JP5721692B2 - 眼科外科手術用顕微鏡システムおよびその作動方法 - Google Patents

眼科外科手術用顕微鏡システムおよびその作動方法 Download PDF

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Description

本発明は、外科的な眼科治療を行う外科医をサポートするための眼科外科手術用の顕微鏡システムに関する。また、本発明は、当該眼科外科手術用顕微鏡システムの作動方法に関する。
特に、本顕微鏡システムは、角膜、虹彩、水晶体等の眼の部位の治療に適した照射を提供するよう構成される。本顕微鏡システムは、白内障を発症している人の眼の水晶体を人工的な水晶体に取り換える白内障手術に応用することができる。
図1〜図3を参照しながら、眼科外科手術用の従来の顕微鏡システムについて以下に説明する。
図1は、顕微鏡システム1のビーム路の概略図である。本顕微鏡システム1は、光軸5と対象面7とを備えた対物レンズ3を備えており、対象面7内に手術を受ける眼の部位を配置する。対物レンズ3は、対象物側の対象面7から出射されるビーム11を、光軸5を中心とした角度9が無限遠となるように変換し、そのビーム11を画像側のビーム13に変換する。
画像側のビーム13において、それぞれ光軸17、18を有する2つのズーム系15、16は、それぞれの光軸17、18が対物レンズ3の光軸5に平行にかつ互いに距離をおいて配置されるように、互いに近接して配置される。各ズーム系15、16は、ビーム13の部分ビーム19、20をそれぞれ受光する。部分ビーム19は、外科医の左眼21に供給され、もう一方の部分ビーム20は、外科医の右眼22に供給される。管レンズ23、プリズム系25および接眼レンズ27が、部分ビーム19、20のビーム路内に配置されている。左眼21は、光軸5に対して視野角αだけ傾斜した対象面7を知覚する。右眼22は、光軸5に対して視野角−αだけ傾斜した対象面7を知覚する。これによって、外科医は、対象面7に配置された手術中の眼の部位の立体的な印象を得る。
例えば、白内障手術中に水晶体を除去するには、吸引によって水晶体を完全に除去する必要がある。赤色反射照射とも称されることのある反帰光線法を採用すると、眼の水晶体の残留部分を外科医が認識し易くなることがわかっている。ここで、光は、顕微鏡の対物レンズ3側から発せられ、瞳孔32(図2参照)および眼31の内部の水晶体33を通過して、網膜34および眼底に入射する。照射光が反射され、眼の水晶体33および水晶体の残留部分を背面から照らすと、これらの部分の視認性がよくなる。なお、網膜は、実質的に赤色光のみを反射するので、眼の水晶体33またはその残留部分が赤色光の中に見えることとなり、赤色反射照射という名称の由来はここにある。
図2および図3は、赤色反射を発生するのに使用する反帰光線法装置35の配置図である。
図3の上面図は、対物レンズ3平面上におけるズーム系15、16およびズーム系に入射するビーム20の中心36を示す。さらに、図3は、対物レンズ3平面内における中心36間の結合線38を示す。この結合線38は、図2の側面図において、部分ビーム19、20の主光線が光軸に対して角度δを以って伸びるように、光軸5から距離を置いて配置されるが、この距離はゼロとしてもよい。
図2には図示されない光源の光は、光ファイバ37を介して照射系35により供給され、コリメーション光学系39によって展開され、平行ビーム40を形成する。ミラー41が対物レンズ3の光軸5から距離を置いて配置されており、このミラー41は、コリメーション光学系39によって生成されたビーム40の部分ビームが対物レンズ3の光軸5と平行に伸びて対物レンズ3を横切るように、このビームの方向を変える。したがって、図2に示す側面図からわかるように、この部分ビームの主光線は、反帰光線光43のビームである観測ビーム19、20の主光線に対して約2度の角度βを以って眼31に入射する。また、図2の矢印34で示されるように、この部分ビームはこの位置で反射され、反帰光線および赤色反射をそれぞれ発生する。角度βが2度であると上述に述べたが、これは一例であり、−2度と2度との間の角度が好ましいことがわかっている。反帰光線光43のビームに加えて、標準照射光45のビームの主光線が観測ビーム19、20の主光線の平面に対して約7度のより大きい角度εを以って対象面7に入射する。ミラー47によって、コリメーション光学系39より提供される光ビーム40の方向を変えることによってこの標準照射光45のビームを発生する。この標準照射光ビームは、治療を行う対象面7つまり眼31の患部の通常照明として機能する。この標準照射光45のビームは、対象面7に配置された虹彩等の眼の部位を照射し、これらの部位を外科医に見え易くする。この標準照射光ビームは、赤色反射の発生には実質的に寄与しない。標準照射光45のビームは、通常の視覚による観察を行い易くする照射光で対象面を照射するためのものであり、赤色反射の発生には実質的には寄与しない。特に、この照射光によって、対象面に配置された対象物を天然色で見ることが可能となる。ミラー47は、ミラー41へと光を入射させるための切り欠き49を有する。
実際に、赤色反射を発生し、外科治療の間この赤色反射を維持するには、特に眼が移動していたり、レンズを変更する際には、かなり手間がかかることが多い。また、眼の網膜を保護するために、赤色反射が常に所望の強度で発生可能なように反帰光線の強度を制限するよう注意を払う必要がある。
本発明の目的は、眼科外科手術用の顕微鏡システムを提供することであって、このシステムによれば、赤色反射を発生させることおよび高輝度の赤色反射を発生したときに、手術中の眼の網膜上のストレスを制限することの少なくとも1つが容易となる。
本発明は、眼科外科手術用の顕微鏡システムに関し、この顕微鏡システムは、その対象面を画像化する対物レンズと、前記対象面の対物レンズ側から前記対象面に向かう少なくとも1つの反帰光線光ビームを発生する反帰光線システムとを備える。
本発明の第1の側面によれば、本眼科外科手術用顕微鏡システムは、反帰光線光ビームが540ナノメートル、特に、600ナノメートルより長い波長帯の可視光のみを実質的に含むよう構成される。一実施形態によれば、反帰光線光は、赤色光および赤外線光の少なくとも1つである。
