JP5712593B2 - 塗膜耐久性に優れた塗装用鋼材 - Google Patents

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本発明は、海塩が飛来する環境下で、塗装して使用される塗装用鋼材に係り、とくに海岸に建設される海岸構造物、さらには洋上に建設される洋上構造物等の海洋構造物用、さらには風力発電タワー用として好適な、高靭性でかつ耐食性、塗膜耐久性に優れた塗装用鋼材に関する。
近年、地球環境の保全という観点から、温室効果ガスである二酸化炭素(CO)の削減が要望され、CO排出が著しい化石燃料に代えて、COを排出しないクリーンなエネルギーが注目されている。このようなクリーンなエネルギー源として、再生可能な自然エネルギーを利用しようとする気運が世界各国で高まっている。なかでも、再生可能な自然エネルギーである風力を利用した風力発電は、比較的発電コストが低いことから、最近では、世界各国で風力発電の導入が活発化している。しかし、風力発電は、風況によって出力が変動しやすいという問題がある。
風力発電に適した地域は、たえず強風が期待できるところである。しかし、そのような地域は陸上では限られており、しかも、そのような地域には、すでに風力発電設備が導入され、導入密度が高くなっているところが多い。また、最近では、風力発電装置の騒音等の問題が顕在化してきており、陸上では、これからさき、新規に風力発電設備を建設することが難しくなっているのが現状である。このため、風力発電は、陸上から洋上へ移行しつつある。
洋上では、風速が大で、しかも乱れが少ない風が安定して吹くことが多く、稼働時間が長くなり、大きな風力発電量が期待できる。しかも、風速は、離岸距離が増大するにしたがい、増加する傾向にあるため、最近では、海岸から遠く離れた大水深の沖合に、洋上風力発電設備を建設する計画が検討されている。設置場所は、現在では、「水深:20m未満、沖合:20km以内」が主流であるが、将来的には、「水深:60m未満、沖合:60km以内」、さらには「水深:60m以上、沖合:60km以上」の海域までが、検討の対象にされている。
このような水深の深い沖合で洋上風力発電を可能とするために、洋上で風力発電装置を設置できる基礎構造について、種々の方式が提案されている。最近では、大口径のドリルピットによる掘削が可能となり、離岸距離が20km以内、水深が20m未満の海域では、着床したモノパイル基礎のうえに風力発電装置を設置するのが主流となっている。
さらに、水深が深くなる水深:40m以上の海域では、ジャケット型、トリパイル型等の基礎の利用が考えられている。またさらなる高深度の海域では、例えば、特許文献1に示されるような構造の、海底に着床しない浮体構造が提案されている。この浮体構造は、復元力が大きく、発電装置の傾斜がなく発電量の低下も少なく、軽量でありかつ短期間に製造できるとしている。
また、風力発電量は、風速の3乗と、ブレード径の2乗に比例する。このため、風力発電設備は、ブレード径を大きくし、大型化する傾向にある。そして、このような大型化したブレードを回転可能に支えるタワーは、全体として80m程度の高さで、直径が8mを超える程度の大きさの大型構造物(管体)となる場合もあり、通常、厚肉の鋼材を溶接してパーツごとに製造し、組み立てられる。
従来から、陸上や海岸近傍に設置された風力発電装置においても、風力発電装置を構成するタワー等には、使用する環境に応じた塗装等の防錆処理が施されている。しかし、洋上に設備された風力発電装置においては、設置場所が洋上であるということから再塗装等の保守補修作業が困難であるため、ライフサイクルコスト(LCC)を考慮して、塗装(塗膜)の耐久性向上が重要な技術課題と考えられている。
塗装(塗膜)の耐久性向上については、自動車用薄鋼板についてではあるが、例えば特許文献2に、基板鋼板にジンクリッチ塗料が施された、塗装耐食性に優れた耐食性鋼板が記載されている。特許文献2に記載された技術では、基板となる鋼板を、質量%で、C:0.001〜0.10%、Si:0.5%以下、Mn:0.05〜2.0%、TiとZrを合計で0.03%超0.4%未満、Cu:0.03〜0.5%、Ni:0.03〜0.5%、P:0.020〜0.1%、S:0.01%以下、Ca:0.0005〜0.02%、Al:0.003〜0.20%を含有する組成の鋼板としており、Ti+Zr:0.03%超0.4%未満、Cu:0.03〜0.5%、Ni:0.03〜0.5%、P:0.020〜0.1%を含有させた組成とすることに特徴があり、これにより、基板の耐食性が向上するとともに、ジンクリッチ塗料による塗膜の耐食性が著しく向上して、防錆効果が長時間持続可能となるとしている。なお、ジンクリッチ塗料に所定の金属塩を含有させることにより、さらに効果が高められるとしている。
また、特許文献3には、塗装耐久性に優れた塗装用鋼材が記載されている。特許文献3に記載された塗装用鋼材は、質量%で、C:0.12%以下、Cu:0.05〜3.0%、Ni:0.05〜6.0%、Ti:0.025〜0.15%を含有し、Cu+Ni:0.50%以上、PCM:0.23%以下で、さらには、Si:1.0%以下、Mn:2.5%以下、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cr:0.05%以下を含有することを特徴としている。特許文献3に記載された技術では、Cr含有量を極力低減して塗膜欠陥部における腐食促進要因を低減するとともに、Cu、Ni、Tiの多量含有により、生成錆を緻密化して耐食性を向上させている。
