鋳型の製造方法には従来から各種のものがあるが、その一つにシェルモールド法がある。シェルモールド法は、硅砂など鋳型用の耐火骨材を粘結剤によって結合させて造型することによって得られるものであり、寸法精度が良好な鋳型が得られる等の優れた特性を有するため、従来から多用されている。
このシェルモールド用の粘結剤としては、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が一般に用いられており、耐火骨材と熱硬化性樹脂とを混合して耐火骨材の表面に熱硬化性樹脂を被覆したレジンコーテッドサンドを調製し、このレジンコーテッドサンドを加熱された金型内に充填し、熱硬化性樹脂粘結剤を溶融・硬化させることによって、鋳型を造型するようにしている。
レジンコーテッドサンドはそれ自体がサラサラした粒状物であり、流動性が良好であるため、金型への充填性が良好であり、空気輸送なども可能で取り扱いも良好である。このため、レジンコーテッドサンドを用いたシェルモールド法は自動車鋳物用などに多用されている。
このようなレジンコーテッドサンドにおいて、耐火骨材の表面を被覆する熱硬化性樹脂粘結剤としては、上記のようにフェノール樹脂が一般的であり、フェノール樹脂のなかでもノボラック型フェノール樹脂がよく使用されている。このノボラック型フェノール樹脂は熱可塑性で加熱しても硬化しないために、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを配合して使用するのが普通である(例えば特許文献1等参照)。
そしてノボラック型フェノール樹脂を粘結剤として調製されるレジンコーテッドサンドを250〜350℃に加熱した金型に充填すると、金型からの熱伝達で加熱されてヘキサメチレンテトラミンがホルムアルデヒドとアンモニアに分解され、ホルムアルデヒドの大部分はノボラック型フェノール樹脂と反応してフェノール樹脂を不融状態に硬化させることができる。
しかし一方、反応に寄与しなかったホルムアルデヒドや、殆どのアンモニアは、鋳型を造型する際や、造型後に、大気中に揮散することになり、このホルムアルデヒドやアンモニアによって環境が汚染されるという問題が発生するものであった。フェノール樹脂としてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合には、このような問題は幾分か低減できるが、レゾール型フェノール樹脂においても未反応のホルムアルデヒドが放出されるので、依然として問題が残る。また、フェノール樹脂を粘結剤とするレジンコーテッドサンドを用いて鋳型を製造する場合、鋳型に溶湯を鋳込んで鋳造する際に、溶湯の熱でフェノール樹脂が分解し、例えばフェノール、キシレノール、トルエン、ベンゼン、メタンなどが放出されることになり、この点でも環境の汚染が問題になるものであった。
さらに、フェノール樹脂は耐熱性が高く、残留炭素量も多いため、製造した鋳型に溶湯を注入して鋳物を鋳造した際に、溶湯の熱で鋳型を崩壊させ難いものであり、鋳物を鋳型から取り出すために、鋳型に衝撃を加えたり、高温で長時間加熱してフェノール樹脂を分解させたりする必要があって、脱型に手間を要するという問題もあった。
そこで、粘結剤としてフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の代わりに糖類を使用することが検討されている。糖類は炭水化物であるので、分解しても炭酸ガスと水を放出する程度であって、有害なガスを放出することがなく、環境を汚染するようなことなく使用することができる。また糖類は容易に加熱分解されるので、溶湯の熱で鋳型を崩壊させ易く、鋳物を鋳型から容易に取り出すことができる。従って粘結剤として糖類を用いることによって、環境にやさしい鋳型を製造することができ、また崩壊性の良好な鋳型を得ることができるものである。
このように粘結剤として糖類を使用し、糖類で耐火骨材を結合して鋳型を造型する場合、糖類が粘着作用を発揮する状態にする必要がある。従来は耐火骨材と糖類の混合物に水を加えて混錬することによって糖類に粘着性を付与した湿潤状態の造型材料を調製し、この造型材料を型内に高圧で押し込んで充填した後、型内で水分を蒸発させることによって糖類を固化させるという造型方法で鋳型を製造している(例えば特許文献2、特許文献3参照)。しかしながらこの方法では、湿潤状態の造型材料を型内に充填する必要があるため、型への充填性が非常に悪いという問題がある。
一方、特許文献4の発明では、耐火骨材の表面に粘結剤として糖類を含有する固形のコーティング層を被覆して形成した粘結剤コーテッド耐火物を用いるようにしている。この粘結剤コーテッド耐火物は糖類を含有するコーティング層が固形であるので、レジンコーテッドサンドと同様にサラサラした粒状物であり、流動性が良好であって型への充填性が良好である。しかし糖類を含有するコーティング層が固形である場合、糖類が粘結剤として作用するためには、糖類に粘着作用を付与する必要がある。
