以下、図面に基づいて、本発明に係る緩衝ユニットの実施形態を詳細に説明する。緩衝ユニットは、段ボール箱のような梱包箱内において、運搬される複数の交換部品間を仕切った状態で前記交換部品を収納する部材として機能する第1状態と、前記梱包箱から取り出され、前記交換部品が取り付けられる機器筐体が載置されて前記交換部品の交換作業の際に作業台として機能する第2状態と、で用いられる。本実施形態では、上記機器筐体としてプリンター1(画像形成装置)を例示し、上記交換部品として当該プリンター1に装備される消耗部品を例示する。これは一例であり、本発明に係る緩衝ユニットはプリンター1用に限定されない。
先ず、プリンター1について説明する。図1は、プリンター1の外観を示す斜視図、図2は、プリンター1の内部構造を示す概略断面図である。プリンター1は、シートにトナー画像を形成する画像形成処理を行うものであって、略直方体形状の筐体構造を有する本体ハウジング10(機器筐体)と、この本体ハウジング10内に収容される給紙部20、画像形成部30、定着部40及びトナーコンテナ50とを含む。
本体ハウジング10の前面側には前カバー11が、後面側には後カバー12が各々備えられている。前カバー11を開放することで、ユーザーは、トナー切れの際にトナーコンテナ50を本体ハウジング10から取り出すことができる。後カバー12は、シートジャムやメンテナンスの際に開放されるカバーである。画像形成部30及び定着部40の各ユニットは、後カバー12が開放されることで、本体ハウジング10から取り出し可能となる。なお、後述する搬送ユニット25(交換部品)は、本体ハウジング10の底面10Bを通して、本体ハウジング10への取り付け及び取り出しが行われる。
給紙部20は、前記画像形成処理が施されるシートを収容する給紙カセット21を含む。給紙カセット21は、その一部が本体ハウジング10の前面からさらに前方に突出している。給紙カセット21には、前記シートの束が収容されるシート収容空間、前記シートの束を給紙のためにリフトアップするリフト板等が備えられている。給紙カセット21の後端側の上部には、シート繰出部21Aが設けられている。シート繰出部21Aには、給紙カセット21内のシート束の最上層のシートを1枚ずつ繰り出すための給紙ローラー21Bが配置されている。
画像形成部30は、給紙部20から送り出されるシートにトナー画像を転写する。画像形成部30は、感光体ドラム31と、この感光体ドラム31の周囲に配置された、帯電装置32、露光装置(図2の切断面には表れていない)、現像装置33、転写ローラー34及びクリーニング装置35とを含む。
感光体ドラム31は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム31としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電装置32は、感光体ドラム31の表面を均一に帯電するものであって、感光体ドラム31に当接する帯電ローラーを含む。クリーニング装置35は、クリーニングブレード等を有し、トナー像転写後の感光体ドラム31の周面に付着したトナーを清掃するとともに、不図示の回収装置に該トナーを搬送する。また、感光体ドラム31と、帯電装置32と、クリーニング装置35とは、ドラムユニット31U(図11参照)として一体的に構成されている。
露光装置は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム31の周面に、パーソナルコンピューター等の外部装置から与えられる画像データに基づいて変調された光を照射して、静電潜像を形成する。現像装置33は、感光体ドラム31上の前記静電潜像を現像してトナー像を形成するために、感光体ドラム31の周面にトナーを供給する。転写ローラー34は、感光体ドラム31の周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるためのローラーであって、感光体ドラム31と転写ニップ部を形成している。この転写ローラー34には、トナーと逆極性の転写バイアスが与えられる。
