐摩耗性や耐久性等を確保するために、400℃でHv600以上、500℃でHv500以上あると好ましい。
《基材》
(1)DLC−Si膜により被覆される基材は、その材質、表面性状、形状、形態等はとわない。DLC−Si膜の成膜が可能である限り、基材は導電性材でも、非導電性材(絶縁材)さらには半導体等でもよい。例えば、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄、アルミニウム合金、チタン合金等の金属製基材、超鋼、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス製基材等が対象となる。
(2)基材の表面には、DLC−Si膜の成膜前に別の表層(中間層)が形成されていてもよい。このような中間層として、例えば、窒化層、浸炭層、浸炭窒化層、クロム窒化層、硬質クロム層などのメッキ層等がある。このような中間層を設けることで、基材の高温強度や耐食性(高温域を含む)の向上、基材への密着性の向上等を図れる。
また基材の表面に微細な凹凸が形成されていると、アンカー効果が生じてDLC−Si膜の密着性が高まる。このような基材の表面性状は、例えば、ガス窒化、塩浴窒化またはイオン窒化等の窒化処理、グロー放電またはイオンビーム等のイオン衝撃、研磨処理等などにより得られる。
《製造方法》
(1)本発明に係るDLC−Si膜は、上述したようなSi濃度が得られる限り、いずれの方法で成膜されてもよい。例えば、化学蒸着法(CVD)や物理蒸着法(PVD)などを用いることができる。具体的には、プラズマ化学蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等により成膜できる。中でも、基材の形状にかかわらず、比較的安価に成膜できるプラズマ化学蒸着法(以下「プラズマCVD法」という。)が好ましい。
プラズマCVD法により成膜するには、先ず、基材を載置した処理炉内を排気して真空状態とする(排気工程)。この処理炉内へ原料ガス(反応ガス)を導入する(ガス導入工程)。その処理炉内で放電させ、原料ガスのプラズマを生成する(プラズマ生成工程)。このプラズマイオン化されたガスを基材の表面に付着させることで、非晶質炭素膜が成膜される(成膜工程)。ちなみにプラズマCVD法にも、直流プラズマCVD法、パルスプラズマCVD法、高周波プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVDさらにはそれらを組み合わせた複合プラズマCVD法などがあるが、特に成膜性の点で直流プラズマCVD法が好ましい。
(2)成膜に用いる原料ガス(反応ガス)には、炭化水素ガスとケイ素化合物ガスとの混合ガスを用いるとよい。炭化水素ガスには、例えば、メタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、シクロヘキサン等がある。ケイ素化合物ガスには、例えば、Si(CH[TMS]、SiH、SiCl、SiH等がある。また、原料ガスの濃度や流量調整に、水素ガス、アルゴンガス等のキャリアガスを用いるとよい。
(3)ところで、DLC−Si膜のSi濃度を基材側と表面側で変化させたり、臨界部(特に傾斜部)を形成するには、例えば原料ガスを用いる場合なら、次のような方法が考えられる。すなわち、成膜工程中に導入する原料ガス中のSi濃度を、基材界面近傍で成膜する初期には小さく、その後大きくなるように、直接的または間接的に変化させる。例えば、導入する原料ガス(特にケイ素化合物ガス)の濃度を経時的に変化させてもよいし、成膜工程中に成膜温度を経時的に変化させてもよい。ちなみにメタン等の炭化水素ガスとTMS等のケイ素化合物ガスを用いて成膜温度を変化させる場合なら、成膜初期に成膜温度を高くすると、炭化水素ガスの反応性が増してケイ素化合物ガスの反応が抑制され、Si濃度の低いDLC−Si膜(臨界部または傾斜部)が成膜され得る。その後、成膜温度を低くすれば、相対的にケイ素化合物ガスの反応が促進され、Si濃度の高いDLC−Si膜(表面部)が成膜され得る。この成膜温度の調整は、例えば、グロー放電による基材の加熱を調整することで行える。さらに、プラズマ電源の印加電力を調整して、成膜中の基材の温度を漸増させ、Si濃度を傾斜させることも可能である。成膜温度は、通常、450〜580℃程度である。この範囲内で5〜30℃の温度差を生じさせ、Si濃度を変化させてもよい。H濃度等についても同様のことがいえる。
