JP5449923B2 - 電子写真感光体 - Google Patents

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Description

本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に使用される電子写真感光体に関する。
上記の画像形成装置では、当該装置に用いられる光源の波長領域に感度を有する種々の感光体が使用されている。その1つはセレンなどの無機材料を感光層に用いた無機感光体であり、他は有機材料を感光層に用いた有機感光体である。有機感光体は、無機感光体に比べて製造が容易であり、かつ電荷発生剤、電荷輸送剤(電子輸送剤・正孔輸送剤)、バインダ樹脂などの材料選択肢が多様で、機能設計の自由度が高いことから、近年、多く使用されるようになっている。
有機感光体には、感光層が電荷発生剤を含有した電荷発生層と電荷輸送剤を含有した電荷輸送層との積層構造からなる、いわゆる積層型感光体と、感光層が電荷発生剤と電荷輸送剤とを含有した単一層である、いわゆる単層型感光体とがある。
これらの有機感光体に電荷輸送剤として含有される電子輸送剤には、一般に、3,5−ジメチル−3’,5’−ジt−ブチルジフェノキノンが使用される。しかしながら、この電子輸送剤を含有した感光体では十分な光感度が得られない。
そこで、特許文献1には、電子写真感光体の残留電位を低くして光感度を向上させることができ、特に単層型感光体の電子輸送剤として好適に使用できる化合物として、例えば、下記化学式(E−1)で表されるN,N’−ビス(2−メチル−6−エチルフェニル)ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド等のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体が提案されている。化学式(E−1)において、 “Me”はメチル基を表し、“Et”はエチル基を表す。
特開平11−343291
しかしながら、特許文献1の化合物は含有部数を多くした場合に、結晶化が生じ、光感度が不十分となるという問題があった。
すなわち、特許文献1に記載された化学式(E−1)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体は、ナフタレン環の短軸方向両側にイミド環をそれぞれ配置することで、3,5−ジメチル−3’,5’−ジt−ブチルジフェノキノンよりも分子の長軸方向および短軸方向の両方においてπ電子共役平面を広げて、光感度を向上させている。しかし、このπ電子共役平面の拡張に伴い有機溶媒への溶解性が低下し、感光層での結晶化が生じやすくなっている。
このため、特許文献1に記載された化学式(E−1)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体を電子輸送剤として用いると、後述する比較例に示す通り、同誘導体の配合量(含有部数)が多いときには、同誘導体が感光層から析出して、光感度が不十分となってしまい、他方、同誘導体の配合量(含有部数)が少ないときには、同誘導体のバインダ樹脂等に対する相溶性は確保されるものの、同誘導体の感光層中の濃度が低いため光感度が不十分となっていた。そのため、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体を電子輸送剤として用いた場合には、配合量の多寡に関わらず光感度を200V以下に下げることが困難であった。
本発明の課題は、高い感度を有する電子写真感光体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、従来のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体と比べて、より分子の中心に近い位置にイミド環を配置して、単位面積当たりの電子受容性が高いπ電子共役平面を形成するとともに、各イミド環の窒素原子に結合した官能基がπ電子共役平面に対して屈曲させることにより、電子写真感光体の製造に際して電子輸送剤のバインダ樹脂等に対する溶解性を十分に確保し、電子輸送剤の感光層への析出を抑制しつつ、電子写真感光体の光感度をさらに向上させることができるであろうとの考えの下に、下記一般式(1)で示す特定の構造を有するトリイミド誘導体を電子輸送剤として使用することにより、従来のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体と比べて感光層への析出を格段に抑制でき、且つ、電子写真感光体の感度を向上させることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の電子写真感光体は、導電性基体と感光層とを備えた電子写真感光体であって、前記感光層が、下記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を含有することを特徴とする。
(一般式(1)中、nは0〜2の整数を表し、Rは水素原子、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数1〜12のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数6〜22のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜22のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボキシレート基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基およびアリール基の少なくとも1つを表す。)
感光層が含有する一般式(1)で表されるトリイミド誘導体は、中心に位置するベンゼン環の外側に電子受容性の優れたイミド環を3つ対称的に配置することによって、3つのイミド環の窒素原子を頂点とする正三角形に近い形状であって、従来のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体と比べて単位面積当たりの電子受容性が高いπ電子共役平面を形成している。このため、そのπ電子共役平面は従来のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体の長方形のπ電子共役平面と面積が同程度かやや大きいに過ぎないものの、低電界での電子輸送性をより高くすることができ、光感度をさらに向上させていると考えられる。また、このトリイミド誘導体では、各イミド環の窒素原子にπ電子共役平面に対して屈曲できる官能基Rが結合している。すなわち、このトリイミド誘導体は略正三角形状のπ電子共役平面とその各頂点で結合している3つの官能基Rとが屈曲するので、有機溶媒中ではこの誘導体同士が不規則に分布しやすい(すなわち、一方向に整列しにくい)構造となっており、有機溶媒への溶解性を高め、感光層での析出を抑制していると考えられる。
