JP5719970B2 - シンチレーション推定方法 - Google Patents
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Description
(2)トラッキング劣化の前兆現象の信号(以下、「シンチレーション信号」という)が漏れ電流に重畳されるときに、漏れ電流の方がシンチレーション信号より大きいことがある。
この方法によれば、表面の絶縁性が劣化し始めた絶縁物に電圧を印加すると、劣化の前兆現象(シンチレーション)として、放電とともにパチパチという音が発生する。そこで、電圧を印加した絶縁物から発生する音響信号を測定し、測定した音響信号の振動幅が所定値より大きければ、シンチレーションが発生したと推定する。そして、2個のマイクロホンで測定した音響信号の振動幅が所定値より大きくなった各時刻が、マイクロホン間の距離に応じた時間差になっていれば、2個のマイクロホンの各位置の延長線上にある絶縁物でシンチレーションが発生したと推定する。これによれば、絶縁物の表面劣化の前兆現象を確実に把握することにより、劣化を早期に検出することができる。次に、2個のマイクロホンを用いることにより、その延長線上にある絶縁物が劣化し始めていることを確認することができる。そして、音響信号の測定値を用いるので、電気的ノイズが高い環境であっても、感度よくシンチレーションを検出することができる。
この方法によれば、商用電源による交流電圧を絶縁物に印加した際に、電圧がピーク値、すなわち、最大振幅になるときに、絶縁物に対するストレスが最大になるので、シンチレーションが発生しやすくなる。そして、交流電圧が最大振幅になるのは、正のピーク値に対応する90度の位相、及び、負のピーク値に対応する270度の位相のときである。これによれば、絶縁物でシンチレーションが発生したと推定される時刻が、90度又は270度の電圧位相に該当する場合には、当該絶縁物におけるシンチレーション発生の推定が確実になったと言える。
この方法によれば、シンチレーションは、絶縁物に電圧を印加した際に、絶縁性が弱く、放電が起きやすい箇所で発生する現象であるので、物体に加えたストレスと、そのストレスにより特定の現象が起こる確率との関係を示すワイブル分布(最弱点分布)に従うと考えられる。そして、シンチレーション発生時には、絶縁物の接地線電流が高周波になる。これによれば、絶縁物でシンチレーションが発生したと推定される時刻に、接地線電流の高周波成分の強度を特定し、特定した電流強度及びその発生頻度がワイブル分布に従っている場合には、当該絶縁物におけるシンチレーション発生の推定がさらに確実になったと言える。
図1は、がいしで発生するシンチレーション信号を検出するための装置の構成を示す図である。がいし1は、スイッチギア内に設置される絶縁支持物であり、シンチレーションが発生しているか否かの監視を受ける対象である。母線2は、変電所から延設され、6.6kVの電力を供給する商用系統(商用電源)である。計器用変圧器(Voltage Transformer)3は、がいし1の上部と、母線2との間に設置され、がいし1が母線2から受ける電圧を測定する(以下、VT3という)。計器用変流器(Current Transformer)4は、がいし1の下部と、アースとの間を接続する接地線に設けられ、接地線に流れる電流を測定する(以下、CT4という)。数年に1回の頻度で定期的に行われる検査において、がいし1に電圧ストレスを印加したときに、がいし1の絶縁性が弱く、放電が起きやすい箇所(弱い箇所)でシンチレーションがランダムに発生する。
図2及び図3は、各測定装置による測定値の時間的変化を示す図である。図2(a)は、VT3で測定された、がいし1に印加される電圧を示す。図2(b)及び(c)は、CT4で測定された、がいし1の接地線電流を示し、図2(b)の破線で囲まれた部分を拡大したものが図2(c)である。図3(a)及び(b)は、マイクロホンM1で測定された、がいし1の音響信号を示し、図3(a)の破線で囲まれた部分を拡大したものが図3(b)である。図3(c)は、図3(b)を1msec単位の時間ブロックに区分した際の、各時間ブロックにおける、音響信号の最大値及び最小値の差分(振動幅)を示す。
図4は、シンチレーション発生時にがいし1に印加された電圧のピーク強度分布を示す図である。図4のグラフにおいて、横軸はがいし1の印加電圧のピーク強度(mV)を示し、縦軸は各電圧におけるシンチレーション発生の累積頻度(%)を示す。この縦軸の目盛りは、ピーク強度及び累積頻度の関係がワイブル分布になっているか否かの判定を容易にするために、プロットした点が直線上に載るか否かにより当該判定ができるように設定されている。
