以下、本発明に係る第1の実施形態の駆動装置11を自動車用の電動ミラーに適用した場合の例として図1乃至図5に基づいて説明する。図1(a)、(b)に示すように、第1の実施形態において駆動装置11は、ミラー12(出力部材)と、支持部材14と、連結部材16と、可動体18と、変位振動付与装置22とを有している。なお、本実施形態の駆動装置11においての前後左右上下は図中に示すとおりであり、上面図である図1(a)の上下がそれぞれ前後を示し、側面図である図1(b)の上下左右がそれぞれ上下左右を示すものする。ただし駆動装置11における前後上下左右は自動車において運転手がミラーの鏡面と対向してシートに着座した状態における前後上下左右の方向とは一致していない。
ミラー12は本発明に係る出力部材に相当し、側面図である図1(b)において、左右に延在する矩形形状を呈し板状に形成されている。ミラー12の前面12b(図1(a)上方側)には鏡面が形成されている。また、図1(a)、(b)に示すようにミラー12は上面に回動の中心となる支点Aを有している。具体的には、支点Aはボールジョイント20によって構成され、支点Aを中心にミラー12が360度全方向に回動可能となっている。ミラー12の支点A部にはボールジョイント20のボール20aを回動可能に係合する凹部12aが形成されている。ボールジョイント20は凹部12aに係合するボール20aと連結軸20bとから構成され、連結軸20bはミラーハウジング13(本発明の基台に相当する)に固定されている。ミラーハウジング13はミラー12を支持する筐体であり固定部である自動車のドア(図略)に固定されている。このようにミラー12は支点Aによって回動可能に支持されている。
支持部材14は、板状部材によって矩形に形成され、支持部材14の上面14aには後述する可動体18が載置され可動体18を移動自在に支持している。
支持部材14は下面14bに設けられた図略の支持部において、ミラーハウジング13(基台)に固定された支持軸(図略)に回動可能に支持されている。支持部の位置は支持部材14の重心近傍に設けられるのが好ましい。しかしこれに限らず支持部材14を良好に支持し、支点を中心として回動可能であれば支持部をどこに設けてもよい。支持部はボールジョイントによってなり、支持部材14が支持部を中心として360度全方向に傾動可能となるよう支持している。ただし、支持部材14は後述する変位振動付与装置22が有する2つのバイモルフ圧電体24、25のみによって支持可能であれば設けなくてもよい。
連結部材16は、ミラー12の後面12cに水平方向成分を有する距離離間した2個の枢着点B、Cで枢動可能に連結されている。枢着点B、Cはボールジョイントによって形成されている。本実施形態において枢着点B、Cは共に上下方向においては、ミラー12の上下方向の幅の略中間の点にあり、左右方向においては、それぞれミラー12の左右端からミラー12の左右方向の幅の略1/4ずつ内方に入った点にあるとする。
本実施形態において、図1(a)、(b)に示す連結部材16は、鋼製のワイヤによって形成されている。ただし、連結部材14は鋼製に限らず、どのような部材でもよく例えば樹脂製でもよい。本実施形態において連結部材16は、図1(a)に示すように枢着点B、C間を円弧状に繋いで形成されている。ただし連結部材16の形状は円弧状に限らない。例えば直線を組み合わせて形成してもよい。
可動体18は、球状の連結部18a、錘部18b(本発明の錘体に相当する)、および連結部18aと錘部18bとを連結する軸部18cを有し、支持部材14の上面14a(平面)上に錘部18bが載置され支持されている。
連結部18aは、連結部材16と枢動可能に連結される球状の部材である。連結部18aが有する貫通穴には連結部材16の枢着点B、C間の軸部が挿通されている。連結部18aの貫通穴と連結部材16とは相対移動可能となるよう挿通穴径に若干の余裕をもたせて形成している。このようにして連結部18aは、連結部材16の枢着点B、C間に枢動可能に連結されている。
錘部18bは可動体18の下端部に形成され支持部材14の上面(平面)14a上に載置される円板状部材であり例えば鉄系材料によって形成されている。錘部18bは所定の重さを有し、下面18dが支持部材14の上面14aと接触している。可動体18および上面14aの相互の接触面では、要求される摩擦力に応じた面粗度が得られるよう管理されることが好ましい。このため可動体18が上面14a上を滑って移動するときには、上面14aと可動体18との間で所定の摩擦力が発生する。このように上面14aと可動体18との間が所定の摩擦力を有するよう設定されるので可動体18が移動しないときには、支持部材14の上面14a上で良好に静止できる。