定着部40は、転写されたトナー像をシート上に定着する定着処理を行う。定着部40は、加熱源を内部に備えた定着ローラー41と、この定着ローラー41に対して圧接され、定着ローラー41との間に定着ニップ部を形成する加圧ローラー42とを含む。トナー像が転写されたシートが前記定着ニップ部に通紙されると、トナー像は、定着ローラー41による加熱および加圧ローラー42による押圧により、シート上に定着される。
トナーコンテナ50は、現像装置33に補給するトナーを貯留する。トナーコンテナ50は、トナーの主な貯留箇所となるコンテナ本体51と、コンテナ本体51の一側面の下部から突設された筒状部52と、コンテナ内部に収容されトナーを搬送する回転部材53とを含む。トナーコンテナ50内に貯留されたトナーは、回転部材53が回転駆動されることによって、筒状部52の先端下面に設けられたトナー排出口521から現像装置33内に供給される。
本体ハウジング10内には、シートを搬送するために、主搬送路22F及び反転搬送路22Bが備えられている。主搬送路22Fは、給紙部20のシート繰出部21Aから画像形成部30及び定着部40を経由して、本体ハウジング10上面の排紙部13に対向して設けられている排紙口14まで延びている。反転搬送路22Bは、シートに対して両面印刷を行う場合に、片面印刷されたシートを主搬送路22Fにおける画像形成部30の上流側に戻すための搬送路である。
主搬送路22Fの、感光体ドラム31と転写ローラー34との転写ニップ部よりも上流側には、レジストローラー対23が配置されている。シートは、レジストローラー対23にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、前記転写ニップ部に送り出される。主搬送路22F及び反転搬送路22Bの適所には、シートを搬送するための搬送ローラーが複数配置されており、例えば排紙口14の近傍には排紙ローラー対26が配置されている。
反転搬送路22Bは、反転ユニット24の外側面と、本体ハウジング10の後カバー12の内面との間に形成されている。なお、反転ユニット24の内側面には転写ローラー34及びレジストローラー対23の一方のローラーが搭載されている。後カバー12及び反転ユニット24は、それらの下端に設けられた支点部121の軸回りに各々回動可能である。反転搬送路22Bにおいてシートジャムが発生した場合、後カバー12が開放される。主搬送路22Fでシートジャムが発生した場合、或いは感光体ドラム31のユニットや現像装置33が外部に取り出される場合には、後カバー12に加えて反転ユニット24も開放される。
主搬送路22Fの最上流位置には、給紙ローラー21Bに対向した搬送面を備えた搬送ユニット25が配置されている。搬送ユニット25は、反転搬送路22Bの一部を構成する搬送面も備えている。搬送ユニット25は、本体ハウジング10の底部付近に配置されており、既述の通り、底面10Bを通して、本体ハウジング10へ脱着が為される。従って、搬送ユニット25の交換に際しては、プリンター1の後方側を持ち上げ、底面10Bを露呈させる必要がある。なお、プリンター1を大きく傾けたり、反転させたりすると、本体ハウジング10内においてトナーが漏洩する場合がある。トナーの漏洩が抑止できる傾斜角の上限は、水平面に対して概ね30度程度である。従って、上記交換の際は、プリンター1の傾きを、上記許容傾斜角内とする必要がある。
続いて、本実施形態に係る緩衝ユニットUについて説明する。緩衝ユニットUは、2つの使用態様を有し、各使用態様によって形態が異なるものとなる。図3は、梱包箱内に据え付けられ緩衝部材として機能する第1状態の緩衝ユニットU1を示す斜視図、図4は、プリンター1を載置する作業台として機能する第2状態の緩衝ユニットU2を示す斜視図である。
第1状態の緩衝ユニットU1は、底板部材60、第1仕切り部材70、第2仕切り部材80及び第3仕切り部材90を含む。これら4つの部材は、平板状の段ボール紙の切り取り及び折り曲げ加工によって形成され、一体的に組み立てられている。第1、第2、第3仕切り部材70、80、90は、左右の側面視でU字型の収容空間を有する樋型の段ボール紙片であり、底板部材60によって着脱自在に支持されている。前記収容空間の各々にはプリンター1の交換部品が収納され、その状態で段ボール箱100(梱包箱)に収容される(図9、図10参照)。第1、第2、第3仕切り部材70、80、90は、段ボール箱100に収容され、運搬される前記交換部品を当該段ボール箱100内において仕切る部材であると共に、前記交換部品を保護するための緩衝部材でもある。