《用途》
本発明の被覆部材は、その用途を問わないが、室温域は勿論のこと高温域でも、耐酸化性、耐食性、耐摩耗性、耐衝撃性、絶縁性等が要求される部材に使用できる。例えば、ブレーキ、クラッチ、工具、治具、金型、刃具、ポンプ部材、ベーン、ダイス、パンチ、高温環境下で使用される各種部材等である。
《供試材の製造》
基材表面が非晶質炭素膜で被膜された供試材を以下のように製造した。
(1)直流プラズマCVD成膜装置
図1に示す直流プラズマCVDを行う成膜装置1を用いて、基材15に非晶質炭素膜を成膜した。成膜装置1は、円筒形の炉室をもつステンレス鋼製のチャンバー10と、このチャンバー10内に配置された載置台11と、チャンバー10の上方内に連通するガス導入管12と、チャンバー10の下方内に連通する排気管13とを備えてなる。
ガス導入管12には、マスフローコントローラ(MFC:図略)が設けてある。このMFCの上流側には、種々の原料ガスが個別に封入された複数のガスボンベ(図略)が接続されている。MFCにより、チャンバー10内へ導入するガスの種類、配合、流量等を制御できる。これにより、非晶質炭素膜の組成等が調整可能となる。
排気管13には、排気されるガス流量を調整する排気調整バルブ(図略)が設けてある。その下流側にはチャンバー10内を真空排気する真空ポンプ(油回転ポンプ、メカニカルブースターポンプ、油拡散ポンプ等:図略)が接続されている。
チャンバー10の内壁が陽極板14を兼ねる。この陽極板14と陰極側となる載置台11との間に、プラズマ直流電源16が直流電圧を印加する。なお、プラズマ直流電源16の正極および陽極板14は接地されている。
(2)成膜
基材15の表面への成膜は、具体的には次のようにして行った。
先ず、チャンバー10内の載置台11上に基材15を載置した。この後、チャンバー10を密封し、排気管13から排気して、チャンバー10内の到達真空度を6.7×10−3Paにした(排気工程)。排気後のチャンバー10内へ、ガス導入管12から、水素ガスを15sccm(standard cc/min:以下単に「sccm」という。)の流量で導入し、チャンバー10内の圧力を約133Paとした。この後、陽極板14と載置台11との間に200Vの直流電圧を印加し、グロー放電を開始させた。こうして基材15の温度が500℃になるまでイオン衝撃による昇温を行った(予熱工程)。なお、基材15の表面温度は、チャンバー10の側面から炉外へ突出する透光窓(図略)を介して赤外線放射温度計(図略)により測定した(表面温度の測定は以下同様の方法で行った)。
さらにガス導入管12からチャンバー10内へ、窒素ガス500sccmおよび水素ガス40sccmを導入した。このチャンバー10内の圧力を約800Paにして、温度530℃にした基材15へ、電圧400V(電流1.5A)を印加した。このプラズマ窒化処理を基材15の表面に2時間施した(窒化工程)。基材15の表面の断面を顕微鏡観察したところ、窒化深さ:約30μmの窒化層が形成されていた。
プラズマ窒化処理後、チャンバー10に、ガス導入管12から水素ガスおよびアルゴンガス(キャリアガス)を30sccmずつ導入した。このチャンバー10内の圧力を約533Paにして、温度500℃にした基材15へ電圧300V(電流1.6A)を印加した。こうして基材15の表面にスパッタリングを1時間施した。こうして基材15の表面には微細な凹凸が形成された(粗面化工程)。
上記のプラズマ窒化処理後、後述する原料ガス(反応ガス)、水素ガスおよびアルゴンガスをガス導入管12からチャンバー10へ導入した。この際、チャンバー10内の圧力を200〜800Pa、基材15の温度を450〜550℃、基材15へ印可する電圧350〜600V(電流1.1〜2.5A)とした。この状態を1〜2時間継続して、基材15の表面に非晶質炭素膜を成膜した(成膜工程)。
ところで、原料ガスには、TMS:テトラメチルシラン(Si(CH)、CH:メタン、C:アセチレン、C:ベンゼンを用いた。TMSがSi供給源となる。このTMSを供給する際には、成膜初期はTMSの供給量(導入ガス全体に対する濃度)を低く抑え、その後、TMSの供給量を漸増させていった。具体的には、基材15の界面近傍の臨界部を形成する際に導入したTMS量は、臨界部に続く表面部を形成する際に安定的に導入したTMS量の10〜20体積%とした。その後、TMS量を連続的または段階的に漸増させて、所望する厚さの臨界部が形成され得る時間後に、TMS量を安定にして表面部を形成した。
