JP5718791B2 - 電子写真感光体およびこれを用いた複写機、その感光層形成用ドープ - Google Patents

電子写真感光体およびこれを用いた複写機、その感光層形成用ドープ Download PDF

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Description

本発明は電子写真感光体およびこれを用いた複写機、その感光層形成用ドープに関する。
複写機やプリンターはオフィス機器を中心に、家庭用、業務用を問わず広く普及し、最近ではプリンターと複写機との複合化、あるいは高品位の印刷物への対応など益々その機器形態や利用範囲を拡大している。かかる複写機等を構成する部品の中でも感光体は重要な位置づけにあり、電子情報をその表面上で電荷潜像から実画像へと変換する働きをなす。現在の主流をなす有機感光体(Organic Photo Conductor:OPC)はその構造部材が有機物主体で構成されている。一方、その主要な機能である光電変換と同時に、機械的な強度をも満足しなければならない。有機化合物からなる構造部材にとってその両立は容易ではなく、さらなる技術開発が求められる。
なかでも、有機感光体に配設された感光層は、露光により電荷発生剤を介して電荷を発生させ、これを輸送する上記光電変換を担う重要な部分である。他方、トナーを供給するドラムやクリーナーと回転接触するなどして衝撃を受け、機械的な破損や疲労を受ける部分でもある。ここに適用する材料により、感光体の性能が大きく変化することはもとより、その耐久性に基づく製品寿命に大いに寄与する部分である。
感光層に適用するバインダー樹脂として、特定のポリカーボネートを採用することを提案したものがある(特許文献1、2等参照)。これにより、電子写真感光体にみられる帯電特性の良化や、耐磨耗性などを向上させることができるとされる。また、バインダー樹脂としてセルロース化合物を利用したものがある(特許文献3,4参照)。これにより、機械的特性に好適に対応できるなどとされている。
特開平08−234457号公報 特開2006−292929号公報 特公平01−039097号公報 特開昭58−166353号公報
本発明は、植物起源のセルロース化合物を用いたバインダー樹脂を感光体層に利用することにより高い環境適合性を有し、光電変換性能や耐久性(耐摩耗性)において高い性能を発揮し、本格的な製品ないしその部材の代替を促す電子写真感光体及びこれを用いた複写機、これに用いられるドープの提供を目的とする。また、前記感光層のバインダー樹脂の溶媒溶解性が良く、製造品質のみでなく製造適性の観点でも天然素材への切り替えを促す電子写真感光体およびこれを用いた複写機、これに用いるドープの提供を目的とする。
前記課題は下記の手段により解決された。
〔1〕導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層を構成するバインダー樹脂がセルロース化合物を含有してなり、該セルロース化合物はセルロースに含まれる水酸基の水素原子が炭化水素基R及びアシル基(−CO−R:Rは炭化水素基)で置換された部位を有する化合物である電子写真感光体。
〔2〕前記セルロース化合物は、さらに、その水酸基の水素原子が下記置換基Cで置換された部位を含む〔1〕に記載の電子写真感光体。
[置換基C:−RC2−O−と−CO−RC1とを含む基。RC1は炭化水素基を表す。RC2は炭素数2〜4のアルキレン基を表す。]
〔3〕前記置換基Cが、下記式(3)で表される基である〔2〕に記載の電子写真感光体。
Figure 0005718791
(式中、RC1は炭化水素基を表す。RC2は炭素数が2〜4のアルキレン基を表す。nは1以上の整数を表す。)
〔4〕前記炭化水素基Rが炭素数1〜4のアルキル基である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔5〕前記炭化水素基Rがメチル基又はエチル基である〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔6〕前記Rが、アルキル基又はアリール基である〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔7〕前記RC1が、アルキル基又はアリール基である〔2〕または〔3〕に記載の電子写真感光体。
〔8〕前記Rが、メチル基、エチル基、又はプロピル基である〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔9〕前記RC1が、メチル基、エチル基、又はプロピル基である〔2〕、〔3〕、または〔7〕に記載の電子写真感光体。
〔10〕前記Rが、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基である〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔11〕前記置換基Cを構成するアルキレンオキシ基(−RC2−O−)が下記式(1)又は(2)で表される基である〔2〕、〔3〕、〔7〕、または〔9〕に記載の電子写真感光体。
Figure 0005718791
〔12〕前記セルロース化合物の置換度DS及びDSを下記のとおりとした〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
[炭化水素基Rの置換度DSが1.0<DSである。]
[置換基Bのアシル基(−CO−R)の置換度DSが0.1<DSである。]
〔13〕前記セルロース化合物の置換度DSを下記のとおりとした〔2〕、〔3〕、〔7〕、〔9〕、または〔11〕に記載の電子写真感光体。
[前記置換基Cの置換度DSが0<DSである。]
〔14〕前記セルロース化合物が水に不溶である〔1〕〜〔13〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔15〕前記感光層を構成するバインダー樹脂の植物由来度が25質量%以上である〔1〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔16〕前記導電性基体が筒状の透明支持体であり、その外周に、前記感光層として電荷発生層と電荷輸送層とを具備する〔1〕〜〔15〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔17〕前記感光層が前記バインダー樹脂と電荷発生剤もしくは電荷輸送剤とを含有する〔1〕〜〔16〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔18〕前記感光層中の遊離塩素が10ppm以下であるセルロース樹脂を含有する〔1〕〜〔17〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔19〕前記感光層中の遊離窒素が10ppm以下である〔1〕〜〔18〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
〔20〕〔1〕〜〔19〕のいずれか1項に記載の電子写真感光体を具備する複写機。
〔21〕電子写真感光体において導電性基体上に配設される感光層を形成するドープであって、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が炭化水素基R及びアシル基(−CO−R:Rは炭化水素基)で置換された部位を有するセルロース化合物を含むバインダー樹脂と、これに含有させた電荷発生剤もしくは電荷輸送剤とを有する電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
〔22〕前記セルロース化合物は、さらに、その水酸基の水素原子が下記置換基Cで置換された部位を含む〔21〕に記載の電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
[置換基C:−RC2−O−と−CO−RC1とを含む基。RC1は炭化水素基を表す。RC2は炭素数2〜4のアルキレン基を表す。]
〔23〕前記セルロース化合物の置換度DS及びDSを下記のとおりとした〔21〕または〔22〕に記載の電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
[炭化水素基Rの置換度DSが1.0<DSである。]
[置換基Bのアシル基(−CO−R)の置換度DSが0.1<DSである。]
〔24〕前記セルロース化合物の置換度DSを下記のとおりとした〔22〕に記載の電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