第2状態の緩衝ユニットU2は、底板部材60、第2仕切り部材80及び第3仕切り部材90を含む。第2状態の緩衝ユニットU2は、段ボール箱100から取り出され、且つ、交換部品が取り出された後、プリンター1の底面10Bを通した部品交換作業(図13〜図15参照)の際に、プリンター1を載置する作業台として用いられる。第1仕切り部材70は、前記部品交換作業において、プリンター1の底面10Bにアクセスできる十分な作業空間を形成するために、底板部材60から取り除かれている。
以下、緩衝ユニットU(U1、U2)を構成する各部材について詳細に説明する。図5は底板部材60の展開図、図6は第1仕切り部材70の展開図、図7は第2仕切り部材80の展開図、図8は第3仕切り部材90の展開図である。これらの部材は、平板状の段ボール紙基材に、抜き型加工及び折り目付けのための罫線加工を施すことによって形成される。勿論、プラスチック段ボール等の、紙以外の段ボール又は他の緩衝部材を用いても良い。
底板部材60は、略正方形の底板片61と、底板片61の左右側縁に折り曲げ罫線61L、61Rを介して連設された一対の側板片62L、62Rとを含む。底板片61は、第1状態の緩衝ユニットU1として使用されるとき、段ボール箱100の底板と対向し、第2状態の緩衝ユニットU2として使用されるとき、床面に接面する。
底板片61には、第1、第2、第3仕切り部材70、80、90を適正に底板部材60へ組み付けることができるように、打ち抜き孔からなる丸目印611、三角目印612及び四角目印613が、左右一対で設けられている。丸目印611は、第1仕切り部材70の底板部材60への組み付け位置を示す目印である。三角目印612は、その頂点が後方に配向するよう穿孔されており、第1、第2、第3仕切り部材70、80、90各々の底板部材60への組み付け方向を定める目印である。四角目印613は、第3仕切り部材90の底板部材60への組み付け位置を示す目印である。
底板片61の左右方向中央部には、前後方向に並んで一対の取っ手片63F、63Bが備えられている。取っ手片63F、63Bは、底板片61に打ち抜かれたU字型のスリット631と、スリット631の基部へ設けられた折り曲げ罫線632とによって形成された取っ手本体片633を含む。取っ手本体片633には、作業者が手指を差し入れることが可能な窓部634が穿孔されている。第1状態の緩衝ユニットU1では、折り曲げ罫線632に沿って取っ手本体片633が上方に折り曲げられる(図10参照)。一方、第2状態の緩衝ユニットU2では、取っ手本体片633はスリット631内へ収納される(図12、図13参照)。
一対の側板片62L、62Rは、実質的に左右対称な形状を有し、平行な折り曲げ罫線61L、61Rに沿って上方に折り曲げられている。側板片62L、62Rは、各々底板片61に対して略90度の角度をなすよう立設され、互いに平行な状態で対向するものであって、それぞれ側板本体片620と、この側板本体片620の前端側に連設された支持片626とを含む。
側板本体片620は、折り曲げ罫線61L、61Rとは反対側の端縁に、側板片62L、62Rが立設された状態において、後方から前方に向けて下方に傾斜する傾斜上縁部621を備えている。傾斜上縁部621は、後方に位置する高所部621Tから前方に位置する低所部621Bに向けて直線状に下降する傾斜を持つ。支持片626は、高所部621Tと略同じ高さ有し、傾斜上縁部621の低所部621Bに連なる支持傾斜部627を備えている。傾斜上縁部621と支持傾斜部627とがなす角は、概ね90度である。側板片62L、62Rは、高所部621Tと支持片626との間において、低所部621Bを直角頂点とする直角三角形の切り込みが設けられた形態を有している。第2状態の緩衝ユニットU2においては、プリンター1の底面10Bが傾斜上縁部621に接するように載置され、プリンター1の前側面下部が支持傾斜部627で支持されることになる。なお、傾斜上縁部621の水平面に対する傾斜角は30度以下に設定される。好ましい傾斜角度は10度〜25度程度である。これにより、プリンター1を傾斜上縁部621で支持させたときに、プリンター1が傾くことに伴うトナー漏れが発生することを防止できる。
