JP5706355B2 - 回転角度検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、回転体の角度を検出する回転角度検出装置に関するものである。
近年では、車両の高機能化に伴い、車両には車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステムが搭載されつつある。これらシステムは、ステアリングの操舵角を車両の姿勢情報の一つとして取得し、その姿勢情報に基づいて車両の姿勢が安定的な状態になるように制御する。そのため、ステアリングの操舵角を検出するための回転角度検出装置が例えば車両のステアリングコラム内に組み込まれている。この種の回転角度検出装置としては、操舵角を絶対値で検出する絶対角検出方式及び操舵角を相対値で検出する相対角検出方式がある。いずれの検出方式にするかは製品仕様等に応じて決定される。
そうした2方式のうち絶対角検出方式の回転角度検出装置としては、例えば特許文献1に示される構成が知られている。この回転角度検出装置は、ステアリングシャフトと一体的に回転する主動歯車、及び当該主動歯車に歯合する2つの従動歯車を備えている。両従動歯車には磁石が一体回転可能に設けられている。また、2つの従動歯車の歯数は異なっており、これにより主動歯車の回転に伴う両従動歯車の回転角度を異ならせるようにしている。そして、回転角度検出装置の制御装置は、両従動歯車にそれぞれ対応して設けられた磁気センサにより両従動歯車の回転角度を検出し、それら検出した回転角度に基づいてステアリングシャフトの回転角度を求める。
このような回転角度検出装置では、回転角度を求めることができる検出範囲が予め決まっている。これは、主動歯車が回転すると、やがて2つの従動歯車それぞれの回転角度が、以前示した値と同じ値となることに起因する。このため、例えば、検出範囲に対してステアリングシャフトの回転範囲がはみ出るように回転角度検出装置をステアリングシャフトに組み付けた場合(誤組み付けの場合)には、回転角度検出装置は、ステアリングシャフトの回転角度を求めることができない。この場合、検出範囲に対してステアリングシャフトの回転範囲が含まれるように、再度の組み付け作業を行う必要があった。
そこで、特許文献1の回転角度検出装置では、検出したステアリングシャフトの検出角度が、検出範囲の最大値から最小値まで又は最小値から最大値まで変化した場合に、実際の検出角度に検出範囲に相当する角度を加算又は減算させる補正を行うことにより、ステアリングシャフトの回転角度を求める。すなわち、この補正を行うことにより、回転角度検出装置が検出することのできる検出範囲が先の検出範囲に比べて広がる。これにより、ステアリングシャフトに対して再度の組み付けを行う必要がない。
特開2010−91340号公報
ところで、回転角度検出装置が正しくステアリングシャフトに組み付けられている場合、すなわち、検出範囲に対してステアリングシャフトの回転範囲が含まれている場合には、上述の補正は必要ない。そこで、特許文献1の回転角度検出装置では、所定の時間内において検出角度が検出範囲の最大値から最小値まで又は最小値から最大値まで変化したか否かを判断し、当該変化が所定の時間内におけるものである場合には、検出角度について上述の補正を行う。このように、特許文献1の回転角度検出装置では、補正の必要性の有無の判断について検出角度の変化及び時間を計測する必要があるため、当該処理が複雑になり、ひいては、ステアリングシャフトの回転角度を算出するまでに時間を要していた。
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検出物の回転角度の検出にかかる時間が短い回転角度検出装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、被検出物と一体的に回転する主動歯車に2つの従動歯車を噛合させて前記主動歯車の回転に伴う前記2つの従動歯車の回転角度をそれぞれ検出する検出手段と、前記検出手段において検出した回転角度に基づいて前記主動歯車の回転角度である内部角度を算出する内部角度算出手段と、前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲に含まれるか否かを判断する補正判断手段と、前記補正判断手段において、前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲に含まれないと判断された場合に、前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲に含まれるように補正し、当該補正後の前記内部角度に基づき前記被検出物の回転角度を算出する回転角度算出手段と、前記主動歯車が同一の方向に回転したときに前記2つの従動歯車の回転角度がある値からこれと同一の値となるまで変化したときの前記主動歯車の回転角度である検出範囲角度と、前記被検出物が回転することができる回転可能範囲の中央値と対応する前記主動歯車の回転角度である零点角度とを記憶する記憶手段と、を備え、前記補正判断手段は、前記零点角度から前記検出範囲角度を2で割ったものを引いた値と前記