このために特許文献4の発明では、型に粒状の粘結剤コーテッド耐火物を充填した後に、型内に水蒸気を通して加熱することによって、鋳型を造型するようにしている。すなわち、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に水蒸気を吹き込むと、水蒸気が粘結剤コーテッド耐火物に接触して熱を奪われて温度低下するので凝縮水が発生し、この凝縮水によって糖類に粘着性を付与して糊状化させ、耐火骨材をこの糊状の糖類で結合させることができる。さらに引き続いて吹き込まれる水蒸気の凝縮潜熱及び顕熱で粘結剤を加熱して水分を乾燥させることができ、粘結剤の糖類を固化乃至硬化させて鋳型を製造することができるものである。
上記のように特許文献4の発明では、耐火骨材の表面に粘結剤として糖類を含有する固形のコーティング層を被覆して形成した粒状の粘結剤コーテッド耐火物を用いて、型への充填性良く、環境にやさしく崩壊性の良好な鋳型を製造することができる。しかも水蒸気は潜熱によって効率高く加熱することができるので、鋳型を造型する時間も短縮することができ、特許文献4の発明は鋳型の製造技術として優れたものである。
しかし、特許文献4の発明では鋳型を造型する際に水蒸気を使用するため、上記のような利点がある反面、鋳型を造型する設備に水蒸気生成装置を付設したりあるいは水蒸気を供給する配管を設けたりする必要がある。従って、従来の鋳型の製造設備をそのまま使用して鋳型の造型を行なうことは難しいという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、糖類を粘結剤とする粒状の粘結剤コーテッド耐火物を用いて鋳型を製造するにあたって、水蒸気を使用する必要なく鋳型の造型を行なうことができ、加えて強度の高い鋳型を造型することができる鋳型の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る鋳型の製造方法は、耐火骨材の表面に粘結剤として糖類を含有する固形のコーティング層を被覆して調製される粘結剤コーテッド耐火物を用い、型に粘結剤コーテッド耐火物を充填し、型内の粘結剤コーテッド耐火物を上記糖類の融解温度以上に加熱して糖類を融解させることによって、融解した糖類の粘着性で造型し、造型物を型から取り出した後、造型物を加熱処理することを特徴とするものである。
型内に充填した粘結剤コーテッド耐火物を、耐火骨材の表面の固形のコーティング層に含有される糖類の融解温度以上に加熱することによって、糖類は固形状態から融解した状態になって粘着性が生じ、糖類を粘結剤として耐火骨材同士を結合させることによって型内で造型することができるものであり、水蒸気を使用する必要なく鋳型の造型を行なうことができるものである。尚、本発明において糖類は融解することによって粘着性を発揮するので、融点を有する糖類を用いる必要がある。
さらに造型物を型から取り出して加熱処理することによって、糖類の分子中から水が生成して蒸発し縮重合すると考えられる理由により、糖類による耐火骨材の結合力が高まると共に糖類の耐熱性が向上するものであり、強度や耐熱性が高い鋳型を得ることができるものである。しかも糖類の分子中から水が除去される結果、鋳込みの際に発生する分解ガスを低減することができるものである。
また本発明において、コーティング層の糖類が融解する温度に設定した型に粘結剤コーテッド耐火物を充填することによって、粘結剤コーテッド耐火物を糖類の融解温度以上に加熱することができる。
上記[背景技術]で説明したように、レジンコーテッドサンドを用いて鋳型を造型するにあたって、レジンコーテッドサンドを加熱された金型内に充填して熱硬化性樹脂粘結剤を融解・硬化させることによって行なうのが一般的であるが、このような鋳型の造型設備をそのまま使用して、鋳型を造型することができるものである。
また本発明において、型に粘結剤コーテッド耐火物を充填した後、型内にコーティング層の糖類が融解する温度以上に設定した加熱気体(水蒸気を除く)を供給することによって、粘結剤コーテッド耐火物を糖類の融解温度以上に加熱することができる。
型内に加熱気体を供給すると、加熱気体は型内に充填された粘結剤コーテッド耐火物の粒子間を通過し、型内に充填された粘結剤コーテッド耐火物を均一に且つ迅速に加熱することができるものであり、品質が均一な鋳型を短時間で造型することが可能になるものである。
また本発明は、造形物の加熱処理を100〜500℃の温度条件で行なうことを特徴とするものである。
加熱処理の温度条件をこの範囲に設定することによって、糖類による結合力を高める効果を十分に得ることができるものである。
また本発明は、造形物の加熱処理を5〜200分間行なうことを特徴とするものである。
加熱処理の時間をこの範囲に設定することによって、糖類による結合力を高める効果を十分に得ることができるものである。
また本発明において、型内の粘結剤コーテッド耐火物を加熱する加熱気体として、加熱した空気を用いることができる。
空気を加熱する手段と送風する手段を備えるだけで、高価な設備を導入する必要なく、鋳型の造型を行なうことができるものである。
また本発明は、粘結剤の糖類として融点が250℃以下のものを用いることを特徴とするものである。
糖類の融点が250℃以下であることによって、従来のレジンコーテッドサンドを用いて鋳型を造型する場合と同様な加熱温度で、鋳型の造型を行なうことができるものである。
また本発明は、糖類として単糖類、少糖類から選ばれるものを用いることを特徴とするものである。