側板本体片620は、左右方向に延びる4つのスリットを備えている。すなわち、前後方向に所定間隔を置いて配置された第1、第2、第3、第4スリット622、623、624、625が、左右の側板本体片620に各々備えられている。第1、第2、第3スリット622、623、624は傾斜上縁部621を開口端とし、第4スリット625は支持傾斜部627を開口端とし、各々折り曲げ罫線61L、61Rに向かう方向に延在している。第1〜第4スリット622〜625の底部は略同じ高さであって、低所部621Bの高さと略同じ高さである。第1〜第4スリット622〜625には、後述する第1、第2、第3仕切り部材70、80、90の仕切り片が挿入され、1枚分の仕切り片が挿入される第1、第4スリット622、625の前後方向幅は比較的狭く、2枚分の仕切り片が挿入される第2、第3スリット623、624の前後方向幅は比較的広い。
第1仕切り部材70は、図6に示すように、左右方向に長い長方形の底板片71と、底板片71の後側縁に折り曲げ罫線711を介して連設された後仕切り片72と、底板片71の前側縁に折り曲げ罫線712を介して連設された前仕切り片73とを含む。後仕切り片72及び前仕切り片73は、実質的に同一形状を備え、折り曲げ罫線711、712に沿って上方に折り曲げられることによって、交換部品の収容のための左右方向に長い収容空間を形成する。すなわち、第1状態の緩衝ユニットU1では、底板片71上に交換部品が載置され、当該交換部品の前後方向の動きが後仕切り片72及び前仕切り片73によって規制される。また、上述の通り、第2状態の緩衝ユニットU2では、第1仕切り部材70は底板部材60から取り除かれる。
底板片71には、いずれも打ち抜き孔からなり、中央部付近に配置された三角目印713と、この三角目印713を挟んで左右に配置された丸目印714とが形成されている。作業者は、第1仕切り部材70を底板部材60に組み付けるとき、三角目印713の頂点の向きを、底板片61に穿孔されている三角目印612の頂点の向きに合致させる。また、作業者は、丸目印714を参照して、第1仕切り部材70の組み付け位置が底板片61の丸目印611が穿孔されている位置の付近であることを知見する。これにより作業者は、第1仕切り部材70の底板部材60への組み付け方向及び組み付け位置を誤ることが無い。
後仕切り片72及び前仕切り片73は、左右方向に長い長方形の形状を有し、前後方向の幅は底板片71よりも短く、左右方向の幅は底板片71よりも長い。後仕切り片72及び前仕切り片73の左端部及び右端部同士が、折り曲げ可能な連結片74で連結されている。底板片71の左右の端縁と左右の連結片74との間には、前後方向に延びる左スリット75L及び右スリット75Rが設けられている。左右スリット75L、75Rの前後方向の長さは底板片71の前後方向の幅よりも長く、後仕切り片72及び前仕切り片73の下端(折り曲げ罫線711、712に近い部位)まで至っている。
後仕切り片72及び前仕切り片73の左右方向中央部には、その上端縁721、731から下方にU字型に切り込まれた切り欠き部722、732が設けられている。作業者は、これら切り欠き部722、732を通して手指を差し入れることによって、第1仕切り部材70内に収容された交換部品を容易に取り出すことができる。また、上端縁721、731の左端及び右端近くには、上端縁721、731から下方に浅く延びる押圧スリット723、733が各々設けられている。