[前記置換基Cの置換度DSが0<DSである。]
本発明の電子写真感光体及びこれを用いた複写機は、植物起源のセルロース化合物を用いたバインダー樹脂をその感光体層に利用することにより高い環境適合性を有し、光電変換性能や耐久性(耐摩耗性)において高い性能を発揮し、本格的な製品ないしその部材の代替を促す。
また、前記感光層のバインダー樹脂の溶媒溶解性が良く、製造品質だけでなく製造適性の観点でも天然素材への切り替えを促進する。
また、本発明のドープは、前記植物起源の化合物を用いたバインダー樹脂を含み、環境配慮の点から好ましく、かつ上記優れた性能を発揮する電子写真感光体の感光層を形成する原料として有用である。
本発明の一実施形態としての電子写真感光体を模式的に示した断面図である。 本発明の一実施形態としての複写機の複写機構を模式的に示した側面図である。 実施例で調製した樹脂C−1のDSCチャートである。
本発明の電子写真感光体は、植物起源のセルロース化合物を含むバインダー樹脂で形成された感光層を有する。以下、本発明についてその好ましい実施態様を中心に詳細に説明する。
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は導電性支持体上に感光層を有していればよく、特にその具体的な構造は限定されない。好ましい実施形態としては、図1に示した感光体10が挙げられる。これは、前記透明支持体1が筒状の支持体であり、その外周に、前記感光層5として電荷発生層3と電荷輸送層4とを具備するものである。この実施形態では、前記筒状支持体1と電荷発生層3との間に下引き層2を配設している。さらに、前記感光層の電荷発生層3及び電荷輸送層4は、電荷発生剤(図示せず)と電荷輸送剤(図示せず)とをそれぞれ含有する。
本発明の感光体においては、上記感光体層の特に電荷輸送層を構成するバインダー樹脂が後述する特定セルロース化合物を含有することが好ましい。これにより、上述した本願発明の顕著な作用効果を得ることができ好ましい。
本発明の電子写真感光体に適用される構造としては、単一層の光導電層を有するものでも、機能分離した積層型のものでもよい。昨今では、露光により電荷を発生する電荷発生層と、電荷を輸送する電荷輸送層との二層からなる積層型の電子写真感光体が主流となっている。また、必要に応じて下引き層2以外にも、保護層(図示せず)、接着層(図示せず)等を設けてもよい。
なお、感光体における上下の方向は特に限定されないが、必要により、支持体1から感光層5に向かう方向を「上」もしくは「天」あるいは筒として言えば「外方」といい、その逆を「下」、「底」、「内方」ということとする。
[特定セルロース化合物]
本発明の成形材料に含まれる特定セルロース化合物は、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が炭化水素基R及びアシル基(−CO−R:Rは炭化水素基)で置換された部位を有する(前記炭化水素基Rを置換基Aと称し、前記アシル基を置換基Bと称する。)。すなわち、本発明における特定セルロース化合物は、セルロースエーテルエステルであり、セルロース{(C10}に含まれる水酸基の水素原子の少なくとも一部が、前記炭化水素基(R)及びアシル基(−CO−R)により置換されている。
より詳細には、本発明における特定セルロース化合物は、下記式(A)で表される繰り返し単位を有する。
Figure 0005718791
上記式(A)において、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基(R)、アシル基(−CO−R)、又はその他の置換基を表す。ただし、R、R、及びRの少なくとも一部が前記炭化水素基を表し、かつR、R、及びRの少なくとも一部が前記アシル基を表す。
本発明における特定セルロース化合物は、上記のようにβ−グルコース環の水酸基の少なくとも一部が炭化水素基、及びアシル基によって、エーテル化、及びエステル化されていることにより、熱可塑性を発現することができ、成形加工に適したものとなる。
さらには、セルロースは完全な植物由来成分であるため、カーボンニュートラルであり、環境に対する負荷を大幅に低減することができる。
なお、本発明にいう「セルロース」とは、多数のグルコースがβ−1,4−グリコシド結合によって結合した高分子化合物であって、セルロースのグルコース環における2位、3位、6位の炭素原子に結合している水酸基が無置換であるものを意味する。また、「セルロースに含まれる水酸基」とは、セルロースのグルコース環における2位、3位、6位の炭素原子に結合している水酸基を指す。
前記特定セルロース化合物は、その全体のいずれかの部分に前記炭化水素基と前記アシル基とを含んでいればよく、同一の繰り返し単位からなるものであってもよいし、複数の種類の繰り返し単位からなるものであってもよい。また、前記特定セルロース化合物は、ひとつの繰り返し単位において前記炭化水素基及びアシル基をすべて含有する必要はない。
より具体的な態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)R、R及びRの少なくとも1つが、前記炭化水素基で置換されている繰り返し単位と、R、R及びRの少なくとも1つが、前記アシル基で置換されている繰り返し単位と、から構成されるセルロース化合物。
(2)ひとつの繰り返し単位のR、R及びRの少なくともいずれか1つが前記炭化水素基で置換され、それとは別の少なくともいずれか1つが前記アシル基で置換されている(すなわち、ひとつの繰り返し単位中に前記炭化水素基及び前記アシル基を有する)同種の繰り返し単位から構成されるセルロース化合物。
(3)置換位置や置換基の種類が異なる繰り返し単位が、ランダムに結合しているセルロース化合物。
また、特定セルロース化合物には、無置換の繰り返し単位(すなわち、前記式(A)において、R、R及びRすべてが水素原子である繰り返し単位)を含んでいてもよい。
また、特定セルロース化合物は、水素原子、前記炭化水素基(R)、及びアシル基(−CO−R)以外のその他の置換基を有していてもよい。
(置換基A,B)
・R
置換基Aの炭化水素基(R)は、脂肪族基、及び芳香族基のいずれでもよい。
が脂肪族基である場合は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
が芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。Rが芳香族基である場合の好ましい炭素数は6〜18であり、より好ましくは6〜14、さらに好ましくは6〜10である。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
炭化水素基は、得られる感光層の耐衝撃性が優れることから、脂肪族基であることが好ましく、メルトフローレート等の成形加工性が優れることから、より好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(低級アルキル基)である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基等が挙げられ、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
・R
置換基Bのアシル基:−CO−Rにおいて、Rは炭化水素基を表す。Rは、脂肪族基、及び芳香族基のいずれでもよい。
が脂肪族基である場合は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
が芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
は、好ましくはアルキル基またはアリール基である。Rは、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基であり、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基)であり、最も好ましくは炭素数1又は2のアルキル基(すなわち、メチル基又はエチル基)である。
また、Rは、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基であることも好ましく、炭素数3〜10の分岐構造を有するアルキル基であることがより好ましく、炭素数7〜9の分岐構造を有するアルキル基であることが更に好ましい。
としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、3−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、及びイソヘプチル基等が挙げられる。好ましくは、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、3−ヘプチル基、又は2−エチルヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、3−ヘプチル基、又は2−エチルヘキシル基である。
(置換基C)
本発明における特定セルロース化合物は、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、前記炭化水素基(R)で置換された基を少なくとも1つと、前記アシル基(−CO−R)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース化合物であるが、更に、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が下記置換基Cで置換された基を少なくとも1つ含むことが耐衝撃性の観点から好ましい。ここで置換基Cは、アルキレンオキシ基:−RC2−O−と、アシル基:−CO−RC1とを含む基である。RC1は炭化水素基を表す。RC2は炭素数が2〜4のアルキレン基を表す。
・RC1
前記置換基Cに含まれるアシル基(−CO−RC1)において、RC1は炭化水素基を表す。RC1が表す炭化水素基としては、前記Rで挙げたものと同様のものを適用することができる。RC1の好ましい範囲も前記Rと同様である。
・RC2
前記置換基Cに含まれるアルキレンオキシ基(−RC2−O−)において、RC2は炭素数が2〜4のアルキレン基を表す。RC2は、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれでもよいが、直鎖状、又は分岐状が好ましく、分岐状がより好ましい。アルキレンオキシ基(−RC2−O−)としては、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基が好ましい。アルキレンオキシ基としては具体的には下記構造が挙げられる。
Figure 0005718791
上記の中でも、得られる樹脂組成物の曲げ弾性率が優れることから、−RC2−O−が分岐状である前記式exC2−2(式(1)ということがある)又は前記式exC2−5(式(2)ということがある)で表される基が好ましい。
前記置換基Cの基は、アルキレンオキシ基を複数含んでいてもよいし、1つだけ含むものであってもよい。好ましくは、前記置換基Cは下記式(3)で表されるものであることが好ましい。
Figure 0005718791
前記式(3)中、RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2〜4のアルキレン基を表す。RC1及びRC2の好ましい範囲は、前記したものと同様である。nは1以上の整数である。nの上限は特に限定されず、アルキレンオキシ基の導入量等により変わるが、例えば10程度である。nは好ましくは1〜5であり、より好ましくは1〜3であり、更に好ましくは1である。RC2が複数存在する場合は各々同じでも異なってもよいが、同じであることが好ましい。
また、本発明における特定セルロース化合物は、アルキレンオキシ基を1つだけ含む前記置換基C(上記式(3)においてnが1である基)と、アルキレンオキシ基を2以上含む前記置換基C(上記式(3)においてnが2以上である基)とを含んでいてもよい。
また、前記置換基Cにおけるアルキレンオキシ基のセルロース化合物に対する結合向きは特に限定されないが、アルキレンオキシ基のアルキレン基部分(RC2)がβ−グルコース環構造側に結合していることが好ましい。
前記炭化水素基(R)、前記アシルオキシ基における(R)、前記置換基CにおけるRC1及びRC2は、さらなる置換基を有していてもよいし無置換でもよいが、無置換であることが好ましい。前記さらなる置換基を有する場合、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(アルキル基部分の炭素数は好ましくは1〜5)、アルケニル基等が挙げられる。ただし、置換基を含む場合でもRC2の炭素数は2〜4である。なお、R、R、及びRC1がアルキル基以外である場合は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5)を置換基として有することもできる。
特に、R及びRC1がさらなる置換基を有する場合、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩構造を実質的に有さないことが好ましい。特定セルロース化合物がカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さないことにより、本発明のバインダー樹脂を水不溶性とすることができ、成形性をさらに向上させることができる。また、特定セルロース化合物がカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有する場合、化合物としての安定性を悪化させることが知られており、特に熱分解を促進することがあるため、これらの基を含まないことが好ましい。
なお、「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さない」とは、本発明における特定セルロース化合物が全くカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有さない場合のみならず、本発明における特定セルロース化合物が水に不溶な範囲で微量のカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有する場合を包含するものとする。例えば、原料であるセルロースにカルボキシル基が含まれる場合があり、これを用いて前記置換基A,B,Cを導入したセルロース化合物はカルボキシル基が含まれる場合があるが、これは「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さないセルロース化合物」に含まれるものとする。
この場合、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩の好ましい含有量としては、セルロース化合物に対して1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
また、本発明における特定セルロース化合物は、水に不溶であることが好ましい。ここで、「水に不溶である」とは、25℃の水100質量部への溶解度が5質量部以下であることとする。
本発明における特定セルロース化合物の具体例としては、
アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルペンチルセルロース、アセチルヘキシルセルロース、アセチルシクロヘキシルセルロース、アセチルフェニルセルロース、アセチルナフチルセルロース、
プロピオニルメチルセルロース、プロピオニルエチルセルロース、プロピオニルプロピルセルロース、プロピオニルブチルセルロース、プロピオニルペンチルセルロース、プロピオニルヘキシルセルロース、プロピオニルシクロヘキシルセルロース、プロピオニルフェニルセルロース、プロピオニルナフチルセルロース、
ブチリルメチルセルロース、ブチリルエチルセルロース、ブチリルプロピルセルロース、ブチリルブチルセルロース、ブチリルペンチルセルロース、ブチリルヘキシルセルロース、ブチリルシクロヘキシルセルロース、ブチリルフェニルセルロース、ブチリルナフチルセルロース、
メチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、エチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピルセルロース−2−エチルヘキサノエート、ブチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、ペンチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、ヘキシルセルロース−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキシルセルロース−2−エチルヘキサノエート、フェニルセルロース−2−エチルヘキサノエート、ナフチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、
