JP5713486B2 - 粘結剤コーテッド耐火物、鋳型、鋳型の製造方法 - Google Patents

粘結剤コーテッド耐火物、鋳型、鋳型の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋳型などの製造に用いられる粘結剤コーテッド耐火物、この粘結剤コーテッド耐火物を用いた鋳型及び鋳型の製造方法に関するものである。
鋳型の製造方法には従来から各種のものがあるが、その一つにシェルモールド法がある。シェルモールド法は、硅砂など鋳型用の耐火骨材を粘結剤によって結合させて造型することによって得られるものであり、寸法精度が良好な鋳型が得られる等の優れた特性を有するため、従来から多用されている。
このシェルモールド用の粘結剤としては、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が一般に用いられており、耐火骨材と熱硬化性樹脂とを混合して耐火骨材の表面に熱硬化性樹脂を被覆した粘結剤コーテッド耐火物(一般にレジンコーテッドサンドと呼ばれる)を調製し、この粘結剤コーテッド耐火物を加熱された金型内に充填し、熱硬化性樹脂粘結剤を溶融・硬化させることによって、鋳型を造型するようにしている。
粘結剤コーテッド耐火物はそれ自体がサラサラした粒状物であり、流動性が良好であるため、金型への充填性が良好であり、空気輸送なども可能で取り扱いも良好である。このため、粘結剤コーテッド耐火物を用いたシェルモールド法は自動車鋳物用などに多用されている。
このような粘結剤コーテッド耐火物において、耐火骨材の表面を被覆する熱硬化性樹脂粘結剤としては、上記のようにフェノール樹脂が一般的であり、フェノール樹脂のなかでもノボラック型フェノール樹脂がよく使用されている。このノボラック型フェノール樹脂は熱可塑性であって加熱しても硬化しないために、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを配合して使用するのが普通である(例えば特許文献1等参照)。
そしてノボラック型フェノール樹脂を粘結剤として調製される粘結剤コーテッド耐火物を250〜350℃に加熱した金型に充填すると、金型からの熱伝達で加熱されてヘキサメチレンテトラミンがホルムアルデヒドとアンモニアに分解され、ホルムアルデヒドの大部分はノボラック型フェノール樹脂と反応してフェノール樹脂を不融状態に硬化させることができるものである。
しかし、反応に寄与しなかったホルムアルデヒドや、殆どのアンモニアは、鋳型を造型する際や、造型後に、大気中に揮散することになり、このホルムアルデヒドやアンモニアによって、作業者の健康に対してだけでなく、環境が汚染されるという問題が発生するものであった。フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、このような問題は幾分か低減できるが、レゾール型フェノール樹脂においても未反応のホルムアルデヒドが放出されるので、依然として問題が残るものである。
また、フェノール樹脂を粘結剤とする粘結剤コーテッド耐火物を用いた鋳型に溶湯を鋳込んで鋳造する際に、溶湯の熱でフェノール樹脂が分解し、例えばフェノール、キシレノール、トルエン、ベンゼン、メタンなどが放出されることになり、この点でも、作業者の健康に対してだけでなく、環境の汚染が問題になるものであった。さらに、フェノール樹脂は耐熱性が高く、残留炭素量も多いため、鋳型に溶湯を注入して鋳物を鋳造した際に、溶湯の熱で鋳型を崩壊させ難いものであり、鋳物を鋳型から取り出すために、鋳型に衝撃を加えたり、高温で長時間加熱してフェノール樹脂を分解させたりする必要があって、脱型に手間を要するという問題もあった。
一方、水ガラスを粘結剤として用いることが従来から知られており、特にCOガスを吹き込んで水ガラスを硬化させて鋳型を製造するCOプロセスが実用化されている。
このように水ガラスを粘結剤として用いることによって、フェノール樹脂の場合のようなホルムアルデヒドやアンモニア等の放出による臭気や環境汚染の問題がなくなるものである。
しかし水ガラスを硬化させて作製した鋳型は、鋳造後の崩壊性が極めて悪く、しかも水ガラスはアルカリ性が強いため、水ガラスが粘結剤として多量に付着した耐火骨材は再利用することが難しいという問題があった。
また、粘結剤として硫酸マグネシウムのような水溶性無機硫酸化合物を用いることも提案されており(特許文献2参照)、さらに食塩のような水溶性無機化合物を粘結剤として用いることも検討されている。
これらの水溶性無機化合物を粘結剤として用いることによって、フェノール樹脂の場合のようなホルムアルデヒドやアンモニア等の放出による臭気や環境汚染の問題がなくなるものであり、また鋳型を水に漬けると水溶性無機化合物が水に容易に溶けるので、鋳造後の鋳型の崩壊性が良好なものになるものである。
しかし、上記の水ガラス、硫酸マグネシウムや食塩などの水溶性無機化合物を粘結剤として用いる場合、いずれも湿潤な状態で耐火骨材と混練して使用されるものであり、粘結剤コーテッド耐火物は耐火骨材に湿潤な水溶性無機化合物が付着した形態であるため、粘結剤コーテッド耐火物は流動性が悪い。このため、粘結剤コーテッド耐火物を型に充填する作業が困難になり、充填不良が発生し易いと共に、さらに生産性が極めて悪いという問題を有するものであった。
特開2002−346691号公報 特開昭53−119724号公報
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、成形時や使用時にガスが発生することを低減することができると共に、流動性が良好な粘結剤コーテッド耐火物を提供することを目的とするものであり、また崩壊性が良好であり、耐熱性や強度に優れた鋳型を提供することを目的とするものであり、さらに不良の発生を防ぎつつ、生産性高く鋳型を製造することができる鋳型の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る粘結剤コーテッド耐火物は、耐火骨材の表面に、粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を含有する固形のコーティング層が被覆されていることを特徴とするものである。
耐火骨材に被覆されたコーティング層は固形の粘結剤からなるものであり、粘着性を有することなく流動性が良好な粘結剤コーテッド耐火物を得ることができるものである。そして、糖類と水溶性無機化合物を粘結剤として耐火骨材を結合させることができるものであり、糖類や水溶性無機化合物は加熱分解されても、有毒なガスを多量に放出するようなことがなく、環境を汚染するようなおそれがないものである。また糖類は容易に加熱分解されると共に、水溶性無機化合物は水に容易に溶解するものであり、崩壊性の良好な鋳型を製造することができるものである。しかも粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を併用することによって、耐熱性や強度に優れた鋳型を製造することができるものである。
また本発明は、上記の水溶性無機化合物が、水ガラス、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酸化アルミニウムナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸化合物から選ばれるものであることを特徴とするものである。
これらの水溶性無機化合物はいずれも、水に溶解し易く、しかも安価であり、崩壊性の良好な鋳型を安価に製造することができるものである。
また本発明に係る鋳型は、上記の粘結剤コーテッド耐火物が、コーティング層の粘結剤によって結合して形成されたことを特徴とするものである。