内部角度との大小関係、前記零点角度と前記検出範囲角度を2で割ったものとを足し合わせた値と前記内部角度との大小関係を比較し、前記内部角度が前記零点角度から前記検出範囲角度を2で割ったものを引いた値より小さい場合、又は前記内部角度が前記零点角度と前記検出範囲角度を2で割ったものとを足し合わせた値よりも大きい場合に、前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲内に含まれないと判断し、前記回転角度算出手段は、前記内部角度が前記零点角度から前記検出範囲角度を2で割ったものを引いた値より小さい場合には、前記補正として前記内部角度に前記検出範囲角度を足し、前記内部角度が前記零点角度と前記検出範囲角度を2で割ったものとを足し合わせた値よりも大きい場合には、前記補正として前記内部角度から前記検出範囲角度を引き、当該補正後の内部角度から前記零点角度を引くことによって前記被検出物の回転角度を算出することを要旨とする。
従来、内部角度が被検出物の回転可能範囲内に含まれるか否かの判断、すなわち、内部角度を補正する必要があるか否かの判断は、内部角度が所定の時間内において最大値から最小値まで又は最小値から最大値まで変化したか否かによって判断していた。すなわち、当該判断は、内部角度の変化及び時間を計測する必要がある。このため、当該判断にかかる処理が複雑となり時間を要していた。ひいては、被検出物の回転角度を算出するまでに時間を要していた。その点、同構成によれば、補正の要否の判断は、内部角度が被検出物の回転可能範囲に含まれるか否かの判断である。すなわち、内部角度の変化及び時間の計測は必要ないので、従来に比べて当該処理にかかる時間が短くなる。ひいては、被検出物の回転角度を検出するのにかかる時間が短い。
同構成によれば、補正判断手段は、内部角度が被検出物の回転可能範囲内に含まれるか否かを容易に判断することができる。また、回転角度算出手段は、内部角度を被検出物の回転可能範囲に合わせて補正することができるので、被検出物の回転角度を容易に算出することができる。
本発明では、被検出物の回転角度の検出にかかる時間が短い回転角度検出装置を提供することができる。
回転角度検出装置の平断面図。 図1の1−1線断面図。 回転角度検出装置の電気的な構成を示すブロック図。 内部角度γが、零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いたものより小さい場合における補正を示すイメージ図。 内部角度γが、零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものを足したものより大きい場合における補正を示すイメージ図。 零点角度γ0の演算処理の手順を示すフローチャート。 回転角度θの演算処理の手順を示すフローチャート。
以下、本発明を、ステアリングの操舵角を検出する回転角度検出装置に具体化した一実施の形態について図1〜図7を参照して説明する。
図1に示すように、回転角度検出装置11は、図示しないステアリングに一体回転可能に連結されたステアリングシャフト12に装着されている。回転角度検出装置11は、ステアリングシャフト12の周囲の図示しないステアリングコラム等の構造体に固定された箱体状のハウジング13を備えている。このハウジング13内には、ステアリングシャフト12に一体回転可能に外嵌された主動歯車14が収容されるとともに、当該主動歯車14に噛合する第1及び第2の従動歯車15,16が回転可能に支持されている。従って、ステアリングシャフト12が回転すると、主動歯車14は一体的に回転し、それに伴って第1及び第2の従動歯車15,16もそれぞれ回転する。なお、ステアリングシャフト12が回転することのできる回転可能範囲(Lock to Lock)に相当する角度を回転可能角度δとする。第1及び第2の従動歯車15,16は互いの歯数が異なるように設けられている。このため、主動歯車14の回転角度に対する第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度はそれぞれ異なる。また、主動歯車14の直径は、第1及び第2の従動歯車15,16の直径よりも十分に大きく設定されている。このため、主動歯車14が微小角度だけ回転した場合でも、主動歯車14の歯が第1及び第2の従動歯車15,16の歯と噛み合う。なお、第1及び第2の従動歯車15,16には、第1及び第2の磁石(永久磁石)17,18が一体回転可能に設けられている。
図2に示すように、第1及び第2の磁石17,18は、第1及び第2の従動歯車15,16の下部開口部を介して下方を臨むように設けられている。また、ハウジング13の内部において、第1及び第2の従動歯車15,16の下方には、プリント基板19が第1及び第2の従動歯車15,16の回転中心軸に対して直交するように配設されている。そして、当該プリント基板19の上面には、第1及び第2の磁気センサ20,21が第1及び第2の磁石17,18に対向するように配設されている。また、ハウジング13の内部おいて、プリント基板19の下方には、他のプリント基板22がプリント基板19に対して直交するように配設されている。そして、当該プリント基板22の表面には、マイクロコンピュータ23が設けられている。