さらに、特許文献4には、補修再塗装寿命の延長及び補修再塗装作業の軽減に寄与する耐食性に優れた造船用耐食鋼が記載されている。特許文献4に記載された技術は、特に海水腐食環境下で使用されるバラストタンク用鋼材(船舶用鋼材)に関するものであり、これら鋼材は、海洋構造物が曝される一般の洋上大気環境下とは腐食環境が異なる特殊な環境で使用される。なお、特許文献4に記載された造船用耐食鋼の成分組成は、質量%でC:0.03〜0.25%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.1〜2.0%、P:0.025%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜0.10%、W:0.01〜1.0%を含み,残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴としている。
特開2009−248792号公報 特開2003−171732号公報 特開2000−169939号公報 特開2007−46148号公報
しかし、特許文献1に記載された技術は、風力発電装置用基礎構造についての技術であり、風力発電装置を構成する鋼材(素材)についての記載はない。また、特許文献2に記載された技術では、Pの多量含有、さらに合計で0.03質量%を超える(Ti+Zr)の多量含有を必須としており、厚鋼板では低温靭性が劣化するという問題がある。また、海上における高塩素濃度の厳しい使用環境下において、所望の耐食性(塗膜寿命)を確保するためには、耐食性向上元素を多量に含有させる必要があり、材料費が高価になるという問題もある。また、特許文献3に記載された技術では、0.025質量%以上というTiの多量含有を必要としており、厚鋼板の低温靭性が劣化するという問題がある。また、特許文献3に記載された技術では、Tiの多量含有に加えてさらに、0.5質量%以上という多量の(Cu+Ni)の含有を必要としており、原材料の高騰や変動により材料コストが左右されるという問題もある。
さらに、特許文献4に記載された技術では、海水が出入りするバラストタンク用造船用鋼材を対象としており、鋼材は中性塩化物の洋上大気環境下とは、異なる環境下で使用される。すなわち、バラストタンクは海水が出入りする構造となっているため、海水充満時、海水に水没する部位では海水中での腐食となり、さらに腐食環境が最も厳しい海水に水没しない部位では太陽光によりタンクの表面が加熱され、鋼板が高温に曝されることになる。また、海水が蒸発し鋼板の裏面が高温多湿な雰囲気環境に長時間曝されることになる。そのため、鋼材は、高温、特に多湿な状況に長時間曝され、また雨水で洗い流されることもないため、洋上大気環境とは大きく異なる腐食環境に曝されることになる。したがって、鋼材に塗布する塗装種も洋上大気環境下とは異なったものになる。
洋上大気環境など厳しい腐食環境に使用されることが多い従来の防錆仕様(たとえばISO12944規定のC5M系)では、塗装寿命は15年程度とされている。このため構造物が15年を超えて使用される場合には、少なからず保守(メンテナンス)を行うことが必要となる。しかし洋上に設置される大型風力発電タワーのような場合には、メンテナンスや補修が難しいことからライフサイクルコスト(LCC)を考慮して、塗膜の耐久性を向上させ塗装寿命を延長し、塗装等のメンテナンス回数を低減もしくは削除してミニマムメンテナンス化を図り、LCCを向上させ、さらにはメンテナンスフリー化する技術開発が重要と考えられている。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、海塩が飛来する洋上大気環境下で、塗装を施して使用され、海洋構造物用として好適な、さらには洋上風力発電タワー用として好適な、高靭性でかつ、塗装(塗膜)の寿命延長を図ることができる、塗膜耐久性に優れた塗装用鋼材を提供することを目的とする。本発明が目的とする鋼材(塗装用鋼材)は、引張強さ:420MPa以上を有する高靭性鋼材である。なお、ここでいう「高靭性」とは、シャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃における溶接継手部の平均吸収エネルギーが35J以上である場合をいうものとする。
また、洋上風力発電タワーは要求される出力によりブレードの大きさが異なるため、要求されるタワー材の大きさが異なる。洋上風力発電の場合、大出力が要求されることから板厚30mm以上の鋼材が用いられることが多いが、ここでいう「鋼材」には、肉厚が10mm以上の厚鋼板、形鋼、棒鋼、鋼管等が含まれる。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、海塩が飛来する洋上大気環境下における塗膜耐久性に及ぼす基板鋼板の各種合金元素の影響について鋭意研究した。その結果、適正量のW、Nbを必須含有させることにより、海塩が飛来する厳しい腐食環境下においても、塗膜の剥離、膨れの発生が顕著に減少し、塗膜の耐久性が向上して塗膜寿命の顕著な延長が可能であることを知見した。また、海塩の飛来量が増加し腐食性が増加した場合には、W、Nbに加えてさらに、適正量のTi、Cu、Niをさらに含有させることにより、塗膜の耐久性が更に向上して塗膜寿命の更なる延長が可能であるという知見を得た。
なお、W、Nbによる塗膜の耐久性向上の機構について、現時点では明瞭とはなっていないが、本発明者らは、つぎのように、考えている。