また上面14a上を移動させたいときには、後述する変位振動付与装置22によって支持部材14に所定の傾きを付与する。そして支持部材14に所定の振動を付与して可動体18の下面18dと支持部材14の上面14aとの間の摩擦力を低減させることによって好適に可動体18を支持部材14の傾き方向下方に向かって移動させることができる。
また、可動体18は錘部18bを有しているので支持部材14の上面14a上を滑って移動したときには大きな運動量が発生する。これによって可動体18に連結される連結部材16およびミラー12を良好に回動させることができる(詳細は後述する)。
軸部18cは連結部18aと錘部18bとを連結している。軸部18cは樹脂によって形成されているが、金属でもよい。なお、上記において所定の摩擦力、および所定の面粗度等は全て実験によって求める値であり、駆動装置11によってミラー12を所望の状態とするときの可動体18の移動速度等によって各実施者が適宜決定すればよい。
変位振動付与装置22は、2つのバイモルフ圧電体24、25と、積層圧電体26と、制御装置28(本発明のバイモルフおよび積層圧電体駆動手段に相当する)と、有している。図2に示す各バイモルフ圧電体24、25は、一般に知られている圧電アクチュエータの一つであり、2枚の圧電素子を薄い板状にして貼り合わせてある。そして図2に示すように各圧電素子24a、24b、および25a、25bにそれぞれ正負が逆向きの電圧を印加することによって各圧電素子24a、25aは例えば収縮し、各圧電素子24b、25bは例えば伸長する。これにより本実施形態においてバイモルフ圧電体24、25には上方に曲げ変位が発生している。なお、各圧電素子24a、24bおよび25a、25bに図2とは逆向きの電圧をそれぞれ印加すれば、各バイモルフ圧電体24、25はそれぞれ伸縮が逆になり、下方に曲げ変位が発生する。
バイモルフ圧電体24は、先端部24cが、図1(a)において支持部材14の右辺の近傍の下面14bに貼付されている。また根元部24dが各圧電素子24a、24bを拘束して固定する固定部材23を介してミラーハウジング13(基台)に固定されている。また、バイモルフ圧電体24は、制御装置28が有する電圧を生成する駆動部(図示しない)に電気的に接続されている。そして、バイモルフ圧電体24(各圧電素子24a、24b)が制御装置28によって所定の電圧を印加されると先端部24cが上方または下方に変位し支持部材14を図略の支持部を中心として左右方向に傾動させる。
バイモルフ圧電体25は、先端部25cが、図1(a)において支持部材14の後辺の近傍の下面14bに貼付されている。またバイモルフ圧電体25もバイモルフ圧電体24と同様に、制御装置28が有する駆動部(図示しない)に電気的に接続されるとともに、根元部25dが固定部材27を介してミラーハウジング13(基台)に固定されている。バイモルフ圧電体25(各圧電素子25a、25b)が制御装置28によって所定の電圧を印加されると先端部25cが上方または下方に変位し支持部材14を支持部材14に設けられた図略の支持部を中心として前後に傾動させる。このとき、制御装置28によって各バイモルフ圧電体24、25をそれぞれ別々に作動させるのではなく、同時に作動させればそれぞれの変位値に応じて支持部材14は支持部材14を図略の支持部を中心として360度全方位に傾動可能となる。
図3に示す積層圧電体26も、一般に知られている圧電アクチュエータの一つであり、複数の圧電素子26aを圧電素子26aの板厚方向に積層したものである。積層圧電体26は、制御装置28が有する駆動部(図示しない)に電気的に接続されている。そして図3に示すように複数の各圧電素子26aに所定の方向の電圧を印加することによって板厚方向に伸び変位、または縮み変位を発生させる。本実施形態においては各圧電素子26aに図3に示す方向の電圧を印加することによって伸び変位が発生している。各圧電素子26aに図3とは正負逆向きの電圧を印加すれば、積層圧電体26の伸縮が逆になり、縮み変位が発生する。また、積層圧電体26は、上面部26bが、図1(a)において支持部材14の下面14bの中央近傍に貼付されている。ただし中央近傍に限らず下面14bのどこに貼付してもよい。
