JP2004098129A - 型形成用コーテッドサンド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合度を向上させることができる。
【解決手段】細径の原砂粒子1と、原砂粒子1の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜2との間に多孔質殻3を設け、この多孔質殻3を有効に機能させて、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合度を十分に確保する。
【選択図】 図1
【解決手段】細径の原砂粒子1と、原砂粒子1の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜2との間に多孔質殻3を設け、この多孔質殻3を有効に機能させて、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合度を十分に確保する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、型形成用コーテッドサンド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】
特開平6−182488号公報
【特許文献2】
特開平9−174569号公報
【特許文献3】
特開平7−204776号公報
【0004】
従来、鋳型や中子を所望の形状に形成するためにレジンコーテッドサンドが用いられている。レジンコーテッドサンドは、原砂表面にノボラックやヘキサミンをコーテイングしたものであり、これを鋳型或いは中子の型枠に充填し、その充填されたレジンコーテッドサンドを鋳型や中子の形状に対応させて加熱固化することにより、鋳型或いは中子を所望の形状に造形している。
【0005】
具体的に説明すると、レジンコーテッドサンドを、アルミニウムや鋳鉄などの汎用鋳物部品を作るための型枠に充填し、次いで、原砂の表面にコーテイングされたノボラックやヘキサミンなどの結合剤を加熱溶融・固化することにより、所望の鋳型や中子の形状に賦型していた。そして、鋳型や中子の造形に使用されたレジンコーテッドサンドは、造形後に鋳物製品から除去、すなわち粒状に崩壊して取出し、必要に応じて再使用している。原砂の表面にコーテイングする結合剤としては、鋳型や中子の熱変形を抑えるために熱硬化性の有機化合物を用いることが多い。しかし、レジンコーテッドサンドによる中子は、鋳造後の崩壊性が悪く、結合剤を加熱して焼失させなければ容易に崩壊しない。しかも、その崩壊時にアンモニアやアセトアルデヒトなどの余分なガスを発生させることがある。
【0006】
ここで、型形成用原砂の表面にコーテイングする結合剤として水溶性のものを用いる従来例が前述した特許文献1,特許文献2或いは特許文献3などに開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した特許文献1に開示されたレジンコーテッドサンドは、その表面にケイ酸塩及びリン酸塩成分の無機物からなる結合剤をコーテイングしたものである。そして、レジンコーテッドサンド同士を固化する工程において、触媒としてエステルを用いていた。このレジンコーテッドサンドを用いる方法では、触媒としてエステルを用いているために、造形後のレジンコーテッドサンドを水溶性溶液を用いて容易に崩壊することが可能であるという利点がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された原砂は、その表面にケイ酸塩及びリン酸塩成分の無機物からなる結合剤をコーテイングしているため、原砂に対する結合剤の結合度が低く、型枠に充填する際にレジンコーテッドサンドの流動性が悪いため造形性に劣り、量産性に欠けるという不都合があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された主材は、プラスチックス射出成型用中子を造形するために用いるものである。この主材は、ポリビニールアルコール(PVA)にセラミックスや金属粉末を混錬させて固化した構造のものである。この主材からなる中子は、プラスチックス射出成形後に射出成形品から水洗により除去している。
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示された主材は、セラミックスや金属粉末とPVAとの濡れ性が悪く、中子として造型した場合の強度が低いという問題があり、何らかの手法をもってセラミックスや金属粉末とPVAとのバインダ性能を高める必要が常に生じていた。
【0011】
更に、特許文献3に開示された主材は、硝酸マグネシウムなどの水溶性無機化合物と、ポリアクリル酸などのように重合度が500〜5500の有機高分子化合物と砂とを混錬した混錬物による構造のものである。そして、混錬物の水分をコントールすることにより、混錬物をゲルとゾルの状態に繰り返して変化させ、原砂を再使用するものである。
【0012】
しかしながら、この場合、主材の固化に長時間を要するため、作業性が悪く、また、原砂の流動性が悪く、造形性に劣り量産性が悪いという不都合が生じていた。
【0013】
【発明の目的】
本発明の目的は、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に確保することができる型形成用コーテッドサンド及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、細径の原砂粒子と、該原砂粒子の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜とを備えた型形成用コーテッドサンドにおいて、前述した原砂粒子と水溶性結合膜との間に多孔質殻を設けるという構成を採っている。