適正量のWの含有により、地鉄と塗装(塗膜)間に安定で緻密な錆が形成される。鋼材中に含まれたWは、地鉄と塗装(塗膜)間に溶出して、WO 2−イオンとなり、次式のような反応でFe2+イオンと反応して、難溶性のFeWOを形成しアノード部を覆い腐食の進行を抑止する。
Fe2+ + WO 2− → Fe WO
さらに、腐食生成物(錆)中に難溶性のFe WOが含まれることにより、錆層が緻密化し、イオンや酸素の透過が抑制されて、錆生成量が低減することになり、塗膜の膨れ、剥離等を顕著に防止できることになる。
また、適正量のNbの含有により、微細フェライト組織の生成と、炭化物(NbC)の微細分散が可能となる。そしてさらに、Nbの含有により、フェライト相と異相界面を形成し、耐食性に悪影響を及ぼすセメンタイト(Fe3C)の生成が遅延するとともに、セメンタイト(Fe3C)が微細化され、塗装鋼板の耐食性が顕著に向上すると考えられる。セメンタイト(Fe3C)に代表される炭化物は腐食環境下ではカソードとして作用するため、炭化物を微細分散させることは、塗膜欠陥の低減に繋がり、耐食性の向上という観点から好ましいといえる。
このような作用を有する、WとNbの適正量を複合含有し、さらに、生成する錆の緻密化に寄与するTiと、あるいはさらに(Cu+Ni+2W)が0.1以上1.0以下を満足するように、W含有量と関連して、適正量のCu,Niを含有させることにより、飛来する海塩粒子量が増大するような洋上大気環境下においても塗膜耐久性が顕著に向上し、塗膜耐久性に優れた塗装用鋼材となることを知見した。本発明は、かかる知見をもとに、さらに検討を加え完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)塗装されて使用される鋼材であって、質量%で、C:0.08%未満、Si:0.75%以下、Mn:2.0%以下、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Al:0.01〜0.05%、N:0.010%以下を含み、さらにW:0.03〜0.50%、Nb:0.005〜0.050%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、引張強さ:420MPa以上の強度と、シャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃における溶接継手部の平均吸収エネルギーが35J以上である高靭性とを有することを特徴とする塗装用鋼材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.005%以上0.025%未満を含有することを特徴とする塗装用鋼材。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%のうちから選ばれた1種または2種を、Cu、Ni、W含有量の関係式である、(Cu+Ni+2W)が0.1〜1.0%を満足するように含有することを特徴とする塗装用鋼材。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.01〜0.50%、V:0.01〜1.0%、Sn:0.05〜0.50%、Cr:0.01〜2.00%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする塗装用鋼材。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、前記PおよびSの含有量が、質量%で、P:0.010%以下、S:0.0020%以下であることを特徴とする塗装用鋼材。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記組成が、次(1)式
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ‥‥(1)
(ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される炭素当量Ceqが0.40以下である組成とすることを特徴とする塗装用鋼材。
(7)(1)ないし(6)のいずれかにおいて、前記組成が、次(2)式
CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ‥‥(2)
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B:各元素の含有量(質量%))
で定義される溶接割れ感受性指数PCMが0.30以下である組成とすることを特徴とする塗装用鋼材。
(8)(1)ないし(7)のいずれかにおいて、前記塗装して使用される鋼材が、海洋構造物用であることを特徴とする塗装用鋼材。
(9)(8)において、前記海洋構造物が、洋上構造物であることを特徴とする塗装用鋼材。
(10)(9)において、前記洋上構造物が、風力発電タワーであることを特徴とする塗装用鋼材。
(11)(1)ないし(7)のいずれかに記載の塗装用鋼材を用いてなることを特徴とする海洋構造物。
(12)(1)ないし(7)のいずれかに記載の塗装用鋼材を用いてなることを特徴とする洋上風力発電タワー。
本発明によれば、所望の強度と所望の高靭性とを兼備し、塗装されて使用される鋼材(塗装用鋼材)の耐食性、とくに海塩が飛来する洋上大気環境下における塗膜耐久性を向上させることができ、産業上格段の効果を奏する。また、本発明になる鋼材を海洋構造物に使用すれば、海洋構造物の塗装(塗膜)の寿命延長を図ることができ、海洋構造物のミニマムメンテナンス化によるライフサイクルコスト(LCC)の低下を実現できるという効果もある。