<電気的構成>
次に、回転角度検出装置11の電気的構成を説明する。図3に示すように、回転角度検出装置11は、前述した第1及び第2の磁気センサ20,21、並びにマイクロコンピュータ23に加えて、電源回路24を備えている。電源回路24は、図示しない車両のバッテリから入力される電圧を、第1及び第2の磁気センサ20,21、並びにマイクロコンピュータ23等の回転角度検出装置11の各部にそれぞれ応じた所定レベルの電圧に変換し、それら電圧を回転角度検出装置11の各部に供給する。第1及び第2の磁気センサ20,21、並びにマイクロコンピュータ23等はそれぞれ電源回路24から安定して供給される所定レベルの電圧を動作電源として動作する。
<第1及び第2の磁気センサ>
第1及び第2の磁気センサ20,21は、それぞれ四つの異方性磁気抵抗素子(AMR素子)をブリッジ状に接続した回路を備えている。この異方性磁気抵抗素子は、異方性磁気抵抗効果を有するNi−Co等の強磁性体からなり、その抵抗値は与えられる磁界(正確には、磁束の向き)に応じて変化する。そして、第1及び第2の磁気センサ20,21は、それらに与えられる磁界の変化(正確には、磁束の向きの変化)に応じて前記ブリッジ状の回路の中点電位を磁束の検出信号として出力する。
第1の磁気センサ20は、第1の従動歯車15の回転に伴う第1の磁石17から発せられる磁束の方向の変化を検出し、第1の従動歯車15の回転角度αに応じて連続的に変化するアナログ信号、即ち正弦関数に準ずる正弦信号及び余弦関数に準ずる余弦信号をそれぞれ出力する。この第1の磁気センサ20からのアナログ信号はマイクロコンピュータ23に送られる。また、第2の磁気センサ21は、第2の従動歯車16の回転に伴う第2の磁石18から発せられる磁束の方向の変化を検出し、第2の従動歯車16の回転角度βに応じて連続的に変化するアナログ信号、即ち正弦関数に準ずる正弦信号及び余弦関数に準ずる余弦信号をそれぞれ出力する。この第2の磁気センサ21からのアナログ信号はマイクロコンピュータ23に送られる。
<マイクロコンピュータ>
マイクロコンピュータ23は、CPU(中央演算装置)25、EEPROM(電気的に書き換えできるROM)26及びRAM(書き込み読み出し専用メモリ)27等を備えている。
EEPROM26には、回転角度検出装置11の全体を統括的に制御するための各種の制御プログラム及びデータが予め格納されている。また、EEPROM26には、回転角度検出装置11が検出することのできる検出範囲角度εが記憶されている。RAM27はEEPROM26の制御プログラムを展開してCPU25が各種処理を実行するためのデータ記憶領域、即ち作業領域である。
なお、マイクロコンピュータ23は、外部装置と接続可能とされており、例えば外部から、外部からステアリングシャフト12の回転角度θが0(零)である旨示す零点検出信号を受信することが可能とされている。
EEPROM26に格納される制御プログラムとしては、例えば回転角度算出プログラム、及びキャリブレーションプログラムがある。キャリブレーションプログラムは、ステアリングシャフト12の回転角度が0(零)となるときの回転角度検出装置11における検出角度(零点角度γ0)を求めるためのプログラムである。回転角度算出プログラムは、第1及び第2の磁気センサ20,21からの検出信号に基づいて第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを求め、当該回転角度α,βの差、及び検出範囲角度ε、並びに零点角度γ0に基づいてステアリングシャフト12の回転角度θを絶対値で求めるためのプログラムである。
図3に示されるように、CPU25には、角度演算部28及びデータ演算部29が設けられている。角度演算部28は、EEPROM26に格納された回転角度算出プログラムに従って、ステアリングシャフト12の回転角度θを求める。データ演算部29は、回転角度検出装置11の組み立て初期段階において、EEPROM26に格納されたキャリブレーションプログラムに従って、零点角度γ0を求め、当該零点角度γ0をEEPROM26に記憶する。
ここで、前述したように、第1及び第2の従動歯車15,16の歯数は異なっていることから、主動歯車14の回転に伴う第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βも異なる値となる。このため、ステアリングが回転操作に伴い主動歯車14が回転した場合、当該主動歯車14の回転角度の変化に対して、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差は直線的に変化する。即ち、主動歯車14の回転角度(内部角度γ)と、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差とは比例関係にあることから、当該回転角度α,βの差は内部角度γに対して固有の値となる。主動歯車14は、ステアリングシャフト12と一体で回転するので、ステアリングシャフト12の回転角度θは、内部角度γに対して固有の値となる。回転角度θと内部角度γとの対応関係は、検出範囲角度ε、及び零点角度γ0により決定する。このため、当該回転角度α,βの差、検出範囲角度ε、及び零点角度γ0に基づいて主動歯車14、即ちステアリングシャフト12の回転角度θ(絶対値)の即時検出が可能となる。
