以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
図1は、本発明の実施例1に係るアクチュエータの断面構成の一例を示した図である。図1において、実施例1に係るアクチュエータは、半導体ウェハ10と、駆動源20とを有する。実施例1に係るアクチュエータは、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して、半導体ウェハ10を加工することにより、作製することができる。図1においては、そのような半導体ウェハ10を用いてアクチュエータを構成した場合の例について説明する。
半導体ウェハ10は、シリコン基板11と、SiO212、14と、Si活性層14とを備える。半導体ウェハ10は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板が用いられてよい。SOI基板は、シリコン基板11の間に、絶縁膜のSiO212が形成された基板であり、シリコン基板11を深掘り反応性イオンエッチング等で削った場合に、削り終点の底面にSiO2が形成されているので、深掘りエッチング加工を容易に行うことができる。
SiO212、Si活性層13及びSIO214で、梁15を形成する。梁15の部分で、駆動対象物を支持したり、駆動力を伝達したりする動作を行う。シリコン基板11の部分は、例えば、外側の固定枠として利用される。
なお、半導体ウェハ10は、例えば、全体で300〜500〔μm〕の厚さの半導体ウェハ10が用いられてよい。例えば、半導体ウェハ10が350〔μm〕のときに、Si活性層13が30〔μm〕、SiO212、14が0.5〔μm〕程度で、梁15が合計31〔μm〕程度であってよく、半導体ウェハ10の1/10程度の厚さで構成されてもよい。
駆動源20は、本実施例に係るアクチュエータにおいて、駆動力を発生させる動力源である。本実施例に係るアクチュエータにおいては、駆動源20として種々の手段を用いることができるが、実施例1においては、駆動源20として圧電素子21を用いた場合を例に挙げて説明する。圧電素子21は、圧電体22に印加された電圧を力に変換する受動素子である。本実施例に係るアクチュエータにおいては、圧電素子21は、電圧が印加されることにより、その長さが伸縮することにより、装着された梁15を駆動させる。圧電体22は、種々の圧電体22を適用してよいが、例えば、PZT薄膜(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられてもよい。圧電素子21は、例えば、梁15が約30〔μm〕であったときに、2〔μm〕程度の厚さで形成されてもよい。
圧電素子21は、上部電極23と、下部電極24とを備える。上部電極23及び下部電極24は、圧電体22に電圧を印加するための電極であり、上部電極23及び下部電極24に電圧が印加されることにより、圧電体22が伸縮し、梁15を駆動させる。
図2は、圧電素子21が、梁15に曲げ振動を発生させて実施例1に係るアクチュエータを駆動する方法について説明するための図である。図2(A)は、シリコンから構成される梁構造15と圧電素子21の部分を模式的に示した側面図の一例である。図2(A)に示すように、Si活性層13等から構成される梁15の上に、圧電素子21が薄膜状に装着されている。
図2(B)は、圧電素子21が収縮変形した状態の一例を示した図である。図2(B)に示すように、圧電素子21が収縮すると、梁構造15は、下に凸の上方に反るような形状となる。
図2(C)は、圧電素子21が伸長変形した状態の一例を示した図である。図2(C)に示すように、圧電素子21が伸長すると、梁構造15は、上に凸の下方に反るような形状となる。
図2(B)(C)に示すように、圧電素子21は、分極する方向や印加する電圧の極性又は位相により、上に反ったり下に沿ったりする。本実施例に係るアクチュエータでは、例えば、このような圧電素子21の性質を利用して、圧電素子21を駆動源20として、駆動対象を駆動してもよい。
図3は、実施例1に係るアクチュエータの表面斜視図の一例である。図3において、本実施例に係るアクチュエータは、外側の固定枠がシリコン基板11で構成され、シリコン基板11よりも内側の部分は、総て梁15と同じ厚さの薄い部分で構成される。アクチュエータの中央には、駆動対象物30が配置される。また、駆動対象物30を左右両側から挟むように、梁15の上に1対の駆動源20である圧電素子21が形成され、駆動梁70を構成している。このように、駆動対象物30を両側から支持する梁15の上に駆動源20が装着され、駆動梁70となって駆動対象物30を駆動する。なお、駆動対象物30の両側に配置された1対の駆動梁70の圧電素子21には、左右で逆方向に変位する電圧が印加される。このような逆方向に変位する電圧を印加することにより、図2(B)、(C)で説明した異なる方向への変位が生じ、振動が発生して駆動対象物30を駆動する。
なお、駆動源20である圧電素子21により発生する振動は、共振振動であってよい。共振を利用することにより、駆動梁70に大きな曲げ振動を発生させることができ、駆動対象物30を高速かつ大きく駆動することができる。
図4は、実施例1に係るアクチュエータを駆動させた状態を示した斜視図の一例である。図4において、駆動対象物30は、駆動梁70が発生させる振動により、回転軸Xの軸周りに傾くように振動している状態が示されている。図4においては、手前左側が下降し、奥右側が上昇するように傾動している。このように、本実施例に係るアクチュエータにおいては、駆動対象物30を、回転軸周りに傾動するように駆動する。
なお、駆動対象物30は、種々のものを駆動対象物30とすることができるが、例えば、マイクロプロジェクタやマイクロスキャナ等に用いられるミラーであってもよい。例えば、マイクロプロジェクタにおいては、ミラーにレーザ光を照射し、ミラーからの反射光を走査させることにより、描画を行う。その際、例えば、XGA(1024×768ピクセル)の画面解像度が要求される場合には、水平方向には30〔kHz〕程度の高速で±12〔デg〕の角度範囲で走査を行い、鉛直方向には60〔Hz〕程度の低速で±18〔deg〕の角度範囲で走査を行うことが要求される。図4に示す回転軸Xの軸周りでは、高速の30〔kHz〕程度の傾動駆動を行う。上述のように、駆動対象物30の回転軸X周りの傾動においては、共振駆動を用いるので、そのような高速の傾動駆動を実現することができる。
図5は、実施例1に係るアクチュエータを2軸駆動させる場合の、回転軸Xとは異なる軸周りに傾動駆動させる駆動源の一例を示した表面斜視図である。2軸駆動を行うアクチュエータは、上述のようなマイクロプロジェクタやマイクロスキャナに利用される場合が多いので、駆動対象物30が、ミラー31である例を挙げて説明する。
図5において、ミラー31の周囲には、60〔Hz〕程度の低速駆動を行うための駆動源である非共振駆動源90が示されている。非共振駆動源90は、駆動梁70の延在方向と直交する方向に各梁15が延在し、梁15の表面に駆動源20である圧電素子21が形成されて構成される。非共振駆動源90では、図4において示した回転軸Xと直交する軸周りへの傾動駆動を行う。非共振駆動源90は、隣接する梁の端部が、両端で交互となるように連結され、全体として、ジグザグ状の蛇行型梁を構成する。このような構成で、隣接する梁の駆動源20に正負の方向に変位する電圧を印加することにより、梁の延在する方向に傾きを蓄積する動作を行い、非共振駆動源90の梁15の延在方向に、ミラー31を傾動駆動する。
図6は、非共振駆動源90による非共振駆動を行っている状態の一例を示した実施例1に係るアクチュエータの表面斜視図である。図6に示すように、非共振駆動源90の各梁15について傾き角が蓄積してゆき、回転軸Yの軸周りにミラー31が傾動駆動される。図6においては、手前右側が下降し、奥左側が上昇した傾動動作の状態が示されている。