そして積層圧電体26に制御装置28によって所定の周波数(高周波)の交番電圧が印加されると、積層圧電体26の上面部26bが前記所定の周波数で伸縮して振動が発生し、この振動によって貼付された支持部材14が加振される。これによって支持部材14に支持される可動体18が支持部材14上で振動するので可動体18の錘部18bと支持部材14の上面14aとの間の単位面積における単位時間当たりの接触面積が低減され摩擦力が減少する。このとき印加する交番電圧の周波数によって摩擦力の増減が決定される。これにより実施者は事前の実験によって摩擦力と交番電圧の周波数との関係を把握し、該把握したデータに基づいて制御を行なうことにより可動体18の移動速度を制御することも可能である。このように簡易な構成によって可動体18の移動速度を制御することができ、延いてはミラー12の回動速度を容易に制御できる。
制御装置28(バイモルフおよび積層圧電体駆動手段)は、操作レバーと、操作レバーに電気的に接続される演算部と、演算部および各圧電体24、25、26と電気的に接続される駆動部(いずれも図略)とを有している。操作レバーは、スティック形状を呈し、操作者がミラー12に対して駆動させたい方向を操作者の感覚と一致するよう前後左右斜めのいずれかに向かって倒し操作するものである。例えば操作者が図1(a)において上方に着座し、鏡面である前面12bと対向して操作するとする。そして図1(a)においてミラー12を支点Aを中心として半時計回りに回転させる、すなわち操作者が鏡面である前面12bに向かいミラー12の右方を操作者自身から離間する方向に作動させるときには、操作レバー29を操作者からみて右方向に倒せばよい。これによって、ミラー12は図1(b)において、ミラー12の右側が紙面奥側に移動し、左側が紙面手前側に移動する。ただし、操作レバー29の操作方法については一例であるので、どのような操作方法でもよい。
演算部は、操作された操作レバーの操作方向に基づいて、ミラー12を回動させるべき方向を検出する。そして該回動方向にミラー12を回動させるために変位させる各バイモルフ圧電体24、25の変位量を演算するとともに演算した変位量信号を駆動部に送信する。
駆動部は、演算部から送信された変位量信号に基づいて各バイモルフ圧電体24、25に印加する電圧信号を生成し、各バイモルフ圧電体24、25に生成した電圧信号を印加して変位させ支持部材14を傾斜させる。この後、または略同時に駆動部は、積層圧電体26に所定の周波数を有した交番電圧を印加して積層圧電体26を振動させ可動体18の摩擦力を低減させる。
次に駆動装置11の作動について説明する。上記のように構成された駆動装置11において、操作者が鏡面に向かってミラー12の右方を、自身から離間させるよう回動させる場合、およびミラー12の下方が自身に接近するよう回動させる場合について説明する。
まずミラー12の右方を自身から離間させるよう回動させる場合について説明する(図4(a)、(b)参照)。操作者が操作レバーを右方に倒すと、制御装置28の演算部が、操作レバーからの信号によってバイモルフ圧電体24のみを作動させればよいことを導出する。
そして演算部によって演算され送信された変位量信号が駆動部に入力され、駆動部で変位量信号に応じた電圧が生成されバイモルフ圧電体24に印加される。これによってバイモルフ圧電体24の先端部24cは図4(a)に示すように上方に所定量だけ変位し、支持部材14を図4(a)において左方に向かって傾斜させる。このとき略同時に積層圧電体26に所定の周波数を有する交番電圧が印加され、積層圧電体26および積層圧電体26が貼付される支持部材14が所定の周波数振動によって加振される。これによって支持部材14が支持する可動体18の下面18dと支持部材14の上面14aとの間の摩擦力が低減され、可動体18が支持部材14の傾斜方向下方に向かって滑っていく。このように可動体18が支持部材14の上面14a上を支持部材14の傾斜方向に滑って移動すると、可動体18は、やがて挿通する円弧状に形成された連結部材16によって移動を規制される状態となる。しかし前述したように可動体18は錘部18bを有しているので運動量が大きく可動体18はさらに傾斜した方向に滑っていこうとする。このため可動体18が連結する連結部材16、および連結部材16が連結するミラー12を引張って支点Aを中心として操作者の所望の方向(本実施形態においては、ミラー12の右方を自身から離間させるよう回動させる方向)に回動させることができる。つまり支点Aのボールジョイント20部においてミラー12を回動させない方向に発生する力よりも可動体18が滑り落ちる力のほうが大きいので可動体18の連結部18aに挿通される連結部材16が可動体18の連結部18aの移動に倣って移動されるものである。そして、この間、操作者は操作レバーを操作し続けている。操作者は所望の位置までミラー12が回動されたことを目視で確認すると操作レバーの操作を停止する。この操作によって駆動部は駆動制御を停止しミラー12の回動を停止させる。このようにして簡易にミラー12の回動を制御することが可能となる。