本発明鋼材は、表面に、塗装を施されて使用される鋼材(塗装用鋼材)とする。
まず、本発明鋼材の組成限定理由について説明する。なお、以下、とくに断わらない限り、質量%は単に%で記す。
C:0.08%未満
Cは、固溶して鋼材の強度を増加させるとともに、炭化物形成元素と結合し炭化物を形成する元素である。所望の強度を確保するためには、0.02%以上含有させることが望ましい。一方、セメンタイト等の炭化物は、フェライト相との異相界面を形成し、海塩が飛来する腐食環境下ではカソードとなりやすく、腐食を促進するため、耐食性の観点からはできるだけ低減するか、微細に分散させることが望ましい。0.08%以上の過剰な含有は、所望の耐食性、とくに被膜耐久性を確保することが難しくなる。このため、Cは0.08%未満の範囲に限定した。なお、好ましくは0.030〜0.062%である。
Si:0.75%以下
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するために、本発明では0.20%以上含有させることが望ましい。Siは、加熱時の酸化に際し、地鉄とスケール界面にファイアライトを生成し、スケールと地鉄との密着性を増加させる作用を有するが、0.75%を超える多量の含有は、靭性を低下させるとともに、熱間圧延時に地鉄とスケールとの界面厚さが増大しすぎて、ローラ矯正、プレス矯正時に、スケールの割れ、剥離が顕著となり、製造性が低下する。このため、Siは0.75%以下の範囲に限定した。なお、Siの過剰な含有は、鋼材の硬質化、加工性の低下を招くため、0.60%以下とすることが好ましい。
Mn:2.0%以下
Mnは、固溶して鋼材の強度を増加させるとともに、靭性を向上させる作用を有する元素である。また、MnはSと結合しMnSを形成し、有害なFeSの形成を抑制し、鋼材表面および鋼中でのSの悪影響を抑制する作用を有する。このような効果を得るためには、Mnは0.5%以上含有することが望ましい。一方、2.0%を超える含有は、溶接性を低下させ、機械加工性を低下させる。このため、Mnは2.0%以下の範囲に限定した。なお、好ましくは0.5〜1.6%である。
P:0.030%以下
Pは、鋼材の強度を増加させる作用を有するが、粒界に偏析し、耐食性を低下させるとともに、母材靭性、さらに溶接性および溶接部靭性を低下させる。また、二次加工脆性の原因となり、鋼材の加工性を低下させる。このため、できるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は精錬コストを高騰させる。このため、0.001%程度以上とすることが望ましい。また、このような母材靭性および溶接部靭性、加工性の低下は0.030%を超える含有で顕著となる。このため、Pは0.030%以下に限定した。なお、好ましくは0.010%以下、さらに好ましくは0.006%以下である。
S:0.030%以下
Sは、Mnを含有する組成では、可溶性非金属介在物であるMnSを形成する。MnSは、海塩が飛来する環境下では腐食の起点となり、耐食性を低下させる。また、靭性および溶接性を低下させる有害な元素である。このため、Sはできるだけ低減することが望ましいが、0.030%以下であれば許容できる。このため、Sは0.030%以下に限定した。なお、過度の低減は精錬コストが高騰するため、0.0005%以上とすることが望ましい。なお、好ましくは0.0050%以下、さらに好ましくは0.0020%以下である。
Al:0.01〜0.05%
Alは、脱酸剤として作用するとともに、結晶粒を微細化する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上含有させる。一方、0.05%を超える含有は、酸化物系介在物が増加し、鋼材の清浄度が低下するとともに、耐食性、製造性、加工性の低下も招く。このため、Alは0.01〜0.05%に限定した。
N:0.010%以下
Nは、固溶して鋼材の強度を増加させるが、多量の含有は、鋼材を硬質化させ、靭性、溶接性を低下させる。さらに、NはTiNを形成し、大入熱溶接における熱影響部の靭性を向上させる有効な元素としても活用できる。なお、溶接性の低下という観点からはNは、できるだけ低減することが望ましいが、過度の低減は精錬コストを高騰させるため、0.001%程度以上とすることが好ましい。一方、0.010%を超えて多量に含有すると、鋼材が硬質化し、靭性が低下するとともに、溶接性が低下する。このため、Nは0.010%以下に限定した。なお、好ましくは0.005%以下である。
W:0.03〜0.50%
Wは、本発明では重要な元素であり、Wの含有により、地鉄と塗膜(塗装)との間に形成される腐食生成物(錆)の生成を著しく抑制し、塗膜の膨れ、剥離を低減することができる。すなわち塗膜下での鋼板の腐食に伴い、Wは錆中でWO4 2-を形成し、塩化物イオンの鋼板表面への侵入を抑制するバリアー効果を有するとともに、さらに、鋼板表面のアノード部などpHが下がった部位では難溶性化合物であるFeWO4を形成し、このFeWO4の存在により、塩化物イオンの鋼板表面への侵入を抑制し、アノード反応を抑制する効果を有する。このような機構により、Wは塗膜耐久性を向上させ、塗膜寿命の延長に寄与するものと考えられる。このような効果を得るためには、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、鋼が硬質化し靭性が低下する。このようなことから、Wは0.03〜0.50%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.05〜0.20%である。
