本発明の幾つかの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施形態は、対物レンズを介して被検眼に光を照射する照射系と、対物レンズを介して被検眼に固視光束を投射する固視系とを含む、任意の眼科装置であってよい。このような眼科装置として、光干渉断層計(OCT)、眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡(SLO)、レーザ治療装置(光凝固装置)、視野計などがある。OCTや眼底カメラやSLOには、照射系により照射された光の被検眼からの戻り光を検出する光学系が更に設けられる。以下、スウェプトソースOCTと眼底カメラとを組み合わせた眼科装置について説明するが、実施形態はこれに限定されない。
〈構成〉
図1に示すように、眼科装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100及び演算制御ユニット200を含む。眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系が設けられている。OCTユニット100には、OCTを実行するための光学系や機構が設けられている。演算制御ユニット200はプロセッサを含む。被検者の顔を支持するための顎受けや額当てが、眼底カメラユニット2に対向する位置に設けられている。更に、眼科装置1は一対の前眼部カメラ5A及び5Bを備える。
なお、本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(たとえば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
〈眼底カメラユニット2〉
眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efを撮影するための光学系が設けられている。眼底Efを撮影して得られる画像(眼底像、眼底写真等と呼ばれる)には、観察画像や撮影画像がある。観察画像は、例えば、近赤外光を用いた動画撮影により得られる。撮影画像は、例えば、可視フラッシュ光を用いて得られるカラー画像若しくはモノクロ画像、又は近赤外フラッシュ光を用いて得られるモノクロ画像である。眼底カメラユニット2は、更に、フルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能でもよい。
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の光路を通じて被検眼Eに導かれ、その戻り光は、同じ光路を通じてOCTユニット100に導かれる。
照明光学系10の観察光源11は、例えばハロゲンランプ又はLED(Light Emitting Diode)である。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。更に、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19及びリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて被検眼E(特に眼底Ef)を照明する。
被検眼Eからの観察照明光の戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。更に、この戻り光は、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、例えば所定のフレームレートで戻り光を検出する。なお、撮影光学系30のピントが眼底Efに合っている場合には眼底Efの観察画像が得られ、ピントが前眼部に合っている場合には前眼部の観察画像が得られる。
撮影光源15は、例えば、キセノンランプ又はLEDを含む可視光源である。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。被検眼Eからの撮影照明光の戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。
LCD39は、被検眼Eを固視させるための固視標を表示する。LCD39から出力された光束(固視光束)は、その一部がハーフミラー33Aにて反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した固視光束は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。LCD39の画面における固視標の表示位置を変更することにより被検眼Eの固視位置を変更できる。
固視光束を出力する光束出力部はLCD39には限定されない。光束出力部は、固視位置を変更可能な構成であればよく、例えば、複数のLEDが2次元的に配列されたマトリクスLEDや、光源と可変絞り(液晶絞り等)との組み合わせなどであってよい。
眼底カメラユニット2にはアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。
アライメント光学系50のLED51から出力されたアライメント光は、絞り52及び53並びにリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過する。孔開きミラー21の孔部を通過した光は、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eに投射される。
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46及び上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標像)に基づき、従来と同様のマニュアルアライメントやオートアライメントを行うことができる。
撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、フォーカス光学系60が、照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。反射棒67は、照明光路に対して挿脱可能である。