次に、ミラー12の下方が自身に接近するよう回動させる場合(前後方項に回動する場合)について説明する(図5参照)。操作者が操作レバーを前方に倒すと、制御装置28の演算部が、操作レバーからの信号を検出し、バイモルフ圧電体25のみを作動させればよいことを導出する。そして演算部によって演算され送信された変位量信号が駆動部に入力され、駆動部で変位量信号に応じた電圧が生成されバイモルフ圧電体25に印加される。これによってバイモルフ圧電体25の先端部25cは図5に示すように所定量だけ上方に変位し、支持部材14を図5において右方に向かって傾斜させる。このとき略同時に積層圧電体26に所定の周波数を有する交番電圧が印加され、積層圧電体26、および積層圧電体26が貼付される支持部材14が所定の周波数振動によって加振される。これによって支持部材14が支持する可動体18の摩擦力が低減され、可動体18が支持部材14の傾斜方向下方に向かって滑っていく。可動体18が支持部材14の上面14a上を滑ると可動体18は錘部18bの重さに応じて発生する大きな運動量によって、連結される連結部材16、および連結部材16が連結されるミラー12を押し、支点Aを中心として操作者の所望の方向(ミラー12の下方を自身に接近させる方向)に回動させる。このようにして簡易にミラー12の回動を制御できる。
なお、上述したように、バイモルフ圧電体24、25を別々ではなく同時に作動させ変位量をそれぞれ調整するようにすれば支持部材14を360度全方位に傾斜させることができ、ミラー12をどのような方向にも回動できる。
また、本実施形態においては、各バイモルフ圧電体24、25を、支持部材14を傾斜させる直交したそれぞれの方向(左右、及び前後)に1個ずつ設けている。しかし、この態様に限らず、各バイモルフ圧電体24、25が設けられた支持部材14の各辺にそれぞれ対向させてさらに1個ずつ増設し、合計4個のバイモルフ圧電体によって制御してもよい。これによっても同様の効果が得られる。
上述の説明から明らかなように、第1の実施形態においては、支持部材14に対し、2個のバイモルフ圧電体24、25によってそれぞれ変位が付与され、積層圧電体26によって所定周期を有する振動が付与される。これにより、可動体18と支持部材14の上面14aとの間の単位面積における単位時間当たりの接触面積が低減され摩擦力が低減されて可動体18が支持部材14の平面14a上を傾斜下方に向かって滑り落ち移動する。このとき可動体18は錘部18b(錘体)を有しているので運動量が大きく、連結する連結部材16および連結部材16が連結するミラー12(出力部材)を滑り落ちながら良好に回動させることができる。このように変位振動付与装置22として各バイモルフ圧電体24、25と積層圧電体26とを組み合わせて使用することにより、各バイモルフ圧電体24、25によって大きな変位を与えずとも積層圧電体の振動によって可動体を容易に移動させることができ効率的である。また、バイモルフ圧電体24、25および積層圧電体26という低コストな部材を用いることにより低コストな装置とすることができる。また簡素な構成であるので、部品点数も少なくなり可動部の数が低減でき、可動部に関わる摩耗やカシリ等に関する信頼性を向上させることができるとともに小型化が図れる。また、2個のバイモルフ圧電体24、25によって支持部材14の直交する2方向にそれぞれ変位を付与できるので、各バイモルフ圧電体24、25を同時に作動させ変位量をそれぞれ調整することにより支持部材14には直交する2方向だけではなく360度全ての方向に傾斜を付与することができ効率的である。