Nb:0.005〜0.050%
Nbは、本発明では重要な元素であり、Cと結合し微細なNbCとして析出する。これに伴い、微細なNb系炭化物が形成されて、組織および炭化物が微細分散され、塗膜化での腐食促進要因となるセメンタイト等の粗大な炭化物の形成が抑制され、塗膜の寿命が延長されることになる。また、Nbの含有により、粗大炭化物の形成が抑制されるとともに、母相(フェライト相)の結晶粒径が微細化し、靭性が向上する。このような効果を得るためには0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.050%を超える含有は、耐食性向上効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利となるとともに、鋼材の硬質化を招く。このため、Nbは0.005〜0.050%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.020%である。
Ti:0.005%以上0.025%未満
Tiは、鋼材の強度を増加させる元素であり、さらに生成する錆を緻密な構造の錆とし、塗膜下における鋼材の耐食性を向上させる作用を有する元素である。このような効果を得るためには0.005%以上含有する必要があるが、0.025%以上含有すると、鋼中に粗大な窒化物(TiN)を形成し靭性が低下しやすくなる。このため、Tiは0.005%以上0.025%未満に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.020%である。
上記した成分が基本の成分であるが、これら基本の組成に加えてさらに、必要に応じてCu:0.05〜0.50%以下、Ni:0.05〜0.50%以下のうちから選ばれた1種または2種を、上記した含有範囲内でかつ(Cu+Ni+2W):0.1〜1.0%を満足するように、および/または、Mo:0.01〜0.50%、V:0.01〜1.0%、Sn:0.05〜0.50%、Cr:0.01〜2.00%のうちから選ばれた1種または2種以上を選択して含有できる。
Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%のうちから選ばれた1種または2種
Cu、Niは、いずれも、Wとともに複合含有させることにより、飛来海塩粒子が多くなる洋上大気環境下における耐食性、とくに塗膜の耐久性向上に顕著に寄与する。このような効果を得るためにはCu、Niとも0.05%以上含有することが望ましいが、Cu、Niともに0.50%を超える含有は、高価な合金元素の多量含有となり、材料コストの低減が期待できなくなる。このようなことから、含有する場合には、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%の範囲に限定することが好ましい。
なお、Cu、Niを含有する場合には、上記した含有範囲内でかつ、Cu含有量、Ni含有量、W含有量の関係式である、(Cu+Ni+2W)が0.1〜1.0%を満足するように、W含有量と関連して、Cu、Niの含有量を調整することが好ましい。(Cu+Ni+2W)が0.1%未満では、耐食性を向上させる元素の含有量が不足し、耐食性が不足する。一方、(Cu+Ni+2W)が1.0%を超えるような多量のCu、Niの含有は、材料コストを高騰させる。このため、Cu、Niを含有する場合には、(Cu+Ni+2W)が0.1〜1.0%の範囲となるように調整することが好ましい。
Mo:0.01〜0.50%、V:0.01〜1.0%、Sn:0.05〜0.50%、Cr:0.01〜2.00%のうちから選ばれた1種または2種以上
Mo、V、Sn、Crはいずれも、飛沫海塩粒子が多くなる洋上大気環境下における耐食性、とくに塗膜の耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて選択して1種または2種以上含有できる。Mo、V、Sn、Crは、いずれも、錆層の特性を改善し、アノード部の溶解を抑制して、耐局部腐食性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、Mo:0.01%以上、V:0.01%以上、Sn:0.05%以上、Cr:0.01%以上、それぞれを含有させることが望ましい。なお、CrはFeと一部置換し、セメンタイトに固溶し、(Fe,Cr)3Cを形成、セメンタイト(炭化物)を微細分散する働きがある。そのため、塗膜下での腐食促進要因となるセメンタイト等の粗大な炭化物の形成が抑制される。このようなことから、Crの含有は塗膜寿命延長、塗膜の密着性向上効果があると考えている。
一方、Mo:0.50%、V:1.0%、Sn:0.50%、Cr:2.00%をそれぞれ超える含有は、加工性を低下させ、鋼材の製造性を損なう。このため、含有する場合は、Mo:0.01〜0.50%、V:0.01〜1.0%、Sn:0.05〜0.50%Cr:0.01〜2.00%にそれぞれ限定することが好ましい。なお、より好ましくは、Mo:0.05〜0.20%、V:0.02〜0.20%、Sn:0.10〜0.30%、Cr:0.05〜0.20%である。
なおさらに、本発明では、上記した成分を上記した範囲で含有するとともに、炭素当量Ceqを0.40以下に、および/または、Pcmを0.30以下に限定することが、溶接金属部の硬質化防止、溶接性や溶接熱影響部の靭性を確保するという観点から好ましい。
なお、炭素当量Ceqは、次(1)式
Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ‥‥(1)
(ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%))
で定義される式を用いて計算した値を、溶接割れ感受性指数PCMは、次(2)式
CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ‥‥(2)
(ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B:各元素の含有量(質量%))
で定義される式を用いて計算した値を、それぞれ用いるものとする。(1)式、(2)式に含まれる元素を含有しない場合には、当該元素の含有量を零として計算するものとする。
炭素当量Ceqが0.40を超えると、溶接部の強度(硬さ)が大きくなりすぎて、溶接割れが発生しやすくなる。なお、溶接金属部の硬さを母材の硬さの2倍以下とする観点から、Ceqは、好ましくは0.37以下である。また、溶接割れ感受性指数PCMが0.30を超えて大きくなると、割れ感受性が高くなり、溶接割れが多発する。なお、PCMは、好ましくは0.25以下である。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。なお、不可避的不純物としては、O:0.020%以下、Ca:0.050%以下、B:0.0020%以下が許容できる。
つぎに、本発明鋼板の好ましい組織について説明する。
本発明鋼材は、上記した組成を有しさらに、組織全体に対する面積率で、70%以上のフェライト相と、残部がフェライト相以外の第二相とからなる組織を有することが好ましい。
フェライト相:70%以上
本発明鋼材は、組織全体に対する面積率で、70%以上のフェライト相と、フェライト以外の第二相とからなる組織を有することが好ましい。
本発明の組成範囲では、鋼材の組織は、フェライト単相、フェライト相とパーライト相との混合、ベイナイト相、マルテンサイト相、あるいはそれらの混合した組織等、種々の組織を呈する。本発明者らの検討によれば、洋上風力発電タワーにおけるような、海塩が飛来する腐食環境下では、耐食性が最も優れている組織はフェライト相であるという知見を得ている。このようなことから、本発明では、組織を、組織全体に対する面積率で、70%以上の、フェライト相を主体とする組織とすることが好ましい。
海塩が飛来する腐食環境下では、フェライト相単相以外の組織の場合は、腐食の起点は、主として、炭化物とマトリックス(フェライト相)との異相界面、とくにセメンタイトに代表されるような粗大な炭化物とフェライト相の界面であり、耐食性の観点からは、フェライト相単相組織とすることが好ましいが、フェライト相単相では、鋼材に所望の特性、たとえば、所望の高強度を付与することが難しくなる。そのため、本発明では、耐食性と、他の特性とのバランスを考慮して、フェライト相は、組織全体に対する面積率で、70%以上に限定した。なお、好ましくは80〜95%である。また、フェライト相は、組織全体に対する面積率で、80%以上であっても、炭化物が粗大化していては、十分な耐食性の向上は得られないため、フェライト相の微細化、さらにはフェライト相以外の第二相が、微細でかつ均一に分布していることが好ましい。
フェライト相以外の残部(第二相)は、セメンタイト、パーライト相、ベイナイト相、残留オーステナイト相、マルテンサイト相等とすることが好ましい。第二相が、30%を超えて多量に存在すると、耐食性が低下する。なお、第二相は好ましくは20%以下である。
また、本発明鋼材では、フェライト相の結晶粒度番号が7.0以上の微細な組織とすることがより好ましい。組織(フェライト結晶粒)を微細化することにより、結果的に、結晶粒界を長くすることができ、結晶粒界に析出しやすい炭化物も微細に分散するようになる。結晶粒が微細なほど、炭化物の微細分散を図ることができる。なお、製造工程の負荷を考慮して、結晶粒度番号:6.0以上としても良い。なお、本発明では、結晶粒度番号は、JIS G 0551の規定に準拠して算出した値を用いるものとする。
つぎに、本発明鋼材の好ましい製造方法について説明する。
上記した組成を有する鋼材の製造方法は、通常公知の方法がいずれも適用可能であり、とくに限定されない。
本発明鋼材が厚鋼板である場合には、上記した組成の溶鋼を、転炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の方法でスラブ等の鋼素材としたのち、鋼素材を加熱し、厚板圧延(熱間圧延)を施し、冷却、あるいはさらに矯正等を施して所望の寸法形状の厚鋼板とすることが好ましい。なお、厚板圧延では、通常の圧延に加えて、制御圧延、制御冷却等を適用して所望の強度、靭性等の特性を付与することもできる。
鋼材が厚鋼板である場合には、例えば、鋼素材を、1000〜1200℃に加熱したのち、圧延終了温度までの累積圧下率:60%以上で、圧延終了温度:650℃以上とする厚板圧延を施し、厚鋼板としたのち、5.0℃/s以下の冷却速度で300℃以下まで冷却することが好ましい。圧延後の冷却条件を制御することに代えて、室温まで空冷で冷却した後、熱処理を施してもよい。熱処理条件としては、所望の強度、靭性を確保できるように、加熱温度:300〜700℃に加熱したのち、0.1〜30℃/sの範囲の冷却速度で室温まで冷却するか、または加熱後空冷することが好ましい。