前記電子写真感光体において、前記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体が下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
(一般式(2)中、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数1〜8のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数6〜20のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜10のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、カルボキシレート基、アリール基およびアルコキシ基の少なくとも1つを表す。)
前記電子写真感光体において、前記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体が下記一般式(3)で表される化合物であることも好ましい。
(一般式(3)中、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜10のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数9〜20のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数9〜20のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、カルボキシレート基、アリール基およびアルコキシ基の少なくとも1つを表す。)
前記電子写真感光体において、前記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体が下記一般式(4)で表される化合物であることも好ましい。
(一般式(3)中、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数4〜12のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数10〜22のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数10〜22のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、カルボキシレート基、アリール基およびアルコキシ基の少なくとも1つを表す。)
これら一般式(2)〜(4)で表されるトリイミド誘導体を用いることで、電子写真感光体の光感度はさらに高くなるとともに、感光層への析出がさらに抑制される。
前記電子写真感光体において、前記感光体層が単層型であることが好ましい。単層構造の感光層中に分散している一般式(1)で表されるトリイミド誘導体は、電子および正孔の輸送を阻害したり、感光層中の正孔輸送剤との相互作用を生じたりしないため、光感度がさらに向上した電子写真感光体となる。
本発明の電子写真感光体によれば、感光層が含有する前記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体は、バインダ樹脂等との相溶性に優れ且つ高い電荷移動度を有するので、残留電位を効果的に低下させ、高い光感度を得ることができる。そして、本発明の電子写真感光体を画像形成装置に用いることで、良好な画像を得ることができる。
また、本発明の電子写真感光体において、感光体層を単層型に特定することにより、感光層の構成が簡単で製造が容易になり、皮膜欠陥の発生を抑制でき、しかも光学的特性を向上させることができる。
(a)〜(c)は、単層型感光体の構造を説明するために供する概略断面図である。 (a)〜(f)は、積層型感光体の構造を説明するために供する概略断面図である。
以下、本発明に係る電子写真感光体について詳細に説明する。
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と感光層とを備えた電子写真感光体である。より詳しくは、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に、少なくとも電子輸送剤、電荷発生剤およびバインダ樹脂を含有し、さらに必要に応じて正孔輸送剤を含有した感光層を設けたものである。この感光層には、単層型感光層と積層型感光層とがあるが、本発明には、いずれの感光層も適用可能である。そして、感光層は上記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を含有している。
<電子輸送剤>
本発明の電子写真感光体においては、電子輸送剤として上記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体が用いられる。このトリイミド誘導体について説明する。
上記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体は中心にベンゼン環を備え、このベンゼン環の外側に直接的に、または他のベンゼン環若しくはナフタレン環を介して、3つのイミド環を対称的に配置している。
すなわち、上記一般式(1)において、n=0の場合には、上記一般式(2)で表されるように、中心に位置するベンゼン環の外側に直接的に3つのイミド環を対称的に配置しており、n=1の場合には、上記一般式(3)で表されるように、中心に位置するベンゼン環の外側に他のベンゼン環を介して3つのイミド環を対称的に配置しており、n=2の場合には、上記一般式(4)で表されるように、中心に位置するベンゼン環の外側にナフタレン環を介して3つのイミド環を対称的に配置している。このように、一般式(1)で表されるトリイミド誘導体は、中心に位置するベンゼン環の外側に電子受容性の優れたイミド環を3つ対称的に配置することによって、4つの酸素原子を頂点とする長方形のπ電子共役平面を有する従来のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体と比べて、3つのイミド環の窒素原子を頂点とする正三角形に近い形状であって、単位面積当たりの電子受容性が高いπ電子共役平面を形成している。尚、感光層中への析出を抑制する観点から、一般式(1)において、nの最大値は2であり、nは0または1であることが好ましい。
