JP5708863B2 - 造形方法 - Google Patents
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上述したように、スラリーからなる層の中でも両親媒性ポリマーの量が多い部位ほど結着液が浸透しにくくなる。そのため、結着液よりも調整液を先に塗布すると、結着部分となる部位にまで調整液が浸透してしまうことで、結着部分の形状精度が低下してしまう虞がある。この点、この造形方法によれば、結着部分となる部位に結着液を浸透させてから調整液が塗布されることになる。こうした構成であれば、調整液を塗布することによって結着部分の形状精度が低下することを抑えることができる。しかも、結着液が浸透した部位には調整液も浸透しにくくなることから、結着液が浸透した部位の端に沿う位置で調整液の浸透を抑えることもできる。これにより、低溶解性サポート部による結着部分の支持をより確実なものとすることができる。
この造形方法のように、疎水性の粒体及び水系溶媒と親和性を有する両親媒性ポリマーとしては、ポリビニルアルコールを採用することが可能である。ポリビニルアルコールは、主鎖として直鎖状の炭化水素を有するとともに、側鎖として親水性の官能基であるヒドロキシル基を有する。ポリビニルアルコールには、その単位構造当りにおよそ一つのヒドロキシル基が含まれることから、該ポリビニルアルコールは、疎水性の粒体との親和性を主鎖によって維持しつつ、水系溶媒との親和性が高いものとなる。それゆえに、両親媒性ポリマーとしてポリビニルアルコールを含むスラリーにおいては、これを構成する粒体がより均一に分散されることになる。
両親媒性ポリマーがポリビニルアルコールである場合には、単位構造の重合数である重合度が高いほど、これを含む構造体の水系液体に対する溶解性が低くなる。すなわち、調整液を塗布することによって低溶解性サポート部を形成する上では、この造形方法のように、調整液に含まれるポリビルアルコールの重合度を大きくすることによって実現可能である。
まず、本実施の形態における造形方法の手順について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る造形方法の手順を示すフローチャートである。図1に示されるように、この造形方法では、まず、造形用スラリーを用いた犠牲層形成工程(ステップS10)が実施される。次に、造形用スラリーを用いたスラリー層形成工程(ステップS21)、紫外線硬化樹脂滴下工程(ステップS22)、PVA溶液滴下工程(ステップS23)、紫外線照射工程(ステップS24)が繰り返し実施される積層体形成工程(ステップS20)が実施される。そして、第1除去工程(ステップS31)、第2除去工程(ステップS32)が続けて実施されるサポート材除去工程(ステップS30)が実施される。
両親媒性ポリマーの好ましい例として、ポリビニルアルコール(PVA:polyvinyl alcohol)が挙げられる。ポリビニルアルコールの構造を以下に示す。
(b)ポリ酢酸ビニルのエステル結合を加水分解(鹸化)して、−C=OCH3を−Hに置換する。
これら鹸化度と重合度には以下のような傾向がある。
(イ)ただし、一般的に部分鹸化型と呼ばれる鹸化度86以上の範囲では、鹸化度が100%に近づく程結晶化しやすくなるため、水系溶媒に対する溶解度が小さくなる。
(エ)重合度が大きい程、ポリビニルアルコールが含まれる構造体の機械的強度が増大する。
次に、上述した造形方法で用いられる調整液としてのPVA溶液について説明する。
図1に示したように、この造形方法では、まず、犠牲層形成工程(ステップS10:図2(a))にて、例えばガラス基板やプラスチックシート等の基板1(基体)上に、例えば厚さが200μmになるように、上記スラリーを塗布することによって、スラリーからなる層の最下層としての犠牲層2を形成する。なお、スラリーの塗布には、公知の方法であるスキージ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、及びスピンコート法等、基板1上に略均一な厚さを有したスラリーの層を形成可能な方法を用いることができる。
・造形用スラリー
(A)疎水性粒体 シャリーヌR−170S(粒径30μm)(日信化学工業(株)製)(シャリーヌ:登録商標)
(B)水系溶媒 水
(C)両親媒性ポリマー ポバールJP−03(日本酢ビ・ポバール(株)製、重合度300、鹸化度86.0〜90.0(88))
・組成比 (A):(B):(C)=7:3.1:0.22(単位g)
・各スラリー層の厚さ 100μm
・UVインク アクリル系のUVインク
・PVA溶液
(D)水系溶媒 水
(E)両親媒性ポリマー ポバールJT−05(日本酢ビ・ポバール(株)製、重合度500、鹸化度93.5〜95.5(94.5))
・組成比 (D):(E)=3.1:0.22(単位g)
以上説明したように、本実施の形態に係る造形方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(7)水系液体に対する溶解性が相対的に高い高溶解性サポート部14,54と相対的に低い低溶解性サポート部13,23,43,53とでサポート部を構成した。こうした構成によれば、高溶解性サポート部14,54を除去するための第1除去工程(ステップS31)と低溶解性サポート部13,23,43,53を除去するための第2除去工程(ステップS32)とを異なる条件の下で実施することができる。このようにサポート部の除去方法に関わる自由度が高められることから、サポート部の除去にともなう造形物の変形を抑えつつ、造形物の形状や生産性など、造形物に関わる要求に対して柔軟に対応することも可能となる。
・両親媒性ポリマーはポリビニルアルコールに限らず、疎水性粒体の間に介在してこれらを繋ぐとともに、該疎水性粒体を水系溶媒中に均一に分散可能な両親媒性ポリマーであればよい。
・疎水性粒体には、その表面に親水基を有するものを用いてもよい。
・造形用スラリーならびにPVA溶液Fの水系溶媒は、水に水溶性の有機溶媒を添加したものであってもよい。
Claims (5)
- 疎水性の粒体を結着液で結着することにより造形物を造形する造形方法であって、
前記粒体を含む複数の層を積み重ねつつ各層の一部に前記結着液を塗布し、前記粒体同士が前記結着液を介して結着した結着部分と該結着部分以外の未結着部分とに区画された前記層の積層体を形成する積層体形成工程を有し、
前記積層体形成工程では、
前記粒体と水系溶媒と該水系溶媒に溶解された両親媒性ポリマーとを含むスラリーによって前記各層を形成するとともに、
前記層の1つを下層、前記下層に積層される層を上層とするとき、前記下層における前記未結着部分のうちで前記上層における前記結着部分が重なる部位に対し、両親媒性ポリマーを水系溶媒に溶解させた調整液を塗布する
ことを特徴とする造形方法。 - 前記積層体形成工程では、
前記結着液が塗布されたあとに前記調整液を塗布する
請求項1に記載の造形方法。 - 前記調整液及び前記スラリーに含まれる両親媒性ポリマーは、ポリビニルアルコールである
請求項1または2に記載の造形方法。 - 前記調整液に含まれるポリビニルアルコールの重合度が、前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの重合度よりも大きい
請求項3に記載の造形方法。 - 前記調整液及び前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が86以上であり、かつ、前記調整液に含まれるポリビニルアルコールの鹸化度が、前記スラリーに含まれるポリビニルアルコールの鹸化度よりも大きい
請求項3または4に記載の造形方法。
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