多糖類の大部分は融点を有しないので、本発明において使用することはできず、糖類として融点を有する単糖類、少糖類から選んで使用することが望ましいものである。
糖類としては、単糖類、少糖類から選ばれるものの他に、多糖類を併用することもできる。
また本発明は、コーティング層に、糖類を重合反応させるカルボン酸が含有されていることを特徴とするものである。
カルボン酸が硬化剤あるいは硬化触媒として作用して糖類を重合反応させることができ、糖類による結合力をより高めて鋳型の強度や耐熱性を一層向上できるものである。
また本発明は、コーティング層に、粘結剤として糖類の他に、糖類に対して40質量%以下の熱硬化性樹脂が含有されていることを特徴とするものである。
熱硬化性樹脂によって耐火骨材の結合力を補強することができ、鋳型の強度や耐熱性を一層向上することができるものである。
上記熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂を用いることができる。
本発明によれば、耐火骨材の表面に粘結剤として糖類を含有する固形のコーティング層を被覆して調製される粘結剤コーテッド耐火物を型内に充填し、型内で糖類の融解温度以上に加熱することによって、糖類は固形状態から融解した状態になって粘着性が生じ、糖類を粘結剤として耐火骨材同士を結合させることによって型内で造型することができ、水蒸気を使用する必要なく鋳型の造型を行なうことができるものである。
そしてこのように造型した造型物を型から取り出して加熱処理することによって、糖類の分子中から水が生成して蒸発し縮重合すると考えられる理由により、糖類による耐火骨材の結合力が高まると共に糖類の耐熱性が向上するものであり、強度や耐熱性が高い鋳型を得ることができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明において用いる粘結剤コーテッド耐火物は、耐火骨材の粒子の表面を、粘結剤を含有する固形のコーティング層で被覆することによって形成されるものであり、粘結剤の少なくとも一部として糖類を用いるものである。
耐火骨材としては、特に限定されるものではないが、珪砂、山砂、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂、その他、人工砂などを例示することができるものであり、これらを1種単独で用いる他、複数種を混合するなどして併用することもできる。尚、人工砂としては、カルシア、マグネシア、アルミナなどを含む人工的に作られた砂を例示することができ、また石や岩を粉砕して人工的に作られた砂を例示することができるものであり、つまり人工砂は、一般的に使用される人工的に作られた砂であればよい。
また糖類としては、単糖類、少糖類、多糖類を用いることができるが、本発明では造型の際に糖類を融解させる必要があるので、融点を有するものを用いる必要がある。つまり、加熱した際に融解することなく分解したり炭化したり昇華したりして融点を示さない糖類は、本発明において粘結剤として使用することができない。そして単糖類や少糖類は融点を有するものが多く、多糖類は融点のないものが多いので、本発明において粘結剤としての糖類としては単糖類や少糖類を用いるのが好ましい。
ここで、粘結剤として使用する糖類は、融点が250℃以下のものが好ましい。糖類の融点がこのように250℃以下であることによって、従来のフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を粘結剤とするレジンコーテッドサンドを用いて鋳型を造型する場合と同様な加熱温度で、鋳型の造型を行なうことができるものであり、既存の造型設備をそのまま用いて、本発明を実施することが容易になるものである。
従って本発明では、粘結剤として使用する糖類は融点が250℃以下の単糖類、少糖類から選ばれるものを用いることが好ましいものであり、これらは1種を単独で使用する他、複数種を併用することもできる。勿論、多糖類であっても融点が250℃以下のものであれば、好ましく使用することができる。
また糖類として融点が250℃以下の単糖類、少糖類を用いる場合、これと併用して、融点が250℃以上の糖類や、多糖類を使用するようにしてもよい。この場合、糖類のうち、融点が250℃以下の単糖類、少糖類が50質量%以上であることが好ましい。
単糖類としては、グルコース(ブドウ糖)(融点146.5℃)、フルクトース(果糖)(融点102〜104℃)、ガラクトース(融点167℃)などを挙げることができる。
また少糖類としては、マルトース(麦芽糖)(融点110〜130℃)、スクロース(ショ糖)(融点186℃)、ラクトース(α型水和物の融点202℃、α型無水物の融点223℃、β型無水物の融点252℃)、トレハロース(融点97℃)、セロビオース(L型の融点214℃、S型の融点153℃)などの二糖類を挙げることができる。
砂糖はスクロース(ショ糖)を主成分とするものであり、原料や製法などによって上白糖、グラニュー糖、白双糖、三温糖、黒糖などがあり、これらはいずれも本発明において粘結剤として使用することができる。これらの融点は、スクロース(ショ糖)以外の不純物の種類や量によって異なるが、170〜192℃の範囲である。