一般式(1)において、Rは水素原子、1つまたは2つ以上の置換基を有することのある炭素数1〜12のアルキル基、1つまたは2つ以上の置換基を有することのある炭素数6〜22のアリール基、および1つまたは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜22のシクロアルキル基の中から選択される。Rの置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボキシレート基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基およびアリール基の中から少なくとも1つが選択される。一般式(1)で表されるトリイミド誘導体は各イミド環の窒素原子にπ電子共役平面に対して屈曲できる官能基Rが結合し、π電子共役平面の3つの末端部分で分子が屈曲しやすい構造となっているので、分子全体として平面性が崩れやすい。これにより、有機溶媒への溶解性を高め、析出を抑制している。
このように、一般式(1)で表されるトリイミド誘導体は、溶解性が高いので、バインダ樹脂等との相溶性に優れると共に、長い共役結合を有しているので、単位面積当たりの電子受容性が高いπ電子共役平面を形成して、高い電荷移動度を示すと考えられる。
における炭素数1〜12のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、s−ペンチル、t−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル等の基が挙げられる。
における炭素数6〜22アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、ビフェニル、トリル、クメニル、キシリル、アントリル、フェナントリル等の基が挙げられる。
における炭素数3〜22シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロドデシル等の基が挙げられる。
における炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基、および炭素数3〜22のシクロアルキル基はいずれも置換基を少なくとも1つ有していてもよい。置換基としては、有機溶媒への溶解性を妨げない官能基であれば特に限定されない。例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボキシレート基(エステル基)、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、アリール基などが挙げられる。π電子共役平面をさらに拡張して電子写真感光体の感度を向上させる観点から、置換基としてカルボキシレート基、アリール基が好ましい。一方、一般式(1)で表されるトリイミド誘導体の感光層中への析出を抑制させる観点から、置換基としてアルキル基、カルボキシレート基またはカルボキシル基が好ましい。
一般式(3)および一般式(4)と比べてπ電子共役平面が小さい一般式(2)では、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数1〜8のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数6〜20のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜10のシクロアルキル基であり、且つ、Rの置換基はアルキル基、カルボキシレート基、アルール基およびアルコキシ基の中の少なくとも1であることが、電子写真感光体の高い感度の実現と、感光層中への析出の抑制とを両立させる観点から好ましい。Rは直鎖のみの若しくは分岐鎖を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のカルボキシレート基およびフェニル基を置換基として有する炭素数7〜12のアルキル基、または1つ若しくは2つ以上の炭素数1〜3のアルキル基を置換基として有する炭素数7〜10のアリール基であることが特に好ましい。
一般式(2)と比べてπ電子共役平面が大きい一般式(3)では、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜10のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数9〜20のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数9〜20のシクロアルキル基であり、且つ、Rの置換基はアルキル基、カルボキシレート基、アリール基およびアルコキシ基の中の少なくとも1であることが、電子写真感光体の高い感度の実現と、感光層中への析出の抑制とを両立させる観点から好ましい。Rは直鎖のみの若しくは分岐鎖を有する炭素数3〜10のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖のアリール基、または直鎖若しくは分岐鎖のカルボキシレート基であることが特に好ましい。
一般式(2)および一般式(3)と比べてπ電子共役平面が大きい一般式(4)では、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数4〜12のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数10〜22のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数10〜22のシクロアルキル基であり、且つ、Rの置換基はアルキル基、アリール基、カルボニル基およびカルボキシレート基の中の少なくとも1であることが、電子写真感光体の高い感度の実現と、感光層中への析出の抑制とを両立させる観点から好ましい。Rは直鎖のみの若しくは分岐鎖を有する炭素数4〜12のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖のアリール基、または直鎖若しくは分岐鎖のカルボキシレート基であることが特に好ましい。
(合成方法)