具体的には、内部角度γは、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差の関数であり、(式1)のように表される。
γ=f{(α−β)} …(式1)
続いて、この内部角度γに検出範囲角度ε考慮することにより、内部補正角度σを求め、当該内部補正角度σに零点角度γ0を考慮することにより、ステアリングシャフト12の回転角度θを求める。内部補正角度σは次の(式2−1)〜(式2−3)のいずれか、回転角度θは次の(式3)で表される。内部補正角度σの算出に(式2−1)〜(式2−3)のいずれを採用するかについては、後に詳細に説明する。なお、これら(式1)、(式2−1)〜(式2−3)、及び(式3)は、予めEEPROM26に記憶されている。
σ=γ+ε …(式2−1)
σ=γ−ε …(式2−2)
σ=γ …(式2−3)
θ=σ−γ0 …(式3)
CPU25の角度演算部28は、(式1)と(式2−1)〜(式2−3)いずれかと(式3)との組み合わせに基づいてステアリングシャフト12の回転角度θを算出する。そして、算出した回転角度θを、車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステム(正確には、それらの制御装置)に送る。
<ステアリングシャフト12の回転角度θの算出に際する検出範囲角度ε及び零点角度γ0の考慮について>
まず、検出範囲角度εを考慮することについて説明する。上述したように、回転角度検出装置11は、主動歯車14に歯数の異なる第1及び第2の従動歯車15,16を噛み合わせた構成とされている。従って、主動歯車14が際限なく回転するとすれば、当該主動歯車14が検出範囲角度εだけ回転する度に第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差は、同一の値となる。すなわち、主動歯車14が検出範囲角度εの範囲内で回転すると仮定すれば、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差から主動歯車14の回転角度(内部角度γ)を求めることができる。従って、検出範囲角度εは、回転可能角度δを含んでいる必要がある。なお、本例の回転角度検出装置11の検出範囲角度εは、ステアリングシャフト12の回転可能角度δ(Lock to Lock)と等しく設定されるものとする。
続いて、零点角度γ0を考慮することについて説明する。回転角度検出装置11は、ステアリングシャフト12に組み付けられるが、当該組み付けにおいて、ステアリングシャフト12の回転状態は考慮されていない。このため、図4及び図5に示すように、回転角度検出装置11は、図中白抜きの長方形で示される検出範囲E1(検出範囲角度ε)が図中網掛けの長方形で示されるステアリングシャフト12の回転可能範囲E2(回転可能角度δ)とずれた状態でステアリングシャフト12に組み付けられる場合がある。検出範囲E1と回転可能範囲E2とが重ならない検出範囲、すなわち補正範囲E3,E4に該当する内部角度γは検出範囲角度εを足す又は引くことによる補正処理が必要となる。これは、上述したように、主動歯車14が際限なく回転するとすれば、当該主動歯車14が検出範囲角度εだけ回転する度に第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差は同一の値となるからである。
回転角度検出装置11は、補正処理の要否を、内部角度γと、零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値、及び零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものを足し合わせた値の大小関係をそれぞれ比較することにより判断する。そして、図4に示すように、内部角度γが、零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値より小さい(γ<(γ0−ε/2))場合には、内部角度γは回転可能範囲E2よりも小さい値側(図4中の補正範囲E3)にずれているので、上述の(式2−1)、すなわち、内部角度γに検出範囲角度εを足すことにより内部補正角度σを得る。図5に示すように、内部角度γが、零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものを足し合わせた値よりも大きい(γ>(γ0+ε/2))場合には、内部角度γは回転可能範囲E2よりも大きい値側(図5中の補正範囲E4)にずれているので、上述の(式2−2)、すなわち、内部角度γから検出範囲角度εを引くことにより内部補正角度σを得る。なお、図4及び図5に示すように、内部角度γが、零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値より大きく、且つ零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものとを足し合わせた値よりも小さい((γ0−ε/2)<γ<(γ0+ε/2))場合には、補正処理は行わない。この場合、回転角度検出装置11は、上述の(式2−3)、すなわち、内部角度γを内部補正角度σとして扱う。