さらに多糖類としては、でんぷん糖、デキストリン、ザンサンガム、カードラン、プルラン、シクロアミロース、キチン、セルロース、でんぷんなどかある。ここで、でんぷんとしては、末加工でんぷん及び加工でんぷんを挙げることができる。具体的には馬鈴薯でんぷん、コーンスターチ、ハイアミロース、甘藷でんぷん、タピオカでんぷん、サゴでんぷん、米でんぷん、アマランサスでんぷんなどの未加工でんぷん、及びこれらの加工でんぷん(焙焼デキストリン、酵素変性デキストリン、酸処理でんぷん、酸化でんぷん、ジアルデヒド化でんぷん、エーテル化でんぷん(カルボキシメチルでんぷん、ヒドロキシアルキルでんぷん、カチオンでんぷん、メチロール化でんぷんなど)、エステル化でんぷん(酢酸でんぷん、リン酸でんぷん、コハク酸でんぷん、オクテニルコハク酸でんぷん、マレイン酸でんぷん、高級脂肪酸エステル化でんぷんなど)、架橋でんぷん、クラフト化でんぷん、及び湿熱処理でんぷんなどを挙げることができる。これらのなかでも、焙焼デキストリン、酵素変性デキストリン、酸処理でんぷん、酸化でんぷんのように低分子化されたもの、及び架橋でんぷんなどの粘度の低いでんぷんが好ましい。
粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層には、糖類を重合反応させるカルボン酸を含有するようにしてもよい。カルボン酸としては、一価のカルボン酸や、二価以上の多価カルボン酸を用いることができる。例えば、一価のカルボン酸として、安息香酸、サリチル酸、アントラニル酸などを挙げることができ、また多価のカルボン酸として、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イソフタル酸、イタコン酸、ブタンテトラジカルボン酸、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体などを挙げることができる。一価のカルボン酸は主として反応促進剤(硬化促進剤、硬化触媒)として作用して、多価カルボン酸は主として架橋剤(硬化剤)として作用して、糖類を重合反応させることができるものである。糖類をカルボン酸の作用で重合させることによって高分子化することができ、場合によっては硬化させることができるものである。これらのカルボン酸は、一種を単独で用いる他、複数種を混合して用いることもできる。
カルボン酸の配合量は、糖類の種類などによって異なるものであり、特に限定されるものではないが、糖類100質量部に対して、カルボン酸1〜40質量部となる範囲に設定するのが好ましく、1〜30質量部の範囲が特に好ましい。カルボン酸の配合量が少な過ぎると、糖類を十分な分子量に高分子化反応させるのが難しい。またカルボン酸をこれより多く配合しても、糖類を高分子化させる効果は向上しないので、経済的に不利になるおそれがある。尚、カルボン酸は予め水に溶解させた状態で糖類と混合するのが、硬化剤としての効果を高く発揮させるうえで好ましい。
本発明では、粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層に含有される粘結剤として糖類を用いるようにしているが、粘結剤として糖類の他に熱硬化性樹脂を併用して、コーティング層に含有させるようにしてもよい。粘結剤として熱硬化性樹脂を併用することによって、粘結剤による耐火骨材の結合強度を高めることができ、粘結剤として糖類を単独で用いる場合よりも鋳型の強度や耐熱性を向上することができるものである。特に鋳型の耐熱性を向上する効果が高いので、高温の溶湯を用いて鋳造をする場合に適している。
コーティング層中の熱硬化性樹脂の含有量は、糖類に対して40質量%以下に設定するのが好ましい。熱硬化性樹脂の含有量がこれより多いと、粘結剤として糖類を用いることによる効果が不十分になる。
粘結剤として糖類と併用するこの熱硬化性樹脂は、特に限定されるものではないが、レゾール型フェノール樹脂やノボラック型フェノール樹脂(硬化剤含有)を用いることができる。レゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂は、一方を単独で用いる他、両者を併用してもよい。また、糖類とフェノール類とを予め反応させておいたものを使用することもできる。熱硬化性樹脂を粘結剤として耐火骨材にコーティングする前の状態は、液体であっても固体であってもいずれでもよい。
粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層には、粘結剤コーテッド耐火物の流動性を良くするために、コーティング層に滑剤を含有させるようにしてもよい。滑剤としては、パラフィンワックスやカルナバワックス等の脂肪族炭化水素系滑剤、高級脂肪族系アルコール、エチレンビスステアリン酸アマイドやステアリン酸アマイド等の脂肪族アマイド系滑剤、金属石けん系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、複合滑剤などを用いることができるが、なかでも金属石けん系滑剤が好ましい。金属石けん系滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどや、これらを複数種組み合わせたものを用いることができる。