【0015】
ここで、上述した多孔質殻は、粘土粉,ベントナイト或いは澱粉のいずれか一つからなるゾル化物質であることが望ましい。
【0016】
また上述した水溶性結合膜は、硝酸塩,硝酸塩と塩化物の混合物,硝酸塩と炭酸塩の混合物或いは硝酸塩と臭化塩の混合物のいずれか一つからなる硝酸塩系の無機化合物塩であることが望ましい。更に、前記無機化合物塩としては、NaNO3,KNO3,NaNO2,KNO2,NaCl,Na2CO3,KCl或いはK2CO3のいずれか一つの第1塩類化合物と、Ca(NO3)2,Pb(NO3)2,KNO3,KNO2,NaNO3,NaNO2,K2SO4,NaNO3或いはKBrのいずれか一つの第2塩類化合物との組み合わせからなる無機化合物塩を用いることが可能である。更に、上述した水溶性結合膜は、無機化合物塩に代えて、水溶性で、かつ熱可塑性の有機化合物を用いてもよい。
【0017】
上述した本発明に係る型形成用コーテッドサンドでは、細径の原砂粒子と、該原砂粒子の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜との間に多孔質殻を設けることにより、水溶性結合膜が多孔質殻に十分に浸透し、原砂と水溶性結合膜との濡れ性が改善される。
【0018】
したがって、多孔質殻が有効に機能することにより、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に確保することができ、原砂粒子から水溶性結合膜が剥離されるのを防止することができる。さらに、水溶性結合膜を充分に付着させたコーテッドサンドは、顆粒状であるため流動性が高く、金型へのコーテッドサンドの充填作業を効率的に行うことができる。さらに、原砂粒子の表面に結合膜を十分に付着させているとしても、その結合剤が水溶性であるから、固化された原砂粒子を粒状に崩壊するときに、アンモニアやアセトアルデヒト等の悪臭が発生することがなく、環境汚染を防止することができる。さらに、コーテッドサンド粒子の表面に十分に付着した結合膜が水溶性のものであるため、その崩壊時に発生するガス量を極めて少なく、その発生ガスに起因したボイドによる鋳型や中子の不良発生を低減することができる。
【0019】
さらに、本発明では、所定量の細径の原砂粒子に水溶性結合膜の素材を投入して該水溶性結合膜の素材をゾル化温度まで加熱してゾル化させるゾル化工程と、原砂粒子とゾル状態の水溶性結合膜の素材とを混錬させる混錬工程とを備えた型形成用コーテッドサンドの製造方法において、前記水溶性結合膜をゾル化するゾル化工程に先立って、前記原砂粒子の表面に多孔質殻を設ける工程を付加するという構成を採っている。
【0020】
ここで、前記混錬工程の後工程として、冷却によって水溶性結合素材をゾル化した際に型形成用コーテッドサンドに振動を加えて、塊になっているコーテッドサンドを粒状にする工程を付加してもよい。
【0021】
本発明では、水溶性結合膜をゾル化するゾル化工程に先立って、原砂粒子の表面に多孔質殻を設ける工程を付加する構成を採ることにより、水溶性結合膜の付着する原砂粒子の表面部に多孔質殻を設け、その多孔質殻を有効に機能させることにより、その多孔質殻への水溶性結合膜の浸透性を高める。
【0022】
このため、本発明に係る型形成用コーテッドサンドの製造方法によれば、ゾル化工程に先立って原砂粒子の表面に多孔質殻を設け、その多孔質殻を有効に機能させることにより、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に改質し、原砂粒子と水溶性結合膜との結合強度を十分に確保することができる。
【0023】
また、原砂粒子とゾル状態の水溶性結合膜の素材とを混錬させると、冷却時に水溶性結合素材がゲル化して原砂粒子同士がゲル状態の水溶性結合膜により結合しあって塊状となるが、本発明では、塊状のコーテッドサンドに振動を加えて粒状の型形成用コーテッドサンドを得るようにしたため、最終的に得られる型形成用コーテッドサンドは、塊から短時間に粒状化することができ、しかも型枠に充填する際に必要な流動性を十分に確保することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1(a)、(b)及び(c)は、いずれも本発明の一実施形態に係る型形成用コーテッドサンドを拡大して断面して示している。図1(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る型形成用コーテッドサンドは、細径の原砂粒子1と、原砂粒子1の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜2とを備えており、さらに、原砂粒子1と水溶性結合膜2との間に多孔質殻3を設けている。
【0025】
原砂粒子1と水溶性結合膜2との間に設けられた多孔質殻3は、後述するようにゾル状態で原砂粒子1の表面に混練によってコーテイングされ、乾燥後に焼成されて原砂粒子1の表面に溶着される。そして、多孔質殻3は、乾燥・焼成過程を経て、その内層や外層(表層)が多孔質となる。
【0026】
この多孔性をもつ多孔質殻3にゲル状態の水溶性結合膜2をコーテイングすると、多孔質殻3の内層及び外層(表層)まで浸透してコーテイングされるため、多孔質殻3が有効に機能して、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合度を向上させる。