なお、本実施形態においては、支持部材14に変位を付与するためにバイモルフ圧電体24、25を利用し、可動体18と支持部材14との間の摩擦力を低減するための加振装置として積層圧電体26を利用した。しかしこれに限らず積層圧電体26を廃止し、バイモルフ圧電体24、25に加振機能を追加して、バイモルフ圧電体24、25のみによって変位と振動とを付与するようにしてもよい。このとき、バイモルフ圧電体24、25には図略の制御装置(本発明のバイモルフ圧電体駆動手段に相当する)によって変位を振動的に付与する。このためバイモルフ圧電体24、25に変位電圧を印加した上で高周波の交番電圧を印加することによって支持部材14に変位を付与しながら振動させる。これによって積層圧電体26および積層圧電体26の駆動装置等に係る部品点数が削減できるとともに、低コスト化を図ることができる。
次に、第1の実施形態の変形例である駆動装置51について図6(a)、(b)に基づいて説明する。図6(a)は駆動装置51の上面図であり、図6(b)は側面図である。図6(a)、(b)に示すように駆動装置51は、第1の実施形態のように出力部材としてのミラーを回動するものではなく回転体52を回転軸回りに回動させる。駆動装置51は回転体52(本発明に係る出力部材に相当し、螺旋状ワイヤ54とともに錘体を構成する)と、螺旋状ワイヤ54(本発明に係る、錘体、可動体、および連結部材に相当する)と、2個の支持円筒56、57(本発明の支持部材に相当する)と、変位振動付与装置58(本発明の変位振動付与装置に相当する)と、を有している。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
回転体52は、本発明に係る出力部材および錘体としての機能を有して円板状に形成され、図6(a)、(b)に示すように上面52aには回転出力軸52bを有している。回転出力軸52bは図略の固定部(本発明の基台に相当する)に固定された軸受部材(図6(b)の2点鎖線参照)によって軸線方向に移動可能、且つ軸線回りに回動可能に支持されている。
螺旋状ワイヤ54はコイルばね様に螺旋状に形成されている。螺旋状ワイヤ54は本発明に係る可動体、および連結部材を兼用しているとともに、回転体52と共に本発明に係る錘体を構成している。そして螺旋状ワイヤ54の螺旋部中心軸と回転体52の中心軸とは同軸に配置され、螺旋状ワイヤ54の端面が回転体52の下面に一体回転可能に連結固定されている。
本発明に係る支持部材に相当する2個の支持円筒56、57は、中空円筒状に形成され後述する積層圧電体66、67を介して台座部69(基台)に支持されている。そして中空円筒の内周面には螺旋状ワイヤ54が挿通され螺旋状ワイヤ54と内周面とが所定の摩擦力を有して係合され支持されている。このような状態で支持円筒56、57は、螺旋状ワイヤ54および回転体52、を内周面で支持している。また図6(a)に示すように、2個の支持円筒56、57は螺旋状ワイヤ54の螺旋上において略180度離間した位置にそれぞれ配置され螺旋状ワイヤ54および回転体52を、回転体52の上面52aが水平状態となるようバランスよく支持している。
変位振動付与装置58は上述した2個の積層圧電体66、67と、制御装置68と、を有している。各積層圧電体66、67は図6(b)に示すように、それぞれの上面が、軸線が水平状態に配置された各支持円筒56、57の各円筒外周面にそれぞれ固定され各支持円筒56、57を支持している。積層圧電体66、67のそれぞれの下面は台座部69(基台)に固定されている。このとき台座部69は螺旋状ワイヤ54および回転体52と分離されていればどのようなものでもよい。
次に作動について説明する。上記のように構成された駆動装置51の積層圧電体66、67を所定の周波数および変位で振動させると、積層圧電体66、67の上面に固定された各支持円筒56、57が加振される。これにより各支持円筒56、57が円筒内周面で摩擦力を有して支持する螺旋状ワイヤ54と各円筒内面との間の単位面積における単位時間当たりの接触面積が低減されて摩擦力が減少する。このとき各支持円筒56、57の各円筒内周面は、錘体としての回転体52および螺旋状ワイヤ54を、錘体の下端部にある螺旋状ワイヤ54の底面と接触して支持している。また螺旋状ワイヤ54がコイルばね様に形成されているので螺旋部は水平面に対して所定の傾き角度を有している。このため、各支持円筒56、57の円筒内周面と螺旋状ワイヤ54との間の摩擦力が減少すると螺旋状ワイヤ54と円筒内周面との係合部は回転体52の重さと螺旋部の所定の傾き角度とによって円筒内周面を滑り、螺旋軸線回りに回動しながら徐々に重力方向下方に移動していく。これにより回転体52の回転出力軸52bから回転駆動力を出力させることができる。このように簡易な構成によって第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に第2の実施形態の駆動装置31について図7(a)、(b)に基づき説明する。図7(a)は駆動装置31の上面図であり、(b)は側面図である。第2の実施形態は、第1の実施形態に対して圧電体によって変位させる支持部材34の変位および振動方向が異なり、変位および振動方向が異なることによって構成部品が一部異なる。よって第1の実施形態と異なる部分について説明し、同様部分については説明を省略する。なお、同様の部品については同じ符号を付し説明する。