ここで、基本的に考慮すべき事項の1つとして、眼の網膜は、反帰光線を発生する赤色光を主に反射するということがある。したがって、網膜がその他の色の光を吸収すると、赤色反射を発生するのではなく網膜に熱ストレスが与えられることになる。高輝度の赤色反射を発生するには、赤色光のみを眼に照射し、その他の色の光による網膜上の不必要なストレスを防ぐ。この照射される赤色光は、網膜によって有効に反射される波長帯より得られる。このことは、この波長帯以外の光を反帰光線光ビームが含むことが除外されるものではない。ただし、この波長帯以外の光は、光のうちの限られた部分、特に、60%より小さい部分にすべきである。反帰光線光ビームの50%を超える光強度が530ナノメートルから780ナノメートルの波長帯にあるのが好ましい。
反帰光線光ビームの波長帯は、手術中の眼に整合させ得ることが好ましい。網膜の反射率の波長依存性には、個人差があることがわかっており、特に人種が異なる個人間で波長依存性に差があることがわかっている。例えば、網膜の反射率の波長依存性を予め計測しておき、反帰光線法の最適化のために反帰光線光ビーム用に使用する波長帯を、得られた網膜の反射率に整合させることが可能である。
反帰光線光ビームは、適当な光源、特に、赤色光源によって発生するか、または、適当な色フィルターを使用することによって発生するのが好ましい。一実施形態によれば、赤色光以外の光に関して非透過性のフィルターを反帰光線システムのビーム路内に配置する。さらなる実施形態によれば、赤色光のみを実質的に反射するよう構成されたミラーによって、このフィルターを形成してもよい。光源としては、発光ダイオード(LED)、特に、有機発光ダイオード(OLED)、レーザ、特に半導体レーザ、およびその他の任意の種類の光源が含まれる。
一実施形態によれば、光源は、広スペクトルを有する光を発生し、周波数選択ビームスプリッタを設けて、光源から発生する光ビームを標準照射光ビームと反帰光線光ビームとに分割する。標準照射光ビームの主光線と反帰光線光ビームの主光線とは、顕微鏡の観測ビームの主光線が配置される平面に対して異なる角度を以って伸び、反帰光線光ビームの角度は、標準照射光ビームの角度より小さい。
本発明のさらなる側面によれば、反帰光線システムは、複数の光源を備え、それぞれの光源が1つの反帰光線ビームを発生する。
これによって、数本の反帰光線光ビームが発生可能となり、各ビームの主光線は、観測ビームの主光線が配置される平面に向かってそれぞれ異なる角度で伸びる。少なくとも1本の反帰光線光ビームが手術中の眼に入射し、適当な赤色反射が発生する。これらの光源は、別々にオンオフの切換えが可能であることが好ましく、これによって、手術中に生じる眼の配置において、赤色反射の発生に寄与しないかほとんど寄与しない光源をオフに切換えることができる。この結果、網膜に加わるストレスを減少しやすくなる。
一実施形態によれば、これらの光源は、光源面において円形の少なくとも一部に沿って配置される。
なお、この円形は、観測者の瞳孔の周り、すなわち、ユーザに対して対象面の画像を発生するために、ズーム系または接眼レンズ系によって選択される画像側の光ビームの部分ビームの周りに円周上に配置することができる。
また、これらの光源は、光源面において実質的に均一に、例えばグリッドパターン状に配置することが可能である。
複数の光源を設ける代わりに、複数の切換え可能な光弁素子上に入射する光ビームを有する光源を設けることも好ましい。この切換え可能な光弁素子によれば、選択的に光を遮断したり、透過したりさせることができ、これによって反帰光線光ビームを選択的に発生できる。一実施形態において、この光弁素子は、反帰光線光ビームを反射するよう構成される。
一実施形態によれば、複数の光源および複数の光弁素子をそれぞれ選択的に制御するコントローラが設けられ、反帰光線光ビームがオンに切り換わっている時のみ、選択された領域内で反帰光線光ビームが対象面を通過することとなる。
本発明のさらなる側面によれば、本眼科外科手術用顕微鏡システムは、反帰光線光ビームの断面が対物レンズと対象面との中間に配置される面において移動可能であるように構成される。
これによって、反帰光線光ビームの主光線と、顕微鏡の観測ビームの主光線が配置される面との間の角度を変更することが可能となる。したがって、手術治療中に眼の配置が変化しても赤色反射の発生を維持することが可能となる。
一実施形態によれば、反帰光線光ビームの方向を変えるミラーが、対物レンズと対象面との間の平面に配置され、このミラーは、対物レンズの光軸を横切る方向に移動可能である。さらに、対物レンズの光軸を横切る方向に移動可能な、反帰光線光ビームを発生する光源を配置することも可能である。
一実施形態によれば、対象面から発せられる光を検出する光色センサーが設けられる。この光色センサーは、検出した光の色を表す色信号を発生する。コントローラによって、この色信号を分析し、この色信号に応じて、反帰光線光ビームの断面の位置を決定する。
本発明のさらなる側面によれば、反帰光線光ビームの集束または発散を変更するコリメータを備えた反帰光線システムが提供される。これによって、反帰光線光ビームが手術中の眼の網膜上で小さいスポットとなるようにビームを集束させることが可能となる。反帰光線光ビームが入射する網膜上のスポットが比較的小さければ、赤色反射によって高コントラストの反帰光線が発生することがわかっている。反帰光線光ビームの集束と発散とをそれぞれ変更できることによって、水晶体がまだ取り除かれておらず、その眼が近視または遠視の場合であっても、このような小さいスポットを発生可能となる。また、眼の水晶体が除去された後、網膜上の小さいスポットが照射されるように反帰光線光ビームの集束または発散をそれぞれ調整することも可能である。
一実施形態によれば、反帰光線の最適化に関して、集束または発散をそれぞれ変更するコリメータを制御するコントローラが設けられる。また、対象面の画像を得るためのカメラを設けてもよい。その場合、カメラによって取り込んだ画像のコントラストに応じて、コントローラによってコリメータを調整可能である。
本発明のさらなる側面によれば、眼において反帰光線を発生させる方法が提供される。