一般式(1)で表されるトリイミド誘導体の合成方法を、下記化学反応式(1)〜(3)に基づいて説明する。
(一般式(2)で表されるトリイミド誘導体の合成方法)
一般式(1)で表されるトリイミド誘導体のうち、一般式(2)で表されるトリイミド誘導体は下記反応式(1)によって合成することができる。すなわち、下記反応式(1)に示すように、1モル量の式(A−1)で表される化合物中のベンゼン環に結合した6つのカルボキシル基を、3モル量の式(A−2)で表されるアミンによってイミド化して3つのイミド環を形成させることで、1モル量の一般式(2)で表されるトリイミド誘導体を合成することができる。
(化学反応式(1)の具体例)
一般式(2)で表されるトリイミド誘導体の具体例としては、例えば、下記の化学式(1−1)、(1−2)及び(1−3)で表される化合物が挙げられる。化学式(1−1)、(1−2)及び(1−3)において、“n-Bu”はn−ブチル基を表し、“Me”はメチル基を表し、“Et”はエチル基を表し、“Ph”はフェニル基を表す。
化学式(1−1)で表されるトリイミド誘導体は、一般式(2)において、Rがn−ブチル(すなわち炭素数4のアルキル基)であるトリイミド誘導体を示し、その分子量は453である。化学式(1−2)で表されるトリイミド誘導体は、一般式(2)において、Rがメチル基およびエチル基(すなわち2つのアルキル基)を置換基として有するフェニル基(すなわち炭素数6のアリール基)であるトリイミド誘導体を示し、その分子量は640である。化学式(1−3)で表されるトリイミド誘導体は、一般式(2)において、Rがアセテート基(すなわちカルボキシレート基)およびフェニル基(すなわちアリール基)を置換基として有するメチル基(すなわち炭素数1のアルキル基)であるトリイミド誘導体を示し、その分子量は730である。
(一般式(3)で表されるトリイミド誘導体の合成方法)
一般式(1)で表されるトリイミド誘導体のうち、一般式(3)で表されるトリイミド誘導体は下記反応式(2)によって合成することができる。すなわち、下記反応式(2)に示すように、1モル量の式(B−1)で表される化合物の各末端部に位置するモノブロモメチル基中の臭素原子と、3モル量の式(B−2)で表される不飽和イミド化合物の2つの炭素原子に結合した水素原子とで脱臭化水素反応を行い、モノブロモメチル基中の炭素原子と不飽和イミド化合物中の炭素原子との間で二重結合を生じさせることにより、3つのイミド環を形成させる。これにより、1モル量の一般式(3)で表されるトリイミド誘導体を合成することができる。
(化学反応式(2)の具体例)
一般式(3)で表されるトリイミド誘導体の具体例としては、例えば、下記の化学式(1−4)及び(1−5)で表される化合物が挙げられる。化学式(1−4)及び(1−5)において、“C17”はn−オクチル基を表し、“CHCH(C)C”は2−エチルヘキシル基を表す。
化学式(1−4)で表されるトリイミド誘導体は、一般式(3)において、Rがn−オクチル(すなわち炭素数8のアルキル基)であるトリイミド誘導体を示し、その分子量は772である。化学式(1−5)で表されるトリイミド誘導体は、一般式(3)において、Rがエチル基(すなわち1つのアルキル基)を置換基として有するヘキシル基(すなわち炭素数6のアルキル基)であるトリイミド誘導体を示し、その分子量は772である。
(一般式(4)で表されるトリイミド誘導体の合成方法)
一般式(1)で表されるトリイミド誘導体のうち、一般式(4)で表されるトリイミド誘導体は下記反応式(3)によって合成することができる。すなわち、下記反応式(3)に示すように、1モル量の式(C−1)で表される化合物の各末端部に位置するジブロモメチル基中の2つ臭素原子と、3モル量の式(C−2)で表される不飽和イミド化合物の2つの炭素原子に結合した水素原子とで脱臭化水素反応を行い、ジブロモメチル基中の炭素原子と不飽和イミド化合物中の炭素原子との間で二重結合を生じさせることにより、3つのイミド環を形成させる。これにより、1モル量の一般式(4)で表されるトリイミド誘導体を合成することができる。
(化学反応式(3)の具体例)
一般式(3)で表されるトリイミド誘導体の具体例としては、例えば、下記の化学式(1−6)で表される化合物が挙げられる。化学式(1−6)において、“CHCH(C)C”は2−エチルヘキシル基を表す。
化学式(1−6)で表されるトリイミド誘導体は、一般式(4)において、Rがエチル基(すなわち1つのアルキル基)を置換基として有するヘキシル基(すなわち炭素数6のアルキル基)であるトリイミド誘導体を示し、その分子量は922である。
本発明では、上記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体に加えて、公知の他の電子輸送剤を併用することもできる。一般式(1)で表されるトリイミド誘導体以外の電子輸送剤を含有させたことによる電子写真感光体の光感度の低下を極力抑える観点から、高い電子輸送能を有する電子輸送剤が好ましい。これら他の電子輸送剤としては、例えばジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、チオキサントン誘導体(2,4,8−トリニトロチオキサントン等)、フルオレノン誘導体(3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体等)、アントラセン誘導体、アクリジン誘導体、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸誘導体、無水マレイン酸誘導体、ジブロモ無水マレイン酸誘導体等の、電子受容性を有する化合物が挙げられる。
<電荷発生剤>
前記電荷発生剤としては、例えば下記化学式(x−HPc)で表される無金属フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、α−チタニルフタロシアニン、下記化学式(Y−TiOPc)で表されるY−チタニルフタロシアニン、V−ヒドロキシガリウムフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミニウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料などが挙げられる。中でも無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、α−チタニルフタロシアニン、Y−チタニルフタロシアニン、V−ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。これらの電荷発生剤は単独でまたは2種以上をブレンドして用いてもよい。これにより、所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を得ることができる。