フォーカス調整を行う際には、反射棒67の反射面が照明光路に斜設される。LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット視標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。更に、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同じ経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標像)に基づき、従来と同様のマニュアルアライメントやオートアライメントを行うことができる。
撮影光学系30は、視度補正レンズ70及び71を含む。視度補正レンズ70及び71は、孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の撮影光路に選択的に挿入可能である。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラス(+)レンズであり、例えば+20D(ディオプター)の凸レンズである。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナス(−)レンズであり、例えば−20Dの凹レンズである。視度補正レンズ70及び71は、例えばターレット板に装着されている。ターレット板には、視度補正レンズ70及び71のいずれも適用しない場合のための孔部が形成されている。
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路とOCT用の光路とを合成する。ダイクロイックミラー46は、OCTに用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。OCT用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44、及びリレーレンズ45が設けられている。
光路長変更部41は、図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、OCT用の光路の光路長を変更する。この光路長の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。光路長変更部41は、例えばコーナーキューブと、これを移動する機構とを含む。
光スキャナ42は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ42は、OCT用の光路を通過する測定光LSの進行方向を変更する。それにより、被検眼Eが測定光LSでスキャンされる。光スキャナ42は、xy平面の任意方向に測定光LSを偏向可能であり、例えば、測定光LSをx方向に偏向するガルバノミラーと、y方向に偏向するガルバノミラーとを含む。
〈OCTユニット100〉
図2に例示するように、OCTユニット100には、被検眼EのOCTを実行するための光学系が設けられている。この光学系の構成は、従来のスウェプトソースOCTと同様である。すなわち、この光学系は、波長掃引型(波長走査型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する干渉光学系を含む。干渉光学系により得られる検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
光源ユニット101は、一般的なスウェプトソースOCTと同様に、出射光の波長を高速で変化させる波長掃引型(波長走査型)光源を含む。波長掃引型光源は、例えば、近赤外レーザ光源である。
光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれてその偏光状態が調整される。更に、光L0は、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、コーナーキューブ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長とを合わせるよう作用する。分散補償部材113は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるよう作用する。
コーナーキューブ114は、入射した参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ114に対する参照光LRの入射方向と出射方向は互いに平行である。コーナーキューブ114は、参照光LRの入射方向に移動可能であり、それにより参照光LRの光路長が変更される。
図1及び図2に示す構成では、測定光LSの光路(測定光路、測定アーム)の長さを変更するための光路長変更部41と、参照光LRの光路(参照光路、参照アーム)の長さを変更するためのコーナーキューブ114の双方が設けられているが、光路長変更部41とコーナーキューブ114のいずれか一方のみが設けられもよい。また、これら以外の光学部材を用いて、測定光路長と参照光路長との差を変更することも可能である。
コーナーキューブ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119によりアッテネータ120に導かれて光量が調整され、光ファイバ121によりファイバカプラ122に導かれる。
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、ミラー44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに入射する。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ122は、所定の分岐比(例えば1:1)で干渉光を分岐することにより、一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。バランスドフォトダイオードは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを有し、これらによる検出結果の差分を出力する。検出器125は、その検出結果(検出信号)をDAQ(Data Acquisition System)130に送る。