内部補正角度σは、あくまで回転角度検出装置11が第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの差から主動歯車14の回転角度を求めただけであるので、ステアリングシャフト12の回転角度θとは、零点角度γ0だけずれている。このため、回転角度検出装置11は、上述の(式3)、すなわち、内部補正角度σから零点角度γ0を引くことによりステアリングシャフト12の回転角度θを得る。
<零点角度γ0の演算処理>
次に、回転角度検出装置11による零点角度γ0の演算処理について図6に示すフローチャートに従って説明する。当該処理は、EEPROM26に格納されたキャリブレーションプログラムに沿って実行される。
CPU25の角度演算部28は、第1及び第2の磁気センサ20,21からの検出信号に基づいて算出した第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを得ると、上述の(式1)を使用して、当該回転角度α,βの差から主動歯車14の回転角度(内部角度γ)を算出する(ステップS1−1)。次に、外部からステアリングシャフト12の回転角度θが0(零)である旨示す零点検出信号を受信したか否かを判断する(ステップS1−2)。ステップS1−2でNO、すなわち、ステアリングシャフト12の回転角度θが0(零)である旨示す零点検出信号を受信しない場合には、ステップS1−1にその処理を移行する。ステップS1−2でYES、すなわち、ステアリングシャフト12の回転角度θが0(零)である旨示す零点検出信号を受信した場合には、ステップS1−1で検出した内部角度γを零点角度γ0としてEEPROM26に記憶させ(ステップS1−3)、この一連の処理を終了する。
<回転角度θの演算処理>
次に、回転角度検出装置11によるステアリングシャフト12の回転角度θの演算処理について図7に示すフローチャートに従って説明する。当該処理は、EEPROM26に格納された回転角度算出プログラムに沿って実行される。
CPU25の角度演算部28は、第1及び第2の磁気センサ20,21からの検出信号に基づいて算出した第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを得ると、上述の(式1)を使用して、当該回転角度α,βの差から主動歯車14の回転角度(内部角度γ)を算出する(ステップS2−1)。次に、内部角度γが零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値より小さいか否かを判断する(ステップS2−2)。ステップS2−2においてYES、すなわち、内部角度γが零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値より小さい場合には、上述の(式2−1)を使用して、内部角度γと検出範囲角度εとを足し合わせた内部補正角度σを算出する(ステップS2−3)。そして、内部補正角度σから零点角度γ0を引くことによりステアリングシャフト12の回転角度θを絶対値で求め(ステップS2−4)、一連の処理を終了する。
なお、ステップS2−2においてNO、すなわち、内部角度γが零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値より小さくない場合には、内部角度γが零点角度γ0と検出範囲角度εを2で足し合わせた値よりも大きいか否かを判断する(ステップS2−5)。ステップS2−5においてYES、すなわち、内部角度γが零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものとを足し合わせた値よりも大きい場合には、上述の(式2−2)を使用して、内部角度γから検出範囲角度εを引くことにより内部補正角度σを算出する(ステップS2−6)。そして、ステップS2−4にその処理を移行する。
また、ステップS2−5においてNO、すなわち、内部角度γが零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものとを足し合わせた値より大きくない場合には、内部角度γを内部補正角度σ(上述の(式2−3))とし(ステップS2−7)、ステップS2−4にその処理を移行する。
以上の処理により、回転角度検出装置11は、ステアリングシャフト12に対して、自身の検出範囲E1とステアリングシャフト12の回転可能範囲E2とが重ならない範囲を有して取り付けられた場合であれ、ステアリングシャフト12の回転角度θを再度の組み付けを必要とせずに求めることができる。そして、CPU25は、角度演算部28において算出された、精度の確保された回転角度θを、車両安定性制御システム及び電子制御サスペンションシステム等の走行安定性を向上させるための種々のシステム(正確には、それらの制御装置)に送る。
<実施の形態の効果>