従来の眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 従来の眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 従来の眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態1に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの部分模式図 本発明の実施形態1に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの部分模式図 本発明の実施形態2に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態3に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態4に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態5に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態5に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態6に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態7に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態8に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態9に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 本発明の実施形態10に係る眼科外科手術用顕微鏡システムの模式図 眼科外科手術用顕微鏡システムのさらなる変形例を示す模式図 眼科外科手術用顕微鏡システムのさらなる変形例を示す模式図
以下に、本発明の実施形態について、添付の図を参照しながらさらに詳細に説明する。
図4および5は、眼科外科手術用顕微鏡システム1の詳細を示す概略図であり、図1に示した従来のシステムと類似の配置を有する。対物レンズ3は、対象面7から発せられる光束11を画像側の光束13に変換するために設けられる。光束13内に、2つのズーム系15、16が配置され、それぞれのズーム系によって光束13から観測光束19、20が選択され、第1外科医が観測を行うための図4には図示されない接眼レンズにこの観測光側19、20が供給される。ズーム系15および16に加えて、さらに2つのズーム系15'、16'が設けられており、各ズーム系によって光束13から観測光束19'、20'が選択され、第2外科医用の接眼レンズにこれらの観測光束が供給される。このように、2人の外科医が、手術中の眼の画像を見るための顕微鏡システムを覗くことができる。
複数の光源51がズーム系15、16、15'、16'と対物レンズ3との間に配置され、その各々は、発光ダイオード53とコリメータマイクロレンズ55とを備える。対物レンズ3の光軸5を横切る方向の平面において、これらの光源51は、観測光束19、20、19'、20'の光軸17、18、17'、18'を囲む円57に沿って配置される。
各発光ダイオード53は、赤色光を発し、この光はコリメータマイクロレンズによって対物レンズ3に向かって光軸5と平行に伸びる反帰光線光59の略平行ビームとなる。対物レンズ3は、反帰光線光ビームが対象物側の光束11内で光軸5に向かって集束し対象面7において互いに略交差するように、反帰光線光ビームの方向を変える。対象面において、これらのビームは、患者の眼に瞳孔を介して入射し、赤色反射を発生するために眼の網膜に入射する。発光ダイオード53は、眼の網膜上での熱ストレスを減少するために、赤色光のみを出射する。
また、コントローラ61が設けられており、これによって各光源51のオンオフ切換えが行われる。
コントローラ61は、光源51を個別に、特にグループごとにオンオフ切換えし易くする。したがって、部分光束の周囲に配置される光源51のグループごとにオフに切換えることが可能となるが、このコントローラは外科医のいずれかによる観測のために使用されるわけではない。
また、より高いコントラストでの反帰光線法を実現するために、円57の一部の光源57をオフに切換えることが可能である。ハーフミラー63を各部分光束19、20、19'、20'のビーム路内に配置し、各部分光束のうち、対象面7の画像を発生するのに使用する部分光をカメラ用光学系65を介してCCDチップ67上で結合させる。コントローラ61は、カメラチップ67から画像情報を読み取り、カメラチップ67によって取り込んだ画像を分析する。そして、コントローラ61は、より良い赤色反射を得ることに関してカメラ67によって取り込んだ画像を最適化するために、光源51のいくつかを選択的にオフに切換える。
以下に、図1〜5を参照して説明した実施態様の変形例を記載する。以下に記載の変形例において、対応する機能および構造を有する要素には、補足的な文字を補って同じ参照符号を付与する。具体的な実施態様の個々の要素の特徴を理解するには、他の実施態様の記載も参照されたい。
図6は、眼科外科手術用顕微鏡システムの部分概略断面図を示し、本顕微鏡システムは、筐体71内に配置された対物レンズ3aとズーム系16aとを備える。照射系35aによって、赤色反射を発生するための反帰光線光43aのビームと標準光で対物レンズ3aの対象面7aを照射するための標準照射光45aのビームとが提供される。この照射系35aは、光を出射する白色光源76とビーム77を若干平行にするコリメーション光学系39aとを備える。
光ビーム77は、切換え可能な液晶素子を有するLCDアレイ79を横切るが、各液晶素子は赤、緑、青の色のうち1色を選択的に透過させるものである。LCDアレイ79の中央領域73では、赤色光だけが透過するように各素子が切換えられている。中央領域73の周囲の環状領域75では、赤、緑、青の色の光が透過するように、すなわち、全体として白色光が透過するように各素子が切換えられている。図6は、中央領域73を介して透過した赤色光ビームを網掛け領域で示している。LCD79を通過した後、ビームは方向変換ミラー81に入射し、さらに対物レンズ3a上に配置された方向変換ミラー41aに入射して、対物レンズ3aを横切って対象面7aに向かって集束する。赤色光からなる中央ビームが反帰光線光ビーム43aを形成し、対象面7aでのこのビームの直径および位置は、ビームが手術中の眼31aに瞳孔32aを通じて入射し、網膜を照射して網膜において赤色反射を発生するように選択される。ビーム43aを囲む白色光からなるビームは、対象面7aの通常照射のための標準照射光45aのビームを構成する。
また、カメラ67aによって画像を撮影するために、対物レンズ3a上の画像側で、光束20aの部分ビーム20aのうちさらなる部分光束をハーフミラー63aによって結合させる。コントローラ61aは、赤色反射を最適化するために取り込んだ画像を分析する。コントローラ61aは、LCD79を駆動して中央領域73の位置および直径を調整し、中央領域73を透過した赤色光ビーム43aが瞳孔32aの形状に合うようにする。このようにして、赤色反射の発生が最適化される。光ビーム43aは、瞳孔の全断面または瞳孔の断面の一部を通過して眼に入射する。