電荷発生剤のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。尚、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えばペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
<バインダ樹脂>
感光層中の各成分を分散させるためのバインダ樹脂としては、従来から感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。前記バインダ樹脂としては、例えばスチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリウレタン、その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化性樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用できるほか、2種以上をブレンドすることもできる。これらのうち、好適なバインダ樹脂は、スチレン系重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート等である。
<正孔輸送剤>
さらに、本発明の電子写真感光体では正孔輸送剤を感光層に含有させてもよい。特に単層型感光体では、感光層中に正孔輸送剤および電子輸送剤が含有される。前記正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えばN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなどのスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなどのピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物や、縮合多環式化合物が挙げられる。これらのうち、ベンジジン誘導体としては、下記化学式(H−1)で表される化合物が好ましい。化学式(H−1)において、“Me”はメチル基を表す。
これら正孔輸送剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いられる。また、ポリビニルカルバゾール等の成膜性を有する正孔輸送剤を用いる場合には、上記バインダ樹脂は必ずしも必要ではない。
<感光層>
本発明の電子写真感光体において、一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を含有する感光層は、導電性基体上に設けられている。感光層の構成は、単層型感光体と積層型感光体とで異なるが、何れの感光体の感光層も、電荷発生剤、電荷輸送剤等の各成分をバインダ樹脂等とともに溶媒中に溶解・分散させ、こうして得られた塗布液を導電基体上に(直接にまたは下引き層を介して)塗布、乾燥することによって形成されるものである。
(単層型)
本発明における単層型感光層は、上記した電子輸送剤、電荷発生剤、バインダ樹脂を同一層に含有した単一の感光層で構成されるものである。例えば図1(a)に示すように、導電性基体12の表面に感光層14を形成した単層型電子写真感光体10がある。この単層型感光層は、層構成が簡単で生産性に優れており、層を形成する際の被膜欠陥を抑制でき、層間の界面が少なく光学的特性を向上できるという利点がある。なお、電荷輸送剤には電子輸送剤と正孔輸送剤とがあり、上記したように、特に単層型感光体においては、電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用するのが好ましい。1つの電子写真感光体を正帯電型及び負帯電型の両方に使用できるからである。
前記単層型感光層の膜厚は5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。単層型感光層においては、バインダ樹脂100質量部に対して電荷発生剤を0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部の割合で、電子輸送剤を5〜100質量部、好ましくは10〜80質量部の割合でそれぞれ含有させるのがよい。また、正孔輸送剤を含有させる場合は、バインダ樹脂100質量部に対して5〜500質量部、好ましくは25〜200質量部の割合で含有させるのがよい。
(積層型)
一方、積層型感光層は、導電性基体上に電荷輸送剤を含有する電荷輸送層と、電荷発生剤を含有する電荷発生層とを積層することで構成される。例えば、図2(a)に示すように、導電性基体12上に電荷発生層24及び電荷輸送層22をこの順に設けた積層型電子写真感光体20や、図2(b)に示すように、導電性基体12上に電荷輸送層22及び電荷発生層24をこの順に設けた積層型電子写真感光体20がある。また、電荷発生剤と共に電荷輸送剤を含有させた光導電層を、電荷輸送層、電荷発生層と組み合わせてもよい。積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸送層などの形成順序と、両層に含有させる電荷輸送剤の種類(電子輸送剤・正孔輸送剤)によって種々の組み合わせが考えられるが、本発明においては、電荷輸送層および光導電層の少なくとも1つに、電子輸送剤として一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を含有させる必要がある。電荷発生層から電荷輸送層への電子の授受をより円滑に行わせるために、電荷発生層にも一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を含有させるのが好ましい。なお、積層型感光体は、電荷発生や電荷輸送といった機能を各層に分離しているので、構成材料の無駄が少なく、感度を向上させ易いという利点を有する。本発明の積層型電子写真感光体は、従来の積層型電子写真感光体に比べて残留電位が大きく低下しており、感度が向上している。