側板片62L、62R及び前後仕切り片72、73が上方に折り曲げられた状態で、後仕切り片72は、左右スリット75L、75Rが形成されている箇所において、側板片62L、62Rの第1スリット622に嵌め込まれる。また、前仕切り片73は、左右スリット75L、75Rが形成されている箇所において、側板片62L、62Rの第2スリット623に嵌め込まれる。これにより、第1仕切り部材70は、一対の側板片62L、62Rに跨るように、一対の側板片62L、62Rに対して組み付けられる(図3参照)。この組み付け状態において、後仕切り片72及び前仕切り片73の上端縁721、731の高さは、底板部材60の側板本体片620の、第2スリット623が形成されている位置における傾斜上縁部621の高さと略同じとなる。つまり、上端縁721は第1スリット622の開口部から下方に没した位置にあり、上端縁731は第2スリット623の開口部付近に位置し、いずれも傾斜上縁部621よりも上方に突出していない。また、底板片71は一対の側板片62L、62Rの間に、左右の連結片74は一対の側板片62L、62Rの外側に位置している。
第2仕切り部材80は、図7に示すように、左右方向に長い長方形の底板片81と、底板片81の後側縁に折り曲げ罫線811を介して連設された後仕切り片82と、底板片81の前側縁に折り曲げ罫線812を介して連設された前仕切り片83とを含む。前仕切り片83の前後方向の幅は、後仕切り片82よりも長い。これは、傾斜上縁部621の傾きに合わせるためである。後仕切り片82及び前仕切り片83は、折り曲げ罫線811、812に沿って上方に折り曲げられることによって、交換部品の収容のための左右方向に長い収容空間を形成する。すなわち、第1状態の緩衝ユニットU1では、底板片81上に所定の交換部品が載置され、当該交換部品の前後方向の動きが後仕切り片82及び前仕切り片83によって規制される。なお、第2状態の緩衝ユニットU2でも、この第2仕切り部材80については、底板部材60から取り除かれない。
底板片81には、打ち抜き孔からなる、中央部付近に配置された三角目印813が形成されている。作業者は、第2仕切り部材80を底板部材60に組み付けるとき、三角目印813の頂点の向きを、底板片71に穿孔されている三角目印612の頂点の向きに合致させる。なお、底板片81には、組み付け位置を示す目印が穿孔されていない。しかし、前述の第1仕切り部材70及び次述の第3仕切り部材90には組み付け位置を示す目印が備えられていることから、作業者は、目印が存在しないことをもって、第2仕切り部材80の組み付け位置を知見することができる。
後仕切り片82及び前仕切り片83は、左右方向に長い長方形の形状を有し、底板片81よりも長い左右方向の幅を有する。後仕切り片82の前後方向の幅は底板片81と略同じであるが、前仕切り片83の前後方向の幅は底板片81よりも短い。後仕切り片82及び前仕切り片83の左端部及び右端部同士が、折り曲げ可能な連結片84で連結されている。底板片81の左右の端縁と左右の連結片84との間には、前後方向に延びる左スリット85L及び右スリット85Rが設けられている。左右スリット85L、85Rの前後方向の長さは底板片81の前後方向の幅よりも長く、後仕切り片82及び前仕切り片83の下端(折り曲げ罫線811、812に近い部位)まで至っている。
後仕切り片82の左右方向中央部には、その上端縁821から下方にU字型に切り込まれた切り欠き部822が設けられている。作業者は、切り欠き部822を通して手指を差し入れることによって、第2仕切り部材80内に収容された交換部品を容易に取り出すことができる。また、上端縁821の左端及び右端近くには、上端縁821から下方に浅く延びる押圧スリット823が設けられている。一方、前仕切り片83は、大きな切り欠き部等を備えず、略平坦な上端縁831を備えた部材である。
側板片62L、62R及び前後仕切り片82、83が上方に折り曲げられた状態で、後仕切り片82は、左右スリット85L、85Rが形成されている箇所において、側板片62L、62Rの第2スリット623に嵌め込まれる。既述の通り、第2スリット623には第1仕切り部材70の前仕切り片73も嵌め込まれる。つまり、前仕切り片73及び後仕切り片82は、共に第2スリット623へ嵌め込まれ、両者は面接触する状態となる。切り欠き部822及び押圧スリット823は、第1仕切り部材70の切り欠き部732及び押圧スリット733と同サイズであり、両者が第2スリット623へ嵌め込まれた状態で、これらは重なる。また、前仕切り片83は、左右スリット85L、85Rが形成されている箇所において、側板片62L、62Rの第3スリット624に嵌め込まれる。これにより、第2仕切り部材80は、第1仕切り部材70の前方に隣接して、一対の側板片62L、62Rに跨るように、一対の側板片62L、62Rに対して組み付けられる(図3参照)。