【0027】
したがって、原砂粒子1と水溶性結合膜2との間に多孔質殻3を設けることにより、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合強度を高めることができる。
【0028】
原砂粒子1としては、平均粒径75〜850μmの石英珪砂(SiO2)を使用することが望ましいが、これに限定されるものではなく、セラミックス粒子やセラビーズなどを用いてもよい。図1(a)、(b)では、原砂粒子1を球状体として図示しているが、その形状は球状体に限られるものではなく、いずれかの立体構造のものであればよい。
【0029】
多孔質殻3としては、粘土粉,ベントナイト或いは澱粉のいずれか一つからなるゲル化物質であることが望ましい。この多孔質殻3は、原砂粒子1に対して例えば1〜10%添加し、さらに水分を例えば1〜5%を添加してゾル状態とし、ローラミル等によって原砂粒子1の表面に塗り込んで原砂表面に薄膜状にコーテイングする。原砂粒子1の表面にコーテイングされた多孔質殻3は、乾燥された後、焼成されて原砂粒子1の表面に固着されるとともに、多孔質の外殻に変質され、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合強度を高める、すなわち濡れ性を改善することとなる。
【0030】
また、水溶性結合膜2、鋳造時の熱量に耐える必要があり、アルミニウム鋳造する場合などの温度管理を容易にするためには、その融点が150〜400℃の範囲内に含まれる無機化合物を用いることが望ましい。従来からエンジンピストンのクーリングチャンネル用中子の形成に用いる結合膜には、NaClのみが使用されていたが、その融点が801℃と高いため、ゾル化が難しかったが、本発明では、融点が150〜400℃の範囲内に含まれる無機化合物を用いるため、原砂表面にゾル化状水溶性結合膜をコーテイングするのが容易となる。融点が150〜400℃の範囲内に含まれる無機化合物としては、硝酸塩系を主体としてものを用いることがよく、特に、硝酸塩,硝酸塩と塩化物の混合物,硝酸塩と炭酸塩の混合物或いは硝酸塩と臭化塩の混合物のいずれか一つからなる硝酸塩系の無機化合物塩を用いることが望ましい。
【0031】
上述した硝酸系の無機化合物塩としては、図3に示すようにな2元無機混合塩を用いることが望ましい。図3に示す2元無機混合塩は、NaNO3,KNO3,NaNO2,KNO2,NaCl,Na2CO3,KCl或いはK2CO3のいずれか一つの第1塩類化合物と、Ca(NO3)2,Pb(NO3)2,KNO3,KNO2,NaNO3,NaNO2,K2SO4,NaNO3或いはKBrのいずれか一つの第2塩類化合物との組み合わせからなる無機化合物塩を用いている。また、前記水溶性結合膜は、前記無機化合物塩に代えて、水溶性で、かつ熱可塑性の有機化合物、例えばポリビニルアルコール(PVA)や炭水化物を用いてもよい。
【0032】
次に、アルミニウム鋳型用中子を製造する場合の具体例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
図1(a)に示す原砂粒子1には、平均粒径425μmのパールサンド(=SiO2;純度99.8%)を使用している。以下、原砂粒子1をパールサンド1として表記する。
【0034】
多孔質殻3には、ベントナイトを用いている。以下、多孔質殻3をベントナイト3として表記する。このベントナイト3は、モンモリロナイトを主成分とし、石英・α−クリストバライト・長石・方解石などを含む物質であり、水の介在で安定な水系コロイドを形成する性質を備えている。
【0035】
水溶性結合膜2には、水溶性を有し、かつアルミニウム鋳造時の熱量に耐えるために、融点が298℃のNaCl−NaNO3を用いている。以下、水溶性結合膜2をNaCl−NaNO32として表記する。
【0036】
先ず、所定量のパールサンド1に対してベントナイト3を5%、水を3%をそれぞれ添加し、ベントナイト3をゾル状態とする。そして、ローラミル等によりパールサンド1の表面にベントナイト3を塗り込むように混錬する。これにより、図1(a)に示すようにパールサンド1の表面にベントナイト3の薄膜をコーテイングする。
【0037】
次に、ベントナイト3の薄膜をコーテイングしたパールサンド1を1000℃で焼成して、パールサンド1の表面にベントナイト3を固着し、このベントナイト3を多孔質の外殻に変質させる(図1(a)参照)。
【0038】
ベントナイト3を多孔質の殻に変質させた後、パールサンド1を図2(a)に示す混錬槽4に移し変えて350℃で加熱、乾燥しながら、粉末状のNaCl−NaNO32をパールサンド1の量に対して5%を添加し、混錬槽4内で攪拌翼5を高速回転(例えば、25〜50rpm)させて、パールサンド1とゾル化した粉末状NaCl−NaNO32とを混錬する。この工程で粉末状NaCl−NaNO32が溶融し、この溶融したNaCl−NaNO32が攪拌によりベントナイト3の内層及び外層(表層)に浸透してパールサンド表面に薄膜状にコーテイングされる(図1(b)参照)。
【0039】
上述したコーテイング工程では、パールサンド1の表面部にコーテイングされたNaCl−NaNO32が完全に固化していないため、パールサンド表面部にコーテイングされたNaCl−NaNO32同士が結合し合ってパールサンドが塊となる傾向にある。この塊をパールサンド群6として表記する。
【0040】
そこで、図2(b)に示すように、NaCl−NaNO32がコーテイングされて塊となったパールサンド群6を混錬槽4から振動篩7に落下させ、NaCl−NaNO32を融点以下に徐冷しながら、振動篩7で振動を与えてパールサンド群6を崩壊させ、これにより短時間で流動性に優れた図1(b)に示す粒状の型形成用コーテッドサンドを得る。