このように、本実施例に係るアクチュエータは、共振駆動と非共振駆動を組み合わせることにより、2軸駆動用のアクチュエータとして利用することができる。
図7は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80を抜き出して示した斜視図の一例である。図7において、共振駆動部80は、ミラー31と、支持梁40と、連結部50と、可動枠60と、駆動梁70と、駆動源20とを含み、これらは総て一体となって連結されている。
ミラー31は、本実施例に係るアクチュエータにより傾動駆動される駆動対象物30である。駆動対象物30は、ミラー31以外のものも適用できるが、以後、説明の容易のため、ミラー31を駆動対象物30として適用した例を挙げて説明する。
支持梁40は、ミラー31を両側から支持する1対の梁である。支持梁40は、ミラー31に連結され、ミラー31に関して対称に、回転軸Xに沿って、左右で1対となって設けられる。支持梁40は、図1において説明したように、例えば、約30〔μm〕程度の薄いシリコン活性層14として構成されるので、弾性を有する弾性部材として機能する。
可動枠60は、曲げ振動を伝達する媒体であるとともに、支持梁40を介してミラー31を可動可能に支持する可動支持部材である。可動枠60は、ミラー31及び支持梁40を両側から挟むように、回転軸Xに関して線対称に1対となって設けられる。図7においては、ミラー31及び支持梁40を手前側と奥側の両側から挟むように囲んでいる。可動枠60は、図7においては、全体としては四角形の形状をしているが、曲げ振動を伝達でき、かつ支持梁40及びミラー31を挟んで囲むように支持できれば、外形の形状は問わない。
可動枠60は、共振振動駆動源である1対の駆動梁70に両側から挟まれるように連結される。可動枠60には、駆動梁70から曲げ振動が伝達されるが、可動枠60は、その曲げ振動を伝達する媒体となる。駆動梁70は、図2乃至図4において説明したような曲げ振動を発生させるが、可動枠60は、支持梁40と同様に、薄いSi活性層14として構成されるので、弾性を有する弾性部材として機能し、駆動梁70で発生した曲げ振動を伝達することができる。
可動枠60は、連結部50を介して、支持梁40に連結されている。これにより、可動枠60は、支持梁40を支持するとともに、支持梁40に振動を伝達することができる。また、可動枠60は、駆動梁70には連結されているが、固定枠のような固定体に固定はされておらず、可動状態にあるので、可動状態で振動を伝達する。
連結部50は、支持梁40の先端部と可動枠60とを連結し、可動枠60の曲げ振動をねじれ振動に変換して支持梁40に伝達する部分である。連結部50は、支持梁40を回転軸X方向の両側から挟むように、1対となって構成されている。可動枠60は、支持梁40を回転軸Xに直交する方向の両側から挟むように対をなしているので、1つの連結部50は、支持梁40と、支持梁40の両側に存在する可動枠60の3つの部材を連結する。
図8は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80の連結部50を中心とする部分拡大図である。図8において、連結部50を中心として、ミラー31と、支持梁40と、可動枠60と、駆動梁70との関係が示されている。
連結部50は、支持梁40及び可動枠60と同じ部材により、一体的に構成されてよい。これにより、共振駆動部80の耐性を高めることができ、複数部材を接続するよりも、機械的強度を高めることができる。また、支持梁40及び可動枠60と一体的に構成することにより、振動の伝達の仕方の不自然なムラ等を無くすことができ、振動をスムーズに伝達することができる。よって、支持梁40及び可動枠60が、上述のように、図1で示した半導体ウェハ10のSiO212、14及びSi活性層15から構成されている場合には、連結部50も、半導体ウェハ10のSiO212、14及びSi活性層13から構成されてよい。
連結部50は、水平に細長く延在する複数の梁を含む梁構造として構成されてよい。連結部50を梁構造とすることにより、連結部50が、幅の広い形状よりも弾性を有する形状となり、可動枠60から伝達された曲げ振動を、特定箇所に応力負担を集中させることなくねじれ振動に変換することができる。図8において、支持梁40のミラー31と反対側の先端部が連結部50と連結しており、この箇所が、ミラー31の傾動駆動の際のねじれ応力が加わる、最も応力負担の加わる箇所である。本実施例に係るアクチュエータにおいては、支持梁40の先端部が連結されている連結部50が梁構造であるため、支持梁40のみでなく、連結部50も支持梁40のねじれ応力に応じてねじれ変形を起こすことができ、支持梁40に加わるねじれ応力を分散させることができる。なお、この点の詳細については、後述する。
連結部50は、外側に張り出した形状をしていてもよい。連結部50を梁構造とすることにより、弾性を向上させ、応力分散を促進することができるが、支持梁40を長くすることにより、支持梁40に加わるねじれ応力を低減させることができる。そして、支持梁40が可動枠60の回転軸X方向の幅よりも長く構成されたときに、連結部50も支持梁40に合わせて可動枠60の外側に張り出す梁構造の形状とすれば、連結部50を構成する梁の長さも長くとることができ、応力の吸収力を向上させることができる。図7においては、連結部50は、支持梁40の両側に回転軸Xと直交する方向に広がって延在してから、回転軸Xと平行に可動枠60の方向に延びる錨形の形状となっている。かかる構成により、連結部50の梁部分を長くし、応力分散効率を高めている。
連結部50は、支持梁40との連結により生じる角55が、丸められる加工処理がなされていてよい。これにより、支持梁40と連結部50との連結箇所の応力を更に分散させることができる。同様に、ミラー31と支持梁40の連結部分に生じる角45、連結部50と可動枠60の連結部分に生じる角65及び可動枠60と駆動梁70の連結部分に生じる角75を丸める加工処理を行い、これらの応力も分散させるようにしてよい。なお、角45、55、65、75の丸め処理の詳細については、後述する。
図7に戻る。駆動梁70は、可動枠60に曲げ応力を付与する駆動力発生源である。駆動梁70は、回転軸Xと直交する方向に延在し、可動枠60を両側から挟むように可動枠60に連結され、1対となって設けられる。駆動梁70は、表面に駆動源20が装着され、自身が駆動源20に変形されて、曲げ振動を発生させる。駆動源20は、例えば、圧電素子21が用いられてよいが、曲げ振動を発生することができる手段であれば、他の手段であってもよい。圧電素子21が用いられる場合、1対の駆動梁70の圧電素子21には、両側で互いに異なる方向に変位する電圧が印加される。電圧の印加は、図1において説明したように、圧電体22に設けられた上面電極23と下面電極24から行われてよい。
駆動梁70も、可動枠60と一体的に形成されてよい。よって、可動枠60が、図1で示した半導体ウェハ10の梁15を構成する厚さの薄い部分で構成されている場合には、駆動枠70も、梁15として構成されてよい。
このように、共振駆動部80は、半導体ウェハ10の約30〔μm〕程度の厚さの薄い部分で構成されているため、弾性を有する部材で構成されている。かかる弾性は、共振駆動部80の厚さは一定であるから、幅、長さ、形状等で調整することができる。本実施例に係るアクチュエータにおいては、半導体ウェハ10の弾性を、形状で調整することにより、応力が分散され、応力による破断等のおそれの無いアクチュエータを提供する。