DAQ130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長掃引型光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分岐することにより得られた2つの分岐光の一方を光学的に遅延させた後、これらの合成光を検出した結果に基づいてクロックKCを生成する。DAQ130は、検出器125から入力される検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。DAQ130は、検出器125からの検出信号のサンプリング結果を演算制御ユニット200に送る。
〈演算制御ユニット200〉
演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3及びOCTユニット100の各部を制御する。また、演算制御ユニット200は、各種の演算処理を実行する。例えば、演算制御ユニット200は、一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器125により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等の信号処理を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、演算制御ユニット200は、各Aラインの反射強度プロファイルを画像化することにより画像データを形成する。そのための演算処理は、従来のスウェプトソースOCTと同様である。
演算制御ユニット200は、例えば、プロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含む。ハードディスクドライブ等の記憶装置には各種コンピュータプログラムが格納されている。演算制御ユニット200は、操作デバイス、入力デバイス、表示デバイスなどを含んでよい。
〈前眼部カメラ5A及び5B〉
前眼部カメラ5A及び5Bは、特開2013−248376号公報に開示された発明と同様に、眼科装置1の光学系と被検眼Eとの間の相対位置を求めるために用いられる。前眼部カメラ5A及び5Bは、光学系が格納された筐体(眼底カメラユニット2等)の被検眼E側の面に設けられている。詳細は後述するが、眼科装置1は、前眼部カメラ5A及び5Bにより異なる方向から実質的に同時に取得された2つの前眼部像を解析することにより光学系と被検眼Eの間の相対な3次元位置である。前眼部カメラ5A及び5Bにより異なる方向から実質的に同時に取得された2つの前眼部像の解析は、特開2013−248376号公報に開示された解析と同様であってよい。また、前眼部カメラの個数は2以上の任意の個数であってよい。
本例では、2以上の前眼部カメラを利用して光学系と被検眼Eとの相対位置(つまり光学系の位置)を求めているが、光学系の位置を求めるための手法はこれに限定されない。例えば、後述の移動機構150又は眼底カメラユニット2等に設けられたエンコーダを用いて光学系の位置を特定する構成や、主制御部211による移動機構150(アクチュエータ151)の制御履歴を参照して光学系の位置を特定する構成を適用することが可能である。
〈制御系〉
眼科装置1の制御系の構成例を図3に示す。
〈制御部210〉
制御部210は、眼科装置1の各部を制御する。制御部210はプロセッサを含む。制御部210には、主制御部211と記憶部212とが設けられている。
〈主制御部211〉
主制御部211は各種の制御を行う。例えば、主制御部211は、撮影合焦レンズ31、CCD(イメージセンサ)35及び38、LCD39、光路長変更部41、光スキャナ42、OCT合焦レンズ43、フォーカス光学系60、反射棒67などを制御する。また、主制御部211は、光源ユニット101、参照駆動部114A、検出器125、DAQ130などを制御する。参照駆動部114Aは、参照光路に設けられたコーナーキューブ114を移動させる。それにより、参照光路の長さが変更される。
眼科装置1は移動機構150を備える。移動機構150は、眼科装置1の光学系の少なくとも一部を移動する。眼科装置1の光学系のうち移動機構150によって移動される部分(光学系の一部又は全部)を可動部と呼ぶことがある。移動機構150は1以上のアクチュエータ151を含む。アクチュエータ151は、例えば、主制御部211により制御されるパルスモータ等を含み、可動部を移動するための駆動力を発生する。パルスモータ151により生成された駆動力は、図示しない機構によって伝達されて可動部を移動する。それにより、可動部が3次元的に移動される。移動機構150は、例えば、第1アクチュエータとそれにより発生された第1駆動力をx方向の移動に変換する機構とを備えたx移動機構、第2アクチュエータとそれにより発生された第2駆動力をy方向の移動に変換する機構とを備えたy移動機構、及び、第3アクチュエータとそれにより発生された第3駆動力をz方向の移動に変換する機構とを備えたz移動機構を含む。
図3に示す主制御部211において、固視制御部2111は固視に関する制御(LCD39の制御等)を行う要素であり、移動制御部2112は光学系の移動に関する制御(移動機構150の制御等)を行う要素であり、表示制御部2113は情報の表示に関する制御(表示部241の制御等)を行う要素である。
〈記憶部212〉
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、例えば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
記憶部212(又は、後述の条件設定部232)は、本実施形態における制御条件を設定するための情報を予め記憶するよう構成されてよい。制御条件には、固視に関する条件(固視条件)と、光学系の移動に関する条件(移動条件)とが含まれる。制御条件は、情報の表示に関する条件(表示条件)を更に含んでもよい。制御条件は、検査の対象となる眼の部位ごとに設定される。
制御条件の説明の前提として、LCD39の構成を説明する。LCD39の画面の構成の例を図4に示す。本例のLCD39はドットマトリクスLCDであり、その画面39aには51画素(x方向)×51画素(y方向)が配列されている。x方向(横方向)の配列には、左方から右方に向かって順に座標0〜50が付与され、y方向(縦方向)の配列には、下方から上方に向かって順に座標0〜50が付与されている。
