以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
〔第1実施形態〕
(連続鋳造装置)
図1に示すように、スラブ用の連続鋳造装置100は、タンディッシュ1と、タンディッシュ1から浸漬ノズル2を介して注湯された溶鋼を、冷却し、所定形状の凝固シェル(凝固殻)を形成する鋳型3と、2次冷却帯に設けられたサポートロール群40とを備えている。サポートロール群40は、基準側ロール群40aと、反基準側ロール群40bとを備えている。なお、本実施の形態では、最大幅W、厚みTの鋳片を連続鋳造する連続鋳造装置100について説明する。また、連続鋳造装置100によって連続鋳造される鋳片の最大幅Wは、鋳型3の幅に対応している。
サポートロール群40には、複数のロール対4が、鋳造方向に沿って並設されている。ロール対4は、鋳造経路Q(鋳片)を挟んで対向する位置に配置された基準側ロール41及び反基準側ロール42により構成されている。基準側ロール41は、鋳造経路Qの一方側(連続鋳造される鋳片の下側に対応した側)に配置されている。また、反基準側ロール42は、鋳造経路Qの他方側(連続鋳造される鋳片の上側に対応した側)に配置されている。そして、鋳造方向に並設された複数の基準側ロール41により基準側ロール群40aが構成されている。また、鋳造方向に並設された複数の反基準側ロール42により反基準側ロール群40bが構成されている。
2次冷却帯には、冷却スプレー5が、鋳造方向に隣り合う2つの基準側ロール41の間及び鋳造方向に隣り合う2つの反基準側ロール42の間にそれぞれ設けられている。冷却スプレー5は、鋳型3から引き抜かれた凝固シェル(鋳造経路Qを搬送される凝固シェル)に対して、所定流量の冷却水を噴霧する。
(基準側ロール及び反基準側ロール)
基準側ロール41及び反基準側ロール42は、それぞれ、連続鋳造される鋳片に接触する接触部と、鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間に配置され、連続鋳造される鋳片に接触しない非接触部とを有している。この非接触部は、接触部の両側において接触部を回転自在に支持する軸受けが配置される部位に対応している。なお、基準側ロール41及び反基準側ロール42は、それぞれ非接触部において接触部が分割されていることから、本実施の形態では、非接触部を「ロールの分割位置」ということがある。
本実施の形態においては、基準側ロール41及び反基準側ロール42の全てが、鋳片の幅方向に2分割されている。ここで、「基準側ロール41が2分割されている」とは、基準側ロール41の分割数が2であり、基準側ロール41が、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部と、その2個の接触部の間に配置された1個の非接触部(分割位置)とを有することを意味する。また、「基準側ロールが、鋳片の幅方向にS(Sは2以上の自然数)分割されている」とは、基準側ロール41の分割数がSであり、基準側ロールが、鋳片の幅方向に離れて配置されたS個の接触部と、そのS個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された(S−1)個の非接触部(分割位置)とを有することを意味する。なお、反基準側ロールについても同様である。
本実施形態では、ロール対4において、基準側ロール41の接触部と反基準側ロール42の接触部とは、鋳片の幅方向について同じ位置に配置されている。したがって、ロール対4において、基準側ロール41の非接触部と反基準側ロール42の非接触部とは、鋳片の幅方向について同じ位置に配置される。よって、ロール対4において、基準側ロール41の接触部と反基準側ロール42の接触部とが対向するとともに、基準側ロール41の非接触部と反基準側ロール42の非接触部とが対向する。
このように、ロール対4を構成する基準側ロール41と反基準側ロール42とは略同じ構成であり、基準側ロール群40aと反基準側ロール群40bとは略同じ構成である。したがって、以下においては、基準側ロール群40aについて説明し、反基準側ロール群40bの説明を省略する。
本実施の形態では、鋳片の所定の幅方向位置において、鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率を非接触比率という。したがって、基準側ロールについての非接触比率は、鋳造方向に並設された基準側ロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在する基準側ロールの比率を示す。また、反基準側ロールについての非接触比率は、鋳造方向に並設された反基準側ロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在する反基準側ロールの比率を示す。
(基準側ロール群40a)
次に、図2を参照しつつ、基準側ロール群40aの構成について詳細に説明する。図2は、図1に示す基準側ロール群40aの一部の構成を示している。基準側ロール群40aには、複数のロール群I,II・・・が鋳造方向に並設されている。なお、図2には、ロール群I,IIだけを図示している。また、複数のロール群I,II・・・は、全て同じ構成のロール群であるため、以下の説明においては、ロール群Iについて説明し、他のロール群の説明を省略する。さらに、図2においては、非接触部に対応する位置に配置された軸受けを省略している。本実施形態では、上述したように、基準側ロール群40aは、複数のロール群I,II・・・から構成されていることから、基準側ロール群40aを構成する基準側ロールの全数は、ロール群Iを構成する基準側ロール数の複数倍(例えば、10倍)となっている。
(ロール群)
図2に示すように、基準側ロール群40aのロール群Iは、鋳造方向に沿って、所定のピッチで並設された5本の基準側ロールR1,R2,R3,R4,R5から構成されている。基準側ロールR1は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r11,r12と、接触部r11と接触部r12との間に配置された1個の非接触部(分割位置)d1とを有している。基準側ロールR2は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r21,r22と、接触部r21と接触部r22との間に配置された1個の非接触部(分割位置)d2とを有している。なお、基準側ロールR3,R4,R5は、基準側ロールR1,R2と略同様な構成であるため、図2に図示しているが、説明を省略する。
本実施形態では、5個の非接触部(分割位置)d1,d2,d3,d4,d5が、鋳片の幅一端から他端へ(図2において、左から右へ)、順に、鋳片の幅方向に重複しないように配置されている。なお、5個の非接触部(分割位置)d1,d2,d3,d4,d5の鋳片幅方向に関する幅は、全て同じ幅Dである。
次に、本発明は、中心偏析を改善することができるとともにザクの発生を抑えることができる発明であることから、まず、連続鋳造される鋳片に発生する中心偏析及びザクについて説明する。
(中心偏析及びザクの発生)
図3は、図1に示す連続鋳造装置100によって鋳造される鋳片を鋳造方向に対して垂直な方向に切断したときの、鋳造される鋳片の断面図である。鋳片が鋳造経路Qを通過しているとき、溶鋼の凝固は、鋳造経路Qに対して上下面及び左右側面(図3に示す鋳片断面の上下面及び左右側面)から鋳片内部に向かって進行する。
図3に示すように、鋳片の幅方向について、最大幅Wの鋳片の幅方向左端からT/2の幅の範囲では、溶鋼の凝固が、上面と下面と左側面とから内部へ進行する。また、最大幅Wの鋳片の幅方向右端からT/2の幅の範囲では、溶鋼の凝固が、上面と下面と右側面とから内部へ進行する。一方、鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いた幅W−Tの範囲(以下、「鋳片の幅W−Tの範囲」と称する)内は、溶鋼の凝固が上面と下面のみから内部へ進行するため、鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅の範囲よりも溶鋼の凝固が遅い。したがって、鋳片の幅W−Tの範囲(特に、鋳片の幅W−Tの範囲の厚み中心部)は、最終凝固部となりやすい。
ところで、溶鋼の凝固中の収縮に伴う体積減少により、溶鋼の凝固進行部位には、その体積減少分に相当する溶鋼が、上流から補給される。しかし、凝固が鋳片内部へ進行し、鋳片の厚み中心部まで進行したら、その厚み中心部では、溶鋼の補給が難しくなる。溶鋼の凝固進行部位に、体積減少分に相当する量の溶鋼が補給されなかったら、その部位にザク(引け巣)が形成される。また、その部位の近隣から、ミクロ偏析による溶質が濃化した溶鋼が補給されれば、その部位が中心偏析となる。したがって、最終凝固部となる鋳片の幅W−Tの範囲内では、ザクや中心偏析が生じやすい。特に、鋳片の幅W−Tの範囲の厚み中心部には、鋳片の幅方向に延在した中心偏析線(図3に図示する一点鎖線)が形成される。
そして、鋳造される鋳片に発生した中心偏析は、最終製品の硬度及び靭性に悪影響を及ぼす。ここで、最終製品とは、連続鋳造される鋳片を圧延して得られる製品を意味する。連続鋳造される鋳片に存在する中心偏析は、連続鋳造される鋳片が圧延されても最終製品に残存する。したがって、連続鋳造される鋳片に中心偏析が存在すれば、最終製品の品質が低下する。また、連続鋳造される鋳片にザクが発生していたら、圧下比(連続鋳造される鋳片の厚み/最終製品の厚み)を所定の圧下比より大きくした場合は、圧延により鋳造される鋳片に発生したザクを殆ど消失させることができるため、最終製品に悪影響を及ぼさないが、圧下比が小さい場合は、圧延により鋳造される鋳片に発生したザクを殆ど減少させることができないため、ザクが最終製品に残存する。そのため、連続鋳造される鋳片に発生したザクは、最終製品に悪影響を及ぼす。また、連続鋳造される鋳片の特定の幅方向位置に中心偏析やザクが偏って発生したら、その幅方向位置において、他の幅方向位置よりも、品質が大幅に低下する。
(実験)
次に、中心偏析及びザクの発生についての実験及び実験結果について説明する。以下の実験条件により、鋳片を鋳造した。
<実験条件>
・鋳片 :厚み 280mm
最大幅 2100mm
・鋳造条件 :鋳造速度 1.2mm/min
