JP5716636B2 - 金属の硫化物沈殿方法 - Google Patents
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Description
湿式処理による方法では、例えば、廃電池に含まれる有価金属を酸性水溶液に浸出させて浸出残渣と分離し、得られた処理液から硫化物沈殿法や溶媒抽出法等によって有価金属を回収することが行われる。ここで、有価金属が浸出された処理液には、マンガンやアルミニウム等の不純物も含まれているので、硫化物沈澱法や溶媒抽出法等により有価金属と不純物とを選択的に分離することが行われる。特に硫化物沈殿法による分離は、反応が速く、有価金属を選択的に分離し易いという特徴があるため、多く用いられている。
例えば、廃電池中の有価金属が浸出された処理液から有価金属を沈殿させる場合には、有価金属であるニッケルやコバルトの溶解度積が、不純物金属であるマンガンやアルミニウムの溶解度積に比べて低いことを利用して、処理液のpHを有価物金属が沈殿し不純物金属が沈殿しない領域に調整した後に、処理液に硫化剤を滴下して、有価金属のみ硫化物として沈殿させる。
すなわち、処理液にアルカリを添加すると下記化1の反応により不純物金属のアルカリ塩が生成される。このアルカリ塩は処理液のpHが低い場合にはすぐに再溶解するが、処理液のpHが上がってくるとすぐに再溶解せず、固体として所定時間処理液内に滞留する。そのため、pH調整の直後に硫化剤を滴下し始めると、個体として滞留するアルカリ塩の周囲に不溶性の硫化物が生成されるため、アルカリ塩が再溶解できなくなる。そうすると、硫化物に不純物金属が混入してしまう。
(化1)
MnSO4 + 2NaOH → Mn(OH)2 + Na2SO4
第2発明の金属の硫化物沈殿方法は、第1発明において、前記処理液を希釈した後に、前記処理液にアルカリを添加してpHを調整し、前記処理液に硫化剤を添加することを特徴とする。
第3発明の金属の硫化物沈殿方法は、第2発明において、前記処理液に硫化剤を添加して前記目的金属を硫化物として沈殿させた後の硫化後液で前記処理液を希釈した後に、前記処理液にアルカリを添加してpHを調整し、前記処理液に硫化剤を添加することを特徴とする。
第4発明の金属の硫化物沈殿方法は、第1、第2または第3発明において、前記処理液が、廃電池に含まれる有価金属を酸性水溶液に浸出させたものであることを特徴とする。
第5発明の金属の硫化物沈殿方法は、第1、第2または第3発明において、前記処理液が、鉱石に含まれる目的金属を酸性水溶液に浸出させたものであることを特徴とする。
第2発明によれば、処理液を希釈した後に硫化剤を添加するので、硫化物のスラリー濃度が低くなり不純物金属の共沈が低減され、硫化物への不純物金属の混入を低減できる。
第3発明によれば、硫化後液で処理液を希釈した後に硫化剤を添加するので、硫化後液に残留する目的金属を再度の硫化処理で分離でき、処理液から効率よく目的金属を分離できる。
第4発明によれば、廃電池に含まれる有価金属を不純物と分離できるので、高純度の有価金属を回収することができる。
第5発明によれば、鉱石に含まれる目的金属を不純物と分離できるので、高純度の目的金属を採取することができる。
本発明の一実施形態に係る金属の硫化物沈殿方法は、例えば図1に示すような硫化物沈殿装置1を用いて実施される。
図1において、符号10は反応槽であり、符号11は攪拌機である。反応槽10には、目的金属を含む酸性の処理液が入れられるようになっており、反応槽10に入れられた処理液は攪拌機11により攪拌されるようになっている。
なお、酸性水溶液としては、例えば硫酸(H2SO4)が用いられるが、これ以外の酸性水溶液を用いてもよい。
まず、反応槽10に処理液を流入させる。ここで、処理液は予め希釈されている。この効果については後に説明する。
処理液は、例えば廃電池に含まれる有価金属を浸出させた酸性水溶液である。より具体的には、使用済みのニッケル水素電池やリチウムイオン電池等、およびこれらの電池を構成する正極材等の製造工程で生じた不良品(以下、これらをまとめて廃電池という)を焙焼して還元焙焼物とし、この還元焙焼物に硫酸を加えて攪拌し、廃電池に含まれるニッケルやコバルト等の有価金属を浸出させて、浸出残渣と分離して得られたものを処理液とする。また、還元焙焼以外にも、破砕処理した廃電池が投入された液中に亜硫酸ナトリウム等の還元剤と硫酸を加えて攪拌し、廃電池に含まれる有価金属を浸出させて処理液としてもよい。また、処理液は、鉱石に含まれる目的金属を浸出させた酸性溶液でもよい。例えば、ニッケル酸化鉱石や硫化銅鉱物を硫酸や塩酸で浸出して得られたものを処理液とする。
(化1)
MnSO4 + 2NaOH → Mn(OH)2 + Na2SO4
そうすると、以下の反応により、ニッケルが硫化されて硫化ニッケルとして沈殿し、コバルトが硫化されて硫化コバルトとして沈殿する。
(化2)