こうして表1〜4に示す各種の試験に供する供試材を得た。なお、比較のために、ここでいう成膜を基材表面に行わない供試材も用意した。
(3)基材
上記の成膜を行う基材として、次の3種類を用意した。基材a:ステンレス(JIS SUS304C)からなるディスク(φ30x厚さ3:mm)、基材b:ステンレス製(JIS SUS440C)からなるボール(φ6:mm)、基材c:高速度鋼(JIS SKH51)からなる板片(13x13x5:mm)である。表1〜4の試験No.に付した添字は基材の種類を意味する。
なお、成膜前の基材表面には特に断らない限り、前述したイオン窒化処理による窒化層が形成されている。この窒化層が、基材と非晶質炭素膜との界面に介在する中間層となる。一部の基材(表4に示す試験No.8ab〜C8abに用いた基材の一方)の成膜前の表面には、その窒化層に替えて、硬質のCrN層または硬質のCrメッキ層を形成した。
CrN層は、アンバランスマグネトロンスパッタ方式で成膜した。そのCrNは、一般的なNaCl型構造をしている。またCrメッキ層は、サージェント浴をもちいて硬質クロムめっき法により形成した。
《膜組成》
各供試材の非晶質炭素膜中のC濃度、Si濃度おおびH濃度は次のように求めた。先ず、電子プローブ微小部分析法(EPMA)を用いた測定により、膜中に存在するCとSiの量比(原子比)を求める。次に、あらかじめ燃焼法で求めた膜中のH量と弾性反跳粒子検出法(ERDA)法で求めた電子線強度との関係から膜中に存在するHの原子割合(原子%)を求める。これらの結果に基づき、膜全体を100原子%として、膜中のC、SiおよびHの原子%を特定した。ちなみに、ERDAは、2MeVのヘリウムイオンビームを膜表面に照射して、膜からはじき出される水素イオンを半導体検出器により検出し、膜中の水素濃度を測定する方法である。
なお表1〜4に示した膜組成は、非晶質炭素膜の表面側で組成が比較的安定している領域の組成である。つまり本発明に係るDLC−Si膜でいうなら、臨界部ではなく表面部の中央付近に相当する安定領域の膜組成である。測定領域の具体的な特定方法は前述した通りである。参考例として、試験No.2aに用いた供試材に関するEPMAによる組成分析結果を図4に示した。図4中の横軸は膜厚方向の距離(厚さ)を示し、縦軸はX線強度比を示す。
《試験》
(1)耐酸化性(表1:試験No.1a〜C2a)
上記の基材aに非晶質炭素膜を設けた供試材の耐酸化性を調べた。具体的には、表1に示した各供試材を電気炉に入れ、350〜550℃x1時間の大気中に曝して酸化させた。この加熱前後の各供試材の重量(質量)変化を調べた。この結果を表1に示した。
(2)高温硬さ(表2:試験No.1c〜C1c)
上記の基材cに非晶質炭素膜を設けた供試材の高温硬さを調べた。具体的には表2に示した各供試材について、400℃および500℃の真空中における表面硬さを、ビッカース硬さ計を用いて荷重25gで測定した。この結果を表2に示した。ちなみに、これら各供試材の非晶質炭素膜の厚さは約12μmであった。
(3)摩擦摺動特性(表3および表4:試験No.2ab〜10abおよびC3ab〜C8ab)
図2に示すボール・オン・ディスクタイプの試験装置(CSM INSTRUMENTS社製 高温摩擦試験機)2を用いて、各供試材の摩擦摺動特性を調べた。ボール・オン・ディスク試験装置2は、基材aからなるディスク20を回転させる回転装置(図略)と、基材bからなるボール21(相手材)のディスク20上への押付け荷重を付与する荷重装置(図略)を備える。この装置を用いて、ボール21の荷重1N、摺動速度0.2m/s、摺動距離600mの条件下で摩擦摩耗試験を行った。この際、ディスク20を300〜480℃に加熱した。
この摩擦摩耗試験により、摺動性の指標となる摩擦係数、耐摩耗性の指標となるディスク摩耗深さおよび焼き付き状況、相手攻撃性の指標となるボール摩耗痕径を測定または観察した。
ディスク摩耗深およびボール摩耗痕径は、それぞれ図3(a)および図3(b)にそれぞれ示すように定義した。ちなみに、ディスク20とボール21の摺動距離およびディスク20の回転速度が一定でも、両者の接する位置(回転半径r)によって、ディスク20とボール21の接触回数が変化し、結果的にディスク摩耗深さは変化し得る。そこでディスク摩耗深さは、1回転当りの摩耗深さ(μm/回)で評価した。