前記電荷発生層の膜厚は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μmであり、電荷輸送層の膜厚は2〜100μm、好ましくは5〜50μmである。積層型感光層のうち電荷発生層においては、バインダ樹脂100質量部に対して電荷発生剤を5〜1000質量部、好ましくは30〜500質量部の割合で含有させるのがよい。また、電荷輸送層においては、バインダ樹脂100質量部に対して電子輸送剤を1〜250質量部、好ましくは5〜150質量部の割合で含有させるのがよい。また、電子輸送剤と正孔輸送剤を併用する場合は、その総量がバインダ樹脂100質量部に対して10〜500質量部、好ましくは30〜200質量部の割合で含有させるのがよい。
本発明の電子写真感光体は、単層型と積層型の何れであってもよいが、一般式(1)で表されるトリイミド誘導体の使用による効果は、単層型で顕著に現れる。
感光層には、前記した成分のほかに、画像形成に悪影響を与えない範囲で、種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤などの劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナーなどが挙げられる。また、感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
<導電性基体>
導電性基体としては、導電性を有する各種の材料が使用可能であり、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮などの金属単体、上記金属が蒸着もしくはラミネートされたプラスチック材料、カーボンブラック等の導電性微粒子が分散されたプラスチック材料、さらにヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで被覆されたガラスなどが挙げられる。
導電性基体と感光層との間には、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光層の表面には保護層が形成されていてもよい。例えば、単層型感光体にあっては、図1(b)に示すように、導電性基体12と感光層14との間に、バリア層16が形成されていてもよい。また、図1(c)に示すように、感光体層14の表面には、保護層18が形成されていてもよい。一方、積層型感光体にあっては、図2(c)に示すように、導電性基体12と電荷発生層24との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層16が形成されていてもよいし、図2(d)に示すように、電荷発生層24と電荷輸送層22との間にバリア層16が形成されていてもよいし、図2(e)に示すように、導電性基体12と電荷輸送層22との間にバリア層16が形成されていてもよいし、図2(f)に示すように、電荷輸送層22と電荷発生24との間にバリア層16が形成されていてもよい。また、図2(a)〜(f)に示す各積層型感光体において、その表面に保護層が形成されていてもよい。
導電性基体は、使用する画像形成装置の構造に合わせてドラム状、シート状などの形態で使用される。この導電性基体は充分な機械的強度を有しているのが好ましい。
<電子写真感光体の製造方法>
次に、電子写真感光体の製造方法について説明する。
単層型の電子写真感光体は、一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を少なくとも含む電子輸送剤を、電荷発生剤、正孔輸送剤、バインダ樹脂等と共に適当な溶剤に溶解または分散した塗布液を、塗布等の手段によって導電性基体上に塗布し、乾燥させることにより製造される。一方、積層型の電子写真感光体を得るには、まず導電性基体上に、蒸着または塗布等の手段によって電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成する。次いで、この電荷発生層上に、一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を少なくとも含む電子輸送剤と、バインダ樹脂とを含有する塗布液を塗布等の手段によって塗布し、乾燥させることにより電荷輸送層を形成する。
ここで、単層型の感光層を形成するには、電子輸送剤、電荷発生剤およびバインダ樹脂、さらに必要に応じて正孔輸送剤や他の添加剤を適当な溶媒と共に、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機などを用いて混合して分散液を調製し、この分散液を導電性基体上に公知の手段で塗布して乾燥させればよい。また、積層型感光体の電荷発生層および電荷輸送層を形成するには、電荷発生剤、電荷輸送剤を適当なバインダ樹脂および溶媒と共に上記単層型感光層の形成と同一の方法で分散液を調製し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
前記分散液を調製するための溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用するほか、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、電荷発生剤および電荷輸送剤の分散性、感光体表面の平滑性を良くするために、界面活性剤、レベリング剤などを使用してもよい。
次に実施例および比較例を挙げて本発明の電子写真感光体を説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。尚、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
<トリイミド誘導体の合成>
実施例で使用した電子輸送剤は、以下の化学式(1−1)〜(1−6)で表される6種類である。
化学式(1−1)〜(1−6)において、“n-Bu”はn−ブチル基を表し、“Me”はメチル基を表し、“Et”はエチル基を表し、“Ph”はフェニル基を表し、“C17”はn−オクチル基を表し、“CHCH(C)C”は2−エチルヘキシル基を表す。
(合成例1)
化学式(1−1)で表されるトリイミド誘導体の合成方法を、下記化学反応式(1−1)に基づいて説明する。
式(A−1)で表される化合物0.5g(1.5mmol)の水溶液に、式(A2−1)で表される化合物0.35g(4.5mmol)のアセトン溶液を加えて、室温にて10分間攪拌した。その後、真空乾燥、及び120℃で乾燥させた。得られた残渣をクロロホルムに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化学式(1−1)で表されるトリイミド誘導体を0.27g得た。収率は40%であった。尚、式(A−1)で表される化合物の分子量は342であり、式(A2−1)で表される化合物の分子量は73である。また、式(A2−1)で表される化合物において、“n-Bu”はn−ブチル基を表す。