NiSO4 + NaHS → NiS + NaHSO4
(化3)
CoSO4 + NaHS → CoS + NaHSO4
(化4)
NaHSO4 + NaOH → Na2SO4 + H2O
ところが、本実施形態のように予め処理液を希釈しておけば、硫化物のスラリー濃度が低くなり不純物金属の共沈が低減される。そのため、硫化物への不純物金属の混入を低減でき、得られる硫化物の純度を高めることができる。なお、この処理液の希釈度は、処理液に含まれる不純物の種類や量を元に選択される。
(化5)
H2SO4 + NaHS → H2S + NaHSO4
以下の実施例および比較例では、ともに廃電池に含まれるニッケルおよびコバルトを浸出させた硫酸水溶液を処理液とした。具体的には、使用済みのニッケル水素電池を焙焼して還元焙焼物とし、この還元焙焼物にpH1の硫酸を加え、ニッケル水素電池に含まれるニッケルおよびコバルトを浸出させた。つぎに、硫酸ナトリウムを添加して、希土類元素などを硫酸複塩の形で分離して、処理液を得た。処理液には、ニッケルやコバルト等の有価金属のほかに、マンガンやアルミニウム等の不純物も含有されていた。
上記処理液に、濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH2.5に調整した後、すぐに、濃度25重量%の硫化水素ナトリウム水溶液と濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液の混合液を処理液に滴下した。ここで、硫化水素ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との混合割合がほぼ等モル量となるように、それぞれの流量を調整した。
得られた硫化物をICP発光分析装置で分析すると、マンガン品位は0.30%であった。また、硫化物のスラリー濃度は72g/L、硫化処理前の処理液のマンガン濃度は1.6g/Lであった。また、図2に示すように、得られた硫化物をEPMAを用いて面分析した結果、マンガンが局在化している部分には、硫黄ではなく酸素が存在し、Mn(OH)2の形態で沈殿していることが分かった。
上記処理液に、濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH2.5に調整した後、水酸化ナトリウム水溶液の供給を停止し、生成されたアルカリ塩を再溶解させる時間を設けた。水酸化ナトリウム水溶液の供給を停止してから約4分経過後に処理液のpHは2.7まで上昇した。その後11分間は処理液のpHに変動はなかった。ここでアルカリ塩はすべて再溶解したと判断し、濃度25重量%の硫化水素ナトリウム水溶液と濃度25重量%の水酸化ナトリウム水溶液の混合液を処理液に滴下した。その他の条件は比較例と同様である。
以上より、処理液のpH調整後にアルカリ塩が再溶解する時間を設けることで、硫化物への不純物金属の混入を低減できることが分かった。
予め上記処理液に水を加えて2.8倍の液量となるように希釈した。その他の条件は実施例1と同様である。
以上より、予め処理液を希釈することにより、不純物金属の共沈が低減され、硫化物への不純物金属の混入を低減できることが分かった。
10 反応槽
11 攪拌機
21 硫化剤用配管
22 アルカリ用配管
23 混合配管
24 洗浄水用配管
25 酸用配管
Claims (5)
- 目的金属を含む酸性の処理液に硫化剤を添加し、該目的金属を硫化物として沈殿させる方法であって、
前記処理液にアルカリを添加してpHを調整し、
前記アルカリの添加により生成された前記処理液に含まれる不純物金属のアルカリ塩が再溶解した後に、
前記処理液に硫化剤を添加するにあたり、
前記不純物金属のアルカリ塩が再溶解したことを、前記処理液のpHが上昇した後に変動がなくなることにより判断する
ことを特徴とする金属の硫化物沈殿方法。 - 前記処理液を希釈した後に、
前記処理液にアルカリを添加してpHを調整し、
前記処理液に硫化剤を添加する
ことを特徴とする請求項1記載の金属の硫化物沈殿方法。 - 前記処理液に硫化剤を添加して前記目的金属を硫化物として沈殿させた後の硫化後液で前記処理液を希釈した後に、
前記処理液にアルカリを添加してpHを調整し、
前記処理液に硫化剤を添加する
ことを特徴とする請求項2記載の金属の硫化物沈殿方法。 - 前記処理液が、廃電池に含まれる有価金属を酸性水溶液に浸出させたものである
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の金属の硫化物沈殿方法。 - 前記処理液が、鉱石に含まれる目的金属を酸性水溶液に浸出させたものである
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の金属の硫化物沈殿方法。
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