図9は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80の共振振動時における変形状態の一例を示した斜視図である。図9において、1対の駆動源20は、奥側の圧電素子25と手前側の圧電素子26とを含み、各々異なる極性又は位相の電圧が印加される。これにより、1対の駆動梁70は、奥側の駆動梁71が上方に反り、手前側の駆動梁72が下方に反る変形をし、可動枠60に曲げ振動を付与する。可動枠60の曲げ振動は、連結部50において支持梁40に伝達されるが、このとき、曲げ振動はねじれ振動に変換され、1対の支持梁40は、左側と右側でねじれる振動をする。そして、このねじれ振動により、両側から支持梁40で支持されているミラー31は、奥側と手前側に傾動振動する運動を行い、回転軸X周りに傾動駆動させられることになる。このような動作により、ミラー31は回転軸Xの軸周りで傾動駆動させられる。
図10は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80の共振駆動時の変形状態の一例を示したミラー31の周辺拡大図である。図10において、ミラー31が、右側が上昇し、左側が下降するように傾動しているが、可動枠60も、ミラー31と同一方向に傾動し、ミラー31の方が、可動枠60よりも傾動の傾角が大きい状態となっている。図10における動作は、1対の駆動梁70に備えられた1対の駆動源20に、極性又は位相の異なる電圧を印加することにより共振させると、駆動梁70と可動枠60の連結部付近が、大きく上下に振動する。この動作により、可動枠60が傾き、また可動枠60自身がたわむことで、連結部50付近を更に傾け、連結部50がねじれて更にミラー31を傾ける、という動作を行う。
共振モードには、複数のモードがあり、図10で示したような、ミラー31と可動枠60が同一方向に傾く共振モードの他、ミラー31と可動枠60が逆方向に傾動する振動モードも存在する。
しかしながら、本実施例に係るアクチュエータにおいては、図10に示すように、ミラー31と可動枠60が同一の方向に傾動する共振モードを選択することが好ましい。これにより、可動枠60の変位にミラー31の変位が加算され、印加電圧に対するミラー31の傾角感度を高くすることができる。また、連結部50はねじれるが、ミラー31の傾角量に対してねじれ量が少ないため、内部応力を小さくすることができ、破断を発生し難くすることができる。
図11は、図10の状態におけるミラー31と支持梁40と連結部50の部分を更に拡大して示した図である。図11において、連結部50との連結箇所付近の支持梁40が大きくねじれていなくても、連結部50がねじれることにより、ミラー31の傾角を確保できている。このように、本実施例に係るアクチュエータの共振駆動部80は、曲げ応力からねじれ応力への変換で大きく応力負担が加わる可動枠60と支持梁40の間に、梁構造の連結部50を設けることにより、連結部50と支持梁40とのねじれ角を小さくしつつ、十分なミラー31の傾角を確保できる構成となっている。
なお、図8において示した角45、55、65、75を丸める加工処理を行った場合において、本実施例に係るアクチュエータを、30〔kHz〕の周波数、±12〔deg〕の傾角幅で駆動させたときには、連結部50の最大内部応力は、0.4〔GPa〕以下となる。これは、ミラー31の傾角時に発生する応力を、主に連結部50、可動枠60及び駆動梁70に分散させていることを意味する。
また、本実施例に係るアクチュエータは、連結部50の幅、厚さ、断面形状や長さ等を変更することにより共振周波数を変更できるため、30〔kHz〕以上の更なる高速化にも、構造を変更することなく対応可能である。但し、連結部50の形状変更を行うと、それに伴い、支持梁40及び駆動梁70の寸法が変更される場合はあり得る。
次に、図12乃至図14を用いて、本実施例に係るアクチュエータの角を丸める加工処理の例について説明する。なお、以後、角を丸めることを、角Rを付与する、と表現してもよいこととする。
図12は、ミラー31と支持梁40との連結箇所45に生じる角を丸めた場合について説明するための図である。図12(A)は、ミラー31と支持梁40との連結箇所45に生じる角に角Rを付与した場合のアクチュエータの斜視図の一例であり、図12(B)は、角Rを付与したときの傾角感度と、±12〔deg〕傾いたときの連結箇所45の最大応力変化を示した図である。
図12(A)に示すように、ミラー31は円形であり、支持梁40は長方形の平面構成であるので、そのままの連結状態であると、ミラー31と支持梁40との連結箇所45の外側に角張った角が生じ、内部応力が角に集中し易い。しかし、角Rを付与することにより、内部応力を分散させることができる。角Rは、例えば、0.01〜0.2〔mm〕の範囲内で付与するようにしてもよい。
図12(B)において、0〜0.25〔mm〕の範囲で付与する角Rを変化させたときに、傾角感度はあまり変化していないが、角Rが0.01〔mm〕以上で若干劣化している。一方、図12(B)において、角R部(連結箇所45)の最大内部応力は0.3〔GPa〕以下であり、破断応力に安全係数を掛けた値の0.05〔GPa〕以下であり、角R部の耐久性は問題無いことが示されている。
図13は、ミラー31と支持梁40との連結箇所45と、支持梁40と連結部50との連結箇所55と、連結部50と可動枠60との連結箇所65に生じる角を丸めた場合について説明するための図である。図13(A)は、連結箇所45、55、65に角Rを付与した場合のアクチュエータの斜視図の一例であり、図13(B)は、角Rを付与したときの傾角感度と、±12〔deg〕傾いたときの連結箇所45、55、65の最大応力変化を示した図である。
図13(A)に示すように、ミラー31と支持梁40との連結箇所45のみならず、支持梁40と連結部50との連結箇所55及び連結部50と可動枠60との連結箇所65にも角Rが付与されている。連結箇所55、65の角Rは、例えば、0.005〜0.04〔mm〕の範囲で付与されてもよい。
図13(B)は、図13(A)のような角Rを付与した構成において、傾角感度と最大応力の変化を示している。図13(B)において、傾角感度はあまり変化していないが、角Rが0.02〔mm〕以上で若干劣化している。内部応力は、ねじれが発生する連結部50で最大となる。角R=0.005〜0.02〔mm〕では、最大内部応力は0.5〔GPa〕となり、深掘り反応性イオンエッチングによる加工変質層の影響や繰り返し応力の印加により、破断の可能性が出てしまう。R=0.03〔mm〕のときに、最大応力は0.49〔GPa〕となり、破断が生じない値まで応力が分散される。よって、R=0.03〔mm〕以上であれば、破断発生のおそれが無く、特に問題無いことが分かる。
図14は、ミラー31と支持梁40との連結箇所45と、支持梁40と連結部50との連結箇所55と、連結部50と可動枠60との連結箇所65に加えて、更に可動枠60と駆動梁70との連結箇所75に生じる角を丸めた場合について説明するための図である。図14(A)は、連結箇所45、55、65、75に角Rを付与した場合のアクチュエータの斜視図の一例であり、図14(B)は、角Rを付与したときの傾角感度と、±12〔deg〕傾いたときの連結箇所45、55、65、75の最大応力変化を示した図である。
図14(A)に示すように、可動枠60と駆動梁70との連結箇所75にも角が生じるので、この角に角Rを付与して角を丸める加工処理を行うことにより、連結箇所75の内部応力も分散させることができる。連結箇所75の角Rは、例えば、0.005〜0.06〔mm〕の範囲で付与するようにしてもよい。