図7に示す眼科外科手術用顕微鏡システム1bは、図1〜3を参照して説明した従来のシステムと類似した構造を有する。つまり、この眼科外科手術用顕微鏡システム1bは、対象面7bを有する対物レンズ3bとズーム系16bとを備える。ビームスプリッタ63bによって、ズーム系16bを横切る光束20bより部分光束が抽出される。この部分光束は、対象面7bの画像を検出してコントローラ61bによる分析を行うために、カメラ67b上に向かう。
照射系35bは、反帰光線光43bのビームと標準照射光45bのビームとを発生する。白色光源93とコリメータ94とで標準照射光45bのビームを発生し、対物レンズ3b上のミラー47bによって、標準照射光のビームを対物レンズのビーム路内に結合させる。標準照射光45bのビームの主光線が観測光束19b、20bの主光線の平面に対して約7度の角度εを以って伸びるように、対物レンズ3bによって、標準照射光45bのビームの方向を変える。ブレード87は、ミラー47bを部分的に覆っており、これによって標準照射光45bのビームの強度を変更する。ミラー47bの平面内でブレード87を移動させるために、アクチュエータ89が設けられている。コントローラ61bは、アクチュエータ89を駆動するドライバ91を制御する。
図7に示す実施態様の変形例として、標準照射光45bのビームは、LCD装置またはDMD装置によって制御し、ビーム45bの色や強度を調整してもよい。また、眼の瞳孔に実質的に光が入らないように標準照射光を形成してもよい。詳細については、図6に示す実施態様で説明済みである。
光源95とコリメーティングレンズ96とが、反帰光線光43bのビームを発生し、対物レンズ3b上のミラー41bによって、このビームは、対物レンズのビーム路内に結合される。アクチュエータ83が設けられており、これによってミラー41bの位置を対物レンズ3bの光軸5bを横切る異なる位置間で移動させる。図7では、ミラー41bの2つの位置が示されているが、アクチュエータ83によって、図7に示す2つの位置の間でミラーを連続的に移動させ、−2度から2度までの範囲で角度βを変化させることも可能である。この角度βは、反帰光線光43bのビームの主光線と観測光束19b、20bの平面との間の角度である。コントローラ61bがドライバ85を制御し、ドライバ85がアクチュエータ83を駆動する。
判りやすくするために図7には示していないが、反帰光線光43bのビームの強度を変更できるよう制御可能にミラー41bを部分的に覆う移動可能なブレードをミラー41bに設けることも可能である。
ミラー41bの代わりにまたはこれに加えて、LCDまたはDMDを設けて、瞳孔に入射する際の、反帰光線光43bのビームの色および形、すなわち、特に直径、の少なくとも一方に関して、ビームを成形してもよい。これによって、反帰光線光43bのビームが瞳孔の周辺には実質的に入射しなくなり、これによって実質的にすべての光強度が瞳孔、つまり眼に入射することとなる。
手術治療中に眼のずれやその他の原因によって赤色反射が減少した場合、コントローラ61bがカメラ67bで取り込んだ画像を分析することによってこれを検出し、赤色反射を最適化するように方向変換ミラー41bの位置を変える。
これに関して以下の方法を用いることができる。
コントローラ61bによって、カメラ67bが取り込んだ画像の中央領域内において支配的な色を決定する。赤色反射が十分である場合には、各色の強度Iは、以下の関係を満たす。
Figure 0005721692
および、
Figure 0005721692
赤色反射を改善するようなアクチュエータの移動方向を決めるために、コントローラはまず、アクチュエータ83を任意の一方向に起動し、その結果が改善されているかどうか、すなわち、I(ブルー)に対するI(レッド)の比率がI(グリーン)に対するI(レッド)の比率に比べて増加しているかどうか等を判断する。もしそうであるならば、この方向に移動させる。そうでない場合には、アクチュエータ83を反対方向に起動する。赤色反射に関する上述の関係を最適化するミラー41bの位置が見つかるまでこの方法を継続すればよい。
ミラー41bの位置が最適でない場合に発生する赤色反射は、特に、瞳孔内でのカメラ67bによって検出される光度が、瞳孔の中心に対して対称に配置されないという特性を有する。特に、これによって反帰光線光によって若干三日月形状に瞳孔が照射されることとなる。コントローラ61bは、画像におけるこのような非対称性を分析し、赤色反射を最適化することに関してアクチュエータの移動方向を直接導き出す。
カメラによって取り込んだ画像内の赤色反射の位置を特定するには、以下に示す方法が使用できる。
まず、適当な色条件、例えば上述の色条件を満たす画像内の画素に印をつける。ここで、瞳孔内に配置されない、つまり赤色反射に寄与しない画素にも印をつける。例えば、瞳孔より外側に配置される血管などもこの色条件を満たすかもしれない。
一方、瞳孔内に配置され、赤色反射の領域内にある画素が色条件を満たさない場合も起こり得るが、印のついた画素の領域を結合するアルゴリズムを用いて、印をつけた画像を処理することが可能である。例えば2個の近接する印のついた画素の間に配置される印のついていない画素にも印をつけるというような方法が可能である。同様に、少し離れた位置であって2個の印のついた画素の中間に位置する印のついていない画素にも印をつけてよい。この方法を何度か繰り返すことができる。この処理によって、画像内に連続的に印のついた領域が生まれる。その後、さらなるアルゴリズムによって、画像内で印のついた最大領域を決定し、この最大連続領域につながっていない印のついた連続領域を削除すればよい。すなわち、これらの画素につけられた印はキャンセルされる。残ったものが、高い確率で赤色反射に割り当てることのできる画像における連続的な印のついた領域となる。その後、コントローラは、この連続した印のついた領域の形状を分析し、さらに、この領域の形状を円形の領域に類似した形状に近づくよう最適化するために、反帰光線システムのパラメータに基づいて動作する。
カメラ67bを使用する代わりに、単一の色センサのみを使用することも可能である。この色センサは、カメラと違って、画像に関する位置に依存した情報を提供しない。この色センサは、3色についての感度を有するもので、カメラによって取り込んだ画像の中央領域に関して先に説明したように、色信号を提供し得るものである。