非完全凝固部での比水量 0.54L/kg(鋳造量1kg当りの冷却水量(L))
・溶鋼成分 :中炭素鋼(C含有量:0.12wt%)
・連続鋳造装置の二次冷却帯に設けられたサポートロール群の構成:
ロールピッチ 210mm〜380mm
非接触部の鋳片の幅方向についての幅 210mm
図4は、鋳片の幅方向位置と非接触比率との関係を示している。なお、図4では、鋳片の幅方向位置が鋳片の幅一端からの距離で示されており、非接触比率は、上述した本実施の形態における非接触比率に対応する。
<中心偏析の評価>
図5は、炭素含有量比と、溶接部近傍の熱影響部における中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差との関係を示している。炭素含有量比C/C0は、鋳造される鋳片の最終未凝固部、具体的には、鋳造される鋳片の厚み方向の中心位置から採取した切粉の炭素含有量Cを、鋳造される鋳片の厚みが1/4の厚み方向位置(鋳片表面から鋳片の厚みの1/4だけ内側に深い位置)から採取した切粉の炭素含有量C0で除した値である。鋳片の切粉は、ドリル(φ5mm)を用いて採取されたものである。また、溶接部近傍の熱影響部における中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差において、「中心偏析部位」は鋳片の中心偏析が存在する部位であり、「健全部」は(鋳片の中心偏析が存在しない部位であって、鋳片表面から鋳片の厚みの1/4だけ内側に深い位置)である。
図5から、C/C0が大きくなるにつれて、熱影響部の中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差が大きくなることが分かる。したがって、C/C0が1.1以下であるとき、熱影響部の中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差が小さくなり、熱影響部の中心偏析部位の硬度が健全部位の硬度に近い硬度であることが分かる。よって、C/C0が1.1以下のとき、実用上、品質に問題がない最終製品を製造することができる。
<ザクについて>
図6は、ザク密度と製品残存欠陥サイズとの関係を示している。ザク密度は、以下の方法により求めた。鋳造される鋳片の最終凝固部を挟んで鋳片の厚み方向に±5mmの厚み10mm×鋳片の幅方向に幅50mm×長さ50mmの直方体状の試料を採取した。この試料に存在するザクの体積をアルキメデス法(比重測定法)により求めた。このザクの体積を鋳片の幅方向に幅50mm×鋳造方向に長さ50mmの面積で除することにより、鋳片の単位面積当りの密度に換算した。また、製品残存欠陥サイズは、最終製品(鋳造される鋳片を圧延して得られる製品)に残存した欠陥のサイズである。図6には、圧延比1.63のときのザク密度と製品残存欠陥サイズとの関係及び圧延比2.0のときのザク密度と製品残存欠陥サイズとの関係を示している。ここで、圧延比は、鋳造される鋳片の厚みを最終製品の厚みで除した値である。また、圧延比2.0が、限界圧延比である。
図6から、ザク密度が大きくなるにつれて、製品残存欠陥サイズも大きくなることが分かる。また、同じザク密度で比べたら、圧延比が小さい方が、製品残存欠陥サイズが大きい。したがって、図6から、ザク密度が0.015mm3/mm2以下であるとき、圧延比が2.0以下であればどのような圧延比でも、欠陥が殆ど存在しない最終製品を得ることができる。
以上から、鋳造される鋳片において、C/C0が1.1以下、または、ザク密度が0.015mm3/mm2以下であれば、実用上、品質に問題がない最終製品を製造することができることが分かる。
<C/C0とザク密度との関係>
図7は、炭素含有量比とザク密度との関係を示している。また、図7に示す直線は、炭素含有量比とザク密度との相関関係を示しており、以下の関係式を示している。
C/C0の値をXとし、ザク密度をYとしたとき、
Y=0.15× X −0.15
したがって、C/C0の値がわかれば、上記関係式からザク密度を求めることができる。
<実験結果>
表1には、実験条件として、鋳片の幅方向位置(鋳片の幅方向について鋳片の幅一端からの距離)とその距離における非接触比率が示されている。また、実験結果として、実験条件におけるC/C0及びザク密度を示している。図8,9は、表1に示す実験結果を図示したものである。
図8から、C/C0が1.1以下になるためには、データのばらつきを考慮すると、非接触比率が20%以下であることが必要であることが分かる。また、図9から、ザク密度についても、ザク密度が0.015mm3/mm2以下となるためには、データのばらつきを考慮すると、非接触比率が20%以下であることが必要であることが分かる。換言すると、非接触比率を20%以下にすると、バラツキを考慮しても、C/C0を1.1以下、且つ、ザク密度を0.015mm3/mm2以下とすることができる。したがって、非接触比率が20%以下であるとき、実用上、品質に問題がない最終製品を製造することができる。
次に、非接触比率を20%以下にするための連続鋳造装置の構成について説明する。
非接触比率は、上述したように、所定の幅方向位置において、鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率である。
非接触比率は、鋳造される鋳片の全ての幅方向位置において0%以上であり且つ20%以下であることが望ましいが、最大幅Wの鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅の範囲内は、溶鋼の凝固が早いため、中心偏析やザクが発生しにくい。したがって、鋳造される鋳片の幅W−Tの範囲内において、非接触比率を、0%以上且つ20%以内にすることができれば、実用上、品質に問題のない最終製品を製造することができる。
<ロール群が2分割された基準側ロールだけで構成されている場合>
基準側ロール群40aが、2分割された基準側ロール41だけを有するロール群から構成される場合について、図2を用いて説明する。
2分割された基準側ロールは、2個の接触部と、1個の非接触部とを有する。そして、1つのロール群に含まれる基準側ロールR1において、所定の幅方向位置(例えば、図2のX7)に非接触部(分割位置)が配置されている場合に、そのロール群Iにおいて、その幅方向位置の非接触比率を20%以下とするためには、その幅方向位置(X7)に、その非接触部の他に、4個以上の接触部が配置される必要がある。したがって、1つのロール群は、少なくとも5本の基準側ロールから構成されることが必要である。そして、図2に示すように、1つのロール群が5本の基準側ロールから構成されており、所定の幅方向位置(X7)に、1個の非接触部と4個の接触部とが配置されていることから、そのロール群Iにおいて、幅方向位置(X7)の非接触比率は、{1/(1+4)}×100=(1/5)×100=20%となる。
また、そのロール群に含まれる他の基準側ロールR2も、2分割されていることから、1つの非接触部(分割位置)を有する。ここで、1つのロール群を構成する基準側ロール数をできるだけ少なくするためには、基準側ロールR2の非接触部を、基準側ロールR1の非接触部と異なる幅方向位置に配置する必要がある。そして、基準側ロールR2の非接触部が配置された幅方向位置(例えば、図2のX14)に、その非接触部の他に、4個以上の接触部が配置されることになり、そのロール群Iにおいて、幅方向位置(X14)の非接触比率を20%以下とすることができる。また、同様に考えたら、そのロール群に含まれるロールR3,R4,R5のそれぞれの非接触部を、他のロールの非接触部と異なる幅方向位置に配置すれば、ロールR3,R4,R5のそれぞれの非接触部が配置された幅方向位置(例えば、図2のX21,X28,X35)においても、そのロール群Iにおける非接触比率を20%以下とすることができる。
このように、2分割された基準側ロール41だけを有する1つのロール群では、鋳片の幅W−Tの範囲内において、5個の非接触部(5種類の非接触部)を、互いに異なる幅方向位置に配置することにより、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、そのロール群Iの非接触比率を20%以下にすることが可能となる。なお、接触部だけが配置された幅方向位置では、非接触部が存在しないため、非接触比率が0%となる。
そして、本実施の形態では、上述したように、基準側ロール群40aは、ロール群I,II・・で構成されていることから、基準側ロール群40aを構成する複数の基準側ロール41は、鋳片の幅W−Tの範囲内において、少なくとも5個の非接触部(5種類の分割位置)を、互いに異なる幅方向位置に配置することにより、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、非接触比率を20%以下にすることが可能になる。
本実施の形態では、2つの非接触部(分割位置)が互いに異なる幅方向位置に配置されているとき、2つの非接触部(分割位置)の種類が異なることとする。そして、2つの非接触部(分割位置)の種類が異なるとは、2つの非接触部(分割位置)の幅方向位置が完全に一致していないことを示す。したがって、2つの非接触部(分割位置)のそれぞれの幅方向位置が部分的に重複していても、その2つの非接触部(分割位置)の種類は異なることになる。
<ロール群がS分割された基準側ロールだけで構成される場合>
次に、基準側ロール群40aが、S分割された基準側ロール41だけを有するロール群から構成される場合について説明する。
S分割された基準側ロールは、S個の接触部と、(S−1)個の非接触部とを有する。そして、1つのロール群に含まれる基準側ロールR1において、所定の幅方向位置に、(S−1)個の非接触部(分割位置)のうちの1個の非接触部(分割位置)が配置されている場合に、そのロール群において、その幅方向位置の非接触比率を20%以下とするためには、その幅方向位置に、その非接触部の他に、4個以上の接触部が配置される必要がある。また、(S−1)個の非接触部(分割位置)のうちの他の非接触部(分割位置)が配置されている幅方向位置についても同様である。したがって、1つのロール群は、少なくとも5本の基準側ロールから構成されることが必要である。