また、融点が粘結剤の糖類の融点より低い固体を添加して粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層に含有させると、糖類の融点が低くなるので、後述のように鋳型を造型する際の加熱温度を下げることができる。このような添加物としてはロジン、ポリエチレングリコール、ノボラック樹脂などを挙げることができる。
そして、耐火骨材の粒子に糖類や、必要に応じてカルボン酸、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、糖類とフェノール類との反応物、滑剤やその他の添加物を配合して混合することによって、耐火骨材の表面に糖類を主成分とする粘結剤を含有するコーティング層を被覆して、本発明で使用する粘結剤コーテッド耐火物を得ることができるものである。
耐火骨材に被覆するコーティング層の量は、成分や用途などに応じて異なり一概に規定できないが、耐火骨材100質量部に対して粘結剤が0.5〜5.0質量部、滑剤が固形分で0.02〜0.15質量部の範囲になるように設定するのが一般的に好ましい。耐火骨材100質量部に対して粘結剤が5.0質量部を超える場合、耐火骨材と粘結剤との混練が困難となる。また耐火骨材100質量部に対して粘結剤が0.5質量部未満であると、鋳型の強度を保つことが難しくなる。
耐火骨材の表面にコーティング層を被覆して粘結剤コーテッド耐火物を調製する方法としては、ホットコート法、コールドコート法、セミホットコート法、粉末溶剤法などがある。
ホットコート法は、110〜180℃に加熱した耐火骨材に固形の粘結剤を添加して混合し、耐火骨材による加熱で固形の粘結剤を融解させることによって、融解した粘結剤で耐火骨材の表面を濡らして被覆させ、この後、この混合を保持したまま冷却することによって、粒状でさらさらした粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。あるいは、110〜180℃に加熱した耐火骨材に、水などの溶剤に溶解又は分散させた粘結剤を混合して被覆し、溶剤を揮散させることによって、粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
コールドコート法は、粘結剤を水やメタノールなどの溶剤に分散乃至溶解して液状になし、これを耐火骨材の粒子に添加して混合し、溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
セミホットコート法は、上記の溶剤に分散乃至溶解した粘結剤を、50〜90℃に加熱した耐火骨材の粒子に添加して混合し、溶剤を揮発させることによって粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
粉末溶剤法は、固形の粘結剤を粉砕し、この粉砕粘結剤を耐火骨材の粒子に添加してさらに水やメタノールなどの溶剤を添加し、これを混合して溶剤を揮発させることによって、粘結剤コーテッド耐火物を得る方法である。
以上のいずれの方法においても、耐火骨材の表面を常温(30℃)で固形のコーティグ層を被覆して、粒状でさらさらして流動性のある粘結剤コーテッド耐火物を得ることができるが、作業性などの点においてホットコート法が好ましい。また上記のように耐火骨材に粘結剤を混合する際に、必要に応じて硬化剤や、耐火骨材と粘結剤とを親和させるためのシランカップリング剤など各種のカップリング剤や、また黒鉛等の炭素質材料などを配合することもできる。
粘結剤として糖類と熱硬化性樹脂を併用する場合、糖類と熱硬化性樹脂を同時に耐火骨材に被覆することによって、糖類と熱硬化性樹脂が混在したコーティング層を形成する方法、耐火骨材の表面に熱硬化性樹脂を被覆した後、糖類を被覆することによって、2層構成のコーティング層を形成する方法などがあり、いずれの方法であってもよい。
上記のように調製される粘結剤コーテッド耐火物を用いて鋳型を製造するにあたっては、金型など鋳型造型用の型に粘結剤コーテッド耐火物を充填し、型内で粘結剤コーテッド耐火物を加熱することによって造型を行なうことができる。ここで、粘結剤コーテッド耐火物は流動性に優れた粒子であるので、型内に容易に充填することができ、例えば流し込みやエアーによる吹き込みなどで型内の隅々にまで充填することができるものである。
型内で粘結剤コーテッド耐火物を加熱する方法としては、予め加熱しておいた型内に粘結剤コーテッド耐火物を充填する方法が最も一般的である。型の加熱温度は粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層に粘結剤として含有される糖類の融点(複数種の糖類が含有される場合は、最も高い融点)よりも高い温度に設定されるものであり、糖類の融点よりも20〜200℃の範囲で高いことが望ましい。型の加熱温度が糖類の融点より20℃未満高いだけであると、型内に粘結剤コーテッド耐火物を充填してから粘結剤の糖類が融解するまでに要する時間が長くなって造型の効率が悪くなり、また糖類の融解が不十分になるおそれがある。逆に型の加熱温度が糖類の融点より200℃を超えて高いと、糖類が過剰に加熱されて分解されるおそれがある。