図14(B)において、図14(A)のように連結箇所45、55、65、75に角Rを付与した場合、角R=0.005〜0.01〔mm〕での最大内部応力は0.5〔GPa〕以上となる。つまり、この場合には、本実施例に係るアクチュエータは、深掘り反応性イオンエッチングによる加工変質層の影響や繰り返し応力の印加により破断のおそれを有する。一方、R=0.02〔mm〕のときには、連結箇所45、55、65、75の最大応力は0.49〔GPa〕となり、破断は発生しない値まで応力が分散される。角Rは、R=0.05〔mm〕以上であれば、特に問題が無いことが分かる。
次に、図15及び図16を用いて、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動部80の駆動源20の電極配置構成の例について説明する。
図15は、共振駆動部80における駆動源20の電極配置構成の種々の態様について示した図である。
図15(A)は、駆動梁70にのみ駆動源20を設けた共振駆動部80の構成の一例を示した図である。図15(A)において、今まで説明したように、駆動梁70にのみ駆動源20が設けられた共振駆動部80が示されている。この場合は、図7乃至図11において説明したように、1対の駆動梁71、72からなる駆動梁70の上下動が、曲げ振動として1対の可動枠61、62からなる可動枠60に付与される。そして、可動枠60から1対の連結部50に曲げ振動が伝達される際に、曲げ振動がねじれ振動に変換され、ねじれ振動により1対の支持梁40及びミラー31が傾動駆動される。
図15(B)は、駆動梁70及び可動枠60に駆動源20aを設けた共振振動部80aの構成の一例を示した図である。図15(B)において、駆動梁70のみでなく、可動枠60にも駆動源20aが備えられている。つまり、駆動源20aは、1対の駆動梁71、72に1対の駆動源25、26が設けられるとともに、1対の可動枠61、62にも各々駆動源27、28が設けられている。図15(B)においては、回転軸Xを中心として、互いに連結されている奥側の駆動梁71及び可動枠61には、同極性又は同位相の電圧が印加される駆動源25、27が設けられている、同様に、互いに連結されている手前側の駆動梁72及び可動枠62には、同極性又は同位相の電圧が印加される駆動源26、28が設けられており、それらの極性は、駆動源25、27とは異なっている。つまり、図15(B)においては、同じ側の駆動梁70と可動梁60には、同極性の電圧が印加されるように駆動源20aが配置構成されている。
図15(C)は、図15(B)とは異なる駆動梁70及び可動枠60に駆動源20bを設けた共振振動部80bの構成の一例を示した図である。図15(C)において、駆動梁70に設けられる駆動源20の配置は、図15(A)、(B)と同様であるが、可動枠60に設けられる駆動源27、28が、連結されている駆動梁70の駆動源26、25とは逆極性となるように構成されている。つまり、回転軸Xを中心として、奥側の駆動梁71の駆動源25とこれに連結されている可動枠61の駆動源28は、互いに逆極性である。同様に、手前側の駆動梁72の駆動源26と、これに連結されている可動枠62の駆動源27とは、逆極性である。そして、1対の駆動源71、72同士の駆動源25、26は互いに逆極性であり、1対の可動枠61、62同士の駆動源28、27も互いに逆極性である。
図16は、図15に示した3種類の電極配置構成の共振駆動部80、80a、80b同士の単位電圧当たりの傾角感度及び最大内部応力を比較した図である。図16において、単位電圧当たりの傾角感度を比較すると、基準となる図15(A)に示した駆動梁70にのみ駆動源20を設けた場合と比較して、同じ側の駆動梁70と可動枠60の駆動源20aが同極性となる図15(B)の場合は、傾角感度が減少し、同じ側の駆動梁70と可動枠60が逆極性となる図15(C)の場合は、傾角感度が増加している。つまり、図15(A)の構成では、傾角感度が0.535〔deg/V〕であるのに対し、図15(B)の構成では、0.131〔deg/V〕に低下し、図15(C)の構成では、0.975〔deg/V〕に上昇している。
一方、図16において、図15(A)、(B)、(C)同士の最大内部応力を比較すると、基準の図15(A)の0.39〔GPa〕に対し、図15(C)の場合はほぼ同様の0.40〔GPa〕となっており、破断のおそれの少ない、問題の無い値となっている。しかし、図15(B)の場合は、0.59〔GPa〕で増加しており、最大内部応力が0.5〔GPa〕を超えているので、破断のおそれがある。
この結果から、図15(C)の構成のアクチュエータの場合が、最も傾角感度が高く、かつ最大内部応力にも問題が無い値となっていることが分かる。よって、図15(C)に示したような、互いに連結される駆動梁70と可動枠60の駆動源20bに印加される電圧が逆極性となるように、駆動梁70及び可動枠70の双方に駆動源20bを設ける配置構成が最も効率が良く、破断のおそれも少ない構成となっている。
このように、図15(C)に示した電極配置とすることにより、外形寸法を変形することなく、傾角感度を向上させることができる。また、例えば、図16の例で考えれば、傾角感度が1.8倍に上昇したことで、印加電圧を1/1.8にすることができる。これにより、ミラー31を±12〔deg〕傾けるのに必要な駆動電圧は、図15(A)の構成の場合は、0〜22.5〔V〕であるのに対し、図15(C)の構成の場合は、0〜12.5〔V〕とすることができ、必要な駆動電圧を大きく低減させることができる。この場合、消費電力は、印加電圧の2乗に比例するので、図15(C)の場合の消費電力は、図15(A)の構成に比較して、(1/1.8)2*100=30〔%〕に低減させることが可能となる。
なお、連結する駆動梁70と可動枠60を逆極性とする方が、傾角感度を大きくすることができるのは、連結している駆動梁70と可動枠60同士を逆極性とすることにより、互いに反る方向が逆となるので、より大きな曲げ振動を大きく発生させることができるからであると考えられる。
このように、実施例1に係るアクチュエータによれば、駆動源20を有する駆動梁70に連結された可動枠60と、ミラー31に連結された支持梁40とを連結する連結部50を設けることにより、内部応力を増加させることなく曲げ振動をねじれ振動に変換し、ミラー31を傾動駆動することができる。また、連結箇所45、55、65、75に角Rを付与して角を丸める処理を行ったり、可動枠60にも駆動源20bを設け、駆動梁70と可動枠60に設ける駆動源20bの印加電圧が逆となるように構成したりすることにより、更に良好な傾角感度と、内部応力の分散効果を得ることができる。
図17は、本発明の実施例2に係るアクチュエータの共振駆動部81の構成の一例を示した斜視図である。図17において、実施例2に係るアクチュエータの共振駆動部81は、ミラー31と、支持梁40aと、連結部50aと、可動枠60と、駆動梁70と、駆動源20とを備える。実施例2に係るアクチュエータは、断面構成や、非共振駆動部等の共振駆動部81の構成以外は、実施例1に係るアクチュエータの構成と同様であるので、他の構成要素については、その説明を省略する。また、実施例1と同様の構成要素については、同一の参照符号を付して、その説明を省略又は簡略化するものとする。
図17において、実施例2に係るアクチュエータは、ミラー31を1対の支持梁40aが両側から支持し、可動枠61、62からなる1対の可動枠60と支持梁40aとを連結部50aが連結している。可動枠60の回転軸Xと直交する方向の両側には、駆動梁71、72からなる1対の駆動梁70が連結され、駆動梁71、72には、駆動源25、26からなる1対の駆動源20が備えられた基本構成は、実施例1に係るアクチュエータと同様である。また、実施例2に係るアクチュエータの動作も、駆動源20により駆動梁70から曲げ振動が発生し、連結部50aでねじれ振動に変換され、支持梁40aを介してミラー31が傾動駆動する点は、実施例1に係るアクチュエータと同様である。