上記のように、糖類と水溶性無機化合物を粘結剤として耐火骨材を結合させることができるものであり、糖類や水溶性無機化合物は加熱分解されても、有毒なガスを多量に放出するようなことがなく、環境を汚染することのない鋳型を得ることができるものである。また糖類は容易に加熱分解されると共に、水溶性無機化合物は水に容易に溶解するものであり、崩壊性の良好な鋳型を得ることができるものである。しかも粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を併用することによって、耐熱性や強度に優れた鋳型を得ることができるものである。
また本発明に係る鋳型の製造方法は、上記の粘結剤コーテッド耐火物を型内に充填し、この型内に水蒸気を吹き込んで粘結剤コーテッド耐火物を加熱し、コーティング層の粘結剤を固化乃至硬化させることを特徴とするものである。
耐火骨材に被覆されたコーティング層は固形の粘結剤からなるものであって、粘結剤コーテッド耐火物は粘着性を有することなく流動性が良好なものであり、型への充填性が良く、充填不良の発生を防ぐことができるものである。そして、水蒸気は高い凝縮潜熱を有するので、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込むことによって、水蒸気が粘結剤コーテッド耐火物に接する際にこの潜熱が伝達され、粘結剤コーテッド耐火物を瞬時に加熱して粘結剤を固化乃至硬化させることができるものであり、型を予め高温に加熱しておくような必要なく、安定して短時間で鋳型を製造することができると共に、仮に有毒ガスが発生しても水蒸気の凝縮水に吸収させて、環境が汚染されることを低減することができるものである。
また本発明は、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込んで、水蒸気の凝縮水を粘結剤に供給すると共に、次いで水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させることによって、コーティング層の粘結剤を固化乃至硬化させることを特徴とするものである。
水蒸気を型内に吹き込むと、水蒸気が粘結剤コーテッド耐火物に接触して熱を奪われて発生する凝縮水が粘結剤に供給されるものであって、固形状態の糖類や水溶性無機化合物をこの凝縮水によって湿らせて粘着性を与え、耐火骨材を糖類や水溶性無機化合物のこの粘着力で結合させることができ、次いで水蒸気の凝縮潜熱で粘結剤に供給した水分を蒸発させると共に粘結剤を固化乃至硬化させることができるものであり、固形状態の糖類や水溶性無機化合物で耐火骨材を結合させて、強度の高い鋳型を製造することができるものである。
また本発明は、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込んで、水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させ、次に加熱した気体を型内に吹き込んで、型内の凝縮水を蒸発させると共にコーティング層の粘結剤が固化乃至硬化する温度以上に加熱することを特徴とするものである。
粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込むことによって、水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を100℃近傍まで急速に上昇させることができると共に、次いで、加熱した気体を型内に吹き込むことによって、水分の少ないこの気体で凝縮水を迅速に蒸発させることができ、短時間で100℃以上の温度に上昇させることができるものであり、粘結剤コーテッド耐火物の粘結剤が固化乃至硬化する温度以上にまで型内の温度を上昇させる速度を速めることができるものであって、短時間の加熱で強度の高い鋳型を製造することができるものである。
また本発明において、上記の加熱した気体が、加熱した空気であることを特徴とするものである。
加熱した気体として大気中の空気を利用することによって、コスト安価なシステムにすることができるものである。
また本発明において、上記の加熱した気体が、水蒸気と空気との混合気体であることを特徴とするものである。
このように加熱した気体として水蒸気と空気との混合気体を用いることによって、型に吹き込むために使用する水蒸気と大気中の空気をそのまま利用することができ、コスト安価なシステムにすることができるものである。
また本発明において、上記の水蒸気が、過熱水蒸気であることを特徴とするものである。
過熱水蒸気は高温の乾き蒸気であって、水蒸気としてこのように過熱水蒸気を用いることによって、型内で水蒸気から凝縮水が過剰に生成されることが少なくなり、型内の粘結剤コーテッド耐火物の温度上昇の速度を速めることができるものである。
また本発明は、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水分を供給して粘結剤を湿らせた後、型内に過熱水蒸気を吹き込んで、水分を乾燥させると共に過熱水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させてコーティング層の粘結剤を固化乃至硬化させることを特徴とするものである。
このようにまず型内に水分を供給して粘結剤を湿らせることによって、糖類や水溶性無機化合物に粘着性を与え、耐火骨材を糖類や水溶性無機化合物のこの粘着力で結合させることができるものであり、次いで乾き蒸気である過熱水蒸気を吹き込むことによって、型内の水分を効率良く蒸発させることができると共に、効率良く粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させて粘結剤を固化乃至硬化させることができるものであり、鋳型の製造の効率を高めることができるものである。
また本発明は、予備加熱した粘結剤コーテッド耐火物を型内に充填することを特徴とするものである。
このように粘結剤コーテッド耐火物を予備加熱しておくことによって、夏季や冬季など季節の気温差に伴う粘結剤コーテッド耐火物の温度差を解消することができると共に、型内に吹き込む水蒸気の温度低下を抑制することができ、コーティング層の粘結剤が乾燥して固化する温度以上にまで型内の温度を上昇させる速度を速めることができるものであって、鋳型の製造効率を高めることができるものである。
本発明に係る粘結剤コーテッド耐火物によれば、耐火骨材に被覆されたコーティング層は固形の粘結剤からなるものであり、粘着性を有することなく流動性が良好な粘結剤コーテッド耐火物を得ることができるものである。そして、糖類と水溶性無機化合物を粘結剤として耐火骨材を結合させることができるものであり、糖類や無機化合物は加熱分解されても、有毒なガスを多量に放出するようなことがなく、環境を汚染するようなおそれがないものである。また糖類は容易に加熱分解されると共に、水溶性無機化合物は水に容易に溶解するものであり、崩壊性の良好な鋳型を製造することができるものである。しかも粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を併用することによって、耐熱性や強度に優れた鋳型を製造することができるものである。
また本発明に係る鋳型は、糖類と水溶性無機化合物を粘結剤として耐火骨材を結合することによって形成されているものであり、糖類や無機化合物は加熱分解されても、有毒なガスを多量に放出するようなことがなく、環境を汚染するようなおそれがないものである。また糖類は容易に加熱分解されると共に、水溶性無機化合物は水に容易に溶解するものであり、崩壊性の良好な鋳型を得ることができるものである。しかも粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を併用することによって、耐熱性や強度に優れた鋳型を得ることができるものである。