このような処理の感度を増すために、コントローラ61bによって赤色光源95より出射される光の強度を変調してもよい。したがって、カメラ67bまたは色センサによって検出される色信号も、赤色反射を表すものであれば、同時に変調される。赤色反射の検出に関して、特に色センサを使用する場合、感度を増すために特性変調周波数を除去してもよい。色センサにおいてロックイン信号検出法を採用すれば、さらに強度または選択感度を上げることができる。その場合、光源95は、色センサでの検出に同期した位相で変調されるのが好ましい。変調周波数は、顕微鏡を通じて見た際に人間の眼によって強度の変化が観測されないような十分高い周波数とすればよい。100%より低い変調で十分である。したがって、例えば、反帰光線光の変調を平均強度の10%に制御すれば十分である。
また、標準照射光45bのビームの一部が赤色反射用の照射ビームに対して最適化された比率の範囲内となるように、コントローラによって、ドライバ91を介してアクチュエータ89を駆動してもよい。これによって、残りのフィールドを照射するのに十分なように赤色反射に関するコントラストが増加すなわち改善可能となる。この代わりにまたは補助的に、先に説明したように、光源93の強度を変調することによって画像処理を改善することも可能である。
図8に示す眼科外科手術用顕微鏡システム1cは、図1〜3を参照して説明した従来のシステムと同様の構成を有する。光ファイバ37cは、コリメーション光学系39cを用いて白色光を供給する。平行光ビーム40cからの反帰光線光43cのビームと標準照射光45cのビームとが、対物レンズ3c上のビーム路において結合される。波長選択ビームスプリッタ48は、コリメーション光学系39cによって発生されるビーム40c内に配置される。このビームスプリッタ48は、赤色光を透過させ、その他の光については、標準照射光45cのビームを形成するために光軸5cに平行に対物レンズ3cに入射するようその方向を変える。方向変換ミラー41cは、波長選択ビームスプリッタ48を通過した赤色光についても光軸と平行に対物レンズ3cに入射し、反帰光線光43cのビームを形成するようその方向を変える。反帰光線光ビームの主光線は、観測光束19c、20cの主光線の平面に対して約0度から2度の角度βを以って対象面7c上で集束する。一方、ビーム45cと観測光束19c、20cの主光線の平面とは、約7度の角度εを囲む。
照射ビーム43cと45cとは、対象面7cで交差する。
ここでも、赤色反射の最適化のために、アクチュエータによって、光軸5cを横切るようにミラー41cを移動させることが可能である。
図9は、図8に示した眼科外科手術用顕微鏡システムの変形例を示す概略図である。先の例とは違って、図10に示すように、波長選択ビームスプリッタ48dは、ミラー47dの切り欠き部49dのみに設けられ、これによって赤色光が透過し、対物レンズ3dの上方に配置されたミラー41dによってシステム1dのビーム路に結合され、反帰光線光43dのビームを形成する。ビームスプリッタ48dは、部分ビームを反射し、標準照射部分ビーム45d'が形成される。一方、ビームスプリッタ48dを囲むミラー47dによって、標準照射の主部分ビーム45dがビーム路内に結合される。
図11は、図9に示す眼科外科手術用顕微鏡システムのさらなる変形例を示す図であり、この例は、反帰光線光43eのビームおよび標準照射光45eのビームの強度を互いに相対的に変化させるために、波長選択ビームスプリッタ48eが対物レンズ3eの光軸5eを横切って移動可能である点が図9とは異なる。
図12は、図8および11に示す眼科外科手術用顕微鏡システムのさらなる変形例を示す図である。図12に示すシステム1fにおいても、波長選択ビームスプリッタが、照射系35f内で、反帰光線光ビーム43fと標準照射光ビーム45fとを発生する。波長選択ビームスプリッタ48fは、照射系35fに白色光を供給する光ファイバ37fの一端に配置される。このビームスプリッタ48fは、赤色光を透過させ、透過した赤色光はコリメーション光学系39f'によって平行光となる。この光は、対物レンズ3fの上方のミラー41fによってシステムのビーム路内に結合され、観測光束19f、20fの主光線の平面に対して0度から2度の角度βを以って対象面7fに向かって伸びる主光線を有する反帰光線光43fのビームが形成される。ミラー95によって、波長選択ビームスプリッタ48fが反射した部分ビームの方向が変更され、コリメーション光学系39fによってこのビームは平行光となる。ミラー47fによって、この平行光ビームは対物レンズ3fの光軸と平行な方向に向きを変更され、観測光束19f、20fの主光線の平面に対して約7度の角度εを以って対象面7fに向かって伸びる主光線を有する標準照射光ビーム45fが形成される。
図13に示す眼科外科手術用顕微鏡システム1gは、図9に示すシステムと類似の構成を有する。波長選択ビームスプリッタ48gによって、反帰光線光のビーム43gと標準照射光のビーム45g'とが発生される。標準照射光のさらなるビーム45gがミラー47gにおいて反射され、この標準照射光のさらなるビーム45gの主光線は、標準照射光のビーム45g'の主光線と比べて光軸に対してより大きな角度を以って対象面7gに入射する。照射ビーム45gによって照射される対象面7gの領域の大きさを変更するために、可変光学部品98が通常の照射ビーム45gのビーム路内に設けられる。
図14に示す眼科外科手術用顕微鏡システム1hは、図11に示すシステムと類似の構造を有する。ただし、反帰光線光ビーム43hと標準照射光ビーム45hとが、波長選択ビームスプリッタによって発生されるのではなく、異なる色の光源によって発生される。これらの光源は、2つの別々の光ファイバ37h、37h'を介して発生した光を照射系35hに供給する。光ファイバ37h'は、赤色光を供給し、この赤色光は、コリメーション光学系39h'によって平行光となり、対物レンズ3hの上方のミラー41hを介してシステムのビーム路内に結合され、観測光束19h、20hの主光線の平面に対して0度から2度の角度βを以って伸びる主光線を有する反帰光線光ビーム43hを発生する。光ファイバ37hは、緑および青色の光、すなわち、赤色光以外の残りの可視スペクトルを供給する。これらの光は、コリメーション光学系39hによって平行光となり、ミラー47hを介してビーム路内に結合され、観測光束19h、20hの主光線の平面に対して約7度の角度εを以って伸びる主光線を有する標準照射光ビーム45hを発生し、反帰光線光ビーム43hを白色光に補う。
図15に示す眼科外科手術用顕微鏡システム1iは、図11に示すシステムと類似の構造を有する。ただし、このシステムの場合、反帰光線光43iのビーム用のコリメーション光学系39i'は、光軸に沿って移動可能な2つのレンズ群99を備えており、反帰光線光ビーム43iの集束または発散を変更することができる。これによって、手術中の眼31iの網膜34iに正確に焦点が合うように反帰光線光43iのビームを平行光とすることが可能となり、眼31iの瞳孔の部位での対象面7i内においてコントラストに富んだ改善された赤色反射が発生する。