【0041】
次に図4を用いて中子を造形する工程について説明する。図4に示す中子造形用金型8として、加熱機構9と冷却機構10とを兼ね備えた構造のものを用いている。
【0042】
図4(a)に示すように、加熱機構9により金型8を350〜400℃の範囲で加熱し、前述した粒状の型形成用コーテッドサンドをサンドタンク11に通して金型8のキャビテイ12内に圧縮エアーによってブロー充填する。
【0043】
次に図4(b)に示すように、サンドタンク11を金型8から引き離すと共に、金型8を加熱状態に保持しながら、キャビテイ12に充填された粒状の型形成用コーテッドサンドのNaCl−NaNO32を溶融し、粒状の型形成用コーテッドサンド同士を結合させ、中子形状に保型する。
【0044】
次に図4(c)に示すように、加熱機構9による金型8の加熱を止め、加熱機構9に代えて冷却機構10を用い、金型8を徐冷しながらNaCl−NaNO32の融点以下まで冷却し、NaCl−NaNO32が固化するのを待つ。
【0045】
その後、図4(d)に示すように、NaCl−NaNO32が固化したときに、冷却機構10を停止し、金型8を型開きし、造形された中子13を金型8から取出す。
【0046】
さらに、上述した中子13をテスト中子に用いてアルミニウム鋳造を行った例について説明する。上述した中子13を鋳造用金型(図示略)のキャビテイ内の所望の位置にセットし、金型の型閉めを行った。
【0047】
次に、中子13をセットした鋳造用金型のキャビテイ内に720℃の溶湯を鋳込み、鋳造を行った。
【0048】
以上のアルミ鋳造を行った結果、中子用の型形成用コーテッドサンドの耐火温度が高いことと熱容量が大きいことから、テスト用中子は鋳造によって熱変形することなくシェル中子とほぼ同等の鋳物形状を得ることができた。さらに、結合膜2として水溶性のものを用いているため、鋳造後に水冷することによりテスト中子は容易に破壊することが認められ、その結果を確認した。
【0049】
以上説明した例では、アルミニウム鋳造後、堰切断前のワーク水冷工程で中子を除去できる。原砂の除去が容易なため、熱処理前の原砂の砂焼きが不要となり、従来必要としていた砂焼きの熱処理を廃止することができる。さらに、原砂の流動性が確保できるため、原砂抜きの穴数の削減や複雑な造形形状の設計が可能となるため、鋳造品の性能を向上できる。
【0050】
また従来のレジンを用いるコーテッドサンドのようにアンモニアやアセトアルデヒトなどの悪臭を発生させることがなく、環境の汚染を防止することができる。さらに、発生ガス量が少ないため、ガスによるボイドの発生を抑制して鋳造品の鋳造不良を低減することができる。
【0051】
なお、本発明を実施形態を用いて説明したが、特許請求の範囲に開示した技術的思想の範囲内において種々変形することが可能であり、図示した実施形態に限定されるものではない。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る型形成用コーテッドサンドは、多孔質殻が有効に機能して多孔質殻に水溶性結合膜が十分に浸透することから、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に確保することができ、原砂粒子からの水溶性結合膜の剥離を防止することができる。さらに、多孔質殻の機能により原砂粒子に水溶性結合膜を十分に付着させることにより、流動性を向上させて原砂の充填作業を効率的に行うことができる。
【0053】
さらに、原砂粒子の従来の製法に加えて、原砂粒子の表面に多孔質殻を設ける工程を付加する構成を採ることにより、ゾル化工程に先立って多孔質殻への水溶性結合膜の浸透性を確保することとなり、原砂粒子に水溶性結合膜を能率よく十分な量を付加することができる。さらに、原砂粒子同士が結合して塊となったとしても、その塊に振動を加えて短時間で粒状化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態において、原砂粒子に多孔質殻を形成した状態を示す拡大断面図、(b)は、本発明の一実施形態において、原砂粒子に多孔質殻を介して水溶性結合膜を形成した状態を示す拡大断面図、(c)は、本発明に係る一実施形態において、型形成用コーテッドサンドが塊状に結合する状態を示す拡大断面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態に用いた混錬槽の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いた水溶性結合膜としての2元系無機混合塩を示す図表である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態の型形成用コーテッドサンドを用いて鋳造用テスト中子を造形する工程を工程順に示す断面図である。
【符号の説明】
1 原砂粒子
2 水溶性結合膜
3 多孔質殻
【発明の属する技術分野】
本発明は、型形成用コーテッドサンド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】
特開平6−182488号公報
【特許文献2】
特開平9−174569号公報
【特許文献3】
特開平7−204776号公報
【0004】
従来、鋳型や中子を所望の形状に形成するためにレジンコーテッドサンドが用いられている。レジンコーテッドサンドは、原砂表面にノボラックやヘキサミンをコーテイングしたものであり、これを鋳型或いは中子の型枠に充填し、その充填されたレジンコーテッドサンドを鋳型や中子の形状に対応させて加熱固化することにより、鋳型或いは中子を所望の形状に造形している。