この組み付け状態において、後仕切り片82及び前仕切り片83の上端縁821、831の高さは、底板部材60の側板本体片620の、第2スリット623及び第3スリット624が形成されている位置における傾斜上縁部621の高さと、それぞれ略同じである。つまり、上端縁821、831は、いずれも傾斜上縁部621よりも上方に突出していない。
第3仕切り部材90は、図8に示すように、左右方向に長い長方形の底板片91と、底板片91の後側縁に折り曲げ罫線911を介して連設された後仕切り片92と、底板片91の前側縁に折り曲げ罫線912を介して連設された前仕切り片93とを含む。後仕切り片92及び前仕切り片93は、折り曲げ罫線911、912に沿って上方に折り曲げられることによって、交換部品の収容のための左右方向に長い収容空間を形成する。すなわち、第1状態の緩衝ユニットU1では、底板片91上に所定の交換部品が載置され、当該交換部品の前後方向の動きが後仕切り片92及び前仕切り片93によって規制される。なお、第2状態の緩衝ユニットU2でも、この第3仕切り部材90については、底板部材60から取り除かれない。
底板片91には、いずれも打ち抜き孔からなり、中央部付近に配置された三角目印913と、この三角目印913を挟んで左右に配置された四角目印914とが形成されている。作業者は、第1仕切り部材90を底板部材60に組み付けるとき、三角目印913の頂点の向きを、底板片61に穿孔されている三角目印612の頂点の向きに合致させる。また、作業者は、四角目印914を参照して、第1仕切り部材70の組み付け位置が、底板片61の四角目印613が穿孔されている位置の付近であることを知見する。これにより作業者は、第1仕切り部材90の底板部材60への組み付け方向及び組み付け位置を誤ることが無い。
後仕切り片92及び前仕切り片93は、左右方向に長い長方形の形状を有し、底板片91よりも長い左右方向の幅を有する。後仕切り片92及び前仕切り片93の前後方向の幅は底板片91よりも短い。後仕切り片92及び前仕切り片93の左端部及び右端部同士が、折り曲げ可能な連結片94で連結されている。底板片91の左右の端縁と左右の連結片94との間には、前後方向に延びる左スリット95L及び右スリット95Rが設けられている。左右スリット95L、95Rの前後方向の長さは底板片91の前後方向の幅よりも長く、後仕切り片92及び前仕切り片93の下端(折り曲げ罫線911、912に近い部位)まで至っている。
前仕切り片93の左右両端には、前後方向の幅が中央部よりも長い突出部931が備えられている。この結果、前仕切り片93は、突出部931の上端縁932から下方に浅くU字型に切り込まれた切り欠き部933を備える形態を有している。一方、後仕切り片92は、大きな切り欠き部等を備えず、略平坦な上端縁921を備えた部材である。この上端縁921の高さと、切り欠き部933の底部上端縁934の高さ、並びに、第2仕切り部材80の前仕切り片83の上端縁831の高さとは、ほぼ同じである。
側板片62L、62R及び前後仕切り片92、93が上方に折り曲げられた状態で、後仕切り片92は、左右スリット95L、95Rが形成されている箇所において、側板片62L、62Rの第3スリット624に嵌め込まれる。既述の通り、第3スリット624には第2仕切り部材80の前仕切り片83も嵌め込まれる。つまり、前仕切り片83及び後仕切り片92は、共に第3スリット624へ嵌め込まれ、両者は面接触する状態となる。また、前仕切り片93は、左右スリット85L、85Rが形成されている箇所、つまり突出部931の形成箇所において、側板片62L、62Rの第4スリット625に嵌め込まれる。これにより、第3仕切り部材90は、第2仕切り部材80の前方に隣接して、一対の側板片62L、62Rに跨るように、一対の側板片62L、62Rに対して組み付けられる(図3参照)。