アセトキシエチルメチルアセチルセルロース、アセトキシエチルエチルアセチルセルロース、アセトキシエチルプロピルアセチルセルロース、アセトキシエチルブチルアセチルセルロース、アセトキシエチルペンチルアセチルセルロース、アセトキシエチルヘキシルアセチルセルロース、アセトキシエチルシクロヘキシルアセチルセルロース、アセトキシエチルフェニルアセチルセルロース、アセトキシエチルナフチルアセチルセルロース、
アセトキシエチルメチルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルエチルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルプロピルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルブチルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルペンチルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルヘキシルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルシクロヘキシルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルフェニルプロピオニルセルロース、アセトキシエチルナフチルプロピオニルセルロース、
アセトキシエチルメチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルエチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルプロピルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルブチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルペンチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルヘキシルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルシクロヘキシルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルフェニルセルロース−2−エチルヘキサノエート、アセトキシエチルナフチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、
プロピオニルオキシエチルメチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルエチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルプロピルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルブチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルペンチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルヘキシルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルシクロヘキシルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルフェニルアセチルセルロース、プロピオニルオキシエチルナフチルアセチルセルロース、
プロピオニルオキシエチルメチルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルエチルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルプロピルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルブチルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルペンチルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルヘキシルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルシクロヘキシルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルフェニルプロピオニルセルロース、プロピオニルオキシエチルナフチルプロピオニルセルロース、
プロピオニルオキシエチルメチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルエチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルプロピルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルブチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルペンチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルヘキシルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルシクロヘキシルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルフェニルセルロース−2−エチルヘキサノエート、プロピオニルオキシエチルナフチルセルロース−2−エチルヘキサノエート、
アセトキシプロピルメチルアセチルセルロース、アセトキシプロピルエチルアセチルセルロース、アセトキシプロピルプロピルアセチルセルロース、アセトキシプロピルブチルアセチルセルロース、アセトキシプロピルペンチルアセチルセルロース、アセトキシプロピルヘキシルアセチルセルロース、アセトキシプロピルシクロヘキシルアセチルセルロース、アセトキシプロピルフェニルアセチルセルロース、アセトキシプロピルナフチルアセチルセルロース、
プロピオニルオキシプロピルメチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルエチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルプロピルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルブチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルペンチルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルヘキシルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルシクロヘキシルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルフェニルアセチルセルロース、プロピオニルオキシプロピルナフチルアセチルセルロース、
バレロキシプロピルメチルバレロイルセルロース、バレロキシブチルメチルバレロイルセルロースなどが挙げられる。
本発明のバインダー樹脂は、前記特定の特定セルロース化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
(置換度)
本発明における特定セルロース化合物中の置換基Aである炭化水素基:−R、置換基Bであるアシル基:−CO−R、及び置換基Cであるアルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基の置換位置、並びにβ−グルコース環単位当たりの各置換基の数(置換度)は特に限定されない。
例えば、置換基Aの炭化水素基:−Rの置換度DS(繰り返し単位中の置換基Aの数)は、1.0<DSであることが好ましく、1.0<DS<2.5がより好ましい。また、DSは1.1以上であることが好ましい。
置換基Bのアシル基(−CO−R)の置換度DS(繰り返し単位中の置換基Bの数)は、0.1<DSであることが好ましく、0.1<DS<2.0であることがより好ましい。
置換基Cのアルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基の置換度DS(繰り返し単位中の置換基Cの数)は、0<DSであることが好ましく、0<DS<1.0であることがより好ましい。0<DSであることにより、セルロース化合物の溶融開始温度を低くできるので、熱成形をより容易に行うことができる。