さらに、反帰光線光のビーム43iのビーム路内に偏光子120が配置される。この偏光子120は、コントローラ61iによって制御されるアクチュエータ121によってビーム軸を中心に回転可能である。これによって、反帰光線光ビーム43iの偏向を最適化することが可能となる。
各観測光束19i、20i内の赤色反射の見え方をさらに改善するために、検光子の機能を有するさらなる偏光子122を、観測光束19i、20iのビーム路内に配置し、この偏向子122を、コントローラ61iによって制御されるアクチュエータ123によって動作させる。この偏光子122は、アクチュエータ123によって観測光束19i、20iの軸を中心に回転可能であり、偏光子120、122の方向を調整することによって、赤色反射の見え方を最適化することが可能となる。
また、照射位置での網膜34iの熱ストレスを減少させるために、図15に示す眼科外科手術用顕微鏡システム1iは、反帰光線光ビーム43iによって網膜34i上に発生される照射スポットが周期的に前後に移動するように動作する。このために、走査ミラー41iは、例えば、移動または旋回可能である。
なお、反帰光線光ビーム43iによって網膜34i上に発生される照射スポットは、できる限り小さい直径を有し、例えば、1.5mmより小さい直径を有する。網膜34iに関して許容可能な最大照射ストレスのみが、照射スポットの最小直径を制限し、その結果、照射スポットの最小直径は反帰光線光ビームビーム43iの強度にも依存する。
光学素子99の移動は、カメラ67iによって取り込んだ対象面7iの画像を評価するコントローラ61iによって制御される。このような評価およびコリメーション光学系の駆動は、赤色反射反帰光線の質を最適化するために行われる。
以下に記載する最適化方法を実施するために、ミラー41iは移動可能であり、ビーム43iが網膜34i上に入射する位置を変更または走査することができる。まず、認識可能な影の縁が眼31iの瞳孔32iの中央領域内の画像において認識可能となるように、コントローラ61iによって、アクチュエータ125を介してミラー41iの位置を調整する。次に、影の縁がカメラ67iで取り込んだ画像において最大のコントラストで見えるようになるまで、素子99を移動させるためのアクチュエータを動作させる。次に、反帰光線光ビーム43iの焦点を眼31iの網膜34i上のごく小さいスポットに合わせ、これによって、反帰光線光ビーム43iの集束に関する略最適な調整がなされる。次に、コントローラ61iによって、赤色反射反帰光線が眼の瞳孔32iを均質に照射するようにミラー41iの位置を戻す。なお、ミラーの移動は、平行移動に限らず、回転移動、横移動、斜め移動を含んでもよい。
図17は、本発明に係るさらなる実施態様である眼科外科手術用顕微鏡システム1kの概略図である。このシステムは、対物レンズ3kと、図17には概略的にブロック35kとだけ記した照射系とを有する顕微鏡光学系を備える。この照射系35kは、特に、眼31kの赤色反射を観測するための反帰光線光ビームを発生し、図4〜15に示した照射系を参照して上述したような構成および機能とすることができる。
まず、診察される眼31kの観察を、顕微鏡システムの接眼レンズ27kを通じて行う。接眼レンズには、ズーム系15kおよび16kを介してそれぞれ左部分光束19kおよび右部分光束20kの形で光が供給される。
左部分光束19kにおいて、ビーム153を取り出すためにビームスプリッタ151が設けられる。ビーム153はさらに、ビームスプリッタ155によってさらなる部分ビーム157および159へと分割される。ビーム157内には、カメラ光学部品161が設けられ、カメラ163によって対象面7kの画像を検出することができる。カメラ163によって作成された画像データは、データ線164を介してコントローラ61kに供給される。部分ビーム159もまた、さらなるカメラ167のカメラ光学部品165に供給され、カメラによって対象面7kの画像を検出可能である。カメラ167によって作成された画像データも、データ線168を介してコントローラ61kに伝達される。なお、フィルター169がビーム159内に配置され、このフィルター169は、照射系35kによって提供される反帰光線光ビームの色にあわせた伝達特性を有する。したがって、フィルター169は、反帰光線光ビームに含まれない波長を実質的に阻止する。したがって、カメラ167によって取り込んだ画像は、主に赤色反射による強度分布を示す。強度が弱い可能性のあるこれらの画像は、増幅され、部分ビーム19kのビーム路に結合される。一方、コントローラ61kは、データ線171を介して、相対的な画像データをLCDディスプレイ173に伝達し、データを画像として表示する。そして、ビーム19kのビーム路と画像とがコリメーション光学系175とカップリングミラー177とによって一体化される。この作業は、ビーム19kによって接眼レンズに画像が伝えられた際に、左側の接眼レンズ27kを覗いている観察者が対象面7kの直接的な光学画像を見て、この直接画像への重ね合わせ画像としてカメラ167によって取り込んだ赤色反射画像を見るように行われる。
カメラ167によって赤色反射画像を記録し、ディスプレイ173によってビーム路を結合させると、以下に示す利点が得られる。照射系35kによって供給される反帰光線光ビームの強度を、その焦点が眼31kの網膜に正確に合っている場合であっても網膜に何ら損傷を来たさないように大幅に減少させることができる。したがって、コントラストに富んだ赤色反射画像を発生させるために、網膜上で非常に小さいスポットにまで反帰光線光のビームを集束させることが可能となる。したがって、強度が弱い場合でも、カメラ167は、高い品質で画像を取り込み、増幅された画像がビーム路19kに結合される。カメラ167は、多重チャネルプレート等の光学増幅器を備えていてもよい。
また、人間の眼が知覚できないまたは僅かにしか知覚できないような反帰光線光ビームの波長を使用することが可能である。これらの波長は、例えば、近赤外または赤外波長である。カメラ167がこれらの波長を感知する場合には、カメラ167によってこれらの波長における強度の画像を検出可能である。コントローラ61kは、この相対的な画像データを人間の眼が知覚可能な色、例えば、緑色に変換し、その後この画像データは、ディスプレイ173上に例えば緑色の画像として表示される。人間の眼の網膜は、近赤外および赤外領域において高い反射能を有することが判っており、このような光は反帰光線法に適した光であるとみなされる。