また本発明に係る鋳型の製造方法によれば、耐火骨材に被覆されたコーティング層は固形の粘結剤からなるものであって、粘結剤コーテッド耐火物は粘着性を有することなく流動性が良好なものであり、型への充填性が良く、充填不良の発生を防ぐことができるものである。そして、水蒸気は高い凝縮潜熱を有するので、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込むことによって、水蒸気が粘結剤コーテッド耐火物に接する際にこの潜熱が伝達され、粘結剤コーテッド耐火物を瞬時に加熱して粘結剤を固化乃至硬化させることができるものであり、型を予め高温に加熱しておくような必要なく、安定して生産性高く鋳型を製造することができると共に、仮に有毒ガスが発生しても水蒸気の凝縮水に吸収させて、環境が汚染されることを低減することができるものである。
本発明に係る鋳型の製造方法の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ各工程での断面図である。 発生ガス量測定装置の概略図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明において耐火骨材としては、特に限定されるものではないが、硅砂、山砂、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂、その他、人工砂などを例示することができるものであり、これらを1種単独で用いる他、複数種を混合して用いることもできる。
本発明に係る粘結剤コーテッド耐火物は、この耐火骨材の粒子の表面を、粘結剤を含有するコーティング層で被覆することによって形成されるものである。そして本発明は、粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を含有するものを用いるようにしたものである。
この糖類としては、単糖類、少糖類、多糖類を用いることができ、各種の単糖類、少糖類、多糖類のなかから、1種を選んで単独で用いる他、複数種を選んで併用することもできる。
本発明において使用される単糖類としては、特に限定されるものではないが、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースなどを挙げることができる。
また少糖類としては、マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、セロビオースなどの二糖類を挙げることができる。
さらに多糖類としては、でんぷん糖、デキストリン、ザンサンガム、カードラン、プルラン、シクロアミロース、キチン、キトサン、セルロース、でんぷんなどがあり、これらのうち一種を選択して、あるいは複数種を併用して、用いることができる。またでんぷんとしては、未加工でんぷん及び加工でんぷんが挙げられる。具体的には馬鈴薯でんぷん、コーンスターチ、ハイアミロース、甘藷でんぷん、タピオカでんぷん、サゴでんぷん、米でんぷん、アマランサスでんぷんなどの未加工でんぷん、及びこれらの加工でんぷん(焙焼デキストリン、酵素変性デキストリン、酸処理でんぷん、酸化でんぷん)、ジアルデヒド化でんぷん、エーテル化でんぷん(カルボキシメチルでんぷん、ヒドロキシアルキルでんぷん、カチオンでんぷん、メチロール化でんぷんなど)、エステル化でんぷん(酢酸でんぷん、リン酸でんぷん、コハク酸でんぷん、オクテニルコハク酸でんぷん、マレイン酸でんぷん、高級脂肪酸エステル化でんぷんなど)、架橋でんぷん、クラフト化でんぷん、及び湿熱処理でんぷんなどが挙げられる。これらのなかでも、焙焼デキストリン、シクロデキストリン、酵素変性デキストリン、酸処理でんぷん、酸化でんぷんのように低分子化されたもの、及び架橋でんぷんなどの粘度の低いでんぷんが好ましい。さらに糖類を含有する植物、例えば麦、米、馬鈴薯、トウモロコシ、タピオカ、甘藷、サゴ、アマランサス等の粉末などを用いることができる。また食用に供するために市販されている糖、例えば白粗、中粗、グラニュ糖、転化糖、上白糖、中白糖、三温糖などを用いることもできる。
上記のコーティング層には、糖類、特に多糖類の硬化剤として、カルボン酸を含有するようにしてもよい。カルボン酸としては、特に限定されるものではないが、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、ブタンテトラジカルボン酸、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体などの多価カルボン酸を挙げることができる。コーティング層中のカルボン酸の含有量は、糖類に対するカルボン酸の配合量が、糖類100質量部に対してカルボン酸0.1〜10質量部となる範囲が好ましい。カルボン酸は予め水に溶解させた状態で糖類と混合するのが、硬化剤としての効果を高く発揮するので好ましい。
また本発明において水溶性無機化合物としては、特に限定されるものではないが、水ガラス、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酸化アルミニウムナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸化合物を用いることができる。これらは一種を単独で用いる他、任意の複数種を選んで併用することもできる。
上記の水ガラスは無水珪酸(SiO)と酸化ナトリウム(NaO)の混合物であり、珪酸ナトリウムともいい、JIS K1408に示される一般式NaO・nSiO・xHOであらわされる、粉末状、液体状、結晶状のものを用いることができる。また珪酸カリ(KO・nSiO)を使用することもできる。
水ガラスは水に極めて溶解し易いものであり、乾燥させることによって固化する。このため、水ガラスを粘結剤として用いることによって、水で容易に崩壊する鋳型を製造することができるものである。また水ガラスは安価に入手できるため、コスト安価に鋳型を製造することができるものである。さらにNaSiOは融点が1088℃と比較的高いので、耐熱性の高い鋳型を製造することができるものである。
上記の塩化ナトリウムは(NaCl)は食塩といわれるように可食性であって人体に無害であると共に安価であり、使用することが容易である。そして水に容易に溶解するので、塩化ナトリウムを粘結剤として用いることによって、水で容易に崩壊する鋳型を製造することができるものである。特に0〜100℃の温度範囲の水に対する塩化ナトリウムの溶解度は、水100gに対して35.7〜39.1gと、水温による変化が小さいので、作業性が良いものである。さらにNaClは融点が1413℃と比較的高いので、耐熱性の高い鋳型を製造することができるものである。
上記のリン酸ナトリウムとしては、リン酸一ナトリウム水和物(NaHPO・xHO)、リン酸二ナトリウム水和物(NaHPO・xHO)、リン酸三ナトリウム水和物(NaPO・xHO)などを用いることができる。そしてリン酸三ナトリウム水和物は、水100gに対する溶解量が1.5g(0℃)であるように、リン酸ナトリウムは水に可溶性であり、またリン酸二ナトリウム水和物の融点が1340℃であるように、リン酸ナトリウムの融点は比較的高い。このため、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することができるものである。
上記の炭酸ナトリウム(KCO)は、水100gに対する溶解量が7.1g(0℃)であるように、水に溶解し易く、しかも安価である。また融点は851℃と比較的高い。このため、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することができるものである。