上記のような範囲の置換度とすることにより、機械強度及び成形性等を向上させることができる。
また、セルロース化合物中に存在する水酸基の数も特に限定されない。水素原子の置換度DS(繰り返し単位中に含まれる水酸基数)は0〜1.5の範囲とすることができ、好ましくは0〜0.6とすればよい。DSを0.6以下とすることにより、バインダー樹脂の流動性を向上させたり、熱分解の加速・成形時のバインダー樹脂の吸水による発泡等を抑制させたりできる。
また、本発明におけるセルロース化合物は、置換基Aの炭化水素基、置換基Bのアシル基、及び置換基Cのアルキレンオキシ基とアシル基とを含む基以外の置換基を有してもよい。有してもよい置換基の例としては、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシプロポキシプロピル基、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基、ヒドロキシプロポキシプロポキシプロピル基が挙げられる。
よって、セルロース化合物が有するすべての置換基の各置換度の総和は3であるが、(DS+DS+DS+DS)は3以下となる。
本発明における特定セルロース化合物は、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、前記置換基Aで置換された基を少なくとも1つ、及び前記置換基Bで置換された基を少なくとも1つ含むセルロース化合物であるが、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が置換される場合は、成形性の観点から、前記置換基A及び前記置換基Bのみで置換されているか、又は前記置換基A、前記置換基B、及び前記置換基Cのみで置換されている場合が好ましい。すなわち本発明における特定セルロース化合物は、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が前記置換基A、前記置換基B、及び前記置換基C以外の基により置換されていないことが好ましい。
(分子量等)
本発明における特定セルロース化合物の分子量は、数平均分子量(Mn)が5×10〜1000×10の範囲が好ましく、10×10〜500×10の範囲がさらに好ましく、10×10〜200×10の範囲が最も好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、7×10〜10000×10の範囲が好ましく、15×10〜5000×10の範囲がさらに好ましく、100×10〜3000×10の範囲が最も好ましい。この範囲の平均分子量とすることにより、成形体の成形性、力学強度等を向上させることができる。
分子量分布(MWD)は1.1〜10.0の範囲が好ましく、1.5〜8.0の範囲がさらに好ましい。この範囲の分子量分布とすることにより、成形性等を向上させることができる。
本発明における、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
ガラス転移温度(Tg)は限定的でないが、好ましくは60℃以上、より好ましくは80〜400℃、更に好ましくは100〜350℃である。ガラス転移温度がこの範囲であることにより、ポリエステル系重合体は、特に耐熱性に優れ、電子写真感光体材料等に好適に用いることができる。なお、前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、所定の温度範囲について、窒素気流下に昇温速度10℃/min.の条件で測定される。本明細書では特に断らない限り、後記実施例の項で示した条件で測定した値を言う。
[特定セルロース化合物の製造方法]
本発明における特定セルロース化合物の製造方法は特に限定されず、セルロースを原料とし、セルロースに対しエーテル化及びエステル化することにより製造することができる。セルロースの原料としては限定的でなく、例えば、綿、リンター、パルプ等が挙げられる。
前記置換基Aの炭化水素基:−R、及び置換基Bのアシル基:−CO−R(Rは炭化水素基を表す。)を有するセルロース化合物の好ましい製造方法の態様は、セルロースエーテルに、塩基存在下、酸クロリド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化する工程を含むものである。
前記セルロースエーテルとしては、例えば、セルロースに含まれるβ−グルコース環の2位、3位、及び6位の水酸基の水素原子の少なくとも一部が、炭化水素基に置換されたものを用いることができ、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、アリルセルロース、ベンジルセルロース等が挙げられる。
前記置換基Aの炭化水素基:−R、置換基Bのアシル基:−CO−R(Rは炭化水素基を表す。)、及び置換基Cのアルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基(RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2〜4のアルキレン基を表す。)を有するセルロース化合物の好ましい製造方法の態様は、炭化水素基と、ヒドロキシエチル基を有するヒドロキシエチルセルロースエーテル又はヒドロキシプロピル基とを有するヒドロキシプロピルセルロースエーテルに酸クロライド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化(アシル化)する工程を含む方法によって行うものである。
また、別の態様として、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテルにプロピレンオキサイド等によりエーテル化するか、またはセルロースにメチルクロライド、エチルクロライド等のアルキルクロライド/炭素数3のアルキレンオキサイド等を作用させた後、さらに酸クロライド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化する工程を含む方法も挙げられる。
酸クロライドを反応させる方法としては、例えばCellulose 10;283−296,2003に記載の方法を用いることができる。
炭化水素基とヒドロキシエチル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルアリルセルロース、ヒドロキシエチルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースである。
炭化水素基とヒドロキシプロピル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアリルセルロース、ヒドロキシプロピルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースである。
酸クロリドとしては、前記置換基Bのアシル基、及び置換基Cに含まれるアシル基に対応したカルボン酸クロライドを使用することができる。カルボン酸クロリドとしては、例えば、アセチルクロライド、プロピオニルクロライド、ブチリルクロリド、イソブチリルクロリド、ペンタノイルクロリド、2−メチルブタノイルクロリド、3−メチルブタノイルクロリド、ピバロイルクロリド、ヘキサノイルクロリド、2−メチルペンタノイルクロリド、3−メチルペンタノイルクロリド、4−メチルペンタノイルクロリド、2,2−ジメチルブタノイルクロリド、2,3−ジメチルブタノイルクロリド、3,3−ジメチルブタノイルクロリド、2−エチルブタノイルクロリド、ヘプタノイルクロリド、2−メチルヘキサノイルクロリド、3−メチルヘキサノイルクロリド、4−メチルヘキサノイルクロリド、5−メチルヘキサノイルクロリド、2,2−ジメチルペンタノイルクロリド、2,3−ジメチルペンタノイルクロリド、3,3−ジメチルペンタノイルクロリド、2−エチルペンタノイルクロリド、シクロヘキサノイルクロリド、オクタノイルクロリド、2−メチルヘプタノイルクロリド、3−メチルヘプタノイルクロリド、4−メチルヘプタノイルクロリド、5−メチルヘプタノイルクロリド、6−メチルヘプタノイルクロリド、2,2−ジメチルヘキサノイルクロリド、2,3−ジメチルヘキサノイルクロリド、3,3−ジメチルヘキサノイルクロリド、2−エチルヘキサノイルクロリド、2−プロピルペンタノイルクロリド、ノナノイルクロリド、2−メチルオクタノイルクロリド、3−メチルオクタノイルクロリド、4−メチルオクタノイルクロリド、5−メチルオクタノイルクロリド、6−メチルオクタノイルクロリド、2,2−ジメチルヘプタノイルクロリド、2,3−ジメチルヘプタノイルクロリド、3,3−ジメチルヘプタノイルクロリド、2−エチルヘプタノイルクロリド、2−プロピルヘキサノイルクロリド、2−ブチルペンタノイルクロリド、デカノイルクロリド、2−メチルノナノイルクロリド、3−メチルノナノイルクロリド、4−メチルノナノイルクロリド、5−メチルノナノイルクロリド、6−メチルノナノイルクロリド、7−メチルノナノイルクロリド、2,2−ジメチルオクタノイルクロリド、2,3−ジメチルオクタノイルクロリド、3,3−ジメチルオクタノイルクロリド、2−エチルオクタノイルクロリド、2−プロピルヘプタノイルクロリド、2−ブチルヘキサノイルクロリド等が挙げられる。