この組み付け状態において、後仕切り片92の上端縁921の高さは、底板部材60の側板本体片620の、第3スリット624が形成されている位置における傾斜上縁部621の高さと略同じである。つまり、上端縁921は、傾斜上縁部621よりも上方に突出していない。一方、前仕切り片93が備える突出部931の上端縁932は、支持傾斜部627よりも上方に突出している。第2状態の緩衝ユニットU2において、突出部931はプリンター1の前側面下部を、支持傾斜部627と共に支持することになる。
以上の通り、底板部材60に第1、第2、第3仕切り部材70、80、90が組み付けられ、1つのユニットが形成される。第1状態の緩衝ユニットU1では、図3に示すように、上記の仕切り部材に加えて、緩衝底板64が底板部材60に組み付けられる。緩衝底板64は、立方体に成形された部分を含み、第1、第2、第3仕切り部材70、80、90の各底板片71、81、91と底板部材60の底板片61との間に介在される。第2状態の緩衝ユニットU2では、第1仕切り部材70に加えて、この緩衝底板64も底板部材60から取り除かれる。
続いて、本実施形態に係る緩衝ユニットU(U1、U2)が適用された、プリンター1(機器)のメンテナンス方法の一例について、図9〜図15に基づいて説明する。図9は、プリンター1の交換部品が収容された段ボール箱100を開梱するステップを示す斜視図である。段ボール箱100内には、第1状態の緩衝ユニットU1(図3)が収容されている。図9では記載を省略しているが、緩衝ユニットU1の第1、第2、第3仕切り部材70、80、90によって区画された各収容空間には、メンテナンスのタイミングで交換される交換部品が収容されている。
作業者は、図9に示すように、段ボール箱100の上フラップを開放する。そして、緩衝ユニットU1の上部に配置されている抑え部材110及びスペーサ部材120が取り除かれる。これらは、緩衝ユニットU1が段ボール箱100内で上下に揺動することを抑止する部材である。抑え部材110は、平板状の本体部の側辺に、一対の下折り曲げ片111及び上折り曲げ片112が備えられている。一対の下折り曲げ片111は、第1仕切り部材70の押圧スリット723、733及び第2仕切り部材80の押圧スリット823に嵌め込まれる。また、一対の上折り曲げ片112が形成された部分は、第3仕切り部材90の切り欠き部933に嵌め込まれる。スペーサ部材120は、緩衝ユニットU1と段ボール箱100の上フラップとの間の空所に配置される部材である。
図10は、緩衝ユニットU1の段ボール箱100からの取り出しステップを示す斜視図である。このステップでは、作業者は、前後の取っ手片63F、63Bを掴み、交換部品(図10では図略)が収容された状態の緩衝ユニットU1を、段ボール箱100から上方へ引き出す。引き出された緩衝ユニットU1は、傾斜上縁部621を上にして、水平な面に据え置かれる。その後、緩衝ユニットU1から交換部品が取り出される。
図11は、第1状態の緩衝ユニットU1から交換部品が取り出されるステップを示す斜視図である。図11では、交換部品として、第1仕切り部材70に現像装置33が、第2仕切り部材80に搬送ユニット25が、第3仕切り部材90にドラムユニット31Uがそれぞれ収容され、これらが各々取り出されている状況を示している。この作業ステップが終わると、第1状態の緩衝ユニットU1はその役目を終えることになる。この後、第1状態の緩衝ユニットU1は、プリンター1が載置される作業台として機能する第2状態の緩衝ユニットU2に転換される。
図12は、第1状態の緩衝ユニットU1が、第2状態の緩衝ユニットU2へ変換されるステップを示す斜視図である。このステップでは、第1仕切り部材70及び緩衝底板64が底板部材60から取り外される。また、起立された状態にある後方の取っ手片63Bが、底板片61のスリット631に収められる。これは、傾斜上縁部621の高所部621Tにおいて、一対の側板片62L、62Rの間に、部品交換作業のための充分な作業空間R(図14)を確保するためである。ここで、第1仕切り部材70を取り外さずとも充分な作業空間を高所部621T側に確保できるよう、第1仕切り部材70の配置が定められている場合には、これを省略しても良い。