実施例2に係るアクチュエータは、回転軸Xの方向に対をなしている支持梁40aが、片側で各々奥側と手前側で分かれて2本となり、更に対をなしている点で、実施例1に係るアクチュエータと異なっている。また、実施例2に係るアクチュエータは、支持梁40aが、片側で各々2本となったのに伴い、連結部50aは、各1本の支持梁40aを近い方の可動枠61、62に連結している点で、実施例1に係るアクチュエータと異なっている。
図18は、実施例2に係るアクチュエータの支持梁40a、連結部50a及び可動枠60の拡大斜視図である。図18において、実施例1に係るアクチュエータでは、支持梁40が片側で1本であったのに対し、実施例2に係るアクチュエータでは、支持梁40aの中心部が、回転軸Xに沿ってくり抜かれた形状となっている。それに伴い、支持梁40aの幅は細くなり、実施例1の支持梁40よりも細い2本の梁15で構成されている。
また、連結部50aは、2本の支持梁40aを大きな1本の支持梁40と見なせば、回転軸Xと直交する方向に両側に開いて延在し、回転軸Xに沿って可動梁60に連結されており、錨形の形状となっているので、連結部50a自体の形状としては、本質的には変化していない。しかしながら、支持梁40aが2本の支持梁41、42で構成されたことに伴い、支持梁41に対応して連結部51が設けられ、支持梁42に対応して連結部52が設けられ、1本の支持梁41、42に各1本の連結部51、52が各々対応して設けられた構成となっている。
このような構成とすることにより、実施例2に係るアクチュエータは、連結部50aの梁構造の部分を、実施例1に係るアクチュエータよりも更に長くとることができるとともに、連結部51と連結部52とで異なる動作をすることが可能となる。よって、連結部50aの変形自由度を更に高め、可動枠60から伝達された曲げ振動を、更に効率的にねじれ振動に変換することができる。
図19は、実施例2に係るアクチュエータの共振駆動部81の、共振駆動時の変形状態の一例を示した図である。図19において、駆動源25と駆動源26には、異なる極性の電圧が印加され、駆動梁71は上に反り、駆動梁72は下に反っており、1対の可動枠61、62に曲げ振動を付与している。可動枠61、62に付与された曲げ振動は、連結部50aに伝達され、ねじり振動に変換されて支持梁40aに伝達される。このとき、可動枠61の曲げ振動は連結部51に伝達され、可動枠62の曲げ振動は連結部52に伝達される点が、実施例1に係るアクチュエータとは異なっている。連結部51からのねじれ振動は、支持梁41に伝達され、連結部52からのねじれ振動は、連結部52に伝達される。右側の支持梁40aのみでなく、左側の支持梁40aも同様の動作をし、ミラー31は傾動駆動される。
図20は、実施例2に係るアクチュエータの共振駆動部81の共振駆動時の変形状態の一例を示す拡大斜視図である。図20において、駆動梁71、72から伝達された可動枠61、62の曲げ振動によるたわみが、連結部50aに伝達されるが、連結部50aにおいては、上側の連結部51と下側の連結部52で段差が生じている。そして、連結部50aにおける段差に伴い、支持梁40aにおいても、上側の支持梁41と下側の支持梁42でも段差が生じている。これにより、段差を大きくすることにより、ミラー31を大きく傾けることが可能となるので、より直接的にミラー31を傾動駆動することが可能となる。つまり、支持梁40aを2本としたことにより、支持梁41、42がねじれる傾角時に、支持梁41、42間で段差を生じ、傾角を増大させることができる。
また、図20において、可動枠60と、ミラー31とは、同一方向に傾いている。実施例2に係るアクチュエータにおいても、共振モードは、ミラー31と可動枠60とが同一方向に傾く共振モードを用いることにより、可動枠60とミラー31の変位を加算し、ミラー31の傾角感度を高めることができる。また、支持梁40aと連結部50aはともにねじれ、駆動梁70と可動枠60はともにたわんで駆動するが、傾角量に対しねじれ量が少ないため、内部応力が小さく、破断し難い構成である。
例えば、本実施例に係るアクチュエータにおいては、30〔kHz〕の周波数で、傾角幅±12〔deg〕で駆動した場合に、角Rを付与すると、最大内部応力は0.5〔GPa〕となる。これは、ミラー31の傾動時に発生する応力を、主に支持梁40a、連結部50a、可動枠60及び駆動梁70に分散させていることを意味する。より詳細には、本実施例に係るアクチュエータは、ミラー傾角感度を0.56〔deg/V〕、最大内部応力を0.48〔GPa〕とすることができる。
なお、実施例2に係るアクチュエータは、支持梁40a及び連結部50aの両方又はどちらか一方の幅、厚さ、断面形状や長さ等を変更することにより、共振周波数を変更できるため、30〔kHz〕以上の更なる高速化にも、構造を変更することなく対応することができる。但し、支持梁40a及び/又は連結部50aの形状変更を行うと、それに伴って、可動枠60及び駆動梁70の寸法が変更される場合がある。
次に、図21及び図22を用いて、実施例2に係るアクチュエータの共振駆動部81の、電極構成の例について説明する。
図21は、実施例2に係るアクチュエータの共振駆動部81の電極構成の例を示した図である。図21(A)は、図17乃至図20において説明した、駆動梁70にのみ駆動源20を設けた共振駆動部81の一例を示した斜視図である。図21(B)は、駆動梁70及び可動枠60に同極性の駆動源20aを設けた共振駆動部81の一例を示した斜視図である。図21(C)は、駆動梁70及び可動枠60に異極性の駆動源20aを設けた共振駆動部81の一例を示した斜視図である。
図21(A)における構成は、図17乃至図20において説明した構成及び動作と同様であるので、同一の構成要素に同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図21(B)は、駆動梁70のみでなく、可動枠60にも駆動源27、28が備えられている点で、図21(A)とは異なっている。また、駆動源27、28の印加電圧の極性は、駆動梁71と連結された可動枠61には、駆動枠71と同じ極性の電圧が印加され、駆動梁72と連結された可動枠62には、駆動枠72と同じ極性の電圧が印加されるように構成されている。つまり、駆動源25と駆動源27には同じ極性の電圧が印加され、駆動源26と駆動源28には同じ極性の電圧が印加される。そして、駆動源25、27に印加される電圧と、駆動源26、28に印加される電圧は、逆極性となっている。実施例1における図15(B)と同様の電圧の印加の仕方である。
図21(C)は、駆動梁70のみでなく、可動枠60にも駆動源27、28を設けた点で、図21(B)と同様である。しかしながら、図21(C)は、駆動梁71と連結された可動枠61の駆動源28への印加電圧の極性が、駆動梁71の駆動源25への印加電圧極性と反対であり、駆動梁72と連結された可動枠62の駆動源27への印加電圧の極性が、駆動梁72の駆動源26への印加電圧極性と反対である点で、図21(B)の電極構成とは異なっている。これは、実施例1の図15(C)と同様の電圧の印加の仕方である。
図22は、図21(A)、(B)、(C)の電極構成における印加電圧に対する傾角感度及び最大内部応力を示した図である。
図22において、傾角感度の最も大きいのは、図21(B)の構成の共振駆動部81aを有するアクチュエータである。また、最大内部応力についても、図21(A)の構成の共振駆動部81と図21(B)の構成の共振駆動部81aとが等しく最も小さい値となっている。つまり、実施例2に係るアクチュエータにおいては、駆動梁70と連結する可動枠60に、同極性の電圧が印加されて共振駆動する図21(B)に示した電極構成が最適電極構成となる。これは、実施例1に係るアクチュエータとは異なる結果である。つまり、実施例1においては、連結する駆動梁70と可動枠60の駆動源20bに異極性の電圧が印加されて共振駆動させられる場合が最適な電極構成であったが、実施例2においては、連結する駆動梁70と可動枠60の駆動源20aに同極性の電圧が印加されて共振駆動させられる場合が最適構成となる。