【0005】
具体的に説明すると、レジンコーテッドサンドを、アルミニウムや鋳鉄などの汎用鋳物部品を作るための型枠に充填し、次いで、原砂の表面にコーテイングされたノボラックやヘキサミンなどの結合剤を加熱溶融・固化することにより、所望の鋳型や中子の形状に賦型していた。そして、鋳型や中子の造形に使用されたレジンコーテッドサンドは、造形後に鋳物製品から除去、すなわち粒状に崩壊して取出し、必要に応じて再使用している。原砂の表面にコーテイングする結合剤としては、鋳型や中子の熱変形を抑えるために熱硬化性の有機化合物を用いることが多い。しかし、レジンコーテッドサンドによる中子は、鋳造後の崩壊性が悪く、結合剤を加熱して焼失させなければ容易に崩壊しない。しかも、その崩壊時にアンモニアやアセトアルデヒトなどの余分なガスを発生させることがある。
【0006】
ここで、型形成用原砂の表面にコーテイングする結合剤として水溶性のものを用いる従来例が前述した特許文献1,特許文献2或いは特許文献3などに開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述した特許文献1に開示されたレジンコーテッドサンドは、その表面にケイ酸塩及びリン酸塩成分の無機物からなる結合剤をコーテイングしたものである。そして、レジンコーテッドサンド同士を固化する工程において、触媒としてエステルを用いていた。このレジンコーテッドサンドを用いる方法では、触媒としてエステルを用いているために、造形後のレジンコーテッドサンドを水溶性溶液を用いて容易に崩壊することが可能であるという利点がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された原砂は、その表面にケイ酸塩及びリン酸塩成分の無機物からなる結合剤をコーテイングしているため、原砂に対する結合剤の結合度が低く、型枠に充填する際にレジンコーテッドサンドの流動性が悪いため造形性に劣り、量産性に欠けるという不都合があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された主材は、プラスチックス射出成型用中子を造形するために用いるものである。この主材は、ポリビニールアルコール(PVA)にセラミックスや金属粉末を混錬させて固化した構造のものである。この主材からなる中子は、プラスチックス射出成形後に射出成形品から水洗により除去している。
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示された主材は、セラミックスや金属粉末とPVAとの濡れ性が悪く、中子として造型した場合の強度が低いという問題があり、何らかの手法をもってセラミックスや金属粉末とPVAとのバインダ性能を高める必要が常に生じていた。
【0011】
更に、特許文献3に開示された主材は、硝酸マグネシウムなどの水溶性無機化合物と、ポリアクリル酸などのように重合度が500〜5500の有機高分子化合物と砂とを混錬した混錬物による構造のものである。そして、混錬物の水分をコントールすることにより、混錬物をゲルとゾルの状態に繰り返して変化させ、原砂を再使用するものである。
【0012】
しかしながら、この場合、主材の固化に長時間を要するため、作業性が悪く、また、原砂の流動性が悪く、造形性に劣り量産性が悪いという不都合が生じていた。
【0013】
【発明の目的】
本発明の目的は、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に確保することができる型形成用コーテッドサンド及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では、細径の原砂粒子と、該原砂粒子の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜とを備えた型形成用コーテッドサンドにおいて、前述した原砂粒子と水溶性結合膜との間に多孔質殻を設けるという構成を採っている。
【0015】
ここで、上述した多孔質殻は、粘土粉,ベントナイト或いは澱粉のいずれか一つからなるゾル化物質であることが望ましい。
【0016】
また上述した水溶性結合膜は、硝酸塩,硝酸塩と塩化物の混合物,硝酸塩と炭酸塩の混合物或いは硝酸塩と臭化塩の混合物のいずれか一つからなる硝酸塩系の無機化合物塩であることが望ましい。更に、前記無機化合物塩としては、NaNO3,KNO3,NaNO2,KNO2,NaCl,Na2CO3,KCl或いはK2CO3のいずれか一つの第1塩類化合物と、Ca(NO3)2,Pb(NO3)2,KNO3,KNO2,NaNO3,NaNO2,K2SO4,NaNO3或いはKBrのいずれか一つの第2塩類化合物との組み合わせからなる無機化合物塩を用いることが可能である。更に、上述した水溶性結合膜は、無機化合物塩に代えて、水溶性で、かつ熱可塑性の有機化合物を用いてもよい。
【0017】
上述した本発明に係る型形成用コーテッドサンドでは、細径の原砂粒子と、該原砂粒子の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜との間に多孔質殻を設けることにより、水溶性結合膜が多孔質殻に十分に浸透し、原砂と水溶性結合膜との濡れ性が改善される。
【0018】