図13は、作業者がプリンター1を、第2状態に転換された緩衝ユニットU2上に載置するステップを示す斜視図である。図14は、プリンター1が、緩衝ユニットU2上に載置されている状態を示す斜視図である。このステップでは、プリンター1の底面10Bが傾斜上縁部621に接するように、また、プリンター1の前側面下部が支持傾斜部627で支持されるように、プリンター1が緩衝ユニットU2上に載置される。これにより、プリンター1は、傾斜上縁部621の傾斜角に応じて、前下がりに傾斜することになる。しかし、傾斜上縁部621の水平面に対する傾斜角は30度以下とされているので、トナー漏れがプリンター1の内部で生じることはない。
このような載置の結果、図14に示すように、傾斜上縁部621の高所部621Tの側において、一対の側板片62L、62Rの間に、プリンター1の底面10Bが露呈する。この底面10Bの露呈した箇所には、交換対象となる使用済みの搬送ユニット25の底面が表出している。
図15は、作業者が使用済みの搬送ユニット25をプリンター1(本体ハウジング10)から取り外している状況を示す斜視図である。作業者は、一対の側板片62L、62Rの間に確保された作業空間Rに手を差し入れて底面10Bにアクセスし、搬送ユニット25の底面に設けられている取り出しレバーを操作して、使用済みの搬送ユニット25を取り外す。
しかる後、作業者は、段ボール箱100から取り出しておいた新品の搬送ユニット25を、作業空間Rを利用して、底面10Bからプリンター1内に取り付ける。取り付けが完了したら、プリンター1は第2状態の緩衝ユニットU2から降ろされる。なお、現像装置33やドラムユニット31U等、搬送ユニット25以外の他の交換部品の交換作業も実行される。底面10Bではなく本体ハウジング10の側面からの交換が可能な現像装置33やドラムユニット31Uについては、緩衝ユニットU2上にプリンター1を載置することなく、交換作業を行っても良い。すべての交換部品の交換作業並びに他の必要な作業が完了すると、メンテナンス作業は完了する。
以上説明した通り、本実施形態に係る緩衝ユニットUによれば、プリンター1のメンテナンス作業の際に作業者によって持参される段ボール箱100内に収容された複数の交換部品間を仕切るための緩衝部材(第1状態の緩衝ユニットU1)を、部品の交換作業の際にプリンター1を載置する作業台(第2状態の緩衝ユニットU2)として用いることができる。このため、メンテナンス作業者は、専用の作業台を現場に持参する必要がない。しかも、緩衝ユニットU2上にプリンター1を載置した状態では、底面10Bを通した部品交換が行える。従って、部品交換作業の作業性を改善することができる。
特に、第1、第2、第3仕切り部材70、80、90のうち、一対の側板片62L、62Rの高所部621Tに位置する第1仕切り部材70を、第2状態の緩衝ユニットU2では取り外すようにしている。このため、第1状態の緩衝ユニットU1にあっては第1、第2、第3仕切り部材70、80、90による部品間の仕切りの機能を十分に発揮させつつ、第2状態の緩衝ユニットU2にあっては、底面10Bを露呈させるに十分な作業空間Rを確保することができる。
さらに、一対の側板片62L、62Rの低所部621Bには、高所部621Tの高さと略同じ高さを有する支持片626が連設されている。傾斜上縁部621に支持された状態のプリンター1は、その傾斜に沿って傾いた状態になるが、傾いたプリンター1を支持片626によって支持させることが出来る。このため、傾いたプリンター1を緩衝ユニットU2で安定的に支持させることができる。
以上、本発明の実施形態につき詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1、第2、第3仕切り部材70、80、90が、底板片71、81、91、後仕切り片72、82、92及び前仕切り片73、83、93を備える例を示した。これに代えて、本発明に係る仕切り片として、単純な平板からなる段ボール紙片を側板片62L、62Rに縦に組み付けるようにしても良い。