酸無水物としては、例えば前記置換基Bのアシル基、及び置換基Cに含まれるアシル基に対応したカルボン酸無水物を使用することができる。このようなカルボン酸無水物としては、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、ヘキサン酸無水物、ヘプタン酸無水物、オクタン酸無水物、2−エチルヘキサン酸無水物、ノナン酸無水物等が挙げられる。
なお、前述したとおり、本発明における特定セルロース化合物は置換基としてカルボン酸を有さないことが好ましいため、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸等、セルロースと反応させてカルボキシル基が生じる化合物を用いないことが好ましい。
そのほかの具体的な製造条件等は、常法に従うことができる。例えば、「セルロースの事典」131頁〜164頁(朝倉書店、2000年)等に記載の方法を参考にすることができる。
[感光体の構成部材]
(支持体)
本発明の電子写真感光体に用いることができる導電性支持体1(図1参照)として、は、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル等の金属材料や、又、表面にアルミニウム、パラジウム、酸化スズ、酸化インジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、フェノール樹脂、紙等が挙げられる。
(電荷発生層)
本発明の電子写真感光体における電荷発生層は、たとえば浸漬法、スプレー法、塗布などそれ自体公知の方法により、導電性支持体上に形成することができる。電荷発生剤としては、例えば、アゾキシベンゼン系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンズイミダゾール系、多環式キノリン系、インジゴイド系、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系、メチン系等の有機顔料が使用できる。これらの電荷発生剤は、その微粒子をポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、各種セルロース等のバインダー樹脂に分散させた形で使用される。
(電荷輸送層)
本発明の電子写真感光体における電荷輸送層4は、電荷発生層上に、たとえば浸漬法、スプレー法、塗布など公知の方法により、前記セルロース樹脂を含む樹脂をバインダー樹脂として、電荷輸送剤を分散させることにより形成されることが好ましい。電荷輸送剤としては、例えば、ポリテトラシアノエチレン;2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン系化合物;ジニトロアントラセン等のニトロ化合物;無水コハク酸;無水マレイン酸;ジブロモ無水マレイン酸;トリフェニルメタン系化合物;2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物;ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物;1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物;4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のアミン誘導体;1、1ービス(4−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン等の共役不飽和化合物;4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン系化合物;インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、ピラゾリン系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物;縮合多環式化合物等が挙げられる。上記電荷輸送剤は単独で使用しても、複数種併用してもよい。
(成形方法等)
前記バインダー樹脂は、湿式成形で容易に成形可能である。湿式成形で成形された電子写真感光体が十分な膜強度を得るためには極限粘度が0.30〜2.0dl/gであることが好ましく、さらに成膜性を重視した場合、0.3〜1.5dl/gであることが好ましい。
電荷発生層及び電荷輸送層は、上記の電荷発生剤、又は、電荷輸送剤を、それぞれバインダー樹脂と、適当な溶媒に溶解させ、その溶液を浸漬塗布法やスプレー法等により塗布し、乾燥させることにより形成できる。
このような溶媒は、ハロゲン系有機溶媒と非ハロゲン系溶媒の2種類に大別できるが、一般的に可燃性が少ないハロゲン系溶媒が多用される。しかしながら、近年、安全性や環境保全の観点から、非ハロゲン系溶媒の使用の比率が増してきており非ハロゲン系溶媒への溶解性および溶液安定性が必要とされており、前記バインダー樹脂は、ハロゲン系溶媒は、多くの非ハロゲン系溶媒に良好に溶解することが好ましい。
使用される非ハロゲン系溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、エチルセロソルブ等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルホルムアミド等が挙げられる。またハロゲン系溶媒としては塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられ、これらの溶媒は非ハロゲン、ハロゲンを問わず単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用し混合用溶媒として使用してもよい。
電荷発生剤とバインダー樹脂の混合比(質量基準)は、10:1〜1:20の範囲内が好ましい。この電荷発生層の厚さは、一般には0.01〜20μm、好ましくは0.1〜2μmが好適である。また電荷輸送剤とバインダー樹脂との混合比(質量基準)は、10:1〜1:10の範囲内が好ましい。この電荷輸送層の厚さは、一般には2〜100μm、好ましくは5〜30μmが好適である。
本発明において、前記特定セルロース化合物は、非ハロゲン系有機溶媒に5%(w/v)以上溶解することが好ましく、10%以上溶解することがより好ましく、12%以上溶解することが特に好ましい。このように、非ハロゲン系有機溶媒への溶解性が高いことで、感光層の成形性に優れるため好ましい。上限は特に限定されない。なお、上記の溶解度は特に断らない限り、20℃で測定した値を言う。
また、本発明において感光層は遊離塩素が10ppm以下に抑えられていることが好ましい。さらに、本発明において感光層は遊離窒素が10ppm以下に抑えられていることが好ましい。従来のポリカーボネートにおいてはその合成段階で用いられる触媒系等から、遊離塩素や遊離窒素が不可避的に混入する。これらは、電子写真感光体としたときに、性能や寿命に影響を与え、場合によりその低下を引き起こす原因となることがある(特開07−84377号公報参照)。本発明によれば、そのような触媒系等を用いることなくバインダー樹脂を調製することができるため、ポリカーボネートのような形での不純物の混入はなく、感光層の性能低下を効果的に抑制ないし防止することができる。前記遊離塩素及び遊離窒素の下限値は特にないが、0.01ppm以上でのごく微量の含有は許容されうる。
[複写機]
本発明の複写機の構成は特に限定されないが、図2に示した機構をもつものであることが好ましい。本実施形態の複写機は、上記実施形態に係る電子写真感光体10を具備する。なお、同図に示した構成は模式的なものであり、各部材の寸法や位置関係が同図のものに限定して解釈されるものではない。この電子写真法は典型的には下記のような装置構成及びプロセスで行われる(図1参照)。まず、光導電性物質を利用した感光体(潜像保持体)10の表面を帯電手段58により帯電し、そこに露光Lを施して電気的に潜像を形成する。ここで形成された潜像に、トナー供給室52に格納されたドラム53からトナーを付与し、トナー像を形成する。このとき、トナー55は上記感光体とは逆の電荷に帯電されている。その後、このトナー像を、必要により中間転写体(図示せず)を介して、紙54等の被転写体表面に転写する。この転写画像56を、加熱、加圧、溶剤蒸気等により定着することで所望の画像を得ることができる。上記の感光体表面に残ったトナーは、必要に応じてクリーナー57によりクリーニングし、再びトナー像の現像に利用される。さらに、感光体は次の複写に備えるため除電器59により除電される。