また、鋼材が、形鋼の場合には、上記した組成の溶鋼を、転炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法等の常用の方法でブルーム等の鋼素材としたのち、鋼素材を加熱し、形鋼圧延(熱間圧延)を施し、冷却、あるいはさらに矯正等を施して所望の寸法形状の、H形鋼、鋼矢板等の形鋼とすることが好ましい。形鋼圧延は、通常の圧延方法がいずれも適用可能である。また、鋼材が棒鋼である場合も同様で、通常の条件で棒鋼圧延を適用して所望の寸法形状、強度、靭性を有する棒鋼となるように、製造条件を調整することが好ましい。
なお、形鋼圧延、棒鋼圧延では、圧延後の冷却条件は、鋼材の肉厚にもよるが、1.0℃/s以下の冷却速度で300℃以下まで冷却することが、所望の特性を有する鋼材を得るために好ましい。
また、風力発電タワーは上記した製造工程で製造した厚鋼板を溶接し、たとえば8.0m径の大径管を複数製造し、それらを溶接またはボルト接合などを組み合わせて使用することになる。
以下、実施例に基づいて、さらに本発明について説明する。
(実施例1)
表1に示す組成の溶鋼を、転炉で溶製し、連続鋳造法で鋼素材(スラブ)とした。得られた鋼素材(スラブ)を1100〜1110℃に加熱し、810〜830℃にするまでの累積圧下率が80%で、かつ圧延終了温度:810〜830℃とする厚板圧延を施し、圧延終了後、強制冷却をせずに放冷(板厚中心部で0.3〜0.4℃/sの冷却速度(空冷))で冷却した。さらに630〜650℃で10分間加熱処理を行った後、強制冷却をせずに放冷(板厚中心部で0.5℃/s以下の冷却速度(空冷))で冷却し、板厚50mmの厚鋼板を得た。
得られた厚鋼板について、引張試験、衝撃試験を実施した。試験方法は次のとおりとした。
(1)引張試験
得られた厚鋼板の板厚1/4位置から、引張方向が圧延方向と直角方向となるように、JIS 5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS、伸びEl)を測定した。試験片数は各3個とし、得られた値の算術平均を求め、各鋼板の特性とした。
(2)衝撃試験
得られた厚鋼板の板厚1/4t位置から試験片長さ方向が圧延方向と直角方向となるように再現熱サイクル試験片を採取し、溶接継手部の衝撃特性を推定した。採取した再現熱サイクル試験片に、サブマージアーク溶接での入熱150kJ/cm相当の熱サイクルを付与した。再現熱サイクル付与された試験片から、試験片長さ方向が圧延方向と直角方向となるように、Vノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:-20℃における吸収エネルギーvE-20(J)を求めた。なお、各鋼板で各3本実施し、得られた吸収エネルギーの算術平均を求め、各鋼板の溶接継手部の靭性を評価した。なお、vE-20が35J以上である場合を「靭性に優れた鋼材」であるとした。
また、得られた厚鋼板に塗装処理を施し、塗膜の耐久性を調査した。
得られた厚鋼板から所定の大きさの試験材を採取し、鋼板表面の酸化スケールを、ショットブラスト処理により除去したのち、塗装処理を施して、塗装試験材を得た。なお、ショットブラスト処理は、RZ=50μm、Sa1/2になるように行った。また、塗装処理は、表3に示すISO12944規定のC5M系塗装とした。すなわち、C5M系塗装は、
下塗り:無機ジンク塗料(塗料名:関西ペイント(株)製SDジンク1500A(商品名))、塗膜厚さ50μm、
中塗り1:エポキシ樹脂塗料(塗料名:関西ペイント(株)製エポマリンHB(商品名))、塗膜厚さ125μm、
中塗り2:エポキシ樹脂塗料(塗料名:関西ペイント(株)製エポマリンHB(商品名))、塗膜厚さ125μm、
上塗り:ポリウレタン樹脂塗料(塗料名:関西ペイント(株)製ウレタン6000HB(商品名))、塗膜厚さ50μm
である。なお、塗装は、厚鋼板表面にスプレー塗布する処理とした。
ついで、得られた塗装試験材から試験片(大きさ:長さ100mm×幅70mm)を採取し、促進腐食性試験を実施し、塗膜の耐久性を評価した。試験方法は次の通りとした。
(3)塗膜耐久性試験
得られた促進腐食試験片(塗装試験片)の中央部に、試験前にNT Cutter社製 M-500(塩ビカッター)、カッターの刃:BM-2P(カタログ値:0.8mm)を用いて、地鉄に達するまでの人工欠陥を50mm長さ導入した。促進腐食試験はJIS K 5621に準拠して行い、複合サイクルを300サイクルまで実施した。試験片のN数は2個とした。
複合サイクルは、塩水噴霧(温度:30℃ 時間:0.5hr)→湿潤(温度:30℃、相対湿度:95% 時間1.5hr)→熱風乾燥(温度:50℃、時間:2hr)→温風湿潤(温度:30℃、時間:2hr)からなるサイクルとし、1サイクル6hrとした。
試験後、各サンプルについて、人工欠陥からの膨れ幅(剥離距離)を大きいものから順に5点測定し、これらの平均を最大5点平均剥離距離として求めた。また、最も膨れ幅の大きいものを最大剥離距離とした。
最大5点平均剥離距離が4.0mm以下である場合を○、4.0mmを超え5.0mm未満を△、5.0mm以上を×として評価した。また、最大剥離距離については5.0mm以下を○、5.0mmより大きい場合を×として塗膜耐久性を評価した。
なお、得られた厚鋼板の組織についても、後述する方法にて光学顕微鏡を用いて観察した。
得られた結果を、表2に示す。
Figure 0005712593
Figure 0005712593
Figure 0005712593
Figure 0005712593