画面39aの幾つかの画素に付されている文字は、眼の部位(OCTスキャンエリア)に対応する固視標(輝点)の位置を示している。被検眼が右眼の場合、(x,y)=(25,25)の画素「M」は黄斑に対応する固視標を示し、(x,y)=(20,26)の画素「C」は眼底中心に対応する固視標を示し、(x,y)=(17,26)の画素「W」はワイドスキャンに対応する固視標を示し、(x,y)=(10,26)の画素「D」は視神経乳頭に対応する固視標を示す。また、被検眼が左眼の場合、(x,y)=(25,25)の画素「M」は黄斑に対応する固視標を示し、(x,y)=(30,26)の画素「C」は眼底中心に対応する固視標を示し、(x,y)=(33,26)の画素「W」はワイドスキャンに対応する固視標を示し、(x,y)=(40,26)の画素「D」は視神経乳頭に対応する固視標を示す。また、円形状に配列された8個の画素「2」〜「9」は、眼底周辺部の8個の位置に対応する固視標を示す。なお、対物レンズ22の光軸(対物光軸)は、画素「M」の左下の角に配置されている。
更に、制御条件について説明するために、図5A及び図5Bを参照しつつ従来の眼科装置の動作を説明する。図5Aは、アライメントのために従来の眼科装置により表示される画面(アライメント画面)300を示す。アライメント画面300には、眼底カメラ等により得られる前眼部の動画像(前眼部観察画像)310が表示される。前眼部観察画像310には、アライメントにおいて光学系を移動するための目標となる目標画像320が重ねて表示される。目標画像320は正方形の画像であり、その中心は前眼部観察画像310の中心に一致している。つまり、目標画像320の中心は、前眼部観察画像310を取得するための光学系の光軸(対物光軸)に一致している。なお、説明は省略するが、アライメント画面300には、他の画像(例えば、前眼部カメラ5A及び/又は5Bにより取得された前眼部像)や、ソフトウェアキーが提示される。
図5Bは、従来のアライメント動作を仮に本実施形態の眼科装置1に実行させた場合の態様を模式的に示す。図5Bにおける符号4は、光学系(可動部)が格納された筐体を表す。筐体4には、例えば、眼底カメラユニット2とOCTユニット100が格納されている。図示は省略するが、筐体4の被検眼E側の面(前面)には前眼部カメラ5A及び5Bが設けられている。また、符号22aは対物レンズ22の光軸(対物光軸)を示し、符号Eaは非検眼Eの軸(視軸)を示し、符号FはLCD39に表示された固視標を示す。図5Bに示す例では、固視標Fは対物光軸22aから離れた位置(例えば、視神経乳頭に対応する画素「D」)に表示されている。
筐体4が後退された状態(被検眼Eに対する距離が長い状態)において、前眼部観察画像310に描出された瞳孔が目標画像320の内部に配置されるように、筐体4のxy方向の位置が調整される。このような位置調整がなされた状態が、図5Bにおいて右側に示された筐体4である。この状態において、対物光軸22aは視軸Eaにほぼ一致されている。この状態では、被検眼Eは固視標Fを認識することができない。従来のアライメントでは、この状態から対物光軸22aに沿って筐体4を前進させていく。このときの筐体4の移動方向を矢印T0で示す。筐体4を被検眼Eに近づけていくと、或る段階で固視標Fが被検眼Eの視野の端に突然現れ、図5Bにおいて左側に示された筐体4の位置まで筐体4が前進される。この左側に示す筐体4の位置は、光学系を用いた検査を行うために被検眼Eが配置されるべき既定の検査位置(アライメントが合致した位置)であり、そのときの被検眼Eと光学系(対物レンズ22の前面等)との間の距離は所定の作動距離(ワーキングディスタンス)となる。このような従来のアライメントでは、被検者は、固視標Fを途中からしか認識できないため、アライメントを適正に実施できないおそれがあった。
このような従来のアライメントとは異なり、本実施形態では図6A及び図6Bに示す態様でアライメントが実施される。本実施形態では、従来と同様のアライメント画面300に従来と同様の前眼部観察画像310が表示される一方、従来と異なる位置に目標画像321が表示される。具体的には、本実施形態では、LCD39による固視標の表示位置(固視位置)に応じた位置に目標画像321が表示される。例えば、固視位置が黄斑である場合には、LCD39の画素「M」に固視標が表示され、かつ、目標画像320の中心と前眼部観察画像310の中心とが一致するように目標画像321が表示されるが、固視位置が視神経乳頭の場合には、LCD39の画素「D」に固視標が表示され、かつ、画素「M」に対する画素「D」の変位に応じて前眼部観察画像310の中心から変位した位置に目標画像321が表示される。目標画像321の変位(変位量及び変位方向)は、固視標の表示位置(固視位置)に応じて予め設定される。
図6Bは、本実施形態のアライメント動作の態様を模式的に示す。図6Bに示す例では、固視標Fは対物光軸22aから離れた位置(例えば、視神経乳頭に対応する画素「D」)に表示されている。
本実施形態のアライメントでは、筐体4が後退された状態において、対物光軸22aに対して偏心して表示された目標画像321の内部に前眼部観察画像310に描出された瞳孔が配置されるように、筐体4のxy方向の位置が調整される。このような位置調整がなされた状態が、図6Bにおいて右側に示された筐体4である。このとき、筐体4は、図5Bに示す従来の状態からxy方向にΔだけ変位した位置に配置される。この筐体4の変位Δは、被検眼Eの視野内に固視標が提示されるように、固視標の表示位置(固視位置)に応じて予め設定される(詳細は後述する)。
本実施形態のアライメントでは、このように被検者が固視標Fを認識している状態から筐体4の前進が開始される。筐体4の移動方向は、対物光軸22aに斜行した方向である。このときの筐体4の移動方向を矢印T1で示す。矢印T1が示す方向は、例えば、筐体4の前進開始位置と前進終了位置とを結ぶ直線が示す方向である。前進終了位置は、例えば、検査位置(アライメントが合致した位置)である。このような直線経路に沿って筐体4を被検眼Eに近づけていくことで、被検者は最初から最後まで固視標を認識することができ、アライメントを適正に実施することが可能となる。
前進開始位置、つまり筐体4の変位Δについて図7を参照しつつ説明する。ここではx方向の変位Δxについて説明するが、y方向の変位Δyについても同様にして算出することができる。
PE=(xE,zE)は、被検眼Eの位置を示す。また、P0=(x0,z0)は、筐体4の現在位置を示す。ここで、z=z0は、移動機構150によるz方向の可動範囲において、被検眼Eからの距離が最大となる位置(最後退位置)であるとする。x=x0は任意である。また、P1=(x1,z1)は前進開始位置を示す。本例では、この座標を求める。P2は、被検眼Eの位置PEから最後退位置を示す直線z=z0に下ろした垂線の足(つまり、直線=z0と当該垂線との交点)を示す。P2の座標は(xE,z0)となる。