図23は、実施例1に係るアクチュエータの最適電極構成と、実施例2に係るアクチュエータの最適電極構成が異なる理由について説明するための図である。図23(A)は、実施例1に係るアクチュエータの共振駆動時の変形状態の一例を示した側面図であり、図23(B)は、実施例2に係るアクチュエータの共振駆動時の変形状態の一例を示した側面図である。
図23(A)に示されるように、実施例1に係るアクチュエータにおいては、可動枠60が駆動梁70と逆方向に上下に変位すればする程、中心梁40及び連結部50が傾き、ミラー31の回転角度が大きくなる。つまり、可動枠61及び駆動梁71の反り具合と、可動枠62及び駆動梁72の反り具合が大きい程、中心梁40及び連結部50が傾き、ミラー31の傾角が大きくなる。
一方、図23(B)に示されるように、実施例2に係るアクチュエータにおいては、可動枠60及び駆動梁70が、1つのばねのように変位し、中心梁40が上下に変位すればする程、ミラー31の回転角度は大きくなる。つまり、可動枠61及び駆動梁71の上昇変位と、可動枠62及び駆動梁72の下降変位の差が大きい程、支持梁41と支持梁42とが縦に開いて段差が大きくなり、ミラー31の傾角が大きくなる。
このように、支持梁40、40aが1本であるか2本であるかにより、同じ周波数、同じ共振モードでも、傾くメカニズムが全く異なることが分かる。
ここで、実施例2においては、角Rを付与して角を丸くする加工処理については、特に説明していないが、実施例2においても適用することができる。また、そのような細部の構成については、実施例1と実施例2を組み合わせることができる。
図24は、実施例3に係るアクチュエータの全体構成の一例を示す斜視図である。図24(A)は、実施例3に係るアクチュエータの表面側からの斜視図の一例であり、図24(B)は、実施例3に係るアクチュエータの裏面側からの斜視図の一例である。
図24(A)において、実施例3に係るアクチュエータは、可動部100と、固定枠110とを備える。固定枠100は、駆動中も固定状態にある外側の枠であり、可動部110は、固定枠100に連結支持されている。また、可動部100は、駆動対象物30と、1対の支持梁40bと、1対の連結部50bと、1対の駆動梁73とを備える。連結部50bは、駆動梁73に連結される駆動梁側連結部53と、駆動梁側連結部53と支持梁40bを連結する支持梁側連結部54とを有する。実施例3に係るアクチュエータの表面側は、総てSi活性層13で構成されている。
実施例3に係るアクチュエータにおいては、駆動対象物30に、回転軸方向に沿って延在する支持梁40が連結されている点は、実施例1に係るアクチュエータと同様である。しかしながら、実施例3に係るアクチュエータには、可動枠60が設けられていない点で、実施例1及び実施例2に係るアクチュエータと異なっている。
実施例3に係るアクチュエータにおいては、連結部50bの支持梁側連結部54が、回転軸Xと直交する方向に長く延在し、駆動対象物30の幅と同程度か、それよりも長く構成されている。そして、支持梁側連結部54から垂直に回転軸Xと平行に駆動梁73側に戻るように駆動梁側連結部53が延在し、駆動梁73に直接連結されている。よって、連結部50bは、可動枠60の代わりに駆動梁73と直接連結される駆動源側連結部53と、駆動梁側連結部53と支持梁40bとを連結する支持梁側連結部54を含んで構成される。ここで、支持梁側連結部54と駆動梁側連結部53とが連結される位置は、回転軸Xに垂直な方向において、駆動対象物30の端部と同じか、それよりも外側に構成されてよい。これにより、回転軸Xと平行に駆動対象物30側に延びる駆動梁側連結部53の長さを、十分に長く確保することができ、十分に応力の吸収低減を行うことが可能となる。
このように、回転軸Xと垂直に延在する支持梁側連結部54の長さを大きくし、支持梁側連結部54と駆動梁73とを駆動梁側連結部53で連結し、可動枠60を省くような構成としてもよい。この場合、駆動梁73で発生させられる傾動力は、連結部50bの駆動梁側連結部53に直接的に伝達される。駆動梁側連結部53は、駆動梁73の傾動力を支持梁側連結部54に伝達することができるとともに、応力を低減させる梁構造となっているので、応力分散を適切に行うことができる。また、可動枠60を省くことにより、より小型で省スペースのアクチュエータを構成することができる。
また、駆動梁73は、実施例1及び実施例2に係るアクチュエータの駆動源70よりも、回転軸Xに平行な幅を大きくし、駆動源20である圧電素子21の成膜面積を大きくしている。これにより、傾角感度を更に向上させるとともに、更に高速に駆動することが可能となる。つまり、小型でありながら、十分な傾角感度を有するアクチュエータとすることができる。なお、駆動梁73が、回転軸Xの両側で、異なる方向に変位する電圧が印加させる点は、実施例1及び実施例2に係るアクチュエータと同様である。
更に、実施例3に係るアクチュエータは、回転軸Xの軸周りに傾動運動を行う1軸型のアクチュエータが示されている。このように、実施例3に係るアクチュエータは、1軸側アクチュエータとして構成することができる。一方、図3乃至図6において説明したように、固定枠110の領域に、回転軸Xと異なる軸周りに傾動駆動するアクチュエータを組み込んで2軸型のアクチュエータとしてもよい。実施例3に係るアクチュエータは、1軸型のアクチュエータにも、2軸型のアクチュエータにも適用することができる。
図24(B)において、実施例3に係るアクチュエータの裏面構成の一例が示されているが、図24(A)において説明した可動部100は、総て梁15として薄く構成され、固定枠110は、厚さの厚いシリコン基板11で構成される。
図25は、実施例3に係るアクチュエータの傾角感度の向上と最大応力を低減させるパラメータ設定の一例について説明するための図である。図25(A)は、実施例3に係るアクチュエータの可動部100の平面構成を示した図の一例である。図25(A)において、回転軸Xと垂直であって、駆動対象物30の中心を通る回転軸Yが示されている。
図25(A)において、支持梁40bの幅をAとし、駆動梁側連結部53の幅を、支持梁40bの幅Aの1/2のA/2に設定する。また、支持梁側連結部54の長さをB、支持梁40b及び駆動梁側連結部53の外側の端部から回転軸Yまでの距離をCとする。そして、支持梁40b及び駆動梁側連結部53の外側端部から回転軸Yまでの距離Cを可変とすることで、共振周波数を一定の30kHzに設定する。なお、駆動梁側連結部53は、4箇所存在するが、総て共通の値に設定する。また、連結箇所45aのR半径をR1=0.15mm、連結箇所55aのR半径をR2=B/2に設定する。そして、指示梁40bの幅A及び支持梁側連結部54の長さBをパラメータとして変化させ、傾角感度と最大応力の最適値を検討した。
図25(B)は、駆動対象物30を±12degの傾角で傾動させる場合の、支持梁40bの幅A及び支持梁側連結部54の長さBの変化に対する傾角感度〔deg/V〕の変化特性を示した図である。図25(B)において、A=0.12mmの場合に最も傾角感度が高く、また、0.4mm<B<0.6mmのB=0.5mm付近の値で傾角感度が最大となっている特性が示されている。
図25(C)は、支持梁40bの幅A及び支持梁側連結部54の長さBの変化に対する最大主応力の変化特性を示した図である。最大応力は、0.5GPa以下であれば、アクチュエータの耐性としては問題の無い数値である。図25(C)において、A>0.1mmの場合に、最大応力は0.5GPa以下となっている。また、A=0.14mm又はA=0.12mmの場合であって、0.4mm<B<0.6mmのB=0.5mm付近で最大主応力が最小となっている特性が示されている。