上記のバナジン酸ナトリウム(NaVO)は水に可溶であり、融点は866℃と比較的高い。このため、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することができるものである。
上記のホウ酸ナトリウム(Na・xHO)は、水100gに対する溶解量が1.6g(10℃)であるように、水に溶解し易く、しかも安価である。また融点は741℃と比較的高い。このため、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することができるものである。
上記の酸化アルミニウムナトリウム(NaAlO)は、水に可溶であり、また融点1700℃以上と高い。このため、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することができるものである。
上記の塩化カリウム(KCl)は、水100gに対する溶解量が28.1g(0℃)であるように、水に溶解し易く、しかも安価である。また融点は776℃と比較的高い。このため、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することができるものである。
上記の炭酸カリウム(KCO)は、水100gに対する溶解量が129.4g(0℃)であるように、水に溶解し易く、また融点が891℃であるように比較的高い。このため、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することができるものである。
また、上記の硫酸化合物としては、特に限定されるものではないが、MgSO,NaSO・xHO,Al(SO・xHO,KSO,NiSO・xHO,ZnSO・xHO,MnSO・xHO,KMg(SO・xHOなどを挙げることができる。
硫酸化合物は水に溶解し易く、しかも安価である。例えば、水100gに対する溶解量は、硫酸マグネシウム(MgSO)は26.9g(0℃)、硫酸ナトリウム・10水和物(NaSO・10HO)は19.4g(20℃)、硫酸アルミニウム・12水和物(Al(SO・12HO)は36.2g(20℃)、硫酸カリウム(KSO)は10.3g(0℃)、硫酸ニッケル・7水和物(NiSO・7HO)は39.7g(20℃),硫酸マンガン・5水和物(MnSO・5HO)は75.3g(25℃)である。このため、硫酸化合物を粘結剤として用いることによって、水で容易に崩壊する鋳型を、安価に製造することができるものである。また硫酸化合物の融点は、例えば硫酸マグネシウム(MgSO)は1185℃、硫酸ナトリウム・10水和物(NaSO・10HO)は884℃、硫酸アルミニウム・12水和物(Al(SO・12HO)は770℃、硫酸カリウム(KSO)は1067℃、硫酸ニッケル・7水和物(NiSO・7HO)は840℃、硫酸亜鉛・7水和物(ZnSO・7HO)は740℃、硫酸マンガン・5水和物(MnSO・5HO)は850℃、硫酸マグネシウムカリウム(KMg(SO・6HO)は927℃と比較的高いので、耐熱性の高い鋳型を製造することができるものである。
水溶性無機化合物は、上記のよう挙げたものの中から任意の一種を選んで単独で用いる他、任意の複数種を選んで併用することもできる。
粘結剤としてコーティング層に含有される糖類と水溶性無機化合物の混合比率は、糖類:水溶性無機化合物の質量比率で、98:2〜2:98の範囲が好ましい。糖類の比率が98質量%を超えると、鋳型を用いて鋳造する際に糖類の熱分解によって発生するガス量が多くなると共に鋳型の耐熱性が低下し、また水溶性無機化合物の比率が低くなるために、水に浸漬して鋳型を崩壊させることが困難になる。逆に水溶性無機化合物の比率が98質量%を超えると、糖類の比率が低くなるために、鋳型の強度が低下するものであり、また後述するように、鋳型を製造する際に水蒸気と共に水溶性無機化合物が移動する現象が起こり易くなって、鋳型に強度のばらつきなどが生じるおそれがある。
さらに、粘結剤コーテッド耐火物の流動性を良くするために、コーティング層に滑剤を含有させるようにしてもよい。滑剤としては、パラフィンワックスやカルナバワックス等の脂肪族炭化水素系滑剤、高級脂肪族系アルコール、エチレンビスステアリン酸アマイドやステアリン酸アマイド等の脂肪族アマイド系滑剤、金属石けん系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、複合滑剤などを用いることができるが、なかでも金属石けん系滑剤が好ましい。金属石けん系滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどや、これらを複数種組み合わせたものを用いることができる。
そして、耐火骨材の粒子に糖類と水溶性無機化合物、また必要に応じてカルボン酸、滑剤などを配合して混合することによって、耐火骨材の表面に糖類と水溶性無機化合物からなる粘結剤を含有するコーティング層を被覆して、本発明に係る粘結剤コーテッド耐火物を得ることができるものである。
耐火骨材に被覆するコーティング層の量は、成分や用途などに応じて異なり一概に規定できないが、耐火骨材100質量部に対して粘結剤が0.5〜6.0質量部、滑剤が固形分で0.02〜0.15質量部の範囲になるように設定するのが一般的に好ましい。耐火骨材の表面にコーティング層を被覆する方法としては、ホットコート法、コールドコート法、セミホットコート法、粉末溶剤法などがある。
ホットコート法は、110〜180℃に加熱した耐火骨材に固形の粘結剤を添加して混合し、耐火骨材による加熱で固形の粘結剤を溶融させることによって、溶融した粘結剤で耐火骨材の表面を濡らして被覆させ、この後、この混合を保持したまま冷却することによって、粒状でさらさらした粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。あるいは、110〜180℃に加熱した耐火骨材に、水などの溶剤に溶解又は分散させた粘結剤を混合して被覆し、溶剤を揮散させることによって、粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
コールドコート法は、粘結剤を水やメタノールなどの溶剤に分散乃至溶解して液状になし、これを耐火骨材の粒子に添加して混合し、溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
セミホットコート法は、上記の溶剤に分散乃至溶解した粘結剤を、50〜90℃に加熱した耐火骨材の粒子に添加して混合し、溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
粉末溶剤法は、固形の粘結剤を粉砕し、この粉砕粘結剤を耐火骨材の粒子に添加してさらに水やメタノールなどの溶剤を添加し、これを混合して溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
以上のいずれの方法においても、耐火骨材の表面を常温(30℃)で固形のコーティング層で被覆して、粒状でさらさらした粘結剤コーテッド耐火物を得ることができるが、作業性などの点においてホットコート法が好ましい。また上記のように耐火骨材に粘結剤を混合する際に、必要に応じて硬化剤や、耐火骨材と粘結剤とを親和させるためのシランカップリング剤など各種のカップリング剤や、また黒鉛等の炭素質材料などを配合することもできる。
ここで、上記のように粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を併用するにあたって、糖類と水溶性無機化合物を同時に耐火骨材に被覆することによって、糖類と水溶性無機化合物が混在したコーティング層を形成する方法、耐火骨材の表面に水溶性無機化合物を被覆した後、糖類を被覆することによって、2層構成のコーティング層を形成する方法、耐火骨材の表面に糖類を被覆した後、水溶性無機化合物を被覆することによって、2層構成のコーティング層を形成する方法などがあり、いずれの方法であってもよい。