摩擦摩耗試験により得られた結果を表3および表4に示した。各供試材の非晶質炭素膜の厚さは約10μmであった。表3に示した各試験はディスク20およびボール21に同じ表面処理(成膜)を施した場合であり、表4に示した各試験はその表面処理をディスク20とボール21とで変化させた場合である。ちなみに、成膜した供試材の非晶質炭素膜の厚さは約10μmであった。
(4)スクラッチ試験(表5:試験No.2aおよびNo.Sa)
スクラッチ試験機(CSM INSTRUMENTS社製 AEセンサー付き自動スクラッチ試験機 REVETEST RST)を用いて、DLC−Si膜の密着性を調べた。DLC−Si膜の成膜直後の供試材と、DLCその成膜後に冷熱サイクルを与えた供試材についてそれぞれ、密着力を測定した。その結果を表5に示した。冷熱サイクルは、「成膜後の供試材を大気雰囲気の加熱炉内に入れて500℃で5分間保持した後、3℃冷却水に2分間浸漬し、その後500℃の前記炉内に戻す」という操作を50回繰り返しておこなった。表5の試験No.Saで用いた供試材は、TMS量を漸増させず導入当初から一定量をチャンバー10に供給して製造したものである。この点を除けば、表1に示した試験No.2aで用いた供試材と成膜方法は共通する。
《評価》
(1)耐酸化性
表1に示す結果から解るように、DLC−Si膜で表面が被覆された供試材(No.1a、No.2a)では、高温加熱されてもその前後で重量変化がほとんどなかった。つまり350〜550℃という高温の大気中にあっても、非常に安定した耐酸化性を示すことが明らかとなった。
一方、Siを含有しないDLC膜で被覆された供試材(No.C1a)では、高温加熱すると供試材の重量が大きく変化した。特に、500℃で加熱すると酸化が激しくDLC膜が消失した。
少ないながらもSiを含有するDLC−Si膜で被覆された供試材(No.C2a)では、Siを含有しない場合よりも加熱前後の重量変化はかなり小さい。もっとも、Siを十分に含有したDLC−Si膜で被覆されている供試材と比較すると、加熱前後の重量変化が大きく、耐熱温度は550℃には至らなかった。
この試験から、耐酸化性ひいては耐熱性の確保には、Siを含有したDLC−Si膜であることが必要であることがわかった。特に500℃以上の高温域でも耐え得るには、Siを少なくとも6原子%以上含有していることが必要であった。
(2)高温硬さ
表2に示す結果から解るように、DLC−Si膜で表面が被覆された供試材(No.1c、No.2c)は、500℃という高温加熱下でも、非常に大きな硬さを保持していた。一方、Siを含有しないDLC膜で被覆された供試材(No.C1c)は、高温加熱すると、400℃で硬さが急減し、500℃では測定すらできない状況であった。
これらの試験から高温硬さを確保するには、やはり非晶質炭素膜がDLC−Si膜であることが必要であることがわかった。特に500℃以上の高温域でも十分な硬さを維持するためには、Siを少なくとも14原子%以上含有していると好ましいことがわかった。
ちなみに、基材c自体の硬さは、加熱前にHv1100、500℃でHv650となる。本発明に係るDLC−Si膜を設けると、基材自体よりも硬質になることがわかる。特に表面部のSi濃度が22%程度になると、500℃でも基材の常温硬さに相当する硬さをほぼ維持することもわかった。
(3)高温摩擦摺動特性
先ず表3に示す結果から解るように、適量のSiを含むDLC−Si膜で表面被覆された供試材同士を摺接させた場合(No.2ab〜7ab)、摩擦係数は300〜480℃の高温域であまり変化せず、いずれも0.4以下で安定していた。
一方、Siを含有しないDLC膜で被覆された供試材を用いた場合(No.C4ab)、400℃で摩擦係数が0.7まで上昇し、それよりも高温では測定試験すら継続できなかった。またDLC−Si膜であっても、膜中のSi濃度が過小または過大になると(No.C5ab〜C7ab)、高温になるほど摩擦係数が上昇し、400℃以上の摩擦係数はいずれも0.4を超えた。
ボール摩耗痕径およびディスク摩耗深さに関しても、同様の傾向がいえる。つまりSi濃度が適切なDLC−Si膜で被覆された供試材を用いた場合、いずれもボール摩耗痕径およびディスク摩耗深さが、比較的小さい値で安定していた。一方、それ以外の場合、ボール摩耗痕径およびディスク摩耗深さがいずれも大きくなり、特に温度が400℃から480℃に上昇すると急増する傾向を示した。