また、そのロール群に含まれる他の基準側ロールR2も、S分割されていることから、(S−1)個の非接触部(分割位置)を有する。ここで、1つのロール群を構成する基準側ロール数をできるだけ少なくするためには、基準側ロールR2の(S−1)個の非接触部を、基準側ロールR1の(S−1)個の非接触部と異なる幅方向位置に配置する必要がある。そして、基準側ロールR2の非接触部が配置された幅方向位置に、それぞれ、その非接触部の他に、4個以上の接触部が配置されることにより、そのロール群において、その幅方向位置の非接触比率を20%以下とすることができる。
また、同様に考えたら、そのロール群に含まれるロールR3,R4,R5のそれぞれの(S−1)個の非接触部を、他のロールの非接触部と異なる幅方向位置に配置すれば、ロールR3,R4,R5の非接触部が配置される幅方向位置においても、そのロール群における非接触比率を20%以下とすることができる。
このように、1つのロール群を構成する基準側ロール数が5本である場合、一本の基準側ロールは(S−1)個の非接触部を有することから、そのロール群には、5×(S−1)個の非接触部が配置されることになる。そして、上述したように、5×(S−1)個の非接触部を、互いに異なる幅方向位置に配置した場合、そのロール群において、非接触部が配置された幅方向位置のそれぞれの非接触比率を20%以下にすることができる。
また、本実施の形態では、上述したように、2つの非接触部(分割位置)が互いに異なる幅方向位置に配置されている場合、この2つの非接触部(分割位置)の種類が異なることになる。したがって、1つのロール群が、それぞれS分割された5本の基準側ロール41を有している場合において、その1つのロール群に対して、5×(S−1)個の非接触部が、互いに異なる幅方向位置に配置されている場合は、1つのロール群が、互いに異なる5×(S−1)種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されていることになる。
そして、上述したように、基準側ロール群40aは、S分割された基準側ロール41だけを有するロール群から構成されていることから、基準側ロール群40aは、複数のS分割された基準側ロール41から構成され、且つ、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数のロールで構成されていることになる。上記Nは、下記(1)式の範囲内にある。
N≧5×(S−1) (但し、Nは自然数、Sは複数の基準側ロールの分割数であって2以上の自然数) ・・・(1)
これにより、複数の基準側ロール41について、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、非接触比率を0%以上20%以下にすることが可能となる。
1つのロール群が、2分割された基準側ロールだけで構成され、且つ、基準側ロール群がそのロール群の複数から構成されている場合には、基準側ロール群が、2分割された複数の基準側ロールだけで構成され、上記(1)式から、N≧5 の範囲が得られる。また、1つのロール群が、3分割された基準側ロールだけで構成され、且つ、基準側ロール群がそのロール群の複数から構成されている場合には、基準側ロール群が、3分割された複数の基準側ロールだけで構成され、上記(1)式から、N≧10 の範囲が得られる。さらに、1つのロール群が、4分割された基準側ロールだけで構成され、且つ、基準側ロール群がそのロール群の複数から構成されている場合には、基準側ロール群が、4分割された複数の基準側ロールだけで構成され、上記(1)式から、N≧15 の範囲が得られる。
なお、1つのロール群において分割位置の種類数が増加したら、1つのロール群において基準側ロールの種類数が増加する。本実施の形態では、1つのロール群に配置される非接触部を、上記W−Tの範囲内において、それぞれ、鋳片の幅方向について、重複することなく、異なる位置に配置されるようにすることにより、1つのロール群において、基準側ロールの種類数を少なくすることができる。これにより、連続鋳造装置のコストを低減することができる。
また、基準側ロール群が、複数のロール群から構成されている場合は、1つのロール群に配置される非接触部を、上記W−Tの範囲内において、それぞれ、鋳片の幅方向について、重複することなく、異なる位置に配置されるようにすることにより、基準側ロール群を構成する基準側ロールの種類数を少なくすることができる。
したがって、1つのロール群に含まれる分割位置の種類数Nは、下記(2)式の範囲内にある。
N≦(W−T)/D の値の小数点を切り上げた数 (但し、Nは自然数)・・・(2)
そして、1つのロール群に含まれる分割位置の種類数Nが上記(2)式の範囲内にあれば、基準側ロール群が、そのロール群を複数有している場合は、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、分割位置の種類数Nが上記(2)式の範囲内にある。したがって、連続鋳造装置のコストを低減することができる。
本実施の形態において、上述したように、基準側ロール群40aは、複数のロール群I,II・・・から構成されている。また、図2に示すように、ロール群Iは、2分割された基準側ロール41だけで構成されている。したがって、基準側ロール群40aを構成する基準側ロール41の分割数Sは、2である。よって、上記(1)式から、下記の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×(2−1)=5
また、連続鋳造装置100により鋳造される鋳片の最大幅Wが2200mmであり且つ厚みが200mmであり、非接触部の幅Dが150mmであるとき、上記(2)式から、下記の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≦(2200−200)/150=14
なお、非接触部の幅Dが100mmである場合には、上記(2)式から、N≦20の範囲が得られる。また、非接触部の幅Dが150mmである場合には、上記(2)式から、N≦14の範囲が得られる。さらに、非接触部の幅Dが200mmである場合には、上記(2)式から、N≦10の範囲が得られる。
本実施の形態においては、上述したように、基準側ロール群40aは、複数のロール群I,II・・・(ここで、ロール群I,II・・・は全て同じ構成である)から構成されている。また、1つのロール群Iは、互いに異なる5種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群40aを構成する複数の基準側ロール41が、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる5種類の分割位置で分割された複数の基準側ロール41で構成されている。よって、本実施の形態では、分割位置の種類数(N=5)が、上記(1)式及び(2)式から得られた分割位置の種類数の範囲内にある。
また、図2の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X1,X2,X3,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。1つのロール群Iにおいて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が0%以上且つ20%以下となっている。なお、図2では、40個の幅方向位置の非接触比率について説明しているが、鋳片の幅W−Tの範囲内における他の幅方向位置の非接触比率も0%以上且つ20%以下となっている。
また、上述したように、基準側ロール群40aは、ロール群I,II・・から構成されていることから、基準側ロール群40aを構成する基準側ロールの全数は、ロール群Iを構成する基準側ロール数の複数倍(例えば、10倍)となっている。したがって、基準側ロール群40aを構成する全ての基準側ロール41について、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が0%以上且つ20%以下となっている。
以上に述べたように、本実施の形態の連続鋳造装置100によると、複数の基準側ロール41及び複数の反基準側ロール42のそれぞれについて、最大幅がW(mm)であり且つ厚みがT(mm)である連続鋳造される鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いたW−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、非接触比率(鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率)が、0%以上であり且つ20%以下となるように、連続鋳造装置を構成することができる。したがって、鋳片の幅方向全体に亘って、中心偏析を改善することができるとともにザクの発生を抑えることができる。これにより、鋳片の幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造することができる。
また、複数の基準側ロール41及び複数の反基準側ロール42のそれぞれについて、分割位置の種類を比較的少なくすることができる。したがって、複数の基準側ロール41及び複数の反基準側ロール42のそれぞれを構成するロール(基準側ロール及び反基準側ロール)の種類数が少なくなるため、連続鋳造装置のコストを低減することができる。
続いて、本発明に係る連続鋳造装置の他の実施形態を、図10〜14を参照しつつ説明する。
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第2実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第2実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IA)
図10に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、ロール群IAを構成する全ての基準側ロールが鋳片の幅方向に2分割されている。ロール群IAは、鋳造方向に沿って、所定のピッチで並設された14本の基準側ロールR201,R202,R203,R204,R205,R206,R207,R208,R209,R210,R211,R212,R213,R214から構成されている。