上記のようにして得られる本発明の粘結剤コーテッド耐火物は、鋳型や、耐火レンガ、さらに壁材、セラミックスなどの材料に用いることができるが、特に鋳型の用途に最適である。
粘結剤コーテッド耐火物を用いて鋳型を製造するにあたっては、型内に粘結剤コーテッド耐火物を充填し、次にこの型内に水蒸気を吹き込んで、水蒸気の凝縮潜熱で粘結剤コーテッド耐火物を加熱することによって行なうことができる。
すなわち、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込むと、まず水蒸気が粘結剤コーテッド耐火物に接触することで熱を奪われて凝縮水が生成される。そして粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層の粘結剤に凝縮水が作用することによって、粘結剤中の固形状態の糖類がこの凝縮水を吸収して膨潤して糊化すると共に、粘結剤中の固形状態の水溶性無機化合物がこの凝縮水に溶解して液状になり、粘結剤は湿潤状態になって粘着性が生じ、粘結剤コーテッド耐火物はこの粘結剤の粘着性で結合される。次いで、型に吹き込まれる水蒸気の凝縮潜熱で粘結剤コーテッド耐火物が加熱され、粘結剤に作用した水分を蒸発させて乾燥することができるものであり、粘結剤の糖類を固化乃至硬化させると共に水溶性無機化合物を固化させることができ、粘結剤コーテッド耐火物をこの粘結剤の固化乃至硬化によって結合させることができるものであり、強度の高い鋳型を製造することができるものである。
このように粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層の粘結剤を水蒸気で加熱して鋳型を製造するにあたって、粘結剤として含有されている糖類や水溶性無機化合物は、加熱されて固化乃至硬化するときに有毒なガスを多量に発生するようなことはないものであり、またガスが発生しても水蒸気に吸収されて大気に放出されることを低減することができるものであり、環境を汚染するようなことなく鋳型を製造することができるものである。
そして上記のように製造した鋳型に高温の溶湯を注湯して鋳物を鋳込むことによって、鋳造を行なうことができるが、鋳型の耐火骨材を結合している粘結剤の糖類は比較的低温で熱分解するので、溶湯の熱で容易に熱分解する。また粘結剤の水溶性無機化合物は水に容易に溶けるので、鋳型を水に浸漬したりすることによって、水溶性無機化合物による結合力がなくなる。従って、鋳型を容易に崩壊させることができるものであり、鋳物を鋳型から取り出すために、鋳型に衝撃を加えたり、高温で長時間加熱して粘結剤を分解させたりするような必要がなくなり、鋳造物を鋳型から脱型する作業を容易に行なうことができるものである。また粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を併用しているため、糖類の耐熱性の低さを水溶性無機化合物で補うことができるものであり、そして水溶性無機化合物の配合によって糖類の量を減らせることができる結果、糖類から発生する熱分解ガスを減少することができると共に、糖類の配合によって、溶湯の熱で糖類よりも熱分解し難い水溶性無機化合物の量を減らすことができる結果、鋳型の崩壊性がより向上するものである。
また、糖類は包接化合物といわれるものであり、低分子化合物を包み込み、徐々に放出する性質がある。そして水溶性無機化合物として例えばNaClのように特に水に可溶性が高い低分子化合物を用いる場合、上記のように粘結剤コーテッド耐火物を充填した型に水蒸気を吹き込んで通すと、水蒸気の凝縮水に水溶性無機化合物が溶けて水蒸気の移動と共に流されるおそれがある。すなわち、型内に充填されている粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層に含まれる水溶性無機化合物が、型内に吹き込まれた水蒸気の流れによって上流側から下流側へと移動し、上流側に充填されている粘結剤コーテッド耐火物よりも下流側に充填されている粘結剤コーテッド耐火物の水溶性無機化合物が多くなり、製造された鋳型において水溶性無機化合物が偏在することになって、不均質な鋳型になるおそれがある。これに対して本発明のように、粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を併用することによって、水溶性無機化合物を包接化合物の糖類で包み込んで、水溶性無機化合物が水蒸気と共に流されることを防ぐことができるものであり、水溶性無機化合物が偏在するようなことを防いで均質な鋳型を製造することができるものである。
ここで、型内に水蒸気を吹き込んで、型内に充填した粘結剤コーテッド耐火物の粘結剤を固化乃至硬化させるにあたって、型内にCOガスを吹き込むようなことは行なわれないために、水溶性無機化合物として水ガラスを用いる場合において、水ガラスがCOと反応して硬化することは実質的に起こらない。従って、粘結剤として水ガラスを用いる場合であっても、水ガラスは硬化ではなく固化した状態で粘結剤コーテッド耐火物を結合しているものであり、硬化していない水ガラスは水に容易に溶解するので、鋳型を容易に崩壊させることができるものである。また粘結剤として水ガラスを用いるにあたって、糖類と併用しているために、水ガラスを単独で用いる場合よりも、耐火骨材の表面に付着させる水ガラスの量を低減することができる。従って、アルカリ性の水ガラスが耐火骨材に付着していても多量ではないため、耐火骨材を再利用することが困難になるということはない。
次に、水蒸気を用いた鋳型の製造の一例を、図1を参照して説明する。図1(a)に示すように、内部にキャビティ3を設けて形成した型1の上面に注入口4が設けてあり、型1の下面には金網等の網5で塞いだ排出口6が設けてある。この型は縦割りあるいは横割に割ることができるようになっている。また粘結剤コーテッド耐火物2はホッパー7内に貯蔵してあり、ホッパー7にはコック8付きの空気供給管9が接続してある。そしてホッパー7の下端のノズル口7aを型1の注入口4に合致させた後、コック8を閉から開に切り代えることによって、ホッパー7内に空気を吹き込んで加圧し、ホッパー7内の粘結剤コーテッド耐火物2を型1内に吹き込んで、型1のキャビティ3内に粘結剤コーテッド耐火物2を充填する。排出口6は網5で塞いであるので、粘結剤コーテッド耐火物2が排出口6から洩れ出すことはない。注入口4や排出口6を図1の実施の形態のように型1に複数設ける場合、複数の注入口4のうち一箇所あるいは複数箇所から粘結剤コーテッド耐火物2を入れるようにすればよい。
ここで、耐火骨材に被覆された粘結剤コーテッド耐火物2のコーティング層は固形の粘結剤からなるものであるので、粘結剤コーテッド耐火物2は表面に粘着性を有することがなく、流動性が良好である。従って上記のように型1に粘結剤コーテッド耐火物2を充填するにあたって、型1のキャビティ3内へスムーズに粘結剤コーテッド耐火物2を流し込むことができ、充填性良く型1内に粘結剤コーテッド耐火物2を充填することができるものであり、充填不良が発生することを防ぐことができるものである。
上記のように型1内に粘結剤コーテッド耐火物2を充填した後、型1の注入口4からホッパー7を外すと共に、図1(b)のように各注入口4に給気パイプ10を接続する。給気パイプ10には水蒸気と、加熱気体とを選択的に供給することができるようにしてあり、給気パイプ10のコック11を開いて、まず水蒸気を型1のキャビティ3内に吹き込む。