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)CPU25は、内部角度γと、零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値、及び零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものとを足し合わせた値との大小関係をそれぞれ比較することにより、内部角度γに検出範囲角度εを足す又は引く補正処理の要否を判断する。そして、補正処理が必要であれば内部角度γに補正処理を施した内部補正角度σを算出する。また補正処理が必要なければ内部角度γを内部補正角度σとして取り扱う。そして、内部補正角度σから零点角度γ0を引くことによりステアリングシャフト12の回転角度θを求める。以上からわかるように、回転角度θを算出するまでにCPU25における判断処理は、内部角度γと、零点角度γ0から検出範囲角度εを2で割ったものを引いた値、及び零点角度γ0と検出範囲角度εを2で割ったものとを足し合わせた値との大小関係の比較のみである。すなわち、本例の回転角度検出装置11では、CPU25は、例えば内部角度γの増減等を監視する必要がないため、回転角度θを算出するまでにCPU25にかかる負荷が小さい。このため、内部角度γの増減等を監視する必要がある回転角度検出装置11に比べて回転角度θを算出するまでにかかる時間が短い。
(2)第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを検出するための手段として、第1及び第2の従動歯車15,16に一体回転可能に設けられた第1及び第2の磁石17,18を備えた。また、当該検出するための手段として、第1及び第2の磁石17,18に対向するように配設されるとともに、当該第1及び第2の磁石17,18から発せられる磁界の方向の変化に応じた検出信号を出力する磁気センサとしての第1及び第2の磁気センサ20,21を備えた。
この構成によれば、第1及び第2の従動歯車15,16の回転に伴う第1及び第2の磁石17,18から発せられる磁界の方向の変化が第1及び第2の磁気センサ20,21により検出されるとともに、当該第1及び第2の磁気センサ20,21は前記磁界の方向の変化に応じた検出信号を出力する。そして、CPU25は、第1及び第2の磁気センサ20,21からの検出信号に基づいて、ステアリングシャフト12の回転角度θを求める。このように、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βの検出を、第1及び第2の磁気センサ20,21を通じて行うことにより、回転角度検出装置11の構成の簡素化が図られる。
即ち、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを、例えば光学式のロータリエンコーダを使用して求めることも可能である。しかし、ロータリエンコーダは、ステアリングシャフト12と一体回転可能に設けられるスリット円板、並びに当該円板をその厚み方向において挟み込むように配設される発光素子及び受光素子等が必要となる。このため、このようなロータリエンコーダにより第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを求めるようにした場合には、部品点数の低減、ひいては構成の簡素化には自ずと限界がある。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、図7に示すステップS2−4の処理は、ステップS2−3、又はステップS2−6、又はステップS2−7の処理と同時に行ってもよい。このように処理すれば、上記実施形態と同様の効果を得るとともに、回転角度θの演算にかかる処理が1つ少ないので、当該回転角度θの演算にかかる時間は上記実施形態よりも短い。なお、この場合、EEPROM26に記憶される回転角度θを算出する(式4−1)〜(式4−3)は、上述の(式2−1)〜(式2−3)と(式3)とを組み合わせたものとなる。
θ=γ+ε−γ0 …(式4−1)
θ=γ−ε−γ0 …(式4−2)
θ=γ−γ0 …(式4−3)
・上記実施形態において、各種のデータの記憶手段として、EEPROM26を使用するようにしたが、他の種類の不揮発メモリ(ROM)を使用するようにしてもよい。例えば、フラッシュメモリ、EPROM(消去及び書き込み可能なROM)等が記憶手段として採用可能である。
・上記実施形態では、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを、第1及び第2の磁気センサ20,21を通じて検出するようにしたが、当該回転角度α,βの検出手段として、例えば光学式のロータリエンコーダを使用するようにしてもよい。この場合、ステアリングシャフト12と一体回転可能に設けられるスリット円板、並びに当該円板をその厚み方向において挟み込むように配設される発光素子及び受光素子等を設ける。