よって、傾角感度が高く、最大応力が小さい形状で、比較的小型のものとして、例えば、A=0.12mm、B=0.5mm、C=1.4mm、R1=0.15mm、R2=0.25mmの形状を採用するとよい。この場合、傾角感度は4.50deg/V、±12degの傾角で傾動させるための電圧は0−5.3V、最大応力は0.38GPaとすることができ、最大応力が小さく、傾角感度が高い良好な特性とすることができる。
図26は、実施例4に係るアクチュエータの全体構成の一例を示した斜視図である。図26(A)は、実施例4に係るアクチュエータの表面側の構成の一例を示した図であり、図26(B)は、実施例4に係るアクチュエータの裏面側の構成の一例を示した図である。
図26(A)において、実施例4に係るアクチュエータは、可動部101と、固定枠111とを備える。固定枠111は駆動中も固定状態にある外側の枠で、可動部111が、固定枠111に連結支持されている点は、実施例3に係るアクチュエータと同様である。また、可動部101は、駆動対象物30と、1対の支持梁40cと、1対の連結部50cを備え、連結部50cは、駆動梁側連結部53と、支持梁側連結部54を含む点も、実施例3に係るアクチュエータと同様である。
実施例4に係るアクチュエータは、支持梁40cが、回転軸Xに沿って分離しており、2本となっている点で、実施例3に係るアクチュエータと異なっている。この支持梁40cの構成は、実施例2に係るアクチュエータの支持梁40aと類似した構成である。これに伴い、連結部50cも、回転軸Xに沿って分離され、2本の連結部50cを含んでいる。2本の連結部50cは、各々が回転軸Xに対して垂直に外側の向きに延び、各々が支持梁40cとともにU字を形成した形状となっている。このような構成により、支持梁40c及び連結部50cは、回転軸Xの両側で、独立した運動を行うことが可能となる。よって、実施例4に係るアクチュエータは、実施例2に係るアクチュエータと同様に、2本の支持梁40cの高低差を大きくして駆動することにより、大きな傾角を得ることが可能な構成となっている。
なお、連結部50cの、回転軸Xに垂直な方向に延在する支持梁側連結部54の長さが、駆動対象物30の幅と同程度かそれ以上であり、可動枠60を必要としない点は、実施例3に係るアクチュエータと同様である。これにより、可動枠60を必要とせず、小型で省スペースのアクチュエータを構成することができる。
また、連結部50cは、実施例3に係るアクチュエータと同様に、駆動梁側連結部53及び支持梁側連結部54とも、弾性力のある梁構造を有しているので、加わる応力を吸収して低減させ、安定して駆動対象物30を傾動運動させることができる。
また、駆動源20が成膜された駆動梁73の面積を大きくし、十分な傾角感度と高速駆動を実現できる点は、実施例3に係るアクチュエータと同様である。
図26(B)においては、実施例4に係るアクチュエータの裏面側からの斜視図が示されているが、外側の固定枠111は厚いシリコン基板11で構成され、可動部101は、梁15として薄い弾性体で構成されている点は、実施例3に係るアクチュエータと同様である。
図27は、実施例4に係るアクチュエータの可動部101の形状の最適設計を行う方法の一例を示した図である。図27(A)は、実施例4に係るアクチュエータの平面構成の一例を示した図である。図27(A)に示すように、実施例4に係るアクチュエータは、支持梁40cが、回転軸Xに沿って分離し、2本の支持梁41a、42aを備えている。また、これに伴い、連結部50cも、回転軸Xを境界として2つに分離され、2つの連結部51a、52aを備えている。支持梁41aには、連結部51aが連結され、支持梁42aには、連結部52aが連結されている。連結部51a、52aの支持梁側連結部54は、回転軸Xに垂直な方向に、ともに回転軸Xから離れる向きに延びており、駆動源側連結部53で再び回転軸Xに沿って中心に戻るような形状となっている。
ここで、図27(A)において、各パラメータを以下のように定める。支持梁40cの各1本41a、42aの幅を0.06mm、同様に連結部50cの駆動梁側連結部53の幅を0.06mmとする。なお、駆動対象物30を弾性支持する支持梁40c、駆動梁側連結部53の幅を変更することにより、共振周波数を大きく変更することができる。本実施例においては、支持梁40c及び駆動梁側連結部53の幅を一定とし、他のパラメータを動かすこととする。
また、2本の支持梁41a、42a間の距離をAとし、支持梁側連結部54の長さをBとする。更に、駆動梁側連結部53の外側端部から駆動梁73の部分も含めた回転軸Yまでの距離をCとする。この場合、Cを可変とすることで、共振周波数を一定の30kHzに調整することができる。つまり、共振周波数の微調整が可能となる。
また、駆動対象物30と支持梁40cとの連結箇所46のR半径をR1=A/2に設定し、支持梁40cと連結部55bとの連結箇所55bのR半径をR2=B/2に設定する。
図27(B)は、図27(A)の条件下で、駆動対象物30を±12deg傾動させる場合に、2本の支持梁41a、42a間の距離Aと、支持梁40cと駆動梁側連結部53との間の距離(支持梁側連結部54の長さ)Bとをパラメータとしたときの、最大応力の変化特性を示した図である。図27(B)において、横軸は支持梁側連結部54の長さB〔mm〕、縦軸は最大応力〔GPa〕を示している。
図27(B)において、Aの値が小さい程、最大応力が小さいことが示されている。また、応力σが極小となる支持梁40cと駆動梁側連結部53との距離BをBminとすると、(1)式の関係を有する。
(1)式は、各特性曲線の極小値を結んで得られた関係式である。
図28は、支持梁側連結部54の長さBが、極小値を持つ理由を説明するための図である。(1)式より、A=0.3mmの曲線における極小値は、Bmin=(−0.2)*0.3+0.28=0.22≒0.2である。図28においては、A=0.3mmの場合に、Bの値を変化させた応力分布図を示している。
図28(A)は、B=0.1mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図28(A)は、B<Bmin=0.2mmの場合の応力分布を示しており、この場合、駆動梁側連結部53に応力が集中している。
図28(B)は、B=0.3mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図28(B)は、B>Bmin=0.2mmの場合の応力分布を示しており、この場合、支持梁40cに応力が集中している。
図28(C)は、B=0.2mmの場合のアクチュエータの応力分布を示した図である。図28(C)は、B=Bmin=0.2mmの場合の応力分布を示しており、この場合、支持梁40cと駆動梁側連結部53の中間付近の連結部50cの位置に応力が集中する。
図27(A)に示した構成において、支持梁40c及び駆動梁側連結部53の幅は、0.06mmと、これらを連結している支持梁側連結部50cの幅よりも狭く、ねじれ部を含むことになる。よって、支持梁側連結部54の長さを短くすると、駆動梁側連結部53のねじれ部に応力が集中し、支持梁側連結部54の長さを長くすると、支持梁40cのねじれ部に応力が集中するが、支持梁側連結部54の長さを中間長さとすることにより、支持梁側連結部54に応力集中部を移動させることができる。幅が広く、大きなねじれ部を含まない支持梁連結部54に応力集中部を移動させることにより、駆動対象物30を±12deg傾動させたときの応力を低減させ、極小値を持たせることができる。