(合成例2)
化学式(1−2)で表されるトリイミド誘導体の合成を、下記反応式(1−2)に沿って次のように行った。
合成例1において、式(A2−1)で表される化合物を式(A2−2)で表される化合物0.61gに変えた以外は、合成例1と同様に行い、化学式(1−2)で表されるトリイミド誘導体を0.14g得た。収率は15%であった。尚、式(A2−2)で表される化合物の分子量は135である。
(合成例3)
化学式(1−3)で表されるトリイミド誘導体の合成を、下記反応式(1−3)に沿って次のように行った。
合成例1において、式(A2−1)で表される化合物を式(A2−3)で表される化合物0.74gに変えた以外は、合成例1と同様に行い、化学式(1−3)で表されるトリイミド誘導体を0.27g得た。収率は25%であった。尚、式(A2−3)で表される化合物の分子量は165である。
(合成例4)
化学式(1−4)で表されるトリイミド誘導体の合成方法を、下記化学反応式(1−4)に基づいて説明する。
式(B−1)で表される化合物1.27g(2.0mmol)のジメチルホルムアミド溶液に、式(B2−1)で表される化合物1.26g(6.0mmol)とヨウ化ナトリウム4.50g(30mmol)を加えて、窒素ガス雰囲気下で85℃にて36時間攪拌した。その後、固体(中間体)をろ取した。次に、この固体(中間体)を四塩化炭素に溶解させて、窒素ガス雰囲気下で臭素(液体)1.5mlを加えた後、24時間暗所にてこの溶液を還流した。そして、還流した溶液を室温まで冷却した後、トリエチルアミン8mlを加えて2時間攪拌した。その後、攪拌した溶液から固体をろ取し、この固体をクロロホルムに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した。これにより、化学式(1−4)で表されるトリイミド誘導体を0.15g得た。収率は10%であった。尚、式(B−1)で表される化合物の分子量は636であり、式(B2−1)で表される化合物の分子量は209である。
(合成例5)
化学式(1−5)で表されるトリイミド誘導体の合成を、下記反応式(1−5)に沿って次のように行った。
合成例4において、式(B2−1)で表される化合物を式(B2−2)で表される化合物1.26gに変えた以外は、合成例4と同様に行い、化学式(1−5)で表されるトリイミド誘導体を0.18g得た。収率は12%であった。尚、式(B2−2)で表される化合物の分子量は209である。
(合成例6)
化学式(1−6)で表されるトリイミド誘導体の合成を、下記反応式(1−6)に沿って次のように行った。
合成例4において、式(B−1)で表される化合物1.27g(2.0mmol)を式(C−1)で表される化合物0.088g(0.07mmol)に、式(B2−1)で表される化合物1.26g(6.0mmol)を式(B2−2)で表される化合物0.044g(0.21mmol)に変えた以外は、合成例4と同様に行い、化学式(1−6)で表されるトリイミド誘導体を0.013g得た。収率は20%であった。尚、式(C−1)で表される化合物の分子量は1259である。
<電子写真感光体の作製>
比較例で使用した電子輸送剤、実施例および比較例で使用した電荷発生剤、バインダ樹脂および正孔輸送剤は以下の通りである。
<比較例で使用した電子輸送剤>
化学式(E−1)で表されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミド誘導体を比較例1〜4の電子輸送剤として用いた。
<電荷発生剤>
化学式(x−HPc)で表されるX型無金属フタロシアニンを実施例1、3、5、7、9、11および比較例1、3の電荷発生剤として用いた。一方、化学式(Y−TiOPc)で表されるY型オキソチタニルフタロシアニンを実施例2、4、6、8、10、12および比較例2、4の電荷発生剤として用いた。
<バインダ樹脂>
下記化学式(Resin−1)で表される粘度平均分子量50,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂を各実施例および各比較例のバインダ樹脂として用いた。
<正孔輸送剤>
化学式(H−1)で表されるベンジジン誘導体を各実施例および各比較例の正孔輸送剤として用いた。
(実施例1〜12および比較例1〜4)
上記の電子輸送剤、電荷発生剤、バインダ樹脂および正孔輸送剤を表1に示す組み合わせで用いた。すなわち、実施例1〜10および比較例1、2においては、溶媒であるテトラヒドロフラン800重量部に対して、バインダ樹脂(Resin−1:粘度平均分子量50,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂)100重量部、正孔輸送剤(H−1)50重量部、表1に示す電荷発生剤(X−H2PcまたはY−TiOPc)3重量部、および表1に示す電子輸送剤(1−1、1−2、1−3、1−4、1−5またはET−1)45重量部を添加した。この混合物を超音波分散機で1時間混合分散して、単層型感光層用の分散液を作製した。一方、実施例11、12および比較例3、4においては、溶媒であるテトラヒドロフラン800重量部に対して、バインダ樹脂(Resin−1)100重量部、正孔輸送剤(H−1)50重量部、表1に示す電荷発生剤(X−H2PcまたはY−TiOPc)3重量部、および表1に示す電子輸送剤(1−6またはET−1)35重量部を添加し、この混合物を超音波分散機で1時間混合分散して、単層型感光層用の分散液を作製した。ついで、得られた分散液を導電性基材(アルミニウム素管)上にディップコート法にて塗布し、100℃で30分間熱風乾燥して、膜厚30μmの単層型感光層を有する実施例1〜12および比較例1〜4の電子写真感光体を得た。
<感光体特性の評価>
次に、上記で得られた電子写真感光体の感度特性(光感度)を以下のようにして評価した。すなわち、実施例1〜12および比較例1〜4の電子写真感光体について、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、700Vになるように帯電させ、ついでハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.5μJ/cm2)を露光[照射時間:0.08秒(80msec)]した。そして、露光開始から0.33秒(330msec)経過した時点での表面電位(残留電位)を測定し、それを感度とした。結果を表1に示す。