そしてこのように型1内に水蒸気を吹き込むと、水蒸気を吹き込む初期の工程では、粘結剤コーテッド耐火物2の表面に水蒸気が接触することによって、水蒸気から潜熱が粘結剤コーテッド耐火物2に奪われて水蒸気が凝縮し、粘結剤コーテッド耐火物2の表面で凝縮水が生成されることになる。粘結剤コーテッド耐火物2の表面のコーティング層の粘結剤は固形であるので、固形のままでは粘結剤コーテッド耐火物2同士を結合させることはできないが、このように粘結剤コーテッド耐火物2の表面に凝縮水が供給されると、粘結剤中の固形状態の糖類はこの凝縮水を吸収して膨潤して糊状化し、また粘結剤中の固形状態の水溶性無機化合物はこの凝縮水に溶解して液状になるものであり、粘結剤は湿潤状態になって粘着性が生じる。この結果、粘結剤コーテッド耐火物2を表面のコーティング層の粘結剤の粘着性で結合させることができるものである。
次いで、型1に吹き込まれる水蒸気の凝縮潜熱で粘結剤コーテッド耐火物2が加熱される。水蒸気は高い潜熱を有するので、水蒸気が凝縮する際に伝熱されるこの潜熱で粘結剤コーテッド耐火物2の温度は100℃付近にまで急速に上昇する。このように水蒸気の潜熱の伝熱によって粘結剤コーテッド耐火物2が100℃付近にまで加熱される時間は、水蒸気の温度や型1内への吹き込み流量、型1内の粘結剤コーテッド耐火物2の充填量などで変動するが、通常、3〜30秒程度の短時間である。型1内に注入口4から吹き込まれた水蒸気は、型1内の粘結剤コーテッド耐火物2を加熱した後、排出口6から排気される。このとき、粘結剤コーテッド耐火物2の表面の粘結剤に作用した水分を蒸発させて乾燥することができるものであり、粘結剤の糖類を固化乃至硬化させると共に水溶性無機化合物を固化させることができるものである。そして粘結剤の粘着性による粘結剤コーテッド耐火物2の結合は、粘結剤が固化乃至硬化することによって強固なものとなり、強度の高い鋳型を得ることができるものである。
また、粘結剤コーテッド耐火物2の温度が100℃付近にまで上昇した後、給気パイプ10への供給を加熱気体に切り換え、加熱気体を型1内に吹き込むようにしてもよい。加熱気体は水分含有率が上記の水蒸気より低いものであればよく、加熱した空気を用いることができる。例えば、大気中の空気を加熱して給気パイプ10に加熱気体として供給すればよい。また上記の水蒸気に加熱空気を混合して含有水分量を低くすることによって、この混合気体を加熱気体として用いることもできる。この加熱気体の温度は特に限定されるものではなく、100℃以上であり、且つ粘結剤コーテッド耐火物2の粘結剤が固化乃至硬化する温度以上のものであればよい。温度の上限は、粘結剤を分解させる温度以下であればよく、特に設定されない。
上記のように型1内に水蒸気を吹き込むと、水蒸気が凝縮する際に伝熱される潜熱で粘結剤コーテッド耐火物2の温度を100℃付近にまで急速に上昇させることができるが、さらに100℃以上の温度に上昇させるには、粘結剤コーテッド耐火物2の表面の凝縮水を蒸発させる必要がある。そしてこの凝縮水はその後に吹き込まれる水蒸気による加熱で蒸発されるが、既述のように、水蒸気は水分を多く含むので、凝縮水を蒸発させる効率が低い。そこで上記のように加熱気体を型1内に吹き込むようにしたものであり、加熱気体は水蒸気よりも含有される水分量が少なく、湿度の低い乾燥気体であるので、型1内で生成された凝縮水を短時間で蒸発させて乾燥することができるものである。ここで、水蒸気及び加熱空気の気流で水の蒸発実験を行なった場合、温度が170℃付近以下では、水蒸気中への水の蒸発速度より、加熱空気中への水の蒸発が大きくなることが報告されている(T.Yosida,Hyodo,T.,Ind.Eng.Chem.Process Des.Dev.,9(2),207-214(1970))。この報告にもみられるように、加熱気体を型1内に吹き込むことによって、水蒸気を吹き込み続ける場合よりも、短時間で凝縮水を蒸発させて乾燥することができるものである。
従って、加熱気体を型1内に吹き込み始めてから短時間で、100℃以上に粘結剤コーテッド耐火物2の温度を上昇させることができるものであり、粘結剤コーテッド耐火物2の粘結剤が固化乃至硬化する温度以上にまで型1内の温度を上昇させる速度を速めることができるものである。そしてこの結果、短い加熱時間で強度の高い鋳型を製造することが可能になるものである。
また、既述のように水蒸気で凝縮水を加熱して蒸発させる場合、この水蒸気は凝縮によって体積が小さくなり、圧力が低下して型1内に凝縮水が滞留したり、乾燥や温度上昇が遅くなったりするが、加熱気体は凝縮による体積収縮がなく、圧力低下が殆どないので、注入口4から排出口6に至るまで加熱気体が型1内に行き渡り、型1内の全体で均一に加熱気体の温度を作用させて、乾燥や温度上昇が速やかに行なわれるものである。
加熱気体を型1内に吹き込む時間は、加熱気体の温度や型1内への吹き込み流量、型1内の粘結剤コーテッド耐火物2の充填量、型1内の凝縮水の量などで変動するが、通常、5〜30秒程度の短時間である。従って、水蒸気を型1内に吹き込み始めてから、10秒〜1分程度の短時間で、鋳型を製造することが可能である。
上記のように、型1に水蒸気を供給して粘結剤コーテッド耐火物2の加熱を行なうことによって、水蒸気の高い凝縮潜熱で粘結剤コーテッド耐火物2を瞬時に加熱して、コーティング層の粘結剤を固化乃至硬化させることができ、型1を予め高温に加熱しておくような必要なく、安定して短時間で鋳型を製造することができるものであり、鋳型の生産性を向上することができるものである。また加熱の際に仮に有毒ガスが発生しても水蒸気の凝縮水に吸収させて、環境が汚染されることを低減することができるものである。
ここで、型1に吹き込む水蒸気としては飽和水蒸気をそのまま用いることができるが、本発明では過熱水蒸気を用いるのが好ましい。過熱水蒸気は、飽和水蒸気をさらに加熱して、沸点以上の温度とした完全気体状態の水蒸気であり、100℃以上の乾き蒸気である。飽和水蒸気を加熱して得られる過熱水蒸気は、圧力を上げないで定圧膨張させたものであってもよく、あるいは膨張させないで圧力を上げた加圧水蒸気であってもよい。型1内に吹き込む過熱水蒸気の温度は特に限定されるものではなく、過熱水蒸気は900℃程度にまで温度を高めることができるので、100〜900℃の間で必要に応じた温度に設定すればよい。過熱水蒸気はこのように高温の乾き蒸気であるので、上記のような加熱気体を用いることを不要にすることもできるものである。
上記のように、型1に水蒸気を吹き込む工程の初期で、粘結剤コーテッド耐火物2の粘結剤を水分で湿潤状態にする必要がある。このとき、水蒸気として過熱水蒸気を用いる場合にあっても、水蒸気を吹き込む前の粘結剤コーテッド耐火物2は温度が過熱水蒸気よりも低いので、型1に過熱水蒸気を吹き込むと、過熱水蒸気の潜熱が粘結剤コーテッド耐火物2に奪われて、過熱水蒸気から凝縮水が生じ、この凝縮水で粘結剤コーテッド耐火物2の粘結剤を湿潤状態にすることができる。しかし水蒸気として過熱水蒸気を用いる場合には、凝縮水の生成が不足して、型1に水蒸気を吹き込む工程の初期で粘結剤コーテッド耐火物2の粘結剤を均一に湿潤状態にできないことがある。
このような場合には、型1に水蒸気を吹き込む工程の初期で、粘結剤コーテッド耐火物2の表面に水分を供給するのが好ましい。例えば、型1に水蒸気を吹き込む工程の初期では、給気パイプ10に飽和水蒸気を供給して、給気パイプ10から飽和水蒸気を型1に吹き込む。飽和水蒸気からは凝縮水が容易に生成されるので、型1内で飽和水蒸気から生成されるこの凝縮水を粘結剤コーテッド耐火物2に水分として供給することができるものであり、粘結剤コーテッド耐火物2の粘結剤を均一に湿潤状態にすることができる。そしてこの後に、給気パイプ10への供給を飽和水蒸気から過熱水蒸気に切り替え、給気パイプ10から過熱水蒸気を型1に吹き込むようにするものである。このとき、飽和水蒸気を吹き込む時間と過熱水蒸気を吹き込む時間の割合は、1:9〜5:5程度の範囲に設定するのが望ましい。