図27(B)に戻る。図27(B)の変化特性において、応力が限界値の5GPa以下を示すのは、A=0.1mm、A=0.03mm及びA=0.005mmの曲線の一部の範囲である。つまり、図27(B)で示す特性曲線においては、A<0.2mmであって、Bが所定範囲内の領域の場合である。一方、A≧0.2mmの特性曲線においては、Bの値に関わらず、最大応力は0.5GPaを示している。
ここで、A<0.2mmの特性曲線において、応力が限界値の0.5GPaと交わるBの値が小さい方の関係式は、(2)式のようになる。
また、各特性曲線が、応力が0.5GPaで交わるBの値が大きい方の関係式は、(3)式のようになる。
よって、応力が限界値の0.5GPa以下を示すのは、(1)式を満たすBminだけでなく、(4)式の範囲となる。
図27(C)は、上述の(1)〜(4)の関係式が満たす領域を示した図である。図27(C)において、横軸は支持梁41a、42a間の距離A〔mm〕、縦軸は支持梁側連結部54の長さB〔mm〕を示している。図27(C)において、(4)式を満たす範囲が斜線で示されており、領域の境界線である(2)式と(3)式の間に、(1)式が示されている。応力の低減の観点から見れば、(1)式を満たすA、Bの組み合わせが最適であるが、(4)式の範囲内に入っていれば、設計上問題無いと言える。よって、(4)式を満たす斜線の範囲内で支持梁41a、42a間の距離A及び支持梁側連結部54の長さBを定めればよいことが分かる。
図29は、支持梁41a、42a間の距離A及び支持梁側連結部54の長さBをパラメータとした場合の傾角感度の特性を示した図である。図29において、横軸は支持梁側連結部54の長さB〔mm〕、縦軸は傾角感度〔deg/V〕を示している。
図29において、A、Bの値がともに大きい程、傾角感度は大きくなることが示されている。よって、図27(C)において算出した、最大応力が0.5GPa以下の範囲で、傾角感度が最大となるようなA、Bの値が、最適なパラメータ設定ということになる。
この範囲で考えると、A=0.03mm、B=0.35mmが最適な値ということになる。このとき、他の値は、支持梁41a、42aの各々と駆動梁側連結部54はともに0.06mm、C=1.2mm、R1=0.015mm、R2=0.175mmとなる。この場合の特性は、傾角感度が3.58deg/Vであり、±12degの傾角で傾動させるための電圧が0−6.5V、最大応力が0.49GPaとなる。
実施例4に係るアクチュエータは、実施例3に係るアクチュエータよりも、傾角感度は低く、最大応力が大きい数値となっているが、実施例4に係るアクチュエータは、実施例3に係るアクチュエータよりも小型に形成することができる。よって、より傾角感度の高いアクチュエータを使用したい場合には、実施例3に係るアクチュエータを用い、より小型のアクチュエータを使用したい場合には、実施例4に係るアクチュエータを用いるようにすればよい。このように、実施例3に係るアクチュエータと、実施例4に係るアクチュエータは、用途に応じて使い分けることが可能である。
なお、実施例3及び実施例4の駆動対象物は、実施例1及び実施例2において説明したように、例えば、ミラー31であってもよい。また、実施例3及び4においては、1軸のアクチュエータとして構成した例を説明したが、図3乃至図6において説明したように、2軸のアクチュエータとして構成してもよい。
図30は、本発明の実施例5に係るプロジェクタ200の全体構成の一例を示した図である。実施例5においては、実施例1〜4に係るアクチュエータを光走査装置、例えばプロジェクタ200に適用した例について説明する。
図30において、実施例5に係るプロジェクタ200は、第1の圧電ミラー120と、第2の圧電ミラー121と、レーザダイオード130と、コリメータレンズ140と、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)150と、レーザダイオードドライバIC(Integrated Circuit、集積回路)160と、第1の圧電ミラードライバIC170と、第2の圧電ミラードライバIC171とを有する。また、図30において、関連構成要素として、スクリーン210が示されている。
プロジェクタ200は、スクリーン210上に映像を投影して映し出す装置である。第1の圧電ミラー120は、ミラー31を回転軸Xの軸周りに傾動駆動する1軸駆動のアクチュエータとして構成され、プロジェクタ300に適用される。同様に、第2の圧電ミラー120は、ミラー31を回転軸Yの軸周りに傾動駆動する1軸駆動のアクチュエータとして構成され、プロジェクタ300に適用される。
レーザダイオード130は、レーザ光を発射する光源である。レーザダイオード130から発射されるレーザ光は、発散光であってよい。
コリメータレンズ140は、発散光を平行光に変換する手段である。平行光には、例えば、光の入射面内で振動するP偏光や、光の入射面に垂直に振動するS偏光が含まれてよい。
コリメータレンズ220からの平行光は、第1の圧電ミラー120に照射され、ミラー31により反射される。第1の圧電ミラー120は、ミラー31を回転軸Xの軸周りに傾動駆動させ、反射するレーザ光が回転軸Xに垂直に振動するような動きを与える。第1の圧電ミラー120は、実施例1〜4において説明した総てのアクチュエータが適用され得る。第1の圧電ミラー120による反射光は、第2の圧電ミラー121に照射される。
第2の圧電ミラー121は、ミラー31を回転軸Yの軸周りに傾動駆動させ、第1の圧電ミラー120からのレーザ光を反射する。これにより、反射光に、回転軸Yに垂直に振動する動きが与えられる。第2の圧電ミラー121も、第1の圧電ミラー120と同様に、実施例1〜4に係る総てのアクチュエータが適用され得る。
第2の圧電ミラー121で反射されたレーザ光は、スクリーン210に照射される。スクリーン210上のレーザ光は、1軸の第1の圧電ミラー120及び第2の圧電ミラー121を組み合わせることにより、垂直方向に2軸の走査を行うことができ、映像を形成することができる。
CPU150は、レーザダイオードドライバIC160、第1の圧電ミラードライバIC170及び第2の圧電ミラードライバIC171を制御する手段である。レーザダイオードドライバIC160は、レーザダイオード130を駆動する手段である。第1の圧電ミラードライバIC170は、第1の圧電ミラー120を駆動する手段であり、第2の圧電ミラードライバIC171は、第2の圧電ミラー121を駆動する手段である。
CPU150は、レーザドライバIC160を制御し、レーザダイオード130を駆動する。また、CPU150は、第1の圧電ミラードライバ170を制御し、第1の圧電ミラー120の回転軸Xの軸周りの傾動動作を制御するとともに、第2の圧電ミラードライバ171を制御し、第2の圧電ミラー121の回転軸Yの軸周りの傾動動作を制御する。第1の圧電ミラー120及び第2の圧電ミラー121が傾動動作することにより、回転軸X、Yの双方の軸周りの動きをレーザ光に与え、第2の圧電ミラー121のミラー31で反射した光をスクリーン210上に走査させ、スクリーン210上に映像を形成する。
このように、本実施例に係るアクチュエータは、プロジェクタ200用の圧電ミラー120、121として好適に適用することができ、応力負担の少ない安定した状態でミラー31を駆動させ、映像を映し出すことができる。
なお、実施例7においては、第1の圧電ミラー120が回転軸Xの軸周りの傾動駆動を行い、第2の圧電ミラー121が回転軸Yの軸周りの傾動駆動を行う例を挙げて説明したが、両者の順序は入れ替わっていてもよい。第1の圧電ミラー120を傾動駆動させる第1の回転軸と、第2の圧電ミラー121を傾動駆動させる第2の回転軸とは、両者の方向が異なっていればよく、用途に応じて種々の方向の回転軸の組み合わせとすることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。