固視位置が黄斑以外である場合、固視標Fは対物光軸22aから変位した位置に表示される。対物光軸22aが交差するLCD39上の位置と、固視標Fの表示位置とがなす角度をθとする。角度θは、被検眼Eの位置PE=(xE,zE)を中心として定義される。そうすると、前進開始位置P1=(x1,z1)は次式により得られる:x1=(zE−z0)tanθ+x1、z1=z0。したがって、Δx=ベクトル(P2→P1)=x1−xEが得られる。
以上のような演算を行うことにより、図8に示すような制御条件情報212aが事前に作成される。制御条件情報212aは、眼の部位(固視位置、スキャン対象部位)に対し、固視条件と移動条件と表示条件とが対応付けられている。固視条件としては、LCD39に表示される固視標の位置(座標)が設定される。移動条件としては、前進開始位置(その座標)が設定される。表示条件としては、目標画像(アライメント枠)の表示位置が設定される。なお、目標画像の表示位置は、例えば目標画像の中心の位置として定義される。また、表示条件は、目標画像のサイズや形状を含んでもよい。
図7に示す例では、眼の部位「黄斑」に対し、固視条件として「M=(25,25)」が設定され、移動条件として「(xM,zM)=(0,0)」が設定され、表示条件として「HM=(0,0)(前眼部観察画像のフレーム中心からの変位)」が設定されている。また、眼(右眼)の部位「視神経乳頭」に対し、固視条件として「D=(10,26)」が設定され、移動条件として「(xD,zD)=(ΔxD,ΔzD)」が設定され、表示条件として「HM」が設定されている。
制御条件情報212aは、被検眼Eが右眼である場合に適用される制御条件情報と、被検眼Eが左眼である場合に適用される制御条件情報とを含む。右眼用の制御条件情報と左眼用の制御条件情報とは、例えば、x方向について対象となるように作成される。また、瞳孔サイズや疾患種別などに応じて制御条件情報を設けることができる。例えば、瞳孔サイズに関し、互いに変位量が異なるように作成された通常瞳孔眼用の制御条件情報と小瞳孔眼用の制御条件情報とを設けることが可能である。
本例では、アライメント動作によって筐体4(光学系)が移動される先(前進終了位置)は、被検眼Eに対して光学系のアライメントが合った位置である既定の検査位置とされ、かつ、前進開始位置と前進終了位置とを結ぶ直線経路に沿って筐体4が移動される。よって、図7の制御条件情報212aのように前進開始位置のみを移動条件として設定することと、前進開始位置と前進終了位置の双方を移動条件として設定することと、前進開始位置と前進終了位置とを結ぶ直線経路を移動条件として設定することとは、互いに同値である。
〈画像形成部220〉
画像形成部220は、DAQ130から入力された検出信号のサンプリング結果に基づいて、眼底Efの断面像の画像データを形成する。この処理には、従来のスウェプトソースOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などの信号処理が含まれる。画像形成部220により形成される画像データは、スキャンラインに沿って配列された複数のAライン(z方向のライン)における反射強度プロファイルを画像化することにより形成された一群の画像データ(一群のAスキャン像データ)を含むデータセットである。
画像形成部220は、例えば、プロセッサ及び専用回路基板の少なくともいずれかを含む。なお、本明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。また、被検眼Eの部位とそれを表す画像とを同一視することがある。
〈データ処理部230〉
データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して画像処理や解析処理を施す。例えば、データ処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の補正処理を実行する。また、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して画像処理や解析処理を施す。データ処理部230は、例えば、プロセッサ及び専用回路基板の少なくともいずれかを含む。データ処理部230は、位置情報生成部231と、条件設定部232とを備える。
〈位置情報生成部231〉
位置情報生成部231は、光学系(可動部)の位置を表す位置情報を生成する。位置情報生成部231は、前眼部カメラ5A及び5Bにより異なる方向から実質的に同時に取得された被検眼Eの2つの前眼部像を解析することにより、光学系と被検眼Eとの間の相対位置(特にz方向における相対位置)を求める。このとき、特開2013−248376号公報に開示された演算処理が実行される。なお、移動機構150又は眼底カメラユニット2等にエンコーダが設けられている場合、位置情報生成部231は、このエンコーダから出力された信号に基づき可動部の位置を求めることができる。また、移動機構150の制御を主制御部211が実行する場合、位置情報生成部231は、主制御部211による移動機構150の制御履歴に基づき可動部の位置を求めることができる。
〈条件設定部232〉
条件設定部232は、ユーザ又は眼科装置1により指定された部位に基づいて制御条件を設定する。本実施形態では、固視条件、移動条件及び表示条件が設定される。また、本実施形態では、前述したように、移動経路は直線経路であり、この直線経路は、前進開始位置、前進開始位置と前進終了位置との組み合わせ、又は前進開始位置と前進終了位置とを結ぶ直線の位置として定義される。
なお、移動経路は直線経路には限定されず、例えば、折れ線状経路や曲線経路であってもよい。折れ線状経路は、例えば、各端点の位置と各頂点の位置とによって定義される。曲線経路は、例えば、経路のパターンや、各端点と曲線のパラメータ(曲率、曲率半径、曲線を表す数式など)によって定義される。
条件設定部232は、指定された部位に対応する制御条件を制御条件情報212aから選択する。例えば、視神経乳頭が指定された場合、条件設定部232は、固視条件「D」と、移動条件「(xD,zD)」と、表示条件「HM」とを選択する。選択された固視条件は、固視制御部2111に送られてLCD39の制御に用いられる。また、選択された移動条件は、移動制御部2112に送られた移動機構150の制御に用いられる。また、選択された表示条件は、表示制御部2113に送られて表示部241の制御に用いられる。