上記の実施の形態では、型1に吹き込む水蒸気の凝縮水を粘結剤コーテッド耐火物2の表面に供給して、凝縮水の水分で粘結剤が湿潤状態になるようにしたが、型1内に粘結剤コーテッド耐火物2を充填した後、型1内に水を注入して、粘結剤コーテッド耐火物2に水分を供給するようにしてもよい。例えば、型1内に粘結剤コーテッド耐火物2を充填した後、注入口4から水を型1内に注入し、粘結剤コーテッド耐火物2の粘結剤をこの水で湿潤状態にした後、注入口4から水蒸気を吹き込むようにする方法があり、水蒸気の吹き込みによって、型1内に注入された余分な水は排出口6から排出される。このように粘結剤コーテッド耐火物2を充填した型1内に水分を供給して粘結剤を湿らせるようにすれば、型1内に水蒸気を吹き込む工程の最初から、水蒸気として過熱水蒸気を用いることができるものである。
また、図1(a)から(b)へのように、型1のキャビティ3に粘結剤コーテッド耐火物2を充填するにあたって、粘結剤コーテッド耐火物2を予め加熱しておき、この予備加熱した粘結剤コーテッド耐火物2を型1に供給してキャビティ3に充填するようにしてもよい。このように粘結剤コーテッド耐火物2を予備加熱しておくことによって、型1内に吹き込む水蒸気の温度低下を抑制することができ、コーティング層の粘結剤が乾燥して固化する温度以上にまで型内の温度を上昇させる速度を速めることができるものであって、鋳型の造型時間を短縮する効果を高く得ることができるものである。
粘結剤コーテッド耐火物2の予備加熱は、例えば、粘結剤コーテッド耐火物2を貯蔵するホッパー7内で行なうことができる。粘結剤コーテッド耐火物2を予備加熱する温度は、特に限定されるものではないが、30〜100℃程度の範囲が好ましい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1〜17、比較例1〜4)
130℃に加熱したフラタリー硅砂30kgをワールミキサーに入れ、これに表1に示す量で糖類や水溶性無機化合物を水450gに溶解乃至分散させた溶液を加え、約90秒間混練した。崩壊した後、滑剤としてステアリン酸カルシウム30gを添加して15秒間混練し、さらにエアーレーションを行なうことによって、粘結剤として糖類や水溶性無機化合物を含有するコーティング層で被覆した粘結剤コーテッド耐火物を得た。
この粘結剤コーテッド耐火物はさらさらとした粒状物であり、粘結剤コーテッド耐火物中のコーティング層の質量比率は、実施例1〜15で4.0質量%、実施例16で2.0質量%、実施例17で6.0質量%であった。
ここで、糖類としては、デキストリン(日澱化學(株)製「No102S」)を用いた。また水溶性無機化合物として、塩化ナトリウム、水ガラス、硫酸ナトリウムを用いた。そして塩化ナトリウムとしては、海水から製塩した塩化ナトリウム含有量98.3質量%の市販の食塩を、水ガラスとしては、富士化学(株)製珪酸ソーダ1号(固形分50質量%)を、硫酸ナトリウムとしては、JIS K 8987の試薬の無水ボウ硝(NaSO)を、それぞれ使用した。
Figure 0005713486
そして、実施例1〜17及び比較例1〜4の粘結剤コーテッド耐火物を用いて鋳型を作製した。すなわち、キャビティの大きさが20mm×10mm×80mmに形成された型を120℃に予熱して用い、そしてまず、粘結剤コーテッド耐火物を、ゲージ圧力0.1MPaの空気圧で型内に吹き込んで充填した。
この後、型に給気パイプを接続し、ボイラーで発生させたゲージ圧力0.4MPa、温度143℃の飽和水蒸気を過熱蒸気発生装置(野村技工(株)製「GE−100」)で加熱して調製される、350℃、ゲージ圧力0.45MPaの過熱水蒸気を、60kg/hの流量で供給し、型内に25秒間吹き込んだ。
このようにして、曲げ強さ試験用の20mm×10mm×80mmの鋳型を造型し、脱型後の鋳型の臭気を鼻で嗅いで測定した。結果を表2,3に示す。表2,3において、「a」は臭気は殆んどない、「b」は臭気を感じない、を示す。
またこの試験用の鋳型について、曲げ強さをJIS K6910に準拠して測定した。結果を表2,3に示す。
さらにこの試験用の鋳型について、鋳造の際に溶湯の高温が作用することによる鋳型の崩壊を想定して崩壊試験を行なった。崩壊試験は次のようにして行なった。まず鋳型をアルミ箔で包み、炉床板に並べて乗せ、予め400℃に設定した加熱乾燥機に入れて30分間加熱処理した。次に冷却後、曲げ強さをJIS K6910に準拠して測定した。そして上記の加熱処理前の曲げ強さと、この加熱処理後の曲げ強さから、次の式で崩壊率を求めた。結果を表2,3に示す。
崩壊率(%)=100−(加熱処理後の曲げ強さ/加熱処理前の曲げ強さ)×100
またこの試験用の鋳型について、鋳造後の鋳型を想定して水に浸漬することによる崩壊試験を行なった。まず鋳型をアルミ箔で包み、炉床板に並べて乗せ、予め400℃に設定した加熱乾燥機に入れて30分間加熱処理した。次に冷却後、水を入れたビーカーに鋳型を入れ、3時間水中に浸漬した。そしてこのように水に浸漬した鋳型の崩壊の状態を目視で観察した。また水中で崩壊していない鋳型については、水から取り出した後に指で押さえて崩れる状態を確認した。結果を表2,3に示す。表2,3において、「A」は水中で完全に潰れて崩壊した、「B」は水中で少し鋳型の形が残っている、「C」は水中で鋳型の形は残っているが取り出して押せば潰れる、「D」は押しても潰れない、を示す。
また、鋳型に溶湯を注入するときの急激な加熱によって、粘結剤が燃焼及び熱分解されてガスを発生する状態を再現し、上記の試験用の鋳型の発生ガス量を測定した。すなわち、上記の試験用の鋳型から試料Tを約5g正確に秤量して採取した。そして図2に示す発生ガス量測定装置を用いて、(社)鋳造技術普及協会(JACT)の試験方法SC−1に準拠して、燃焼及び熱分解により発生するガス量を測定した。
図2において、21は電気炉22で周囲を囲まれた石英ガラス管からなる燃焼管であって、燃焼管21の一端は接続管23によってメスシリンダー24に接続してある。メスリンダー24の下端にはU字管25が接続してあり、接続管23とU字管25にそれぞれコック26,27が設けてある。28は燃焼管21の温度を測定する熱電対である。そしてメスリンダー24に水29を入れてコック26,27を閉じ、この状態で、予め炉内温度を700℃に設定した燃焼管21内に、その端部の開口から、試料Tを載置した燃焼ボード30を入れ、燃焼管21の端部の開口をシリコン製の栓31で密閉し、燃焼管21内を空気が遮断された状態にした。このように空気を遮断した高温測定雰囲気下でコック26,27を開き、メスリンダー24内の水29の水位の低下を10秒ごとに180秒まで読み取ることによって、発生したガス量を測定した。この180秒後のガス量を試料Tの1g当たりに換算し、それを発生ガス量(ml/g)とした。結果を表2,3に示す。
Figure 0005713486
Figure 0005713486
表2,3にみられるように、いずれの実施例も鋳型を製造する際に臭気はほとんど発生しないものであった。そして糖類であるデキストリンの含有量の多い実施例では、鋳型を加熱処理した後の崩壊性が良好であり、水溶性無機化合物である塩化ナトリウム、ボウ硝、水ガラスの含有量の多い実施例では、鋳型を水に浸漬した後の崩壊性が良好なものであった。また、デキストリンの含有量の多い実施例では鋳型の曲げ強さが向上する傾向が、塩化ナトリウム、ボウ硝、水ガラスの含有量が多い実施例では燃焼及び熱分解によるガスの発生量が低減する傾向がみられるものであった。