図5は、トラッキング劣化の前兆現象であるシンチレーションを検出するための手順を示すフローチャートである。本手順は、電力会社の検査担当者が、がいし1に電圧を印加し、マイクロホンM1及びM2の音響信号、VT3の電圧及びCT4の電流を含む測定値に基づいて、電圧を印加したがいし1でシンチレーションが発生しているか否かを判定するものであり、特に、各がいしで発生する音響信号の処理を優先したフローにより、データ処理を簡単にし、判定精度の向上を図っている。なお、検査担当者による判定は、リアルタイムに各測定値データを表示した画面を参照して行ってもよいし、事後に各測定値データの印刷物を参照して行ってもよい。
スイッチギアは、複数のバンクが並列するように構成され、そのバンクごとにがいし1が内設されている。従って、図5の判定手順を実際にスイッチギアに適用する際には、先に各バンクのシャッタを開放し、各がいし1から音波を直接受けることができるようにマイクロホンM1及びM2を順に設置し、S501及びS502の音響信号に関する判定を行うことにより、シンチレーション発生が推定されるがいし1を特定する。がいし1にシンチレーションが発生していれば、マイクロホンM1及びM2を数分間設置しておくことにより、音響信号のピークを検出できるので、バンク(がいし1)ごとに順番に確認していく。そして、上記の特定したがいし1の電圧をVT3(がいし1ごとの測定装置)で測定し、そのがいし1の接地線電流をCT4(スイッチギアで共通の測定装置)で測定し、それらの測定値に基づいてシンチレーション発生を確認する。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
(2)上記実施の形態では、2個のマイクロホンM1及びM2を用いてがいし1の音波を測定するように記載したが、1個のマイクロホンを用いて、電圧を印加したがいし1から発生する音波を測定し、その音波の振動幅が所定値以上である場合に、シンチレーションが発生していると推定してもよい。これによれば、簡単な装置構成を用いて、がいし1の劣化を早期に検出することができる。
2 母線
3 計器用変圧器
4 計器用変流器
M1、M2 マイクロホン
Claims (3)
- 絶縁物の表面劣化の前兆現象であるシンチレーションの発生を推定する方法であって、
前記絶縁物に電圧を印加するステップと、
前記電圧を印加した絶縁物から同じ方向かつ異なる距離にある2個のマイクロホンを用いて、当該絶縁物から発生する音響信号を測定するステップと、
前記2個のマイクロホンで測定した音響信号の振動幅がともに所定値を超え、かつ、当該音響信号の振動幅が所定値を超えた各時刻の差が前記2個のマイクロホンの間の距離に応じた時間値である場合に、当該絶縁物において前記シンチレーションが発生したと推定するステップと、
を実行することを特徴とするシンチレーション推定方法。 - 請求項1に記載のシンチレーション推定方法であって、
前記絶縁物において前記シンチレーションが発生したと推定するステップにおいて、前記音響信号の振動幅がともに所定値を超え、かつ、前記各時刻の差が前記2個のマイクロホンの間の距離に応じた時間値である場合に、
前記2個のマイクロホンのうち、いずれか一方のマイクロホンと、当該絶縁物との間の距離を取得するステップと、
商用電源により前記絶縁物に印加される電圧を測定するステップと、
前記一方のマイクロホンで測定した音響信号が前記所定値を超えた時刻から、前記取得した距離に応じた時間値を減算した時刻を、前記絶縁物でシンチレーションが発生した時刻として推定するステップと、
を実行し、
前記推定した時刻における前記電圧の位相が略90度又は270度であるときに、前記絶縁物においてシンチレーションが発生したと推定する
ことを特徴とするシンチレーション推定方法。 - 請求項1又は請求項2に記載のシンチレーション推定方法であって、
前記絶縁物において前記シンチレーションが発生したと推定するステップにおいて、前記音響信号の振動幅がともに所定値を超え、かつ、前記各時刻の差が前記2個のマイクロホンの間の距離に応じた時間値である場合に、
前記絶縁物の接地線電流を測定するステップと、
前記推定した時刻における前記接地線電流の高周波成分の強度を特定するステップと、
を実行し、
前記特定した強度及びその発生頻度がワイブル分布に従っている場合に、前記絶縁物においてシンチレーションが発生したと推定する
ことを特徴とするシンチレーション推定方法。
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