右部分光束20kにおいても、ビームスプリッタ151および177が配置されており、部分ビームを取り出してカメラ163および167に供給し、さらなるLCDディスプレイ173によって発生される画像を光束20kに結合させる。カメラ167、163、ディスプレイ173、および右部分光束20kに対応する光学部品の配置は、先に説明した左部分光束19kの配置と対称である。これによって、接眼レンズ27kを覗いた観測者は、赤色反射画像の立体画像を知覚する。
カメラ163は、標準光カメラであり、観測者が接眼レンズ27kを直接覗いた際に受け取る画像に対応する、対象面7kからの画像を検出する役目を有する。ただし、カメラ163によって取り込んだ画像すなわちその画像データは、コントローラ61kからデータ線181を介して頭部装着ディスプレイ183に送られ、ディスプレイ装置183に一体化されたスクリーン上に表示される。図17は、このディスプレイ装置183を模式的に示しており、観測者の左眼に関して参照符号185が、右眼に関して参照符号186がそれぞれ付与されている。
これによって、ディスプレイ装置183を携帯し、接眼レンズ27kを直接覗くことができない観測者も、対象面7kの立体画像を知覚する。コントローラ61kは、装置183に送信される画像データを処理し、このデータによって表される画像はカメラ167および163によって取り込まれた画像と一体化されている。したがって、ディスプレイ装置183を携帯するユーザもまた、例えば、緑色の赤色反射画像を知覚する。
反帰光線光ビームによる眼31kの網膜への熱ストレスをさらに減少させるために、照射系35kが一定の強度ではなく変調強度例えばパルス状の強度を有する反帰光線光ビームを出射するようにすることも可能である。なお、カメラ167がアイドル状態の時、すなわち入射光を積分していない時に、反帰光線光ビームが実質的にオフに切り換わるように、照射パルスをカメラ167の積分時間と同期させる。
上述の実施例において、照射ビームは、顕微鏡システムの対物レンズの上方のミラーによってビーム路に結合されるか、または、方向変換のミラーを採用することなくシステムのビーム路に直接結合されるように、対物レンズの場所で光源により直接生成される。これらの方法は、相互に交換可能であり、それぞれの場合において、ビームを結合させるミラーを、照射ビームを直接発生する適切な光源で置き換えることが可能であり、その逆もまた可能である。
また、照射ビームが対物レンズを横切らず、対象面に向かうある方向に対物レンズから離れて進むように照射ビームを供給することも可能である。特に、対物レンズを構成するレンズに、切り込みや切り欠きを設けて、照射ビームが対物レンズを自由に貫通できるようにしてもよい。
図16に、反帰光線システムのさらなる変形例を示す。このシステムは、光ファイバ111を備えており、この光ファイバは、強膜を介して眼の網膜34j付近まで目の本体内部に導入されている。光ファイバ111は、眼の瞳孔32jに向かう屈曲部113を形成する端部を有する。ファイバ端部113より出射された光によって、瞳孔および瞳孔32jの領域内に配置される水晶体33jが背面より照射される。
このような照射系のさらなる変形例について、図16に光ファイバ111'として示す。このファイバ111'は、眼球に沿って網膜34jの後ろ側の部位の眼の外側にまで導入できるように構成される。この光ファイバ111'はさらに、網膜34jを背面から照射するように屈曲部を形成する端部113'を有する。この場合、網膜34jを横切る光によって、瞳孔32jまたは水晶体33jがその背面から照射される。
先の実施例において、観測光束19、20によって対象面から発せられる光を接眼レンズに供給し、この接眼レンズを介して対象面を観測していたが、本出願においては、接眼レンズを通じて直接対象面を観測するだけでなく、これに代わってまたはこれを補うように、観測ビーム内に配置されたカメラを備え、静止画像スクリーン、頭部装着ディスプレイ等のディスプレイ装置によって観測者に表示される画像を検出するビデオシステムを用いて対象面を観測してもよい。
前述の実施例において使用したフィルターは、それぞれ、透過フィルターであったが、反射フィルターによって透過フィルターに対応するフィルター機能を実現することも可能である。したがって、本出願の意味でのフィルターは、透過フィルターと反射フィルターとを含むことができる。
本眼科外科手術用顕微鏡システムをさらに進化させたものは、カメラ、特にビデオカメラと、診察されるすなわち手術を受ける眼の屈折力データを判断する機能を有するコントローラとを備える。コントローラによって、球状、円筒状、および円筒軸状の屈折力のうちの少なくとも1つとして屈折力データが決定され、ユーザに表示するためにこれらのデータが出力される。コントローラによって、入射瞳孔、観察系の調整および眼科手術用顕微鏡システムの照射系の調整のうちの少なくとも1つの位置に関する情報が評価される。眼科外科手術用顕微鏡システムはさらに、照射角度等の少なくとも1つの調整パラメータを自動で変更するようコントローラによって駆動されるアクチュエータを備えることが好ましい。これについては、図7に示すように、ミラー41bとアクチュエータ83とで行うことが可能である。コントローラは、電子画像処理機能を備えることが好ましい。
眼の屈折力データを判断するには、以下に示すような様々な方法が適用可能である。
第1の方法によれば、コントローラによって、診察されるすなわち手術を受ける眼の瞳孔内の輝度分布を評価する。輝度分布の評価は、網膜検視法(sciascopy)法によって行う。輝度分布は、赤色反射とその他の波長帯、好ましくは赤外領域内の波長帯における分布とのうちの少なくとも1つの輝度の分布とすることができる。
第2の方法によれば、コントローラによって、照射の調整を自動的に変更する。例えば、眼の中の照射角度を変更する。照射系の入射瞳孔、または入射瞳孔の画像が眼底上に位置しない場合、カメラは、照射角度の変化に基づいて目の瞳孔内の光/影の動きを観察する。コントローラは、光/影の動きの速度および方向を評価し、そこから屈折力データを導き出す。
第3の方法によれば、入射瞳孔の画像が眼底上に位置するまで、アクチュエータを用いた適当な調整機能によって、照射系の入射瞳孔の位置を変化させるコントローラを採用する。この場合、網膜検視法からわかるように、照射角度の変化に応じて目の瞳孔の「ちらつき」が起こる。すなわち、瞳孔を通じて移動する光/影境界が認識できなくなり、瞳孔全体が均一に明るくまたは暗くなる。コントローラは、照射系においてなされコントローラによって開始されるこのような調整を追跡し、このような状態に到達する。コントローラは、この情報を用いて眼の屈折力データを決定する。