駆動装置31は、図7(a)、(b)に示すように本発明に係る出力部材に相当するミラー12と、支持部材14(本発明の支持部材に相当する)と、各コイルばね45、45と、弾性体49と、連結部材16(本発明の連結部材に相当する)と、可動体18(本発明の可動体に相当する)と、変位振動付与装置42(本発明の変位振動付与装置に相当する)と、を有している。
変位振動付与装置42は、2個の積層圧電体46、47と、制御装置48(本発明に係る積層圧電体駆動手段に相当する)と、を有している。積層圧電体46は、先端面46aが、図7(a)において矩形形状を呈する支持部材14の右辺に貼付され、制御装置48が有する駆動部(図示しない)に電気的に接続されている。また、積層圧電体47も積層圧電体46と同様に、制御装置48が有する駆動部(図示しない)に電気的に接続される。そして図7(a)に示すように先端面47aが、積層圧電体46の先端面46aが貼付される支持部材14の右辺に直交する支持部材14の下辺に貼付されている。また各積層圧電体46、47の各先端面46a、47aと反対側の面である各面46b、47bがミラーハウジング13(本発明の基台に相当する)に固定されている。
また、各積層圧電体46、47が配置された支持部材14の各辺と対向する各辺にはコイルばね45、45が一端をミラーハウジング13に固定され支持部材14を各積層圧電体46、47に向かってそれぞれ付勢するように設けられている。
支持部材14の下面14bにはミラーハウジング13に固定された弾性体49が配置され、弾性体49の上面に支持部材14が支持されている。弾性体49は表面の摩擦係数μが小さな、例えばフッ素樹脂等によってコーティングされて形成されている。これによって各積層圧電体46、47は、制御装置48によって所定の電圧を印加されて、直交する2方向に摩擦係数μが小さな弾性体49によって支持される支持部材14をそれぞれ滑らかに往復動させることができる。なお、弾性体49は弾性力も有している。よって弾性体49と支持部材14との間に大きな摩擦力が生じたときには弾性体49が支持部材14から力を受け下方に収縮して摩擦力を軽減することができるので、さらに支持部材14を確実に滑らかに往復動させることができる。ただし、弾性体49は弾性力を有さない部材によって形成されていてもよい。
各積層圧電体46、47は支持部材14に対して、支持部材14上を移動する可動部材18の移動方向と平行な方向に往復動変位(振動)を付与する。各積層圧電体46、47の往復動変位において、コイルばね45の付勢力に抗して作動する伸び側(本発明の一方の変位に相当する)では高加速度で急峻に伸張させ、コイルばね45の付勢力に付勢されながら作動する収縮側(本発明の他方の変位に相当する)では低加速度で収縮させるよう電圧を制御する。これにより各積層圧電体46、47は往復動(変位)のうちの伸び側の移動(変位)では錘部18bを有する可動体18が支持部材14の移動に追従できず慣性力によってその位置にとどまり支持部材14のみが可動体18に対して移動する。
また収縮側の移動(変位)では、支持部材14が低加速度で作動するので可動体18は支持部材14との間の摩擦力によって支持部材14と一体で移動する。このような作動の繰り返しによって可動体18が積層圧電体46、47の加振方向(本実施形態においては積層圧電体46、47の収縮方向)に移動する。そして可動体18と連結される連結部材16、および連結部材16が枢着されるミラー12(出力部材)を第1の実施形態と同様の作用によって回動させる。このように駆動装置31が簡素な構造および部材によって構成されるので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができ、低コストで且つ信頼性の高い駆動装置とすることができる。