したがって、多孔質殻が有効に機能することにより、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に確保することができ、原砂粒子から水溶性結合膜が剥離されるのを防止することができる。さらに、水溶性結合膜を充分に付着させたコーテッドサンドは、顆粒状であるため流動性が高く、金型へのコーテッドサンドの充填作業を効率的に行うことができる。さらに、原砂粒子の表面に結合膜を十分に付着させているとしても、その結合剤が水溶性であるから、固化された原砂粒子を粒状に崩壊するときに、アンモニアやアセトアルデヒト等の悪臭が発生することがなく、環境汚染を防止することができる。さらに、コーテッドサンド粒子の表面に十分に付着した結合膜が水溶性のものであるため、その崩壊時に発生するガス量を極めて少なく、その発生ガスに起因したボイドによる鋳型や中子の不良発生を低減することができる。
【0019】
さらに、本発明では、所定量の細径の原砂粒子に水溶性結合膜の素材を投入して該水溶性結合膜の素材をゾル化温度まで加熱してゾル化させるゾル化工程と、原砂粒子とゾル状態の水溶性結合膜の素材とを混錬させる混錬工程とを備えた型形成用コーテッドサンドの製造方法において、前記水溶性結合膜をゾル化するゾル化工程に先立って、前記原砂粒子の表面に多孔質殻を設ける工程を付加するという構成を採っている。
【0020】
ここで、前記混錬工程の後工程として、冷却によって水溶性結合素材をゾル化した際に型形成用コーテッドサンドに振動を加えて、塊になっているコーテッドサンドを粒状にする工程を付加してもよい。
【0021】
本発明では、水溶性結合膜をゾル化するゾル化工程に先立って、原砂粒子の表面に多孔質殻を設ける工程を付加する構成を採ることにより、水溶性結合膜の付着する原砂粒子の表面部に多孔質殻を設け、その多孔質殻を有効に機能させることにより、その多孔質殻への水溶性結合膜の浸透性を高める。
【0022】
このため、本発明に係る型形成用コーテッドサンドの製造方法によれば、ゾル化工程に先立って原砂粒子の表面に多孔質殻を設け、その多孔質殻を有効に機能させることにより、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に改質し、原砂粒子と水溶性結合膜との結合強度を十分に確保することができる。
【0023】
また、原砂粒子とゾル状態の水溶性結合膜の素材とを混錬させると、冷却時に水溶性結合素材がゲル化して原砂粒子同士がゲル状態の水溶性結合膜により結合しあって塊状となるが、本発明では、塊状のコーテッドサンドに振動を加えて粒状の型形成用コーテッドサンドを得るようにしたため、最終的に得られる型形成用コーテッドサンドは、塊から短時間に粒状化することができ、しかも型枠に充填する際に必要な流動性を十分に確保することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1(a)、(b)及び(c)は、いずれも本発明の一実施形態に係る型形成用コーテッドサンドを拡大して断面して示している。図1(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る型形成用コーテッドサンドは、細径の原砂粒子1と、原砂粒子1の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜2とを備えており、さらに、原砂粒子1と水溶性結合膜2との間に多孔質殻3を設けている。
【0025】
原砂粒子1と水溶性結合膜2との間に設けられた多孔質殻3は、後述するようにゾル状態で原砂粒子1の表面に混練によってコーテイングされ、乾燥後に焼成されて原砂粒子1の表面に溶着される。そして、多孔質殻3は、乾燥・焼成過程を経て、その内層や外層(表層)が多孔質となる。
【0026】
この多孔性をもつ多孔質殻3にゲル状態の水溶性結合膜2をコーテイングすると、多孔質殻3の内層及び外層(表層)まで浸透してコーテイングされるため、多孔質殻3が有効に機能して、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合度を向上させる。
【0027】
したがって、原砂粒子1と水溶性結合膜2との間に多孔質殻3を設けることにより、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合強度を高めることができる。
【0028】
原砂粒子1としては、平均粒径75〜850μmの石英珪砂(SiO2)を使用することが望ましいが、これに限定されるものではなく、セラミックス粒子やセラビーズなどを用いてもよい。図1(a)、(b)では、原砂粒子1を球状体として図示しているが、その形状は球状体に限られるものではなく、いずれかの立体構造のものであればよい。
【0029】
多孔質殻3としては、粘土粉,ベントナイト或いは澱粉のいずれか一つからなるゲル化物質であることが望ましい。この多孔質殻3は、原砂粒子1に対して例えば1〜10%添加し、さらに水分を例えば1〜5%を添加してゾル状態とし、ローラミル等によって原砂粒子1の表面に塗り込んで原砂表面に薄膜状にコーテイングする。原砂粒子1の表面にコーテイングされた多孔質殻3は、乾燥された後、焼成されて原砂粒子1の表面に固着されるとともに、多孔質の外殻に変質され、原砂粒子1に対する水溶性結合膜2の結合強度を高める、すなわち濡れ性を改善することとなる。
【0030】