眼の部位を指定するための構成及び動作について説明する。第1の例として、固視位置を設定するためのソフトウェアキーを表示制御部2113が表示部241に表示させ、ユーザが操作部242を用いて所望の固視位置を設定することができる。第2の例として、外部から入力された被検眼Eの過去の検査データ(電子カルテ情報等)を条件設定部232が解析して過去に適用された固視位置を特定し、これを今回の固視位置として指定することができる。第3の例として、眼底Efの観察画像又は撮影画像を条件設定部232が解析して注目部位(病変部等)を特定し、この注目部位を含むスキャンエリアに対応する固視位置を指定することができる。
条件設定部232は、被検眼Eが右眼であるか左眼であるかを判別する処理を実行することができる。この処理は、例えば、光学系が被検眼Eに対峙されているときの移動機構150の状態、つまり、光学系が被検眼Eに対峙されているときの筐体4の位置に基づき実行される。移動機構150の状態や筐体4の位置は、前眼部カメラ5A及び/又は5Bにより得られる前眼部像、エンコーダにより検出された位置、又は、移動機構150の制御履歴などに基づいて検出される。条件設定部232は、右眼/左眼の判別結果に応じた制御条件情報を選択して制御条件を取得する。
条件設定部232は、被検眼Eが通常瞳孔眼であるか小瞳孔眼であるかを判別する処理を実行することができる。この処理は、例えば、眼底カメラユニット2により得られる前眼部像、又は、前眼部カメラ5A及び/若しくは5Bにより得られる前眼部像を解析して被検眼Eの瞳孔サイズ(直径、半径、周囲長、面積等)を測定し、この測定値を既定閾値と比較することによって行われる。或いは、過去の検査により取得された被検眼Eの瞳孔サイズ(又は小瞳孔眼であるか否か)を電子カルテ情報等から取得することもできる。条件設定部232は、通常瞳孔眼/小瞳孔眼の判別結果に応じた制御条件情報を選択して制御条件を取得する。
〈ユーザインターフェイス240〉
ユーザインターフェイス240は表示部241と操作部242とを含む。表示部241は表示装置3を含む。操作部242は各種の操作デバイスや入力デバイスを含む。ユーザインターフェイス240は、例えばタッチパネルのような表示機能と操作機能とが一体となったデバイスを含んでいてもよい。ユーザインターフェイス240の少なくとも一部を含まない実施形態を構築することも可能である。例えば、表示デバイスは、眼科装置に接続された外部装置であってよい。
〈動作〉
眼科装置1の動作について説明する。以下、オートアライメント(第1の動作態様)と、マニュアルアライメント(第2の動作態様)を説明する。
〈第1の動作態様〉
オートアライメントの動作の一例を図9に示す。
(S1:撮影部位を指定する)
まず、被検者の患者IDや左眼/右眼の識別情報とともに、OCTや眼底撮影の対象となる被検眼Eの部位が指定される。撮影部位の指定は、ユーザ(検者)又は制御部210により行われる。
(S2:指定部位に応じた制御条件を選択する)
条件設定部232は、ステップS1で指定された撮影部位に対応する固視条件、移動条件及び表示条件を制御条件情報212aから選択する。
(S3:表示条件に基づき目標画像を表示する)
この段階までに、被検眼Eの前眼部の観察画像の取得が開始される。表示制御部2113は、アライメント画面300を表示部241に表示させ、アライメント画面300に前眼部観察画像310を表示させ、かつ、ステップS2で選択された表示条件に応じた前眼部観察画像310上の位置に目標画像321を表示させる。
(S4:固視条件に基づき固視標を表示する)
固視制御部2111は、ステップS2で選択された固視条件に応じたLCD39(画面39a)の位置に固視標を表示させる。前眼部撮影用のレンズが光路に配置されている場合、眼底Efに投影される固視標の像がボケるため、輝点からなる固視標の代わりに大きな固視標を表示させることができる。この大きな固視標は例えばX形状であり、その中心(2本の線分の交点)を固視条件に応じた位置(固視条件が表す座標)に配置させる。
(S5:移動条件に基づき光学系を前進開始位置に移動させる)
移動制御部2112は、ステップS2で選択された移動条件が示す前進開始位置に光学系(筐体4)を移動させるように移動機構150を制御する。
(S6:瞳孔を目標画像に合わせる)
ユーザ又は眼科装置1は、必要に応じ、前眼部観察画像310を参照することにより、被検眼Eの瞳孔が枠状の目標画像321内に配置されるように光学系(筐体4)のxy方向の位置を調整する。調整後の光学系の位置が前進開始位置となる。また、この新たな前進開始位置に基づいて、移動条件が示す経路を調整することができる。このとき、前進終了位置は固定される。
なお、前眼部観察画像310中の瞳孔領域は、例えば、前眼部観察画像310を解析することにより特定される。或いは、前眼部観察画像310に描出された瞳孔中心位置をユーザが操作部242を用いて指定するようにしてもよい。この指定操作は、例えば、タッチパネルディスプレイに表示された前眼部観察画像310に対するタッチ操作である。
(S7:光学系の前進を開始する)
光学系が前進開始位置に配置されると、移動制御部2112は、移動機構150を制御して光学系(筐体4)の前進を開始する。それにより、光学系は、移動条件が示す経路に沿って、前進開始位置から前進終了位置に向けて移動される。撮影部位が黄斑の場合、光学系は+z方向に移動される。それ以外の撮影部位(例えば視神経乳頭)が指定された場合、光学系はz軸に対して斜め方向に移動される。
前眼部カメラ5A及び5Bは所定の時間間隔(撮影レート)で動画撮影を行い、位置情報生成部231は被検眼Eと光学系との間の相対位置(特にz方向における相対位置)をリアルタイムで逐次に演算する。移動制御部2112は、取得された相対位置と移動条件が示す経路とを比較することで、移動条件が示す経路に沿って光学系が移動されているか判定することができる。主制御部211は、判定結果を報知することができる。また、光学系の実際の位置が経路から外れている場合、移動制御部2112は、光学系を経路に戻すように移動機構150を制御することができる。
(S8:前進終了位置に到達したか?)