このように加熱した型内に粘結剤コーテッド耐火物を充填して、型内で粘結剤コーテッド耐火物を粘結剤の糖類の融点以上の温度で加熱すると、この糖類が融解し、糖類に粘着性が生じる。そしてこの粘着性を有する糖類が粘結剤として作用して、耐火骨材の粒子を結合させることができ、耐火粒子の集合結合体として造型することができるものである。加熱した型内に粘結剤コーテッド耐火物を充填した後、造型物を型から脱型するまでの造型時間は、粘結剤の糖類の融点と型の温度との関係や型の形状・大きさなどによって変動するが、通常は20〜600秒程度である。
型内で粘結剤コーテッド耐火物を加熱する他の方法として、型内に粘結剤コーテッド耐火物を充填した後、型内に加熱気体を供給する方法がある。型に供給口と排出口を設けておき、加熱気体を供給口から型内に吹き込むと、加熱気体は型内の粘結剤コーテッド耐火物の粒子間の空隙を通過した後、排出口から排出される。加熱気体の温度は粘結剤コーテッド耐火物のコーティング層に粘結剤として含有される糖類の融点(複数種の糖類が含有される場合は、最も高い融点)よりも高い温度に設定されるものであり、糖類の融点よりも10〜400℃の範囲で高いことが望ましい。加熱気体の温度が糖類の融点より10℃未満高いだけであると、加熱気体を型内に供給し始めてから粘結剤コーテッド耐火物の粘結剤の糖類が融解するまでに要する時間が長くなって造型の効率が悪くなり、また糖類の融解が不十分になるおそれがある。逆に加熱気体の温度が糖類の融点より400℃を超えて高いと、糖類が過剰に加熱されて分解されるおそれがある。
このように粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に加熱気体を供給して、型内で粘結剤コーテッド耐火物を粘結剤の糖類の融点以上の温度で加熱すると、この糖類が融解し、糖類に粘着性が生じる。そしてこの粘着性を有する糖類が粘結剤として作用して、耐火骨材の粒子を結合させることができ、耐火粒子の集合結合体として造型することができるものである。ここで、加熱気体を型内に吹き込むと、加熱気体は型内の粘結剤コーテッド耐火物の粒子間の空隙を通過するので、型内の粘結剤コーテッド耐火物を均一に加熱することができるものであり、均質な鋳型を製造することが可能になるものである。粘結剤コーテッド耐火物を充填した型内に加熱気体を供給し始めてから、造型物を脱型するまでの造型時間は、粘結剤の糖類の融点と加熱気体の温度との関係や、型の形状・大きさなどによって変動するが、通常は20〜500秒程度である。尚、型が冷えていると、型に吹き込まれる加熱気体の熱が型に吸収されるので、型は予熱して用いるのが好ましく、型の予熱温度が高いほど、加熱気体を型内に吹き込む時間を短縮することができる。
ここで、加熱気体の気体としては、空気の他に窒素ガスなど種々のものを使用することができるが、大気中から自由に得ることができる空気を用いるのが好ましい。また、空気を加熱する手段と送風する手段を備えるだけで、高価な設備を導入する必要なく、型内の粘結剤コーテッド耐火物を加熱することができるものである。尚、水蒸気(飽和水蒸気、過熱水蒸気)は本発明の趣旨に反するので、本発明において水蒸気は加熱気体から除外されるものである。
上記のようにして、融解した糖類を粘結剤として耐火骨材を結合した造型物を得ることができるものであり、この造型物を型内から取り出した後、冷却して糖類を固化させることによって、この造型物をそのまま鋳型として使用することは可能である。しかしこの造型物は糖類を粘結剤として成形されたものであるため、鋳型として使用するには強度や耐熱性が不足することが多い。そこで本発明は、型から取り出したこの造型物を加熱処理し、加熱処理した後の造型物を鋳型として使用するものである。
型から取り出した直後の造型物はまだ温度が高く、粘結剤の糖類は融解した状態あるいは半固体や固体の状態にあるが、糖類が重縮合することによって増大する糖類の粘性により造型物の形状は保たれている。そしてこの型から取り出した直後の造型物を加熱器に入れて加熱処理(加熱養生)する。加熱処理の温度は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。加熱処理の温度がこれよりも低いと、造型物を加熱処理することによる効果を十分に得ることができない。逆に加熱処理の温度が高すぎると、糖類が熱分解するおそれがあるので、500℃以下であることが好ましく、350℃以下であることがより好ましい。また加熱処理の時間は、鋳型として成形する造型物の大きさによって異なるが、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましい。熱処理の時間がこれよりも短いと、造型物を加熱処理することによる効果を十分に得ることができない。逆に加熱処理の時間が長すぎると、特に加熱処理温度が高い場合に糖類が劣化するおそれがあるので、加熱処理の時間は200分以下であることが好ましく、150分以下がより好ましい。加熱処理の温度を高めに設定したときには、処理時間を短めに調整し、加熱処理の温度が低めであるときは、処理時間を長めに設定するのが好ましい。