上記複写機の動作において、本発明の電子写真感光体は、帯電手段58、露光L、除電手段59による処理に対し、優れた光電変換特性と潜像保持性とを示す。しかも、ドラム53、クリーナー57等により摩擦衝撃に対しては、高い耐磨耗性を示すという優れた効果を発揮する。
(合成例)
<アセトキシプロピルメチルアセチルセルロース(C−1)の合成>
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコにヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)60g、N,N−ジメチルアセトアミド1260mLを量り取り、室温で攪拌した。反応系が透明になり完溶したことを確認した後、アセチルクロライド80mLをゆっくりと滴下し、系の温度を80〜90℃に昇温した。このまま6時間攪拌した後、反応系の温度を室温まで冷却した。反応溶液を水10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(C−1)(アセトキシプロピルメチルアセチルセルロース)を白色粉体として得た。なお、このセルロース誘導体C−1のTgは126.8℃であった。このDSCチャートを図3に示している。
<アセトキシエチルメチルアセチルセルロース(C−2)、メチルアセチルセルロース(C−3)、エチルアセチルセルロース(C−4)の合成>
前記セルロース誘導体C−1におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100:信越化学製)をヒドロキシエチルメチルセルロース(商品名マーポローズME−250T:松本油脂製)、メチルセルロース(商品名マーポローズM−4000:松本油脂製株式会社製)、エチルセルロース(商品名エトセル300CP:ダウケミカル製)に変更した以外はC−1と同様にしてアセトキシエチルメチルアセチルセルロース(C−2)、メチルアセチルセルロース(C−3)、エチルアセチルセルロース(C−4)を得た。
<メチルセルロース−2−エチルヘキサノエート(C−5)の合成>
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコにメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)40g、ピリジン750mLを量り取り、室温で攪拌した。ここに水冷下、2−エチルヘキサノイルクロリド100mLをゆっくりと滴下し、更に60℃で8時間攪拌した。反応後、室温に戻し、氷冷下、メタノール100mLを加えてクエンチした。反応溶液を水10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノール溶媒で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することによりメチルセルロース−2−エチルヘキサノエート(C−5)を得た。
<バレロキシプロピルメチルバレロイルセルロース(C−6)の合成>
前記セルロース誘導体C−5におけるメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)に変えて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)、及び2−エチルヘキサノイルクロリドに変えてバレロイルクロライドを用いた以外、C−5と同様にして、バレロキシプロピルメチルバレロイルセルロース(C−6)を得た。
<バレロキシブチルメチルバレロイルセルロース(C−7)の合成>
前記セルロース誘導体C−6におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100:信越化学製)をヒドロキシブチルメチルセルロースを用いた以外、C−6と同様にしてバレロキシブチルメチルバレロイルセルロース(C−7)を得た。
<セルロースアセテートベンゾエート(C−c1)の合成>
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコにアセチルセルロース(アルドリッチ製)60g、ピリジン1Lを量り取り、50℃で攪拌した。反応系が透明になり完溶したことを確認した後、ベンゾイルクロライド45mLをゆっくりと滴下し、このまま6時間攪拌した後、反応系の温度を室温まで冷却した。反応溶液をメタノール10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(C−c1)を白色粉体として得た。
<セルロースアセテートブチレートプロピオレート(C−c2)、セルロースアセテートベンゾエートプロピオレート(C−c3)の合成>
前記セルロース誘導体C−c1におけるベンゾイルクロライドに変えて、ブチリルクロライド/プロピオニルクロライドの混合物、及びベンゾイルクロライド/プロピオニルクロライドの混合物を用いた以外、C−c1と同様にして、セルロースアセテートブチレートプロピオレート(C−c2)、セルロースアセテートベンゾエートプロピオレート(C−c3)を得た。
<置換度等>
以上で得られたセルロース誘導体が有する炭化水素基の種類及び置換度、アルキレンオキシ基の種類及び置換度、アシル基の種類及び置換度は、Cellulose Communication 6,73−79(1999)に記載の方法を利用して、1H−NMRにより、観測及び決定した。
<セルロース誘導体の分子量測定>
得られたセルロース誘導体について、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、を測定した。これらの測定方法は以下の通りである。
[分子量及び分子量分布]
重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いた。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めた。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用した。
重量平均分子量(Mw)及び置換度をまとめて表Aに示す。
[Tgの測定]
ガラス転移点は、示差走査熱量計(SIIテクノロジー社製、DSC6200)を用いて下記の条件で測定した。測定は同一の試料で二回実施し、二回目の測定結果を採用した。
・測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
・昇温速度:10℃/min
・測定開始温度:0℃
・測定終了温度:200℃
・試料パン:アルミニウム製パン
・測定試料の質量:5mg
・Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度をTgとした。
Figure 0005718791
[表中の記載に関する説明]
Mw:重量平均分子量
:炭化水素基(置換基A)
DS:炭化水素基R(置換基A)の置換度
−RC2−O−:アルキレンオキシ基部(置換基C)
DS:アシル基(置換基B)の置換度
DS:アルキレンオキシ基含有基(置換基C)の置換度
DS:水酸基の置換度
[置換基の名称]
Me:メチル基
EO:エチレンオキシ基
PO:プロピレンオキシ基
BO:ブチレンオキシ基
At:アセチル基
EH:2−エチルヘキサノイル基
Vl:バレロイル基
Bz:ベンゾイル基
Pn:プロピオニル基
Br:ブチリル基
(実施例1・比較例1)
(樹脂溶解性の評価)
密閉式サンプル瓶にテトラヒドロフラン80部及びセルロース誘導体(C−1)20部を加え、溶解性を確認した(試験温度:20℃)。次にテトラヒドロフランをトルエンに変更して、溶解性を確認した(試験101)。結果を表1に示す。
試験101におけるセルロース誘導体(C−1)の代わりに表中に記載のセルロース誘導体を用いた以外は試験101と同様に行った(試験102〜107)。
結果を表1に示す。
なお、試験c11〜c15は比較例である。試験c14、c15は、それぞれ、セルロース誘導体(C−1)の代わりにR−1(ポリ乳酸;レイシアH−140;三井化学社製)、R−2(ポリカーボネート;パンライトTS−2040;帝人化成社製)を用いた以外は実施例1と同様に行ったものである。