また、水溶性結合膜2、鋳造時の熱量に耐える必要があり、アルミニウム鋳造する場合などの温度管理を容易にするためには、その融点が150〜400℃の範囲内に含まれる無機化合物を用いることが望ましい。従来からエンジンピストンのクーリングチャンネル用中子の形成に用いる結合膜には、NaClのみが使用されていたが、その融点が801℃と高いため、ゾル化が難しかったが、本発明では、融点が150〜400℃の範囲内に含まれる無機化合物を用いるため、原砂表面にゾル化状水溶性結合膜をコーテイングするのが容易となる。融点が150〜400℃の範囲内に含まれる無機化合物としては、硝酸塩系を主体としてものを用いることがよく、特に、硝酸塩,硝酸塩と塩化物の混合物,硝酸塩と炭酸塩の混合物或いは硝酸塩と臭化塩の混合物のいずれか一つからなる硝酸塩系の無機化合物塩を用いることが望ましい。
【0031】
上述した硝酸系の無機化合物塩としては、図3に示すようにな2元無機混合塩を用いることが望ましい。図3に示す2元無機混合塩は、NaNO3,KNO3,NaNO2,KNO2,NaCl,Na2CO3,KCl或いはK2CO3のいずれか一つの第1塩類化合物と、Ca(NO3)2,Pb(NO3)2,KNO3,KNO2,NaNO3,NaNO2,K2SO4,NaNO3或いはKBrのいずれか一つの第2塩類化合物との組み合わせからなる無機化合物塩を用いている。また、前記水溶性結合膜は、前記無機化合物塩に代えて、水溶性で、かつ熱可塑性の有機化合物、例えばポリビニルアルコール(PVA)や炭水化物を用いてもよい。
【0032】
次に、アルミニウム鋳型用中子を製造する場合の具体例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
図1(a)に示す原砂粒子1には、平均粒径425μmのパールサンド(=SiO2;純度99.8%)を使用している。以下、原砂粒子1をパールサンド1として表記する。
【0034】
多孔質殻3には、ベントナイトを用いている。以下、多孔質殻3をベントナイト3として表記する。このベントナイト3は、モンモリロナイトを主成分とし、石英・α−クリストバライト・長石・方解石などを含む物質であり、水の介在で安定な水系コロイドを形成する性質を備えている。
【0035】
水溶性結合膜2には、水溶性を有し、かつアルミニウム鋳造時の熱量に耐えるために、融点が298℃のNaCl−NaNO3を用いている。以下、水溶性結合膜2をNaCl−NaNO32として表記する。
【0036】
先ず、所定量のパールサンド1に対してベントナイト3を5%、水を3%をそれぞれ添加し、ベントナイト3をゾル状態とする。そして、ローラミル等によりパールサンド1の表面にベントナイト3を塗り込むように混錬する。これにより、図1(a)に示すようにパールサンド1の表面にベントナイト3の薄膜をコーテイングする。
【0037】
次に、ベントナイト3の薄膜をコーテイングしたパールサンド1を1000℃で焼成して、パールサンド1の表面にベントナイト3を固着し、このベントナイト3を多孔質の外殻に変質させる(図1(a)参照)。
【0038】
ベントナイト3を多孔質の殻に変質させた後、パールサンド1を図2(a)に示す混錬槽4に移し変えて350℃で加熱、乾燥しながら、粉末状のNaCl−NaNO32をパールサンド1の量に対して5%を添加し、混錬槽4内で攪拌翼5を高速回転(例えば、25〜50rpm)させて、パールサンド1とゾル化した粉末状NaCl−NaNO32とを混錬する。この工程で粉末状NaCl−NaNO32が溶融し、この溶融したNaCl−NaNO32が攪拌によりベントナイト3の内層及び外層(表層)に浸透してパールサンド表面に薄膜状にコーテイングされる(図1(b)参照)。
【0039】
上述したコーテイング工程では、パールサンド1の表面部にコーテイングされたNaCl−NaNO32が完全に固化していないため、パールサンド表面部にコーテイングされたNaCl−NaNO32同士が結合し合ってパールサンドが塊となる傾向にある。この塊をパールサンド群6として表記する。
【0040】
そこで、図2(b)に示すように、NaCl−NaNO32がコーテイングされて塊となったパールサンド群6を混錬槽4から振動篩7に落下させ、NaCl−NaNO32を融点以下に徐冷しながら、振動篩7で振動を与えてパールサンド群6を崩壊させ、これにより短時間で流動性に優れた図1(b)に示す粒状の型形成用コーテッドサンドを得る。
【0041】
次に図4を用いて中子を造形する工程について説明する。図4に示す中子造形用金型8として、加熱機構9と冷却機構10とを兼ね備えた構造のものを用いている。
【0042】
図4(a)に示すように、加熱機構9により金型8を350〜400℃の範囲で加熱し、前述した粒状の型形成用コーテッドサンドをサンドタンク11に通して金型8のキャビテイ12内に圧縮エアーによってブロー充填する。
【0043】
次に図4(b)に示すように、サンドタンク11を金型8から引き離すと共に、金型8を加熱状態に保持しながら、キャビテイ12に充填された粒状の型形成用コーテッドサンドのNaCl−NaNO32を溶融し、粒状の型形成用コーテッドサンド同士を結合させ、中子形状に保型する。
【0044】
次に図4(c)に示すように、加熱機構9による金型8の加熱を止め、加熱機構9に代えて冷却機構10を用い、金型8を徐冷しながらNaCl−NaNO32の融点以下まで冷却し、NaCl−NaNO32が固化するのを待つ。
【0045】
その後、図4(d)に示すように、NaCl−NaNO32が固化したときに、冷却機構10を停止し、金型8を型開きし、造形された中子13を金型8から取出す。
【0046】
さらに、上述した中子13をテスト中子に用いてアルミニウム鋳造を行った例について説明する。上述した中子13を鋳造用金型(図示略)のキャビテイ内の所望の位置にセットし、金型の型閉めを行った。
【0047】
次に、中子13をセットした鋳造用金型のキャビテイ内に720℃の溶湯を鋳込み、鋳造を行った。
【0048】