基準側ロールR201は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r201a,r201bと、接触部r201aと接触部r201bとの間に配置された1個の非接触部d201とを有している。基準側ロールR202は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r202a,r202bと、接触部r202aとr202bとの間に配置された1個の非接触部d202とを有している。なお、基準側ロールR203,R204,R205,R206,R207,R208,R209,R210,R211,R212,R213,R214は、基準側ロールR201,R202と略同様な構成であるため、図10に図示しているが、説明を省略する。
ロール群IAは、2分割された14本の基準側ロールだけで構成されている。したがって、1本の基準側ロールは1個の非接触部を有することから、1つのロール群IAには、14個の非接触部(分割位置)d201,d202,d203,d204,d205,d206,d207,d208,d209,d210,d211,d212,d213,d214が配置されている。14個の非接触部(分割位置)は、互いに異なる幅方向位置に配置されている。
よって、1つのロール群IAは、互いに異なる14種類の分割位置で分割された14本の基準側ロールで構成されている。
また、本実施形態では、14本の基準側ロールR201,R202,R203・・・,R214に配置された14個の非接触部(分割位置)d201,d202,d203,d204,d205,d206,d207,d208,d209,d210,d211,d212,d213,d214が、鋳片の幅一端から他端へ(図10において、左から右へ)、順に、鋳片の幅方向に重複しないように配置されている。そして、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置に、同一数の非接触部(分割位置)が配置されている。
なお、本実施形態では、鋳片の幅W−Tの範囲内に非接触部(分割位置)が配置されるとは、非接触部(分割位置)の全部又は一部が鋳片の幅W−Tの範囲内に配置されることを示す。
1つのロール群IAに含まれる基準側ロールR201において、非接触部d201が配置された幅方向位置(例えば、X1)に、1個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IAにおける幅方向位置(X1)の非接触比率は、{1/(1+13)}×100≒7%である。また、1つのロール群IAに含まれる基準側ロールR202において、非接触部d202が配置された幅方向位置(X4)に、1個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IAにおける幅方向位置(X4)の非接触比率は、7%である。同様に考えたら、1つのロール群IAに含まれる他の基準側ロールの非接触部が配置された幅方向位置においても、1個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IAにおけるその幅方向位置の非接触比率は、7%である。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、上記(1)式及び(2)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
5≦N≦14
また、本実施形態では、図10に示すように、1つのロール群IAは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる14種類の分割位置で分割された14本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる14種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されていることから、分割位置の種類数Nは14である。
よって、本実施形態では、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にある。
また、図10の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X1,X2,X3,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にあるため、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、1つのロール群IAにおける非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IAから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IAを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様な効果を得ることができる。また、鋳片の幅W−Tの範囲内において、14種類の分割位置が重複しないように配置されており且つ全ての幅方向位置に配置された分割位置数が同一であることから、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が同一となっている。
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの分割数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第3実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第3実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IB)
図11に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、ロール群IBを構成する全ての基準側ロールが鋳片の幅方向に3分割されている。ロール群IBは、鋳造方向に沿って、所定のピッチで並設された5本の基準側ロールR301,R302,R303,R304,R305から構成されている。
基準側ロールR301は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r301a,r301b,r301cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d301,d302とを有している。基準側ロールR302は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r302a,r302b,r302cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d303,d304とを有している。なお、基準側ロールR303,R304,R305は、基準側ロールR301,R302と略同様な構成であるため、図11に図示しているが、説明を省略する。
ロール群IBは、3分割された5本の基準側ロールだけで構成されている。したがって、1本の基準側ロールは2個の非接触部を有することから、1つのロール群IBには、2×5=10個の非接触部(分割位置)d301,d302,d303,d304,d305,d306,d307,d308,d309,d310が配置されている。10個の非接触部(分割位置)は、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。
よって、1つのロール群IBは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる10種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。
1つのロール群IBに含まれる基準側ロールR301において、非接触部d301が配置された幅方向位置(例えば、X2)に、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IBにおける幅方向位置(X2)の非接触比率は、20%である。1つのロール群IBに含まれる基準側ロールR301において、非接触部d302が配置された幅方向位置(例えば、X22)に、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IBにおける幅方向位置(X22)の非接触比率は、20%である。
また、1つのロール群IBに含まれる基準側ロールR302において、非接触部d303が配置された幅方向位置(例えば、X10)に、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IBにおける幅方向位置(X10)の非接触比率は、20%である。1つのロール群IBに含まれる基準側ロールR302において、非接触部d304が配置された幅方向位置(例えば、X30)に、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IBにおける幅方向位置(X30)の非接触比率は、20%である。
同様に考えたら、1つのロール群IBに含まれる他の基準側ロールの非接触部が配置された幅方向位置においても、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IBにおけるその幅方向位置の非接触比率は、20%である。
本実施形態では、ロール群IBが3分割された基準側ロールだけで構成されているため、分割数Sは3である。したがって、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×(3−1)=10
また、第1実施形態と同様に、上記(2)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≦14
本実施形態では、図11に示すように、1つのロール群IBは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる10種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる10種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成された複数の基準側ロールで構成されている。よって、分割位置の種類数Nは10である。