表1に示す通り、比較例1、2の電子写真感光体は結晶化が生じ、感度も200V以上であった。電子輸送剤の配合量が45重量部である比較例1、2の電子写真感光体では、感光層全体で電子輸送剤が析出していたのに対して、比較例3、4の電子写真感光体では、作製時に電子輸送剤の配合量を35重量部に減らしたので、比較例1、2のような単層型感光層用分散液中での電子輸送剤の溶け残こりは生じなかった。そして、得られた電子写真感光体の感光層を目視確認したところ、電子輸送剤は析出していなかった。しかしながら、比較例3、4では電子輸送剤の配合量が比較例1、2よりも少ないため、比較例3、4の電子写真感光体の感度は比較例1、2の電子写真感光体よりも低かった。
一方、電子輸送剤として、一般式(1)で表される化合物を用いた実施例1〜10の電子写真感光体は、結晶化が発生せず、また、比較例の電子写真感光体に比べて高い感度を有していた。また、実施例11、12の電子写真感光体は、5倍のルーペで確認できる程度の微細な結晶が感光層中に析出していたが、いずれの比較例の電子写真感光体よりも高い感度を示した。実施例11、12の電子写真感光体での結晶の析出状態は、実用上問題ないレベルであった。
また、実施例3、5の光感度が実施例1の光感度と略同じレベルにあり、且つ、実施例4、6の光感度が実施例2の光感度と略同じレベルにあることから、一般式(1)のRとして電子受容性の高い官能基を用いることで、モル量でみれば配合量を相対的に少量にできることが、表1から分かる。
また、実施例7の光感度が実施例9の光感度と略同じレベルにあり、且つ、実施例8の光感度が実施例10の光感度と略同じレベルにあることから、一般式(1)のRとして直鎖構造の官能基を用いても、分岐鎖を備えた官能基を用いても光感度への影響は小さいことが、表1から分かる。
以上、詳述したように、本発明によれば、感光層に一般式(1)で表されるトリイミド誘導体を含有させることにより、感光層での電子輸送剤の析出が少なく且つ光感度に優れる電子写真感光体が得られるようになった。
従って、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置における低コスト化、高性能化等に寄与することが期待される。
10 単層型電子写真感光体
12 導電性基体
14 感光層
16 バリア層
18 保護層
20 積層型電子写真感光体
22 電荷輸送層
24 電荷発生層

Claims (6)

  1. 導電性基体と感光層とを備えた電子写真感光体であって、
    前記感光層が、電子輸送剤としての、下記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体と、電荷発生剤としての、無金属フタロシアニン及びチタニルフタロシニンの少なくとも一方と、バインダ樹脂とを含有する電子写真感光体。

    (一般式(1)中、nは0〜2の整数を表し、Rは水素原子、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数1〜12のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数6〜22のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜22のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボキシレート基、アシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基およびアリール基の少なくとも1つを表す。)
  2. 前記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体が下記一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。

    (一般式(2)中、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数1〜8のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数6〜20のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜10のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、カルボキシレート基、アリール基およびアルコキシ基の少なくとも1つを表す。)
  3. 前記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体が下記一般式(3)で表される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。

    (一般式(3)中、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数3〜10のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数9〜20のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数9〜20のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、カルボキシレート基、アリール基およびアルコキシ基の少なくとも1つを表す。)
  4. 前記一般式(1)で表されるトリイミド誘導体が下記一般式(4)で表される化合物である請求項1に記載の電子写真感光体。

    (一般式(3)中、Rは1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数4〜12のアルキル基、1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数10〜22のアリール基、または1つ若しくは2つ以上の置換基を有することのある炭素数10〜22のシクロアルキル基を表し、前記置換基は、アルキル基、カルボキシレート基、アリール基およびアルコキシ基の少なくとも1つを表す。)
  5. 前記感光層が単層型である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記バインダ樹脂が、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
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