以上のアルミ鋳造を行った結果、中子用の型形成用コーテッドサンドの耐火温度が高いことと熱容量が大きいことから、テスト用中子は鋳造によって熱変形することなくシェル中子とほぼ同等の鋳物形状を得ることができた。さらに、結合膜2として水溶性のものを用いているため、鋳造後に水冷することによりテスト中子は容易に破壊することが認められ、その結果を確認した。
【0049】
以上説明した例では、アルミニウム鋳造後、堰切断前のワーク水冷工程で中子を除去できる。原砂の除去が容易なため、熱処理前の原砂の砂焼きが不要となり、従来必要としていた砂焼きの熱処理を廃止することができる。さらに、原砂の流動性が確保できるため、原砂抜きの穴数の削減や複雑な造形形状の設計が可能となるため、鋳造品の性能を向上できる。
【0050】
また従来のレジンを用いるコーテッドサンドのようにアンモニアやアセトアルデヒトなどの悪臭を発生させることがなく、環境の汚染を防止することができる。さらに、発生ガス量が少ないため、ガスによるボイドの発生を抑制して鋳造品の鋳造不良を低減することができる。
【0051】
なお、本発明を実施形態を用いて説明したが、特許請求の範囲に開示した技術的思想の範囲内において種々変形することが可能であり、図示した実施形態に限定されるものではない。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る型形成用コーテッドサンドは、多孔質殻が有効に機能して多孔質殻に水溶性結合膜が十分に浸透することから、原砂粒子に対する水溶性結合膜の結合度を十分に確保することができ、原砂粒子からの水溶性結合膜の剥離を防止することができる。さらに、多孔質殻の機能により原砂粒子に水溶性結合膜を十分に付着させることにより、流動性を向上させて原砂の充填作業を効率的に行うことができる。
【0053】
さらに、原砂粒子の従来の製法に加えて、原砂粒子の表面に多孔質殻を設ける工程を付加する構成を採ることにより、ゾル化工程に先立って多孔質殻への水溶性結合膜の浸透性を確保することとなり、原砂粒子に水溶性結合膜を能率よく十分な量を付加することができる。さらに、原砂粒子同士が結合して塊となったとしても、その塊に振動を加えて短時間で粒状化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態において、原砂粒子に多孔質殻を形成した状態を示す拡大断面図、(b)は、本発明の一実施形態において、原砂粒子に多孔質殻を介して水溶性結合膜を形成した状態を示す拡大断面図、(c)は、本発明に係る一実施形態において、型形成用コーテッドサンドが塊状に結合する状態を示す拡大断面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態に用いた混錬槽の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いた水溶性結合膜としての2元系無機混合塩を示す図表である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態の型形成用コーテッドサンドを用いて鋳造用テスト中子を造形する工程を工程順に示す断面図である。
【符号の説明】
1 原砂粒子
2 水溶性結合膜
3 多孔質殻
Claims (7)
- 細径の原砂粒子と、該原砂粒子の表面部にコーテイングされた水溶性結合膜とを備えた型形成用コーテッドサンドにおいて、
前記原砂粒子と前記水溶性結合膜との間に多孔質殻を設けたことを特徴とする型形成用コーテッドサンド。 - 前記多孔質殻は、粘土粉,ベントナイト或いは澱粉のいずれか一つからなるゾル化物質であることを特徴とする請求項1に記載の型形成用コーテッドサンド。
- 前記水溶性結合膜は、硝酸塩,硝酸塩と塩化物の混合物,硝酸塩と炭酸塩の混合物或いは硝酸塩と臭化塩の混合物のいずれか一つからなる硝酸塩系の無機化合物塩であることを特徴とする請求項1に記載の型形成用コーテッドサンド。
- 前記無機化合物塩は、NaNO3,KNO3,NaNO2,KNO2,NaCl,Na2CO3,KCl或いはK2CO3のいずれか一つの第1塩類化合物と、Ca(NO3)2,Pb(NO3)2,KNO3,KNO2,NaNO3,NaNO2,K2SO4,NaNO3或いはKBrのいずれか一つの第2塩類化合物とを組み合わせたものであることを特徴とする請求項3に記載の型形成用コーテッドサンド。
- 前記水溶性結合膜は、前記硝酸塩系の無機化合物塩に代えて、水溶性で、かつ熱可塑性の有機化合物を用いたことを特徴とする請求項3に記載の型形成用コーテッドサンド。
- 所定量の細径の原砂粒子に水溶性結合膜の素材を投入して該水溶性結合膜の素材をゾル化させるゾル化工程と、前記原砂粒子と前記ゾル状態の水溶性結合膜の素材とを混錬させる混錬工程とを備えた型形成用コーテッドサンドの製造方法において、
前記水溶性結合膜をゾル化させるゾル化工程に先立って、前記原砂粒子の表面に多孔質殻を設ける工程を付加したことを特徴とする型形成用コーテッドサンドの製造方法。 - 前記混錬工程の後工程として、型形成用原砂の塊に振動を加えて粒状の型形成用原砂を得る工程を付加したことを特徴とする請求項6に記載の型形成用コーテッドサンドの製造方法。
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2002
- 2002-09-10 JP JP2002263782A patent/JP2004098129A/ja not_active Withdrawn
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