したがって、本実施形態では、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にある。
また、図11の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X1,X2,X3,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にあるため、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、1つのロール群IBにおける非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IBから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IBを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様な効果を得ることができる。
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの分割数と、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第2実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第4実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IC)
図12に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、ロール群ICを構成する全ての基準側ロールが鋳片の幅方向に3分割されている。ロール群ICは、鋳造方向に沿って、所定のピッチで並設された7本の基準側ロールR401,R402,R403,R404,R405,R406,R407から構成されている。
基準側ロールR401は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r401a,r401b,r401cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d401,d402とを有している。基準側ロールR402は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r402a,r402b,r402cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d403,d404とを有している。なお、基準側ロールR403,R404,R405,R406,R407は、基準側ロールR401,R402と略同様な構成であるため、図12に図示しているが、説明を省略する。
ロール群ICは、3分割された7本の基準側ロールだけで構成されている。したがって、1本の基準側ロールは2個の非接触部を有することから、1つのロール群ICには、2×7=14個の非接触部(分割位置)d401,d402,d403,d404,d405,d406,d407,d408,d409,d410,d411,d412,d413,d414が配置されている。14個の非接触部(分割位置)d401,d402,d403,d404,d405,d406,d407,d408,d409,d410,d411,d412,d413,d414は、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。また、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置に、同一数の非接触部(分割位置)が配置されている。
よって、1つのロール群ICは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる14種類の分割位置で分割された7本の基準側ロールで構成されている。
1つのロール群ICに含まれる基準側ロールR401において、非接触部d401が配置された幅方向位置(例えば、X1)に、1個の非接触部の他に、6個の接触部が配置されていることから、1つのロール群ICにおける幅方向位置(X1)の非接触比率は、{1/(1+6)}×100≒14%である。1つのロール群ICに含まれる基準側ロールR401において、非接触部d402が配置された幅方向位置(X22)に、1個の非接触部の他に、6個の接触部が配置されていることから、1つのロール群ICにおける幅方向位置(X22)の非接触比率は、14%である。
また、1つのロール群ICに含まれる基準側ロールR402において、非接触部d403が配置された幅方向位置(X4)に、1個の非接触部の他に、6個の接触部が配置されていることから、1つのロール群ICにおける幅方向位置(X4)の非接触比率は、14%である。1つのロール群ICに含まれる基準側ロールR402において、非接触部d404が配置された幅方向位置(X25)に、1個の非接触部の他に、6個の接触部が配置されていることから、1つのロール群ICにおける幅方向位置(X25)の非接触比率は、14%である。
同様に考えたら、1つのロール群ICに含まれる他の基準側ロールの非接触部が配置された幅方向位置においても、1個の非接触部の他に、6個の接触部が配置されていることから、1つのロール群ICにおけるその幅方向位置の非接触比率は、14%である。
本実施の形態では、ロール群ICが3分割された基準側ロールだけで構成されているため、分割数Sは3である。したがって、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×(3−1)=10
また、第1実施形態と同様に、上記(2)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≦14
本実施形態では、図12に示すように、1つのロール群ICは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる14種類の分割位置で分割された7本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる14種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。よって、分割位置の種類数Nは14である。
したがって、本実施形態では、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にある。
また、図12の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X1,X2,X3,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にあるため、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、1つのロール群ICにおける非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群ICから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群ICを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様な効果を得ることができる。また、鋳片の幅W−Tの範囲内において、14種類の分割位置が重複しないように配置されており且つ全ての幅方向位置に配置された分割位置数が同一であることから、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が同一となっている。
〔第5実施形態〕
第5実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第5実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第5実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群ID)
図13に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、ロール群IDを構成する全ての基準側ロールが鋳片の幅方向に2分割されている。ロール群IDは、鋳造方向に沿って、所定のピッチで並設された15本の基準側ロールR501,R502,R503,R504,R505,R506,R507,R508,R509,R510,R511,R512,R513,R514,R515から構成されている。
基準側ロールR501は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r501a,r501bと、接触部r501aと接触部r501bとの間に配置された1個の非接触部d501とを有している。基準側ロールR502は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r502a,r502bと、接触部r502aとr502bとの間に配置された1個の非接触部d502とを有している。なお、基準側ロールR503,R504,R505,R506,R507,R508,R509,R510,R511,R512,R513,R514,R515は、基準側ロールR501,R502と略同様な構成であるため、図13に図示しているが、説明を省略する。
ロール群IDは、2分割された15本の基準側ロールだけで構成されている。したがって、1本の基準側ロールは1個の非接触部を有することから、1つのロール群IDには、15個の非接触部(分割位置)d501,d502,d503,d504,d505,d506,d507,d508,d509,d510,d511,d512,d513,d514,d515が配置されている。
本実施形態では、15個の非接触部(分割位置)d501,d502,d503,d504,d505,d506,d507,d508,d509,d510,d511,d512,d513,d514,d515が、鋳片の幅一端から他端へ(図13において、左から右へ)、順に、互いに異なる幅方向位置に配置されている。また、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置に、非接触部(分割位置)が配置されている。