さらにディスク摩耗深さを観ると解るように、Si濃度の適切なDLC−Si膜で被覆された供試材では、高温摺動させたときでも、相手材(ボール21)の凝着を生じず、相手攻撃性が低いことが確認された。またこのときのディスク摩耗深さは、摺動距離が増加してもほぼ一定で、摩耗の進展は見られなかった。このようにSi濃度の適切なDLC−Si膜で被覆された供試材は、それ自身の摩耗も小さいことが解った。
次に表4に示す結果から解るように、異なる表面性状の供試材を摺接させた場合でも(No.8ab〜10ab)、少なくとも一方の供試材がSi濃度の適切なDLC−Si膜で被覆されていると、高温域でも安定した摩擦摺動特性を示した。また理由は定かではないが、DLC−Si膜の下地層(DLC−Si膜と基材との中間層)に、硬質なCrメッキ層などを用いると(No.10ab)、より優れた摩擦摺動特性が発現された。
(4)臨界部(傾斜部)の影響
上述した優れた耐酸化性、高温硬さおよび高温摩擦摺動特性の発現に、DLC−Si膜の表面部が寄与していることは明らかであるが、そのDLC−Si膜を基材との界面近傍で支持する臨界部も、DLC−Si膜の耐熱性の向上に非常に大きく寄与している。
具体的には、図4に示すように、本発明に係るDLC−Si膜は、基材と接する境界付近からSi濃度が徐々に増加している。このSi濃度の漸増または濃度傾斜が、DLC−Si膜の基材への密着性を、高温域においても確実に保持する機能を果たしている。そしてSi濃度の大きな表面部とSi濃度が比較的低い臨界部とが相乗的に作用して、本発明に係るDLC−Si膜は従来になく現実的で優れた耐熱性を発現したと考えられる。
このことは表5に示すスクラッチ試験結果から明らかである。すなわち、成膜初期にTMSガス量を抑制せずに成膜した供試材の場合(試験No.Sa)、DLC−Si膜の成膜直後の密着力自体が低く、厳しい冷熱サイクルの経過後の密着力は初期の密着力の半分以下となった。従って、従来の方法で成膜したDLC−Si膜は、常温域で使用し得るとしても、高温耐久性に乏しいことが明らかとなった。これに対して表面部よりも臨界部のSi濃度が低くなるようにした供試材の場合(試験No.2a)、DLC−Si膜の成膜直後の密着力自体が高く、厳しい冷熱サイクルの経過後でも、その密着力はあまり低下しなかった。よって、本発明に係るDLC−Si膜は、成膜直後から高い密着力を有し、高温環境下で使用される場合でもその高い密着力を安定的に維持して、常温域は勿論高温域で使用される場合でも、優れた耐久性を発現することが明らかとなった。
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Claims (6)

  1. 基材と、
    該基材の少なくとも一部を被覆し、ケイ素(Si)、水素(H)および残部である炭素(C)からなる非晶質炭素膜とを有し、該非晶質炭素膜により最表面が形成される被覆部材であって、
    前記非晶質炭素膜は、Si濃度前記基材との界面に臨み該基材の最表面までの該非晶質炭素膜の領域である臨界部よりも、該臨界部から連なり該非晶質炭素膜の最表面までの領域である表面部の方が高く、Siが該臨界部から該表面部にわたって連続的に分布しており、該臨界部に該基材側から該表面部側にかけて該Si濃度が漸増すると共にCが漸減する傾斜部を有することを特徴とする被覆部材。
  2. 前記表面部は、前記Si濃度が8〜30原子%である部分を有する請求項1に記載の被覆部材。
  3. 前記表面部は、H濃度が20〜40原子%である部分を有する請求項1またはに記載の被覆部材。
  4. 前記臨界部の厚さは、前記非晶質炭素膜全体の厚さに対して50%以下である請求項1に記載の被覆部材。
  5. さらに、前記基材と前記非晶質炭素膜との界面近傍に介在する中間層を有する請求項1〜のいずれかに記載の被覆部材。
  6. 基材を載置した処理炉内を排気して真空状態とする排気工程と、
    該処理炉内へ少なくともSi、HおよびCを含有する原料ガスを導入して該基材の少なくとも一部に非晶質炭素膜を形成する成膜工程と、
    を備える被覆部材の製造方法であって、
    前記成膜工程は、前記処理炉内に導入する前記原料ガス中のSi濃度を該原料ガスの導入初期から漸増させるSi濃度漸増工程を含み、
    請求項1〜に記載の被覆部材が得られることを特徴とする被覆部材の製造方法。
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