次に、第2の実施形態の変形例である駆動装置71について図8に基づいて説明する。図8に示すように駆動装置71は、第2の実施形態の駆動装置31の支持部材14、連結部材16および可動体18の形状を変更したものである。また出力部材であるミラー72の回動支点を回動軸線91としてミラー82が左右方向(図8においては矢印で示す回転方向)にのみ回動できるようにしたものである。よって変更点のみ説明し、第2の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
駆動装置71は、図8に示すように本発明に係る出力部材に相当するミラー72と、ワイヤ74(本発明の可動体、および連結部材に相当する)と、支持円筒76(本発明の支持部材に相当する)と、変位振動付与装置82(本発明の変位振動付与装置に相当する)と、を有している。なお、図8において、上方側がミラー72の鏡面72aであり、下方側が背面72aである。
ワイヤ74は円弧状に形成され本発明の可動体、および連結部材を兼用し、ミラー72の背面72bに2個の枢着点D、Eで枢動可能に連結されている。支持円筒76は円筒状に形成され枢着点D、E間においてワイヤ74と枢動可能に連結されている。具体的には支持円筒76は円筒内周部にワイヤ74を貫通しワイヤ74との間で所定の摩擦力を有して係合されている。支持円筒76はワイヤ74の円弧の外方に延在する支持突部76aを有している。このように、第2の実施形態の変形例では、錘体によってではなく、支持円筒76の内周面の構造によってワイヤ74との間に摩擦力を発生させている。なお、摩擦力を発生させるためにはどのような構造としてもよいが、本実施形態においては、ワイヤ74を支持円筒76の内周の一部に軽く圧入するようにして摩擦力を発生させる。また支持円筒76は後述する積層圧電体86を介して基台である積層圧電体固定部89に固定されている。
変位振動付与装置82は、積層圧電体86と、制御装置88(本発明に係る積層圧電体駆動手段に相当する)と、を有している。積層圧電体86は、片側の端面(図8において右方)を積層圧電体固定部89(本発明の基台に相当する)に固定され、反対側の端面(図8において左方)が支持円筒76の支持突部76aに貼付されている。積層圧電体86は、制御装置88によって所定の(高周波)電圧を印加されて制御され、支持円筒76が円弧状に形成されたワイヤ74の接線方向、即ち可動体に相当するワイヤ74の移動方向と平行な方向に往復動するよう伸縮する。
第2の実施形態と同様に積層圧電体86の伸縮は、本実施形態においては伸び側(本発明の一方の移動に相当する)において高加速度で急峻に伸張させ、収縮側(本発明の他方の移動に相当する)において低加速度で作動させるよう電圧を制御する。これにより積層圧電体86の伸び側の移動(変位)で可動体に相当するワイヤ74が支持円筒76内において支持円筒76に追従できず慣性力によってその位置にとどまる。そして支持円筒76のみが可動体であるワイヤ74に対して相対移動する。
また収縮側の移動(変位)では、支持円筒76が低加速度で作動するのでワイヤ74(可動体)は支持円筒76内面との摩擦力によって支持円筒76と一体で移動する。この作動の繰り返しによってワイヤ74(可動体)が積層圧電体86の加振方向(本実施形態においては積層圧電体86の縮み側)に移動し、連結部材を兼用するワイヤ74(可動体)、およびワイヤ74が枢着されるミラー72を図8において回動軸線91回りに反時計回りに回動させる。なお、逆回転である時計回りに回動させたいときには積層圧電体86の伸び側の移動(変位)を低加速度で作動させ、収縮側の移動(変位)を、高加速度で急峻に作動させればよい。このように簡素な構造および部材によって構成されるので、第2の実施形態と同様の効果を得ることができ、低コストで且つ信頼性の高い駆動装置とすることができる。
なお、上述した第1、第2実施形態については各連結部材としての各ワイヤ形状を円弧状とした。しかし、これに限らず各可動体が所定の方向に移動したときに、各連結部材が各可動体の移動に倣って一緒に移動し、これによって各連結部材が枢動可能に連結する各出力部材を駆動させることができればどのような形状であってもよい。これによって簡易で低コストに出力部材に対して任意の運動をさせることが可能となる。
また、本実施形態においては、駆動装置11、31、71の適用例として自動車用電動ミラーについて説明した。しかしこれに限らず駆動装置11、31、71、および51は、出力部材を有したモータで駆動される装置であればどのようなものにでも適用可能である。