光学系が前進終了位置(検査位置)に到達したと判定されるまで、光学系の移動が実行される。光学系が前進終了位置に到達したか否かは、例えば、位置情報生成部231によりリアルタイムで得られる位置情報に基づき判断される。或いは、移動条件が示す経路に沿って光学系を前進開始位置から前進終了位置まで移動するための移動機構150の制御が完了したことを受けて、前進終了位置に到達したと判定することができる。
光学系が所定位置まで前進されたことに対応し、主制御部211は、光学系の焦点を前眼部観察用焦点から眼底観察用焦点に切り替えるための制御を行う。この制御は、例えば、前述した前眼部撮影用のレンズを光路から退避させる処理、又は、眼底観察用のレンズを光路に挿入する処理を含む。
光学系が前進終了位置に到達する前に、表示される観察画像は前眼部観察画像から眼底観察画像に切り替わる。前眼部観察画像が表示されているとき、移動制御部2112は、被検眼Eの瞳孔が常に目標画像231内に配置されるように、移動機構150の動作を微調整することができる。また、眼底観察画像に切り替わったときにフレームの所定位置(例えば目標画像231内の位置)に描出された眼底Efの部分が当該位置に常に配置されるように、移動機構150の動作を微調整することができる。
(S9:撮影条件の調整を行う)
ユーザ又は眼科装置1は、例えば、アライメント指標に基づいて、被検眼Eに対する光学系のアライメントの微調整を行うことができる。また、前眼部カメラ5A及び5Bにより得られる一対の前眼部観察画像に基づいてアライメントの微調整を行うことも可能である。更に、スキャン位置の微調整、測定アーム長や参照アーム長の微調整、固視標の提示位置の微調整、フォーカス調整、小瞳孔絞りの挿入など、必要な撮影条件の調整が行われる。
(S10:眼底を撮影する)
眼科装置1は、眼底EfのOCTや撮影を実行する。取得されたデータは記憶部212や外部ストレージに保存される。また、眼科装置1又は他の装置は、取得されたデータに基づく画像化処理や解析処理を実行する。以上がオートアライメントの一例である。
〈第2の動作態様〉
マニュアルアライメントについて説明する。マニュアルアライメントが行われるとき、眼科装置1は、移動条件が示す経路に沿って光学系(筐体4)を手動で移動させるための支援を提供する。例えば、移動条件が示す経路から外れないように移動機構150やユーザインターフェイス240が制御される。このような制御を操作支援制御と呼ぶ。
マニュアルアライメントでは、操作部242を用いてユーザが行った操作に応じて移動機構150が動作する。移動機構150を利用した操作支援制御の例を説明する。制御条件情報には、光学系の移動経路に基づき設定された許容範囲が、眼の部位ごとに記録されている。許容範囲は、例えば、前進開始位置と前進終了位置とを結ぶ直線を含むストリップ状(帯状)の領域として設定される。また、光学系(筐体4)の現在位置と前進開始位置とを結ぶ直線を含むストリップ状の領域を許容範囲として設定することができる。
許容範囲の例を図10に示す。光学系(筐体4)現在位置をQ0で示し、前進開始位置をQ1で示し、前進終了位置をQ2で示す。本例では、光学系は、第1経路A1に沿って現在位置Q0から前進開始位置Q1に移動され、続いて、第2経路A2に沿って前進開始位置Q1から前進終了位置をQ2に移動される。このようなケースにおいて、第1経路A1に沿って光学系が移動されるときの第1許容範囲w1と、第2経路A2に沿って光学系が移動されるときの第2許容範囲w2とが設定される。
第1許容範囲w1の幅d1と、第2許容範囲w2の幅d2は、例えば予め設定される。許容範囲の幅は、一定値でもよいし、所定の属性に応じた設定値でもよい。後者の例として、ユーザごとに事前に設定された値がある。また、許容範囲をその都度設定することも可能である。例えば、経路の長さに応じて幅を設定することができる。
主制御部211(移動制御部2112)は、光学系が許容範囲内を移動するように操作支援制御を行うことができる。例えば、光学系が許容範囲から外れるような操作を無効にする(受け付けない)よう構成することができる。また、光学系が許容範囲から外れるような操作を行えないよう操作部242を制御することができる。また、光学系が許容範囲から外れたとき、移動制御部2112は、光学系を許容範囲内に戻すように移動機構150を制御することができる。なお、操作支援制御はこれらに限定されず、既定の経路に沿って光学系が移動されるように操作を支援することを目的とするものであれば、その態様は任意である。
〈作用・効果〉
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
実施形態の眼科装置は、光学系と、移動機構と、指定部と、条件設定部とを備える。
光学系は、対物レンズと、照射系と、固視系とを含む。照射系は、対物レンズを介して被検眼に光を照射する。固視系は、固視光束を出力する光束出力部を含み、この光束出力部から出力された固視光束を対物レンズを介して被検眼に投射する。
上記実施形態では、対物レンズ22が対物レンズに相当する。また、被検眼Eに照明光を照射する照明光学系10や、OCT用の測定光LSを被検眼Eに照射するOCT光学系(OCTユニット100、測定アーム等)が照射系に相当する。また、LCD39が光束出力部に相当し、LCD39から出力された光束を被検眼Eに導く光路を形成する光学素子群が固視系に相当する。