このような方法の全ての変形例として、スリット照明として照射を行い、光軸を横切る方向の少なくとも2つの異なる方向にスリット照射が向かうようにすることが好ましい。これによって、眼の屈折力データの方向依存性を評価することができる。
要約すれば、対物レンズを備えた眼科外科手術用顕微鏡システムが提案され、これによって、眼科外科手術治療の際、特に白内障手術の際に、いわゆる赤色反射照射を発生する反帰光線システムが提供される。
本発明についてその具体的な実施例を参照して説明してきたが、いろいろな代替例、変形例等が当業者にとっては自明であろうことが明らかである。したがって、本明細書において述べた実施例は、例示的なものであり、本発明を限定するものではない。請求項に記載の本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができる。

Claims (19)

  1. 眼科外科手術用顕微鏡システムであって、
    対象面を画像化する対物レンズと、
    前記対象面の対物レンズ側から前記対象面に向かう反帰光線光ビームを発生する反帰光線システムと
    前記対象面から発せられる光を検出する検出器と、
    コントローラとを備え、
    前記反帰光線システムは、前記反帰光線光ビームの集束および発散の少なくとも1つを変更することができるように構成されたコリメータを備え
    前記コントローラは、前記検出された光のコントラストに応じて前記反帰光線光ビームの集束および発散の少なくとも1つを変更するよう前記コリメータを調整することを特徴とする眼科外科手術用顕微鏡システム。
  2. 前記反帰光線光ビームが600ナノメートルより長い波長を有する可視光のみを実質的に含む、請求項に記載の顕微鏡システム。
  3. 前記反帰光線光ビームが赤色光を含む、請求項1又は2に記載の顕微鏡システム。
  4. 前記反帰光線システムが前記反帰光線光ビームのビーム路内にフィルターを備え、前記フィルターは、赤色光以外の光に対して非透過となるよう構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  5. 前記反帰光線システムが前記反帰光線光ビームのビーム路内にミラーを備え、前記ミラーは、実質的に赤色光のみを反射するよう構成される、請求項1〜のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  6. 前記反帰光線システムが実質的に赤色光のみを出射する光源を備える、請求項1〜のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  7. 前記光源が発光ダイオードおよび半導体レーザの少なくとも1つを備える、請求項に記載の顕微鏡システム。
  8. 前記反帰光線光ビームの主光線が前記対物レンズの光軸に対して約0度から約4度の角度を以って前記対象面を横切る、請求項1〜のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  9. 前記反帰光線光ビームの主光線が前記対物レンズの光軸に対して約1度から約3度の角度を以って前記対象面を横切る、請求項1〜のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  10. 前記対象面の前記対物レンズ側から前記対象面に向かう標準照射ビームを発生する標準照射システムをさらに備え、前記標準照射ビームの主光線は、前記対物レンズの光軸に対して4度より大きい角度を以って前記対象面を横切る、請求項1〜のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  11. 前記標準照射ビームの前記主光線は、前記対物レンズの前記光軸に対して6度より大きい角度を以って前記対象面を横切る、請求項10に記載の顕微鏡システム。
  12. 前記反帰光線システムが光源と複数の切換え可能な光弁素子とを備え、前記複数の光弁素子は、複数の反帰光線光ビームを選択的に発生する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  13. 前記反帰光線システムが光源と複数の切換え可能なミラー素子とを備え、前記複数のミラー素子は、複数の反帰光線光ビームを選択的に発生する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  14. 前記反帰光線光ビームの断面が前記対物レンズと前記対象面との間に配置される面において移動可能である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  15. 前記反帰光線システムが、前記対象面に向かって前記反帰光線光ビームを反射する移動可能なミラーと、前記対物レンズの光軸からの前記ミラーの距離を変更するアクチュエータとを備える、請求項1〜14のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  16. 前記反帰光線システムが、前記反帰光線光ビームを発生する移動可能な光源と、前記対物レンズの光軸からの前記光源の距離を変更するアクチュエータとを備える、請求項1〜15のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  17. 手術中の眼の瞳孔の外側の部位を照射する標準照射ビームを発生する標準照射システムをさらに備え、前記標準照射システムが、前記瞳孔に前記標準照射ビームの光が実質的に入らないように前記標準照射ビームを形成するよう構成された第1光形成素子を備える、請求項1〜16のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
  18. 前記反帰光線システムが、前記反帰光線光ビームの実質的に全ての光が前記瞳孔に入るように前記反帰光線光ビームを形成するよう構成された第2光形成素子を備える、請求項17に記載の顕微鏡システム。
  19. 赤色反射画像を検出するカメラと、
    前記検出した赤色反射画像をユーザに対して表示するディスプレイとをさらに備え、
    前記対物レンズと前記カメラとの間のビーム路内にフィルターが配置され、前記フィルターは、前記反帰光線光ビーム内に含まれる波長のみを実質的に透過させる、請求項1〜18のいずれか1項に記載の顕微鏡システム。
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