そしてこのように造型物を加熱処理すると、粘結剤の糖類の分子構造が熱の作用で変化する。例えば砂糖を加熱すると、103〜105℃でシロップに、107〜115℃でフォンダンに、115〜121℃でキャラメルに、140℃でタフィーに、145℃でドロップに、165℃でべっこうあめに、165〜180℃でカラメルソースに、190℃でカラメルに変化するように、糖類の分子中から水が生成して脱水され、糖類の分子が縮合反応すると考えられる。このように考えられる理由により、糖類の分子量が大きくなって、糖類を粘結剤として耐火骨材を結合する力が強くなると共に糖類の耐熱性が向上し、造型物を熱処理して得られる鋳型の強度や耐熱性を高めることができるものである。
そして上記のようにして製造した鋳型に高温の溶湯を注湯して鋳物を鋳込むことによって、鋳造を行なうことができる。このとき、鋳型の耐火骨材を結合している粘結剤は溶湯の高温の作用で分解されるが、粘結剤を構成する糖類は分解されても水や炭酸ガスが生成される程度であり、有害なガスが発生することはなく、鋳造の現場の環境を悪化させるようなことはないものである。また鋳型の耐火骨材を結合している粘結剤の糖類は比較的低温で熱分解するので、溶湯の熱で容易に熱分解する。従って、鋳型を容易に崩壊させることができるものであり、鋳物を鋳型から取り出すために、鋳型に衝撃を加えたり、高温で長時間加熱して粘結剤を分解させたりするような必要がなくなり、鋳造物を鋳型から脱型する作業を容易に行なうことができるものである。
しかも鋳型の耐火骨材を結合している粘結剤は糖類からなるが、加熱処理することによって糖類による耐火骨材の結合力が強くなると共に糖類の耐熱性が向上しており、鋳型の強度や耐熱性は向上している。従って、例えば多量の溶湯を鋳型に流し込む際においても、また高融点の溶湯を鋳型に流し込む場合においても、鋳型が壊れるようなことはなくなり、鋳型に流し込む際に鋳型が壊れるというような事故が発生することを未然に防ぐことができるものである。さらに加熱処理によって糖類の分子中から水が除去されるので、鋳型に溶湯を鋳込む際に発生する熱分解ガスを低減することができるものであり、熱分解ガスによる鋳物のガス欠陥の発生を減少させることができるものである。
ここで、上記のように粘結剤として糖類の他にフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を併用する場合、型内で粘結剤コーテッド耐火物を加熱する際に熱硬化性樹脂は融解・硬化する。従って、耐熱性の高い熱硬化性樹脂によって耐火骨材の結合力を高めることができるものであり、鋳型の強度や耐熱性をより向上することができるものである。
このように、粘結剤としてフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を併用することによって、強度や耐熱性の高い鋳型を得ることができるが、熱硬化性樹脂を用いると鋳型の製造時や溶湯を注湯する際に有害ガスが発生するおそれがあり、また鋳型の崩壊性も低下することになる。このため、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を併用する場合、既述のように糖類に対して40質量%以下の量に設定されるものであり、35質量%以下であることがより好ましい。また熱硬化性樹脂を粘結剤として併用することによる効果を得るためには、粘結剤の全量に対して熱硬化性樹脂が10質量%以上であることが好ましく、併用による高い効果を得るためには、糖類に対して熱硬化性樹脂が20質量%以上であることがさらに好ましい。
尚、型内で粘結剤コーテッド耐火物を加熱する方法として、加熱した型に粘結剤コーテッド耐火物を充填する方法と、粘結剤コーテッド耐火物を充填した型に加熱気体を供給する方法を挙げたが、これのみに限定されるものではなく、型に埋め込んだヒーターで粘結剤コーテッド耐火物を加熱する方法など、任意の方法を採用することができるものである。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(粘結剤コーテッド耐火物の製造例1)
130℃に加熱したACI珪砂30kgをワールミキサーに入れ、これに表1に示す糖類を加え、また糖類の硬化剤としてクエン酸を水450gに溶解乃至分散させた水溶液を加え、約90秒間混練した。崩壊した後、滑剤としてステアリン酸カルシウム30gを添加して15秒間混練し、さらにエアーレーションを行なうことによって、糖類からなるコーティング層で被覆した粘結剤コーテッド耐火物(1)〜(9)を得た。この粘結剤コーテッド耐火物(1)〜(9)にあって、コーティング層の質量比率は2.0質量%であった。
表1のデキストリンは日澱化學株式会社製「ND−S」、アミコールは日澱化學株式会社製「3L」を用いた。尚、糖類の融点を表1に示すが、多糖類であるデキストリンやアミコールは融点がなく、これらは加熱しても融解しない。
(粘結剤コーテッド耐火物の製造例2)
140℃に加熱したフラタリー珪砂30kgをワールミキサーに入れ、これに表2に示すフェノール樹脂を加え、約30秒間混合した後、さらに表2のヘキサメチレンテトラミンや、糖類を水450gに溶解した水溶液を加え、約90秒間混練した。崩壊した後、滑剤としてステアリン酸カルシウム30gを添加して15秒間混練し、さらにエアーレーションを行なうことによって、糖類及びフェノール樹脂からなるコーティング層で被覆した粘結剤コーテッド耐火物(10)(11)を得た。この粘結剤コーテッド耐火物(10)(11)にあって、コーティング層の質量比率は2.0質量%であった。