Figure 0005718791
A:目視で溶解残留物が確認できなかったもの
B:目視で溶解残留物が確認できたもの
表から、本願の樹脂はテトラヒドロフラン及びトルエンに対する溶解性が高いことがわかる。比較例のポリ乳酸(例c14、樹脂R−1)は植物由来度が高いが、溶媒溶解性が悪いため、電子写真感光体には好ましくない。
(電子写真感光体特性の評価)
アルミニウムを厚さ約50nm蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、τ型銅フタロシアニン10部とフェノキシ樹脂5部、ポリビニルブチラール樹脂5部、ジメトキシエタン100部とを混合し、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行った塗布液を用いて塗布し、乾燥し、厚さ約0.5μmの電荷発生層を設けた。次に、4−(N,N−ジエチルアミノ)ベンズアルデヒド−N,N−ジフェニルヒドラゾンを50部、セルロース誘導体(C−1)を50部、テトラヒドロフランを350部、使用した塗布液を作製し、上記電荷発生層上に塗布し、風乾後100℃、8時間乾燥し、厚さ約20μmの電荷輸送層を設けて、積層型電子写真感光体を作製した(試験体201)。
この電子写真感光体の評価を、(株) 川口電気製作所製EPA−8100静電気帯電試験装置により、帯電特性を調べた。また耐摩耗性については、スガ試験機株式会社製テーバ摩耗試験機を用いて削れ量を測定した。
例示化合物(C−1)の代わりに表中に記載の各例示化合物を用いた以外は試験体201と同様に各電子写真感光体の試験体を作製した。これらの結果を表2に示す。
Figure 0005718791
表から分かるように、本発明の電子写真感光体は、残留電位、耐摩耗性共に良好であることから、電子写真画像の安定化や感光体寿命延長が期待できる。また本発明の電子写真感光体は、植物由来のバインダー樹脂を用いており、環境配慮の観点からも好ましい。
1 金属基体
2 下引き層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 感光層
10 電子写真感光体
51 感光体(潜像保持体)
52 トナー供給室
53 ドラム
54 紙
55 トナー
56 転写画像
57 クリーナー
58 帯電手段
59 除電器
L 露光

Claims (24)

  1. 導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体であって、該感光層を構成するバインダー樹脂がセルロース化合物を含有してなり、該セルロース化合物はセルロースに含まれる水酸基の水素原子が炭化水素基R及びアシル基(−CO−R:Rは炭化水素基)で置換された部位を有する化合物である電子写真感光体。
  2. 前記セルロース化合物は、さらに、その水酸基の水素原子が下記置換基Cで置換された部位を含む請求項1に記載の電子写真感光体。
    [置換基C:−RC2−O−と−CO−RC1とを含む基。RC1は炭化水素基を表す。RC2は炭素数2〜4のアルキレン基を表す。]
  3. 前記置換基Cが、下記式(3)で表される基である請求項2に記載の電子写真感光体。
    Figure 0005718791
    (式中、RC1は炭化水素基を表す。RC2は炭素数が2〜4のアルキレン基を表す。nは1以上の整数を表す。)
  4. 前記炭化水素基Rが炭素数1〜4のアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記炭化水素基Rがメチル基又はエチル基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記R が、アルキル基又はアリール基である請求項〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  7. 前記R C1 が、アルキル基又はアリール基である請求項2または3に記載の電子写真感光体。
  8. 前記R が、メチル基、エチル基、又はプロピル基である請求項〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  9. 前記R C1 が、メチル基、エチル基、又はプロピル基である請求項2、3、または7に記載の電子写真感光体。
  10. 前記Rが、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基である請求項1〜のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  11. 前記置換基Cを構成するアルキレンオキシ基(−RC2−O−)が下記式(1)又は(2)で表される基である請求項2、3、7、または9に記載の電子写真感光体。
    Figure 0005718791
  12. 前記セルロース化合物の置換度DS及びDS を下記のとおりとした請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
    [炭化水素基Rの置換度DSが1.0<DSである。]
    [置換基Bのアシル基(−CO−R)の置換度DSが0.1<DSである。]
  13. 前記セルロース化合物の置換度DSを下記のとおりとした請求項2、3、7、9、または11に記載の電子写真感光体。
    [前記置換基Cの置換度DSが0<DSである。]
  14. 前記セルロース化合物が水に不溶である請求項1〜13のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  15. 前記感光層を構成するバインダー樹脂の植物由来度が25質量%以上である請求項1〜14のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  16. 前記導電性基体が筒状の透明支持体であり、その外周に、前記感光層として電荷発生層と電荷輸送層とを具備する請求項1〜15のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  17. 前記感光層が前記バインダー樹脂と電荷発生剤もしくは電荷輸送剤とを含有する請求項1〜16のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  18. 前記感光層中の遊離塩素が10ppm以下であるセルロース樹脂を含有する請求項1〜17のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  19. 前記感光層中の遊離窒素が10ppm以下である請求項1〜18のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  20. 請求項1〜19のいずれか1項に記載の電子写真感光体を具備する複写機。
  21. 電子写真感光体において導電性基体上に配設される感光層を形成するドープであって、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が炭化水素基R及びアシル基(−CO−R:Rは炭化水素基)で置換された部位を有するセルロース化合物を含むバインダー樹脂と、これに含有させた電荷発生剤もしくは電荷輸送剤とを有する電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
  22. 前記セルロース化合物は、さらに、その水酸基の水素原子が下記置換基Cで置換された部位を含む請求項21に記載の電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
    [置換基C:−R C2 −O−と−CO−R C1 とを含む基。R C1 は炭化水素基を表す。R C2 は炭素数2〜4のアルキレン基を表す。]
  23. 前記セルロース化合物の置換度DS 及びDS を下記のとおりとした請求項21または22に記載の電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
    [炭化水素基R の置換度DS が1.0<DS である。]
    [置換基Bのアシル基(−CO−R )の置換度DS が0.1<DS である。]
  24. 前記セルロース化合物の置換度DS を下記のとおりとした請求項22に記載の電子写真感光体の感光層形成用ドープ。
    [前記置換基Cの置換度DS が0<DS である。]
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