非接触部(分割位置)d505と非接触部(分割位置)d506は、幅方向位置X15付近の範囲で、部分的に重複している。また、非接触部(分割位置)d506と非接触部(分割位置)d507は、幅方向位置X17付近の範囲で、部分的に重複している。同様に、非接触部d508と非接触部d509,非接触部d509と非接触部d510,非接触部d510と非接触部d511についても、2つの非接触部(分割位置)が鋳片の幅方向に部分的に重複している。なお、その他の非接触部(分割位置)は、鋳片の幅方向に重複していない。
したがって、2個の非接触部(分割位置)が鋳片幅方向に部分的に重複した幅方向位置には、2個の非接触部の他に、13個の非接触部が配置されている。また、非接触部(分割位置)が他の非接触部(分割位置)と重複しないように配置された幅方向位置には、1個の非接触部の他に、15個の非接触部が配置されている。
よって、1つのロール群IDは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる15種類の分割位置で分割された15本の基準側ロールで構成されている。
<2個の非接触部(分割位置)が鋳片の幅方向に部分的に重複して配置された幅方向位置の非接触比率>
1つのロール群IDに含まれる基準側ロールR505において、非接触部d505が配置された幅方向位置(例えば、X15)に、非接触部d506が配置されていることから、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されている。したがって、1つのロール群IDにおける幅方向位置(X15)の非接触比率は、{2/(2+13)}×100≒13%である。また、1つのロール群IDに含まれる基準側ロールR506において、非接触部d506が配置された幅方向位置(例えば、X17)に、非接触部d507が配置されていることから、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されている。したがって、1つのロール群IDにおける幅方向位置(X17)の非接触比率は、13%である。同様に考えたら、2個の非接触部(分割位置)が鋳片の幅方向に部分的に重複した幅方向位置においても、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IDにおけるその幅方向位置の非接触比率は、13%である。
<非接触部(分割位置)が他の非接触部(分割位置)と重複しないように配置された幅方向位置の非接触比率>
1つのロール群IDに含まれる基準側ロールR501において、非接触部d501が配置された幅方向位置(例えば、X2)に、1個の非接触部の他に、14個の接触部が配置されていることから、幅方向位置(X2)の非接触比率は、{1/(1+14)}×100≒7%である。また、1つのロール群IDに含まれる基準側ロールR502において、非接触部d502が配置された幅方向位置(X5)に、1個の非接触部の他に、14個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IDにおける幅方向位置(X5)の非接触比率は、7%である。同様に、他の基準側ロールの非接触部(他の非接触部と鋳片の幅方向に重複しないように配置された非接触部)が配置された幅方向位置においても、1個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IDにおける非接触部が配置された幅方向位置の非接触比率は、7%である。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5
また、本実施形態では、図13に示すように、1つのロール群IDは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる15種類の分割位置で分割された15本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる15種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。よって、分割位置の種類数Nは15である。
したがって、本実施形態では、分割位置の種類数が、上記(1)式で得られた範囲内にある。
また、図13の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X1,X2,X3,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式で得られた範囲内にあるため、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、1つのロール群IDにおける非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IDから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IDを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、鋳片の幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造することができる。
〔第6実施形態〕
第6実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの分割数と、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第6実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第6実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IE)
図14に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、ロール群IEを構成する全ての基準側ロールが鋳片の幅方向に3分割されている。ロール群IEは、鋳造方向に沿って、所定のピッチで並設された15本の基準側ロールR601,R602,R603,R604,R605,R606,R607,R608,R609,R610,R611,R612,R613,R614,R615から構成されている。
基準側ロールR601は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r601a,r601b,r601cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d601,d602とを有している。基準側ロールR602は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r602a,r602b,r602cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d603,d604とを有している。なお、基準側ロールR603,R604,R605,R606,R607,R608,R609,R610,R611,R612,R613,R614,R615は、基準側ロールR601,R602と略同様な構成であるため、図14に図示しているが、説明を省略する。また、図14では、同一の幅方向位置に配置された非接触部を、括弧書きで同じ符号を示している。
ロール群IEは、3分割された15本の基準側ロールだけで構成されている。したがって、1本の基準側ロールは2個の非接触部を有することから、1つのロール群ICには、2×15=30個の非接触部(分割位置)d601,d602,d603,d604,d605,d606,d607,d608,d609,d610,d611,d612,d613,d614,d615,d616,d617,d618,d619,d620,d621,d622,d623,d624,d625,d626,d627,d628,d629,d630が配置されている。
30個の非接触部は、15種類の互いに異なる分割位置に2個ずつ配置されている。また、非接触部は、鋳片の幅一端から他端へ(図14において、左から右へ)、重複しないように配置されている。したがって、上記15種類の分割位置には、それぞれ、2個の非接触部と13個の接触部とが配置されている。また、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置に、同一数(2個)の非接触部(分割位置)が配置されている。
本実施形態では、1つのロール群IEは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる15種類の分割位置で分割された15本の基準側ロールで構成されている。
基準側ロールR601において、非接触部d601が配置された幅方向位置(例えば、X1)に、基準側ロールR609の非接触部d617が配置されている。したがって、幅方向位置(X1)には、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IEにおける幅方向位置(X1)の非接触比率は、{2/(2+13)}×100=13%である。基準側ロールR601において、非接触部d602が配置された幅方向位置(例えば、X21)に、基準側ロールR608の非接触部d615が配置されている。したがって、幅方向位置(X21)には、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IEにおける幅方向位置(X21)の非接触比率は、13%である。
また、基準側ロールR602において、非接触部d603が配置された幅方向位置(例えば、X3)に、基準側ロールR610の非接触部d619が配置されている。したがって、幅方向位置(X3)には、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IEにおける幅方向位置(X3)の非接触比率は、13%である。基準側ロールR602において、非接触部d604が配置された幅方向位置(例えば、X24)に、基準側ロールR609の非接触部d618が配置されている。したがって、幅方向位置(X24)には、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IEにおける幅方向位置(X24)の非接触比率は、13%である。