次に、上記の実施例5と比較例2の粘結剤コーテッド耐火物を用いて得た試験用の鋳型を用い、この鋳型を、水蒸気が通過する方向(図1(b)の注入口4から排出口6への方向)に沿って、3等分に分割した。この3等分の試料を、水蒸気の流れの上流から下流へと、上流試料、中流試料、下流試料とする。そして3等分したこの各試料の重さを秤量した後、各試料をビーカー中の50mlの水にそれぞれ浸漬し、約60℃で3時間振盪した。このように振盪することによって、各試料は崩壊して砂粒となるが、この砂粒を濾紙で濾別し、乾燥した後に重さを秤量した。そして水に浸漬する前と、浸漬した後の、上流試料、中流試料、下流試料の重さの変化から質量減少率を算出し、表4に示す。
Figure 0005713486
表4にみられるように、各試料のいずれも、水に浸漬する前より浸漬した後のほうが低くなるように質量が変化しており、これは粘結剤としてコーティングしている水溶性無機化合物の塩化ナトリウムが水に溶解したためであると考えられる。そして実施例5では上流試料、中流試料、下流試料において重さの変化に有意な差はみられないが、比較例2では上流試料から、中流試料、下流試料へと重さの変化が大きくなっている。これは、比較例2の粘結剤コーテッド耐火物は粘結剤として水溶性無機化合物の塩化ナトリウムを単独使用しており、型に水蒸気を吹き込んだ際に、水蒸気と共に塩化ナトリウムが上流試料から中流試料、下流試料へと移動したためであると考えられる。一方、実施例5の粘結剤コーテッド耐火物では粘結剤として糖類のデキストリンと水溶性無機化合物の塩化ナトリウムを併用しており、塩化ナトリウムがデキストリンに包接されて、水蒸気と共に流される塩化ナトリウムの量が少なくなったため、実施例5では上流試料、中流試料、下流試料の間で重さの変化の差が小さくなったものと考えられる。
(実施例18〜21、比較例5〜6)
実施例3,8,11,13、比較例1,4と同じ配合の粘結剤でコーティング層を被覆した粘結剤コーテッド耐火物を調製した。これらの粘結剤コーテッド耐火物を実施例18〜21、比較例5〜6とする。
そして、実施例18〜21及び比較例5〜6の粘結剤コーテッド耐火物を用いて鋳型を作製した。すなわち、キャビティの大きさが20mm×10mm×80mmに形成された型を120℃に予熱して用い、そしてまず、粘結剤コーテッド耐火物を、ゲージ圧力0.1MPaの空気圧で型内に吹き込んで充填した。
この後、型に給気パイプを接続して、ボイラーで発生させたゲージ圧力0.4MPa、温度143℃の飽和水蒸気を60kg/hの流量で供給し、型内に5秒間吹き込んだ。次に引き続いて、ボイラーで発生させたこのゲージ圧力0.4MPa、温度143℃の飽和水蒸気を過熱蒸気発生装置(野村技工(株)製「GE−100」)で加熱して調製される、350℃、ゲージ圧力0.45MPaの過熱水蒸気を、60kg/hの流量で供給し、型内に20秒間吹き込んだ。
このようにして、曲げ強さ試験用の20mm×10mm×80mmの鋳型を造型し、曲げ強さをJIS K6910に準拠して測定した。結果を表5に示す。尚、比較のために、既述の実施例3,8,11,13、比較例1,4で得た鋳型の曲げ強さを表5に併記する。
また上記のように造型した曲げ強さ試験用の20mm×10mm×80mmの鋳型について、鋳型の上部(図1(b)の注入口4に近い部分)と、鋳型の下部(図1(b)の排出口6に近い部分)の強度(ぼろつき)をJIS K5600−5−4「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して測定した。このとき、硬さの差をみるため、旧JIS K5400に記載されていた鉛筆硬度6B〜9Hまで行ない、その値を表5に示す。尚、比較のために、既述の実施例3,8,11,13、比較例1,4で得た鋳型についても、同様に上部と下部の強度を測定し、表5に併記した。
Figure 0005713486
表5にみられるように、実施例18〜21のものは、実施例3,8,11,13のものより曲げ強さが向上しているものであった。また水蒸気が通過する方向である上部と下部の強度の差が、実施例18〜21のものは、実施例3,8,11,13のものより小さくなっていることが確認される。これらのことは、実施例18〜21では、過熱水蒸気を吹き込む前に、飽和水蒸気を吹き込むようにしているため、飽和水蒸気による水分の供給で型内の粘結剤コーテッド耐火物の全体を均一に湿らせることができ、粘結剤を均一に湿潤な糊状にして結合させた後に、過熱水蒸気で粘結剤を固化乃至硬化させることで、均一な強度を有する鋳型を製造することができたと、考えられる。
1 型
2 粘結剤コーテッド耐火物

Claims (11)

  1. 耐火骨材の表面に、粘結剤として糖類と水溶性無機化合物を含有する固形のコーティング層が被覆されていることを特徴とする粘結剤コーテッド耐火物。
  2. 上記の水溶性無機化合物が、水ガラス、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酸化アルミニウムナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸化合物から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載の粘結剤コーテッド耐火物。
  3. 請求項1又は2に記載の粘結剤コーテッド耐火物が、コーティング層の粘結剤によって結合して形成されたことを特徴とする鋳型。
  4. 請求項1又は2に記載の粘結剤コーテッド耐火物を型内に充填し、この型内に水蒸気を吹き込んで粘結剤コーテッド耐火物を加熱し、コーティング層の粘結剤を固化乃至硬化させることを特徴とする鋳型の製造方法。
  5. 粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込んで、水蒸気の凝縮水を粘結剤に供給すると共に、次いで水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させることによって、コーティング層の粘結剤を固化乃至硬化させることを特徴とする請求項4に記載の鋳型の製造方法。
  6. 粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込んで、水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させ、次に加熱した気体を型内に吹き込んで、型内の凝縮水を蒸発させると共に粘結剤コーテッド耐火物の粘結剤が固化乃至硬化する温度以上に加熱することを特徴とする請求項4又は5に記載の鋳型の製造方法。
  7. 上記の加熱した気体が、加熱した空気であることを特徴とする請求項6に記載の鋳型の製造方法。
  8. 上記の加熱した気体が、水蒸気と空気との混合気体であることを特徴とする請求項6に記載の鋳型の製造方法。
  9. 上記の水蒸気が、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の鋳型の製造方法。
  10. 粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水分を供給して粘結剤を湿らせた後、型内に過熱水蒸気を吹き込んで、水分を乾燥させると共に過熱水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッド耐火物の温度を上昇させてコーティング層の粘結剤を固化乃至硬化させることを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載の鋳型の製造方法。
  11. 予備加熱した粘結剤コーテッド耐火物を型内に充填することを特徴とする請求項4乃至10のいずれかに記載の鋳型の製造方法。
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