なお、得られた鋼板は、いずれも面積率で80%以上95%以下のフェライト相を有し、フェライト相の粒度番号は7.0番以上であった。また、本発明例は、いずれも所望の高強度と優れた溶接継手部靭性(溶接熱影響部靭性)とを有し、塗膜の耐久性にも優れた鋼材となっている。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、所望の強度、溶接継手部靭性(溶接熱影響部靭性)を確保できていないか、あるいは、塗膜の耐久性が低下している。
(実施例2)
表1に示す鋼No.22、No.23、No.26の組成を有する鋼素材を、表4に示す条件で熱間圧延(厚板圧延)を施し、表4に示す板厚の厚鋼板とした。一部の厚鋼板についてはさらに表4に示す条件で熱処理を施した。
得られた厚鋼板から試験片を採取し、組織観察、引張試験、衝撃試験を実施した。引張試験、衝撃試験の試験方法は実施例1と同様とした。
組織観察は、つぎのとおりに行った。
採取した試験片について圧延方向断面(L断面)を研磨し、ナイタール液でエッチングして、光学顕微鏡(倍率:50〜400倍)を用いて、組織を観察し、撮像した。そして、画像解析装置を用いて組織の種類、分率(面積%)を測定した。
また、JIS G 0551に準拠して、フェライト相の結晶粒度を算出した。
さらに、得られた厚鋼板に実施例1と同様に塗装処理を施し、実施例1と同様に促進腐食試験を実施して、塗膜の耐久性(塗装耐久性)を調査した。
得られた結果を表5に示す。
Figure 0005712593
Figure 0005712593
本発明例は、所望の高強度と優れた靭性とを有し、塗膜の耐久性にも優れた鋼材となっている。結晶粒度および/またはフェライト相の組織分率が、本発明の好適範囲を外れる本発明例は、塗装耐久性が若干低下する傾向となっている。

Claims (12)

  1. 塗装されて使用される鋼材であって、質量%で、
    C:0.08%未満、 Si:0.75%以下、
    Mn:2.0%以下、 P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、 Al:0.01〜0.05%、
    N:0.01%以下
    を含み、さらに
    W:0.03〜0.5%、 Nb:0.005〜0.050%、
    を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、引張強さ:420MPa以上の強度と、シャルピー衝撃試験の試験温度:−20℃における溶接継手部の平均吸収エネルギーが35J以上である高靭性とを有することを特徴とする塗装用鋼材。
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.005%以上0.025%未満を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗装用鋼材。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%のうちから選ばれた1種または2種を、Cu、Ni、W含有量の関係式である、(Cu+Ni+2W)が0.1〜1.0%を満足するように含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装用鋼材。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo:0.01〜0.50%、V:0.01〜1.0%、Sn:0.05〜0.50%、Cr:0.01〜2.00%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の塗装用鋼材。
  5. 前記PおよびSの含有量が、質量%で、P:0.010%以下、S:0.0020%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の塗装用鋼材。
  6. 前記組成が、下記(1)式で定義される炭素当量Ceqが0.40以下である組成とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の塗装用鋼材。

    Ceq=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ‥‥(1)
    ここで、C、Mn、Si、Ni、Cr、Mo、V:各元素の含有量(質量%)
  7. 前記組成が、下記(2)式で定義される溶接割れ感受性指数PCMが0.30以下である組成とすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の塗装用鋼材。

    CM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ‥‥(2)
    ここで、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B:各元素の含有量(質量%)
  8. 前記塗装して使用される鋼材が、海洋構造物用であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の塗装用鋼材。
  9. 前記海洋構造物が、洋上構造物であることを特徴とする請求項8に記載の塗装用鋼材。
  10. 前記洋上構造物が、風力発電タワーであることを特徴とする請求項9に記載の塗装用鋼材。
  11. 請求項1ないし7のいずれかに記載の塗装用鋼材を用いてなることを特徴とする海洋構造物。
  12. 請求項1ないし7のいずれかに記載の塗装用鋼材を用いてなることを特徴とする洋上風力発電タワー。
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