同様に、他の基準側ロールの非接触部が配置された幅方向位置においても、2個の非接触部の他に、13個の接触部が配置されていることから、非接触部が配置された1つのロール群IEにおける幅方向位置の非接触比率は、13%である。
本実施の形態では、ロール群IEが3分割された基準側ロールだけで構成されているため、分割数Sは3である。
したがって、上記の式から、種類数Nが得られる。
N≧5×(3−1)=10
本実施形態では、図14に示すように、1つのロール群IEは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる15種類の分割位置で分割された15本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる15種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されていることから、分割位置の種類数Nは15である。よって、分割位置の種類数Nは、N≧10を満たす。
また、図14の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、41個の互いに異なる幅方向位置x1,x2,x3,・・・x40,x41と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式で得られた範囲内にあるため、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、1つのロール群IEにおける0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IEから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IEを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、鋳片の幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造することができる。
次に、図15〜18を参照しつつ、本発明に係る比較例を説明する。
〔比較例1〕
比較例1に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例1に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例1に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IF)
図15に示すように、本比較例の連続鋳造装置では、ロール群IFは、2分割された4本の基準側ロールR701,R702,R703,R704から構成されている。
基準側ロールR701は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r701a,r701bと、接触部r701aと接触部r701bとの間に配置された1個の非接触部d701とを有している。なお、基準側ロールR702,R703,R704は、基準側ロールR701と略同様な構成であるため、図15に図示しているが、説明を省略する。
1本の基準側ロールは1個の非接触部を有することから、1つのロール群IFには、4個の非接触部(分割位置)d701,d702,d703,d704が配置されている。本比較例では、4個の非接触部(分割位置)d701,d702,d703,d704が、鋳片の幅方向に重複しないように配置されている。
したがって、1つのロール群IFは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる4種類の分割位置で分割された4本の基準側ロールで構成されている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IFから構成されていることから、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる4種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。したがって、分割位置の種類数Nは、4である。
また、本比較例では、第1実施形態と同様に、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5
したがって、本比較例では、分割位置の種類数(N=4)が、上記(1)式で得られた範囲内にない。
また、1つのロール群IFに含まれる基準側ロールR701において、非接触部d701が配置された幅方向位置(X7)に、1個の非接触部の他に、3個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IFにおける幅方向位置(X7)の非接触比率は、{1/(1+3)}×100=25%である。基準側ロール群は、複数のロール群IFから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IFを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、幅方向位置(X7)の非接触比率は、25%である。本比較例においては、分割位置の種類数が、N≧5を満たさないため、鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
〔比較例2〕
比較例2に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの分割数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例2に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例2に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IG)
図16に示すように、本比較例の連続鋳造装置では、ロール群IGは、3分割された5本の基準側ロールR801,R802,R803,R804,R805から構成されている。
基準側ロールR801は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r801a,r801b,r801cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d801,d802とを有している。なお、基準側ロールR802,R803,R804,R805は、基準側ロールR801と略同様な構成であるため、図16に図示しているが、説明を省略する。また、図16では、同じ幅方向位置に配置された非接触部は、括弧書きにより同じ符号で示されている。
1本の基準側ロールは2個の非接触部を有することから、1つのロール群IGには、2×5=10個の非接触部(分割位置)d801,d802,d803,d804,d805,d806,d807,d808,d809,d810が配置されている。本比較例では、互いに異なる9種類の分割位置に、1個または2個の非接触部(分割位置)が配置されている。
したがって、1つのロール群IGは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる9種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IGから構成されていることから、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる9種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。したがって、分割位置の種類数Nは、9である。
本比較例では、ロール群IGが3分割された基準側ロールだけで構成されているため、分割数Sは3である。したがって、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×(3−1)=10
本比較例では、分割位置の種類数(N=10)が、上記(1)式で得られた範囲内にない。
また、1つのロール群IGに含まれる基準側ロールR802において、非接触部d802が配置された幅方向位置(X40)に、基準側ロールR805において、非接触部d809が配置されている。したがって、幅方向位置(X40)には、2個の非接触部の他に、3個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IGにおける幅方向位置(X40)の非接触比率は、{2/(2+3)}×100=40%である。基準側ロール群は、複数のロール群IGから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IGを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、幅方向位置(X40)の非接触比率は、40%である。本比較例においては、分割位置の種類数が、N≧10を満たさないため、鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
〔比較例3〕
比較例3に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数において、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例3に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例3に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IH)
図17に示すように、本比較例の連続鋳造装置では、ロール群IHは、2分割された9本の基準側ロールから構成されている。