表2のノボラック型フェノール樹脂はリグナイト(株)製「#4800」(軟化点91℃)、レゾール型フェノール樹脂はリグナイト(株)製「LT−9」(軟化点90℃、ゲル化温度120秒(at150℃))を用いた。
上記のようにして得た粘結剤コーテッド耐火物(1)〜(11)について、融着点をJACT試験法C−1に準拠して測定した。結果を表3に示す。デキストリンやアミコールは加熱しても融解しないので、粘結剤コーテッド耐火物(8)(9)は融着点を測定することはできないものであり、糖類としてデキストリンやアミコールのみがコーティング層に含有される粘結剤コーテッド耐火物(8)(9)は、本発明に適用できる粘結剤コーテッド耐火物に該当しない。
(実施例1〜9及び比較例1,2)
粘結剤コーテッド耐火物(1)〜(11)を用いて鋳型を製造した。粘結剤コーテッド耐火物(1)〜(7),(10)(11)を用いた鋳型の製造を実施例1〜9、粘結剤コーテッド耐火物(8)(9)を用いた鋳型の製造を比較例1,2とする。
まず、キャビティの大きさが20mm×10mm×80mmに形成された金属製の型を300℃に加熱し、この型内に粘結剤コーテッド耐火物(1)〜(11)を、ゲージ圧力0.1MPaの空気圧で吹き込んで充填した。そしてそのまま120秒間保持した後、脱型して造型物を取り出した。
このように脱型した造型物について、臭気を鼻で嗅いで、臭気の強さと臭気の種類を測定した。また脱型した造型物を室温まで冷却した後、曲げ強さをJIS K 6910に準拠して測定し、表面の鉛筆硬度をJIS K 5401に準拠して測定した。さらに実施例1〜7の造型物のガス発生量を、橋本理化(株)製「鋳物砂ガス発生量試験機」(型式:手動読み取り式)を用い、測定雰囲気温度700℃で測定し、測定開始180秒後の造型物1g当たりのガス発生量を求めた。これらの結果を表4に示す。
一方、型から取り出した直後の造型物を、予め庫内温度を250℃に設定した加熱乾燥器中に30分間入れ、加熱処理をした。この加熱処理をして得られる鋳型を加熱乾燥器から取り出し、室温まで冷却した後、上記と同様にして曲げ強さ、鉛筆硬度、ガス発生量を測定した。結果を表4に示す。
表4にみられるように、加熱しても融解しない糖類のみをコーティング層に含有する粘結剤コーテッド耐火物(8)(9)を用いた比較例1,2では、強度を有する造型物を得ることができず、事実上造型することができないものであった。一方、融点を有する糖類をコーティング層に含有する粘結剤コーテッド耐火物(1)〜(7),(10)(11)を用いた実施例1〜9では、糖類の融点以上の温度で加熱することよって、所定の強度と所定の表面硬度を有する造型物を得ることができるものであった。
そして実施例1〜9において、型から取り出した造型物を加熱処理することによって、曲げ強さが1.5〜2倍程度向上し、さらに鉛筆硬度が大きく向上していることが確認されるものであり、鋳型として十分な強度や表面硬度を有するものであった。
また、加熱乾燥器の庫内温度を上記の250℃よりも低い温度の200℃と、250℃よりも高い温度の300℃に設定し、上記の実施例4において型から取り出した直後の造型物を、この加熱乾燥器中に、表5に示す時間入れ、加熱処理をした。この加熱処理をして得られる鋳型を加熱乾燥器から取り出し、室温まで冷却した後、上記と同様にして曲げ強さ、鉛筆硬度を測定した。結果を表5に示す。
表5にみられるように、造型物を加熱処理することによって、曲げ強さや鉛筆硬度が向上することが確認されるが、加熱処理の温度が低めの200℃の場合、曲げ強さや表面硬度を向上させるためには加熱時間を長めにすることが望ましいものであり、また逆に熱処理の温度が高めの300℃の場合、加熱時間が長くなると却って曲げ強さや表面硬度の向上の効果が低下するものであり、加熱温度に応じて加熱時間を調整することが望ましいことが確認される。
(実施例10〜15)
キャビティの大きさが20mm×10mm×80mmに形成された金属製の型を80℃に予熱し、この型内に粘結剤コーテッド耐火物(4)をゲージ圧力0.1MPaの空気圧で吹き込んで充填した。次に、大気中の空気(相対湿度63%RH)を表6に示す300℃あるいは400℃に加熱した加熱空気を、3.0m3/分の流量で表6に示す90秒、あるいは180秒、あるいは270秒の時間、型内に吹き込んで成形した後、脱型して造型物を取り出した。
このように脱型した造型物を室温まで冷却した後、上記と同様にして曲げ強さ、鉛筆硬度を測定した。結果を表6に示す。
一方、型から取り出した直後の造型物を、予め庫内温度を250℃に設定した加熱乾燥器中に30分間入れ、加熱処理をした。この加熱処理をして得られる鋳型を加熱乾燥器から取り出し、室温まで冷却した後、上記と同様にして曲げ強さ、鉛筆硬度を測定した。結果を表6に示す。
表6にみられるように、型に加熱気体を吹き込んで粘結剤コーテッド耐火物を加熱することによって、造型をすることが確認することができた。そして造型物を加熱処理することによって、曲げ強さや鉛筆硬度が大きく向上していることが確認されるものであり、鋳型として十分な強度や表面硬度を有するものであった。