なお、第1及び第2の従動歯車15,16の回転角度α,βを検出する手段として、ロータリエンコーダを採用すれば、第1及び第2の従動歯車15,16の回転方向、すなわち主動歯車14の回転方向を検出することができる。すなわち、主動歯車14の回転方向を求めるために記憶される回転角度α0,β0をEEPROM26に記憶させる必要はない。従って、その分のEEPROM26の容量を小さくすることができる。
・上記実施形態において、第1及び第2の磁石17,18を永久磁石としたが、通電することにより磁力(磁界)を発生する電磁石としてもよい。
・上記実施形態において、回転角度検出装置11をステアリングシャフト12の回転角度θを検出するために使用したが、例えばエンジンのクランクシャフト、産業用ロボットのアーム部等の他の回転体(被検出物)の回転角度を求めるために使用してもよい。
次に、上記実施形態及び上記別例より想起される技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項1又は2に記載の回転角度検出装置において、前記検出手段は、前記2つの従動歯車に一体回転可能に設けられた磁石と、前記磁石に対向するように配設されるとともに、当該磁石から発せられる磁界の方向の変化又は磁界の強度の変化に応じた検出信号を出力する磁気センサと、を備える回転角度検出装置。
同構成によれば、2つの従動歯車の回転に伴う磁石から発せられる磁界の方向の変化又は磁界の強度の変化が前記磁気センサにより検出されるとともに、当該磁気センサは前記磁界の方向の変化又は磁界の強度の変化に応じた検出信号を出力する。そして、前記制御手段は、前記磁気センサからの検出信号、及び前記記憶手段に記憶された補正データに基づいて、被検出物の回転角度を求める。このように、2つの従動歯車の回転角度の検出を、磁気センサを通じて行うことにより、回転角度検出装置の構成の簡素化が図られる。
即ち、2つの従動歯車の回転角度を、例えば光学式のロータリエンコーダを使用して求めることも可能である。しかし、ロータリエンコーダは、被検出物と一体回転可能に設けられるスリット円板、並びに当該円板をその厚み方向において挟み込むように配設される発光素子及び受光素子等が必要となる。このため、このようなロータリエンコーダを本発明の検出手段として採用するようにした場合には、部品点数の低減、ひいては構成の簡素化には自ずと限界がある。
11…回転角度検出装置、12…ステアリングシャフト、13…ハウジング、14…主動歯車、15…第1の従動歯車、16…第2の従動歯車、17…第1の磁石、18…第2の磁石、19…プリント基板、20…第1の磁気センサ、21…第2の磁気センサ、22…プリント基板、23…マイクロコンピュータ、24…電源回路、25…内部角度算出手段、及び補正判断手段、並びに回転角度算出手段としてのCPU、26…EEPROM、27…RAM、28…角度演算部、29…データ演算部。

Claims (1)

  1. 被検出物と一体的に回転する主動歯車に2つの従動歯車を噛合させて前記主動歯車の回転に伴う前記2つの従動歯車の回転角度をそれぞれ検出する検出手段と、
    前記検出手段において検出した回転角度に基づいて前記主動歯車の回転角度である内部角度を算出する内部角度算出手段と、
    前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲に含まれるか否かを判断する補正判断手段と、
    前記補正判断手段において、前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲に含まれないと判断された場合に、前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲に含まれるように補正し、当該補正後の前記内部角度に基づき前記被検出物の回転角度を算出する回転角度算出手段と
    前記主動歯車が同一の方向に回転したときに前記2つの従動歯車の回転角度がある値からこれと同一の値となるまで変化したときの前記主動歯車の回転角度である検出範囲角度と、前記被検出物が回転することができる回転可能範囲の中央値と対応する前記主動歯車の回転角度である零点角度とを記憶する記憶手段と、を備え、
    前記補正判断手段は、前記零点角度から前記検出範囲角度を2で割ったものを引いた値と前記内部角度との大小関係、前記零点角度と前記検出範囲角度を2で割ったものとを足し合わせた値と前記内部角度との大小関係を比較し、前記内部角度が前記零点角度から前記検出範囲角度を2で割ったものを引いた値より小さい場合、又は前記内部角度が前記零点角度と前記検出範囲角度を2で割ったものとを足し合わせた値よりも大きい場合に、前記内部角度が前記被検出物の回転可能範囲内に含まれないと判断し、
    前記回転角度算出手段は、前記内部角度が前記零点角度から前記検出範囲角度を2で割ったものを引いた値より小さい場合には、前記補正として前記内部角度に前記検出範囲角度を足し、前記内部角度が前記零点角度と前記検出範囲角度を2で割ったものとを足し合わせた値よりも大きい場合には、前記補正として前記内部角度から前記検出範囲角度を引き、当該補正後の内部角度から前記零点角度を引くことによって前記被検出物の回転角度を算出する回転角度検出装置。
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