基準側ロールR901は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r901a,r901bと、接触部r901aと接触部r901bとの間に配置された1個の非接触部d901とを有している。なお、基準側ロールR902,R903,R904,R905,R906,R907,R909,R909は、基準側ロールR901と略同様な構成であるため、図17に図示しているが、説明を省略する。また、基準側ロールR902と基準側ロールR907、基準側ロールR904と基準側ロールR909、及び基準側ロールR905と基準側ロールR909は、それぞれ同じ構成からなるが、図17では、異なる符号で示されている。さらに、図17では、同じ幅方向位置に配置された非接触部(分割位置)は、括弧書きで同じ符号で示されている。
1本の基準側ロールは1個の非接触部を有することから、1つのロール群IHには、1×9=9個の非接触部(分割位置)d901,d902,d903,d904,d905,d906,d907,d909,d909が配置されている。本比較例では、互いに異なる5種類の分割位置に、1個または2個の非接触部(分割位置)が配置されている。
したがって、1つのロール群IHは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる5種類の分割位置で分割された9本の基準側ロールで構成されている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IHから構成されていることから、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる5種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。したがって、分割位置の種類数Nは、5である。
本比較例では、第1実施形態と同様に、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5
したがって、本比較例では、分割位置の種類数(N=5)が、上記(1)式で得られた範囲内にある。
1つのロール群IHに含まれる基準側ロールR901において、非接触部d901が配置された幅方向位置(X7)には、基準側ロールR906の非接触部d906が配置されている。したがって、幅方向位置(X7)には、2個の非接触部の他に、7個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IHにおける幅方向位置(X7)の非接触比率は、{2/(2+7)}×100≒22%である。基準側ロール群は、複数のロール群IHから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IHを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、幅方向位置(X7)の非接触比率は、約22%である。したがって、本比較例においては鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
〔比較例4〕
比較例4に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの分割数と、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例4に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例4に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
(ロール群IJ)
本実施の形態に係るロール群IJは、3分割された9本の基準側ロールR1101,R1102,R1103,R1104,R1105,R1106,R1107,R1108,R1109から構成されている。
基準側ロールR1101は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r1101a,r1101b,r1101cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d1101,d1102とを有している。なお、基準側ロールR1102,R1103,R1104,R1105,R1106,R1107,R1108,R1109は、基準側ロールR1101と略同様な構成であるため、図18に図示しているが、説明を省略する。また、基準側ロールR1101と基準側ロールR1106、基準側ロールR1102と基準側ロールR1107、基準側ロールR1103と基準側ロールR1108、及び基準側ロールR1104と基準側ロールR1109はそれぞれ同じ構成からなるが、図18では、異なる符号で示されている。さらに、図18では、同じ幅方向位置に配置された非接触部は、括弧書きにより同じ符号で示されている。
1本の基準側ロールは2個の非接触部を有することから、1つのロール群IJには、2×9=18個の非接触部(分割位置)d1101,d1102,d1103,d1104,d1105,d1106,d1107,d1108,d1109,d1110,d1111,d1112,d1113,d1114,d1115,d1116,d1117,d1118が配置されている。本比較例では、互いに異なる10種類の分割位置に、1個または2個の非接触部(分割位置)が配置されている。
したがって、1つのロール群IJは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる10種類の分割位置で分割された4本の基準側ロールで構成されている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IJから構成されていることから、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる10種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。したがって、分割位置の種類数Nは、10である。
本比較例では、ロール群IJが3分割された基準側ロールだけで構成されているため、分割数Sは3である。したがって、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×(3−1)=10
本比較例では、分割位置の種類数(N=10)が、上記(1)式で得られた範囲内にある。
1つのロール群IJに含まれる基準側ロールR1101において、非接触部d1101が配置された幅方向位置(X2)には、基準側ロールR1106の非接触部d1111が配置されている。したがって、幅方向位置(X2)には、2個の非接触部の他に、7個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IJにおける幅方向位置(X2)の非接触比率は、{2/(2+7)}×100≒22%である。基準側ロール群は、複数のロール群IJから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IJを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、幅方向位置(X2)の非接触比率は、約22%である。したがって、本比較例においては鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態においては、1つのロール群に配置される非接触部(分割位置)の幅が全て同じ幅Dであるが、1つのロール群に配置される非接触部(分割位置)の幅が、全て同じ幅でなくてもよい。また、本実施形態では、1つのロール群において、複数の基準側ロールが所定のピッチで並設されているが、1つのロール群において、複数の基準側ロールが所定のピッチで並設されていなくてもよい。
また、本実施形態では、基準側ロールの接触部と反基準側ロールの接触部とは、鋳片の幅方向について、同じ位置に配置されているが、それらは同じ位置に配置されていなくてもよい。したがって、一対のロール対を構成する基準側ロールと反基準側ロールとが同じ構成でなくてもよい。また、基準側ロール群と反基準側ロール群とが同じ構成でなくてもよい。例えば、基準側ロール群を構成する基準側ロールの分割数と、反基準側ロール群を構成する反基準側ロールの分割数とが異なっていてもよい。
さらに、本実施形態では、1つのロール群において、複数の基準側ロールが、鋳造方向に、所定の順序で並設されているが、1つのロール群が、鋳片の幅W−Tの範囲内において、上記(1)式の範囲内にある互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されていれば、1つのロール群において、複数の基準側ロールが鋳造方向に並設される順序は、変更可能である。例えば、第1実施形態において、1つのロール群Iを構成する基準側ロールが、基準側ロールR1,・・,R4,R5の順に鋳造方向に並設されている必要がなく、基準側ロールR1,・・,R4,R5の順序は変更可能である。
加えて、基準側ロール群が、複数のロール群から構成されている場合に、複数のロール群を構成する全ての基準側ロールの順番を並べ替えてもよい。このとき、鋳片の幅W−Tの範囲内のそれぞれの幅方向位置での非接触比率は変化しないが、基準側ロールの分割位置(非接触部)を鋳造方向に偏らせないためには、ロール群を繰り返すなどの周期的な配列とすることが好ましい。
また、本実施形態では、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数が、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍である場合を説明したが、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が0%以上且つ20%以下であれば、基準側ロール群に、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍の数の基準側ロール以外の基準側ロールが追加されてもよい。このとき、追加される基準側ロールの分割位置(非接触部)が、1つのロール群に配置されるN種類の分割位置と異なる種類の分割位置を含んでいないときは、全ての基準側ロールについての分割位置の種類数はNである。また、追加される基準側ロールの分割位置(非接触部)が、1つのロール群に配置されるN種類の分割位置と異なる種類の分割位置を含んでいるときは、全ての基準側ロールについての分割位置の種類数Nが増加することから、上記(1)式を満たす。
なお、上述の変形例では、基準側ロールについて説明したが、反基準側ロールについても同様である。