移動機構は、対物レンズを含む光学系の少なくとも一部である可動部を、対物レンズの光軸に沿う第1方向(z方向)と、第1方向に直交する第2方向(x方向、y方向)とに移動する。上記実施形態において、光学系のうち筐体4に格納された部分が可動部に相当する。また、移動機構150が移動機構に相当する。
指定部は、照射系により光が照射される被検眼の部位を指定するために用いられる。上記実施形態において、ユーザインターフェイス240は、被検眼の部位を手動で指定するための指定部に相当する。また、データ処理部230(特に条件設定部232)は、被検眼の部位を自動で指定するための指定部に相当する。
条件設定部は、指定部により指定された被検眼の部位に基づいて、固視系の光束出力部による固視光束の出力位置と、移動機構による光学系の可動部の移動経路とを設定する。上記実施形態では、条件設定部232(及び制御条件情報212a)が条件設定部に相当する。
このような実施形態によれば、被検眼の部位に応じた位置に固視標を提示することができるとともに、被検眼の部位に応じた経路に沿って光学系を移動させることができる。したがって、光学系の移動の最初から最後まで被検者に固視標を認識させることができ、固視標の視認性の向上を図ることが可能である。
実施形態の眼科装置は、条件設定部により設定された情報に基づいて制御を行う制御部を備えてよい。制御部は、条件設定部により設定された出力位置に基づいて光束出力部を制御する。更に、制御部は、条件設定部により設定された移動経路に基づいて移動機構を制御する。上記実施形態では、主制御部211(固視制御部2111、移動制御部2112)が制御部に相当する。
このような構成によれば、被検眼の部位に応じた固視標の提示を自動で行うことができ、かつ、被検眼の部位に応じた経路に沿った光学系の移動を自動で行うことができる。
実施形態において、条件設定部は、光学系の可動部の移動経路として、対物レンズの光軸(対物光軸22a)から第2方向(x方向、y方向)に変位した初期位置(前進開始位置)を設定することができる。更に、制御部は、光学系の可動部を初期位置に移動するように移動機構の制御を行うことができる。
このような構成によれば、光学系の移動経路の初期位置を自動で設定し、更に、この初期位置に光学系を自動で配置させることができる。
実施形態において、条件設定部は、光学系の可動部の移動経路として、初期位置と検査位置とを結ぶ直線経路を設定することができる。検査位置は、被検眼から第1方向(z方向)に所定の作動距離(ワーキングディスタンス)だけ離れた位置であり、上記実施形態の前進終了位置はその一例である。
このような構成によれば、光学系が移動される直線経路を自動で設定することが可能である。
実施形態において、制御部は、光学系の可動部を初期位置に移動させた後、設定された直線経路に沿って可動部を移動するように移動機構の制御を行うよう構成されてよい。
このような構成によれば、自動で設定された直線経路に沿って光学系を自動で移動させることができる。
実施形態の眼科装置は、操作部と、制御部とを備えていてよい。移動機構は、操作部を用いた操作に応じて動作する。制御部は、条件設定部により設定された出力位置に基づいて光束出力部を制御することができる。更に、制御部は、条件設定部により設定された移動経路に沿って光学系の可動部を移動するための操作を支援する操作支援制御を行うことができる。上記実施形態において、ユーザインターフェイス240が操作部に相当する。また、主制御部211が制御部に相当する。
操作支援制御として、制御部は、設定された移動経路に基づき予め設定された許容範囲内を可動部が移動されるように、移動機構及び操作部の少なくとも一方を制御することができる。
このような構成によれば、光学系の移動を手動で行う場合において、被検眼の部位に応じた固視標の提示を自動で行うことができ、かつ、光学系の移動操作を支援することができる。それにより、光学系の移動操作を容易化することが可能である。
実施形態の眼科装置は、撮影部と、表示制御部とを備えてよい。撮影部は、被検眼の前眼部を動画撮影する。表示制御部は、撮影部により取得された動画像を表示手段に表示させ、かつ、設定された移動経路に基づき光学系の可動部を移動するための目標となる目標画像を指定部により指定された部位に対応する動画像上の位置に表示させる。
上記実施形態において、照明光学系10及び撮影光学系30が撮影部に相当する。或いは、前眼部カメラ5A及び5Bが撮影部に相当する。また、表示制御部2113(及び制御条件情報212a)が表示制御部に相当する。なお、表示手段は眼科装置に設けられてもよいし(表示部241)、眼科装置の外部に表示手段が設けられてもよい。
このような構成によれば、前眼部像を参照しつつ、指定された部位に応じた位置に提供された目標画像を目安として光学系を移動することが可能である。
以上に説明した実施形態は本発明の一例に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内における変形(省略、置換、付加等)を任意に施すことが可能である。